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Age of Return



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2005
Reviews: 82%
Genre: Epic Metal


キリスト教的宗教観に基づき古典的エピック・メタルを展開するイタリアの使途、マーティリアの2005年発表の2nd。


「我が神、我が神、何故私をお見捨てになったのですか。何故愛はこれほどまでに多くの苦痛を求めるのですか」
 ──"The Cross"より



プロローグ...
アンディ・メナリオ(Andy"Menario"Menariri:g、key)がダンウィッチ(DUNWICH)のメンバーとして2002年頃に成功を収める以前、マーティリアはマッシモ・ヴィンチェンツォ(Massimo Di Vincenzo)とアンディ・メナリオによって1987年のイタリアで結成された。アンディ・メナリオはウォーロード(WARLORD)やマノウォー(MANOWAR)などの80年代初期のエピックメタルの始祖から影響を受けたギタリストであり、当然の如くマーティリアの音楽性はそれらに類似したものを目標とした。即ち正統派エピックメタルのサウンドをである。この時期にマーティリアは『The Twilight of Rememberance』(1987)、『Gilgamesh Epopee』(1988)という2本のデモ・テープを制作。デモ・テープでは古典的なエピックメタルを標榜したが、時代のせいもあってか簡単には受け入れられなかった。ここからマーティリアは同郷のドミネ(DOMINE)と似た経緯を辿ることとなり、以後の10年間以上を暗い地下で過ごした。
アンディ・メナリオがダンウィッチでの活動で一応の成功を収めた後、2002年のイタリア・ローマでマーティリアの活動は再開した。バンドはデビューのためにメンバーを募ったが、ヴォーカリストの席は容易には埋まらなかった。翌年、2003年にアンディ・メナリオは元ウォーロードのリック・アンダーソン(Rick Anderson:vo)と出会い、マーティリアにとって最も相応しいヴォーカリストをバンドに迎えるという偶然とは思えないような出来事を経験した。この出会いこそはマーティリアの歴史において極めて重要な転機であり、また必要不可欠な出会いであった。かつてアンディ・メナリオが崇拝し、多大な影響を受けたエピックメタル・バンドの一つであるウォーロードのヴォーカリストをバンドに迎え入れるという出来事は、事実マーティリアのエピックメタルを完成させるうえで大きな位置を占めていた。
もう一つ重要な出会いがあった。リック・アンダーソンをマーティリアに迎え入れたのと同時期に、アンディ・メナリオはイタリアの詩人であり、作家であり、文芸雑誌『Progetto Babele』の創立者であるマルコ・ロベルト・カペリ(Marco R. Capelli)と出会った。マルコ・ロベルト・カペリの熱心な仕事に感銘を受けたアンディ・メナリオは、マーティリアの楽曲のためのすべての作詞を彼に依頼した。寛大なマルコ・ロベルト・カペリはこの依頼を快く承諾し、以後マーティリアの楽曲の作詞の欄には"マルコ・ロベルト・カペリ"の名がクレジットされるようになった。かくして、イタリアのローマ出身のエピックメタル・バンド、マーティリアはこの年にデモ『Celtic Lands』(2003)を発表する。
バンドとしての体制が遂に完成して順風満帆のマーティリアは、2003年のデモに引き続き、バンドの結成からおよそ17年目となる2004年に記念すべき第一作『The Eternal Soul』を発表した。ここまで辿り着くのに長い道程ではあったが、マーティリアの古典的なエピックメタル・サウンドはマニアを含む一部の層から絶賛され、その苦労は幾分か報われることとなった。そして、起動に乗った新しいバンドと叙事詩的な音楽の開けた可能性のために、マーティリアは活動を続ける道を選択した...


『METAL EPIC』誌より抜粋:



かつて我々は北欧ノルウェー出身の一部のブラックメタルに対し、真性の悪魔崇拝と反キリスト的思想を指してこれらを"本物"と形容した。同じくヴァイキングメタルにも"本物"は存在し、しばしその曖昧な定義が議論されてきた。一般的な正統派メタル──古典的であり、伝統的なヘヴィメタルを形容する際に用いられる言葉であり、現在の細分化したヘヴィメタルはすべてここから発祥したとされる──にも"本物"の定義は適用され、我々は何が「純粋なヘヴィメタル」の音楽性を正確に踏襲しているのか議論を重ねたが、結局は解答など得られなかった。
我々がよく引き合いに出す二言論を見詰め直すと、面白いことに、ヘヴィメタルにおける"本物"と"偽物"の討論には必然性があるように思われる。例えば、「善と悪の対立」は古くから英雄叙事詩の世界でも描かれてきた古典的な要素である。善は善のみでは必ずしも成立しない。こういった考え方は二言論に基づいたものである。ここでは、あらゆる物事が奇妙にも相対している様が我々の目に映る。その理論は正統派メタルとシンフォニックメタルに代表される対立にも適用されることとなり、ここでも相対する音楽性が対立の原因となっていることが判明する。正統派メタルではギターサウンドを重視した伝統的な音楽性が標榜され、一方でシンフォニックメタルではキーボードやオーケストレーションを主体とした斬新な音楽性が標榜される。上記の法則に従えば、正統派メタルが誕生したその瞬間にシンフォニックメタルの誕生も定まったことになる。正統派メタルに対し、相対する音楽性が後のシーンに登場してこないことは不自然な現象である。



冒頭に記述した通り、サタニックな真性のブラックメタルが存在しているように、クリスチャンな真性のエピックメタルも確実に存在している。そして、その事実を証明するのがイタリアのマーティリアの第2作『The Age of the Return』(2005)に他ならない。真性のブラックメタルでは異教徒極まる悪魔崇拝の様や黒魔術の行使、強烈なペイガニズムの思想などが楽曲中の歌詞に表現されているが、それと相反するように本作『The Age of the Return』では長大な神の教えを説いた聖書やイエス・キリストに代表される聖人伝を扱い、また創世記を描いたジョン・ミルトンの作品などに基づいた神聖極まる世界観が楽曲中の歌詞に表現されている。ここでマーティリアのキリスト教的世界観が歌詞のみに表現されていると断定するのは当然の如く誤った解釈であり、薄暗くカルト的なエピックメタルに表現された古代・中世の生々しい宗教観は迫真の描写力を備えて聴き手の脳髄を直撃する。マーティリアが用いたエピカルなギターソロや味付け程度のキーボードの旋律は、奇妙な魔力を放ちそれらの世界を現実に呼び覚している。また古典的なエピックメタルのためにリック・アンダーソンは素晴らしい歌唱を披露しており、地を這うような悠久の魂の言霊が聴き手を神秘的な世界へと誘っていく。間違いなくエピック・ヘヴィメタルの熱狂的な信者に限定されるが、本作『The Age of the Return』での驚嘆すべき神話の世界に触れる機会を得られたあなたは実に幸運である。ごく普遍的な一般人が本作に表現された歪ながらも芸術的な世界観を理解しようとすることは、矮小な鼠が冗長な文献を読もうとするようなことだ。



一先ず聖歌隊を起用したことは本作の成功のために必要なことであった。要所で厳かなエピック・クワイアを歌う聖歌隊は、マーティリアの荘厳な叙事詩的音楽世界の創造を手助けしている。またイエス・キリストの磔の様を描いた"The Cross"にゲスト参加したバーバラ・アンダーソン(Barbara Pride Anderson)とグレッグ・ギャモン(Gregg Gammon)は、迫真の演技で深遠な世界のために大きな貢献を果たしている。その他にもソロ・ヴォイスで本作にゲスト参加しているのはパウロ・ドリゴ(Paolo Drigo)だ。
然り、特筆して重要であるのは、ほぼすべての楽曲の要所に配されたウォーロードの様式美を彷彿とさせるアンディ・メナリオの劇的なギターソロである。本作では神聖なクワイアやキーボードの魅惑的な旋律が楽曲を表向きに装飾してはいるが、飽くまで楽曲の大半を占めているのは古典的なヘヴィメタルのサウンドと硬派なリードギターの地下の源泉より汲み出された薄暗い旋律である。これらの要素を払拭して深遠な叙事詩的音楽世界の構築は為し得ない。古くから、この尋常ならざる徹底振りこそが"本物"であるエピックメタルに求められきたのだ。
──カルト的な臭気を拭い去ることが到底不可能な『The Age of the Return』を受け入れる人間は限りなく少なく、またキリスト教徒だと思われるが、本作は不気味なまでに真性のクリスチャン・エピックメタル作品である。古代から続く宗教の暗い部分や深遠な領域に触れ、それを迫真のエピックメタルで表現したマーティリアの功績は計り知れない。後は我々に残された知的好奇心がそれらを発見するかどうかにかかっている。
ヘヴィメタルの歴史を遡れば、『The Age of the Return』のようなキリスト教的宗教観に基づいた作品が誕生することは運命であったのかも知れない。一先ず我々が述べることが出来るのは、今回はエピックメタルによって、紛うこと無き神の教えが実践されたということだ。



1. Last Chance
壮大なクワイアを用いたイントロダクション。クワイアに続くアコースティック・ギターの劇的な旋律がやがて聴き手を中世の世界へと誘う。
2. A cry In The Desert
イエス・キリストがヨルダン川で洗礼を受ける場面を洗礼者ヨハネ(John the Baptist)の視点から描いた楽曲。マーティリアの特異な音楽性を網羅した名曲であり、カルト・エピックメタルに相応のリック・アンダーソンの退廃的な歌声とアンディ・メナリオのエピカルなリードギターが崇高な聖書の世界を再現する。我々は神話の世界を壮大なものと思い込んでいるが、本曲で構築されているのは煌びやかな神々の世界ではなく、地を這うような薄暗いカルト宗教の類の世界だ。
3. Misunderstandings
極めて宗教的なリフによって劇的な世界観が構築される名曲。古代のムードに包み込まれ、歌劇を彷彿とさせるクワイアが聴き手の高揚感を次第に高めていく。古典劇風のキーボードの旋律も叙事詩的な世界観を構築するうえで一役買っている。本曲はエピックメタルの法則を完全に踏襲している。
4. The Giant And The Shepherd
古代イスラエル王ダヴィデ(David)の伝説を描く叙事詩。王に即位する以前、羊飼いであったダヴィデと巨人ゴリアテとの対決が記されている。バラード調で始まり、魅惑的なフルートの音色を用いた本曲は、次第に盛り上がる展開に導かれて叙事詩的なドラマ性を存分に発揮する。
5. Exodus
ユダヤ人をエジプトから救うモーセの聖人伝を描いた『出エジプト記(Exodus)』をモチーフとした楽曲。シリアスな世界観に相応しいリフとメロディの選択、後半からのドラマ性を考慮した展開などは良い。
6. Regrets
イエスのユダ(Judas)の裏切りを扱ったエピックメタル。中世風のアコースティック・ギターを用いたバラードである。暗く重苦しいカルト的な雰囲気が充満しており、その手のマニアにアピールする。
7. The Cross
およそ9分に及ぶ大作。イエス・キリストの磔の様を描く楽曲である。ゲストであるバーバラ・アンダーソンがマグダラのマリアの声を歌い、グレッグ・ギャモンがピーターの声を歌う。長尺な内容の中に静寂と深遠なドラマ性を宿し、聴く者に得体の知れない感銘を与える。後半ではエピカルなギターソロが幾度も繰り返される。本曲に表現されているのは、宗教が放つ異様な熱狂以外の何物でもない。
8. So Far Away
印象的なメロディを配した正統派エピックメタルの名曲。高度なドラマ性とシリアスな世界観を合わせ持つ。マーティリアはオーソドックスなエピックメタルを作ることも可能なバンドだ。
9. Hell Is Not Burning
サタンの堕落を扱った叙事詩。薄暗いリードギターのメロディが炸裂し、後半にかけて大仰に展開する。
10. Memories Of A Paradise Lost
ジョン・ミルトンの『失楽園(Paradise Lost)』で描かれているアダムとイヴの神話的な逸話を叙述する。ギターソロを効果的に用い、劇的な冒頭より開始する。
11. Revenge
大仰な内容を持つ楽曲。劇的な構成を有し、カルト・エピックメタルの可能性を広げる。ここまで一貫して宗教的な世界観が継続されている点は素晴らしい。
12. The Age Of The Return
突出した完成度を誇るタイトル・トラック。伝統的なヘヴィメタルのサウンドとエピカルな側面を共存させる。コーラス・パートにかけて宗教的なクワイアを配し、クリスチャン・エピックメタルの真髄を発揮する。



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