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One the Way Back



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2011
Reviews: 84%
Genre: Epic Metal


イタリアのローマ発祥、カルト・エピック・メタルの伝統を今に伝える古代のヘラルド、マーティリアの2011年発表の4th。


ぼくは花嫁姿の君をみた
君の頬は恥じらいで赤く染まる
君の周りには幸福が溢れ
前途には愛が輝いてるというのに
 ──エドガー・アラン・ポー『ソング』より





純粋に"エピック・メタル(Epic Metal)"と形容できる音楽性のバンドが、果たしてどれ程いるのであろうか。まだ我々はそのすべてを把握したわけではないが、決して多数ではない、ということは知っている。明確なエピック・メタルというサウンドや世界観を提示し、そのスタイルを保守的なまでに継続させているバンドは、もはやマニラ・ロードやヴァージン・スティールなどの始祖たちに限られる。近年ではイタリアのドミネ(DOMINE)やドゥームソード(DOOMSWORD)、ロジー・クルーシズ(ROSAE CRUCIS)などのバンドも、極めて正統派に接近した音づくりをしていることからも分かるように、時代と共に本物のエピック・メタルの定義が追求され始め、同じようにファンに求められている。ここに見出すイタリアのローマ出身のマーティリアも、間違いなく真性のエピック・メタルのスタイルを継承している、大変貴重な存在である。



エピック・メタルの分野において特別な才能を発揮するアンディ・メナリオ(Andy "Menario" Menariri:g、key)に率いられたマーティリアは、80年代から続く地下カルト・エピック・メタルの真の後継者であり、その暗澹たるサウンドは、アメリカのローディアン・ガード、及びヴァージン・スティールを強烈に彷彿とさせる。イタリアの「My Graveyard Productions」から発表された第4作『On the Way Back』に至っても、誰も本作が2011年に発表された作品であるとは、到底思うまい。古く古典劇の要素が本作に宿っているように、人間の持つ芸術的な感性をマーティリアは描いている。それらは繊細な詩──詩は詩人マルコ・ロベルト・カペリ(Marco Roberto Capelli)によって書かれた──や知的な構成に結集されている。敢えて前半で抑えられた大仰さは、後半のカタルシスのために必要である。なぜなら、プログレッシブな"The Sower"を皮切りにして、マーティリアの大仰さは、突如として憤怒に満ちた豪雨が大地に降り注ぐように、一斉に外部へと解き放たれるからである。その恍惚の様は、我々エピック・ヘヴィメタルのファンが待ち望んでいた光景以外の何物でもない。
本作『On the Way Back』はすべてが緻密に練られた傑作であり、また古典文学的な深遠さを含んでいる。エピカルな音楽にとって、アメリカ最大の文豪エドガー・アラン・ポーの存在が馴染み深いように、"Song"で題材とされているのは、彼の詩である。本作の最後を飾る"On The Way Back"でモチーフとされているのは、ドイツの作家トーマス・マンの小説『ヴェニスに死す(Der Tod in Venedig)』(1912)であり、マーティリアはインテリジェントな手法でこれらの作品に迫っている。我々が本作を理解するのに時間は掛かるが、本作こそが、エピック・メタルが生み出した真の芸術作品である。"Gilgamesh"に描かれている古代メロポタミア王の叙事詩が、恰も色褪せたパピルス紙から醸し出すように、有史以前の厳粛な雰囲気と、美しい詩とが織り成す陰鬱なストーリーは、人類がかつて閃いた才能を、虚無の大空に投げ掛けている。マーティリアは現代の誰も想像し得なかった素晴らしくも創造的な産物を、古代の建築様式でここに蘇らせたのである。



1. Cantico
第2作『The Age of the Return』(2005)の冒頭に通じる荘厳なクワイアを使用したプロローグ。
2. Drought
どす黒くも暗澹とした陰惨なイメージが漂う楽曲。エピカルなイントロダクションに始まり、頽廃的なメロディがカルト的なムードを醸し出す。まるで天使が地に落ちたかのような、重苦しい世界観が特徴的である。
3. Apocalypse
ルネッサンス音楽風のムードからダークなエピック・メタルを展開。陰鬱なコーラス・パートは堕落を極める。プログレッシブなテンポ・チェンジも含む。なお歌詞の"Nunca mas"とはスペイン語で「2度としない」という意味。
4. Song
ポーの詩『ソング(Song)』をモチーフとした楽曲。この詩は青年期のポーの悲恋を綴ったもの。ポーの文学の如く、知的な構成の中にも暗い皮肉がある。複雑なギター・ワークの絡みは、大人を楽しませるのには十分であろう。
5. Ashes To Ashes
マーティリアの得意とする頽廃的なコーラスを用いたサビが印象に残る。サタニックにも聞きとれる旋律は衝撃的。なお"ashes to ashes, dust to dust"という一説は聖書からの引用。
6. The Sower
尺八風のイントロから開始。前半は疫病によって死滅した都市の如き暗い雰囲気を醸し出し、途中からヘヴィなリフによって爆発する。終始異様な緊張感に包まれ、一貫される。後半ではプログレッシブな展開によってエピック・メタル的カタルシスが爆発する。
7. Gilgamesh
本作のハイライト。冒頭の強烈なリフがすべてを物語る。古代メソポタミアの王ギルガメッシュを歌った英雄叙事詩であり、ウルクの城壁の建設、及びフンババとの戦いなどの英雄的偉業が語られている。カルト的なムードによって支配され、地を這う大蛇の如く、ゆったりとエピカルに展開していく。中間部では大仰さを発揮。なお歌詞にはエドウィン・アーノルド(Arnold, Edwin)の詩『The Light of Asia(邦題:アジアの光り)』からの引用がある。
8. The Slaughter Of The Guilties
古代風の調からヘヴィに展開。立体的なサウンドが、古代世界の荘厳な情景を描き出す。中間部からの劇的な展開を聴き逃す手はない。
9. You Brought Me Sorrow
古代ギリシア風のムードが漂う楽曲。静と動のエピカルなコントラストを持つ。まるで一つの完成された芸術作品であるように、知的にも輝いている。
10. Twenty Eight Steps
厳かなコーラスに導かれる、およそ9分に及ぶ大作。エピカルなムードに包まれ、静寂の中で古代風のメロディを奏でる。一部の重厚なギター・ワーク、及びメロディにはオリエンタルな要素を含み、恰もヴァージン・スティールの名曲"Prometheus The Fallen One"を彷彿とさせる。中間部からはプログレッシブに展開し、マーティリアのインテリジェントな側面を垣間見せる。
11. On The Way Back
ドイツの作家トーマス・マンの小説『ヴェニスに死す(Der Tod in Venedig)』(1912)がモチーフ。ルネッサンス音楽やフラメンコに通じる中世風のアコースティカルな旋律を用いながら、メランコリックに悲劇を描き出す静寂の一曲。本作の締めとしては最高であろう。



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