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Tunes of War

Grave Digger the 7th album in 1996 Release
★★★★★★★★★★...(神盤)



ジャーマン・パワーメタル界の重鎮、グレイブ・ディガーの放つ1996年発表の7th。


まず始めに彼らの歴史を手短に…
グレイブ・ディガーは墓掘人クリス・ボルテンダール(vo)率いる、ドイツのパワーメタルバンド。1980年クリスその人によりドイツで結成され、84年に1st「HEAVY METAL BREAKDOWN」にてデビュー。ストレートなヘヴィメタルサウンドでランニングワイルド等と共に人気を博す。その後も85年に2nd「WITCH HUNTER」、86年に3rd「WAR GAMES」とコンスタンツなリリースで確実にファンを獲得していったが、87年にDIGGERと改名しポップな音楽性へ変更。ファンから物議を醸しだす。更に、バンドは解散してしまう。しかし90年代に入り再結成し、93年に発表した5thアルバム「THE REAPER」で強力なパワーメタルサウンドを提示、見事にメタルシーンに帰還を果たす。続く95年リリースの6th「HEART OF DARKNESS」を経て、今作への発表へと至る。


よく同国で崇められるもう一つの重鎮ランニング・ワイルドとの比較に出される彼らだが、サウンドもといメタルに懸ける精神性は非常に類似している。要はどこまでも熱く漢らしいピュア・メタルだということだ。グレイブ・ディガーの主なサウンドは、パワフルかつヘヴィな正統派のパワーメタルである。例外に洩れず、熱心なメタルファンが非常に好むサウンドであるのだ。

7枚目のアルバムである本作は、彼らのキャリアの中でも重要な位置を担う、歴史的なアルバムである。なぜなら、以降の彼らのアルバム・スタイルを決定的にする手法が用いられているからだ。従来のスラッシーで剛直なメタルサウンドは魅力的であった。そして今回、そこに中世のコンセプトを加えることにより、よりダイナミックでドラマティックなエピック・メタルアルバムへと進化したのである。

彼らがこのアルバムで題材としたのは「スコットランド戦史」であり、これまでの作品との決定的な差別化を図ることに成功した。スコットランドの歴史はまさに"戦いの連鎖"であり、イングランド王の圧政、団結しない貴族間の争いによる戦争が常に絶えなかった。しかしそんなスコットランドの民は高地民族(通称ハイランダー。彼らを題材にした映画『Highlander(邦題:ハイランダー、悪魔の騎士)』も公開されている)に代表される勇猛果敢な戦士の一族であり、戦闘では大いに称賛されていった。彼らはそんな壮絶きわまる時代をテーマにしたのだ。それらの戦いの歴史から生じる悲劇や栄光。グレイブ・ディガーはシリアスに訴えかける迫真のエピック・アルバムを完成させたのである。正直、彼らの真性なパワーメタルがバックグラウンドにあるからこそ、スコットランド特有の野蛮な雰囲気や強靭な精神性が表現できたのではないかと思えてならない。それほど独自性に富んだエピック・アルバムである。
アルバムにはスコティッシュ・バグパイプが導入され、独特の民族的雰囲気を醸し出している。またメロディにもケルティックな音階を盛り込み、よりドラマティックな楽曲を完成させている。そして今回、最も功を奏したのが大仰なクワイアの導入であろう。クリスのダミ声に続く壮大なクワイアは間違いなく新たな境地を開拓した。更にそのクワイアの練り方も尋常ではない熱の入れ方で、ブラインドガーディアンにも匹敵するほどである。クワイアが最大限に生かされた#3、#4、#11等は間違いなく名曲に値し、グレイブディガーの可能性の門口を大きく押し広げたのである。中でも、映画「ブレイブハート」で取り上げられたスコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスをタイトルに冠した#4は、歴史的な名曲である。

本来の剛直なパワーメタルサウンドにこれらのエピカルな要素が加わったことにより、グレイブ・ディガーの魅力はとてつもなく向上した。大仰なドラマ性、楽曲の漢らしさ、それは従来のエピックメタルバンド(マノウォーマニラ・ロード)にも通じる要素を持っている。ましてや彼らの場合、長年それを続けてきたのだから、本作の充実で一気にシーンのダークホース的な位置に伸し上がったと判断するのも容易なことだろう。本作には貫禄すら漂う。だが彼らの歴史の深さを考えれば当然のことかもしれない。

というわけで私自身も絶賛する本作だが、欧州では後にリリースする2枚のアルバムと合わせて「中世三部作」と題され、熱烈に歓迎されたようだ。そんな「中世三部作」の記念碑的な第一作目「TUNES OF WAR」、聴いておいて損はない!


1. The Brave
スコティッシュ・パグパイプが導入されたイントロダクション。原曲はスコットランドの準国歌「Scotland The Brave」。この勇敢なメロディに導かれ、戦いの歴史が蘇っていく。
2. Scotland United
クリスのシャウトと共にヘヴィに幕開けるパワーメタルナンバー。サビでの起立の付け方や、間奏での勇壮きわまる疾走等、以前のグレイブディガーにはなかった要素が強烈に耳を引く。漢臭い中世の世界観を剛直なパワーメタルで表現し、ヒロイズムを大仰なクアイアで奏でる。グレイブディガー特有の独特のパワーメタルがエピックメタルと融合した瞬間といえよう。
3. The Dark Of The Sun
典型的なグレイブ・ディガーのパワーメタルであり、重厚なパワーで徹底的にゴリ押しする。歯切れのいいリフに頭が揺れる。サビでは大仰さが一気に爆発し、本作の真骨頂が伺える。しかし、ここでもスコットランド風の華麗かつ高潔なクアイアと豪傑なパワーメタルの融合は以外なまでに合うということが分かる。ファンタジー系のエピッククワイアとは違い、歴史という現実のリアリティが感じ取れるからだろうか。一般的に、ヘヴィメタルには酷く現実的で社会的な内容のものと、一方は幻想的でファンタジー的な内容を含む二種類が存在しているといわれている。
4. William Wallace (Braveheart)
歴史的名曲。先述したように、スコットランド独立のために人生を懸け戦った英雄、そして最大の愛国者ウィリアム・ウォレスを歌った壮絶なエピックナンバー。メロウな冒頭のアルペジオからスコットランドの民族的な精神性が溢れてくる。非常にシリアスかつドラマティックで中世的な雰囲気が支配しており、スピーディなリフにクリスの男気が滲み出るダミ声、そして徐々に高潔なるクワイアへと流れていく。その展開は感動的ですらあり、特にクアイアの美しい練り方は聖歌のように響く。まるで古くからスコットランドで歌い継がれていたかのように、歴史の深みを感じる旋律である。ウォレスは確かに死んだが、その愛国の精神は今なお生きているのだ。
5. The Bruce
ミドルテンポで勇敢に進む曲。暗雲立ちこめるダークな雰囲気が充満しており、彼ららしいといえる。が、やはりサビでの盛り上がり方は異常といえる。7分に及ぶ大作だが、ドラマティックに聴かせるので飽きることはない。
6. The Battle of Flodden
重厚なリフがツーバスのドコドコいう疾走と共に刻まれる。 コーラスパートでは、ヒロイズムを鼓舞する勇壮なクワイアが聴ける。またリフに込められた切迫感が楽曲のシリアスさ押し上げている。くだらない部分など一切ない。これぞトゥルー・メタルだ。
7. The Ballad of Mary (Queen of Scots)
クリスがクリーンヴォイスで歌う衝撃的なバラード。普段のダミ声と墓掘り人の漢らしさからは想像もできない、繊細な歌声に感銘を受ける。サビのクワイアには中世の雰囲気が漂い、聴き手を誘ってくれる。とても綺麗なバラードである。
8. The Truth
ブリッジの民族的なリフ使いが印象的な一曲。曲調はミドルテンポ。
9. Cry for Freedom (James the VI)
ゴリ押しナンバー。サビでの吐き捨てるようなクリスの歌い方が悲劇を物語る。
10. Killing Time
約3分と短い曲。他の曲に比べるとヘヴィさはやや薄い。しかしお決まりのサビパートには、メロディアスなクワイアが導入されている。
11. Rebellion (The Clans Are Marching)
歴史上で認知されている、ハイランダー最後の戦いを歌った決死のエピック・メタル。とてつもなく雄大なクアイアが冒頭から歌い継がれる。その一大クワイアは、このアルバムのテーマを物語っているかのように深淵に響く。1746年、スコットランド・ジャコバイト軍の大半は高地戦士(ハイランダー)で、カロドン、ミュアの戦いで勇敢に戦った。しかし近代的な武器を携えたイングランド軍に彼らの長剣が通用するはずはなかったのである。この戦いの敗北によってハイランダー達はほぼ全滅し、代償として彼らの誇りであったキルトとタータンの着用も禁止された。これはスコットランドの民にとって歴史上最大の屈辱であった。なんという悲劇であろうか。この曲には、最後の戦いに行進する彼らの勇猛果敢な姿が勇ましい曲調で表現されている。「戦いの連鎖、死か栄光か」という壮絶なるスコットランドの中世戦史を浮き彫りにし、大仰なメロディの中に尊い彼らのメッセージ性を宿した、叙事詩的よりも真に訴えかける楽曲である。後は我々が彼らのエピック・メタルに耳を傾けて、何を感じるか、そこが重要である。後半にはパグパイプの音色も登場する。
12. Culloden Muir
豪傑スピードナンバー。ヘヴィなリフで押すところには疲労感すら覚える。彼らの一途さには感服である。
13. The Fall of the Brave
アルバム・イントロダクション#1と対になるエピローグ・トラック。幾多の戦い、そのあとに残るのは何であろうか。その答えは、本作を聴いた者それぞれの解釈になる。


Review by Cosman Bradley

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