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The House of Atreus Act I



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1999
Reviews: 90%
Genre: Epic Metal



エピックメタルの始祖、ヴァージン・スティールの1999年発表の通算9枚目となるアルバム。

古代ギリシャの劇作家アイスキュロスのオレステイア(The Oresteia)の3部作のうち、『アガメムノーン』 を題材とした作品。ヘレニック・メタルの代表的な名作である。制作メンバーはデイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key)エドワード・パッシーノ(Edward Pursino:g、b)フランク・ギルクリースト(Frank(The Kraman)Gilchriest:d)による3人。ここにきてようやくヴァージンスティールのメンバーが固まったという感じがする。最もディファイさえいれば、ヴァージンスティールは継続していくことだろう。かつてのメガデスのデイブ・ムステインやグレイブ・ディガーのクリス・ボルテンダール、ガンマ・レイのカイ・ハンセンのようにである。ディファイは名実共に、エピックメタル界の偉大なマエストロとなって久しい。
本作は前作と同じくストーリー・アルバムである。本作のコンセプトは、神話として語り継がれるトロイア戦争とその後の世界を舞台にした、呪われたアトレウス一族の骨肉の争い、そして反逆である。アトレウスはトロイア戦争におけるギリシア連合軍の総大将アガメムノンの父で、アガメムノンはアルゴスの王である。アトレウスは、テュエステスが自分の娘との近親相姦との間にもうけた子、アイギストスに父の復讐のため惨殺される。そしてテュエステスはアルゴスの王座に就く。しかしアガメムノンはスパルタの力を得て、テュエステスを追放し、アルゴスを再び自らのものとする。そしてアイギストスは復讐を誓う。物語は続編である「The House of Atreus, Act II」へと続いていく。なお本編の物語に登場する、予言の力を持つが誰にも信じてもらえないという呪いを持つカサンドラは、輪廻転生を司るエマレイスの生まれ変わりとなっている。このことから、本作の物語が、マリッジ以降展開された輪廻転生のテーマを持っていることが分かる。つまり彼ら古代の人間の生まれ変わりかもしれぬ私達が、彼らと同じ惨劇を件台で繰り返すという示唆も含まれているということである。人間の反逆によって。ディファイは楽曲で"反逆者"を数々取り上げてきたが──皮肉にも、マリッジ三部作が実際に舞台化された時のタイトルもは「反逆者」であった──、そこには言葉以上の意味が込められていることは明白である。脆弱な人間の神への反逆、神でさえ争うという現実、我々にとって確かなものとは何か。このアルバムは悲劇的で無残な物語を叙述しているが、果たしてそれは架空の世界の出来事に過ぎないのだろうか、とディファイは私達に投げかけているのだ。
内容的にも音楽的にも、彼らがこれまでにも多くの楽曲で取り上げてきた、古代ギリシア神話の世界観が一気に爆発したという印象を受ける。メインソングライターでもあるディファイは、こうした古代の神話伝承や歴史等──中でも先述したギリシア/ローマ圏、聖書に表される創世記──から影響を受けていることは顕著だが、私のように古代の世界そのものを追求することを好む、というわけではないようだ。彼はこれらの古代叙事詩を現代的表現の代用として用いているのであり、彼らのやっていることと"ファンタジー"は無縁であるという。つまりはディファイは空想的な人間ではなく、ヒューマニズムを重視する人情深い表現者だということだ。ここに彼らの楽曲が持つ厳かさや神話的リアリティの根源があるのではないだろうか。ディファイのように確かな真実を持って、現実を強く生きる姿は余りにも眩しい。ヴァージンスティールはその証明になのだ。なぜ彼らのような洞察的で知的で芸術的な希少バンドが、本国で支持を得ないのかが疑問である。真実とは常に隠されている。私はヴァージンスティールとの出会いが人生で最高の出会いだったとすら思える。
本作では、古典音楽から影響を受けたシンフォニックな音像を多用し、伝統的なエピックリフで攻め入る作風は絶対的な存在感を放っている。アルバムの場面転換に導入された小曲も、ただの繋ぎではない魅惑的な旋律を所有している。まるで今作は歌劇のようだ。ディファイの家系が演劇一家だということも頷ける。劇的な静と動の転調を駆使し叙事詩を紡いでいくその手法は、エピックメタルの真髄であるとともに、大きな見本となるだろう。徹底した雰囲気の重視と繊細な描写──登場人物の感情の起立や古代の風景の描写である──さえも逃してはいない。恐らくこのアルバムは、ヴァージンスティールの中で最も起承転結が上手くまとまっている作品だろう。加えて、伝統的なスペクタクル映画のスケール感を持ち合わせている。#20~#23までのエンドロールを想起させる感動的な流れなどはまさにそうだ。本作での古典的な手法は、CGを駆使していない時代の歴史大作映画──「ローマ帝国の滅亡」や「スパルタカス」等の名作たち──に連なる人的な苦労と生々しさを描き出しているのだ。一貫した緊張感と迫真性がもたらす興奮は、ヴァージンスティール──またはエピックメタル──ならではである。本当にこのアルバムは、全体を通した一つの作品としての完成度が高い。お気に入りの映画のDVDのように、何度も本作をリピートしてしまうのは必然的である。私たちエピックメタルファンが求めているのは、このような雄大でシリアスで芸術的で文学的な作品なのだ。ヴァージンスティールのエピックメタル作品は、間違いということがない。



1. Kingdom of the Fearless [The Destruction of Troy]
シンフォニックなイントロから突如激烈な疾走を開始する興奮必至の一大エピックチューン。ヒロイックな疾走感に乗り繰り出される野蛮なフレーズ、そして高潔さをも湛えた鋭いサビのメロディが胸を焼く。更に中間部から始まるロマンティシズムを極めた壮絶なギターソロ、静寂パートの導入、ラストの勇敢なアウトローと、まさにヴァージンスティールの全てを結集したというべき劇的極まりない名曲だ。
2. Blaze of Victory (The Watchman's Song)
エピカルな語りを交えた小曲。徐々に盛り上がっていきバーバリック&ロマンティックな展開が堪能できる。
3. Through the Ring of Fire
ヘヴィなリフの行進を多用したエピックソング。サビの吐き捨てるようなエピカルウェスパーは見事だ。しかしこの曲の最大のハイライトは後半から開始され、流れるような転調を幾重にも交え、やがては壮大なギリシアンシンガロングパートへと移行していく。クライマックスでのそのシンガロングパートには、古代ギリシアの悲劇的で歴史的な重厚な場面が思い浮かぶ。まるで映画のようだ(これはニュー・シネマスティックな意味合いではない)。
4. Prelude in a Minor (The Voyage Home)
短い場面転換のインストゥルメンタル。
5. Death Darkly Closed Their Eyes (The Messenger's Song)
不穏な小曲。
6. In Triumph or Tragedy
このアルバムのテーマ・メロディともいえる勇壮極まりない大仰な古代的シンフォニー。この壮大な旋律は#20で再び登場することになる。
7. Return of the King
8. Flames of the Black Star [The Arrows of Herakles]
6分に及ぶミドルテンポ主体の楽曲。2分辺りから突如として始まるバーバリックなパートは秀逸。更にその後神秘的なメロディへと流れていき、傑出したエドワードのソロが絡む。エドワードのヒロイックな名プレイとディフェイのシャウトの掛け合いは最高だ。
9. Narcissus
古代ギリシア調のファンファーレが重苦しくなり響くインストゥルメンタル。短いながらも物語が確かに進んでいることを実感させる。
10. And Hecate Smiled
高潔さと野蛮さを極めたエピックナンバー。ピアノに乗るディファイの民族調の歌声があまりにも素晴らしい。劇的にメタリックなギターが絡んでくる展開などには心底度肝を抜かれる。そしてその後の厳粛なソロパートがまた素晴らしいこと……。まるでギリシアの戦いの原野が蘇ったかのようだ。
11. Song of Prophecy (Piano Solo)
神秘的なピアノによるソロ。ピアノの旋律だけでも物語を聴いているかのようだ。この表現力の繊細さには脱帽である。
12. Child of Desolations
#11の悲劇的な雰囲気を引き継ぎ始まるバラード。ディファイの歌声は地に着いたような重さを宿している。だからこそサビの高音に耳が惹きつけられるのだろう。しかしなんてエピカルな楽曲なのだろうか。最後には「Crown Of Glory (Unscarred)」冒頭の神秘的で宿命的な旋律が奏でられ、#13へと続く……
13. G Minior Invention ... [Descent into Death's Twilight Kingdom]
前曲とはがらりと雰囲気が変わる、というよりも更に物語の核心へ迫ってきたという印象を受ける。マリッジの頃の旋律を大胆にアレンジした神聖なインストゥルメンタル曲である。私には「エマレイス」の中間部に登場したメロディの再導入が感動的で仕方がない。
14. Day of Wrath
魅惑的なピアノのアンサンブルと行進曲調のシンフォニーが織りなすオペラのようなインストルメンタル曲。
15. Great Sword of Flame
重厚でシリアスなエピックソング。中間部のソロにもよく表現されているだろうが、前半のザクザクしたリフとは打って変わって重苦しい雰囲気が漂う。後半にはマリッジ・メロディも導入され、迫真性を高めている。
16. Gift of Tantalos
語りによるインスト。
17. Iphigenia in Hades
悲劇的な、しかし儚い美しさも合わせ持つ小曲。ここにきて楽曲は一気に終焉的な色合いを帯び、聴く者に途方もないクライマックスが待ち受けているであろう期待感を大いに募らせる。
18. Fire God
スピーディなリフ・ソング。
19. Garden of Lamentation
短いバラード。 壮絶な#20への見事な布石といえる。
20. Agony and Shame
#6の壮大な旋律で盛大に幕開け、本格的な楽曲としてはアルバムのラストあたる名曲。物語の大団円的な──内容は悲劇的なものであるが──雰囲気を伴い、じわじわと迫真性を持って迫ってくる様は見事としか言いようがない。特に、一度目のサビに至るまでの完璧なプロセスと、そのサビの圧倒的なスケール感にはただただ放心である。まさに本アルバム最大のハイライトといえよう。
21. Gate of Kings
全てが終焉を迎え、栄光の勝利が訪れた場面を想起してしまうが、雄々しいメロディは絶望の中で芽生える強力な希望。コーラスを上手く演出させ、これほど見事なエンドロールがあるだろうか。
22. Via Sacra
感動的であり、そして大団円を強く感じさせる感涙のエピローグ・インストゥルメンタル。#22で十分な完結を物語っているにもかかわらず、更に余韻を残す楽曲を配置してくるところには見事に打ちのめされる。全編の情景が新たに繰り返されるかのようだ。物語の主人公ともいえるエレクトラとオレステスの姉弟の復讐劇は第二部へと続く。



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