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ナイトフォール・イン・ミドル・アース



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 1998
Reviews: 88%
Genre: Epic Power Metal


ブラインド・ガーディアンの1998年発表の6th。


「鏡また鏡。目の前の壁に」
 "Mirror Mirror"より


プロローグ...
1988年のデビュー以来、飽くなき探求心でファンタジックなヘヴィメタルを追求してきたドイツのブラインド・ガーディアンは、前作『Imaginations From The Other Side』(1995)でその幻想文学にも通じる世界観を極めた。90年代半ばのヘヴィメタル低迷期に発表された本作は、ブラインド・ガーディアン独自のファンタジー観と徹底した大仰なアレンジが細部にまで施された充実した内容を誇り、間違いなくブラインド・ガーディアンのキャリアにおける最高傑作に相応しかった。
歌詞の面でも飛躍的な進歩を遂げた『Imaginations From The Other Side』では、エリック・ヴァン・ラストベイダーの小説や十字軍の伝記の他に、中世文学の世界では馴染み深い「アーサー王物語」に関する伝説を取り上げるなどの意欲的な試みも実行された。加えて歌詞に忠実な中世音楽の新しい要素も導入されることとなった。当然の如くこの試みは成功し、メロディック・パワーメタルから開始されたブラインド・ガーディアンのエピックメタルは、唯一無二の強烈な個性を獲得するに至ったのであった。欧州中世の持つ幻想的な世界観とメロディックなエピック・パワーメタルの劇的な融合──読んで文字の如く、ブラインド・ガーディアンはその手法を極めたのであった。
1996年に発表された企画盤『The Forgotten Tales』を経て次にブラインド・ガーディアンが本格的に取り組んだ作業とは、デビュー以来一貫して追求してきたJ・R・R・トールキンの『指輪物語』を題材とした壮大なコンセプト・アルバムを作り上げることであった。実に不思議なことに、これまでの作品でブラインド・ガーディアンはトータル的なコンセプト作品を制作していなかった。今やトールキンのファンタジー小説を題材としたヘヴィメタル作品などは世に溢れているが、我々はブラインド・ガーディアンの楽曲以外に相応しいものはないと考えている。今でも第3作『Tales from The Twilight World』(1990)に収録された"Lord of the Rings"は、当時における『指輪物語』を題材とした楽曲の最高峰なのだ。


『METAL EPIC』誌より抜粋:

満を持して1998年に発表されたブラインド・ガーディアンの第6作『Nightfall In Middle-Earth』は、トールキンの『シルマリルの物語』の『クウェンタ・シルマリルリオン(Quenta Silmarillion)』を題材にした一大コンセプト・アルバムとなった。歌詞は熱狂的なトールキンのマニアとしても認知されているハンズィ・キアシュ(vo)が手掛け、一部では専門家の助言も取り入れることに成功した。
今回は敢えて有名な『指輪物語』を外し、ファンタジー神話の第一記に焦点を当てたことが、ブラインド・ガーディアンというバンドの本質を伺わせるものとなっている。なぜなら、この物語はあまりにも複雑に絡み合っており、本作の内容は我々ですら理解できない寓話的な領域に到達しているからである。また膨大なページ数を有する『シルマリルの物語』の原作は、迂闊に手を出したら部屋に缶詰にされることになりかねない代物である。故に我々はエピックメタル作品に対し本来行うべきであるはずの歌詞の分析を、今回は敢えて最小限に止めるよう気を付けている。難解を極める解説は、本作の良さを引き出すことにはならないと我々は判断したからである。


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本作で題材となっている『クウェンタ・シルマリルリオン』とは、トールキンの創造した中つ国(Middle-Earth)を舞台とした一連の物語のうち、創世神話である『アイヌリンダレ(Ainulindalë)』、神々の盛衰を描く『ヴァラクウェンタ(Valaquenta)』に続き開始される物語である。物語で描かれているのは主に大宝玉シルマリルを巡るエルフ・人間と冥王モルゴスとの戦争であり、モルゴスがフェアノールの元からシルマリルを奪ったことから物語は始まる。ここではシルマリルとは「至福の地」アマンの地のヴァリノールで輝いていた二つの木の光を封じ込めた三つの宝玉のことを指している。

『Nightfall In Middle-Earth』で描かれているように、この戦争で多くの悲劇が生まれ、多くの死が訪れた。最終的には壮麗なる王国ゴンドリンの生き残りである王子エアレンディルが冒険の果てにアマンに辿り着き、ヴァラール──アイヌアのうちで最も強力な存在──に助力を乞い、その願いを聞き入れたヴァラールの軍勢によって強大なモルゴスは遂に打ち破られるが、本作では完全に物語を最後まで描いてはいない。しかし"Final Chapter (Thus Ends...)"の語りで隠れた王国の最後の希望エアレンディルと、明けの明星となって輝く彼の運命が示唆されている。詰まるところ、本作で敢えてブラインド・ガーディアンは闇の勝利という陰惨な場面で物語を終わらせているが、最終的には光が勝利を収めるのだ。

ここで描かれたことは一般的な我々の知識の範囲では到底理解できるものではないが、本作はブラインド・ガーディアンにとっては必然的な作品であったと断言せざるを得ない。ブラインド・ガーディアンの楽曲の中には膨大なコンセプトの材料が眠っており、それを一度に開放する機会が必要であったのだ。この『Nightfall In Middle-Earth』はまさにブラインド・ガーディアンのファンタジーに対する探求心が爆発した傑作であり、素晴らしい名曲を幾つも含んでいる。"Into the Storm"、"Nightfall"、"Mirror Mirror"などの名曲たちは、今後もファンタジー・メタルの愛好家たちに末永く愛されていくことであろう。

本作は全体的にも非常に上手く構成されたコンセプト・アルバムとしても間違いなく突出しており、トールキンの小説を題材としたエピックメタル作品の中では随一の完成度を誇っている。徹底した場面展開と原作の忠実な再現力には終始驚かされるものがある。本作の評価でよく耳にするように、小曲が多いという声や、インストゥルメンタルでアルバムが埋め尽くされているという意見は、コンセプチュアルなヘヴィメタルの美学に対する理解力の乏しさが生んだ誤解に過ぎない。ブラインド・ガーディアンが本作のライナーノーツで物語の詳細な解説をしていない点には未だに不満が残るが、我々がここまで緻密に設計されたコンセプト作品を見るのは極めて稀なことである。



1. War of Wrath
冥王モルゴスと下僕サウロンの語りから始まるイントロダクション。これまでにモルゴスは光に二度破れ、二度勝利している。果たして次はどちらが勝利を手に収めるか。これから中つ国でエルフ・人間とモルゴスの間で壮大な戦争が起こる。
2. Into the Storm
シルマリルを持って光から逃れるモルゴスと闇の従者たち。本曲はファンタジックなエピックメタルの完成形である。荘厳かつ幻想的なクワイアが高揚感を強烈に鼓舞し、劇的なメロディを持つツイン・リードがエピカルなサビに加わる。
3. Lammoth
SEによるインストゥルメンタル。
4. Nightfall
哀愁を誘う壮大なクワイアが印象的な楽曲。ノルドール王フィンウェを殺したメルコール(モルゴス)に復讐を遂げるため、ノルドールを率いてフェアノールが中つ国へと旅立つ経緯が叙事詩的に語られる。様々なコーラスの掛け合い、印象的なサビのメロディは感動を呼ぶ。幻想文学の世界観が芸術的に再現されている点は素晴らしい。
5. The Minstrel
民謡調の小曲。アマンの地の遥か彼方の海の向こうには中つ国があるという。
6. The Curse of Feanor
フェアノールは執拗にモルゴスに復讐を果たそうとするが、一族はその道連れとなる。彼の強力な意志は"フェアノールの呪い"となり、フェアノールの死後も一族を終わりなき宿命で苦しめていく。劇的な緩急に富む展開は、サビの放つ高揚感で頂点に達する。
7. Captured
モルゴスによって捕らえられた者たち。
8. Blood Tears
友フィンゴンを失ったマイズロスの悲しみを歌う。サビのクワイアは恰もマイズロスの涙のように濡れている。悲劇的な場面が容易に想像できる楽曲の迫真性は驚嘆に値する。
9. Mirror Mirror
ブラインド・ガーディアンの楽曲の中でも史上最高と謳われる名曲。フィンロドとトゥアゴンが水の王ウルモの啓示を受け、隠れ王国──ナルゴスロンドとゴンドリン──を建国する経緯を描く。ヒロイックなムードを発散する疾走が叙事詩的なクワイアに導かれ、終始劇的に展開する内容を有する。勇壮さを極めるサビのクワイアはブラインド・ガーディアンの集大成に等しい。
10. Face the Truth
語り。月に僅かな希望が輝く。
11. Noldor (Dead Winter Reigns)
幸福を捨て去り中つ国へと旅立ったノルドールの悲劇的な運命を物語る。ゆったりとしたテンポで進み、壮大なサビへと続く。
12. Battle of Sudden Flame
笛の音色を用いた語り。
13. Time Stands Still (At the Iron Hill)
伝説として名高いノルドールの上級王フィンゴルフィンとモルゴスの決闘を描いた英雄叙事詩。ヒロイックな世界観を構築するアグレッシブな名曲であり、戦意を鼓舞するかのような劇的なクワイアが繰り広げられる。本曲が持つ圧倒的な臨場感は、フィンゴルフィンとモルゴスが対峙する場面の壮絶な緊張感を完全に再現している。なおこの場面はジョン・ハウ(John Howe)がファンタジー絵画として描いたものが残されている(*画像上)。
14. The Dark Elf
光に忍び寄る暗い影を暗示する短い言葉。
15. Thorn
フィンゴンとマイグリン。異なる二人の英雄の行く末がゴンドリンの運命を握る。楽曲の陰惨なイメージが示しているように、やがてマイグリンは同胞を裏切り王国には悲劇が訪れた。ピアノの旋律を効果的に用いている点も好印象である。
16. The Eldar
悲壮感に満ちたバラード。戦いで死んだエルフはようやく故郷の地へと帰ることが出来る。
17. Nom the Wise
「人間の友」フィンロドの死。"ノーム(Nom)"とはフィンロドがベオルの民に呼ばれていた時の名である。
18. When Sorrow Sang
不滅の愛を歌う。メロディック・パワーメタル的なスピード感が発散される楽曲。疾走に鮮やかに乗る勇壮なメロディは秀逸。
19. Out on the Water
悲劇的な短いコーラス。
20. The Steadfast
勝利者モルゴスの語り。
21. A Dark Passage
6分に及ぶ最終的な楽曲。光を打ち破り五度目の戦いに勝利したモルゴスが、歓喜の中で自らの絶対的な権力を主張する。長い物語に終わりを告げるように、静と動を使い分け、クワイア・パートでは壮大に盛り上がる。闇の勢力の勝利により、楽曲の終わり方には不穏な雰囲気が漂っている。
22. Final Chapter (Thus Ends...)
最後の語り。語り部は希望が滅亡したゴンドリンの王子に残されていると言う。



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コメント
この記事へのコメント
このアルバム…好きです。
今日も聴きました。
2012/04/20(金) 18:48 | URL | ma shanti mika #-[ 編集]
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