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Battle Magic



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 2006
Reviews: 95%
Genre: Symphonic/Epic Black Metal



本作は、イギリスが誇るウォーメタルの怪物、バルサゴスの1998年発表の3rdアルバムである。本作も前回と同じく三人のメンバー、バルサゴスのブレインことバイロン・ロバーツ(vo)、天武のシンセサイザー使いジョニー・モードリング(key)、必殺のギターメロディ奏者クリス・モードリング(g)により制作された。もはやこの超絶トリオは、メタル界屈指の特異な集団として、モータヘッドのトリオに匹敵するくらい有名になってしまったかも知れない。アルバムは、エピック・ヘヴィメタルの名作である前二作と同じく、不遇なヘヴィメタル界に著しく貢献するアンダーグラウンド・レーベルの一つであるカコフォノス(Cacophonous)よりリリースされた。同国イギリスのクレイドル・オブ・フィルス(Cradle Of Filth)の初期のアルバムも、このレーベルよりリリースされたのである。

今作を語る前に、前作での成功を振り返ってみることとしよう。1996年に発表されたバルサゴスの2ndアルバムにあたる前作『Starfire Burning Upon The Ice-Veiled Throne Of Ultima Thule』は、これまでのサウンドスタイルを突如として変容し、そのファンタジックかつシンフォニックなサウンドで、一部ではウォーメタル、バーバリアンメタルなるジャンルを確立するに至った。バルサゴスの成長には、誰もが信じられない思いだった。この変化は、バルサゴスもといバイロン卿の夢の実現において必要不可欠な必然性を齎した。サウンドの驚異的な進化が、アルバムの充実に繋がったのは言うまでもなく、結果的に彼らは、エピカルなシンフォニックブラックの異端児として、大きくファン層を獲得するに至ったのである。

そして、今回、エピック/シンフォニック・ブラックメタル──その特異な音楽性から一部では、ダーク・ファンタジーメタルとも形容された──の歴史的名盤である前作から更に一変、サウンドはまたもや驚異的な進化を遂げた。前作は、ブラックメタル特有の邪悪な雰囲気を醸し出す、実に攻撃的な作品だった。元々バルサゴスは、シンフォニックなブラックメタルであり、暴虐性を有してはいたが、大仰なシンセサイザーにその猛烈な暴虐性を乗せることにより独自の世界観を確立した。そして、特筆すべきはやはり歌詞世界であり、凄まじいまでに壮大な英雄叙事詩物語が一曲一曲の中に内包されている。その歌詞は、更に今作で推し進められたものとなり、公式の歌詞の中には小説ほどの長さのものまで存在しているのだ。

このように前作では、ダーク・ヒロイックファンタジーともいえる剣と魔法の古典的な世界を描ききったが、今回の舞台は、なんと中世──正確には、音楽性が中世に酷く類似している──であり、サウンドもそれに比例し、途轍もなくスケールの巨大な一大スペクタクルとなっている。まさに、バルサゴスによって、正式な「ヒロイック・ファンタジー」の世界がようやく描かれたということである。バルサゴス=バイロン・ロバーツ(vo)が長年夢見てきた、中世の戦いの再現が本格的に、遂に実践されたのがこのアルバムなのだ。歌詞には、前作の続編が納められたり、新たな短編が描かれているものもある。当然の如く、中世を歌った曲(彼らの場合、幾つもの次元間を舞台にして歌詞を書いているため、一概に中世とは言えない。例えるなら、エルリック・サーガの新王国のような別の惑星の中の極めて中世的な世界、という捉え方が適しているだろう。もちろん主な舞台は古代の地球ではある)も存在し、雰囲気を盛り上げている。

特筆すべきは、このアルバムの楽曲は、どれもが信じられないほどのクオリティの高さを維持しているということである。徹底的に制作され、かつ大胆に盛り上げられているのだ。それは、勇猛果敢な異世界の勇士の姿にも映る。まるで、ハワードの英雄像が、現世に蘇ったかのような感覚である。高潔と野蛮性の融合。この唯一無二のサウンドこそが、バルサゴスという怪物を象徴しているのである。また、本作では美しくも幻想的なメロディを多用し、その中世的な煌びやかなメロディによって、恰も別世界にいるかのような視覚効果をリスナーに齎している。これは、ある種、映画のような感覚に近い。とくかく、勇ましくエピカルでスペクタクルなサウンドである。 ギターメロディ、シンフォニー、スピード、全てが確実に進化を遂げている。ギターメロディに関しては、今作で更にヒロイックなロマンティシズムを感じる調子となっており、聴き手の印象に深く残る。果たして、本作が一般的なシンフォニック/エピック・ブラック・メタルに属するかは疑問である。例えるならヒロイックファンタジーそのものとでもいうのだろう。



1. 戦いの魔法
Battle Magic
このイントロダクションは、《黒兜谷》で歌われたという戦士王ケイレン=トーとその戦士らの凱歌である。静かに、しかし盛大なメロディを奏でる物語へのプロローグ。ファンタジーゲームのサウンドトラックのような、映画音楽に匹敵する幻想的な曲である。イントロから唯一無二の世界といえよう。

2. 鋼の肉体(戦士のサガ)
Naked Steel (The Warrior’s Saga)
曲名から察しがつくかと思うが、運命によって定められ、伝説的な戦士となる男のサガを歌うエピックメタルである。彼の振う剣は、《赤い歯》と題され、その鋭利な刃は、ドワーフによって鍛えられている。ファンタジックなメロディを伴い、凄まじい速さで雪崩込む様は圧巻といえる。アルバム開始早くも、ヒロイズムの頂点を極めた曲である。しかし、彼らの場合、戦士のドラマを誘う静かで哀愁を誘う場面も忘れることはない。クライマックスでは、いきなり辺りが静まり返り、まるで戦士の哀愁とでも形容するかのような抒情的なギターメロディが奏でられる。そこから盛大なシンフォとドラムが雄々しく打ち付けられるという栄光の展開においては、もはや言葉もない。

3. 深き木からの物語
A Tale From The Deep Woods
古のイングランドにて、主君に対する忠誠を誓う一人の勇敢な騎士の叙事詩。そして、これぞヒロイックファンタジーメタルである。魔法の怪しさに満ちた幻想的な雰囲気から始まり、RPGのような劇的な展開を見せる。突然ヒロイック極まりなりない勇敢で興奮に満ち溢れたギターメロディに紡がれて、一気に盛大な盛り上がりを見せるパートは圧巻であり、もはやここは剣と魔法の世界かとの錯覚を覚える程の視覚刺激を与えてくる。エピックメタル界でも歴史的に類を見ない、劇的極まりないパートだ。

4. イス最高会議幹部会への帰還
Return To The Praesidium Of Ys
半神ズゥラの邪悪な野望を語る曲である。彼は、風の精に魅了されており、操られている。怪しげな中世の交響曲的旋律から、バイロン卿の語りまで、緊張感が決して消えない荘厳な曲といえる。本当に、ここまでくるとファンタジックなメロディの乱舞としか言いようのない。一体どこからこのように盛大でファンタジックなメロディを次から次へと繰り出せるのだろうか……。後半では、お決まりともいえる劇的な展開が待っており、交響曲のような進行に語りが加わるパートは、至高のパートといえる。ラストに至っては、一気に勇ましいメロディと共に見事な完結を見せる。

5. 水晶の欠片
Crystal Shards
偉大なるイスの海軍の出港をズゥラが見つめている場面をインストゥルメンタルにした曲。聴いてみると驚きだが、今まさにイスの海軍が出向するという栄光に満ちた光景が目に浮かぶ。あまりにも盛大なシンフォニーである。ここまで壮大だと感動的すら覚える。

6. 極北の帝国の紋章の下に煌く千本の剣の輝き(エピソードⅡ:混沌の闇の君主は魔法をかけられたアズーラ・カイの神殿で解き放たれる)
The Dark Liege Of Chaos Is Unleashed At The Ensorcelled Shrine Of A’zura-Kai (The Splendour Of A Thousand Swords Gleaming Beneath The Blazon Of The Hyperborean Empire Part: II)
名高くも彼らの物語の代表作であるハイパーボリアのサガの第二章。偉大なるハイパーボリアの王と混沌の闇の君主アングサールの決戦を描く本作であるが、この第二章では、右手に《影の剣》を、左手に《メラの水晶》を持つハイパーボリアの王とその軍勢が遂にアングサールの死霊軍とアズーラ=カイ神殿にて激突する。しかし、王の持つ神秘の《メラの水晶》がアングサールの最強の死霊に強奪され、アングサールは人間の世界に再び実体化してしまうこととなる。王とアングサールの最後の戦いは、5thの#6に続くことになっている。肝心の楽曲の方は、三章と続くサガの中では、最高傑作となっているように感じる。完璧なるヒロイックサーガであり、王の台詞、極北を思わせる雄大なメロディ、激烈な疾走感が高揚感を極限まで高める。もしかしたらこの曲のタイトルは、メタル界で最も長いのでは...?

7. 嵐の末裔が乗りつけし時
When Rides The Scion Of The Storms
永遠の戦士として幾多の転生を繰り返す、カレブ・ブラックスローンの戦いの歴史が語られている。彼は、栄光を享受したアトランティスの兵士であり、ローマの剣闘士でもあった。また彼は、伝説的なアーサー王の軍隊から鋭い一撃を見舞われ、ヘイスティングスの戦いに参戦した戦士でもあった。そして時には、考古学者にも……。本曲は、あまりにも凝り過ぎた曲の一つに数えられる。中世といよりは、もはや全銀河のヒロイズムを表現したかのような劇的な曲であり、大仰極まりない。特に、サビであろうと思われる、中世の美しく勇ましいシンセと共に激烈な疾走と台詞を吐き捨てるパートは、悶絶ものである。しかし、これだけでは終わらず、中間にいきなり静まり返り、戦士のヒロイズムとでもいうようなギターメロディが奏でられるパートが出現する。そして、そこから、ロード・オブ・ザ・リングを思わせる英雄的なシンフォニーを伴い、サビでの激烈な疾走をもう一度繰り出すクライマックスが英雄像の如く待ち構えており、破滅しそうなほどの興奮と高揚感を覚える。

8. 円形闘技場砂で覆われ血で満たされん
Blood Slakes The Sand At The Circus Maximus
イケニ族の一人の戦士がローマ軍に捕えられ、自身の崇める神ケルヌンノス──古代ケルト神話の冥府神──にかけて、巨大な闘技場の砂を血で赤く染めるという歴史的エピック。また、リドリー・スコット監督の歴史大作映画『グラディエーター(Gladiator)』に影響を受けて制作された楽曲であるとバイロン卿は明かしている。そして、この曲は、バルサゴスの生み出した数ある名曲群の中でもベスト3には入るだろう神曲である。約9分に及び、そのすべてを一つの魔法の交響曲に注ぎ込んだ恐ろしいまでに壮大な楽曲である。聴けば、一大スペクタクル映画を見たかのような感動と興奮に包まれる。光り輝く黄金のロリカに身を包んだ古代ローマの強力な軍隊が、王者の街道を勇壮に行進するかの如く、勝者の盛大なクラリオンが天上に木霊し、巨大な円形闘技場で行われた生と死の決死の戦いが再び蘇る。中間部の微かな歓声と戦士の決意の表明は、ヒロイズム故に時が止まった瞬間である。バルサゴスが模索し続けた、一つの終着点ともいえる曲だろう。

9. 闇からの妨害(ヴァンパイアハンターの刃)
Thwarted By The Dark (Blade Of The Vampyre Hunter)
恋人が吸血鬼となり、彼女を殺めたことに悔いを残し冒険を続ける世界最高の吸血鬼ハンター、ヨアヒム・ブロッグの冒険譚。彼の刀は、黒く魔力を帯びており《破邪》と呼ばれる。勇ましく幻想的なエピックメタルである。極めて中世的な、美しいメロディの導入など、彼らは衰えを知らない。サビでの台詞を次から次へと叫ぶところは勇ましい。また、ハイパーボリアと同様、ブロックの持つ刀「マサユキィィスティィィィル」の絶叫はあまりにも有名である。

10. アトランティスの終焉...
And Atlantis Falls...
壮大なサーガにアトランティスの陥落と共に終わりを告げる映画的なエピローグ。歴史の観測者アルタルスは語る。突如として大海がせり上がり、飢えた獣のように大地に襲い掛かり、輝かしき栄光のアトランティスは、瞬く間に大海に呑み込まれてしまったのだと。 悲劇的な場面を見事に表現しており、一つの時代、一つの世界が終わりを告げる儚い瞬間を感じることができる。このようにアトランティスは陥落したが、詩に語られているように、戦士と魔術師たちの夢の中に生き続けるだろう。思い出として……。感動的な終焉である。



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コメント
この記事へのコメント
名盤
僕が初めて購入したBAL-SAGOTHのアルバムがこの「BATTLE MAGIC」。
僕のお気に入りの一枚で、今でも聴きます。まさにヒロイック・ファンタジーのサウンドトラックの如く展開する通常のメタルを超えた珠玉のBAL-SAGOTHワールド。僕は聴くたびに現実の世界を離れ、異世界に飛び込んだ気分になります。名盤です。
2010/09/03(金) 18:01 | URL | Taka #-[ 編集]
返信
コメントありがとうございます。
私もこのアルバムにはとても世話になっていると共に、思い出があります。
私がバルサゴスで始めて購入したアルバムは5th「アトランティス・アセンダント」でした。このアルバムを購入するのに、バンダレコードというCDショップで注文をしました。店内ではもちろん売っていないし、当時の私は通販できる環境ではなかったからです。私は5thアルバムを何度も聴きました。しかし私はまだバルサゴスのアルバムをこのアルバムしかもっていなかったのです。
約1年ほど経って私はインターネットの環境を導入して、まず始めにしたのがヘヴィメタルの輸入盤を通販することでした。しかし残念なことに、バルサゴスのアルバムはことごとく在庫がありませんでした。私は諦めることなく、アマゾンのマーケットプレイスやオークションを駆使してようやく、バルサゴスのアルバムを今では全て手に入れていますが、その内ネットで始めて購入したのが「バトル・マジック」なのです。私はこのアルバムを聴いた時に、5thとは違った印象を抱いたことを鮮明に覚えています。バルサゴスは全てのアルバムが異なっているとよくいわれますが、まさにその通りで、私はとても衝撃を受けました。そしてバルサゴスのアルバムを全て手に入れたくて仕方なくなり、このように入れ込んでいったのです。そういう意味でも、3rdアルバムは記念すべき名盤(バルサゴスの中でもです)で、重要なアルバムなのです。

長くなりましたが、私の昔の話でした。バルサゴスは生涯通して聴いて損のない偉大なメタルバンドだと思います。
2010/09/05(日) 02:05 | URL | コスマン・ブラッドリー #-[ 編集]
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