Epic Metal; Review Fan Site.
© 2010-2017




ナイト・アット・ジ・オペラ



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 2002
Reviews: 89%
Genre: Epic Power Metal


ブラインド・ガーディアンの2002年発表の7th。


「そしてそこには静寂が訪れた」
 "And Then There Was Silence"より


メロディック・パワーメタルを基盤とする欧州のエピックメタル勢の中で、ドイツのブラインド・ガーディアンが明らかに抜きん出た存在であることは、既に我々が承知している事実である。その孤高とも表現できる圧倒的な実力を証明したのが前作『Nightfall In Middle-Earth』(1998)であり、トールキンの『シルマリルの物語』を題材とした本作は一大コンセプト・アルバムとして発表され、ブラインド・ガーディアンの持つ極めて高いポテンシャルをファンに知らしめることとなった。当然の如く、ブラインド・ガーディアンの発表する次回作への期待は大いに高まったが、前作からおよそ3年の歳月を経て我々の元に届けられたのは、『And Then There Was Silence』という名の一枚のシングルであった。

ブラインド・ガーディアンのファンは長い間待たされたことになるが、その忍耐を軽く凌駕する濃密な時間が『And Then There Was Silence』には収められていた。古代ギリシャのトロイア戦争をモチーフとしたこの楽曲は、およそ14分に到達する超大作であり、これまでにブラインド・ガーディアンが行ってきたことの集大成に等しかった。この空前絶後の大作の発表に我々は息を呑んだが、その翌年に発表された第7作『A Night at the Opera』は更に素晴らしい内容を持った作品であった。

いかなる分野であれ、極めればそれなりの結果が得られるものだが、ブラインド・ガーディアンが追求してきたエピックメタルの世界は極めれば極めるほど輝きを増していった。一般的に『Somewhere Far Beyond』(1992)、『Imaginations From The Other Side』(1995)、『Nightfall In Middle-Earth』という名作を矢継ぎ早に世に送り出したブラインド・ガーディアンのサウンドは極め尽くされたものだと考えられていた。しかし、その安易な推測以上に、エピックメタルにはまだ可能性が残されていたのである。

『A Night at the Opera』──この途轍もないエピックメタルの一大傑作は、ブラインド・ガーディアンが到達する最終的なサウンドを雄弁に物語っている。恰も螺旋の如く絡まる大量の音像は、荘厳なオーケストレーション、濃厚なクワイアと混ざり合い、巨大な円形闘技場で巻き起こる喝采の如く大気を振動させている。叙事詩的な題材を扱った個々の楽曲群は、既に視覚を刺激する段階にまで上り詰めた迫真の表現力を備えたものであり、脈動する巨大なダイナミズムが聴き手を絶えず圧倒し続ける。ドラマ性を追求した果てに表現された劇的な展開と緻密な楽曲の構成は、もはや過去のブラインド・ガーディアンの比ではない。我々はここに断言するが、本作を超えるブラインド・ガーディアンのエピックメタルのサウンドはこの先誕生しない。ブラインド・ガーディアンは自らのエピックメタルを究極的にまで完成させてしまったのだ。そうでなければ、我々が本作にこれほどまでの称賛を贈ることはまずないであろう。それとも我々は、単に感受性が鈍ってしまっただけなのか?



1. Precious Jerusalem
キリストが砂漠で神と出会う神秘的な場面を歌ったオープニング・トラック。次々と繰り出される濃密なクワイアが聴き手を圧倒する。聴き込めば、その音の奥深さに驚かずにはいられない。特にサビのクワイアの処理は凄まじい。
2. Battlefield
ドイツ最古の英雄叙事詩『ヒルデブラントの歌(Das Hildebrandslied)』を題材としたエピックメタル。ヒロイックなエピック・パワーメタルの傑作であり、勇壮な曲調が高揚感を一気に高める。父親が騎士道精神のために挑戦する息子を殺めるという悲劇的な内容であるにも関わらず、本曲の大仰な内容は宮廷騎士の行軍の様を思わせる。
3. Under The Ice
"And Then There Was Silence"と同じテーマのもと制作された楽曲。預言の如くトロイアは陥落したが、カサンドラは戦争を生き延びた。甲高いサビのクワイアが芸術的に響き、全体を古代風の重厚なムードが覆う。
4. Sadly Sings Destiny
信者に崇められるキリストの宿命を歌う。意表を突くリズムなどモダンな要素が顕著だが、シリアスさや緊張感は失われていない。
5. The Maiden and The Minstrel Knight
中世の雰囲気漂う英雄的なバラード。「アーサー王物語」の一部でもある騎士トリスタンの物語『トリスタンとイゾルデ』を扱う。本曲でブラインド・ガーディアンは、この美しくも悲劇的な愛のロマンスを感受性豊かに描いている。内容はまるで中世の宮廷で詩人が物語を歌っているかのようである。弦楽器が奏でる儚げな旋律は思わず感銘を誘う。トリスタンがイゾルデへの愛を貫いたように、サビの壮大なクワイアは高貴な勇気で満ち溢れている。
6. Wait For An Answer
オスカー・ワイルドの『ドリアン・グレイの肖像』をモチーフとした楽曲。複雑な展開を持つ箇所はプログレッシブでもある。
7. The Soulforged
テーブルトークRPG『ダンジョンズ&ドラゴンズ(Dungeons & Dragons)』の世界を小説化した『ドラゴンランス』をモチーフとした楽曲。邪悪な魔術師であり、ドラゴンランスの象徴的存在である登場人物のレイストリンを主人公としている。ブラインド・ガーディアンのファンタジックな手法が爆発した名曲であり、壮大なクワイアとメロディックなフレーズを有している。
8. Age Of False Innocence
イタリアの哲学者ガリレオ・ガリレイを描いた楽曲。天文学者でもあったガリレオの葛藤を描いている。知的なピアノの旋律が印象的。
9. Punishment Divine
ドイツのニーチェを題材にした楽曲。圧倒的なスピード感を持ち、徹底したアグレッションを叩きつける。勇壮なサビは流麗。
10. And Then There Was Silence
ブラインド・ガーディアンが放つ史上最大のエピックメタル大作。神話と化したトロイア戦争をカサンドラが物語る。オペラの如き劇的な場面展開を多用し、エピック・クワイアが怒涛の迫力で繰り返されていく。特筆すべきサビのクワイアが放つスケール感は映画音楽の域に達しており、尋常ならざるヒロイズムで聴き手を圧倒する。ブラインド・ガーディアンが過去に古代ギリシァをテーマにした楽曲は殆ど存在していないが、本曲に表現された内容は完全にそれらを再現している。聴き手を選ぶことは確実だが、この大胆な挑戦はエピックメタルにおける前代未聞の超大作を生み出したことになろう。
11. Harvest of Sorrow
ボーナス・トラック。前作に収録されるはずであった楽曲のアコースティック・ヴァージョン。



Click Ranking for epic metal!

にほんブログ村 音楽ブログ HR/HMへ
にほんブログ村
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://cosmanbradley.blog129.fc2.com/tb.php/437-3eac277f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック