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Marriage of Heaven & Hell Pt. 2



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1995
Reviews: 95%
Genre: Epic Metal



本作は、"エピックメタルの帝王"と称されるヴァージン・スティールの7thアルバムである。特筆すべきは、このジャンルの作品としては異例の国内盤が発売された経歴を持つということである。日本での発売は1996年であるが、世界的なリリースは1995年であり、よく誤解されやすい。本作が国内発売された理由は、これより語る本作の功績に秘められているといっても過言ではない。この作品は、エピックメタルの歴史書の中の最も輝かしい一ページを雄弁に物語っている。

多くのヴァージンスティールのファンは、彼らの長大な歴史の中から、本作を最高傑作に選出してきた。無論、その意見は、私にも共通している。この作品がいかにエピックメタルという分野に貢献したか、その影響力は計り知れないものである。少し昔の話をしよう。彼らは、エピックメタル史上に残る歴史的な前作『The Marriage of Heaven & Hell』の発表によって、エピックメタルという特異なジャンルを欧州全土(特にドイツの反響は異例だった)に認知させた。その光景は、恰も消失した太古の地下納骨所に、何世紀も経て人間の光が再び差し込んだかのようであった。偉業が功を奏し、ヴァージンスティールはこの分野の第一人者、即ち"エピックメタルの帝王"と徐々に畏敬の念を込めて囁かれるようになっていったのである。

しかし、彼らの才能はそれだけには留まらなかった。多くの成功者は栄光の後に歩みを止めてしまうのであるが、このディフェイという芸術家は違ったようだ。より完全なエピックメタル作品である今作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』を完成させ、彼のバンド──ヴァージンスティール──は、より堅実な欧州での絶対的な地位と人望を獲得するに至った。前作すらも軽く凌駕する内容を古代ギリシア様式の建造物の如く優雅に宿し、本作は叙事詩的な「Marriage Trilogy」の第二幕を描いていたのである。

彼らが欧州のファンの支持を獲得し実力を世界に示したことで、ここにようやくヴァージンスティールは、エピックメタル・シーンのもう一つの柱である、絶対的な王者マノウォーと双璧を成した訳である。かつて、強大な勢力を誇り、大手レコード会社ですら敬遠したマノウォーを最初に受け入れたのも、また欧州の熱烈なファンに他ならなかった。ヨーロッパのファンは、ピュアでエピカルなヘヴィメタルを熱烈に歓迎するのである。今やエピックメタル・シーンに欠かせない存在となったマノウォーやヴァージンスティールも、彼らを始めに見出したのは欧州の熱狂的なファンであり、その物差しは実に確かなものだったといえるであろう。私達も、物事の一歩先を見る視野を彼らに学ばねばならない。

以下は、本作の内容について詳しく触れていく。制作は、前作の3人のメンバーDavid Defeis(vo、key)、Edward Pursino(g、b)、Joey Ayvazian(ds)に加え、Frank Gilchriestなる人物を数曲パーカッションとしてゲストで迎えている(後に彼はヴァージンスティールの正式なメンバーに迎えられる)。このアルバムは先述したように、ヴァージンスティール史でも類を見ない一大傑作として受け取れる。本作を契機に、フロントマンであるデイビィッド・ディフェイは自らのメタルを「Barbaric and Romantic(野蛮でロマンティック)」と形容していくこととなる。ちなみに余談ではあるが、ヴァージンスティールというバンドは、ジャック・スター(g)が脱退してからはほぼディフェイのソロ・プロジェクトと化している。まさに、デイビィッド・ディフェイという天武の芸術家の才能によってこそ、バンドは起動してるといえよう。「野蛮でロマンディック」という言葉の命名は、彼らの芸術的なエピックメタルを表現するに最も適している表現といわざるを得ない。事実、本作もその雰囲気を余すことなく詰め込んでいるのだから。

前作では、サウンド面で多少音が軽い部分が見受けられたが、今作においては完全にヘヴィメタリックな正統派メタルのサウンドを披露している。ある意味、ここにヴァージンスティールの理想としたエピックメタルが完成した、といっても過言ではない。本作の充実した完成度を聴けば万人がそう感じ取るはずである。なにより、彼らの最大の魅力であり、絶対的な個性がここに発揮されたといえる一つの要素がある。それは「Barbaric and Romantic」の「Barbaric」を担う部分である。以前から彼らのヒロイックな音楽性には特筆すべき魅力があったことは疑いようがなく、かつての名曲にもそのスパイスが効いていた。これまで"The Burning Of Rome"(4th『Age of Consent』収録)、"Blood & Gasoline"(6th『The Marriage of Heaven & Hell』収録)等に連なる名曲群は、聴く者の高揚感を強烈に誘発してきた。その突出したヒロイックなムードがアルバム全編に配置されたのが、本作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. Ⅱ』に他ならないのである。私は長年ヒロイックなエピックメタルを求め続けてきたのであるが、この作品は、ヒロイック/エピック・ヘヴィメタル一つの終着点としても受け取ることができる。ヒロイックの単語の語源は、英雄崇拝を基礎としているのであるが、言葉としての意味は"英雄的"という意味であるという。つまり、ヒロイックなサウンドというのは、勇ましく崇高なサウンドを指している。ヴァージンスティールは常にそういった勇壮で力強いサウンドを誇示してきた。その根底に何があるのが、考えてみる価値は十分にあるであろう。

ディフェイ本人によるコンセプトアルバムの第二部作となる本作には、とてつもなく深いテーマが込められている。前作より更に壮大なスケールを含む詞世界(それがサウンドにも顕著に表れている)は、シリアスであると同時に我々に物語を見せているようにも受け取れる。この第二部では"精神と肉体、天国と地獄の和解"を主に歌っているらしく、その世界観は人間の脳に胎児がへその緒で繋がるという衝撃的なアルバム・アートワークに表現されている。この畏怖すら感じることになりかねないアートワークに対し、私は極めて知的なものを感じる。なぜなら、本当に神秘的な物事を表現しようとしたとき、それは狂気紛いのものになるからである。私の指摘においては、過去の偉大なる西洋芸術家達の功績が真実を語ってくれることであろう。

本作のテーマは、前作の内容よりも、物語の核心に迫っているといえよう。特に、今作から随所に導入され繰り返される重要なフレーズは、我々に何かのキーワードを訴えているように思える。前作の冒頭とラストでお披露目した神々しいマリッジのメインテーマ・メロディに加え、"A Symphony Of Steele"、"Crown Of Glory (Unscarred)"、"Prometheus The Fallen One"、"Emalaith"という究極のエピックメタル楽曲に配される意味深なフレーズ群。このアルバムは、私が思っている以上に奥が深いようだ。中でも"A Symphony Of Steele"に登場する「エンディアモン」、"Emalaith"に登場する「エマレイス」は、次のマリッジ最終作『Invictus』に登場する戦士の名である。マリッジの一連の作品は、大河のように繋がりを持っているのである。そしてその全て理解するのには大変な苦労を有する。

しかし、こういった壮大な歌詞を背景にして、シリアスなエピックメタルが展開されているという点のみ分かってさえいれば、本作はより魅力的な作品となる。別段難しく考得る必要はなく、彼らの想像するヘヴィメタルは音像のみで十分物語感じ取れる力を持っている。それがエピックメタルというものである。最も、ヴァージンティールの楽曲における表現力が著しく突出している部分が大きいことには変わりない。とりあえず「ヴァージンスティールはこれから」という向きは、まずこの作品を押さえておけば、彼らの魅力は十分すぎるほど伝わるはずである。私が言うのであれば、本作をなくしてエピックメタルを語ることはできない。是非この芸術的作品から、エピックメタルの本質を理解してもらえれば幸いである。なお本作は2008年にリマスター再販され、新たに2曲のボーナストラックが追加された。#14"Life Among The Ruins"、#15"I Wake Up Screaming"がそれに値し、どちらも貴重なライブトラックとなっている。



1. A Symphony Of Steele
神に敗北し戦死したエンディアモンの魂を戦場に再び呼び戻す、冒頭の鋼鉄のシンフォニーの再現。勇壮なる警笛を伴った劇的なイントロダクションがあまりにも魅惑的である。あらゆる展開が素晴らしく、バーバリック極まりない疾走に加味されるヒロイズムが聴き手の魂を強烈に高揚させていく。中間部でのロマンティック感溢れるパートから、空間を巡るヒロイック極まりないギターソロが奏でられた時、我々は息のできないほどの興奮に襲われることであろう。
2. Crown Of Glory (Unscarred)
アルバムの開始2曲は、まるで神のごときである。アルバムのつかみに強力な楽曲を配すバンドは数あれど、これほどまでに傑出した楽曲を持ってくるのは史上類を見ない。冒頭での究極的なまでに神秘的なピアノと歌の旋律は、永久に私の中に残るであろう。私にはかけがえのない、重大なメロディである。またサビも強烈であり、ヴァージンスティールが生み出した中で最もヒロイックなサビパートであるといえよう。更に、後半からの展開は驚異的にロマンティックである。ピアノの神秘的な絡みに始まり、そこから妖艶なるギターソロパートのハーモニーへと流れ、神々しいまでの盛り上がりを見せるクライマックスパート、及びそこへ交響曲調のキーボードが加わったサビへの展開に関しては、形容できる言葉すら見当たらない。一体どうしてここまで劇的であり、大仰であり、ヒロイックであり、ロマンティックなのであろうか。この曲を聴いていると、その答えすらどうでもよくなる。
3. From Chaos To Creation
#2に流れるように続く、荘厳な緊張感が漂うインストゥルメンタル。バーバリックでヘヴィメタリックな雰囲気が絶品である。
4. Twilight Of The Gods
リヒャルト・ワグナーも用いた『神々の黄昏』という意味深なタイトル。バーバリックなリフがエピカルにギャロップするヒロイックなエピックメタルである。疾走感の勢いはそのままに、ロマンティシズムとヒロイズムが同居するサビへの流れは完璧とすら思わせる。彼らはバーバリックでナチュラルなヘヴィメタルに、ロマンティックなメロディを加味させることに関しては天才的である。またエドワードのギターソロも大仰なまでにヒロイックなメロディを奏でており、楽曲を盛り上げる。
5. Rising Unchained
#4の荘厳な雰囲気を受け継ぐように続く有り様は至高の物語性を表現しているといえよう。重厚なリフが野蛮に刻まれる各パートは、興奮以外の何物でもない。ディフェイの歌声も、高潔さを醸し出しており、崇高な楽曲に十分マッチしている。クライマックでの盛り上げはやはり大仰で、ナレーションパートから高潔なメロディの導入に至るまで、素晴らしくエピカルである。バーバリズム、ロマンティシズムが紙一重に表現された楽曲である。エピローグにはスパニッシュ的なアコースティカルパートを設け、徹底したドラマを演じる。
6. Transfiguration
ロマンティックなミドルテンポ。ディフェイの歌声に絡むピアノが絶妙である。込み上げてくるようなサビのメロディも印象に残る。
7. Prometheus The Fallen One
オリエンタルかつアンビエントな雰囲気が全編を覆う、次曲"Emalaith"と同じく本作の中核をなす長大なエピックである。 ディフェイのエピカルヴォイス並びに、誘惑的な美旋律が神秘性を極限まで高めた名曲である。拝借的なメロディが登場する中間部の展開に至っては、この曲の重要性、他曲との関連例を雄弁に物語る。静寂する神聖なパートから、#8のサビのメロディを奏でるギターパートへと展開し、その後は#2のクライマックスにおける劇的なメロディのホーン編曲が繰り出される。なお歌詞は、古代ギリシアの劇作家アイスキュロスの『縛られたプロメテウス』がモチーフ。
8. Emalaith
ヴァージンスティール史上最高の傑作にして、エピックメタル史に残る名曲。人類が生み出した最高の名曲の可能性も持つ。壮大なサーガにおけるヒロイン「エマレイス」の名を冠した楽曲であり、約10分の間、リスナーは物語の主人公のような途方もない戦い、幻想的な愛・勇気を通して高揚感の極致、及び興奮を味わうこととなる。「エマレイスは死んだ。もう平和が約束されることは二度とない」という言葉の如く、楽曲の内容は壮絶を極める。大河のような壮大な展開を見せ、ヒロイズムを放つサビのメロディは激しく胸を打つ。まるで物語のヒーローやヒロインを主張するかのような、情熱的なメロディが印象的。またその後の展開では、マリッジのメインテーマ・メロディが幻想絵巻の如く繰り出され、ギター、オーケストレーションとアレンジを変えて導入される様はもはや神々しく、人智を超越した世界観の情景すら聴き手に抱かせる。その中間部は、ディファイの神聖なキーボードとエドワードのロマンティックなギターが妖艶なまでに幾多の転調を経て絡み合う、珠玉の名演。まるで天上の領域を再現したかのような神秘的な楽曲。
9. Strawgirl
神聖なメロディが流れるように、温かみを感じることが出来るバラード。大作曲の後にこういったバラードを持ってくる辺り、実に器用である。しかし、本当にこのアルバムの神秘的な世界観は筆舌に尽くしがたい魅力を持っている。余談ではあるが、正直ここで作品に幕を下ろした方が、後味が良かったように思える。ここまでの一体感が心底素晴らしい故になおさらである。
10. Devil / Angel
荒々しくスピーディな曲。他の曲に比べると単調であるが、この部位ではこのくらいの曲が良いのかもしれない。
11. Unholy Water
聖歌調的コーラスに導かれる神秘的な楽曲である。 歌の神聖なメロディや、バックを担当するキーボードのメロディが幻想的で非常にエピカル。この曲のように、しっとりとロマンティックに聴かせるところもまた、ドラマティックである。
12. Victory Is Mine
サビでの「Victory Is Mine」フレーズが印象的。飛翔する高潔な旋律が心地よく響く。
13. The Marriage Of Heaven And Hell Revisited
アルバムの至る個所に導入されたマリッジ・メインテーマの全編インストゥルメンタル。前作のラストとはアレンジが多少変わっている。壮大な本作に終止符を打つに相応しい、余韻の残るシンフォニーであることに関しては、前作同様である。
14. Life Among The Ruins (Live Version)
ライブバージョン。些かオリジナルより早いように感じる。
15. I Wake Up Screaming (Live Version)
ボーナスのライブ曲。ファンがヴァージンスティールを鼓舞しているのが伺える。


Review by Cosman Bradley

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