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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


◆新着情報 News Topics
[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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Voyager



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2008
Reviews: 97%
Genre: Epic Metal



アメリカ発祥、世界各地に熱狂的信者を有するカルト・エピックメタルの始祖、マニラ・ロードの2008年発表の13th。


「オーディンのために。アスガルドのために。ホルガーは宣言する。彼の審判を──」

 "Blood Eagle"より


『METAL EPIC』誌より抜粋:



我々エピック・ヘヴィメタルの探求者にとって、2000年に再結成を果たしたエピックメタルの始祖、マニラ・ロードの近年の功績を振り返る際、明確には「3つの傑作が驚くべき短期間のうちに発表された」、という現実に直面する。この5年間の間に、マニラ・ロードは破竹の勢いで才能を爆発させ続け、エピック・ヘヴィメタル史に悠然と輝く一連の名作を誕生させた──2001年にはアトランティス大陸をテーマとした壮絶な『Atlantis Rising』、2002年にはこれまでのエピックメタルの常識を悉く覆す一大傑作『Spiral Castle』、2005年にはマニラ・ロードの歴史の中で最も叙事詩的な前代未聞の超大作『Gates of Fire』(2005)が発表された。我々はこのあまりにも迅速かつ目覚ましい大躍進に対し、ただマニラ・ロードというバンドの持つ驚異的なポテンシャルを素で受け止めることしかできなかった。短期間で叙事詩的なマニラ・ロードの作品をすべて理解することは難しいが、矢継ぎ早にエピックメタルの名作を発表し続けることは更に難しい。しかし結局のところ、マニラ・ロードはその偉業をいとも簡単に成し遂げてしまったのだ。そしてこのように、エピックメタルの歴史に新しい3つの叙事詩が加えられたので、多くのファンは現実を大いに喜んだ。



ブライアン・パトリック(Bryan Patrick)の加入によって攻撃性を増したマニラ・ロードは、賛否両論を実力で撥ね退け、彼がマニラ・ロードにとって必要な存在であることを証明した。元来ブライアン・パトリックはデスメタルやブラックメタルのために上手く歌うことができるヴォーカリストであったが、アンダーグラウンド寄りの湿った歌唱を披露するマーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo、key)とは上手くいかないと信じ込まれていた。その逆境を見事に克服したのが前作『Gates of Fire』であり、ブライアン・パトリックの凶暴な唸り声は重厚なエピックメタルのサウンドに特筆すべきアグレッションを加え、前述の通りエピックメタルの優れた傑作を誕生させることができた。この時点で、ブライアン・パトリックのヴォーカルに難癖を付ける者は消えた。
2008年に発表されたマニラ・ロードの第13作『Voyager』でブライアン・パトリックは一時的な休養のためにバンドを離れているが、代わりに兄弟のハーヴィ・パトリック(Harvey Patrick:b、vo)が素晴らしい仕事をこなしている。彼らの持ち込んだ強烈なインスピレーションを抜きにして、本作は完成しなかったであろう。既にブライアン・パトリックの兄弟は、マニラ・ロードの新しい"顔"として見事に定着している。



本作『Voyager』は、マーク・シェルトン、ハーヴィ・パトリック、コリー・クリストナー(Cory Christner:d)によって制作された雄大なコンセプト・アルバムである。既にエピック・ヘヴィメタル界の教祖マーク・シェルトンの持つ壮大な構想によって生み出された新時代の3つの作品において、過去にマニラ・ロードがテーマとして選択してきた題材は殆ど消化された。ロバート・E・ハワード、H・P・ラヴクラフト、エドガー・アラン・ポー、クライブ・バーカーといった過去の作家たちが残した作品は、古くマニラ・ロードの叙事詩的な音楽性に影響を与え続けてきた。マーク・シェルトンはこれらの幻想的な題材を巧みに扱い、純粋かつ大仰なエピックメタルを完成させることに成功した。そして今回、新しくマニラ・ロードは12世紀の時代へと旅立ち、中世のヴァイキングの一団が体験した壮絶な航海と叙事詩的な戦争を壮大なスケールで描いている。マニラ・ロードが奏でる古代の悠久の調に乗せて、我々はその劇的な物語の行末を見届けることになるのだ。



……如何なる時代においても古代の信仰が生き長らえているように、本作の雄大な"Voyager"で描かれている航海者たちは、必然的な理由から新天地を目指す航海へと旅立っている。古代の信仰を崇拝している北欧人にとって、キリスト教への改宗は耐え難い屈辱であったので、彼らはヴァイキングとなって戦争や略奪を行ったり、自分たちにとってより良い環境である(と信じられていた)アメリカへと旅立っていった。今作の物語の主人公であるホルガー(Holgar)とそのヴァイキングたちも、同じようにキリスト教への改宗から逃れるために、遠い異国の地へと出航する。彼らは冒険の途中で様々な困難と出会ってこれを乗り越え、最終的には古代アステカの国に到達する。そこでヴァイキングたちは「ククルカンのピラミッド」、即ちチチェン・イッツァ(カスティーヨ)を発見するというのだ。この伝説的な中世時代の冒険譚が本作の主なストーリーとなっており、マニラ・ロードは従来の古典的なエピックメタルでこれらを鮮明に描ききっている。



マニラ・ロードが生み出したコンセプト・アルバムの頂点に位置する本作は、これまでの作品以上に強いデスメタルの影響を残し、暗く重い叙事詩的な雰囲気によって支配されている。"Conquest"に表現されているハードコアなスタイルは、マニラ・ロードにとっては古くも新しい要素だ。ファンならばこれをスラッシュメタルを導入していた時期と重ねることができるかも知れない。80年代の伝統的なエピックメタルを踏襲しながらもよりソリッドに進化しているリフは、楽曲の重厚なサウンドと相俟って何れも唯一無二の"マニラ・ロードのエピックメタル"を形成している。今回、中世をテーマにしたことで使用が増加した高潔なアコースティック・ギターは、全体により深遠な叙事詩的な雰囲気を与え、"Tree of Life"のような素晴らしい名曲を生んでいる。
過小評価されているが、マニラ・ロードの表現力には驚くべきリアリティが存在している。既に過去の名作が物語っているが、マニラ・ロードは作品のテーマに沿った雰囲気を自在に作り出すことができる。我々は『Atlantis Rising』での異国風な雰囲気や、『Gates of Fire』での古代ギリシア・ローマ時代に対する忠実な表現力を高く評価している。また本作『Voyager』でも極めて時代背景に沿った迫真の世界が構築されており、今作における時代考証の正確さは明らかに突出している。『Voyager』の再現する叙事詩的な中世ヴァイキングの世界観が、我々にとっての新しい視野の獲得と久しく忘れ去っていた過去の興奮を呼び覚ましてくれる。マニラ・ロードは再び歴史的なエピックメタルの傑作を生み出したのだ。



1. Tomb of the Serpent King / Butchers of the Sea
キリスト教の布教から逃れるために、勇士ホルガーに率いられたヴァイキングの一団は遥かなる土地を目指して船出する。語りを導入した不穏なイントロダクションから始まり、重厚かつヘヴィなエピックメタルへと展開する典型的なマニラ・ロードの名曲である。
2. Frost and Fire
ヴァイキングの一団がアイスランドに辿り着く。かつて北欧の王はキリスト教への改宗を宣言し、異教徒との間に血が流された。荒涼としたアイスランドにも多くの異教徒が住まったが、現在この土地での戦いは終結している。ダークな雰囲気に包み込まれたエピックメタルであり、ペイガニズムを表現する暗いメロディが本作のデス/ブラックメタルとの共通点を物語っている。
3. Tree of Life
およそ8分に及ぶ大作。世界樹(ユグドラシル)──すべての生命の源である生命の木は、9つの神秘的な世界へと繋がっているとして、北欧の民は今もこの伝説を信じている。美しいアコースティック・ギターが奏でる高潔な音色が印象的なこの素晴らしい名曲は、本作の一つのハイライトとして記録される。叙事詩的な真のバラードである。
4. Blood Eagle
アイスランドを出港し、グリーンランドを経由してヴィンランドへと辿り着いたホルガーとヴァイキングの一団。ホルガーは古代の信仰と神々の土地を汚したとして、かの地で出会った司教を殺害する。パイプオルガン風の中世を彷彿とさせる旋律で幕開ける本曲は、雄大なコーラスを有するコンセプチュアルなエピックメタルである。
5. Voyager
およそ9分に及ぶ本作のメイン・テーマ。新天地を目指して凄絶な嵐の中を突き進むヴァイキングたちの生き様を描いている。まさにエピックメタルに相応しい壮大な内容を有し、孤高のドラマ性を表現した劇的な緩急を用いた名曲である。雄大なコーラスを配した数々の場面がヴァイキングの勇士たちの泥臭い熱気を呼び起こす。マニラ・ロードここにあり。
6. Eye of the Storm
中世時代の雰囲気を宿すドラッド。戦士的なロマンティシズムを表現したアコースティック・ギターの音色が遥かなる記憶を呼び覚ます。
7. Return of the Serpent King
およそ8分に及ぶ大作。ホルガーとその仲間たちは、アステカの支配者であるトルテック族との戦争に加わる。ドラマティックなエピックメタルであり、後半に大仰なギターソロ・パートを配す。なお"蛇の王(Serpent King)"とはマヤ神話の至高神ククルカン(Kukulcan)を指している。
8. Conquest
刃を交える長剣のような鋭利な戦いの歌。征服が始まり、ヴァイキングはヴァルハラのために戦う。そしてアステカの古代文明は犠牲となり、勝利はヴァイキングのものとなる。本作中で最速である本曲は、暴虐的なまでに圧倒的なスピードで疾走し、怒涛のアグレッションを叩きつける。
9. Totentanz (The Dance of Death)
最後の楽曲。戦争で死んだ偉大なる王のために、残された人々は死の舞踏を繰り広げ、ヴァイキングの勇敢なる航海者たちは讃えられる。スパニッシュな雰囲気を宿す繊細なパートと、圧巻のリフが刻まれるパートとに分かれる名曲である。本作を締め括るに相応しいドラマ性を有している。


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Gates of Fire



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2005
Reviews: 95%
Genre: Epic Metal



アメリカのアンダーグラウンド・シーンに君臨するエピックメタルの重鎮、マニラ・ロードの2005年発表の12th。


プロローグ...
マニラ・ロードの再結成は運命であった。ここに来て怒涛の快進撃を続けるアメリカのマニラ・ロードは、エピックメタルの名作を矢継ぎ早に発表し、問答無用でファンを納得させた。既に新生マニラ・ロードによって『Atlantis Rising』(2001)、『Spiral Castle』(2002)という途轍もないエピック・ヘヴィメタルの傑作が生み出されており、我々はマニラ・ロードの絶対的なポテンシャルを改めて確認させられることとなった。この仕事は決して金のためではない──純粋なエピックメタルへの探求心が生み出した奇跡を、事実我々は目撃したのである。
そして再び、マニラ・ロードのエピックメタルの崇拝者である我々は、信じられないような奇跡を目の当たりにすることとなる。1981年にレコーディングした音源を再発した企画盤『Mark of the Beast』(2002)に次ぐマニラ・ロードの行動は、これまでで最も叙事詩的な作品の制作に着手することであった。そしてそのために、エピックメタルの始祖マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)は、驚くべき手法で壮大な叙事詩の構想を練り始めていた。
バンドにも変化があった。過去にランディ・フォックスとの間に生じた確執のために脱退したハーヴィ・パトリック(Harvey Patrick:b)が再びバンドに加入したのだ。第2のヴォーカリスト、ブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)の兄弟でもあるハーヴィ・パトリックは、マニラ・ロードが必要な仕事をやり遂げるために必要なメンバーであった。
歳月は流れた。新作を制作する過程において、西洋におけるキリスト教以前の時代に遡り、マーク・シェルトンは特筆すべき三つの叙事詩を発見した。この歳月の蚕食に耐えた素晴らしい叙事詩は、やがて長大なトリロジー(三部作)として、マニラ・ロードの第12作目の作品『Gates of Fire』の礎を築くこととなった。新曲の録音を終えると、そこに誕生したのはマニラ・ロードの歴史の中で最も叙事詩的な超大作であった。多くの人間が気付くことはなかったが、マーク・シェルトンはまた一つエピックメタル界に奇跡を起こしたのである...


『METAL EPIC』誌より抜粋:



我々が知る以上に、キリスト教以前の時代には驚嘆すべき物語が数多く存在している。古代ギリシアの神話や伝承、古い「剣と魔法の物語」の原型はその時代の歪から生じ、何時の時代も我々の精神を興奮と歓喜で満たしてきた。アメリカのエピックメタルの始祖、マニラ・ロードはそれらの忘れ去られた時代の叙事詩に光をあて、本作『Gates of Fire』を通じ、伝統的なエピックメタルとして現代に蘇らせている。これまでに発表してきた古典的なエピックメタル作品の中でも数々の神話や伝承、幻想的な文学の類を扱ってきたマニラ・ロードだが、今作でもその真価が遺憾なく発揮されている。



キリスト教以前の世界からインスパイアされ、後の時代に誕生していった叙事詩の中に、本作『Gates of Fire』を紐解く鍵が隠されている。神話とは創作であり、決して事実を物語っているわけではない。それは古代の時代に生きていた人間が現在では誰も生存していないために、神話と史実の境界線が曖昧になっているためだ。ハインリッヒ・シュリーマン(Johann Ludwig Heinrich Julius Schliemann, 1822 - 1890)による発掘作業の結果、神話上の都市トロイアは実在したことが判明している。現在のギリシアのテルモピュレの道にレオニダス王のブロンズ像が堂々と立っていることは、紀元前のペルシア戦争における300人のスパルタ兵の戦いが史実であったことを立証している。神々と英雄の時代の叙事詩的な神話は、そのすべてが空想上の出来事ではないのだ。マニラ・ロードはトリロジーの第二部と第三部で、この遥か太古の壮大な叙事詩を取り上げている。



アメリカのテキサス出身の小説家、ロバート・E・ハワード(Robert Ervin Howard, 1906 - 1936)は、幼い頃から歴史を学び、その深遠な世界に魅了されている。幼少期のハワードが特に好んだのが北欧神話に代表される英雄譚であり、大人になって成功を収めた『コナン(Conan)』シリーズにも北欧神話の神々や地名などが登場する。「氷神の娘(The Frost Giant's Daughter)」は北欧神話に強く影響を受けた作品であり、物語の荒涼とした雪の世界の雰囲気や終盤に霜と氷の巨人イミルが登場するなど、幼少期のハワードの趣味が良く活かされている。マニラ・ロードのトリロジーの第一部で取り上げられているのは、この奇怪ながらも幻想的な英雄譚であるのだ。



本作『Gates of Fire』では、それぞれ異なる三つの時代の三つの叙事詩から構成された長大なトリロジーが描かれている。全三章に分けられた叙事詩的な物語は、全9曲のエピックメタルから構成され、大作至高の各楽曲の内容には古代の時代の出来事が濃厚に描写されている。事実マニラ・ロード最大の超大作でもある本作は、第一部にロバート・E・ハワードの小説『コナン(Conan)』より「氷神の娘」、第二部に古代ローマの詩人、プブリウス・ウェルギリウス・マロ(Publius Vergilius Maro, 70 - 19 B.C.)の残した最後の叙事詩『アエネーイス(Aeneis)』、第三部に紀元前のペルシア戦争における"テルモピュライの戦い(Battle of Thermopylae)"を題材として選択している。これらの時代を超越した血拭き肉躍る伝説が純粋なエピックメタルのサウンドと劇的に融合し、本作『Gates of Fire』の唯一無二の迫真の叙事詩的世界は形成されているのだ。本作が完成したその日に、マニラ・ロードが歩んできた足跡は遂に歴史となった。そして信者たちは、半永久的にエピックメタルの偉大な始祖の名を決して忘れ得ぬことであろう──



Trilogy 1: The Frost Giant's Daughter

1. Riddle Of Steel
北の雪原で戦う男たち。戦士が戦場で斃れる時、"鋼の謎(Riddle Of Steel)"の真実は明かされる。この物語は、古くハイボリアに伝わる伝説である。エピカルなサウンドが若干籠っているのが残念だが、本作の冒頭を飾るに相応しいヒロイックな内容を有している。
2. Behind The Veil
荒涼とした雰囲気が漂うアコースティック・ギターによる小曲。ここでは氷神の娘が斃れた英雄を人間ならざる美で妖艶に誘う場面が描かれる。
3. When Giants Fall
欲望に負け、本能のみで氷神の娘を追うコナンの前に、二人の氷の巨人が立ちはだかる。コナンはいとも簡単に巨人たちを打ち倒すと、念願の娘のもとに殺到する。しかし氷神の娘が父親イミルの名を叫ぶと辺りに青白い光が放たれ、娘は何処かへと消え去ってしまう。本曲はソード・アンド・ソーサリー・サウンドを表現したエピックメタルの傑作であり、過去のマニラ・ロードの利点が殆ど結集されている。コンセプトに忠実である野蛮なサウンドに加え、幻想的なコーラス・パートは信者を熱狂させるに十分な魅力を持っている。

Trilogy 2: Out Of The Ashes

4. The Fall Of Iliam
およそ14分に及ぶ超大作。本作最大のハイライトである。英雄アイネイアス(Aenēās)が炎に包まれるトロイアを逃れ、新天地イタリアを目指す物語が描かれている。アイネアスは嵐に合ってカルタゴへと流れ着き、美しい娘ディド(Dido)と出会い恋仲になるが、運命によってローマを建国するよう定められていたため、娘とカルタゴを後にしローマへと旅立つ。その他、劇的な緩急を用いたコーラス・パートでは、トロイア戦争での悲劇的な場面を叙事詩的に描写する。『Gates of Fire』という、マニラ・ロードの歴史の中で最も叙事詩的な作品である本作を象徴する名曲であり、静と動の応用、壮大なスケール感に満ちた最長のギターソロ、英雄叙事詩を意識した雄大なコーラスは圧巻。またそれらの要素が渾然一体となって生み出される迫真の世界観はまさに壮絶である。本曲はマニラ・ロード最大の大作であろう。なおタイトルに用いられているイリアム(Iliam)とはラテン語でトロイを意味する。
5. Imperious Rise
人々の記憶の中に生き続けるローマ建国の英雄ロームルス (Romulus) とレムス (Remus)。彼らは古謡の中で語られるトロイの民の意志を受け継ぎ、偉大なるローマの民を育てた。薄暗いエピカルなリフが古代の臭気を醸し出し、それは最後のヒロイックなコーラス・パートで爆発する。
6. Rome
およそ11分に及ぶ大作。強大な帝国へと発展したローマ。その真の創始者は英雄アイネイアスである。神話の中で彼の物語は叙事詩として永久に語り継がれる。重厚な内容を有するエピックメタルであり、物語のクライマックスに"The Fall Of Iliam"の叙事詩的なギターソロ・パート、 "Imperious Rise"のヒロイックなコーラス・パートを導入する。ヴァージンスティールにも通じるこの手法は、マニラ・ロードのエピックメタルのために今回大きな貢献を果たしている。

Trilogy 3: Gates Of Fire

7. Stand Of The Spartans
スパルタ王レオニダスに率いられ、勇猛な軍隊はテルモピュライで圧倒的なペルシア軍を待つ。開戦前の緊張感の如く、重苦しい雰囲気が本曲を支配している。なお「テルモピュライ」という名前は"灼熱の門(Gates Of Fire、Gates Of Marriage)"を意味する。
8. Betrayal
およそ8分に及ぶ大作。裏切りによって、300人から成る鉄壁のスパルタ兵の陣形は崩れ去る。異様なまでにヒロイックなムードと死地の雰囲気に満ちた楽曲であり、コーラスでは雄大ながらも悲壮感を感じさせる旋律を用いている。後半の長尺なギターソロは一心にヒロイズムを追求。
9. Epitaph Of The King
およそ10分に及ぶ『Gates of Fire』最後の叙事詩。究極の英雄主義を表現した叙事詩的バラードの最高傑作である。勇猛果敢に死んだレオニダス王とその兵を讃え、高潔なアコースティック・ギターの旋律と興奮を呼び覚ます哀愁のリードギターが途方もない空間を作り上げる。感動は必至。マニラ・ロードの作品でこれ以上のエピローグは存在していない。なお最後のエピローグで登場するメロディは第4作『Open the Gates』(1985)収録の名曲"The Ninth Wave"からの引用である。


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Mark of the Beast



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2002
Reviews: 71%
Genre: Epic Metal



アメリカ発、カルト・エピックメタルの重鎮、マニラ・ロードの2002年発表の企画盤。

「Monster Records」より発表。本作は第一作『Metal』と第2作『Invasion』の間、1981年に既にレコーディングされていた音源を2002年に再発した内容。オリジナルのタイトルは『Dreams Of Eschaton』である。



1. Mark of the Beast
2. Court of Avalon
3. Avatar
4. Dream Sequence
5. Time Trap
6. Black Lotus
7. Teacher
8. Aftershock
9. Venusian Sea
10. Triumvirate


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Spiral Castle



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2002
Reviews: 89%
Genre: Epic Metal



アメリカが誇る真性アンダーグラウンド・エピックメタル、マニラ・ロードの2002年発表の11th。


「『Crystal Logic』以来の傑作」

 ──『METAL EPIC』誌


『METAL EPIC』誌より抜粋:

名作『Crystal Logic』(1983)に次ぐ偉大な傑作が誕生した──2000年に衝撃の再結成を果たし、長きに渡る沈黙を打ち破ったエピックメタル・シーンの重鎮マニラ・ロードは、強烈無比な新作『Atlantis Rising』(2001)と共に熱烈な信者たちのもとへと帰還すると、すぐさま次の攻勢に転じた。エピックメタルの創始者であるマーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)が沈黙のおよそ9年間のうちに溜め込んだ比類なき才能は、一旦作品を通じて外の世界に放出されると、噴き上げる原始の間欠泉の如くその後も巨大な爆発を続けた。既に再出発したマニラ・ロードの快進撃を妨げる外壁はなく、またこれを止めることすら不可能な事態であった。マニラ・ロードの第2章は栄光のうちに幕を開けた。
マニラ・ロードにとって第10作目となる『Atlantis Rising』は、読んで文字の如くバンドの"復活"を告げるために最良の作品であった。『Atlantis Rising』では過去の作品を遥かに上回る圧倒的なサウンド・プロダクションと新ヴォーカリスト、ブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)が持ち込んだ強烈なアグレッションによって、マニラ・ロードのエピックメタルは更なる高みへと上り詰めることに成功した。楽曲の充実は熱狂的なファンをも唸らせ、エピックメタルの始祖がマニラ・ロード以外には存在していない事実を証明した。コンセプトの面でも大きな進歩を遂げ、マーク・シェルトンはアトランティス大陸に関連する古代神話とクトゥルー神話を織り交ぜて壮大なストーリーを作り、更にそこに北欧神話の世界観を加えるという前代未聞の手法で革命的な一大叙事詩を描き出した。他の追従を許さないばかりか、マニラ・ロードは独自の世界観を徹底的に追求し、ただひたすらに己の道を突き進んだ。然り、それこそがマニラ・ロードのやるべき仕事であったのだ。
マニラ・ロードの躍進を止める者は誰もいない。マーク・シェルトンの強靭な意志によって決起し、マニラ・ロードはただ一つの道を極めんと行軍を続ける。過度な評価や商業的な成功とは無縁の世界がマーク・シェルトンの眼前には広がっており、その先に待ち構えているものは己の飽くなき探求欲を満たす知識の泉のみである。恰もミーミルの泉の究極の知識を求めたオーディンの如く、何れはマーク・シェルトンもその泉の水を飲み干すことになろう。しかし究極の知識を手にするためには、それに最も相応しい代償を支払わなければならないのだ。
エピックメタル──マニラ・ロード自身が『Crystal Logic』で生み出したその特異な分野の歴史は、今再びマニラ・ロードによって塗り替えられようとしている。マニラ・ロードが生み出した真の傑作『Spiral Castle』がその重要な役割を担うことになろう。古典的なエピックメタルの基礎を捉えた80年代へと原点回帰するヘヴィかつメタリックなサウンドを有し、過去のチープさを払拭した現代技術で録音された『Spiral Castle』は、何人にも有無を言わせず、問答無用の真性エピックメタル作品として誕生した。
本作では、これまでにマニラ・ロードが一貫して追求してきたH・P・ラヴクラフトの暗澹たる怪奇幻想の世界と北欧神話に連なる勇猛果敢な英雄譚が各楽曲に脈動感を与え、唯一無二の叙事詩的世界を作り出すために大いなる貢献を果たしている。耳を劈くような重厚かつ鋭利なサウンドによって構築され、尚且つ劇的かつヒロイックな旋律を多用した理由の一つには、これらの雄大な世界観を徹底的に表現するという明確な目的がある。『Crystal Logic』に無駄な音など収録されていない。我々が思うに、マニラ・ロードというバンドは生涯に渡り叙事詩的音楽を追求することをやめないであろう。
マニラ・ロードが到達した一種の頂点である『Spiral Castle』は、凄絶な緊張感によって支配され、一切の妥協と迷いがない。当然の如く、孤高を極めた深遠な世界観は人を選ぶ。今回マニラ・ロードが上り詰めた山の頂きに挑戦する者は恐らく誰もいないであろう。この偉大な傑作はマニラ・ロードの真の信奉者によってのみ正当な評価を受け、アンダーグラウンド・シーンの頂点に君臨する定めにあるのだ。音楽業界は完全にマニラ・ロードの存在を歴史から抹消したが、今この瞬間にも地下で巨大な妖蛆が蠢いており、密かに力を蓄えていることを彼らは知りもしない。我々は愚直にもその強大な存在に気付かないだけであるのだ。最も、この妖蛆に出来ることは僅かな信奉者を増やすことくらいで、穢れた地上の微光を敢えて浴びることなどはしないのだが。



1. Gateway to the Sphere
鋭利なリードギターの奏でるヒロイックな旋律を基盤とした劇的なイントロダクション。圧倒的なサウンドが放つ怒涛の高揚感によって、これまでのマニラ・ロードの作品を超越した壮絶なプロローグを飾る。既に孤高なるエピックメタルの世界は開始された。
2. Spiral Castle
8分に及ぶタイトル・トラック。すべてのマニラ・ロード信者待望の名曲である。H・P・ラヴクラフトからの暗い影響と、北欧神話の雄大な世界観を合わせ持つ内容。劇的かつヒロイックなサウンドという形容はこの楽曲のためにあるようなもの。マーク・シェルトンのクリーン・ヴォイスとブライアン・パトリックの唸り声を合わせた展開も秀逸。
3. Shadow
80年代の伝統的なエピックメタルのサウンドを重厚かつ破壊的なまでに鋭利にした楽曲。情け容赦のない鋼鉄のリフと激しいリズムで徹底的に高揚感を煽る。
4. Seven Trumpets
悪魔ベリアルをモチーフとした楽曲。アンダーグラウンド特有の薄暗い雰囲気と劇的な緩急が融合したエピックメタルである。後半ではエピカルなギターソロも導入する。
5. Merchants of Death
十字軍の悲痛な宿命が叙述されている。テンプル騎士団は信仰の対象として、悪魔バフォメットを崇拝していた歴史がある。およそ10分に及ぶ大作であり、古典的なエピックメタルのサウンドに独特のムードが重なる。マニア以外には全く受け入れられない暗澹たる音楽性を有し、その手のファンには確実にアピールする。カルト的な空間を即時に作り出すマーク・シェルトンのエピカルなギターソロも健在。
6. Born upon the Soul
ソード・アンド・ソーサリー・サウンドを有するマニラ・ロードが帰還した。幻想的な古代の雰囲気を漂わせ、漢臭いメロディを周囲に蔓延させる大仰なそのスタイルは、もはや不動のものである。本曲は終盤まで途轍もないヒロイズムを披露する傑作。中東風の雰囲気があるのも特徴的だ。なお本曲は魔術の起源を求めるある男の探索行が題材となっている。
7. Sands of Time
ストリングスを用いた本編のエピローグ。およそ7分に及ぶ。"Born Upon the Soul"の怪しげな雰囲気を引き継ぎ、ストリングスを用いた妖艶極まるフレーズが全編を彩る。これは完全に『コナン』の世界だが、あまりにも徹底しているため、万人の評価は得られそうにない。


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Atlantis Rising



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal



アメリカの地下より衝撃の帰還を果たした真性アンダーグラウンド・エピックメタル、マニラ・ロードの2001年発表の10th。


1 歴史;解散

1977年のアメリカのカンザス州・ウィチタでの結成以来、少数ながらも熱狂的な信者たちによって支えられ、これまでにエピックメタル(Epic Metal)と称される独自の分野をヘヴィメタル・シーンの中で開拓・発展させてきたマニラ・ロードは、唯一無二の教祖マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)の発散する強烈なカリスマ性に加え、執拗なまでに徹底した鋼鉄の信念のもと、長きに渡り活動を続けてきた。"Epic Adventure"と称された不朽の名作『Crystal Logic』(1983)を生み出た後、マニアに最高傑作と謳われる『Open the Gates』(1985)を発表すると、アンダーグランドのエピックメタル・シーンにおいて、マニラ・ロードの名は墓地に出没する亡霊の怪異譚のように囁かれる暗い伝説と化した。
陰鬱な雰囲気に満ちたマニラ・ロードは、自室に篭り奇怪な作品集を生み出す幻想作家の如く、自らの作品において独自の世界観を追求した。主に題材として選択された分野は、アメリカの怪奇小説家H・P・ラヴクラフトの小説、文豪エドガー・アラン・ポオの詩、ロバート・E・ハワードに触発されたソード・アンド・ソーサリー(Sword and Sorcery)の世界であった。これらは現在ではエピックメタルの礎を築いている基本的な要素だが、当時は明確な定義など存在していなかった。
エピックメタルの創始者であるマーク・シェルトンのみは、自分たちがバンドでやっていることを完全に理解していた。世俗的な世界が本質を欠いてヘヴィメタル・ミュージックを常に見下しているように、世間の目は冷たかった。それらは時にマニラ・ロードの音楽性を大仰だと卑下したり、子供じみているとして嘲笑するといった形で表面化していった。当然の如く、マニラ・ロードが多くを犠牲にして──例えば金や家族との時間などを失って──やっていることはシリアスであったし、意味のあることであった。しかし結局のところ、その正確な事実を熱狂的な信者たち以外が認める機会は遂に訪れなかった。
やがてマーク・シェルトン、スコット・パーク(Scott Park)、ランディ・フォックス(Randy Foxe)という伝説の──或いはヘヴィメタル界で最も過小評価されている──3人のメンバーによって制作された最後の傑作『The Courts of Chaos』(1990)が発表されると、熱狂的な信者たちはこれをソード・アンド・ソーサリー音楽の聖典とした。マーク・シェルトンはこの偉大な作品を指して「マニラ・ロードの最初の真の傑作」と称している。ここに来てマニラ・ロードは一応の目標を達成した事になるが、しかし、これまでと同じようにエピックメタル・シーンの外では本作の内容に対して一切の沈黙が貫き通された。「ヘヴィメタル界でマニラ・ロードほど才能に恵まれながらも歴史の影に埋もれ、軽視されてきたバンドは存在しない」皮肉にもこれは真実である。マーク・シェルトンという謙虚な人間は恐らく知り及んでいた──自身がマニラ・ロードで活動を続ける限り、未来永劫に渡り商業的な成功は掴めない。しかし、それで良いのだ。マーク・シェルトンが一貫した姿勢を崩すことはない。我々がマニラ・ロードの存在に気が付くずっと前から、マーク・シェルトンは"純粋なエピックメタルを創造する"という使命を背負っていた。
バンドに転機が訪れた。スコット・パークとランディ・フォックスの確執によってマニラ・ロードは『The Courts of Chaos』の発表後に解散。心機一転を図るべくマーク・シェルトンがソロ・プロジェクトの活動を進めた矢先に最悪の事態が起こる。マーク・シェルトンと契約していた「Black Dragon Records」はソロ・アルバムのタイトルを『The Circus Maximus』(1992)に変更後、当人の意図に逆らってマニラ・ロード名義で本作を発表する。マニラ・ロードとは掛け離れた音楽性を有した『The Circus Maximus』はレーベル側が見込んだ売り上げも大幅に下回り、熱狂的な信者たちを大いに憤慨させ、読んで文字の如く大失敗した。この事件以降、マーク・シェルトンは「Black Dragon Records」に対して強い反発を覚え、以後およそ9年に渡り音楽活動を休止した。誰もが望んでいない最悪の物語の結末であった。

2 歴史;再結成

マーク・シェルトンがマニラ・ロードを解散させてから長い歳月が流れたある日のこと、マーク・シェルトンはランディ・フォックスと再び連絡を取った。マーク・シェルトンはマニラ・ロードの歴史を振り返り、ランディ・フォックスとの長い議論の末、物事は良い方向へと進む兆しを見せた。当時ロードマネージャーの仕事をしていたブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)の兄弟は、マニラ・ロードのために協力を惜しまなかった。
再び明るい兆しが見え始めたマーク・シェルトンは、マニラ・ロード再結成のためのメンバーを集め始めた。いくつかの短いショウの後、バンドはランディ・フォックスの助言に従い、新作のための新しい録音機材を購入した。これらの行動は、マニラ・ロードの最終目標が単なるライブのためのバンドの再結成ではなく、今一度エピックメタル・シーンに帰還することを目的とした事実を証明しているものであった。
マーク・シェルトンとブライアン・パトリックがマーク・アンダーソン(Mark Anderson:b)と共に新作の録音に努めている間、マニラ・ロードにとって好意的な話が舞い込んできた。2000年、マニラ・ロードがようやく再結成したその年にドイツのフェスティバルでの演奏が決定したのである。当然の如く、バンドはこれを完全復活の場として捉えていた。しかし、マーク・シェルトンはライブのためにランディ・フォックスをドラム奏者として再びマニラ・ロードに呼び戻さなければならなかった。
連絡を受けたランディ・フォックスはフェスティバルへの出演を承諾した。次いでマーク・シェルトンはフェスティバルの開催者にバンドの出演が可能であることを告げた。しかしその3日後、ランディ・フォックスが突如として出演をキャンセルしたため、マニラ・ロードは予約していたショウをすべてキャンセルするという事態に陥った。マーク・シェルトンはマニラ・ロードのキャリアのために極めて重要であるこのフェスティバルに参加するため、ランディ・フォックスにショウへの出演を認めなければ、早急にドラム奏者を変更することを冷酷に告げた──かくして、盟友ランディ・フォックスはマニラ・ロードを去った。これはマニラ・ロードの未来のためには必要な犠牲であった。
ドイツでのフェスティバルは異例の大反響のうちに幕を閉じた。マニラ・ロードは長い間、全くヘヴィメタル・シーンに顔を見せていなかったが、これほどまでにマニラ・ロードの再結成を強く待ち望んでいる欧州の熱烈なファンの凄絶な光景を始めて目にすることとなった。熱狂的な信者たちがいてこそ、マニラ・ロードは始めて己の存在意義を認めることができた。決起したマーク・シェルトンが9年来の舞台に立つと、瞬く間にコロッセオの如き大歓声が周囲に巻き起こり、恰も偉大なる教祖を崇めるような異様な熱気が会場を埋め尽くした。母国アメリカでは過小評価されているが、今や欧州では、マニラ・ロードの名はマノウォーやヴァージンスティールと同じくらい有名になっていた。
バンドはフェスティバルの後、復活作となる最初の新作のための録音を続けた。この期間にいくつかの短いショウも重ねた。既にマーク・アンダーソンの友人であったスコット・ピータース(Scott Peters:d)をバンドに迎え入れていたマニラ・ロードは、遂に念願のバンドとしての体制が完成した状態にあり、長年エピック・ヘヴィメタルのファンたちが待ち続けてきた新作を発表する機会が訪れた。そして、マニラ・ロードはその渾身の作品を『Atlantis Rising』と名付けていた...

3 『Atlantis Rising』について...

本作『Atlantis Rising』はマニラ・ロードの第10作目の作品に当たる。本作がこれまでのマニラ・ロードの作品と最も異なっている点は、第2のヴォーカリストとしてブライアン・パトリックがバンドに迎えられていることである。アンダーグラウンドの音楽性に相応しい歌唱を続けてきたマーク・シェルトンに対し、ブライアン・パトリックの歌唱はブラックやデスを彷彿とさせる獰猛なスタイルに接近する。マニラ・ロードは強烈なアグレッションによって、本作に全く新しい要素を加えたことになる。
多くの面において、『Atlantis Rising』は傑作『The Courts of Chaos』の次に発表されるべき内容を有している。レーベル側の思惑によってマニラ・ロード名義で発表された作品『The Circus Maximus』を除いては、正しく本作こそがマニラ・ロードの第9作目の作品として相応しい。本作において、エピックメタルと形容される大仰なサウンドはより一層強靭に生まれ変わり、神話やソード・アンド・ソーサリーに影響を受けた孤高の世界観は不変の状態のまま受け継がれている。
マーク・シェルトンは本作のコンセプトに対し、第5作『The Deluge』(1986)で選択したアトランティス大陸の伝説を再び題材としている。当然の如く、これらのコンセプトは単純に過去の焼き直しではなく、マニラ・ロードの追求してきた世界観の集大成的意味合いを含んで構成されている。これまでにマニラ・ロードはH・P・ラヴクラフトやノルウェー神話などを好んで作品のモチーフとしてきたが、今作ではそれらの要素が先述したアトランティス大陸の伝説に組み込まれる形式を取っている。重厚かつ鋭利なエピックメタル・サウンドによって表現される古代の深遠なテーマ──これこそがマニラ・ロードの目標とした音楽性だ。
要するに本作のコンセプトでは、アトランティスの失われた大陸の上昇によって勃発する旧支配者(Great Old Ones)とエーシル神族(Æsir)の叙事詩的な戦争について描かれている。選択された題材の起源は様々な分野に渡る。アトランティス大陸の伝説は主に古代ギリシアの神話より組み込まれ、旧支配者はH・P・ラヴクラフトによって原型が築かれ、後にオーガスト・ダーレスによって完成させられた一連のクトゥルー神話から拝借されている。旧支配者との間で戦争を行うエーシル神族とは、即ちアイスランド語の言葉であり、その正体は一般的に我々のよく知る北欧神話のアース神族のことを指している。興味深いことは、マニラロードは古い文献に忠実であり、アトランティス大陸のスウェーデン説を発表したオラウス・ルドベック(Olaus Rudbeck)の著作『Atland eller Manheim』(1679~1702)からアトランド(*Atland)の名を物語に用いているということだ。これらの要素が複雑に絡み合い、『Atlantis Rising』の壮大な物語は構築されている。
Atlantis Rising』はマニラロードの傑作に相応しい。エピックメタルに必要な要素が結集され、一切の妥協のない緊張感に満ちた迫真のサウンドを全体で構築している。神秘世界への徹底した傾向は言わばマニラ・ロードの特権だが、今回は大胆な発想の勝利である。ブライアン・パトリックの持ち込んだ新しい要素は、一部のエピック・ヘヴィメタルのファンによって正当に評価されることになる。また一部では、ブライアン・パトリックの攻撃的な歌唱について物議も醸されることになろう。しかし、このようにマニラ・ロードはエピックメタル・シーンに堂々の帰還を果たし、新しい金字塔『Atlantis Rising』を地下に配給させることに成功した。マーク・シェルトンさえいればマニラ・ロードは健在である。『Atlantis Rising』を皮切りとして、過去の失った時間を埋めるように、ここからマニラ・ロードの快進撃が始まる。我々はやがて、その凄絶な光景を目にすることになろう。

*スウェーデン語。オラウス・ルドベックによるアトランティスの言語。19世紀に「アトランティス」に変更される。



1. Megalodon
マニラ・ロードの完全復活を遂げる強靭な楽曲。絶滅した太古の生物(サメ)メガロドンについて扱い、およそ8分を超える濃密な内容を有する。鋼鉄のリフによって構築され、激しく脈動するダイナミックなサウンドが周囲のものすべてを圧倒する。

Book I. The Rise (of Atland):
2. Lemuria
神話上の大陸の名を冠した小曲。不穏なSEと幻想的なメロディに彩られながら、壮大な物語が幕を開ける。
3. Atlantis Rising
大洪水の後に再び上昇するアトランティス大陸を描いたタイトル・トラック。新生マニラ・ロードのすべてを結集した強烈無比な名曲である。古代文明を彷彿とさせる異国風の旋律を交えながら、波打つ海洋のような曲調を基盤にして壮絶な展開が待ち構える。なおゲスト・ヴォーカルにダービィ・ペンタコースト(Darby Pentecost)が参加。

Book II. The Fall (of Atland):
4. Sea Witch
ここではアトランティス大陸が上昇する時、海底に封じ込められた邪神クトゥルーも甦るとされている。バラード調の楽曲であり、そのメロディックな内容は本作でも抜きん出ている。マーク・シェルトンによるメロディアスなヴォーカル・ラインが聴き手の興奮を誘い、後半の劇的なリードギターによってカタルシスは爆発する。なおブライアン・パトリックは本曲でドラムをプレイ。
5. Resurrection
クトゥルーとミッドガルドの神々との間に不穏な緊張が流れている。大仰さを爆発させるエピックメタルの金字塔である。重厚かつ劇的なリフがヘヴィかつメタリックに展開される。ミドル・テンポからの猛烈な疾走、エピカルなギターソロの導入に加え、エキゾティックなサビのコーラスでは哀愁のメロディを振り撒く。
6. Decimation
解放された旧支配者の黒い軍隊が人類を襲う。ダークな雰囲気を醸し出す重厚な楽曲。

Book III. Bifrost (the Rainbow Bridge):
7. Flight of the Ravens
オーディンの従えるワタリガラスが荒廃した地上の惨状を目にする。アコースティック・ギターを用いた小曲であり、前半では特に印象的であった異国風の旋律が荒涼としたものに変わっている。構成は"Lemuria"に類似。
8. March of the Gods
神々の行軍の様を描いた楽曲。ビフレストを渡りヴァルハラの英雄たちが地上に降り立つ。なおマニラ・ロードの物語では、北欧神話の記述に従い人間の住まう国をミッドガルド(Midgard)としている。

Book IV. The Battle (of Midgard):
9. Siege of Atland
アトランティスで勃発する旧支配者とアース神族の軍勢による叙事詩的な戦いを描く。この凄まじい戦場を徹底的に描写するために、暴虐的なまでにアグレッシブなサウンドが本曲には表現されている。マニラ・ロードのポテンシャルの高さを証明するような、一切の妥協のない徹底した内容は秀逸であり、まさに本編の極めて攻撃的な特色を存分に発揮しているといえよう。
10. War of the Gods
海の神ポセイドンがアトランティスに帰還することによって、遂に戦争は終結する。およそ8分に及ぶ内容であり、本作の最後を飾るに相応しい大作に仕上がっている。独特の重苦しい雰囲気に包まれ、マーク・シェルトンがコンセプトの最終章を朗々と歌い上げる様は印象に残る。


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