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In The Shroud Of Legendry



Country: Greece
Type: Full-length
Release: 2009
Reviews: 74%
Genre: Symphonic/Epic/Hellenic Metal


ギリシャ発祥、エピック/ヘレニック・メタルの後継者、アスロスの2009年発表の1st。


『METAL EPIC』誌より抜粋:



アメリカのヴァージン・スティールがエピック・メタルを追求する過程で辿り着き、後にギリシャのリフレクション(REFLECTION)などが継承した古代ギリシャ世界を題材としたエピック・メタルの一派が、その古名に肖って"ヘレニック・メタル(HELLENIC METAL)"と形容されるに至ったのは、遅かれ早かれ、必然的なことであった。アレクサンドロス大王が齎したヘレニズム文化の再来の如く、ヘヴィメタルと古代ギリシャ文化を融合させ、劇的かつ古典的なヘヴィメタルのスタイルを編成したヘレニック・メタルの登場は、エピック・メタル史においても致命的な改革を齎した。ヘラス──古代ギリシャ人は、かつてギリシャ全土をこう呼んでいた──における神話大系、及び英雄叙事詩、悲劇などを題材としたこれらのエピック・メタルは、他の分野で可能性を拓けるバンドが登場する傍ら、ずっと古代の事象を追求していたのである。
その代表作としてヴァージン・スティールの『The House of Atreus』(1999~2000)が大きな成功を収めたことは、後続のヘレニック・メタル・バンドにとってはある種の事件であった。本作はエピック/ヘレニック・メタルのファンから絶賛され、海外の一部のレビュー・サイトなどでは驚くべき高得点をマークした。ヴァージン・スティールの"アトレウス二部作"が古代ギリシャの劇作家、アイスキュロス(Aischylos, 525 - 456 B.C)の『オレステイア(The Oresteia)』を題材としていたことは有名であったが、それに続くかの如く、ギリシャからリフレクションが詩人ホメロスの『オデュッセイア(Odyssea)』を題材とした『ΟΔΥΣΣΕΙΑ (Odyssey)』(2003)を発表したことは、実はあまり知られていなかった。この分野はエピック・メタルの狭きセクションから見ても、あまりにも偏った分野であったのだ。そして、戦地の業火がやがて鎮まるかの如く、ヘレニック・メタルの勢いも次第に衰えていった。



2009年、我々は滅亡したヘレニック・メタルの再興を見る。ギリシャのアテネより突如出現した英雄、セイクリッド・ブラッドが"テルモピュライの戦い(Battle of Thermopylae)"を題材とした第一作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』(2008)で強烈に提示したように、古代ギリシャ世界を不変のテーマとしたエピック・メタルの一派は、完全に死に絶えてはいなかったのである。それらは地下で着々と準備を進める軍隊のように、長年に渡り力を温存していたのだ。そして、その抑えつけられていた強力な力が、恰もカタルシスの如く、一気に解放され始めたのは、誠に近年になってからのことであった。
セイクリッド・ブラッドでも中心人物を務めていたポーリーデイキス(Polydeykis:g、key)が、更なるヘレニック・メタルの再興を訴えるべく挑んだのが、今回のアスロス・プロジェクトに他ならない。ポーリーデイキスの単独のプロジェクトであるアスロスは、その掲げる崇高な理想に相応しく、これまでに確立されてきたヘレニック・メタルの伝統を一身に継承している。当然の如く、歌詞の題材はすべて古代ヘラスに関するものであり、叙事詩的なムードを漂わせる各楽曲では、ヘラスの神々と英雄たちが幾度となく登場する。"Aegean Blue (Poseidon's Realm)"では海の神ポセイドンがテーマとなり、またアスロスは、ギリシャ発祥の古典文学に対しても追求、"Enslaved (A Slave's Odyssey)"などの楽曲ではホメロスの『オデュッセイア』を扱っている。本作『In the Shroud of Legendry - Hellenic Myths of Gods and Heroes』では、これらの時代を超えた叙事詩の中で、勇壮なドリア風の調べによって彩られ、古代の神話、及び神と英雄の燦然たる物語が、恰も大宇宙の巨大なパノラマの如く、優雅に展開される。そのために悠久の古代ギリシャ旋法──アスロスは実際に、インストゥルメンタルの中でギリシャ旋法を用いている──は蘇り、エピック/ヘレニック・メタルのために幻想的な情景を散々と描くのだ。なお本作にはフォークアース(FOLKEARTH)のメンバーに加え、ヴァイキング・メタルでも活躍する女性ミュージシャン、ヒルドル・ヴァルキリー(Hildr Valkyrie)が参加している他、多くのゲスト・ミュージシャンが迎えられている。



1. In the Vineyards of Dionysus
インストゥルメンタル。リズミカルなリフが勇猛に行進する。
2. The Wrath of the Hekatonkheives
勇壮なドリア風の調が真実のヘレニック・メタルを奏でる。古代ヘラスの再現、エピック・メタルに秘められたドラマ性、ヒロイズムを宿した迫真のリフが渾然一体となり、ギリシャ発祥のカタルシスの如く解放される名曲。
3. Aegean Blue (Poseidon's Realm)
魅惑的な民謡調のバラード。海の神ポセイドンをテーマとする。笛の音色と厳かなコーラス、女性ヴォーカルがメランコリックなムードを演出する。
4. The Dance of Kouretes
遠くから聞こえる笛の音色。突如としてメタリックなリフによって静寂は破られ、フォーキーなエピック・メタルが展開する。リズミカルな笛とリフが心地良い。
5. Enslaved (A Slave's Odyssey)
およそ8分に及ぶ大作。ホメロスの『オデュッセイア』を題材とする。スペクタクル映画のスコアに使用されても何ら不思議ではない深遠なサウンド。語りとシンフォニックな味付けのみで構成されており、以外にもギターは登場しない。まさにギリシャ音楽。
6. Hellas Eternal
栄光のヘラスとその長大な歴史を幻視する。ギリシャ人にとって、ヘラスの魂は永遠に輝き続ける星である。シンフォニックなイントロからエピカルなリフへ、厳格なクリーンヴォイスが古代の威厳を物語る。
7. Ulysses Before the Gates of Hades (Necromantia)
ギリシア劇の如き内容のインスト。荘厳な旋律が彩る。
8. Taurokatharpsia (Horns of Power)
ギリシャ民謡がヘヴィメタルと狂乱する楽曲。メロディックなギターが耳を惹く。完成度が一級品故、およそ2分間が惜しい。
9. Areth kai Pomh
勇ましいファンファーレの音色が古代の英雄主義を貫く。神秘的なピアノの旋律も花を添える。
10. Talos Unleashed
官弦楽器を用いた民族的なサウンド。笛の音色が乱舞するパートもある。
11. The First Faun (Song of the Elder)
弦楽器によるインストゥルメンタル。演奏は古代のギリシア旋法を彷彿とさせる。
12. The Son of Amon Ra (Intro)
13. The Son of Amon Ra
"アモン・ラーの息子(Son of Amon Ra)"とはアレクサンドロス大王を指す。アレクサンドロスはエジプトを制圧した際、神官からこのような信託を受けたと伝えられる。なおアモン・ラーとはエジプトの太陽神。波乱に満ちた展開を有するエピック・メタルであり、緩急に富んだ内容であり、随所で劇的な転調を加える楽曲。


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War in Heaven.


Dore1


敵の数は多く、戦いの時は長い。

 ──ギュスターヴ・ドレ




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New Epic Metal Age.



 近年、イタリアを先頭にして新世代エピック・メタル・バンドが次々に登場している。恰も群雄割拠するハイボリア時代の諸王国の如く、これらのバンドもまた、実力がなければファンに認められることはない。ここでは活力ある注目株をいくつか紹介する。


英雄叙事詩譚の再訪。

ROSAE CRUCIS 「Fede Potere Vendetta」(2009)

Fede Potere Vendetta


──イタリアのエピック・パワーメタル、ロジー・クルーシズの第3作。シンフォニックなサウンドを使用しない正統派エピック・メタル史において、極限のドラマティシズムを一心に追求するティボリ出身の逸材である。過去、"エピックメタルの父"ロバート・E・ハワードの小説『Worm of the Earth(大地の妖蛆)』(1932)を題材とした第一作『Worm of the Earth』(2003)を発表し、極めてエピック/ヒロイックな分野へと特化したサウンド、及び世界観を世界各地のマニアたちに向けて披露した。そのスタイルは本作『Fede Potere Vendetta』にも見事に継承されており、本来、デモ『Fede Potere Vendetta』(1998)の流用を含む本作は、新たに〈コナン・トリロジー〉なる名曲を加えた後に完成し、全編が母国イタリア語で歌われる、という仕様である。スペインのサウロム(SAUROM)などにも通じるその勇壮さは常時異様を極めるものであり、前述の3部作(当然の如く、この作品はハワードの小説『CONAN』が題材となっている)に該当する"Le Cronache di Nemedia"、"Crom"、"Venarium"では、ヒロイズムが齎す興奮と恍惚のある種の頂点に達している。これらはエピック・メタルの新時代に金字塔を打ち立てたとでも断言すべき、ロジー・クルーシズの生み出した途方もない傑作群である。なお本作には、ドイツからグレイブ・ディガー(GRAVE DIGGER)のクリス・ボルテンダール(Chris Boltendahl)がゲスト参加。他、2010年には英語圏ヴァージョンである『Fede Potere Vendetta - Overlord Edition』が発売。エピック・メタルのファンならば、こちらも逃す手はないであろう。


真実の時、来たれり。

MARTIRIA 「Time of Truth」(2008)

Time of Truth


──イタリア・ローマ出身の真性エピックメタルの使徒、マーティリアの第3作。元ウォーロード(WARLORD)のリック・マーティン・アンダーソン(Rick Martin Anderson:vo)、ダンウィッチ(DUNWICH)のアンディ・メナリオ(Andy "Menario" Menariri:g、key)を抱えるバンドであることは、エピック・メタルのマニアたちの間では既に有名である。この強力なメンバーに加え、同郷の作家、詩人のマルコ・ロベルト・カペリ(Marco Roberto Capelli)を加えたのがこのマーティリア・プロジェクトである。一見するとエピカルなヘヴィメタル以外は決して誕生してこないようなクレジットだが、本作『Time of Truth』はまさにその王道を貫いた作品。既にアルバム・ブックレットの裏表紙に描かれているジャック・ド・モレー(Jacques de Molay, 1244 - 1314)の肖像画がサウンドのすべてを物語っており、宗教的かつ神秘的なカルト・エピック・メタルが惜しみもなく展開される内容を有している。また今作では、従来のキリスト教的世界観に加え、始祖ヴァージン・スティールが用いたような古代ギリシャ神話をモチーフとした"The Storm (Ulysses)"、"Prometeus"などの楽曲も登場し、叙事詩的な世界観に幅を広げている。その中にあっても、"Give Me a Hero"の突出したヒロイズムには驚きを禁じ得ず、本曲はマーティリアが生み出した最高の名曲の一つに数えられるはずだ。近年は特にエピック・メタル・シーンでの活躍著しいマーティリアだが、ファンは本作が品切れになる前に、是非とも入手しておきたいところ。


新時代の凄絶なる荒波。

BATTLEROAR 「To Death & Beyond...」(2008)

To Death & Beyond


──ギリシャの正統派エピック・パワーメタル、バトルロアの第3作。当然の如く、フィンランドのバトルロー(BATTLELORE)とは全くの別物であり、その迫真のサウンドと叙事詩的音楽に打ち込む堅実な姿勢は似て非なるもの。アメリカの地下エピック・メタルの神、マニラ・ロードを深く崇めるというバトルロアのサウンドからは、80年代エピック・メタルの薄暗い雰囲気と強烈な異臭が漂っている。本作『To Death & Beyond...』も例外ではなく、バトルロアが追求するエピック/ヒロイックなサウンドの極地ともいうべき凄絶な内容が展開され、重厚な叙事詩的リフが巨大な城塞を建設し、勇壮なコーラスが恰も戦地での戦士らの鬨の声の如く木霊する。エピック・メタルらしく、ロバート・E・ハワード、エドガー・ライス・バロウズ、北欧神話の世界観に代表される幻想的な本作の内容は、時にリアリスティックな描写と相俟って聴き手の想像力をも強烈に掻き立てる。劇的な冒頭を飾る"The Wrathforge"、広大な大洋を彷彿とさせる一大叙事詩"Oceans of Pain"、バロウズの『火星』シリーズにインスパイアされた"Warlord of Mars"などを含み、すべてが名曲と断言しても過言ではない完成度を誇っている。エピック・メタルは素晴らしい音楽だと、改めて痛感させられる作品であることは間違いない。結局のところ、80年代初期にマニラ・ロード、キリス・ウンゴルから始まり、幾度となく挫折を体験したエピック・メタルは、今なお進化を続けている。


古マケドニア軍の行軍の如く。

SACRED BLOOD 「Alexandros」(2012)

Alexandros


──ギリシャ発祥のエピック・パワーメタル、セイクリッド・ブラッドの第2作。同郷のエピック・メタル・バンドの中ではバトルロアに次ぐ逸材のセイクリッド・ブラッドは、主にアテネを拠点に活動し、豪傑かつ英雄主義的なエピック・メタルを聴かせている。既にアルバム・タイトルが物語っているように、古代マケドニアの王アレクサンドロス3世の生涯をコンセプトにした本作『Alexandros』の発表によって、その地位を不動のものとした。始祖ヴァージン・スティールのデイヴィッド・ディファイも絶賛したという本作の見事なサウンドは、本格派に相応しく、ダイナミックかつシネマスティックな音楽性を備えた壮大なものである。紀元前334年の"グラニコスの戦い(Battle of the Granicus)"を描写した英雄的な"The Battle of the Granicus (Persian in Throes)"や雄大なメロディを持つ"Ride Through the Achaemenid Empire"では、前作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』(2008)からの大きな飛躍が感じ取れる。本作の完成度を見ても明らかであるように、今後の更なる活躍に期待したい。


神の名をその手に。

WOTAN 「Epos」(2007)

Epos


──イタリアの正統派エピックメタル、ヴォータンの第2作。北欧神話の戦神の名をバンド名に冠していることが既に物語っているように、アメリカのマノウォーを代表とする非常に漢らしい世界観を追求するエピック・メタルの一派に属する。そして、サウンドもそれに相応しく、本作『Epos』では終始徹底したヒロイックな旋律に彩られ、要所で劇的な展開を交えた濃密な叙事詩が披露される。ローマ帝国に反逆したスパルタカスの英雄像をドラマティックに描いた"Spartacus"、勇壮なる"Vae Victis"、フランス最古の英雄叙事詩『ローランの歌』をモチーフとした長大な大作"Le Chanson de Roland"、9分に及ぶ波乱のラスト"Ithaca"など、耳を惹きつける楽曲は極めて多い。シンフォニック・エピックなサウンドも悪くないが、やはりエピック・メタルは硬派なサウンド、英雄叙事詩的なテーマに限り、本来の実力を発揮できる。




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  10月25日、本日付けでレビュー欄及びコラム欄を更新。閲覧は上のメニューバー、または下記の直接リンクを参照にして頂きたい。

・『The Reviews
・『The Columns



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The Kings of Metal, True Metal ?


Lord Of Steel

 アメリカのエピック・メタルの王者、マノウォーの第11作『The Lord Of Steel』が「Magic Circle Music」より発表された。北欧神話の主神オーディンに捧げられた前作『Gods Of War』(2007)発表の後、新作への布石となるEP『Thunder In The Sky』(2009)を発表したマノウォーは、順風満帆に事を運んでいるかのように思えた。しかし、名ドラマー、スコット・コロンバスの突然の死という重荷がバンドに重圧と悲劇を与え、しばしの沈黙を余儀なくされた。マノウォーは体制を立て直すために、初期のドラマーであったドニー・ヘムズィク(Donnie Hamzik)をバンドに再編入させ、第一作目の再録『Battle Hymns MMXI』(2010)を発表。多くの場合、新作は『Thunder In The Sky』で描かれていた緊張感と凄絶なドラマティシズムが支配する壮大なエピック・メタル作品だと思われていたが、実際の『The Lord Of Steel』の内容は異なる軌道にあった。初期の正統派メタルを踏襲した作風に回帰した『The Lord Of Steel』では、『Gods Of War』のような大仰なオーケストレーションやエピック・クワイアを抑え、シンプルかつオーソドックスなヘヴィメタル・サウンドが披露されている。緻密に構成された小曲の導入や難解な展開、及び大仰なナレーションが全編を占めるなどという楽曲は存在していない。近年のマノウォーのエピック/シンフォニック路線には、一部のファンの間では賛否に分かれていたが、これでそのファンたちも納得するはずだ。なお収録曲は以下の通り。


1. The Lord Of Steel
2. Manowarriors
3. Born In A Grave
4. Righteous Glory
5. Touch The Sky
6. Black List
7. Expendable
8. El Gringo
9. Annihilation
10. Hail, Kill And Die


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 『METAL EPIC』のレビューの中からキリス・ウンゴルの1st~4thまでを加筆。詳細は以下の通り。

▶『Frost & Fire』(1980)
▶『King of the Dead』(1984)
▶『One Foot in Hell』(1986)
▶『Paradise Lost』(1991)



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Tribute_to_Manilla_Road

VARIOUS ARTISTS the Tribute album in 2007 Release
(参考資料)

アメリカのエピック・メタル始祖、80年代に四天王の地位に君臨したカンザスのマニラ・ロードに捧げられた2007年発表のトリビュート・アルバム。


概要:
マニラ・ロードはマーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)によって1977年結成、第一作『Invasion』(1980)でデビュー。第3作『Crystal Logic』(1983)でエピック・メタルのスタイルを確立し、第4作『Open the Gates』(1985)、第8作『The Courts of Chaos』(1990)などの傑作を残す。その後、一度は解散するも2000年に再結成。第10作『Atlantis Rising』(2001)、第11作『Spiral Castle』(2002)、第12作『Gates of Fire』(2005)を破竹の勢いで完成させ、バンド初のトリビュート・アルバムとなる本作『The Riddle Masters』の発売へと至る。なお本作は2枚組、マニラ・ロードに影響を受けたと公言するロジー・クルーシズ(ROSAE CRUSIC)、ホーリー・マーター(HOLY MARTYR)、ソレムニティ(SOLEMNITY)、バトルロア(BATTLEROAR)などの有望な次世代エピック・メタル・バンドが、若かりし頃の情熱を再燃させて楽曲を提供している。




CD1:
1. Rosae Crusic - The fires of mars
2. The Weird Lord Slough Feg - Streer Jammer
3. Crystal Viper - Flaming Metal Systems
4. Ironsword - In the Veils of Negative Existense
5. Against Nature (ex. Revelation-Penance) - Crystal Logic
6. Lord Haunted - Dig me no Grave
7. Battleroar - Morbid Tabernacle Isle of the Dead
8. Solemnity - Mystification
9. Viron - The Dreams of Eschaton

CD2:
1. Emerald - Divine Victim
2. Downcast - Death by the Hammer
3. Battlerage - Necropolis
4. Dantesco - Masque of the Read Death
5. Jotenheim - Queen of the Black Coast
6. Rotten - Slaughterhouse
7. Denim & Leather - Open the Gates
8. Holy Martyr - Dragon Star
9. Tempus Fugit (ex. Ligeia) - The Prophecy



Review by Cosman Bradley
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A_Tribute_To_Cirith_Ungol

VARIOUS ARTISTS the Tribute album in 2006 Release
(参考資料)

アメリカのエピック・メタル始祖、80年代にエピック・メタル四天王の地位に君臨したカリフォルニアのキリス・ウンゴルに捧げられた2006年発表のトリビュート・アルバム。


概要:
キリス・ウンゴルはグレッグ・リンドストーム(Greg Lindstrom:g)を中心として1972年に結成、第一作『Frost & Fire』(1980)でデビューした。マイケル・ムアコックやトールキンの小説を題材としたファンタジックな作風でカルト的な人気を博し、第2作『King of the Dead』(1984)で地位を不動のものとする。その後、第3作『One Foot in Hell』(1986)で完成度の高いエピック・メタルを披露するもバンドは解散。しかし、1991年に再結成を果たし、不朽の名作『Paradise Lost』(1991)をキリス・ウンゴル史の遺作とした。バンドの解散後も世界中のアンダーグラウンドで人気は衰えず、そのために後続に多大な影響力を与え、現在に至るまで各地で讃辞が続いている。トリビュート・アルバムとなる本作『One Foot In Fire』では、キリス・ウンゴルのエピック・メタルを踏襲するロジー・クルーシズ(ROSAE CRUSIC)やホーリー・マーター(HOLY MARTYR)、ソレムニティ(SOLEMNITY)、アッセディウム(ASSEDIUM)などの有望な次世代エピック・メタル・バンドが楽曲を提供している。




1. Rotten – Cirith Ungol Overture
2. Falcon – Shelob’s Lair
3. Solemnity – What Does It Take
4. Holy Martyr – Frost And Fire
5. Dawn Of Winter – Doomed Planet
6. Assedium – Black Machine
7. Emerald – Heaven Help Us
8. Monstrum – Fallen Idols
9. Rosae Crucis – Death Of The Sun
10. Battle Ram – Join The Legion
11. Crystal Viper & Elixir – Chaos Rising



Review by Cosman Bradley
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This is Symphonic Epic Metal.


ShiHuangDi

 イタリアのパレルモ出身のシンフォニック・エピック・メタルの最高峰、ザイ・マジェスティが第5作『ShiHuangDi』を発表した。過去、壮大なスケールで中世の「ヘイスティングスの戦い」やフランスの聖女ジャンヌ・ダルクなどを作品のテーマとして選択し、史劇的なエピック・メタルを創造してきたザイ・マジェスティだが、今作では新しい試みを行っている。叙事詩的なテーマとして選択されたのは中国史、紀元前221年に中国統一を成し遂げた秦の始皇帝 (Shi Huangdi) の生涯だ。万里の長城の建設などでも知られる始皇帝の偉業に対し、ザイ・マジェスティはこれまでに築き上げた功績を無題にすることなく、時にアジア風なエッセンスを加えて、大仰かつシンフォニックなエピック・メタルの傑作として完成させている。ザイ・マジェスティのように表現力の高いバンドならば、例え物語の舞台を中世から古代中国に移したとして、サウンドは常に不変であるということだ。
 本作には新ヴォーカルとしてクリムゾン・ウィンド(CRIMSON WIND)のアレッシオ・トゥオルミーナが迎えられている他、同郷のシンフォニック・エピック・メタル、ホーリーナイツ(HOLY KNIGHTS)のシモーネ・カンピオーネが全面的にプロデュースに関わっている。"End Of The Days"では、ラプソディー・オブ・ファイアのファビオ・リオーネがゲストとして参加している。サウンドが雄弁に物語っているが、これは一大エピック・メタル・プロジェクトだ。なお収録曲は以下の通り。

1. Zhoongguo
2. Seven Reigns
3. Harbinger Of A New Dawn
4. Siblings Of Tian
5. Walls Of The Emperor
6. Under The Same Sky
7. Farewell
8. Huanghun
9. Ephemeral
10. End Of The Days
11. Requiem


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Alexandros



Country: Greece
Type: Full-length
Release: 2012
Reviews: 83%
Genre: Epic Power Metal


ギリシャ発祥、新世代エピック・メタルの歩兵、セイクリッド・ブラッドの2012年発表の2nd。


「それは大いなる情熱と叙事詩的な感性で満ち溢れている…」
 ──デイヴィッド・ディファイ



『METAL EPIC』誌より抜粋:



過去、圧倒的な戦力差によってイタリアに大敗を喫していたギリシャの地域は、2008年、アテネのバトルロアに次ぐ強力な戦力、セイクリッド・ブラッドを次世代エピック・メタル・シーンに向けて送り込んだ。今やエピック・メタルのシーンは欧州全域へと拡大したが、"エピックメタル大国"イタリアは他のすべての国家を圧倒していた。しかし、戦いの原野に突如として英雄が出現したのだ。フォークアースでも活躍したポーリーデイキス(Polydeykis:g、key)率いるセイクリッド・ブラッドは、第一作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』(2008)で瞬時に頭角を現すと、これまでのギリシャの窮地を救った。古代ギリシャの普遍的な英雄のテーマである"テルモピュライの戦い(Battle of Thermopylae)"を題材とした第一作は、地元ギリシャでの大絶賛の後、世界各地のエピック・ヘヴィメタルのファンを瞬く間に取り込んだ。



エピック・メタルが誕生してから既に30年以上が経過したが、我々は重要な部分を見落としていたに違いない。『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』で表現された正統派かつ劇的でヒロイックなサウンドが、このように多くのファンを魅了したように、気が付けばエピック・メタルですら本物が求められる時代となっていた。ヘヴィメタルはオリジナルの登場の後、様々な形へと姿を変えて我々の耳を楽しませてきた。しかし、時が経つにつれ、細分化したジャンルからオリジナルへの回帰が始まったのである。正統派メタル、ピュアメタルといった音楽性の追求は、その流れの一つに過ぎなかった。それほどヘヴィメタルの歴史が続いた証拠でもある。そして同じように、一周してエピック・メタルの分野でも原点回帰が始まった。敵国イタリアのマーティリアのサウンドなどがまさにそうだが、一般に"マニア"と呼ばれるエピック・メタルのコアなファン層はそういったサウンドを求めていた。この分野の始祖であるマニラ・ロード、キリス・ウンゴル、ヴァージン・スティールなどのサウンドに如何にして接近するか。近年ではエピック・シンフォニックなサウンドよりも正統派なサウンドが特に重要視されていた。エピック・メタルの追求の末に起こったのが原点回帰とは何とも興味深い結末だが、ファンがそれを求めていたのだから、そうなる結末が正しかったのであろう。なお上記で語られているファンとは、エピック・メタル・バンド自身も含んでいる。多くのエピック・メタル・バンドが公言しているが、彼らはマニラ・ロードやキリス・ウンゴル、ヴァージン・スティールなどの始祖たちに影響を受けてこの業界に入ってきた。始祖たちに認められれば、バンドとしても本望だ。



話は戻り、セイクリッド・ブラッドの第2作『Alexandros』は、そのアルバム・タイトルが語る如く、古代マケドニア──有史以前のギリシャ──の王、アレクサンドロス3世の生涯をコンセプトにした一大叙事詩である。アレクサンドロス大王はこのような生涯を送ったと歴史にある──強大な軍隊でマケドニアを統一した片目の王、ピリッポス2世の息子として生まれたアレクサンドロスは、幼少期にアリストテレスを師とし、知性と武術の両方を学んだ。ピリッポスが暗殺された後、王位を継承したアレクサンドロスは、小アジア、エジプトへと軍を行進させる。アレクサンドロスに率いられたマケドニア軍は神の行軍の如く、破竹の勢いでこれを征服した。紀元前331年、4万のマケドニア兵はガウガメラ(Battle of Gaugamela)でダレイオス3世率いる25万のペルシア軍と対峙し、激闘の末にこれを打ち破る。戦利品としてアレクサンドロスはバビロンを略奪し、若くして全世界の王の地位に君臨した。その後は絢爛なバビロンに留まらず、壮大な東方遠征及びインド遠征へと旅立ち、世界各地に強大な都市アレクサンドリアを建設した。東方遠征の謎、32歳での若すぎる死などが今なお伝説として語られ、神秘的な人物像、及び達成した偉業のあまりの多さから、現在では実在した最大の英雄であると考えられている──この偉大なる英雄を題材とした本作は、エピック・メタルとしての失敗が許されていない。崇高なテーマであり、シリアスな音楽性で描かれなくてはならない題材だ。セイクリッド・ブラッドはこれに迫真のエピック・メタルで挑んだ結果、大きな成功を収めている。前作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』以上のスケール感を放ち、完成度の高い楽曲で締められた本作は、これまで以上にセイクリッド・ブラッドの評価を高めることに繋がるであろう。頻繁に小曲を挿みながら、時にシネマスティックな手法でストーリーテリングな内容を描き、決定打としてダイナミックな音で聴き手に迫る会心のエピック・メタルが、『Alexandros』の全容である。エピック・メタルの帝王、ヴァージン・スティールのデイヴィッド・ディファイが酷く絶賛したという本作のサウンドは、虚言など語らない。勇敢なる古代マケドニアの軍隊の如く行進し、軍人の鉄の信念の如く他国を武力で圧倒し、今ここに新たなエピック・メタルの歴史が綴られたのだ。



1. The Warrior's Scion
オリエンタルな旋律と共に有史以前の伝説が幕開けるイントロダクション。
2. The Bold Prince of Macedonia
アレクサンドロスの誕生を描く叙事詩。重厚かつダイナミックなリフで大仰な表現をする。恰も史劇の幕開けの壮大さであるように、厳かな有史以前の世界観を描いている。後半の盛り上がりは映画の終盤さながら。
3. The Battle of the Granicus (Persian in Throes)
紀元前334年の"グラニコスの戦い(Battle of the Granicus)"を描写。この日、マケドニア軍は始めてペルシア軍に勝利した。勇猛果敢な古代ギリシャの英雄主義が炸裂する傑作である。 ヒロイック極まるメロディをギターで紡ぎ出し、地を穿つ軍隊の如く雄大なコーラス・パートへと導く。セイクリッド・ブラッドのサウンドが古典劇を脱し、シネマスティックな段階に踏み込んだことを告げる名曲である。
4. Phalanx Invicta
英雄的なムードが滲み出るインストゥルメンタル。
5. Marching to War
ヒロイズムを伴ったギターメロディを奏でる。シリアスに進行する楽曲は、独特の緊張感を高める。後半にはテンポ・チェンジを配置。
6. Golden Shields in the Sky
ナレーションによる短いイントロダクション。映画スコアの雰囲気もある。
7. Death Behind the Walls
勇壮なリフよりエピカルに展開。シンフォニックなコーラスが圧巻。
8. New God Rising (At the Oracle of Siwa)
弦楽器によるインストゥルメンタル。妖艶にエキゾティックな描写をする。 後半では笛とギターの音色を加える。
9. Before the Gates of Ishtar
10. Battlefield Aenaon
アコースティック・パートから巧みにエピック・メタルへと誘導。 オリヴァー・ストーンの映画『Alexander(邦題:アレキサンダー)』(2004)のサウンドトラックを彷彿させる遠大なムードが興奮を呼び覚ます。故にリフのメロディは本作屈指。
11. The Apotheosis of Alexander
スペクタクル映画を彷彿とさせる壮大なイントロダクション。
12. Ride Through the Achaemenid Empire
アレクサンドロスの遠征によって滅亡したアケメネス朝ペルシア帝国。かつては強大な権力を誇ったこの大帝国も、英雄アレクサンドロスに率いられた神の如きマケドニア軍を超えることはできなかった。雄大なメロディと壮大なコーラスを持つエピック・メタルであり、圧倒的なスケール感を放つコーラス・パートは特筆に値する。大仰だが器用さも合わせ持ち、後半ではシンフォニックなパートも導入してより一層ドラマ性を高める。
13. Heart of the Ocean (Nearchus Advancing)
古代風バラッドのような楽曲。女性ヴォーカルの声が雰囲気を盛り上げる。
14. Macedonian Force
伝統的なエピカル・リフを刻み、そこにシネマスティックなオーケストレーションを加えた楽曲。雄大で大仰。中間部のリード・ギターはあまりにも勇猛果敢。楽曲の印象的な締め方も余韻を残す。
15. Legends Never Die
アレクサンドロスは若き死と引き換えにして不滅の栄誉を手にした。


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The Battle of Thermopylae: The Chronicle



Country: Greece
Type: Full-length
Release: 2008
Reviews: 83%
Genre: Epic Power Metal


ギリシャ発祥、有史以前の英雄叙事詩を本格的エピック・パワー・メタルで再現するセイクリッド・ブラッドの2008年発表の1st。


現在のエピック・メタル・シーンについて...
アメリカのヴァージン・スティールなどを始祖とする古代ギリシャ/ローマ世界を舞台としたエピック・メタルの一派が、時代の流れと共に活躍の場を移したようだ。過去の統計が物語っているように、80年代初期~中期に興った地下エピック・メタルのシーンがアメリカを離れ、徐々に外国へと移っていった。エピック・メタルの地下水脈は欧州各地に辿り着き、やがては大国イタリアとギリシャに合流した。アドラメレク(ADRAMELCH)を始祖とするイタリアのエピック・メタル・シーンは80年代において全く巨大ではなかったが、90年代以降、その流れはラプソディーやドミネ、ドゥームソードなどの登場によって断ち切られる。一夜にして文明が築き上げられる歴史小説であるように、それらのシーンもまた、一瞬にして興ったのである。隠された事実では、エピック・ヘヴィメタルのファンは長らくその場所に住んでいた、ともいわれている。即ちそれは、イタリアとギリシャがエピック・メタルにとって新しい主戦場であることを意味していた。爾来、数々の優れたバンドがこれらの国より登場し、地下のエピック・メタル・シーンを拡大させた。イタリアのマーティリアやロジー・クルーシズは、将来を有望視された新世代のエピック・メタル・バンドの一例である。しかし、問題は、多くの叙事詩的音楽ファンを抱えているギリシャの地域から、決定的なエピック・メタル・バンドが登場してこないことにあった。2003年、アテネからバトルロア(BATTLEROAR)の登場。そして、2008年、芳しくない現状は更に覆される。古代神話と英雄叙事詩の本場、ギリシャから遂に決定的なエピック・メタル・バンド、セイクリッド・ブラッドが姿を現したのである。

セイクリッド・ブラッドというバンド...
セイクリッド・ブラッドは、ポーリーデイキス(Polydeykis:g、key)によって2003年の12月にギリシャで結成された。当時のバンド名はセイクリッド(SACRED)であり、デモ『Clash of the Titans』(2003)を制作した。デモの時点で、セイクリッド・ブラッドの音楽性は、長年アンダーグラウンドの隅で培われてきた伝統的なエピック・メタルを目指していた。その後いくつかのメンバー・チェンジが起こり、バンドはギリシャの首都アテネへと活動拠点を移した。新しいサウンドを模索する中で、従来のエピック・メタルが持っていた重厚かつヒロイックなサウンドに加え、ケルト音楽に該当するフォーキッシュな要素を見出した。これが第一作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』の中核を成すサウンドとして、セイクリッド・ブラッドのエピック・メタル・サウンドに馴染んだのである。古くはギリシャの歴史家ヘロドトスの『historiai(邦題:歴史)』の第7巻「ポリュヒュムニア」に描かれ、ザック・スナイダーの映画『300(邦題:スリーハンドレッド)』(2007)やマニラ・ロードの『Gates of Fire』(2005)でも題材となっている古代ギリシャの叙事詩、"テルモピュライの戦い(Battle of Thermopylae)"をテーマとした本作は、同国のレーベル「Eat Metal Records」より発表され、その豪傑な音楽性と、圧倒的なヒロイズムとによって、瞬く間に世界各地のエピック・メタル・ファンを魅了した。一部のマニアからは、セイクリッド・ブラッドの将来が明るいものであるとの惜しみない称賛が送られている。本作の危機迫るサウンドは間違いなく他を圧倒する力を秘めており、各国のファンの反応と同様、将来を大きく期待させる要素があることは真実である。セイクリッド・ブラッドがアンダーグラウンドで地位を獲得するのは、もはや時間の問題である。なお本作には、過去ポーリーデイキスが参加していたフォークアース(FOLKEARTH)からの豪華なゲスト・メンバーが多数迎えられている。



1. The Defenders of Thermopylae
ここから劇的な戦いが開始されるとは想像もつかない美しいインスト。
2. Land of the Braves
古典的なファンファーレから開始されるエピック・メタル。徐々に攻撃性を増すサウンドとバイオレンスなイアソン(Iason:vo)のヴォーカルが戦意を鼓舞する。
3. Hordes of Evil
4. Oracle
シンフォニックなイントロダクション。女性コーラスを導入し、古典劇風のドラマ性を生み出す。流石はギリシャといった本格的なサウンド。
5. Spartan Warlord
強烈なメロディとヘヴィなリフで行進する楽曲。ヒロイックかつスリリングに展開するそのエピック・メタルには興奮必至。突然の疾走パートなどを配し、ファンのツボを押さえた作り。
6. Sacred Blood
バンド名を冠したエピック・メタル。渾身のエピカル・リフが放つ破壊力は凄絶。勇猛果敢な疾走感に満ち溢れ、そこにヒロイックなリードギターが饗宴を果たす。圧倒的なヒロイズムを自ら体現し、エピック・メタルの新時代の曙を告げる名曲である。
7. Heroic Spirit
シンフォニックなアレンジを加えたアコースティック楽曲。古代ギリシャの雰囲気を散々に発散し、雄大な哀愁に包み込まれる。
8. Blades in the Night
攻撃性を持つ叙事詩的疾走曲。雄大なギターメロディとコーラスを配し、徹底した英雄主義を貫く。勇敢な旋律に特に光るものがある。エピック・メタルの新たなアンセムともなる傑作。
9. Warrior's Song
パワー、スピード、メロディが混然一体となったエピック・メタル。シリアスなムードに満ち、戦士たちの生死を懸けた凄絶な戦いの様が蘇る。眩暈のするほどに勇敢な内容。
10. Gates of Fire
およそ11分に及ぶ一大叙事詩。雄大な語りから強烈なリフへと展開。前半に難解な変化球は含まれないものの、中間部からエピカルなメロディが爆発する。エピローグは英雄的な余韻で包まれる。


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エピック・メタルの父(The Father of Epic Metal)


著者:Cosman Bradley
翻訳:METAL EPIC


 以下は以前コスマン・ブラッドリー博士が書いた文章を『METAL EPIC』誌が新たに編集し直したものだ。ここではロバート・E・ハワードとエピック・メタルの関係性についての研究の成果が記されている(前回より...)。

エピック・メタルの父
frank_frazetta リヒャルト・ワグナーを「ヘヴィメタルの父」と称するなら、ロバート・アーヴィン・ハワードは「エピックメタルの父」だった。僅か30年という短い生涯を送り、類稀な文才に恵まれ、人間の長寿と真向から対峙した人物が、ハワードその人だった。
 人生の輝ける一瞬を生き、不朽の名作を数多く世に残した“作家”ハワードの影響は、爾来、幻想文学のジャンルだけには留まらず、アート、音楽、映画産業へと拡大していった。現代社会の中には、ハワードの世界観に触発された様々な作品があった。
 代表作〈コナン〉は、ジョン・ミリアスの映画『コナン・ザ・グレート』として生まれ変わり、アメリカの作曲家ベイジル・ポールドゥリスによる、サウンドトラックの同名の音楽作品を生み出した。80年代以降、このサウンドトラックは、エピック・メタルの楽曲の中にも頻繁に引用され、屈指の人気作となった。また、映画は俳優のジェイソン・モモア主演でリメイク版が制作され、2011年に『コナン・ザ・バーバリアン』(Conan The Barbarian)として公開された。
 アートの分野では、アメリカのフランク・フラゼッタやケン・ケリーが才能を開花させた。空想の領域から視覚の段階へと移り変わったハワードの世界観は、幻想的なイラストレーションで表現され、アート界で高い支持を獲得した。現在に至るまで、ケン・ケリーの描いた魅惑的なアートワークが、数多くのエピック・メタルのアルバム・ジャケットを飾っていることは、ファンたちなら既に承知の事実だった。
 時が流れても、古代の神話や英雄叙事詩などが強い影響力を持っているように、リン・カーターやライアン・スプレイグ・ディ・キャンプなどの後続の作家たちは、ハワードが未完のまま残した作品を編集し、本人の死後も数々の「新作」を世に送り出した。この挑戦は、一部のファンたちから非難されたが、多くの“ハワード愛好家”は、未読の作品を楽しんだ。
 このように、時代を超えて、ハワードの創造した世界観は受け継がれていった。やがて、その流れは、ロック音楽のジャンルにも手を伸ばし始めた。ハワードの残した功績録の中に、「ヒロイック・ファンタジーを確立した」という項目があった。これが後に、叙事詩的なロック音楽のシーンから、大きな注目を集めたのだった。
 歴史は続いた──ハワードの作品に触発された後続の作家たちは、ヒロイック・ファンタジーの世界観を踏襲した。これらの作家たちは、数多くの小説を発表していく中で、現実的な功績を作り上げ、現在へと続く、「剣と魔法の物語」の幅を押し広げていったのだった。
 そのフォロワー的な作家たちの中に混じって、フリッツ・ライバーやマイケル・ムアコックなどが頭角を現していった。前述の通り、アメリカのフリッツ・ライバーは、1960年代に「剣と魔法の物語」という名称を唱えた。この作家は、「剣と魔法の物語」の世界を自ら体現し、〈ファファード&グレイ・マウザー〉という、ヒロイック・ファンタジーの人気シリーズも執筆した。一方、イギリスのマイケル・ムアコックは、1961年に〈永遠のチャンピオン〉(The Eternal Champion)シリーズの第1作目となる『夢見る都』(The Dreaming City)発表した。
 70年代初頭、イギリスからブラック・サバスが登場し、ヘヴィメタルの基盤を築くと、徐々にセックスやドラッグのテーマから離れた、新たな歌詞の内容が必要となった。ここでは、従来のキリスト教や悪魔崇拝、社会批判や戦争などとは異なる題材が求められた。
 イギリスのホークウィンドは、マイケル・ムアコックのヒロイック・ファンタジー小説をモチーフとした『ウォリアー・オン・ザ・エッジ・オブ・タイム』(Warrior On The Edge Of Time, 1975)を発表した。そして、未来のロック音楽のジャンルには、まだ開拓すべき可能性があることを証明した。
 これに影響を受けたアメリカのキリス・ウンゴルやマニラ・ロードなどのバンドたちは、80年代初期──ヘヴィメタルが急成長を始めた時期──に叙事詩的な文学作品とヘヴィメタルを融合させたサブ・ジャンルを追求した。アンダーグラウンド・シーンのバンドたちが、後にハワードの創造したヒロイック・ファンタジーの世界観と出会うと、現在のエピック・メタルの基盤が誕生したのだった。
 80年代以降、エピック・メタルにおけるハワードの影響力は強まり、次第に巨大な枠組みが完成していった──マニラ・ロードのマーク・シェルトンは、作詞で影響を受けた作家として、ハワードの名前を挙げた。第8作『ザ・コーツ・オブ・ケイオス』では、「剣と魔法の物語」の世界観を忠実に再現した、叙事詩的なヘヴィメタルの音楽のスタイルを作り上げた。
 マノウォーのジョーイ・ディマイオは、ハワードの〈キング・カル〉と〈コナン〉を影響を受けたヒーローたちとして称賛し、自らのバンド・イメージとして、その野性的なヒロイズムを代用した。第2作『イントゥ・グローリー・ライド~地獄の復讐~』や第4作『サイン・オブ・サ・ハンマー』などの作品では、野蛮で高潔な〈コナン〉の世界が、ダークなエピック・メタルのサウンドで表現された。
 イギリスのシンフォニック・エピック・ブラック・メタル、バルサゴスのバイロン・ロバーツは、エドガー・ライス・バロウズやハワード・フィリップス・ラヴクラフトを差し置いて、最も影響を受けた作家として、ハワードの名前を挙げた。第1作『レムリアの空に浮かぶ黒き月』(A Black Moon Broods Over Lemuria, 1995)と第2作『ウルティマ=テューレの氷に覆われし玉座の頭上にて燃え盛る星の炎』(Starfire Burning Upon The Ice-Veiled Throne Of Ultima Thule, 1996)では、ベイジル・ポールドゥリスのサウンドトラックからのメロディを引用した。また、“バルサゴス”というバンド名は、ハワードの短編小説『バル=サゴスの神々』(The Gods Of Bal-Sagoth, 1931)に由来したものだった。
 イタリアのドミネは、マイケル・ムアコックやハワードの世界観をテーマとしたエピック・メタルの作品を残した。第4作『エンペラー・オブ・ザ・ブラック・ルーンズ』(Emperor Of The Black Runes, 2003)の《The Aquilonia Suite》では、ベイジル・ポールドゥリスのサウンドトラックからのメロディを引用した。
 ノルウェーのヴァイキング・メタル・バンド、エインヘリャルは土着的な北欧文化を強調したサウンドの中で、幼少期のハワードが影響を受けた、英雄たちの神話の世界を表現した。EP『ファー・ファー・ノース』(Far Far North, 1997)では、ハワードの世界観とヴァイキング文化の融合に挑戦し、《Naar Hammeren Heves》の中で、ベイジル・ポールドゥリスのサウンドトラックからのメロディを引用した。
 新時代のエピック・メタル・シーンの中でも、ハワードの影響力は顕著だった。イタリアのロジー・クルーシズは、第1作『ワームス・オブ・ザ・アース』(Worms Of The Earth, 2003)でハワードの小説『大地の妖蛆』(Worms Of The Earth, 1932)をコンセプトとして、ピクト人の英雄〈ブラン・マク・モーン〉の活躍に触れた。その後、バンドは第3作『フェデ・ポテレ・ヴェンデッタ』(Fede Potere Vendetta, 2009)で、更に深遠なヒロイック・ファンタジーの世界観を追求した。《Venarium》の歌詞には、少年時代の〈コナン〉が登場し、ヴェナリウム砦での戦いが描かれた。
 ポルトガルのアイアンソードは、デビュー時からハワードの世界観に影響を受け、ヒロイックなエピック・メタルのサウンドを追求した。第3作『オーバーローズ・オブ・カオス』(Overlords Of Chaos, 2008)では、〈コナン〉の他にクトゥルー神話も楽曲のテーマに選択した。実際のハワードは、『ウィアード・テイルズ』誌の作家たちの影響で、クトゥルー神話関連の作品も数多く残していた。
 その他、ドイツのヴァイキング・メタル・バンド、クロム(Crom)もハワードからの影響を受け、バンド名にキンメリア人が信仰した大神の名前を使用した。また、同国のマジェスティもマノウォーのフォロワー・バンドとして活躍し、ケン・ケリーを起用した勇壮なカヴァー・アートワークでハワードの世界観への傾向を示した。アメリカのハイボリアン・スティールは、バンド名の通り、主にハワードが創作した“ハイボリア世界”を重点的に描いた作品を発表していった。
 ここで取り上げられた一例は、過去と現在において、ハワードと叙事詩的なロック音楽の共通性を示するものだった。現在のエピック・メタル・シーンでは、ハワードの影響力が巨大化し、それはバンドのイメージや精神面にも及んでいた。既にここで証明されてきたように、ハワードはエピック・メタルに関わるミュージシャンやファンたちにとって、一種の父性を持った存在に近付いていた。
 結果的に、今日の叙事詩的なヘヴィメタルの概要は、ハワードが1930年代に「ヒロイック・ファンタジー」の市民権を獲得したことに由来していた。これまでのエピック・メタル史の中で追求されてきた英雄主義的なテーマは、ハワードが生涯を懸けて追求した内容と同じだった。栄光、挫折、才能、影響、早過ぎる死──今回、一つの結論が導き出された。
 エピック・メタルに関わるミュージシャンやファンたちにとって、ロバート・アーヴィン・ハワードは偉大な父だった。彼の名前は、叙事詩的なヘヴィメタルの作品の中で、今なお生き続けていた。


*この記事は『叙事詩的なヘヴィメタルの歴史2』に収録されました。

叙事詩的なヘヴィメタルの歴史2


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エピック・メタルの父(The Father of Epic Metal)


著者:Cosman Bradley
翻訳:METAL EPIC


 以下は以前コスマン・ブラッドリー博士が書いた文章を『METAL EPIC』誌が新たに編集し直したものだ。ここではロバート・E・ハワードとエピック・メタルの関係性についての研究の成果が記されている。

作家の生涯
Robert_E_Howard 1906年、アメリカのテキサス州ピースターにて、父アイザック・モルデカイとアイルランド人の血を引く母へスター・ジェイン・アーヴィンの間に子供が生まれた。男の子は、ロバート・アーヴィン・ハワード(Robert Ervin Howard)と名付けられ、両親たちから大事に育てられた。
 当時、ハワード一家はテキサス州を転々とする生活を送っていた。ハワードが8歳を迎える頃には、既に7回の移住を体験した。この頃、ハワードは母親から民話や詩について学び、幼いながらも読書に熱中した。
 9歳(10歳)の時、ハワードは初めて小説を書いた。最初の小説は、北欧の英雄叙事詩ベオウルフを題材としたものだった。活発な少年は、北欧の神話や英雄叙事詩などに魅了されて育った。
 1919年、ハワード一家はテキサスのクロス・プレインズに引っ越した。13歳のハワードは、クロス・プレインズ・ハイスクールに入学し、当時のテキサス州の石油ブームを直に経験した。この石油ブームが、若いハワードの心情に大きな衝撃を与え、一夜にして文明の興亡が起こり得ることを学ばせたのだった。
 15歳の時、ハワードは地元で出会った冒険小説総合パルプ雑誌『アドヴェンチャー』に魅了され、本誌に投稿する意味も兼ねて、本格的な創作活動を始めた。同誌の人気作家だったハロルド・ラムとタルボット・マンディは、当時のハワードに大きな影響を与えた人物だった。
 16歳の時、ブラウンウッド・ハイスクールに進学したハワードは、幸運にも最初の友人たちと出会った。トルエット・ヴィンスンとクライド・スミスとは、文学について多くのことを語り合う仲となった。また、この頃には、ハワードの作品が始めて学内誌『タットラー』に入選して活字となった。
 1923年、17歳のハワードは、ブラウンウッド・ハイスクールを無事卒業するも就職後に失業。ハワード・ペイン・ビジネス・スクールにて学業に戻り、下宿生活で新たな友人のリンジー・タイスンと出会った。リンジー・タイスンの影響で、ハワードはひ弱な体を変えるためにボクシング、乗馬、ボディビルに打ち込み、その結果、強靭な肉体を手にした。
 しかし、実際のハワードは、鍛える以前から既に大柄であり、決してひ弱ではなかった。当時のハワードのあだ名は、“二丁拳銃のボブ”だった。また、1923年には、幻想怪奇パルプ雑誌『ウィアード・テイルズ』が創刊された。
 18歳の時、ハワードは本格的に作家活動に没頭するために、ハワード・ペイン・ビジネス・スクールを中退した。しかし、本人の想像以上に投稿が上手くいかず、収入を得るために行った様々なバイト生活の果てに、ハワード・ペイン・ビジネス・スクールに再入学する結果となった。この時、ハワードは父親との間に、作家としての“ある約束”を交わした。
 1925年、ハワードが19歳の時、念願の『ウィアード・テイル』誌に短編小説『Spear And Fang』が始めて採用された。これをきっかけとして、ハワードは本格的な作家デビューを果たした。
 1927年、ハワード・ペイン・ビジネス・スクールを無事卒業したハワードは、クロス・プレインズに帰り、直に新たな小説の執筆に励んだ。この時期に書いた小説が『影の王国』(The Shadow Kingdom, 1929)であり、〈キング・カル〉シリーズの第1作目となった。本作は後に『ウィアード・テイルズ』誌の編集長ライトに絶賛され、凡そ100ドルの稿料の値が付いた。
 1928年、ハワードの創作と投稿は続き、〈ソロモン・ケイン〉(Solomon Kane)シリーズの第1作目となる『赤き影』(Red Shadows)が『ウィアード・テイルズ』誌に掲載された。この時、『アーゴシー』誌はハワードの作品に消極的な態度を示し、『赤き影』を送り返してきたが、『ウィアード・テイルズ』誌の反応は好意的なものだった。この成功を皮切りとして、ハワードは小説のジャンルで次々と成功を収めていった。
 1929年、〈ブラン・マク・モーン〉や〈レッド・ソニア〉(Red Sonja)などの魅力的なキャラクターたちを生み出したハワードは、別ジャンルでも成功するきっかけを作った。『ファイト・ストーリーズ』誌で連載していたボクシング小説〈スティーヴ・コスティガン〉(Sailor Steve Costigan)シリーズが、読者たちから高い支持を獲得したのだった。
 1931年、ハワードの下を悲劇が襲った。大恐慌時代の波が押し寄せ、銀行の預金を全て失ったのだった。この時期、人気を博していたはずの『ファイト・ストーリーズ』誌も休刊に追い込まれ、ハワードは必然的に、唯一残された『ウィアード・テイルズ』誌に投稿を絞る形となった。
 1932年、休暇中のハワードに最大の転機が訪れた。フレデリクスバーグ近郊の丘陵地帯で着想を得た新たな国家のイメージが、ハワードに強烈な物語のヒントを与えたのだった。直にハワードは、“By This Axe I Rule!”という小説を大幅に改変し、その勢いで『不死鳥の剣』(The Phoenix On The Sword)を完成させた。これが後の代表作〈コナン〉シリーズの第1作目となり、『ウィアード・テイルズ』誌で大きな人気を博すこととなった。
 その後、ハワードは破竹の勢いで〈コナン〉シリーズの続編を執筆した。そして、1933年までの間に8篇の小説を完成させた。このキンメリア出身の野蛮人コナンの活躍を描いた英雄冒険譚は、「ヒロイック・ファンタジー」という新たな小説のジャンルの確立を決定付けた。これは後に、フリッツ・ライバーによって「剣と魔法の物語」と呼ばれるサブ・ジャンルの原型だった。最終的に〈コナン〉シリーズは、完成した全21篇が『ウィアード・テイルズ』誌に発表された。
 1933年、ハワードは小説の枠を更に増やすためにエージェントを雇い、オーティス・アデルバート・クラインと正式な契約を結んだ。オーティス・アデルバート・クラインはハワードに様々なジャンルの小説の執筆を勧め、ウエスタンで新たな可能性が拓けた。
 1934年、『アクション・ストーリーズ』誌の3・4月号に掲載された〈ブレッキンリッジ・エルキンズ〉(Breckinridge Elkins)シリーズが、読者たちから高い支持を集めた。この〈ブレッキンリッジ・エルキンズ〉シリーズは、ハワードの代表的なウエスタン小説として人気を博した。
 1935年、徐々にハワードは、病気を繰り返す母親の看病に追われる生活となった。母親の看病のために、小説を執筆する時間は大きく削られていった。家族の強い愛情を受けて育ったハワードは、癌に冒されていく母親の姿を見て、次第に自らも精神を病んでいった。この頃から、親しかった友人たちは、頻繁に自殺の話をするハワードを目撃するようになっていった。
 1936年、ハワードは看病中の母へスターの病状が著しく悪化していく姿に苦しみ抜いた末、タイプライターにアーネスト・ダウソンの詞を打ち込み、自宅の車の中で最期を迎えた。友人リンジー・タイスンから借りたコルト三八口径自動拳銃の銃声一発が周囲に反響し、ハワードは自らの筆跡でその生涯に幕を引いた──「私には老人の死が、若者の死以上の悲劇に思えてならない」これは生前のハワードがよく語っていた言葉だった。
 ハワードの死後、多くの作家たちが悲しみに暮れ、事件の真相を求めた。研究の末、ハワードがタイプライターにアーネスト・ダウソンの詞を打ち込んだという定説は、間違であることが発覚した。これはハワードが自ら打ち込んだのではなく、持ち歩いていたヴィオラ・ガーヴィンの“House Of Caesar”からの引用句が、「財布の中に発見された」という真実だった。発見されたヴィオラ・ガーヴィンの詞は、“すべては去りぬ。すべては終わりぬ。ゆえにわれを火葬の薪に載せよ。饗宴は終わりを告げ、灯は消ゆる”というものだった。
 これまでにハワードが発表した作品は数知れず、主に幻想怪奇や秘境冒険譚(これらは剣と魔法の融合と呼ばれた)、ボクシング、後年はウェスタンやSF、ミステリーなどの豊富なジャンルの小説を執筆した。一般的に、後年のハワードは、母親の看病のために筆を折ったという話があるが、生前の執筆力は凄まじく、未完も含めて凡そ400篇の作品が現代に残された。
 ハワードは歴史や考古学に対する知識が深く、有史以前の古代や秘境を舞台としたり、時には自ら架空史を生み出した。また、生前のハワードの壮絶の生き様は、彼と2年間恋仲だったノーヴェリン・プライス・エリスとの恋愛ドラマを描いた映画『草の上の月』(The Whole Wide World, 1996)にも見ることができた。

>>To be continued in:The Father of Epic Metal:Next...


*この記事は『叙事詩的なヘヴィメタルの歴史2』に収録されました。

叙事詩的なヘヴィメタルの歴史2


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Dawn

THY MAJESTIE the 4th album in 2009 Release
(未聴)

イタリアのパレルモ出身、シンフォニック・エピック・メタルの使徒、ザイ・マジェスティの2009年発表の4th。


「Dark Balance Records」より発表。前作『Jeanne D'arc』(2005)よりヴォーカルがジュリオ・グレゴリオ(Giulio Di Gregorio)からダリオ・カーショ(Dario Cascio:vo)に交代。全3部作から構成されるエピック・メタル作品であり、♯1~♯3が「Trapasso - Exequies of the formal sphere」、♯4~♯10が「Rovina - The neverending night」、♯11~♯12が「Vendetta - A new Dawn」を表している。作品のモチーフは従来のイメージとは異なる"戦争と死"。




1. As You Fall
2. M.A.D.
3. Dawn
4. The Hunt
5. Of pain and Disgrace
6. To an Endless Devotion
7. Inferis Armata
8. Two Minutes Hate
9. The Legacy
10. Out the Edge
11. Day of the Changes
12. Through Heat and Fire



Review by Cosman Bradley
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ジャンヌ・ダルク

THY MAJESTIE the 3rd album in 2005 Release
★★★★★★★★★☆...(傑作)

イタリアのパレルモ出身、シンフォニック・エピック・メタルの使徒、ザイ・マジェスティの2005年発表の3rd。


物語...
1337年から1453年にかけて続いた英仏百年戦争の最中に救世主として登場し、「オルレアンの乙女(The Maid of Orléans)」と称されたフランスの英雄ジャンヌ・ダルク(Jeanne D'arc)。ジャンヌは神の啓示によってオルレアンの解放とランスでの戴冠式を使命とし、"パテーの戦い"での勝利の後、ノートルダム大聖堂でフランス国王シャルル7世として戴冠した。宮廷内で孤立した後、1430年のコンピエーニュの戦いでブルゴーニュ軍に捕らえられたジャンヌは、イギリス軍に異端者として異端審問裁判にかけられる。裁判によれば、ジャンヌが聞いた声は神のそれではなく、別のものであったという。よってジャンヌには死刑判決が下り、中世キリスト教世界で最も過酷な刑罰──火刑を受けることとなった。ジャンヌの火刑が実行されたのはフランス、ルーアンのヴィエ・マルシェ広場であったという。ジャンヌの死後、ローマ教皇カリストゥス3世のもと裁判がやり直され、ルーアンにて死刑判決が覆る。爾来、フランス皇帝ナポレオン・ボナパルトの再評価によって広く名が知れ渡り、徐々にフランスでの国民的英雄としての地位を固めていく。1920年にはベネディクトゥス15世によって列聖され、カトリック教会の聖人に名を連ねた。

『Jeanne D'arc』について...
伝説はかつてスペインのダーク・ムーアが第2作『The Hall Of The Olden Dreams』(2001)の"Maid of Orleans"で取り上げたものだ。この叙事詩を扱った他の作品にリュック・ベッソンの映画『The Messenger: The Story of Joan of Arc(邦題:ジャンヌ・ダルク)』(1999)があるが、内容についてはそちらの方が詳しい。過激かつリアルな描写がセンセーショナルな印象を与えた問題作である。
話が逸れたが、1998年のイタリア・パレルモで結成されたエピック・メタル・バンド、ザイ・マジェスティが「Scarlet Records」より発表した第3作『Jeanne D'arc』のテーマに選択したのがこのジャンヌ・ダルクの生涯である。バンドの結成は、同郷のクラウディオ・ディプリマ(Claudio Diprima:d)とジュセッペ・ボンディ(Giuseppe Bondì:key)が出会ったのがきっかけであったという。二人は徹底して「エピカルなヘヴィメタル」を目指し、以来シーンでの活動を続けてきたのである。
本作でザイ・マジェスティは、演劇的かつリアリスティックな手法を用い、悲劇と栄光に満ちた聖女ジャンヌ・ダルクの真実に迫っている。本作で描かれているのは、ジャンヌ・ダルク死後の再評価までとなっており、その凄絶な様が血生臭くも圧倒的なスケール感のエピック・メタルによって構築されている。1066年に実際に起こった「ヘイスティングスの戦い」を描いた前作『Hastings 1066』(2002)がエピック・メタル史に巨大な爪痕を残した功績はどう考えても大きいのだが、そのザイ・マジェスティの新作ともあれば、否応にも周囲の期待は高まるもの。前作からおよそ3年という空白を経ての本作の発表は、バンドにとっても新しい挑戦となっている。
バンド内での変化もあった。今作から新ヴォーカルを録るのがジュリオ・グレゴリオ(Giulio Di Gregorio)であり、前任のダリオ・グリーオ(Dario Grillo)よりも力強い歌声が特徴的なシンガーだ。ヴォーカルの影響力もあるが、本作のサウンドは以前のザイ・マジェスティよりも遥かにパワー・メタル的な攻撃性が前面に押し出された作風である。全体的に壮大な演出を得意とした迫真のエピック・クワイアは控えめであり、より肉薄のあるコーラスが主役となっている。ジャンヌ・ダルクはカトリック教の聖女なので、"Ride To Chinon"、"...For Orleans"などの楽曲ではよりキリスト色の強いコーラス・パートも目立っている。ザイ・マジェスティは、過去シングルにもなった『Echoes of War』(2003)という絶対的な名曲を持っているが、今作でも卓越した作曲とソングライティングで"The Chosen"という次世代エピック・メタルの名曲を完成させている。当然の如く、その他の楽曲ですら、完成度は恐ろしいまでの高水準を保っているところは、このバンドの圧倒的なポテンシャル故であろう。
シンフォニックな側面からエピック・メタルを追求してきたのがイタリアのザイ・マジェスティというバンドである。ここに表現されているすべての壮麗なサウンドは、一見ヘヴィメタルとも疑われるものだが、その根本的な概念はやはりエピック・メタルに属している。この分野は途方もない進化を遂げている。ザイ・マジェスティのサウンドを聴けば直に事実は明白なものとなる。エピカルなパワー・メタルとリアリスティックな中世史の融合を果たし、本作『Jeanne D'arc』で徹底的に描かれたストーリーテリングな内容は、劇的な興奮を聴き手に齎し、多くのエピック・メタル・ファンの心を捉えることが約束されている。




1. Revelations
スペクタクル映画の如きイントロダクション。SE、クワイア、オーケストレーションを使用する。
2. Maiden Of Steele
スピード感溢れる勇壮なエピック・メタル。アグレッシブなサウンドの中に中世のメロディ、強烈なサビのインパクトを加える。コーラスはキャッチーでありながら、中世時代の雰囲気を漂わせている。
3. The Chosen
"Echoes of War"に次ぐ名曲。荘厳な中世のメロディに乗せ、徹底して大仰なヒロイズムが流麗に描かれている。エピカルなオーケストレーションを駆使した劇的なサウンドは圧巻である。臨場感及び緊張感も特筆に値する。
4. Ride To Chinon
スピーディなパワー・メタルと中世の世界観が融合した楽曲。芸術的なコントラストを持つ。クワイア・パートではカトリック的なムードも醸し出している。
5. ...For Orleans
目まぐるしい展開を持つ名曲。エピカルなリフを用い、戦場のSEが雰囲気を盛り上げる。映画の如き圧倒的なスケール感を放ち、大仰極まるコーラスを導入。ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』のように、終始劇的な旋律に包み込まれている。
6. Up To the Battle!
疾走曲。スピーディなサウンドにヒロイックなメロディが伴う。
7. March Of the Brave
イントロダクション。
8. The Rise Of a King
悲劇的な旋律を伴う楽曲。静と動の使い分けが際立つ。他の楽曲の例に洩れず、本曲も壮大なクワイア・パートを持っている。
9. Siege Of Paris
宗教音楽の如きイントロからヘヴィなリフへと展開。ダークなムードが漂うが、サビは真逆。エピカルなサウンドの発する誘引力は相当のものである。
10. Time To Die
重厚なミドル・テンポ。史実的かつオペラティックなサウンド。ジャンヌ・ダルクのリアリスティックな悲劇を演じている。後半ではテンポ・チェンジする。
11. Inquisition
不穏なイントロダクション。
12. The Trial
プログレッシブな大作。複雑なパートから構成され、疾走と減速を繰り返す。ヴァースからコーラスまでシリアスな雰囲気で統一され、立体的な音で聴き手に迫る。中間部では更にプログレッシブな展開を持ち込む。



Review by Cosman Bradley
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