Epic Metal; Review Fan Site.
© 2010-2017




Column the Column

volume 1. 16 February: 2010


 私がライターを勤めているヘヴィメタル専門誌『METAL EPIC』の新しい企画で、急遽インタビューを行うこととなった。私は幸運にも時間に余裕はあったが、編集者達は、今メインの企画を制作しているらしく手一杯とのことだった。
 新しい企画は斬新にもエピック・メタルを取り上げたものだった。上層部の話によると、「企画の規模は小さいが、新しい試みをしてみようと思い立った」とのことだ。早速、編集長から直接私に連絡があり、インタビューをする相手と、その趣旨が伝えられた。
 今回私がインタビューを行うことになったのは、エピックメタルの研究者・評論家、そして熱烈なファンとして名高いコスマン・ブラッドリー博士であった。彼にイギリスのエピックメタルバンド、バルサゴスについて私が質問を交えながら語ってもらう、というのが今回のテーマだ。流石に、予想した通り、かなりマニアックな企画であるらしい。
 私としては、彼とは面識がないが、この手の世界では知る人ぞ知る人物だと聞いたことがある。一体どんなインタビューになるのか、今の私には想像もできない。とりあえず、新しい企画の幸先のいいスタートを切れれば、私としてもおいしいことは間違いない。
おっと(車が止まり)、どうやらコスマン・ブラッドリー博士の邸宅に到着したみたいだ...


──まずはコスマン・ブラッドリー博士、始めまして。
コスマン:こちらこそ。君が今日インタビューをしてくれるという『METAL EPIC』誌のライターか。
──その通りです。
コスマン:では待たせても悪いから、本題に入るとしようか。まずはインタビューのテーマを教えてもらおう。それだけは私も聞かされてないのでな。
──今回のテーマは、エピックメタルとバルサゴスについて語ってもらう、というものですね。
コスマン:実にやり易いテーマで助かる。なにしろバルサゴスは、私が最も尊敬しているメタルバンドだからだ。本当に彼らは素晴らしい。
──そうですか。では、まず何故彼らが現在、エピックメタルとして高く評価されてるのでしょうか?
コスマン:その事実については、我々が気付くのが遅すぎた、ということもできる。彼らは元々ブラックを基盤にしているが、過去の偉大な小説家達から影響を受けた叙事詩的要素を歌詞に盛り込んでいることは、既に君も知っていよう。1stの時点ではブラックよりのサウンドで明白でなかったが、2ndからの激変にはだれもが驚いたばかりか、サウンドもエピック極まりないものとなったのだ。最も、1stの#3や#9に導入された作曲家ベイジル・ポールドゥリスの「コナン・ザ・グレート」サウンドトラックからの引用を確認できただけでも、彼らの方向性は定まっていたとみていいだろう。というより、バイロン卿は、1989年にバルサゴスの構想を考えた時から、中世時代の再現、SF、ファンタジィ、宇宙観を取り入れた(具現化するべく、といったほうが適切かもしれない)ヘヴィメタルを作り上げることを夢見ていたのだ。よってサウンドがシンフォニックに、大胆大仰に変化した2ndにおいては、彼らの目標に一歩近づいたに過ぎない。しかし、これは彼らにとっても、エピックメタル界にとっても大きな進歩であるのは間違いない。彼らが評価されるのは当然のことだ。
──確かにそうですね。ですが、ここでバルサゴスが大きく影響を受けたという"過去の偉大な小説家達"とは具体的には誰のことでしょうか?
コスマン:ああそうだな。まず、バルサゴスもといメインブレインのバイロン卿が最も影響を受けたと言っているのは、アメリカの小説家、ロバート・E・ハワード(Robert Ervin Howard、1906-1936)だ。従来のソードアンドソーサリーのファンなら御馴染みだろうが、彼の生み出した古代ハイボリア時代(今から約1万2千年前)の英雄コナンは、全ての《剣と魔法の物語》の始まりだといわれている。最も、歴史に始めて幻想小説として表れたのがコナンであっただけであって、実際は計り知れないほど遥か昔の時代から、《剣と魔法の物語》は存在していたというが、定かではない。しかしここで重要なのはそうではないだろう。ハワードがソードアンドソーサリーの時代の幕開けに影響を及ぼしたように、また、バルサゴスに与えた影響も非常に大きい。
──ここでは、ハワードを挙げたみたいですね。そういえば、バルサゴスの名前の由来は、ハワードの作品にちなんでつけられたといわれていますが、実際のところどうなんでしょうね。
コスマン:それは真実だ。バルサゴスという名前の由来は、彼の短編小説「The Gods of Bal Sagoth」から取られた。ここで登場する、《バル=サゴス》とは、赤色人の支配する最古の王国の名のことだ。また、物語には「バル=サゴスの神々」としてGol-goroth(ゴル=ゴロス)、Groth-golka(グロス=ゴルカ)、A-ala(ア=アラ)という名の神が登場する。興味深いことに、《バル=サゴス》という名は、エドガー・ライス・バロウズの異世界小説ペルシダーに登場する類人猿Sagoth(サゴス)に由来するといわれている。次いでBsl(バル)は、古代バビロニアのフェニキア戦士の神Baal(バール)から取られたと主張されている。最も、これはとある小説家の仮説に過ぎないのだが。つまりハワードは若くして亡くなったために、多くの謎が残っているということだ。しかし、バイロン卿がこの《バル=サゴス》という強力なパワーを秘めた名前に、何かを見出していたことは確かだ。バルサゴス……本当に魅力的な名前だ。
──これは勉強になりますね(笑)バルサゴスが奥深いメタルバンドだということがわかりましたよ。
コスマン:そうであると、私としてこれ以上嬉しいことはない。多くの人々が、バルサゴスの素晴らしい世界観を少しでも理解してもらえれば、バイロン卿も喜ぶだろう(笑)つまり私が言いたいのは、彼らはただ趣味の一環として、またはエゴイズムでバルサゴスというバンドをやっているのではないということだ。無論、商業的な成功に全力を注いでいるというポップスやロックなどとは、天と地ほどの差がある。バルサゴスの基盤には、神秘的な世界に対する探求心、より壮大なものを描いていこうとする真剣な姿勢がある。少なくとも、私はバルサゴスに対してそう考えている。長年バルサゴスを聴いてきて思ったことだ。
──そうですか。私も、多くの読者にコスマン氏の話を読んでもらえるように『METAL EPIC』誌の売買に総力しますよ(笑)
コスマン:確かに私も『METAL EPIC』誌には、今後も頑張ってもらえればと思っている。数少ないヘヴィメタル専門誌なのだから。今もこうして、メタルの精神性が若い世代に受け継がれているということを切実に感じるいい機会になった。
──ありがとうございます。質問を変えますが、コスマン氏はバルサゴスのどの部分が最も、エピカルだと思っていますか?
コスマン:もちろんすべてだと答えたいが、それでは質問にならないだろう。具体的に、最も私がエピカルだと思うのは、彼らの視覚を刺激する部分にあると思っている。もちろん彼らの壮大な詞世界があることを前提にした場合であるが。その詩世界を完全に表現したサウンドには度肝を抜かれるが、通常の場合、感覚的な刺激は聴覚のみに限られる。音楽とは普通聴くものである。しかし、一定の水準を超えた場合、聴覚的効果に加わり視覚的な効果が訪れることがある。バルサゴスの場合は視覚効果が極限まで高められた、恐るべき作品を残している。これには、バルサゴスの各アルバムを聴いた者で、余程の感受性が鈍いもの以外は、すぐさま気付くかと思われる。視覚を刺激してくるエピックメタルとは即ち、詩世界に描かれた世界観が立体化して聴く者に襲いかかると表現してもいい。例えば、フィンランド等の民謡を聴いた時などに、ふと大自然が浮かぶことがある。ようはそれが視覚効果である。無論、音楽のみで、視覚効果を生み出すことも可能といえよう。まさしくバルサゴスのインストゥルメンタル曲がそれだ。歌詞は歌われていないのだが、曲のメロディ、雰囲気だけで情景が浮かぶのである。バルサゴスの壮大な世界観が、聴覚もとい視覚として襲ってきたとき、その衝撃はまさしく想像を絶する。彼らの世界に描かれた、太古の帝国や王国が、または中世の戦士達が、もしくは宇宙の星々が目の前に現れるのである。そしてバルサゴスは、ファンなら知っての通り、天才ジョニー・モードリング(key)が製作した爆発的なシンフォニックサウンドを軸に、(視覚効果を持つ)究極のエピックメタルアルバムを完成させていったのである。全く、もうバルサゴスの存在そのものがエピックといっていいのかもしれない。
──う~ん。確かに視覚的な効果があると、よりリアルに感じますよね。
コスマン:それには、世界観が構築されていることが重要となってくるが。それに高い音楽的技術も。才能がなければ不可能なことだ。バルサゴスのメンバーは、天才以外の何物でもないだろうな。
──バルサゴスの人気とかはどうなんでしょう?
コスマン:それは私には分かりかねる質問だ。私のようなマニアの中には、一般的な世界と関わりを打ち切ってしまっている者が多い。大衆の音楽チャートなど見るはずもないだろう。恐らくバルサゴスは、チャートにも載らなかったのではないだろうか。(残念ながら、英語版ウィキにも載っていないようだ)その分、自分の意思で気に入った音楽を選択できるという良さもある。最も、選択は誰にでもできることだ。しかし私は、その"選択"が重要だと考える。映画『THE MATRIX』でも選択は重要だっただろう?誤った選択をすれば、極めてつまらない音楽生活を送ってしまうだろうから。皆はどうか、多くの情報に流されずに、音楽を選択していって欲しいと私は願っている。私はその選択がエピックメタルであった。ただそれだけのことに過ぎない。
──それは調べてみる価値がありそうですね。
コスマン:そうだな。私も時間がある時に調べてみるとしよう。彼らのように本当に素晴らしく偉大なバンドがあまり知られていないのは、余りにも悲しい現実だ。しかし逆に、チャートの上位に入り、商業的な成功を収めてしまったが故に、周囲の期待に応えようと、音楽性を変え悲劇を辿ったバンドも多くいるのが、もう一方の局面である。アメリカのMegadeth(メガデス)も、一時期はそうであった。最も、彼らは今では復活し、世界的なメタルバンドとして活躍してるのは非常に嬉しい。
──どうやらここで時間が来たようです。コスマン・ブラッドリー博士、本日は貴重なご意見ありがとうございました。
コスマン:こちらこそ(笑)私としても今回、未熟者ながら少しでもメタルに貢献できて嬉しい所存だ。是非また、エピックならず、様々なメタルのことをインタビューしてくれ。ちなみに日本で問題視されている歌詞だが、ここで断片的にだが翻訳されている。非常に難しいが、分からないことがあったら何でも私に聞いて欲しい。もちろん私に分かる範囲であるが。
──はい(笑)


*  *  *


 ……このように、コスマン・ブラッドリー博士へのインタビューは無事に終わり、私は『METAL EPIC』編集部に原稿を提出した。案外、上手くいったように思う。
 数ヵ月後、貴重なコスマン氏の意見を反映したこの企画は「コラム・ザ・コラム」と名付けられ『METAL EPIC』誌の一角を飾った。もちろん読み物なので、カラーではないが、なかなか面白いことが書かれていると思ってしまっては、自己称賛に成りかねない(笑)
 しかし、予想外の反響を得たと編集長から私は高く評価さることとなった。以後、この企画は陰ながら続いていくこととなったのである。


この記事に登場する人物、雑誌はフィクションであり、実在の人物及び団体とは一切関係ありません。


Click Ranking for epic metal!
関連記事
コメント
この記事へのコメント
コメントを投稿する
URL:
Comment:
Pass:
秘密: 管理者にだけ表示を許可する
 
トラックバック
この記事のトラックバックURL
http://cosmanbradley.blog129.fc2.com/tb.php/100-6b7507ae
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
この記事へのトラックバック