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Black Light Bacchanalia



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2010
Reviews: 88%
Genre: Epic Metal



揺るぎなき王座に鎮座するエピックメタル・シーンの帝王、ヴァージン・スティールの2010年発表の12th。


エピックメタルの始祖の一柱であるアメリカのヴァージンスティールについて、我々はその歴史を追求し続けてきた。絶え間なき尽力と苦労によって、叙事詩的なヘヴィメタルという偏った研究分野の資料はある程度は完成したものの、老いてなお盛んなヴァージンスティールを完全に総評し尽くしたわけではなかった。我々は様々な記憶を振り返る。恰も文明の興亡の歴史を垣間見るかのように。終わりなき探求の過程において我々が下した判断は、ヴァージンスティールこそがエピックメタルの最重要バンドであるという事実であり、ヴァージンスティールを差し置いて真のエピックメタルファンが聴くに値するバンドは存在しないということであった。ヴァージンスティールは今なお、未来へと突き進む知性の進化であるように、ゆっくりとではあるが前進を続けている。
創世記の時代に神に反逆した女性リリスを扱った前作『Visions of Eden』(2006)は、その年のエピックメタル・シーンにおける最大級の成功を収めた。ファンの求める方向性に加え、既存の音楽という分野を超越した叙事詩的な大作『Visions of Eden』は、各方面から芸術の域に達したエピックメタル作品であると絶賛された。それは、バンドの結成からおよそ25年以上経過しようとしているヴァージンスティールが現在も創作意欲に満ち溢れ、確固たる実力を所持していることの証明に他ならなかった。当然の如く次回作への期待は高まったが、リリス・プロジェクトが完結していないのに加え、傑作である『Visions of Eden』の唯一の問題である音像の改善点などが徐々に浮き彫りになっていった。足早にヴァージンスティールの新作はリリスの続編であるとも吹聴されたが、結果的に発表された作品は別の内容を持っていた作品であった。
ここに発表された第12作『Black Light Bacchanalia』は、前作での失敗を考慮し、若かりし頃のアグレッションに満ちた作品となった。デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key、b)が尊敬してやまないレッド・ツェッペリンに最初に見出した音楽性をヒントに原点回帰した本作は、従来のヴァージンスティールの世界観を踏襲しながら、実に充実した攻撃性とドラマ性を宿したエピックメタルの傑作に仕上がった。前作でも密かにプレイしていたジョシュ・ブロック(Josh Block:g)を新たなメンバーに迎た新生ヴァージンスティールは、順風満帆であるばかりか、更なる進化を遂げていることは明白な事実である。
本作ではリリスの続編的な物語も各所に導入されるが、前作や伝説的な「マリッジ三部作」の根底にあったグノーシス主義的な思想に触発され、その二言論が指し示す"善"と"悪"の対極の世界観であるように、キリスト教と古代宗教の因果関係について歌われていく。我々がよく指摘するロバート・E・ハワードの<古き世界>と<新しき世界>やマイケル・ムアコックの<秩序>と<混沌>の対立のように、文明と未開の宿命的な関係性を描くことは、エピックメタルが長らく用いてきた世界観であり、ヴァージンスティールが題材にすべき意味深な内容であった。ヴァージンスティールは緩急に富む劇的でヒロイックなエピックメタルを用い、それらの世界を野蛮にして繊細な描写で描いている。
ノルウェーのハラルド美髪王がキリスト教に改宗したように、古代から続く対立は今なお各地の辺境で続いている。元来古代宗教は力を握っていたのだが、新興勢力であるキリスト教によって弾圧さた歴史を持ち、文明圏の民衆に異教と解釈されて久しい。ここに来て我々は、古代の英雄譚を思い出さなくてはならない。過去に崇拝された英雄が最初から人間であったように、古代宗教も決して最初は異教などではなかったのである。歳月の経過は様々な変化を齎す。潔白な文明人によって、次第に古代の信仰は唾棄すべきものであると考えられていったのである。人類の歴史とは過ちを繰り返した上に成り立っている。
叙事詩を描くことに長けるヴァージンスティールが新たに描き出した古典的な逸話に対し、我々は何を感じ、何を得るであろうか。理解力のある人間であるならば、我々の属する既存の世界がある一種の法則に縛られていることが分かる。饗宴にあやかる野蛮人のようなヴァージンスティールの傑作『Black Light Bacchanalia』は、その知識を押し広げるきっかけでもあるのだ。



1. By The Hammer Of Zeus (And The Wrecking Ball Of Thor)
ゼウス(ギリシア神話)とトール(北欧神話)の槌を掛けた名曲。前作の"Immortal I Stand(The Birth Of Adam)"に連なる構成を持ち、流麗なエピックメタルの美学が光る。サビの強烈なシャウトの放つ攻撃性は、ヴァージンスティールに野蛮さが戻ってきたことを雄弁に物語っている。
2. Pagan Heart
魔女裁判の業火であるように、異教徒の精神が失われていく悲劇を物語る。エピカルなリフを刻みながら、シンフォニックなフレーズが繰り返される。暗く悲壮感に満ち溢れているのは、シリアスな楽曲の題材を考えれば当然の成り行きであろう。
3. The Bread Of Wickedness
リリスに関連する楽曲。スピーディなエピックメタルでかつ印象的な旋律を含みながら、従来のヴァージンスティールよりシンプルにまとまっている。サビの哀愁を纏った飛翔感は素晴らしいし、もう少し練ることができたのならば名曲になっていたかも知れない。厳かなエピックメタルの雰囲気は相変わらず。
4. In A Dream Of Fire
アダムの最初の妻であったリリスとの再会。神秘的なピアノに絡むヴァースラインが印象を強める。速度を増すサビは高揚感に満ち溢れてはいるものの、どこか悲壮感が漂う。恰もそれが創世記の悲劇であるかのように。
5. Nepenthe (I Live Tomorrow)
最愛のものを失った深い悲しみ。最初の人間らも今の我々と同じ感情を持っていたのである。ヴァージンスティールの楽曲中、最高の位置に属するエピック・バラードの名曲であろう。静寂に満ちた雰囲気がサビで壮大なスケール感に包まれる様は一聴の価値あり。
6. The Orpheus Taboo
攻撃性に富んだ大作。前作でのギターやドラムの音が軽いといった批評は、ここで改善された感がする。伸びやかにドライヴするエピック・リフはヴァージンスティールらしい。本作は一部で冗長過ぎるとの酷評を受けているが、この楽曲に関しては後半に劇的な展開を有している。
7. To Crown Them With Halos Parts Ⅰ & Ⅱ
天使のような美旋律を持つ名曲。まるで過去の名曲"Crown Of Glory (Unscarred)"のように幕開ける。劇的なヴァース部分に他ならず、讃美歌調のサビのメロディの持つ神秘性には思わず耳を疑う。ただクワイアを重ねただけの大仰なシンフォニックメタルでは、絶対にこのような深遠極まる旋律は生まれてこない。これで後半の冗長な部分を削っていれば、間違いなく神曲になったであろう。
8. The Black Light Bacchanalia (The Age That Is To Come)
古代ローマのワインの神バックス(Bacchus)を称える酒宴の踊り、それがバッカナリアである。恐らくディファイは神聖な祭典ではなく、一種の饗宴の様を表す引用としてこの言葉を引っ張って来たのであろう。例えるなら、神妙な神々の祭壇で狂気する野蛮人のそのあり様である。黒々としたリフ、不穏な歌い出し、ロマンティックなサビへの劇的な転調といったエピックメタルの基本を押さえている。
9. The Torture's Of The Damned
従来の古代ギリシア・ローマ風の旋律を徐々に盛大に盛り上げていく楽曲のように聞こえるが、実はリリス関連の楽曲。短くも古典劇の音楽であるような、歴史感の漂う壮大な雰囲気が素晴らしく視覚を刺激する。
10. Necropolis (He Answers Them With Death)
ネクロポリスとはギリシア語で"死者の都"。一方、アクロポリス(Acropolis)とは地上の人々──実際にはパルテノン神殿のような高い場所に住む人々──のことを指す。アグレッシブな曲調のスピード・エピックの傑作であり、本作の中でも特筆して完成度が高い。サビ部分でのフランク・ギルクリーストのドラムプレイは非常に強烈。これはフランクが紛れもないドラムの名手であることを証明している。
11. Eternal Regret
神の後悔。神と最初の人間らの生み出した悪しき感情から7つの大罪が生まれたように、狂った歯車はもう戻ることはない。バラード調の神秘的な名曲であり、人間の潜在的な部分を刺激する意味深な旋律を含んでいる。本曲は特に異様な雰囲気を醸し出しており、得体の知れない感情を掻き抱かせる。この神聖な世界観を堪能するために、我々はヴァージンスティールの楽曲を拝聴し続けてきたのだ。これまでも、これからも。



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