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Silverthorn



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2012
Reviews: 85%
Genre: Epic/Melodic Power Metal


アメリカのエピック/メロディック・パワー・メタル、キャメロットの2012年発表の10th。


「Steamhammer Records」より発表。ロイ・カーン(Roy Khan)が脱退し、トミー・カレヴィック(Tommy Karevik:vo)が加入。19世紀を舞台としたミステリアスなコンセプト・アルバムであり、名作『Karma』(2001)期のドラマティックなメロディック・パワー・メタルのスタイルに回帰。華麗に疾走し、幽玄に彩られた背景で、荘厳なクワイアを響かせる。トミー・カレヴィックはキャメロットのサウンドに馴染んだ歌唱を披露。なおゲストにアマランス(AMARANTHE)のエリゼ・リード、ジ・アゴニスト(THE AGONIST)のアリッサ・ホワイト=グラズなどを迎える。



1. Manus Dei
2. Sacrimony (Angel of Afterlife)
3. Ashes to Ashes
4. Torn
5. Song for Jolee
6. Veritas
7. My Confession
8. Silverthorn
9. Falling Like the Fahrenheit
10. Solitaire
11. Prodigal Son
12. Continuum


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Poetry for the Poisoned



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2010
Reviews: 84%
Genre: Epic/Melodic Power Metal


アメリカのエピック/メロディック・パワー・メタル、キャメロットの2010年発表の9th。


「KMG Recordings」より発表。グレン・バリー(Glenn Barry)が脱退し、ショーン・ティブベッツ(Sean Tibbetts:b)が復帰。サヴァタージ(SAVATAGE)のジョン・オリヴァ、エピカ(EPICA)のシモーネ・シモンズ、その他ガス・Gなど多彩なゲストを迎える。従来の重厚かつプログレッシブな作風を踏襲し、幽玄な雰囲気を持つ。♯10~♯13では「Poetry for the Poisoned」という長編を描く。



1. The Great Pandemonium
2. If Tomorrow Came
3. Dear Editor
4. The Zodiac
5. Hunter's Season
6. House on a Hill
7. Necropolis
8. My Train of Thoughts
9. Seal of Woven Years
10. Poetry for the Poisoned, Pt. I - Incubus
11. Poetry for the Poisoned, Pt. II - So Long
12. Poetry for the Poisoned, Pt. III - All Is Over
13. Poetry for the Poisoned, Pt. IV - Dissection
14. Once upon a Time


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ゴースト・オペラ



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2007
Reviews: 80%
Genre: Epic/Melodic Power Metal


アメリカのエピック/メロディック・パワー・メタル、キャメロットの2007年発表の8th。


壮大なエピック・メタルを展開してきたアメリカのキャメロットが、オーセンティックなメロディック・メタルに回帰したのが本作『Ghost Opera』である。宮廷の豪華な飾りを取り去った後に残るものが質素な木材であるように、本作のサウンドもまた、キャメロットが築き上げてきた個性を消失させるような、意表を突く内容を収めたものだ。故に代表作『Epica』(2003)の叙事詩的な世界観やサウンドに魅了されたというファンは、僅かばかりの幻滅を覚えることは必死。しかし、既にキャメロットがこの分野において世界的なバンドとなったように、楽曲のクオリティが平均を下回る、ということは起こっていない。単純に今作が叙事詩的なテーマから外れた、よりリアリスティックな内容を描た作品、という趣旨を理解すれば、ファンは『Ghost Opera』を十分に楽しむことができる。最も叙事詩的なテーマから外れた詞世界を描いた場合に、サウンドが普遍的なメロディック・パワー・メタルに接近するということは、致命的であるかも知れないが。



1. Solitaire
2. Rule the World
3. Ghost Opera
タイトル・トラック。幽玄なオーケストレーションの響きが遠大なムードを醸し、攻撃的なサウンドが切迫した緊張感を放つ。
4. The Human Stain
5. Blücher
6. Love You to Death
7. Up Through the Ashes
8. Mourning Star
9. Silence of the Darkness
10. Anthem
11. EdenEcho


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ザ・ブラック・ヘイロー



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2005
Reviews: 82%
Genre: Epic/Melodic Power Metal


アメリカのエピック/メロディック・パワー・メタル、キャメロットの2005年発表の7th。


エピック・メタル的な音楽性を強調したことで大絶賛を得た『Epica』(2003)の正式な続編である本作『The Black Halo』は、全体的にダークな雰囲気が増した作風であり、錬金術師アリエル(Ariel)を主人公とした一連の物語を終結させる内容である。前作でアリエルは最愛のヘレナを体内に宿した子共と共に失った。その喪失感がアリエルの感情を支配し、新たに求愛してきた女性マルガリータ(Marguerite)を拒絶する。愛を失ったアリエルは、本来の目的であった真理の探究に向かう。アリエルは十字架に磔にされたキリストに疑問を投じるが、何の返答も得られないことを知り、深く絶望する。アリエルが生涯に幕を閉じようとした時、彼は人類の弱さの象徴であるメフィスト(Mephisto)と対峙し、その果てに人間の真理を知った。

『The Black Halo』は『Epica』のような明確さには欠けるが、本作の内容は凝縮された一つの叙事詩的作品と呼ぶに相応しく、芸術的な作品が決して万人に理解できるものではない、という趣旨を含んでいる。故に『The Black Halo』は陰鬱であり、朦朧としていて、複雑であるが、キャメロットが追求してきたエピック・メタルを完成させるに至った作品である。これまでに様々な形でヘヴィメタル・バンドはエピック・メタルを追求してきたが、伝統性に富むアンダーグラウンドからの影響を遮断し、独自の理論でこの分野を極めたのが、正しくキャメロットである。なお本作にはノルウェーのブラック・メタル・バンド、ディム・ボガー(DIMMU BORGIR)のシャグラットがメフィスト役、オランダのゴシック・メタル・バンド、エピカ(EPICA)のシモーネ・シモンズがマルガリータ役としてそれぞれゲスト参加している。



1. March of Mephisto
劇的なオーケストレーションが物語の開始を告げる名曲。厳かな雰囲気に重厚なサウンドが加わり、より濃厚な世界観を描くことに成功。
2. When the Lights Are Down
3. The Haunting (Somewhere in Time)
4. Soul Society
5. Interlude I: Dei Gratia
6. Abandoned
7. This Pain
8. Moonlight
9. Interlude II: Un Assassinio Molto Silenzioso
10. The Black Halo
タイトル・トラック。へヴィなリフとシンフォニックなサウンドを絡ませる。
11. Nothing Ever Dies
12. Memento Mori
およそ9分に及ぶ大作。長編のストーリーが劇的な顛末を迎える。
13. Interlude III: Midnight - Twelve Tolls for a New Day
14. Serenade


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Epica



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2003
Reviews: 89%
Genre: Epic/Melodic Power Metal


アメリカのエピック/メロディック・パワー・メタル、キャメロットの2003年発表の6th。


アメリカのキャメロットがエピック・メタルのスタイルを強調し始めたのは、特に前作『Karma』(2001)からだが、欧州のヘヴィメタルの持つ伝統的な世界観を自らの楽曲に取り入れた挑戦は、大いに成功した。『Karma』は様々な方面のリスナーから絶賛され、メロディック・メタル、及びエピック・メタルの新たな名作となった。今作『Epica』はキャメロットの第6作目の作品であり、ドイツの作家、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの名作『ファウスト(Faust)』をモチーフとしたコンセプト・アルバムである。キャメロットは『ファウスト』を下敷きとしたオリジナルの物語を作り上げた。物語は錬金術師アリエル(Ariel)を主人公とした真理の探究であり、恋人であるヘレナ(Helena)と堕天使メフィスト(Mephisto)との間での愛憎の葛藤を描いている。メフィストは天国から追放された身であり、神との賭けによって、アリエルの魂を捕らえることができれば、天国に帰還することができる。なおアルバム・タイトルの"Epica"とは、「叙事詩」という意味の他に、人間の内宇宙の象徴、及び理性や精神を表しているという。シンフォニックかつメロディックなエピック・パワー・メタルの一大傑作でもある『Epica』は、前作『Karma』がそうであったように、イントロダクションに次ぐ"Center of the Universe"、"Farewell"といった劇的な流れでファンの耳を惹きつける。以前のキャメロットを遥かに凌ぐメロディの質、及び文学的なテーマを選択したことによるシリアスさも増し、メロディック・メタルが決して子供じみたものではない、崇高な芸術作品を生み出せることを証明した傑作である。



1. Prologue
2. Center of the Universe
本作を代表する劇的な名曲。流麗なメロディが知的に疾走する。
3. Farewell
荘厳なスピード・ナンバー。アリエルの探求の始まり。文学的な旋律が大仰なアグレッションを発揮する。
4. Interlude I (Opiate Soul)
5. The Edge of Paradise
6. Wander
耽美的な世界観を極めた楽曲。アリエルの絶望を歌う。ロイ・カーンのヴォーカルが光る。
7. Interlude II (Omen)
8. Descent of the Archangel
9. Interlude III (At the Banquet)
10. A Feast for the Vain
11. On the Coldest Winter Night
12. Lost & Damned
13. Helena's Theme
14. Interlude IV (Dawn)
15. The Mourning After (Carry On)
16. III Ways to Epica


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Karma



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 86%
Genre: Epic/Melodic Power Metal


アメリカのエピック/メロディック・パワー・メタル、キャメロットの2001年発表の5th。


1991年のアメリカのフロリダ州で結成されたキャメロットは、その名前のドラマティックな由来の如く、アメリカ産ながら極めて欧州的なサウンドを有した音楽性を追求し、一部において絶大な支持を獲得していた。前作『The Fourth Legacy』(1999)はメロディアスなヘヴィメタル作品として強力な一枚であり、元コンセプション(CONCEPTION)のロイ・カーン(Roy Khan:vo)のヴォーカルが際立っていた。今作『Karma』においても、ロイ・カーンのエモーショナルなスタイルは健在であり、よりエピカルな方向性へと傾倒したキャメロットの世界観を妖艶に歌い上げている。ノルウェーの作曲家、エドヴァルド・グリーグの「ソルヴェイグの歌(Solveigs Sang)」を引用した"Forever"や、大河の流れの如き"Karma"などの壮大な楽曲は、キャメロットが生み出した最高の名曲に数えられる。なおキャメロットは中世の世界観へ傾倒しているが、それを象徴しているのが、「血の伯爵夫人」エリザベス・バソリー(Elisabeth Báthory von Ecsed)を題材にした長編のトリロジー"Elizabeth"である。永遠の若さを保つために処女の生き血に浸かったというこのテーマは、ブラック・メタルでも頻繁に扱われているものだ。



1. Regalis Apertura
2. Forever
3. Wings of Despair
4. The Spell
5. Don't You Cry
6. Karma
7. The Light I Shine on You
8. Temples of Gold
9. Across the Highlands
10. Elizabeth Part I: Mirror Mirror
11. Elizabeth Part II: Requiem for the Innocent
12. Elizabeth Part III: Fall from Grace


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  11月24日、本日付けでリスト欄を更新。閲覧は上のメニューバー、または下記の直接リンクを参照にして頂きたい。

・『The List



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Roma



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2012
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal


イタリアのローマ発祥、NWOMEM最強の使徒、マーティリアの2012年発表の5th。


「元老院とローマの市民」
 ──S.P.Q.R.





前作『On the Way Back』(2011)から僅か一年での第5作目の発表、及び最重要人物であったリック・マーティン・アンダーソン(Rick Martin Anderson)の脱退という損失にも関わらず、圧倒的なテンションを保持した迫真のエピック・メタル作品を完成させたことは、かつてのヴァージン・スティールの如く、まさに才能の開花として、マーティリアの名は新時代のエピック・メタル史に記録されるものとなった。アンディ・メナリオ(Andy "Menario" Menariri:g、key)はリック・アンダーソンの脱退を「マーティリアの進化の過程での必要な結果」として語り、新しく選ばれたフレディ(Freddy:vo)は、前任者の強烈な個性をものともせず、違和感なくマーティリアのサウンドに溶け込んでいる。その自信の表れは、本作での極めて強烈なアグレッション等に代表され、特別な力を持って、新たな叙事詩の創作に尽力している。



第一作『The Eternal Soul』(2004)のジャケットが、強烈にイマジネーションを刺激してローマを彷彿させるものであるように、ローマで誕生したマーティリアにとって、その影響から逃れることは不可能であった。北欧のヘヴィメタル・バンドが母国のフォークロアな要素を取り入れているように、何れマーティリアがローマの歴史に触発されることは、必然的な結果であった。故郷からの影響は、あらゆる民族がそれらの起源に影響されているように、恰も種族間の血筋の如く、これを逃れる術はないものとして、多くの人間には考えられている。即ちマーティリアの『Roma S.P.Q.R.』は、古代ローマの歴史と伝説に関するコンセプト・アルバムであり、紀元前753年にローマを建国したロムルスの伝説から始まり、ローマ帝国の敵として君臨したカルタゴのハンニバル、北方のゲルマン民族、及びフン族のアッティラに関して触れ、やがて訪れる帝国の衰退の様が、叙事詩的に描かれている。本作の最後では、ローマ帝国に抵抗した奴隷の英雄スパルタカスの軌跡が描かれており、英雄叙事詩らしく幕を閉じるに至っている。なお本作のアルバム・タイトルともなっている"S.P.Q.R."の文字は、「元老院とローマの市民(Senatus Populusque Romanus)」という意味を持ち、これらは現在もローマの日常生活で目にすることができる。

『METAL EPIC』誌より抜粋:

マーティリアの実力が、地中海のエピック・メタル・バンドの中でも頭一つ飛び抜けたものであることは、本作『Roma S.P.Q.R.』の発表によって、より広義に知れ渡ることになった。アメリカの地下を起源とするエピック・メタルが、商船に揺られて広大な海洋を渡ったかの如く、ヨーロッパへと流れ着いたことは必然的であったが、その分野を、恰も自らが唯一無二の創造者とでもいうように、自身の絶大な才能の産物としているのが、このマーティリアというバンドに他ならない。イタリア・ローマ出身のアンディ・メナリオによって1987年に結成されたマーティリアは、模造品で溢れ返る陰惨な現代において、真のエピック・メタルをリスナーに提供する希少な存在であり続けてきた。そして、潔白な事実を証明するかの如く、今作においても、"叙事詩"または"マーティリア"と形容する他ない、迫真のエピック・メタル作品が完成するに至った。本作の如何なる場面を切り取ったにしても、その暗い亀裂から生じてくるものは、立体的な質感を伴ったエピック・メタルの音楽性である。古典的なヘヴィメタルを体現しているのと同時に叙事詩的な物語をも描いているマーティリアの楽曲は、本作で誕生した新しい名曲"Tale of Two Brothers"や"Spartacus"に代表されるように、ローマ帝国の巨大な歴史に挑戦を迫り、太古の古典劇の如き情熱的なドラマを演じ、聴き手を悠久の過去の産物の世界へと誘っていく。そして、その荘厳な光景を目にするのは、真実、熱烈なエピック・メタル・ファンのみである。



1. Nihil Aliud Quam Superstitione
ナレーションによるイントロダクション。
2. Collistus Wake
カタコンベにて永眠する聖カリストゥスに捧げられた楽曲。ローマ教皇カリストゥス1世は殉教したことで有名である。これらのカタコンベは、何れもすべてが発掘されたわけではないという。ヘヴィなリフが入り乱れるエピック・メタルであり、バッキングにシンセを用いた深遠なムードも醸し出す。
3. Tale of Two Brothers
ローマ建国の祖、ロムルスとレムスの双子の兄弟の壮絶な宿命を描いた一大叙事詩。アイネイアスの子孫である双子は、幼い頃に狼によって育てられ、自らを川に投げ入れた王アムリウスに復讐を果たし、後に都市を建設すべく立ち上がるが、兄弟の間で争いが起こり、兄ロムルスが弟レムスを殺すに至る。ロムルスは兄弟が育ったパラティヌスの丘にローマを打ち建て、歴史上で最初の王となる。厳かなクワイアが重厚感を伴って遠大に響き渡り、その他すべての旋律が叙事詩的に描かれた傑作である。またこれまでのマーティリアとは異なり、カルト的な雰囲気を逸脱した、洗練されたサウンドを有しているのも大きな特徴。
4. Byzantium
都市ビザンティウムを描写する。ダークなメロディを持つミドル・テンポの楽曲。暗澹とした内容を有し、頽廃的なムードが漂う箇所は、以前のマーティリアに他ならない。
5. Britannia
ナレーション。ローマに思いを馳せる叙情的な詩である。
6. The Northern Edge
ローマを悩ませた北方の蛮族を描く、プログレッシブなエピック・メタル。重厚なメロディと正統派のギター・リフが上手く絡み合う佳曲である。ローマ帝国のコンセプチュアルな内容に相応しい、劇的かつ叙事詩的な展開を有している。
7. Hannibal (Sons of Africa)
「ローマ最大の敵」として恐れられたカルタゴの英雄ハンニバルを歌った楽曲。恰も英雄の武勇であるように、全体にヒロイックなムードが漂い、アップテンポの中にファンファーレを導入するなど、執拗なドラマ性の追求が行われる。
8. Omens
ナレーション。ここから更に緊張感が増す。
9. Ides of March
英雄ガイウス・ユリウス・カエサルを扱ったバラード。笛の音を用いており、その他、古典音楽にも通じるピアノの音色がヴァージン・スティールの音楽性を彷彿とさせる。後半から導入される壮大なクワイアは必聴。
10. The Scourge of God
ローマ帝国を破滅に導いたフン族、及びその王であるアッティラを扱った楽曲。マーティリア最大の攻撃性を誇る屈指の名曲である。鋭角なリフ・パートやクワイアを用いた劇的な演出、及び強烈な疾走パートを含んだ緩急に富んだドラマ性を披露する。後半にかけての波乱の展開は、まさに凄絶。
11. Elissa
従来のエピック・メタルのスタイルを踏襲した馴染み深い異臭が登場する楽曲。エピカルなリフやメロディがテンポよく繰り返される。カルト・エピック・メタルの洗練された完成形であるかも知れない。
12. Burn Baby Burn (Magnum Incendium Romae)
ヘンリク・シェンキェヴィチ作、ローマ皇帝ネロの時代におけるキリスト教の迫害の様を描いた歴史小説『クォ・ヴァディス(Quo Vadis)』に触発された楽曲。ダークなヘヴィネスを伴って展開し、古代ローマ風の重厚なムードによって包まれる。
13. Are You Afraid to Die?
アントナイナスがスパルタカスに語りかけるシーン。スパルタカスは死を躊躇うのか「死は奴隷が知る唯一の自由だ。故に我は死を恐れぬ。故に我らは勝利する」
14. Spartacus
ハワード・ファストの小説、及び原作を基にしたスタンリー・キューブリックの映画『スパルタカス(Spartacus)』(1960)を題材とした楽曲。スパルタカスがローマ軍に大敗を喫した後、奴隷軍の捕虜およそ6000人がアッピア街道にて十字架にかけられた。爾来、ローマで奴隷による反乱が起こることはなくなったという。タイトルの如く、英雄叙事詩的な雰囲気に包まれた名曲である。大仰なドラマ性を強調して描き、静と動を巧みに駆使したヒロイックな内容に、本作の真髄を見ることができる。


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One the Way Back



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2011
Reviews: 84%
Genre: Epic Metal


イタリアのローマ発祥、カルト・エピック・メタルの伝統を今に伝える古代のヘラルド、マーティリアの2011年発表の4th。


ぼくは花嫁姿の君をみた
君の頬は恥じらいで赤く染まる
君の周りには幸福が溢れ
前途には愛が輝いてるというのに
 ──エドガー・アラン・ポー『ソング』より





純粋に"エピック・メタル(Epic Metal)"と形容できる音楽性のバンドが、果たしてどれ程いるのであろうか。まだ我々はそのすべてを把握したわけではないが、決して多数ではない、ということは知っている。明確なエピック・メタルというサウンドや世界観を提示し、そのスタイルを保守的なまでに継続させているバンドは、もはやマニラ・ロードやヴァージン・スティールなどの始祖たちに限られる。近年ではイタリアのドミネ(DOMINE)やドゥームソード(DOOMSWORD)、ロジー・クルーシズ(ROSAE CRUCIS)などのバンドも、極めて正統派に接近した音づくりをしていることからも分かるように、時代と共に本物のエピック・メタルの定義が追求され始め、同じようにファンに求められている。ここに見出すイタリアのローマ出身のマーティリアも、間違いなく真性のエピック・メタルのスタイルを継承している、大変貴重な存在である。



エピック・メタルの分野において特別な才能を発揮するアンディ・メナリオ(Andy "Menario" Menariri:g、key)に率いられたマーティリアは、80年代から続く地下カルト・エピック・メタルの真の後継者であり、その暗澹たるサウンドは、アメリカのローディアン・ガード、及びヴァージン・スティールを強烈に彷彿とさせる。イタリアの「My Graveyard Productions」から発表された第4作『On the Way Back』に至っても、誰も本作が2011年に発表された作品であるとは、到底思うまい。古く古典劇の要素が本作に宿っているように、人間の持つ芸術的な感性をマーティリアは描いている。それらは繊細な詩──詩は詩人マルコ・ロベルト・カペリ(Marco Roberto Capelli)によって書かれた──や知的な構成に結集されている。敢えて前半で抑えられた大仰さは、後半のカタルシスのために必要である。なぜなら、プログレッシブな"The Sower"を皮切りにして、マーティリアの大仰さは、突如として憤怒に満ちた豪雨が大地に降り注ぐように、一斉に外部へと解き放たれるからである。その恍惚の様は、我々エピック・ヘヴィメタルのファンが待ち望んでいた光景以外の何物でもない。
本作『On the Way Back』はすべてが緻密に練られた傑作であり、また古典文学的な深遠さを含んでいる。エピカルな音楽にとって、アメリカ最大の文豪エドガー・アラン・ポーの存在が馴染み深いように、"Song"で題材とされているのは、彼の詩である。本作の最後を飾る"On The Way Back"でモチーフとされているのは、ドイツの作家トーマス・マンの小説『ヴェニスに死す(Der Tod in Venedig)』(1912)であり、マーティリアはインテリジェントな手法でこれらの作品に迫っている。我々が本作を理解するのに時間は掛かるが、本作こそが、エピック・メタルが生み出した真の芸術作品である。"Gilgamesh"に描かれている古代メロポタミア王の叙事詩が、恰も色褪せたパピルス紙から醸し出すように、有史以前の厳粛な雰囲気と、美しい詩とが織り成す陰鬱なストーリーは、人類がかつて閃いた才能を、虚無の大空に投げ掛けている。マーティリアは現代の誰も想像し得なかった素晴らしくも創造的な産物を、古代の建築様式でここに蘇らせたのである。



1. Cantico
第2作『The Age of the Return』(2005)の冒頭に通じる荘厳なクワイアを使用したプロローグ。
2. Drought
どす黒くも暗澹とした陰惨なイメージが漂う楽曲。エピカルなイントロダクションに始まり、頽廃的なメロディがカルト的なムードを醸し出す。まるで天使が地に落ちたかのような、重苦しい世界観が特徴的である。
3. Apocalypse
ルネッサンス音楽風のムードからダークなエピック・メタルを展開。陰鬱なコーラス・パートは堕落を極める。プログレッシブなテンポ・チェンジも含む。なお歌詞の"Nunca mas"とはスペイン語で「2度としない」という意味。
4. Song
ポーの詩『ソング(Song)』をモチーフとした楽曲。この詩は青年期のポーの悲恋を綴ったもの。ポーの文学の如く、知的な構成の中にも暗い皮肉がある。複雑なギター・ワークの絡みは、大人を楽しませるのには十分であろう。
5. Ashes To Ashes
マーティリアの得意とする頽廃的なコーラスを用いたサビが印象に残る。サタニックにも聞きとれる旋律は衝撃的。なお"ashes to ashes, dust to dust"という一説は聖書からの引用。
6. The Sower
尺八風のイントロから開始。前半は疫病によって死滅した都市の如き暗い雰囲気を醸し出し、途中からヘヴィなリフによって爆発する。終始異様な緊張感に包まれ、一貫される。後半ではプログレッシブな展開によってエピック・メタル的カタルシスが爆発する。
7. Gilgamesh
本作のハイライト。冒頭の強烈なリフがすべてを物語る。古代メソポタミアの王ギルガメッシュを歌った英雄叙事詩であり、ウルクの城壁の建設、及びフンババとの戦いなどの英雄的偉業が語られている。カルト的なムードによって支配され、地を這う大蛇の如く、ゆったりとエピカルに展開していく。中間部では大仰さを発揮。なお歌詞にはエドウィン・アーノルド(Arnold, Edwin)の詩『The Light of Asia(邦題:アジアの光り)』からの引用がある。
8. The Slaughter Of The Guilties
古代風の調からヘヴィに展開。立体的なサウンドが、古代世界の荘厳な情景を描き出す。中間部からの劇的な展開を聴き逃す手はない。
9. You Brought Me Sorrow
古代ギリシア風のムードが漂う楽曲。静と動のエピカルなコントラストを持つ。まるで一つの完成された芸術作品であるように、知的にも輝いている。
10. Twenty Eight Steps
厳かなコーラスに導かれる、およそ9分に及ぶ大作。エピカルなムードに包まれ、静寂の中で古代風のメロディを奏でる。一部の重厚なギター・ワーク、及びメロディにはオリエンタルな要素を含み、恰もヴァージン・スティールの名曲"Prometheus The Fallen One"を彷彿とさせる。中間部からはプログレッシブに展開し、マーティリアのインテリジェントな側面を垣間見せる。
11. On The Way Back
ドイツの作家トーマス・マンの小説『ヴェニスに死す(Der Tod in Venedig)』(1912)がモチーフ。ルネッサンス音楽やフラメンコに通じる中世風のアコースティカルな旋律を用いながら、メランコリックに悲劇を描き出す静寂の一曲。本作の締めとしては最高であろう。


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Fede Potere Vendetta Overlod Ed



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2010
Reviews: 93%
Genre: Epic Power Metal


イタリアのティボリ発祥、エピック/ヒロイック・メタルの子孫、ロジー・クルーシズの2010年発表の3rd。


「心得ておくがいい、王子殿下よ、大洋がアトランティスを呑み尽くし、その煌く都邑の数々を滅ぼした時より、アリヤスの子孫が勃興するまでの時の狭間に、今は忘れられた時代があり、数多の輝ける王国が、星々の下の青い外套さながらに、世界に広がっていたことを──ネメディア、オフィル、ブリタニア、ハイパーボリア、黒髪の女性と蜘蛛の巣喰う神秘の塔で知られたザモラ、騎士道で名高いジンガラ、田園地帯のシェムと国境を接するコス、影に守られた墳墓の国スティギア、鋼を身につけ、絹と黄金を纏った騎手を擁したヒルカニアなどである。しかし、この世界で最も誇り高い王国は、夢見る西部に君臨したアキロニアであった。この地にやってきたのがキンメリア人コナン、漆黒の髪に陰鬱な色を湛えた瞳を持ち、剣を手にした盗賊、掠奪者、殺人者であった。途方もなく憂鬱で途方もなく陽気な彼は、宝石をちりばめた地上の王座の数々を、サンダルを履いた足で踏みにじっていったのである」
 ──ネメディア年代記



本作はロジー・クルーシズの第3作『Fede Potere Vendetta』(2009)を英語圏ヴァージョンに新たに録り直したものだ。EP『Venarium』(2010)を経ての発表となる。ロジー・クルーシズが最新作である第3作目を再録した背景には、様々な諸説が飛び交っているが、そのうち、恐らく最大の原因となったのは、音質面での問題であろう。ロジー・クルーシズは前作『Fede Potere Vendetta』を、傑作と称された第2作『Il Re Del Mondo』(2008)より劣る音質で提供してしまった。そしてロジー・クルーシズのファンは、そのことがずっと気になったままであった。

『Fede Potere Vendetta - Overlord Edition』と題された本作は、イタリア語から英語へと変更する際に再録した成果が多大であり、音質面で問題視──しかしクオリティ面では絶賛──された前作で憤りを感じたというファンは、確実に満足する内容となっている。音質がクリアになったことによって、『Fede Potere Vendetta』の内容が如何に素晴らしいものであったか、などという再評価もファンの間では起こっている。専ら歌詞を英語にしたことによって、一部の楽曲では、同郷で類似スタイルのドミネを彷彿とさせる場面も出現し始め、感受性の鋭いリスナーは恐らく指摘するはず。何れも、高尚なエピック・メタル・バンドである事実以外に差異はないのだが。

紆余曲折あったが、エピック・メタルの伝統的なヒロイズムに相応しく、本作こそ正統にして真性のコナン・ミュージックのリバイバルである。汗握る拳で剣を打ち鍛えるキンメリアの鍛冶屋の如く、剣を筆に持ち替えた現代の信奉者らは、蘇った古代の信仰の祈りの言葉を聴くように、『Fede Potere Vendetta』を静寂の中で聴き、同じくその手に汗握ることであろう。即ち原始の人間が感じたであろう恍惚と興奮を、現実の陽光の遠く遮られた秘密の場所に至り、我々も願わくば感ずるのである。Crom!

2012年、8月号、『METAL EPIC誌:ヒロイック・ファンタジーの再訪』より



1. The Fall of the False
1996年の楽曲。ギターを主軸にしたエピカルなインストゥルメンタル。リードギターがダークなメロディを奏で、ドラマ性を高めるナレーションや剣のSEを加える。後半にはテンポ・チェンジと掛け声が入る。
2. Fede Potere Vendetta
1993年の楽曲。タイトル・トラック。イントロダクション"The Fall of the False"のダークな世界観を引き継いだ展開を聴かせる。各パートではスピーディなリフと大仰なコーラスを多用。アグレッシブなサウンドとシリアスなメロディの放つ緊張感が独特。
3. Crusade
1994年の楽曲。およそ7分に及ぶ大作。威厳に満ちたエピカル・リフが扇情的。荒馬の如く駆け廻るヒロイックなメロディ、及び勇敢なムードを発散するヴォーカルが、唯一無二の英雄叙事詩の世界を創造する。マノウォーにも通じるバーバリックなサウンドを提示し、一方のエピローグでは、ヴァージン・スティールを彷彿とさせる劇的な展開も見せる。
4. Anno Domini
1996年の楽曲。ヒロイズムを極めたエピック・メタルである。容赦のない説得力に満ちたサウンドが、劇的なヒロイック・ファンタジーの世界観と狂おしいまでの名演を果たす。リードギターのメロディは極めてセンセーショナルなもの。エピック・ファン待望の一曲であろう。
5. The Nemedian Chronicles
1995年の楽曲。"コナン・トリロジー"の一曲目。コナンの第一作『不死鳥の剣(The Phoenix on the Sword)』(1932)にて描かれている、冒頭の物語の導入部を忠実に再現した内容。ナレーションに至ってはそのままである。なおベイジル・ポールドゥリス作『Conan the Barbarian(邦題:コナン・ザ・グレート)』(1982)のサウンドトラックからのメロディの引用がある。
6. Crom
1995年の楽曲。"コナン・トリロジー"の二曲目。「クロム」とはキンメリア人が信仰する神の名。 完全なるコナン・ミュージックの再臨である本曲は、途方もない臨場感と常識を逸したヒロイズムが宿る大傑作である。冒頭のリードギターの奏でる英雄的な旋律は驚嘆に値する。なお英語盤では、同国のドミネにも通じる独特のムードが漂う。コーラスに至っては、イタリア語盤の方が重厚に練られている印象を受ける。
7. Venarium
1997年の楽曲。"コナン・トリロジー"の三曲目。およそ8分に及ぶ大作。コナンが最初に登場したという、少年時代のヴェナリウム砦での闘いを描く。哀愁に満ちたメロディでヒロイックな世界観を構築し、そこに妖艶かつダークな疾走感を加味した一大傑作である。怒涛の興奮に満ち、荘厳なムードによって支配された英雄たちの世界が、絶えず聴き手を圧倒し続ける。どうやらロジー・クルーシズの音楽では、常に"劇的"であることが当たり前のようだ。
8. Blood-Steel
2009年の楽曲。ヘヴィな疾走曲であり、要所に雄々しい掛け声風コーラスを用いる。劇的な旋律に彩られたリフも素晴らしい演出をする。
9. Yes We Tank
ボーナス・トラック。英語盤にのみ収録。潔く完結している本作の内容に、敢えて蛇足を加える必要はない。


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Fede Potere Vendetta



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2009
Reviews: 91%
Genre: Epic Power Metal


イタリアのティボリ発祥、新世代エピック・パワー・メタル筆頭にしてコナン・ミュージックの継承者、ロジー・クルーシズの2009年発表の3rd。


『Fede Potere Vendetta』について...
ロジー・クルーシズの第2作『Il Re del Mondo』(2008)がデモ第一作『Il Re del Mondo』を再録した内容であることは、以前述べた通りである。注意深いファンは既に気付いているかもしれないが、本作『Fede Potere Vendetta』に至っても、前作で成功を収めた方法論に基づき制作されている。1998年に制作された同名のデモ第2作『Fede Potere Vendetta』に収められていた楽曲が、本作の内容と等しい。しかし、そのままの状態でフルレンス・アルバムの発表に至るという妥協があるはずもなく、ロバート・E・ハワードの名作『コナン(Conan the Barbarian)』の伝説を題材としたデモ収録の"Le Cronache di Nemedia"、"Crom"に加え、今作では新たに大作"Venarium"が追加収録された(またボーナス・トラックとして新曲の"Sangue Acciaio"が収録されている)。この"Venarium"も前述の楽曲と同様にハワードの『コナン』にインスピレーションを受けた作品であり、全3曲合わせて一つの壮大な"コナン・トリロジー"を形成している。これらは現代の時代に適応した正統なソード・アンド・ソーサリー音楽の続編と呼べる代物であり、ロジー・クルーシズはエピック・メタル・シーンで高まりつつある己の名声に更なる上乗せをした。なお本作には、ドイツからグレイブ・ディガー(GRAVE DIGGER)のクリス・ボルテンダール(Chris Boltendahl)がゲスト参加している。

主な批判...
エピック/ヒロイックなヘヴィメタルの分野において、本作は一見して完璧に思えたが、重大な見落としが残されていた。前作『Il Re del Mondo』は読んで文字の如く、楽曲の質、世界観、及びサウンド・プロダクションに至るまで完璧であった。しかし、今作では、サウンド・プロダクションという一つの面において、ロジー・クルーシズは致命的なミスを犯していたのである。正統派ではあるが、タイトル曲"Fede Potere Vendetta"に代表される過去の楽曲のリメイクが、今作では上手く収まらず、結果としてカルト・エピック・メタルのような醜悪な音質を有していることは、如何に前衛的なエピック・メタルのスタイルを持つロジー・クルーシズといえども、大々的な非難は逃れられないであろう。かつては豪傑であったメタリックなサウンドも、チープ極まる音質のために、ダイナミックな迫力が殆ど削がれている。流麗なツイン・ギターのハーモニーは、音量を上げてようやく耳に聴き取れる程度だ。今回、ロジー・クルーシズは確かにソード・アンド・ソーサリー音楽史において偉大な作品を作り上げたが、エピック・メタルを長年悩ませてきた憎き旧敵から、遂に完全に逃れることはできなかった。仮に本作の完全盤が発売されるのであれば、我々は喜んで遠くの街にまで足を運ぶつもりである。



1. La Caduta del Falso
2. Fede Potere Vendetta
3. Crociata
4. Anno Domini
5. Le Cronache di Nemedia
6. Crom
7. Venarium
8. Sangue Acciaio


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Il Re Del Mondo



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2008
Reviews: 92%
Genre: Epic Power Metal


イタリアのティボリ発祥、NWOMEMの代表格、ロジー・クルーシズの2008年発表の2nd。


「エピック・メタル史上窮極のメロディアス盤」
 ──『METAL EPIC』誌



『Il Re Del Mondo』について...
ロバート・E・ハワードの小説を題材とした第一作『Worms of the Earth』(2003)の発表後、イタリアのロジー・クルーシズは、エピック・メタルの偉大な始祖であるキリス・ウンゴルのトリビュート・アルバム『One Foot In Fire』(2006)、次いでマニラ・ロードのトリビュート・アルバム『The Riddle Masters』(2007)に参加して時間を繋げていた。それぞれ提供した楽曲は『One Foot In Fire』に"Death of the sun"、『The Riddle Masters』に"The Fires of mars"である。
間違いなく、ロジー・クルーシズは80年代の正統的なエピック・メタルを継承した新世代のエピック・メタル・ムーヴメント、NWOMEM(New Wave of Mediterranean Epic Metal)における有力株であった。実際に、前作『Worms of the Earth』は世界各地のエピカルなリスナーから予想以上の反応を得ていた。シンフォニックなサウンドを使用せず、硬派なパワー・メタルとエピック・メタルの独創的な世界観が融合したロジー・クルーシズの強烈なサウンドは、将来に対する期待もまた、大きいものであった。前作の発表からおよそ5年の月日が流れたが、ファンはロジー・クルーシズから受けた強烈なインパクトを忘れることができないまま、この日を迎えた。
ロジー・クルーシズ──中世の《薔薇十字団》をモチーフとしたバンド名を使う神秘主義的なこのイタリアのエピック・メタル・バンドは、アンドレア・マージン(Andrea "Kiraya" Magini:g)とイゴール・バッチ(Igor Baccei:g)によって、1988年にティボリで結成された。意味深なバンド名が物語るように、当然の如く、彼らは古典的なエピック・メタルのスタイルを追求し、初期にはキリスト教や中世の神秘主義を扱う歌詞を書いた。現在も受け継がれているバンド名は、その時の名残に過ぎない。
やがてキリス・ウンゴル、マニラ・ロード、ウォーロード、マノウォーといった先人たちに影響を受けて成長していったロジー・クルーシズは、1992年にデモ第1作『Il Re del Mondo』を発表する。そして1998年にはデモ第2作目となる『Fede Potere Vendetta』を発表。この2作目のデモの段階で、どうやらロジー・クルーシズは自分たちに最も相応しい題材を発見するに至ったようであった。テキサス出身の小説家、ロバート・E・ハワードが創造したとされる幻想的なヒロイック・ファンタジーの世界観が、大地に敷石を隙間なく敷き詰めるように、見事にロジー・クルーシズの剛直なサウンドに収まったのである。以降、ロジー・クルーシズは、これらの勇壮な世界観に強烈なインスピレーションを受け、デモ第3作『Promo 1999』(1999)、デモ第4作『Bran Mak Morn』(2001)を矢継ぎ早に発表し、遂に正式な第一作『Worms of the Earth』を発表するに至ったのである。
バンドは尊敬するアメリカのマノウォーと同様のスローガンを大胆に掲げ、新世紀のエピック・メタル・シーンに斬り込んでいった「偽りのメタルに死を!」。またこの時期、幸運な出来事もあった。2002年に、ロジー・クルーシズはエピック・メタルの始祖マニラ・ロードと同郷の実力あるエピック・メタル・バンド、ドゥームソードとの間に友情を結んだのである。
さて、夜空に星々が輝いている必然さのように、ロジー・クルーシズの第2作目が「Jolly Roger Records」から発表された。この『Il Re Del Mondo』と題された本作は、文章を注意深く読んでいれば気付くことであろうが、1992年に発表された第一作目の同名デモ音源の再録盤である。我々はロジー・クルーシズを指してよく"新世代のエピック・メタル・バンド"と呼ぶが、イタリアのドミネやマーティアと同様、彼らの結成の歴史は80年代にまで遡ることができる。これらの地下で活動を行っていたバンドが、どういうわけか、近年、特に2008年以降に急激にシーンへと登場してくるようになったのである。時代がようやくエピック・メタルのインテリジェントな音楽性に追いついたという考察もあるが、真相はどうであれ、結論としてエピック・メタルのシーンは大いに盛り上がった。そして、我々の推測では、ロジー・クルーシズの第2作『Il Re Del Mondo』もまた、新時代のエピック・メタル・シーンに新たな風を吹き込む格好の材料になる、ということである。それも巨大な、暴風を伴う台風のような、凄絶な風によって…
ロジー・クルーシズの大きな成功の要因の一つは、歌詞を母国イタリア語に変え、大仰な歌唱を得意とするジュゼッペ・チャローン(Giuseppe Cialone:vo)の持ち味を最大限に引き出したことだ。前作以上に民族的なインスピレーションを宿したエピック・メタルを展開した事で、以前とは全く異なった印象をリスナーに与えることに成功したのだ。本作の収録曲が制作されたのは1992年頃だが、時代性が齎すイマジネーションの差異を全く感じさせない強烈な内容に至っては、誠に驚嘆を禁じ得ない。はっきり断言してしまうと、前作のロジー・クルーシズとは全くの別物である。
今や豹変したスペインのサウロムにも接近したかのような、新生代エピック・メタルを代表するような前衛的なサウンドが、『Il Re Del Mondo』には収められている。エピック・メタルの一つの神話大系である中世やヒロイック・ファンタジーのテーマに大胆な手法で迫り、幻想的な雰囲気に大幅な説得力が加味された肉厚のサウンドを有し、熟達した叙事詩的世界観を作り上げた本作こそ、未来のエピック・メタルの礎を体現したともいえる、真の歴史的な傑作である。そして、本作を完成させるに至って、シンフォニックなエフェクトは一切使用されてはおらず、厳格にも正統派エピック・メタルの古典的スタイルを固辞し、極限状態での破綻したドラマティシズムを追求したことが、ロジー・クルーシズの達成した最大の偉業に連なっている。これをリスナーのうちの一人が「既にエピック・メタルを超えた」というのであれば、ヤハウェがアブラハムに齎した信託の如く、エピック・メタルの未来は約束されたことになるであろう。まさに新時代エピック・メタルの曙が訪れた。



1. Sacrem Reformationem
1992年の楽曲。妖艶な音色に導かれて開幕する劇的なエピック・メタルの世界。その方向性は他の追随を許さない。
2. Rosa Croce
1991年の楽曲。およそ8分に及ぶ大作。バンド名を冠した渾身の楽曲であり、本作のハイライト。神秘的な教祖クリスチャン・ローゼンクロイツ (Christian Rosenkreuz, 1378 - 1484)によって創設した中世の秘密結社、《薔薇十字団》に関して描いている。ロジー・クルーシズ(ROSAE CRUCIS)という名は、実際の《薔薇十字団》の多くのメンバーに与えられた名であるという。スリリングな疾走パートに深遠なコーラスを導入し、その後一気に雪崩れ込む展開を有する。中間部からはまるで別曲。恰もオペラ会場の如き劇的な顛末に眩暈を覚える。
3. La Chiesa
1990年の楽曲。劇的に疾走するエピック・メタル。メロディックなフレーズに加え、母国語の独特な響きが異様な空間を形作る。スリリングなギタープレイも要所で光る。
4. Contro Il Mio Destino
1991年の楽曲。およそ7分に及ぶ楽曲。シリアスな雰囲気に彩られた絶品のエピック・メタル。随所に配置されたメロディアスなリードギターは強烈に耳を惹きつける。後半から開始される疾走パートはドラマ性を極めている。
5. Il Signore Delle Tempeste
1990年の楽曲。ネオ・クラシカル風なギターが耳に残る。疾走するパートと台詞が導入されるパートにおいて、エピック・メタル特有の異様な緊張感を醸し出す。
6. La Sacra Corona
1991年の楽曲。およそ9分に及ぶ大作。ローマ教皇と十字軍について歌う。異様な雰囲気によって包まれ、恰も大作映画の如き重厚感で聴き手を圧倒する傑作。緻密に練られた芸術的展開、珠玉のメロディがロジー・クルーシズのポテンシャルの高さを物語っている。この大仰さこそがエピック・メタルであろう。
7. Il Re Del Mondo
1992年の楽曲。タイトル・トラック。深遠なムードが全体を包み込む。プログレッシブな展開を有し、静と動を器用に使い分ける。勇壮な疾走パート、及びメロディは絶品。リフにはマニラ・ロードからの影響が顕著である。なおコーラスにはハワードの世界観からの影響も窺える。
8. Ballo In Fa D Minore
ボーナス・トラック。アンジェロ・ブランドゥアルディのカヴァー。


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WORMS OF THE EARTH



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2003
Reviews: 75%
Genre: Epic Power Metal


イタリア出身のエピック・パワー・メタル、ロジー・クルーシズの2003年発表の1st。


「そこでは一つの渦巻く乱流が蠢く影の塊の中に湧き起こっていて、そしてその暗黒の中から這いだしたのは四つ足の獣のような、あるいはまた人間めいた形をしたもので、それがブランの足もとに倒れ込んで這いつくばり、悶えうめき、そしてしゃれこうべのごとき顔をもたげると、死にまどう犬のごとく吠えた」
 ──ロバート・E・ハワード『大地の妖蛆』より



『Worms of the Earth』という物語...
ロバート・E・ハワードの書いた小説の中にブラン・マク・モーン(Bran Mak Morn)という名の英雄がいる。ブラン・マク・モーンの伝説は1930年代のアメリカのパルプ雑誌〈ウィアード・テールズ〉誌に発表され、『Kings of the Night(闇の帝王)』(1930)、『Worm of the Earth(大地の妖蛆)』(1932)という小説が活字になっている。ブラン・マク・モーンは古代民族ピクト人の最後の王であり、ローマ帝国との確執に苦しみ抜いた挙句、数々の不思議な出来事に遭遇する男である("Bran Mak Morn")。この物語はローマ帝国がブリテン島に侵攻した3世紀初頭の時代を舞台としており、戦王ブランはローマ人たちと対峙しているが、圧倒的なローマ帝国の力の前に為す術がない("The Justice of Roma")。悲運の英雄の伝記を語らんと、物語は幕開ける。敵国の内情を知るために、ブランは大使としてローマ内に留まっていた。そんな中、彼の眼前で名もなきピクト人が十字架にかけられた末、惨殺される。殺したのはエボクラムの軍政総督ティトゥス・スラであった。この惨状を目にしたブランは、ティトゥス・スラへの憎悪を募らせ、固く復讐を決意する。夢の中で、ブランは月神教の高僧ゴナルと出会い、地の底に封印されている妖蛆を解いて、憎きローマを滅ぼすという策を見出す("A Wizard in My Dreams")。忠実な戦士ゴナルの協力を得て、ブランはエボクラムを脱出して西方へと馬を駆る("Escape from Eboracum")。辿り着いた湿地の奥地で〈ダゴンの溝〉の魔女と出会ったブランは、暗い伝説に包まれた〈扉〉の場所を聞くに至る。魔女アトラを抱く代わりに、ブランは魔女を道案内させる約束をする("The Dagon's Moore")。やがて魔女によって、〈ダゴンの塚〉の〈黒の碑〉こそが、探し求めていた〈扉〉であることが知らされる。ブランは〈ダゴンの塚〉の底から〈黒の碑〉を盗み出し、〈ダゴンの池〉に投げ入れる。かくして、魔女アトラの導きによって〈扉〉に入ったブランは、〈黒の碑〉を囮にして、地の底で巨大な大蛇の如く蠢いている異様な化物『大地の妖蛆』との取引に応じる("The Black Stone")。戦王ブランの望みは、正式な一騎打ちでティトゥス・スラを殺すことであった。太古より崇めていた〈黒の碑〉を囮にされたために、『大地の妖蛆』はこれを叶えるといった。地底の化物との約束通り、〈黒の碑〉を〈ダゴンの塚〉へと運ぶブランであったが、周辺の異様な変化に気付かない、ということはなかった。かつて、厳粛に輝いていたローマの強固な尖塔が、何者かの力によって倒壊していたのだ("Traian's Tower Falls")。不安を感じたブランは、急いでティトゥス・スラとの決闘の場、即ち〈ダゴンの塚〉の環状列石へと向かった。そして目的地へと辿り着く。しかし、『大地の妖蛆』の人智を超越した諸力によって〈環〉から呼び出されたティトゥス・スラは、既に人間の原形を留めてはおらず、ただ哀れにブランの足元で脈打つのみの存在となっていたのである("Worms of the Earth")。宿敵の無残な姿に悲痛の念を感じ取ったブランは、かつてティトゥス・スラであったものに対し、迅速なる死を、剣による唯一の慈悲を与えることになった("Requiem for Titus Silla")。かくして、ピクト人の王はその目的を果たしたが、その後、『大地の妖蛆』に狙われる身になったと伝えられる。

今作でイタリアのロジー・クルーシズが題材としているのは、このハワードが生涯愛したピクト人の英雄物語であり、主に"1930年代のヒロイック・ファンタジー小説を扱う"エピック・メタルの伝統に大胆な挑戦を行っている。スピーディなパワー・メタルを主軸としたロジー・クルーシズのエピック・メタルのサウンドは、勇壮だが何処か哀愁の漂う幻想冒険譚と共鳴し、神秘的で魅惑的な楽曲群を生み出している。この音楽性に、緊張感に満ちた筆跡のような迫真性、及び有史以前の雄大な文明諸国を彷彿とさせるような重厚感が加われば、何れは完全なハワードの世界が実現するに違いない。我々はその時が訪れるのを、暫し待ちたい。



1. Behind the Eyes of Partha MacOthna
イントロダクション。
2. The Justice of Roma
およそ7分に及ぶ大作。スピーディなエピック・メタル。ソリッドなリフと大仰なコーラスを用いたドラマティックなサウンドが、聴き手の高揚感を存分に高める他、スリリングな展開も有する。
3. Bran Mak Morn
英雄の名を冠したエピック・メタル。劇的なエピカル・リフで疾走し、終始徹底的にヒロイックな世界観を描く。聴き手は息つく暇さえ与えられないであろう。
4. A Wizard in My Dreams
台詞入りのインストゥルメンタル。ハープのような音色を用い、妖艶な雰囲気が漂う。
5. Escape from Eboracum
およそ7分に及ぶ大作。雄々しいメロディを持ち、緩急に富んだ内容を披露する。
6. The Dagon's Moore
哀愁を感じさせるリード・ギターの旋律が印象を残す楽曲。その他、ドラマティックなコーラス・パートも持つが、スピーディな内容は前半と大差がない。
7. Gates to Abominium
ヘヴィかつメタリックなリフ、荘厳なコーラス、エピカルなムードを発散させる楽曲。その大仰なドラマ性は特筆に値する。途中には台詞も入る。
8. The Black Stone
タイトルの〈黒の碑〉は、ハワードが生み出したクトゥルフ神話関連小説のシンボルであり、この『大地の妖蛆』とて例外ではない。シリアスな幻想怪奇の世界観を描き、ドラマ性に満ちたヒロイックな旋律が展開する本曲は、非常に完成度が高い。
9. Traian's Tower Falls
荘厳なコーラスを用いたインストゥルメンタル。徐々に盛り上がり、次曲へと繋がる。
10. Worms of the Earth
タイトル・トラック。圧倒的なスピードで周囲を圧倒し、印象的なコーラスと緩急に富んだ展開とを有する。
11. The Witch
魔女の如き囁き声が不気味な雰囲気を醸し出す場面から、異様を極める。漢らしい哀愁に満ちた楽曲であり、迫真性に満ちたスピーディな展開が、劇的な叙事詩的世界観を構築する。本作で最もハワードの世界観を表現することに成功した名曲であろう。
12. Requiem for Titus Silla
本作のエピローグ。ダークな雰囲気に満ちたギター・インストゥルメンタルである。ミステリアスな雰囲気も宿す。


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Herodotus 

コメント:古代ギリシアの歴史家、ヘロドトス(Herodotus)の鉛筆画。


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 『EPIC WAR』にドミネのレビュー完全版2nd~4thを掲載。閲覧は右のバナー、または下記の直接リンクを参照にして頂きたい。

▶『DragonLord(Tales from the noble steel)』(1999)
▶『Stormbringer Ruler -The Legend of the Power Supreme-』(2001)
▶『Emperor Of The Black Runes』(2003)



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