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Column the Column

volume 4. 23 October: 2010


2010年10月第4号、前号の続き...


Act Ⅱ:


クリス・マスティメノン:《善》と《悪》、二元論、グノーシス思想、対極……確かにこれらはヘヴィメタルの、最も奥深くの潜在的な領域に及ぶためには重要な概念だ。ここでいうヘヴィメタルの潜在的な領域とは、決して具体的なものではなく、何故私達がヘヴィメタルの分野に辿りついたのか、何がヘヴィメタルに対し人類を結び付けていったのか、という抽象的なものに過ぎない。しかし一方で、不鮮明なこの領域は、私達にとっての超越的な探究の最終的な終着点とも成り得るだろう。私達は無意識のうちに多くの物事を決定するに及んでいるが、その根底に隠されているヘヴィメタルの原始的な起源をもう一度探らねばならんようだ。そうすることで、私達の探究は首尾よく遂行される。
コスマン・ブラッドリー:そうだ。第一にヘヴィメタルの世界はとてつもなく巨大なものだ。無論これは、市場的な意味ではなく、思想、想像の領域においてのことだ。いい例がある。アイルランドの幻想作家ロード・ダンセイニはかつてこういった「人間の世界で最も巨大なもの、それは人間の夢である」その言葉が正しいのであれば、ヘヴィメタルの内包する巨大なスケールは、人間の夢想的な部分から生じているのではないか。思い出して頂きたい、ヘヴィメタルに描かれてきた様々な世界のことを。ブラック・サバスの悪魔崇拝に始まり、ディオの中世の幻想世界、アイアンメイデンの神秘主義的な世界、果てはバルサゴスの異世界にまでその範囲は及んでいるという事実を。現実の常識を逸した要素や禁じられた世界を描くこと、その行為には諮らずも夢想的な願望が込められている。私は、人間の夢そのものがヘヴィメタルという地下の音楽をここまで巨大化させてきたのではないか、と思っている。単にその夢とは、金や女、社会的な地位や権力を得るという物理的に偏った概念ではなく、アストラル界の如く地球全体を包み込む膨大で不鮮明なものだ。彼らの見る夢は、クラーク・アシュトン・スミスが「謳う焔の都」で訪れた異次元の理想郷イドモスや、マイケル・ムアコックの「永遠の戦士」に登場する平安の都タネローンを形成した、漠然とした概念に近いと私は睨んでいる。これについては是非あなたの意見を伺いたいところだが……。
クリス・マスティメノン:人間の夢がヘヴィメタルを想像したという仮説については、大胆な発想と言わざるを得んな。信憑性を欠いておる。しかし現実では禁じられている要素──最もそれは一般論的に禁じられているにすぎないのだが──をメタルの世界が積極的に取り入れているという意見に対しては、大いに納得できる部分があるが。例えば博士も例を挙げたブラック・サバスの悪魔崇拝だ。これはキリスト教世界では絶え間なき冒涜行為として映る。しかし、その行為を分別のある大人がやったのだとすれば、何かしらの意図が隠されていると推測することは容易だ。もちろん、ヘヴィメタルの世界の人間が狂信者というわけではないぞ。彼らは自由な意志で、自らの信仰を選択したのであって、単にそれが社会的に邪悪と決めつけられているものだった、ということに過ぎん。要は、悪魔崇拝者が悪魔崇拝者として行った正統な行為──教会の放火、生贄、黒魔術──を、一般人が上辺のみをなぞってやみくもに避難しておるだけなのだ。ただそれを夢と関連付けるのは、突拍子もないと私は思うがね。それらは夢想的な要素ではなく、現実に起こっている事実だ。また、ヘヴィメタルが創造された経緯についてだが、実際の歴史はきちんと年代記に収められてはいるが、精神的な起源に関しては個々のバンドに頼ることが大きい。精神面は後になって形成されていったものなのだよ。まずヘヴィメタルというサウンドが確立され、その後で、博士のいうような独自の世界観が発達していったのだ。今は個性的なヘヴィメタルも、創造初期には"金とドラック"、"セックスと女"のロックンロールと似通っておった。
コスマン・ブラッドリー:しかしどうだろうか。例えサウンド面が最初に形成されたとしても、ヘヴィメタルの内面的な部分は音楽性をも上回るはずだ。それに創造初期のメタルを一概に普遍的なロックンロールと関連付けるのにも、私は疑問だ。確かにあらゆるメタルバンドにはロックの典型的な要素──反骨精神や攻撃的なサウンド──が垣間見れるが、それは宿命として、純粋にメタルとして精神的な分野及び音楽的な分野を捉えた場合はどうだろうか。ヘヴィメタルが産声を上げた時"金とドラック"、"セックスと女"の無知な時代は終わったのだと、私は考えている。80年代初期にはエピックメタルの始祖となるバンド──マノウォー、ヴァージンスティール、キリス・ウンゴル、マニラロード等の極めて叙事詩的なメタルバンド──も登場しているうえ、既にその頃から、ヘヴィメタルの世界が独自の創造性と知的なインスピレーションを持って独立し始めていたと考えることが正しい。その後ヘヴィメタルが個々の存在へと発展していったのは事実明らかであり、ロックンロールは、ヘヴィメタルが構成されるための基盤でしかなかった。どのような音楽にも、構築基盤とは必要不可欠だからだ。それにヘヴィメタルの背景にあるのは、クトゥルー神話にも匹敵する巨大な体系だということを念頭に置いて頂きたい。先程述べた《善》と《悪》の二つの概念にしても途方もなく壮大なものだが、これら対極にある力の集約点を、ヘヴィメタルに置き換えることが可能なのだ。それこそが、エピックメタルとブラックメタルだ。ブラックメタルは極限の《混沌》を追求し、一方で、エピックメタルは整然と構築された《秩序》を追求している。ヘヴィメタルの極端な追求性は驚くほど二元論に類似しているということに、多くの者達は気付いていないのだ。微小な懐疑の感情が混入してしまったために、あなたはヘヴィメタルに隠されている広大な領域から、真相の目を逸らしてしまっていたのだ。
クリス・マスティメノン:《混沌》と《秩序》、宇宙が誕生した時に誕生したと仄めかされる究極的な二つの力か。かつて私も聞き及んだことがある。途方もない勢力であるこれらが、ヘヴィメタルの根底にあるとはなんとも信じがたい仮説ではあるが、実に興味をそそる話ではあるな。私が僅かな間でも非難すべき懐疑主義に捉われていたことは認めよう。そもそもヘヴィメタルとは、あらゆる音楽のジャンルを差し置いて神秘的であり、カルト的だった。人々を所属させる魔力があり、宗教の如く熱狂的な信者を生む力がある。とにかくヘヴィメタルにアウトサイダーが引きつけれらるのは確かであるな。私達がそうであったように。
コスマン・ブラッドリー:そう、その人智を超越したともいえる宇宙の誘引力が私達探索者をヘヴィメタルに引き付け、幾多もの発展をさせ、それを伝えることを神によしとされたのだ。私の最終的な見解はこうだ──宇宙の深淵の知性が人類の原始的な衝動と奇妙な方法で結びつき、久遠の歳月と進化の過程を経て、それを表現する方法の一つの分野を発見するに至った。それがヘヴィメタルだ。
クリス・マスティメノン:つまりは、ヘヴィメタルこそが人類の最も幼い衝動を開放することが出来るというわけであるな。私達がヘヴィメタルに辿りついたのは必然的だったと。人間の理解できない不思議な力が、私達のような探索者の中に眠っていた潜在的な本能と結び継いだのだと。その本能とは、怒りという人類にしか感じることのできなかった天武の感情であり……。
コスマン・ブラッドリー:そして、人類の普遍的な感情と知性を受け継いだ私達は、僅かながら天に至る道を見出した者として、新たに生み出されたメタルという意思表現に追従し、これからも讃美し遺産を残していくことだろう。詰まる所、ヘヴィメタルとは、原始的な私達の先祖が壁に文字を刻みこんだ時と同じ感情を、今も持っているのだ。生存という、ただ一つの本能に従いながら。



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