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Atlantis Ascendant



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 89%
Genre: Symphonic/Epic Black Metal



本作は、"Kings Of Barbarian Metal"ことバルサゴスの2001年発表の5thアルバムである。相変わらずコンセプトに合った、SF・ファンタジィを想起させる素晴らしいジャケットが購入意欲を駆り立てる 。このアルバムのアートワークを描いているのは、イギリスのヘレフォード州に拠点を置く幻想作家Martin Hanford(マーティン・ハンフォード)である。ダイナミックな画風がバルサゴスにはマッチしているのだろう…。アルバム本編の制作メンバーは、前作と同じ5人による。最も、バイロン卿とジョニー兄弟さえいれば、特異なそのバルサゴス・サウンドが揺らぐことはないのであるが。

今作は、バルサゴスにとって初めての国内盤がサウンドホリックからリリースされた、日本人にとって記念すべき一作となった。長らく謎に包まれていた彼らの壮大な詩世界も、誠にありがたいことに、全訳されている(もちろんこの5thのみであるが)。私は、これを機にその他の素晴らしいアルバム群も国内発売されることを望んでいたのであるが、その希望はあっけなく崩れ去ったようだ。残念ながら2011年現在、バルサゴスの国内盤は『Atlantis Ascendant』のみとなっている。しかし、この国内盤には、初期1993年のデモ・ボーナストラックが2曲追加され、はたまた歌詞も訳されているのだから、絶対に日本人にはお勧めできる。

まず、今回も徹底された"バルサゴスのアルバム"だといえるだろう。独創的であり、決して他の追随を許さぬ大仰な作品となっている。そして、私たちのような熱心なファンを決して裏切ることなく、また、同時に傑出したエピック・ヘヴィメタルの名盤であるといえる。彼らの場合、すべてのアルバムがかのマノウォーと同じく名盤・傑作に値するが、今作も実に満足いく仕上がりとなった。雪崩込むようなドラムス、エピカルなメロディ、荘厳なナレーション、度肝を抜くシンフォニー、劇的極まりない展開が惜しみなくバルサゴスという神秘の神殿に奉納されているのである。特に、#1~#4までのドラマティックかつダイナミックな展開には、バルサゴスの今挙げた長所が存分に発揮されているといえよう。#3などは、私の大変お気に入りである。一方アルバムの後半は、これまで以上にヘヴィなギターを前面に押し出し、古代遺跡──今作の舞台となっている地上の秘境──を彷彿とされる重厚なサウンドを構築するという試みもみられる。その効果が最大限に引き出されたのが#7~#8であり、聴者は想像を絶する太古の秘境へと旅をすることになる。つまりは、バルサゴスはキーボードを多用しなくても、視覚を刺激する強烈な音楽を創造できるということだ。

広大な宇宙を叙事詩的に描いた前作『The Power Cosmic』(1999)より、今作は物語の舞台を現代──主に19世紀の地球である──に移し、今回も壮大なコンセプト軸は継続された。バルサゴスが平坦な物語を描く必要性などは永久にないのだ。しかし、物語の舞台が正確に現代とはいいづらい。なぜなら、彼らの物語は、過去の偉大な作家であるH・P・ラブクラフト、ロバート・E・ハワード、C・A・スミス──ここに挙げた三人の作家は、伝説的なアメリカの怪奇幻想パルプ雑誌『ウィアード・テイルズ(1923~1954)』に幾多の名作を発表したことから"ウィアード・テイルズの三大作家"と呼ばれる──等の生み出した、一連の謎めく作品群に見られる"太古の脅威を現代の人間が発見する"という形式をとっているからだ。または、冒険家グラハム・ハンコックとでも言えば分かりやすいだろうか。今作では、主にカレブ・ブラックスローン三世教授という19世紀イギリス人の冒険と功績が語られている。この人物は、3rd『Battle Magic』(1998)の#7「When Rides The Scion Of The Storms」にも登場しており、恐らくは生まれ変わりか何かだろう。彼の残した日記の内容が本作の歌詞で触れられているのである。その日誌には、古代神話、考古学、人類学を含む、カレブ・ブラックスローン三世教授の生涯を懸けた探求が綴られており、こういった分野に好奇心を抱く向きならば、非常に魅力的な価値を見い出せる物語である。



1. イプシロン序文
The Epsilon Exordium
カレブ・ブラックスローン三世教授は、人類の起源の本質と失われた太古の文明の伝承、そして、その証拠を探し出すことに人生を奉げた。本編の楽曲の物語の殆どは、彼が危険の中書き続けた日誌の記録によるものである。本曲は、何かが始まるとでもいうような行進曲調のインストゥルメンタルであり、古代の原始的なメロディが胸を打つ、視覚を刺激する曲である。

2. アトランティスの勃興
Atlantis Ascendant
カレブ・ブラックスローン三世教授が発見した碑文(粘土板)より、太古のアトランティス大陸の起源を紐解くという、このアルバムを代表すべき名曲。碑文によれば、遥か大昔に、第三の巨大な地殻の激変が大陸の表面を新たに作り出す以前、太古の世界において、一つの国家が他のすべての国家を圧倒したと刻まれている...それこそがアトランティスであったのだ!楽曲は、勇壮な原始の警笛が至る所で鳴り響き、まさに栄光のアトランティスが蘇ったかのよう。また、ブラックスローン教授の失われた文明に対する探索のロマンを、後半の秘境探索の如き壮絶な展開に垣間見ることができる。

3. ドラコニスの大地
Draconis Albionensis
時代とは変化するもの。故に神秘の時代も終わりを告げようとしていた。伝説的な時代の終わりごろ、偉大なるアルビオンのドラゴン卿らの最後の戦いが記されている。彼らは、畏怖すべき異教徒らからアルビオンの全王国を守ったのだ。ウィルルド・シニンガ!曲としても、このアルバム中で出色の出来である。宇宙と太古の幻想的な世界が見事に混ざり合い、非常に独創的かつヒロイックな雰囲気を持つ。ギターメロディに関しては、宇宙的であり、実にロマンティックだ。なによりキーボードの重厚なメロディからギターソロへの展開が劇的。後半のいきなり鎮まるパートは必聴。私は、ここまで"圧倒的"という表現が相応しいと感じた曲にこれまで出会ったことはなかった。

4. 古代宇宙形状論学者の星の製図
Star-Maps Of The Ancient Cosmographers
タイトル「古代宇宙の星図」──正確には、宇宙形状論学者の地図のことを指している──だけあり、オペラティックな音楽性がある。カレブ・ブラックスローン教授は、夢を見、遥か太古に全宇宙の惑星の位置を示した星図を発見した魔術師のことを知る。ここでのギターメロディも素晴らしく、はっきりいってクサいのだが、大仰極まりなくて良い。神秘的な時代(世界)の光景と、永久に失われた儚いロマンを感じる。

5. アンコールワットの亡霊
The Ghosts Of Angkor Wat
怪しげなイントロ。

6. 極北の帝国の紋章の下に煌く千本の剣の輝き(エピソード:Ⅲ)
The Splendour Of A Thousand Swords Gleaming Beneath The Blazon Of The Hyperborean Empire (Part: III)
伝説的な《極北の帝国の紋章の下に煌く千本の剣の輝き》に幕を下ろす、壮絶な最終章であり、バルサゴスファンの間での聖典となっている楽曲。少々物語をまとめて拝借しよう。 "壮麗なるハイパーボリアを見よ。北の煌く宝石。我らがハイパーボリアの王は完全復活した混沌の闇の君主を前にして絶体絶命の危機に陥りながらも、その勇敢な力を失うことはなかった。全宇宙の秩序を守り、究極の混沌を打ち破るため、彼は最後の希望である《影の剣》に封じ込められていた不死身の神の不滅のエキスとひとつになることを選んだ。偉大なる王よ!それは人間としての死を犠牲とし、永久に人間の世界を後にすることに他ならない。そして王は、勇敢に戦ったハイパーボリアの戦士たちに最後の戦いに挑むべく、最後の命令を下すのだった……ハイパーボリアの王と戦士たちに、永遠の栄光あれ!" 残念ながら、王とアングサールの戦いの結末は語られずに物語は幕を閉じる。主人公は、結果的にアングサールを打ち破ったのだろうか。本曲はあまりにも攻撃的であり、正直何が起こっているのか分からなくなる。とんでもない情報量が脳内に送り込まれるのだ。しかし、本当にこの楽曲は大傑作に値する。いつか小説や映画化することを熱望したいが、問題は予算である。作品が未完のまま終了するというところも、人間の心理に最も印象に残る手法であり、見事という他ない。バイロン卿は、これらをすべて計算していたのだろうか。

7. ウルの地下墓地に眠る《夢見るもの》
The Dreamer In The Catacombs Of Ur
考古学者イグナティウス・ストーン博士がウルの地下で見出した《夢見るもの》について語られている。ギターが前面に押し出された過激なウォーメタルであり、古代都市のような重厚な雰囲気も漂う。神秘的で謎めく曲だ。ちなみに尺八を取り入れた、歴史的な曲。もちろん見事にはまっている。

8. 南極大陸の失われた都市を求めて
In Search Of The Lost Cities Of Antarctica
南極大陸の失われた都市を求める一人の勇気ある探検家の物語。彼の探し求めた南極大陸の都市──かつてそこには、天に向かってその輝きを誇った、人類誕生以前の原初の大都市が存在していたのである。メタリックなギターの作り上げるリフの分厚い壁が、ヒロイックな高揚感とともに襲いかかる、激烈な曲。特に、クライマックスであるリフの雪崩れ込みは壮絶ともいえる。

9. 影の年代記
The Chronicle Of Shadows
3rdを想起させる勇壮なエピックスピードメタル。物語の各所に登場する《影の年代記》の断片を語る楽曲である。非常に歯切れの良い勇壮なメロディが耳に残ってやまない。ファンファーレの効果も絶大だ。

10. 漆黒のピラミッドへ渡る六つの鍵
Six Keys To The Onyx Pyramid
幻想的にアルバムに幕を下ろすエピローグ。ここでカレブ・ブラックスローン教授の日記は途切れている…。不穏な終わり方が謎めいていていかにも彼ららしい。

11. アトランティスの尖塔の夢
Dreaming Of The Atlantean Spires:Alpha
ボーナストラック。1stの#2と同名の曲。これは初期のころのブラック色が強かった彼らが認められる、貴重な曲だろう。曲としてはまさに邪悪で、それらしいといえる。

12. 輝ける火宝石
By The Blaze Of The Fire Jewels:Zero
上と同じくボーナストラック。特に突出したものはない。



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