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King Of The Dead



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1984
Reviews: 78%
Genre: Epic Metal


アメリカ発祥、カルト・エピック・メタルの神話、キリス・ウンゴルの1984年の2nd。


「我々は多くのファンタジー、及びソード・アンド・ソーサリー文学を読む。故に、我々の楽曲の殆どに空想叙事詩的な歌詞が登場するのは当然のことだ」
 ──グレッグ・リンドストーム


ロバート・グレイヴン(Robert Garven:d)、ティム・ベイカー(Tim Baker:vo)、ジェリー・フォグル(Jerry Fogle:g)、マイケル・フリント(Michael "Flint" Vujea:b)によって制作。グレッグ・リンドストーム(Greg Lindstrom)は大学に通うためにバンドを脱退した。



米カリフォルニア出身のエピック・メタルの始祖、キリス・ウンゴルの正式な第2作目にあたる本作『King of the Dead』は、前作『Frost & Fire』(1980)では不充分であった楽曲の完成度、及び特徴的なその世界観をサウンド面で追求することにより、大幅な進化を遂げた作品である。美しく幻想的なカヴァー・アートワークは、前作と同様に巨匠マイケル・ウェーランの手によるもの。驚くのは、その大仰なアルバム・ジャケットと本作の中身とが殆ど一緒であるという点にある。依然として音質はチープだが、それはカルト・エピック・メタルの避けられない宿命として、本作に対して、一部の熱狂的なファンは"キリス・ウンゴルのベスト・アルバム(Cirith Ungols Best Album)"と評価している。この意見は賛否両論に分かれる。
本作を語る上で重要なのは、各楽曲の持つドラマ性が著しく向上した、という点である。コンパクトにまとめられた『Frost & Fire』を軽く凌駕する大作志向を前面に押し出し、楽曲の展開はプログレッシブな波乱に満ちている。時には想像もしないような、急な展開を聴かせることもある。同時に、大仰なヒロイズムが作品の全体を覆っている点にも注目したい。サウンドは極めてエピカルかつドゥーミー、ギャロップするドラマティックなリフは、キリス・ウンゴルのエピック・メタルのスタイルを確立している。楽曲に漂うヒロイックなムードは、初期からキリス・ウンゴルが強く意識していたソード・アンド・ソーサリー(剣と魔法)の世界観である。その雰囲気は地下特有の怪しさに満ちており、時には熱心なそれらのファンを興奮させるに至る。エピック・メタルの至宝的な今作だが、中でも突出して"Finger of Scorn"の放つエピカルさ、及びヒロイック・ファンタジー的な世界観は衝撃的である。エピック・メタル・ファンなら迷わず、この名曲を聴いておくべきであろう。その他、混沌かつ荘厳としたタイトル曲"King of the Dead"、トールキンの小説から拝借したバンド名を冠した"Cirith Ungol"等、名曲は多い。また、作曲家バッハの楽曲をアレンジしたインストゥルメンタル"Toccata in Dm"を収録するなど、意外な音楽性も垣間見える。



普段普通に生活を繰り返していてもこのような、珍妙な作品には絶対に出会わない。キリス・ウンゴルの作品で聴くことができるエピック・メタルは、一般的な音楽ジャンルでは決してないからだ。「知る人ぞ知る」という言葉の如く、これらは脈脈と受け継がれてきた。未読の幻想小説があるように、キリス・ウンゴルの追求した世界観は興味深い要素で満ち溢れている。キリス・ウンゴルの創始者、グレッグ・リンドストームとロバート・グレイヴンがファンタジーやSFについて語ったインタビューがある──どうやらグレッグ・リンドストームは、長い間ファンタジーとSFの熱心なファンであったらしい。ジャック・ヴァンスによる地球最後の大陸ゾティークを舞台とした《滅びゆく地球》、フリッツ・ライバー(*注釈)による北方の野蛮人と魔術師くずれの都会人が奇想天外な冒険を繰り広げる《ファファード&グレイ・マウザー》、有名なマイケル・ムアコックのアンチ・ヒロイック・ファンタジー《エルリック・サーガ》がお気に入りであった。恐らくキリス・ウンゴルの二人は、ソード・アンド・ソーサリー(剣と魔法)の小説を殆ど読んでいた。彼らが手を出した作品の中には、あのロバート・E・ハワードの《コナン》、《ブラン・マク・モーン》なども混じっていた。
これらの過去のヒロイック・ファンタジー小説が、キリス・ウンゴルの音楽性と精神性に多大な影響を与えていた。そして間違いなく、この特別な要素がキリス・ウンゴルのエピック・メタルの礎を築いていた。例えば、少年期に始めて「剣と魔法」小説を読んだ時に刺激された知的好奇心や、興奮で高鳴る胸の内を思い出してもらいたい。キリス・ウンゴルは幻想小説が担うべき本来の役割を、聴覚から入り、エピック・メタルで果たしてしまったのである。これは画期的なことであった。キリス・ウンゴルのような幻想文学を音楽作品に取り入れたエピック・メタル・バンドの登場によって、我々は一日かけて読破するはずの小説の内容を、およそ30分間で味わえるようになった。これは恐ろしい発明である。なぜなら、かつて幻想文学に憧れた少年たちが創造したエピック・メタルには、小説よりも明らかな速攻性があったからだ。
結局のところ、現在に至るまで、エピック・メタルに必要な精神性はキリス・ウンゴルが追求したそれと何ら変わっていない。人間の本能的な探求心や知的好奇心が失われない限り、既に大昔に失われた叙事詩や異世界での出来事、及び英雄行為などを演劇の如く再現して、エピック・メタルはこれからも人々の知性を刺激し、空想のような壮大なイメージを膨らませ、目と耳を楽しませていくことであろう。

*注釈:Fritz Leiber(1910 - 1992)。アメリカのSF、ファンタジー作家。ここで挙げられた《ファファード&グレイ・マウザー》は、異世界ネーウォンを舞台とする、彼の代表的な「剣と魔法」小説である。この「剣と魔法」(Swords & Sorcery)という、今でこそ広く用いられている言葉は、彼が世界で最初の名付け親である。代表作は『凶運の都ランクマー』。



1. アトム・スマッシャー
Atom Smasher
一般のエピック・メタル・マニアでなければ、この楽曲の歌メロを一瞬聴いただけで、本作はお開きとなる。後半の大仰なテンポ・チェンジ、劈くようなギターメロディを耳にしただけでエピカルなのだが。

2. ブラック・マシーン
Black Machine
ドゥーミーでヒロイックなムードを醸し出すリズムが、ドラマティックな楽曲である。またリフを刻んだ後、急にミドル・テンポのドラムが駆け出すのも、大仰なドラマ性に拍車をかける。漢らしさも十分だ。

3. マスター・オブ・ザ・ピット
Master of the Pit
ヒロイック・ファンタジー的な混沌としたイントロを聴くだけで興奮が蘇る。漢らしくエピカルなリフが随所に聴かれ、そのリフが刻まれる度にドラムが微妙な疾走をするところも堪らなく良い。後半の盛り上がりを見せる疾走パートはエピックとしか形容できない。忠実に剣と魔法の世界が描かれている。

4. キング・オブ・ザ・デッド
King of the Dead
暗く、重く、シリアスであり、幻想的で厳かな雰囲気を醸し出すタイトル曲。確かに音質やプロダクション、演奏技術は決して高くはないが、随所に魅力的なパートがある。後半のパートなどは特に大仰さが滲み出ている。

5. デス・オブ・ザ・サン
Death of the Sun
ティム・ベイカーが奇声を発しながら疾走する楽曲。しかしこの本曲も大仰さが半端ではない。

6. フィンガー・オブ・スコーン
Finger of Scorn
以外にもアコースティック・ギターで幕を開ける、幻想大作とでもいうべき本作最大のハイライトである。アコースティック・パートでの音色は古めかしく、ファンタジー文学を彷彿させるものであり、その美しさには感動すら覚える。楽曲の進み方も前半以上に緩急のあるドラマ性に満ちたものであり、エピック・メタルのなんたるかを体現している。ギターソロのメロディも驚くほどヒロイックかつファンタジックなフレーズを繰り出している。後半のアコースティック・ギターが再度登場するパートでは、恰も剣と魔法の小説を読んでいる時と同等のもの悲しい感情を味わうことができる。

7. トッカータ・イン・Dm
Toccata in Dm
クラシックの定番曲のギターインスト。漂う雰囲気からヒロイック・ヴァージョンとも形容可能。

8. キリス・ウンゴル
Cirith Ungol
バンド名を冠したラスト・トラック。剣と魔法の世界特有の哀愁と、微かなロマンを匂わせる、後半のギターメロディが胸を打つ内容。大仰かつドラマティックな、見事な大作。

9. ラスト・ラフ
Last Laugh
ボーナス・トラック。



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