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Column the Column

volume 18. 27 December: 2011



2011年11月第17号、前号の続き...

──バルサゴスの物語では、特にアトランティスやハイパーボリア、ムーやレムリアなどの古代文明国家が頻繁に登場しますが、後者2つは実際に地図上には表記されていませんよね。
コスマン:これらの国家が実在したという証拠は未だ闇の中だが、古代の神話の中では、レムリアは現在のインド洋辺りに、ムーは太平洋辺りに存在していたとされる。一方アトランティスとハイパーボリアに関しては、レムリアやムーの大陸ほど地理的に離れてはいなかった、と伝えられている。しかし私たちが知るべきことは、この地図がバルサゴスの物語の舞台のすべてを網羅しているわけではない、ということだ。
──確かに第4作『The Power Cosmic』(1999)の舞台設定は宇宙ですし、これほど広大な範囲の地図を描くことは難航を極めるでしょう。
コスマン:バルサゴスの物語はあまりにも壮大に展開されている。これが最大の魅力であり、同時に問題を大きくしている要素でもある。仮にバルサゴス・サーガの全体図を作るとして、一体どれほどの労力と忍耐が必要とされるのか、私には分からない。バルサゴスがここまで小説めいた独創的な歌詞をヘヴィメタルの分野に持ち込んだことに関しては、一つの歴史的な功績にすら数えられるであろう。そしてバルサゴスの後に全くフォロワーらしきバンドが表舞台に登場してこないという事実を考察してみても、バルサゴスというバンドの特殊性を強烈に物語っている。しかし、それは残念なことでもあろう。例えばアイアン・メイデンやジューダス・プリーストのような始祖的なバンドの伝統的なサウンドが現代の若い世代に受け継がれていく傍ら、バルサゴスの叙事詩的な音楽性はゆっくりと歳月の蚕食に蝕まれていっているのだから。まるで、古代のアレクサンドロス大王の悲劇のようではないか。私たちは真に偉大な存在を超えることが遂にできなかった。そしてその意志は、幽鬼のよく出没する暗い墓所を永遠に彷徨うのだ。
──なんだか壮大な話ですね。しかし実際にバルサゴスのフォロワーは皆無ですし、本当に人々がバルサゴスのヘヴィメタルを忘れてしまう日が訪れるのかも知れません。歴史の影に埋もれていったバンドなんて山ほどありますし……。
コスマン:人々に忘れ去られた時、バルサゴスの物語は本当の終焉を迎えるのかも知れない。恰もクラーク・アシュトン・スミスの幻想小説のように、皮肉に満ちており、侘しい終わり方だ。私には本当にそうならないことを祈るしか為す術がない。しかしバルサゴスの物語が現実にそういった結末を辿るのであれば、全く受け入れるべきであろう。
──そしてまた一つ、高度な文明が失われていくと(笑)。バイロンが失われた古代文明を多く題材にしている理由には、そういった背景があったんですね。
コスマン:バイロンが失われた古代文明を頻繁に物語に登場させる理由の一つには、主に過去の作家たちが自身の小説の中でそれらの名を用いた、というのが正しいであろう。バイロンは自身が影響を受けた作家にロバート・E・ハワード(*注釈1)、H・P・ラヴクラフト(*注釈2)、エドガー・ライス・バロウズ(*注釈3)を挙げているので、彼らの作品も一読してみるといい。特にハワードは歴史愛好家であり、代表作『CONAN(コナン)』の作品中では様々な古代国家が登場する。またその前史にあたる『KING KULL(キング・カル)』では、そのまま古代のアトランティス大陸を舞台としている。バイロンがそれらの幻想怪奇的な世界観を踏襲していると考えるのは、実に想像に難くない。実際、幻想文学及び「Sword and Sorcery(剣と魔法の物語)」の愛好家たちにとって、アトランティスやレムリア、ムーやハイパーボリアの名は酷く馴染み深いものだ。例えばエピックメタルの始祖であるマニラ・ロード(*注釈1)のマーク・シェルトンもハワードの熱烈なファンだが、バイロンとて例外ではない。最もバイロン自身は、H・P・ラヴクラフトの信者らしい。バルサゴスの第4作『『The Power Cosmic』や第6作『Chthonic Chronicles』から漂うコズミック・ホラー(宇宙的恐怖)の影響は、一部はH・P・ラヴクラフトの小説に由来するものだ。
──なるほど。バルサゴスの壮大な物語は過去の作家たちの作品を起源とするものだったんですね。
コスマン:そして、これまでにヘヴィメタルが伝統的なサウンドを重視してきたように、バルサゴスは幻想文学の神秘的な世界観、「剣と魔法の物語」の英雄叙事詩的な世界観の伝統を忠実に再現している。この手の探索者が求めるのは常に純粋な世界観なので、古い作家たちの小説を手本としたのだ。主にバルサゴスの詞世界はそこから形作られたものといえる。
──そうでしたか。本日はどうもありがとうございました。


2010年、5月号、『METAL EPIC誌:コラム・ザ・コラム』より



*注釈1:Robert Ervin Howard(1906 - 1936)。アメリカ、テキサス州出身の小説家。"ヒロイック・ファンタジーの生みの親"として認知され、20世紀を代表する作家の一人。代表作は『不死鳥の剣』、『魔女誕生』、『黒い予言者』、『影の王国』、『バル=サゴスの神々』等。
*注釈2:Howard Phillips Lovecraft(1890 - 1937)。アメリカの詩人、小説家。「コズミック・ホラー」の分野を開拓した事で有名。代表作は『クトゥルフの呼び声』、『インスマウスの影』、『狂気山脈』等。
*注釈3:Edgar Rice Burroughs(1875 - 1950)。アメリカの小説家。主に異世界を舞台とした様々な小説を発表した。代表作は『火星のプリンセス』、『類猿人ターザン』、『時間に忘れられた国』等。
*注釈4:Manilla Road。アメリカ、カンザス出身のエピック・メタル・バンド。エピックメタルの始祖の一つに数えられる。

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コメント
この記事へのコメント
はじめまして!

bal sagothは私の好きなバンドの一つです
ディスクユニオンで視聴してから一気にアルバム全購入しその世界観にどハマりしてます♪
2012/09/18(火) 01:48 | URL | TOFU #-[ 編集]
返信
未だ本国でバルサゴスのファンが点在していることを嬉しく思う次第です。多くの場合、ヘヴィメタルの作品はその特徴的なカヴァー・アートワーク(例えばアイアン・メイデンのアルバム・ジャケットなどが代表的です)のために一般層からは敬遠されがちですが、何かのきっかけで作品の内容を知ることができれば、以外にも最初抱いていたイメージとは違った解釈を得ることができるようです。無論、私たちは音楽の趣味を強要するようなことはしませんが、例えば今回のバルサゴスのように、新しい扉を開くきっかけが私たちには必要なのです...
2012/09/18(火) 15:35 | URL | コスマン・ブラッドリー #-[ 編集]
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