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エピックメタル・ヒストリー:「エピック・メタルの父」ロバート・E・ハワード2/2

エピック・メタルの父(The Father of Epic Metal)


著者:Cosman Bradley
翻訳:METAL EPIC


 以下は以前コスマン・ブラッドリー博士が書いた文章を『METAL EPIC』誌が新たに編集し直したものだ。ここではロバート・E・ハワードとエピック・メタルの関係性についての研究の成果が記されている(前回より...)。

エピック・メタルの父
frank_frazetta リヒャルト・ワグナーを「ヘヴィメタルの父」と称するなら、ロバート・アーヴィン・ハワードは「エピックメタルの父」だった。僅か30年という短い生涯を送り、類稀な文才に恵まれ、人間の長寿と真向から対峙した人物が、ハワードその人だった。
 人生の輝ける一瞬を生き、不朽の名作を数多く世に残した“作家”ハワードの影響は、爾来、幻想文学のジャンルだけには留まらず、アート、音楽、映画産業へと拡大していった。現代社会の中には、ハワードの世界観に触発された様々な作品があった。
 代表作〈コナン〉は、ジョン・ミリアスの映画『コナン・ザ・グレート』として生まれ変わり、アメリカの作曲家ベイジル・ポールドゥリスによる、サウンドトラックの同名の音楽作品を生み出した。80年代以降、このサウンドトラックは、エピック・メタルの楽曲の中にも頻繁に引用され、屈指の人気作となった。また、映画は俳優のジェイソン・モモア主演でリメイク版が制作され、2011年に『コナン・ザ・バーバリアン』(Conan The Barbarian)として公開された。
 アートの分野では、アメリカのフランク・フラゼッタやケン・ケリーが才能を開花させた。空想の領域から視覚の段階へと移り変わったハワードの世界観は、幻想的なイラストレーションで表現され、アート界で高い支持を獲得した。現在に至るまで、ケン・ケリーの描いた魅惑的なアートワークが、数多くのエピック・メタルのアルバム・ジャケットを飾っていることは、ファンたちなら既に承知の事実だった。
 時が流れても、古代の神話や英雄叙事詩などが強い影響力を持っているように、リン・カーターやライアン・スプレイグ・ディ・キャンプなどの後続の作家たちは、ハワードが未完のまま残した作品を編集し、本人の死後も数々の「新作」を世に送り出した。この挑戦は、一部のファンたちから非難されたが、多くの“ハワード愛好家”は、未読の作品を楽しんだ。
 このように、時代を超えて、ハワードの創造した世界観は受け継がれていった。やがて、その流れは、ロック音楽のジャンルにも手を伸ばし始めた。ハワードの残した功績録の中に、「ヒロイック・ファンタジーを確立した」という項目があった。これが後に、叙事詩的なロック音楽のシーンから、大きな注目を集めたのだった。
 歴史は続いた──ハワードの作品に触発された後続の作家たちは、ヒロイック・ファンタジーの世界観を踏襲した。これらの作家たちは、数多くの小説を発表していく中で、現実的な功績を作り上げ、現在へと続く、「剣と魔法の物語」の幅を押し広げていったのだった。
 そのフォロワー的な作家たちの中に混じって、フリッツ・ライバーやマイケル・ムアコックなどが頭角を現していった。前述の通り、アメリカのフリッツ・ライバーは、1960年代に「剣と魔法の物語」という名称を唱えた。この作家は、「剣と魔法の物語」の世界を自ら体現し、〈ファファード&グレイ・マウザー〉という、ヒロイック・ファンタジーの人気シリーズも執筆した。一方、イギリスのマイケル・ムアコックは、1961年に〈永遠のチャンピオン〉(The Eternal Champion)シリーズの第1作目となる『夢見る都』(The Dreaming City)発表した。
 70年代初頭、イギリスからブラック・サバスが登場し、ヘヴィメタルの基盤を築くと、徐々にセックスやドラッグのテーマから離れた、新たな歌詞の内容が必要となった。ここでは、従来のキリスト教や悪魔崇拝、社会批判や戦争などとは異なる題材が求められた。
 イギリスのホークウィンドは、マイケル・ムアコックのヒロイック・ファンタジー小説をモチーフとした『ウォリアー・オン・ザ・エッジ・オブ・タイム』(Warrior On The Edge Of Time, 1975)を発表した。そして、未来のロック音楽のジャンルには、まだ開拓すべき可能性があることを証明した。
 これに影響を受けたアメリカのキリス・ウンゴルやマニラ・ロードなどのバンドたちは、80年代初期──ヘヴィメタルが急成長を始めた時期──に叙事詩的な文学作品とヘヴィメタルを融合させたサブ・ジャンルを追求した。アンダーグラウンド・シーンのバンドたちが、後にハワードの創造したヒロイック・ファンタジーの世界観と出会うと、現在のエピック・メタルの基盤が誕生したのだった。
 80年代以降、エピック・メタルにおけるハワードの影響力は強まり、次第に巨大な枠組みが完成していった──マニラ・ロードのマーク・シェルトンは、作詞で影響を受けた作家として、ハワードの名前を挙げた。第8作『ザ・コーツ・オブ・ケイオス』では、「剣と魔法の物語」の世界観を忠実に再現した、叙事詩的なヘヴィメタルの音楽のスタイルを作り上げた。
 マノウォーのジョーイ・ディマイオは、ハワードの〈キング・カル〉と〈コナン〉を影響を受けたヒーローたちとして称賛し、自らのバンド・イメージとして、その野性的なヒロイズムを代用した。第2作『イントゥ・グローリー・ライド~地獄の復讐~』や第4作『サイン・オブ・サ・ハンマー』などの作品では、野蛮で高潔な〈コナン〉の世界が、ダークなエピック・メタルのサウンドで表現された。
 イギリスのシンフォニック・エピック・ブラック・メタル、バルサゴスのバイロン・ロバーツは、エドガー・ライス・バロウズやハワード・フィリップス・ラヴクラフトを差し置いて、最も影響を受けた作家として、ハワードの名前を挙げた。第1作『レムリアの空に浮かぶ黒き月』(A Black Moon Broods Over Lemuria, 1995)と第2作『ウルティマ=テューレの氷に覆われし玉座の頭上にて燃え盛る星の炎』(Starfire Burning Upon The Ice-Veiled Throne Of Ultima Thule, 1996)では、ベイジル・ポールドゥリスのサウンドトラックからのメロディを引用した。また、“バルサゴス”というバンド名は、ハワードの短編小説『バル=サゴスの神々』(The Gods Of Bal-Sagoth, 1931)に由来したものだった。
 イタリアのドミネは、マイケル・ムアコックやハワードの世界観をテーマとしたエピック・メタルの作品を残した。第4作『エンペラー・オブ・ザ・ブラック・ルーンズ』(Emperor Of The Black Runes, 2003)の《The Aquilonia Suite》では、ベイジル・ポールドゥリスのサウンドトラックからのメロディを引用した。
 ノルウェーのヴァイキング・メタル・バンド、エインヘリャルは土着的な北欧文化を強調したサウンドの中で、幼少期のハワードが影響を受けた、英雄たちの神話の世界を表現した。EP『ファー・ファー・ノース』(Far Far North, 1997)では、ハワードの世界観とヴァイキング文化の融合に挑戦し、《Naar Hammeren Heves》の中で、ベイジル・ポールドゥリスのサウンドトラックからのメロディを引用した。
 新時代のエピック・メタル・シーンの中でも、ハワードの影響力は顕著だった。イタリアのロジー・クルーシズは、第1作『ワームス・オブ・ザ・アース』(Worms Of The Earth, 2003)でハワードの小説『大地の妖蛆』(Worms Of The Earth, 1932)をコンセプトとして、ピクト人の英雄〈ブラン・マク・モーン〉の活躍に触れた。その後、バンドは第3作『フェデ・ポテレ・ヴェンデッタ』(Fede Potere Vendetta, 2009)で、更に深遠なヒロイック・ファンタジーの世界観を追求した。《Venarium》の歌詞には、少年時代の〈コナン〉が登場し、ヴェナリウム砦での戦いが描かれた。
 ポルトガルのアイアンソードは、デビュー時からハワードの世界観に影響を受け、ヒロイックなエピック・メタルのサウンドを追求した。第3作『オーバーローズ・オブ・カオス』(Overlords Of Chaos, 2008)では、〈コナン〉の他にクトゥルー神話も楽曲のテーマに選択した。実際のハワードは、『ウィアード・テイルズ』誌の作家たちの影響で、クトゥルー神話関連の作品も数多く残していた。
 その他、ドイツのヴァイキング・メタル・バンド、クロム(Crom)もハワードからの影響を受け、バンド名にキンメリア人が信仰した大神の名前を使用した。また、同国のマジェスティもマノウォーのフォロワー・バンドとして活躍し、ケン・ケリーを起用した勇壮なカヴァー・アートワークでハワードの世界観への傾向を示した。アメリカのハイボリアン・スティールは、バンド名の通り、主にハワードが創作した“ハイボリア世界”を重点的に描いた作品を発表していった。
 ここで取り上げられた一例は、過去と現在において、ハワードと叙事詩的なロック音楽の共通性を示するものだった。現在のエピック・メタル・シーンでは、ハワードの影響力が巨大化し、それはバンドのイメージや精神面にも及んでいた。既にここで証明されてきたように、ハワードはエピック・メタルに関わるミュージシャンやファンたちにとって、一種の父性を持った存在に近付いていた。
 結果的に、今日の叙事詩的なヘヴィメタルの概要は、ハワードが1930年代に「ヒロイック・ファンタジー」の市民権を獲得したことに由来していた。これまでのエピック・メタル史の中で追求されてきた英雄主義的なテーマは、ハワードが生涯を懸けて追求した内容と同じだった。栄光、挫折、才能、影響、早過ぎる死──今回、一つの結論が導き出された。
 エピック・メタルに関わるミュージシャンやファンたちにとって、ロバート・アーヴィン・ハワードは偉大な父だった。彼の名前は、叙事詩的なヘヴィメタルの作品の中で、今なお生き続けていた。


*この記事は『叙事詩的なヘヴィメタルの歴史2』に収録されました。

叙事詩的なヘヴィメタルの歴史2



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