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Starfire Burning Upon the Ice



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1996
Reviews: 98%
Genre: Symphonic/Epic Black Metal



本作は、イギリスの偉大なるエピック/シンフォニック・ブラック・メタルバンド、バルサゴスの1996年発表の2ndアルバムである。バルサゴスの独創的なサウンド・スタイルは、しばしばウォーメタルやバーバリアンメタル等と各国で形容され、それに対して本人達は、自らの音楽のスタイルを"Kings Of Barbarian Metal"と大々的に公表した。ここで語られるウォーメタル、及びバーバリアンメタルとは、ヒロイックなメタルサウンドに中世の戦いの要素等を加味した内容である。その創設の歴史には、マノウォーやキリス・ウンゴルらが名を連ね、更に遡ればロバート・E・ハワードの生み出した"剣と魔法の物語(Sword and Sorcery)"の世界観に辿りつく。バルサゴスはラプソディー等よりも速く、これらの世界観をサウンドに取り込んだ。

バルサゴスの壮大な伝説は後々語ることとする。明白なのは、日本のファンにとってはかの名台詞「ハイプァボオォリィアアァァァァ」を語るバンドとして認知されている、ということだ(これは2chの掲示板で話題となり、多くのファンが生まれた)。しかし、エピックなヘヴィメタルを演奏するバルサゴスは、それだけには留まらない、実に興味深いバンドだ。海底のような深みを持っている。「ハイプァボオォリィアアァァァァ」という台詞は話題作りには貢献した。日本のファンにも、時には大仰な姿勢を真摯に受け止めていくことが求められる。我々はどんな楽曲の捉え方をしても許されるが、バルサゴスの世界観を理解できないという者達には「きみの理論は狂気じみている。だが、真実はもっと狂気じみたものだ」(*)という言葉の意味を考えて欲しい。もちろんこれは、ユニークな冗談に過ぎない。

*理論学者ニールス・ボーアの名言による。

バンドのブレインであり、天才的な作詞家であるバイロン・ロバーツ(Vo)が創造した驚異ともいえる剣と魔法に満ちた英雄のメタルサーガ群、それは、彼らのエピック・ヘヴィメタルを聴く者、また彼らの伝説を読む者のすべてを未知の冒険と新たな次元へと導いてくれる。もちろん私もその一人としてである。このアルバムも同様、バイロン卿の創造した壮大な幻想物語を軸にして起動する壮絶なコンセプトアルバムである。幻想怪奇小説の偉大なる作家らである、R・E・ハワード、H・P・ラヴクラフト、クラーク・A・スミス、E・R・バロウズ等に影響され、バイロン卿は、有史以前の古代の世界における神話や伝説を断片的な叙事詩として創造した。それは、太古の王国や帝国、現代、近未来、多元宇宙、異次元世界にまで及んだ。恐らくこれほどまでに壮大かつ特異なヘヴィメタルは、音楽の歴史上を見ても存在しなかったことだろう。またこのような試みが実行されたのも始めてだった。これらの世界に登場する国家の多くは、恐らく伝説として私たちに知られているものだ。これらの仮想現実の世界の中には、バイロン卿自ら創作した国家も登場する。これは、もはや小説の世界である。

そして、肝心の本作のサウンドであるが、これも歌詞に匹敵するスケール感のある内容となっている。実際、過去のヘヴィメタル史を振り返ってみても、難解な文学調の歌詞を書き、サウンドで完全にその世界観を表現したという実例は少ない。しかし、バルサゴスのサウンドは、太古の伝説群をモチーフにした詩世界すら上回っている。本作は、たった三人の英国人によって制作されたという点から考慮しても、その衝撃に上乗せする要素が確実にあるだろう。天才ジョニー・モードリング(key)による、凄まじいまでのファンタジックかつ荘厳なキーボード・プレイの応酬。幾つにも重ねられた壮大なシンフォニー。映画さながらの演出。大仰かつ劇的極まりないプログレッシブな楽曲の展開。クリス・モードリング(g)により奏でられるヒロイックなギターメロディ。勇壮な軍隊の突進を思わせる圧倒的な破壊力。そして、バイロン卿のデスヴォイスとナレーションを使い分けた度肝を抜くヴォーカルスタイル──これら全ての要素を融合し、本編でバルサゴスは唯一無二のヘビィメタルを作り上げた。クラシック、映画音楽、ゲーム音楽、ヘヴィメタル。その良い部分だけを余すことなく詰め込んだのである。まさに、バルサゴスという新時代のジャンルの登場の瞬間が、本作には記録されている。



1. 《影の山》の空高くを飛翔せし黒龍(プロローグ)
Black Dragons Soar Above The Mountain Of Shadows (Prologue)
RPGの如き荘厳な行進曲。勇ましいメロディが聴覚どころか視覚を刺激し、まさに黒き竜が影の山を登る姿が思い浮かぶ。この黒き竜こそが伝説的な《蛇王》であると、《影の山》の山頂より《石中より覗く者》は語る。彼は、かつて、無限の知識のために《影の山》の山頂で《星門》を開いた人物であるが、その代償として今は知覚力のある石に転じてしまっているのである。重厚な交響曲が大仰極まりない進行を見せる、劇的なオープニングトラックであり、バルサゴスにしか作れない楽曲である。余談だが、私くらいの熱心なファンになるとイントロですら名曲に聞こえてくる。

2. ミトス=クウンの魔女王を廃位せん事("黒兜谷の戦い"における伝説)
To Dethrone The Witch-Queen Of Mytos K'Unn (The Legend Of The Battle Of Blackhelm Vale)
《黒兜谷》で行われた魔女王ズラシャナの侵略軍と北方の全部族を統べる伝説的な戦士王ケイレン=トーとの決戦を描く英雄叙事詩。ケイレン=トーとは、並ぶものなき戦士、そして「北の狼」との異名をとる偉大な戦士のことである。劇的な展開を見せるバルサゴス節炸裂の名曲であり、突然軍隊の行進のようなパートに入り、ファンタジックなメロディへと展開していく様は、驚異的ですらある。後半のファンタジックなメロディの応酬に至っては、曲が変わったのかとすら思える。このクライマックスのパートは、戦士王ケイレン・トーの勝利の栄光を表しているのだろう。雄々しく、興奮すること必至である。

3. 大渦がコー=アヴゥル=タアの水晶の壁を照らすとき
As The Vortex Illumines The Crystalline Walls Of Kor-Avul-Thaa
得体の知れぬ《外界の闇》の猛威により、太古に破滅した水晶の大都市コー=アヴゥル=タァの惨劇を賢者ダイルーンの記録より物語る。怪しげなイントロから一気に古代的な交響曲が流れ出し行進する名曲である。それだけでも凄いのだが、中間部、いきなりの静寂に加え、大仰な迫真性を伴ってキーボードが叩きつけられるパートには絶句を禁じ得ない。そして、神秘的なメロディを伴って、古代都市の悲劇とでも形容すべき哀愁を伴った疾走を展開する様は壮絶である。悲壮的であり、視覚を刺激される名曲である。

4. ウルティマ=テューレの氷に覆われし玉座の頭上にて燃え盛る《星の炎》
Starfire Burning Upon The Ice-Veiled Throne Of Ultima Thule
これは、極北の最北端に広がる究極の神秘王国ウルティマ=テューレの戦士王子ヴォリューン=ヘルムスマイターの探索行の最終部である。彼は、ウルティマ=テューレの真の上王の一族のみが座ることができるという伝説の"ウルティマ=テューレの氷に覆われし王座"を探し求め、遂には自ら発見し、ウルティマ=テューレの神王となったのである。上記の物語の通り、まさにヒロイック・ファンタジーとでもいうような一大叙事詩が綴られる。オープニングは、凄まじいドラムとキーが叩きつけられるが急激に一変し、まるで太古の神話・伝承を彷彿とさせるヒロイック極まりないギターソロがバイロン卿の語りとともに静寂の内に紡がれ、幻想世界にいるかのような錯覚を聴者に齎す。そして、恰も勇壮な軍隊のように突進し、中間部まで来るとさらに一変し、まさに栄光を極めたとでもいうような王国調のシンフォニーが突然鳴り出し、聴く者を悶絶させる。正直、あまりにも凄まじい展開が本曲で巻き起こっているために、実際に何が起こっているか分からない程である。只感動的というここと、これを文章で表現することができない自分が情けなく思える。

5. 霧の島の冒険(月の無き夜闇の海の深淵を超えて)
Journey To The Isle Of Mists (Over The Moonless Depths Of Night-Dark Seas)
不気味なる霧の島へと導かれる極北の船乗りの日記である。音楽自体は、ゲーム音楽のようなインストゥルメンタル。見事な迫力があり、彼らの作曲力がいかに高いかを思い知らされる。また、ここですら視覚を刺激してくる。

6. 極北の帝国の紋章の下に煌く千本の剣の輝き
The Splendour Of A Thousand Swords Gleaming Beneath The Blazon Of The Hyperborean Empire
記念すべき、不朽の名作『極北の帝国の紋章の下に煌く千本の剣の輝き』の第一章にあたる。ファンの間では、*ハイパーボリアのサガなどと呼ばれているこのエピソードⅠも、素晴らしくヒロイックなエピックメタルに仕上がっている。全体に中世的な雰囲気が漂っており、英雄主義的であると感じさせられる部分が強い。後半の突然静まり返り、王が言葉を放つパートなどはかなり凝っているといえよう。しかし、ハイパーボリア王とアングサールの台詞をバイロン卿が見事に使い分けているのに至っては、苦笑を禁じ得ない。アングサール卿の「ハイパァボォリア」の台詞は一聴の価値ありと見える。

*ここ登場する極北の帝国とは、伝説上の大陸の1つであるハイパーボリアの王国を指している。ハイパーボリアの語源は、古代ギリシァ語の"北風の彼方"との言葉からだといわれているが、しかし、ハイパーボリアを太古の大陸として大々的に取り上げたのは、アメリカの幻想小説家クラーク・A・スミスが初出だというのが定説である。また、彼は、クトゥルー神話系の作家としても有名である。無論、バイロン卿は、スミスにも多大な影響を受けている。

7. 見よ、帝国がグル=コトースに対して行進せし時、《黒曜石冠》の城塞は闇の魔法で包み込まれるであろう(エピソード:Ⅷ)
And Lo, When The Imperium Marches Against Gul-Kothoth, Then Dark Sorceries Shall Enshroud The Citadel Of The Obsidian Crown
《黒曜石王冠》サガの第一章。本曲のレビューには、私が過去に書いた文章を直接代用させてもらうとしよう。これが一番分かりやすくまとまっているはずである。本曲は、バイロン卿が創造したという「帝国」と「ヴィルゴシア王国」の大戦を描いた叙事詩的な楽曲である。 《帝国》とは、地図(B.A ロバーツ作)の南方に位置する、南大陸の中で最も強力な国家。強大な皇帝、クールドによって治められており、帝国最強の歩兵軍団《漆黒の虎》隊は、古代諸王国に名を馳せ恐れられている。 一方、《帝国》の隣国であるヴィルゴシア王国は、ヴィルゴシア上級王が保持する強力な同盟によって守られた強力な国家である。 この両国は、先祖代々争っており、近年、《帝国》の圧倒的な力によりヴィルゴシアは追い詰められていた。しかし、《帝国》の《漆黒の虎》隊ですら打ち破れなかった太古の城塞都市《グル=コトース》──古代ヴィルゴシアの英雄たちによって切り開かれた、王国の中で最も古く強力な砦──が長らく帝国の進行を妨げていた。この城塞を打ち破るため、皇帝クールドは、ヴィルゴシアに彼の最も強力な魔術師を急派する。魔術師の目的は、ヴィルゴシア王国の秘密の城砦に隠されているという伝説の、かつて太古の《影の王》が抱いていたという絶大な魔力を持つ《黒曜石の王冠》の封印を解くということにあった。しかし、魔術師の試みはヴィルゴシアに見抜かれ、試みは失敗したかに思えた。だが、偉大なるヴィルゴシアのマスター・ウィザードは、不吉で恐ろしい知らせを魔法でくれたのだった。それがタイトルとなっている、 「And Lo, When The Imperium Marches Against Gul-Kothoth, Then Dark Sorceries Shall Enshroud The Citadel Of The Obsidian Crown(見よ、帝国がグル=コトースに対して行進せし時、《黒曜石の王冠》の城塞は闇の魔法で包み込まれるだろう)」 という言葉なのである。これに従い、皇帝クールドは、およそ10万を超える帝国の大軍を率い、グル=コトースへと行進する。この壮大な物語の続きは、6thの4曲目で語られることになる。 雄大にホーンが鳴り響く楽曲は、戦士のヒロイズムを思わせるギターメロディと共に絶賛に値する。この勇ましいギターメロディは、このアルバムの中でも最高のメロディに位置するものだ。剣と魔法の諸力を間近に感じることが出来るとでも形容しておこう。ちなみにベイジル・ポールデュリス作である「コナン・ザ・グレート」サウンドトラックからのメロディの拝借が後半にある。

8. 星門の守護者を召喚せし事
Summoning The Guardians Of The Astral Gate
不気味な《影の山》には、開いたものに星間宇宙のあらゆる場所への移動と究極の叡智が授けられるという伝説の《星門》が隠されている。《星門》を開くには、《影の山》の頂の輪の中にて、天上の呪文を唱え、正門の守護者として知られる歩哨を呼び出さなくてはならない。歩哨の名は、それぞれズクスルス、クルオック、グゥル=コォル、カ=ク=ラという。勇壮な宇宙を思わせる曲であり、銀河を舞台とした後の4thに通じる。全曲に言えることだが、攻撃的なサウンドが恐ろしいまでの勇ましさを伴って迫ってくる。後半のギターソロは、宇宙の広大さを見事に表現している。ヒロイックストーリーという言葉しか思い浮かばないように、ヒロイックな曲だ。

9. 太陽の光の決して届かぬ影の支配せし場所、大鴉に荒らされしダーケンホールドの森にて
In The Raven-Haunted Forests Of Darkenhold, Where Shadows Reign And The Hues Of Sunlight Never Dance
北方諸国の数十万平方マイルに跨る《ダーケンホールドの森》を治める《森の王》と樹木の精霊たちによる神秘的な物語。最後にこれほど完成度の高い名曲を残しておくところは、本当に憎い。まさに、太古の雄姿を一身に背負い突進するサガである。幻想的なキーボードとクライマックスのギターソロには、戦士的な光景を視覚に感じずにはにはいられない。クリス・モードリングの奏でるギターメロディは、ヒロイック極まりない。彼らの伝説は、宇宙、そして古代の英雄を讃えているかのよう。

10. 夢見る神々の祭壇にて(エピローグ)
At The Altar Of The Dreaming Gods (Epilogue)
何者かの探索に終わりを告げる、壮大な冒険に栄光の幕を閉じるに相応しい幻想的なエピローグ・トラック。こうした徹底的な構成が感銘を引き起こすのだろう。ここまで来ると、現実にいることを忘れてしまう。全編通して感動的であることは記すまでもない。



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