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アポン・ホーンテッド・バトルフィールズ

THAUROROD the 1st album in 2010 Release
★★★★★★★☆☆☆...(無個性)

フィンランドのエピック・パワーメタル、サウロロッドの2010年発表の1st。


プロローグ...
フィンランドの首都ヘルシンキ郊外のヒュヴィンカー出身のサウロロッドは、2002年に原型が誕生して以来、制作した3本のデモ『Thaurorod』(2005)、『Tales of the End』(2006)、『Morning Lake』(2007)を経てデビューを果たしたエピック・パワーメタル界の新星である。「Noise Art Records」から2010年に発表されたサウロロッドの第一作『Upon Haunted Battlefield』は、同郷のソナタ・アークティカに類似するメロディックなサウンドを有しており、既に勇壮なアルバム・ジャケットが雄弁に物語っているように、ファンタジックでエピカルな世界観が貫かれた作品である。また"サウロロッド"という名前はトールキンの『指輪物語』に登場するクウェンヤ語に由来している。

『METAL EPIC』誌より抜粋:

フィンランドのサウロロッドは北欧産のメロディック・パワーメタルの持つ叙情的な旋律を持ち味としながら、そこにヒロイック・ファンタジーにも通じる勇壮な世界観を融合させたサウンドを特徴としている。本作『Upon Haunted Battlefield』ではスピーディでメロディアスな楽曲が展開されていく。まさしくサウロロッドのサウンドはメロディック・パワーメタルを基盤としたエピックメタルの分野に属するが、この典型的な手法は既に過去にやり尽くされたものだ。我々は『Upon Haunted Battlefield』の高い完成度を認めるが、ここに絶対的な個性は存在していないことを付け加えねばならない。
また北欧出身のエピカルなヘヴィメタルバンドとしてサウロロッドは非常に珍しい経歴を持っているが、北欧らしい神秘的なメロディック・パワーメタルから発展したエピックメタルと伝統的なエピックメタルとの間に生じている溝は単純には埋められない。サウロロッドのサウンドは純粋にメロディック・パワーメタルとも形容できるし、エピカルな面を更に前面に押し出せばエピック・パワーメタルともなる。何れにせよ、『Upon Haunted Battlefield』に提示されたサウンドはメロディック・メタルのファンが頻繁に耳にするような音楽性である。しかしサウロロッドの利点は、過去に発表した3本のデモでも高いポテンシャルを示しているように、これらの作品を世に送り出す際の基準値を軽く突破しているということである。




1. Warrior's Heart
冒頭を飾るに相応しい劇的なエピック・パワーメタル。圧倒的なスピードに導かれてファンタジックなメロディが次々と繰り出される。ここではキーボードを効果的に用いた豪華なサウンドにも注目したい。
2. Cursed In The Past
勇壮な展開を持つパワフルな楽曲。中間部に配された荘厳なパートからはエピカルな雰囲気が漂う。
3. Shadows And Rain
叙情的なメロディを用いたアップテンポの楽曲。シンフォニックな面とメロディック・パワーメタルのサウンドが絶妙に混ざり合う。
4. Morning Lake
煌びやかなキーボードの音色が印象的な楽曲。ギターサウンドやコーラスもメロディアスで良い。
5. Scion Of Stars
複雑な展開を駆使する疾走曲。しかしコーラスなどは勇ましく聴かせる。
6. Guide For The Blind
およそ6分に及ぶ楽曲。バラード調で幕開け、その後ヒロイックな疾走を開始する。メロディアスな展開も有し、緩急に富んだ内容を持つ。
7. Upon Haunted Battlefields
劇的かつヒロイックな世界観が披露されるタイトル・トラック。本曲のファンタジックな内容はアルバム・ジャケットに相応しいイメージを持っている。ドラマ性を高めるシンフォニック・パートの導入の仕方も絶妙だ。
8. Tales Of The End
ファンタジックな世界観を強調した楽曲。勇壮なサウンドに導かれ、壮大な雰囲気が漂う。
9. Black Waters (Prologue)
シンフォニックなインストゥルメンタル。サウロロッドのファンタジー世界への傾向が垣間見える。
10. Into The Realms Of Hidden Me
壮大な雰囲気に包まれる楽曲。大仰な内容でエピカルな要素を発散する。
11. Elämän Tuli
ピアノの旋律から始まるヒロイックな名曲。静から動への怒涛の展開は高揚感を高める。圧倒的なスピードに劇的なリードギターのメロディが絡む様は圧巻。後半におけるピアノの再登場もドラマ性を高めている。
12. Metal Gods
ボーナス・トラック。ジューダス・プリーストのカヴァー。本曲はジューダス・プリーストの『British Steel』の発売30周年を記念したトリビュートCDに提供された。
13. Into The Realms Of Hidden Me (Demo Version)
ボーナス・トラック。#10のデモ・ヴァージョン。



Review by Cosman Bradley
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Time of Truth



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2008
Reviews: 83%
Genre: Epic Metal


イタリア発祥、真性エピック・メタルの血脈、マーティリアの2008年発表の3rd。


「ヴァージン・スティールの後継者」
 ──『METAL EPIC』誌



プロローグ...
カルト・エピック・メタルの覇者ウォーロード(WARLORD)のヴォーカリストとして活躍したリック・マーティン・アンダーソン(Rick Martin Anderson:vo)、ダンウィッチ(DUNWICH)のアンディ・メナリオ(Andy "Menario" Menariri:g、key)を中心として地下で活動を続けてきたイタリアのローマ出身のマーティリアは、同郷の作家であり、詩人のマルコ・ロベルト・カペリ(Marco Roberto Capelli)の創造した宗教的な詩をモチーフにして、独創的で古典的なエピック・メタルを作り上げてきた。1987年結成という遅咲きなバンドながら、2000年代になって始めて発表された『The Eternal Soul』(2004)、続く『Age of the Return』(2005)は純粋な正統派エピック・メタルの名作として、一部の古く熱狂的なエピック・メタルのマニアたちに絶賛された。これらの作品でマーティリアが古代や中世への徹底した傾向を示しているように、古い時代の伝統的なヘヴィメタルのサウンドが今再び注目を集めている。単純にマーティリアは長年続けてきた活動が遂に実を結んだだけだが、突然のマーティリアの表舞台への登場と時代の変化とは完全に無縁ではない。しかし結局は才能だ。哀愁に満ちた叙情的なメロディに乗せて神聖で叙事詩的な世界が形作られていくように、マーティリアのポテンシャルは極めて高く、ウォーロードやローディアン・ガード、そしてヴァージン・スティールの正統な後継者に相応しかったのである。


『METAL EPIC』誌より抜粋:

Jacques_de_Molayマーティリアの第3作『Time of Truth』は硬派な古典的エピック・メタル作品である。叙事詩的であり、シリアスなリフとメロディによって構築された重厚な各楽曲は、時折キーボードの神秘的な音色に彩られながら、厳粛に悠久の古代の交響曲を奏でていく。マーティリアはローマのバンドに相応しい荘厳な世界観を持っており、特に本作ではアメリカのエピック・メタルの始祖、ヴァージンス・ティールの不動の名作『The House of Atreus』(1999)に通じる音楽性を披露している。ヴァージンス・ティールを彷彿とさせる立体的な質感のサウンドをエピック・メタルで表現することに成功したマーティリアは、極めて特別な才能を持っていることを無意識のうちに物語っている。また、全体でおよそ60分を超える本作の収録時間は、ヴァージンス・ティールの作風を忠実に模したものだ。これらの世界では、聴き手を長い間、恍惚に浸らせることが特に重要なようだ。
ブックレットの裏表紙に描かれているジャック・ド・モレー(Jacques de Molay, 1244 - 1314)の肖像画(*画像右)や、十字軍をテーマとした"13th of October 1303"などの楽曲が以前までのキリスト教的なイメージを残している。カトリック的な聖歌コーラスの配置や一部で残るカルト的な雰囲気は、中世キリスト教世界を起源とするものである。しかし、マーティリアは音楽性を広めた。これまでのキリスト教世界に代わる新しい叙事詩的なテーマを、マーティリアは発掘したのだ。本作では"The Storm (Ulysses)"を筆頭にして古代ギリシア世界を題材とした古典劇風のエピック・メタルが大仰に展開していく。これらは洗練されており、シンフォニックでもあるが、古典的なヘヴィメタルの重厚な雰囲気を合わせ持っている。今作でマーティリアがエピック・メタルの古典的な題材と重厚なサウンドを強調している点は、まさに失われゆく伝統的なエピック・メタルに対する強烈なオマージュである。無論、本作『Time of Truth』は真性のエピック・メタル作品であり、その証明はアルバム・タイトルが行っている。イメージは、我々が本作を視聴する時間、エピックメタルにとって真実の時(Time of Truth)が流れる、というものだ。
エピック・メタルらしい深遠なコンセプトが最大限に発揮されたマーティリアの第3作『Time of Truth』は他の追随を許さない。徹底されたシリアスな世界観を有し、エピック・メタルという分野の特徴を大いに発揮した傑作である。本編の後半にかけて若干の失速が認められる点に至っては残念だが、決してスピーディな内容ではなく、エピック・メタルの世界観そのものを尊重している作風は、やがて一部によって評価されるべき定めにある。"新しい時代が訪れてもなお、古く伝統的なものは残り続ける"──マーティリアはエピック・メタルを用いてその言葉を体現した。



1. Prologue
緊張感の漂うプロローグ。冒頭から重厚な世界観が表れる。
2. The Storm (Ulysses)
トロイの木馬を発案し、トロイアを陥落させたユリシーズ(オデュッセウス)。人々は業火に包まれる王国から船で逃れる。ヘヴィネスを増したリフにシンフォニックなフレーズが絡み、メロディは古代ギリシアの雰囲気をベースに構築される。暗くシリアスな内容はエピック・メタル特有の魅力を存分に引き出している。
3. Time to Pay
ソリッドがメロディが展開されるミドル・テンポのエピック・メタル。古代の頽廃的な雰囲気を纏い、時にオペラティックな音楽性を披露する。印象的なサビのコーラスは悲壮感に満ち溢れており、聴き手を忘れ去られた叙事詩の世界へと誘う。既にマーティリアは個性を開花させている。
4. Morgana, Again
魔女モルガナについての楽曲。妖艶な雰囲気を持つ。ゆったりとした曲調で進み、徐々に高揚感を高めるドラマティックな展開を見せる。
5. 13th of October 1303
最後の十字軍の失敗後に勃発したアナーニ事件(Outrage of Anagni)を扱った楽曲。この事件はローマ教皇ボニファティウス8世がイタリアの山間都市アナーニで捕らえたことに由来する。教皇は1303年10月に憤死した。讃美歌のような神聖極まるコーラスで幕開け、その後は正統派に接近したヘヴィなリフを刻み、ヒロイックかつ劇的に展開していく。後半のシンフォニック・パートは素晴らしく美しい。
6. God Knows
ミドル・テンポのエピックメタル。マーティリアの特徴の一つであるメロディックなリードギターは健在であり、久遠の叙事詩的な旋律が生身に沁み込んでくる。
7. As Far as We Can See
後半にかけて劇的に盛り上がる楽曲。その大仰な展開は、始祖ヴァージン・スティールにも通じる独特もの。なおシンフォニック・メタルに接近した滑らかな旋律も見受けられる。
8. Give Me a Hero
およそ7分に及ぶ大作。ヒロイックな名曲であり、古典劇風の厳粛な雰囲気を生かした本作最大の傑作である。恐らくはマーティリア史で最大のヒロイズムを有し、それを迫真のエピック・メタルで表現することに成功した軌跡が、本曲には残されている。
9. Your Law
重苦しいメロディを用いた楽曲。小刻みなリフでエピカルに展開し、堕落したようなヴォーカルが花を添える。しかしサビのコーラスは壮大で優雅。
10. Prometeus
人類に火を与えたプロメテウスは、ゼウスの逆鱗に触れ、代償として毎日カウカソス山の頂上にてハゲタカに内臓を抉られた。エピック・メタルに相応しい神話的なテーマだが、楽曲の内容もそれに相応しい。
11. Soliloquy
リック・アンダーソンがかつて所属していたウォーロードのカヴァー。シンフォニックなアレンジを施した壮大な名曲に仕上がっており、我々は改めてウォーロードというバンドの偉大さを思い知らされることになろう。しかし、本曲ではマーティリアの大胆な発想が勝利を収めた。
12. Like Dinosaurs
神聖なキーボードの旋律を用いた硬派なエピック・メタル。中間部からは壮大なクワイアとメロディアスなパートも登場する。
13. Epilogue
本編に幕を引く最後の語り。本作はまさに古代叙事詩を描いた歌劇であった。


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Age of Return



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2005
Reviews: 82%
Genre: Epic Metal


キリスト教的宗教観に基づき古典的エピック・メタルを展開するイタリアの使途、マーティリアの2005年発表の2nd。


「我が神、我が神、何故私をお見捨てになったのですか。何故愛はこれほどまでに多くの苦痛を求めるのですか」
 ──"The Cross"より



プロローグ...
アンディ・メナリオ(Andy"Menario"Menariri:g、key)がダンウィッチ(DUNWICH)のメンバーとして2002年頃に成功を収める以前、マーティリアはマッシモ・ヴィンチェンツォ(Massimo Di Vincenzo)とアンディ・メナリオによって1987年のイタリアで結成された。アンディ・メナリオはウォーロード(WARLORD)やマノウォー(MANOWAR)などの80年代初期のエピックメタルの始祖から影響を受けたギタリストであり、当然の如くマーティリアの音楽性はそれらに類似したものを目標とした。即ち正統派エピックメタルのサウンドをである。この時期にマーティリアは『The Twilight of Rememberance』(1987)、『Gilgamesh Epopee』(1988)という2本のデモ・テープを制作。デモ・テープでは古典的なエピックメタルを標榜したが、時代のせいもあってか簡単には受け入れられなかった。ここからマーティリアは同郷のドミネ(DOMINE)と似た経緯を辿ることとなり、以後の10年間以上を暗い地下で過ごした。
アンディ・メナリオがダンウィッチでの活動で一応の成功を収めた後、2002年のイタリア・ローマでマーティリアの活動は再開した。バンドはデビューのためにメンバーを募ったが、ヴォーカリストの席は容易には埋まらなかった。翌年、2003年にアンディ・メナリオは元ウォーロードのリック・アンダーソン(Rick Anderson:vo)と出会い、マーティリアにとって最も相応しいヴォーカリストをバンドに迎えるという偶然とは思えないような出来事を経験した。この出会いこそはマーティリアの歴史において極めて重要な転機であり、また必要不可欠な出会いであった。かつてアンディ・メナリオが崇拝し、多大な影響を受けたエピックメタル・バンドの一つであるウォーロードのヴォーカリストをバンドに迎え入れるという出来事は、事実マーティリアのエピックメタルを完成させるうえで大きな位置を占めていた。
もう一つ重要な出会いがあった。リック・アンダーソンをマーティリアに迎え入れたのと同時期に、アンディ・メナリオはイタリアの詩人であり、作家であり、文芸雑誌『Progetto Babele』の創立者であるマルコ・ロベルト・カペリ(Marco R. Capelli)と出会った。マルコ・ロベルト・カペリの熱心な仕事に感銘を受けたアンディ・メナリオは、マーティリアの楽曲のためのすべての作詞を彼に依頼した。寛大なマルコ・ロベルト・カペリはこの依頼を快く承諾し、以後マーティリアの楽曲の作詞の欄には"マルコ・ロベルト・カペリ"の名がクレジットされるようになった。かくして、イタリアのローマ出身のエピックメタル・バンド、マーティリアはこの年にデモ『Celtic Lands』(2003)を発表する。
バンドとしての体制が遂に完成して順風満帆のマーティリアは、2003年のデモに引き続き、バンドの結成からおよそ17年目となる2004年に記念すべき第一作『The Eternal Soul』を発表した。ここまで辿り着くのに長い道程ではあったが、マーティリアの古典的なエピックメタル・サウンドはマニアを含む一部の層から絶賛され、その苦労は幾分か報われることとなった。そして、起動に乗った新しいバンドと叙事詩的な音楽の開けた可能性のために、マーティリアは活動を続ける道を選択した...


『METAL EPIC』誌より抜粋:



かつて我々は北欧ノルウェー出身の一部のブラックメタルに対し、真性の悪魔崇拝と反キリスト的思想を指してこれらを"本物"と形容した。同じくヴァイキングメタルにも"本物"は存在し、しばしその曖昧な定義が議論されてきた。一般的な正統派メタル──古典的であり、伝統的なヘヴィメタルを形容する際に用いられる言葉であり、現在の細分化したヘヴィメタルはすべてここから発祥したとされる──にも"本物"の定義は適用され、我々は何が「純粋なヘヴィメタル」の音楽性を正確に踏襲しているのか議論を重ねたが、結局は解答など得られなかった。
我々がよく引き合いに出す二言論を見詰め直すと、面白いことに、ヘヴィメタルにおける"本物"と"偽物"の討論には必然性があるように思われる。例えば、「善と悪の対立」は古くから英雄叙事詩の世界でも描かれてきた古典的な要素である。善は善のみでは必ずしも成立しない。こういった考え方は二言論に基づいたものである。ここでは、あらゆる物事が奇妙にも相対している様が我々の目に映る。その理論は正統派メタルとシンフォニックメタルに代表される対立にも適用されることとなり、ここでも相対する音楽性が対立の原因となっていることが判明する。正統派メタルではギターサウンドを重視した伝統的な音楽性が標榜され、一方でシンフォニックメタルではキーボードやオーケストレーションを主体とした斬新な音楽性が標榜される。上記の法則に従えば、正統派メタルが誕生したその瞬間にシンフォニックメタルの誕生も定まったことになる。正統派メタルに対し、相対する音楽性が後のシーンに登場してこないことは不自然な現象である。



冒頭に記述した通り、サタニックな真性のブラックメタルが存在しているように、クリスチャンな真性のエピックメタルも確実に存在している。そして、その事実を証明するのがイタリアのマーティリアの第2作『The Age of the Return』(2005)に他ならない。真性のブラックメタルでは異教徒極まる悪魔崇拝の様や黒魔術の行使、強烈なペイガニズムの思想などが楽曲中の歌詞に表現されているが、それと相反するように本作『The Age of the Return』では長大な神の教えを説いた聖書やイエス・キリストに代表される聖人伝を扱い、また創世記を描いたジョン・ミルトンの作品などに基づいた神聖極まる世界観が楽曲中の歌詞に表現されている。ここでマーティリアのキリスト教的世界観が歌詞のみに表現されていると断定するのは当然の如く誤った解釈であり、薄暗くカルト的なエピックメタルに表現された古代・中世の生々しい宗教観は迫真の描写力を備えて聴き手の脳髄を直撃する。マーティリアが用いたエピカルなギターソロや味付け程度のキーボードの旋律は、奇妙な魔力を放ちそれらの世界を現実に呼び覚している。また古典的なエピックメタルのためにリック・アンダーソンは素晴らしい歌唱を披露しており、地を這うような悠久の魂の言霊が聴き手を神秘的な世界へと誘っていく。間違いなくエピック・ヘヴィメタルの熱狂的な信者に限定されるが、本作『The Age of the Return』での驚嘆すべき神話の世界に触れる機会を得られたあなたは実に幸運である。ごく普遍的な一般人が本作に表現された歪ながらも芸術的な世界観を理解しようとすることは、矮小な鼠が冗長な文献を読もうとするようなことだ。



一先ず聖歌隊を起用したことは本作の成功のために必要なことであった。要所で厳かなエピック・クワイアを歌う聖歌隊は、マーティリアの荘厳な叙事詩的音楽世界の創造を手助けしている。またイエス・キリストの磔の様を描いた"The Cross"にゲスト参加したバーバラ・アンダーソン(Barbara Pride Anderson)とグレッグ・ギャモン(Gregg Gammon)は、迫真の演技で深遠な世界のために大きな貢献を果たしている。その他にもソロ・ヴォイスで本作にゲスト参加しているのはパウロ・ドリゴ(Paolo Drigo)だ。
然り、特筆して重要であるのは、ほぼすべての楽曲の要所に配されたウォーロードの様式美を彷彿とさせるアンディ・メナリオの劇的なギターソロである。本作では神聖なクワイアやキーボードの魅惑的な旋律が楽曲を表向きに装飾してはいるが、飽くまで楽曲の大半を占めているのは古典的なヘヴィメタルのサウンドと硬派なリードギターの地下の源泉より汲み出された薄暗い旋律である。これらの要素を払拭して深遠な叙事詩的音楽世界の構築は為し得ない。古くから、この尋常ならざる徹底振りこそが"本物"であるエピックメタルに求められきたのだ。
──カルト的な臭気を拭い去ることが到底不可能な『The Age of the Return』を受け入れる人間は限りなく少なく、またキリスト教徒だと思われるが、本作は不気味なまでに真性のクリスチャン・エピックメタル作品である。古代から続く宗教の暗い部分や深遠な領域に触れ、それを迫真のエピックメタルで表現したマーティリアの功績は計り知れない。後は我々に残された知的好奇心がそれらを発見するかどうかにかかっている。
ヘヴィメタルの歴史を遡れば、『The Age of the Return』のようなキリスト教的宗教観に基づいた作品が誕生することは運命であったのかも知れない。一先ず我々が述べることが出来るのは、今回はエピックメタルによって、紛うこと無き神の教えが実践されたということだ。



1. Last Chance
壮大なクワイアを用いたイントロダクション。クワイアに続くアコースティック・ギターの劇的な旋律がやがて聴き手を中世の世界へと誘う。
2. A cry In The Desert
イエス・キリストがヨルダン川で洗礼を受ける場面を洗礼者ヨハネ(John the Baptist)の視点から描いた楽曲。マーティリアの特異な音楽性を網羅した名曲であり、カルト・エピックメタルに相応のリック・アンダーソンの退廃的な歌声とアンディ・メナリオのエピカルなリードギターが崇高な聖書の世界を再現する。我々は神話の世界を壮大なものと思い込んでいるが、本曲で構築されているのは煌びやかな神々の世界ではなく、地を這うような薄暗いカルト宗教の類の世界だ。
3. Misunderstandings
極めて宗教的なリフによって劇的な世界観が構築される名曲。古代のムードに包み込まれ、歌劇を彷彿とさせるクワイアが聴き手の高揚感を次第に高めていく。古典劇風のキーボードの旋律も叙事詩的な世界観を構築するうえで一役買っている。本曲はエピックメタルの法則を完全に踏襲している。
4. The Giant And The Shepherd
古代イスラエル王ダヴィデ(David)の伝説を描く叙事詩。王に即位する以前、羊飼いであったダヴィデと巨人ゴリアテとの対決が記されている。バラード調で始まり、魅惑的なフルートの音色を用いた本曲は、次第に盛り上がる展開に導かれて叙事詩的なドラマ性を存分に発揮する。
5. Exodus
ユダヤ人をエジプトから救うモーセの聖人伝を描いた『出エジプト記(Exodus)』をモチーフとした楽曲。シリアスな世界観に相応しいリフとメロディの選択、後半からのドラマ性を考慮した展開などは良い。
6. Regrets
イエスのユダ(Judas)の裏切りを扱ったエピックメタル。中世風のアコースティック・ギターを用いたバラードである。暗く重苦しいカルト的な雰囲気が充満しており、その手のマニアにアピールする。
7. The Cross
およそ9分に及ぶ大作。イエス・キリストの磔の様を描く楽曲である。ゲストであるバーバラ・アンダーソンがマグダラのマリアの声を歌い、グレッグ・ギャモンがピーターの声を歌う。長尺な内容の中に静寂と深遠なドラマ性を宿し、聴く者に得体の知れない感銘を与える。後半ではエピカルなギターソロが幾度も繰り返される。本曲に表現されているのは、宗教が放つ異様な熱狂以外の何物でもない。
8. So Far Away
印象的なメロディを配した正統派エピックメタルの名曲。高度なドラマ性とシリアスな世界観を合わせ持つ。マーティリアはオーソドックスなエピックメタルを作ることも可能なバンドだ。
9. Hell Is Not Burning
サタンの堕落を扱った叙事詩。薄暗いリードギターのメロディが炸裂し、後半にかけて大仰に展開する。
10. Memories Of A Paradise Lost
ジョン・ミルトンの『失楽園(Paradise Lost)』で描かれているアダムとイヴの神話的な逸話を叙述する。ギターソロを効果的に用い、劇的な冒頭より開始する。
11. Revenge
大仰な内容を持つ楽曲。劇的な構成を有し、カルト・エピックメタルの可能性を広げる。ここまで一貫して宗教的な世界観が継続されている点は素晴らしい。
12. The Age Of The Return
突出した完成度を誇るタイトル・トラック。伝統的なヘヴィメタルのサウンドとエピカルな側面を共存させる。コーラス・パートにかけて宗教的なクワイアを配し、クリスチャン・エピックメタルの真髄を発揮する。


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The Eternal Soul



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2004
Reviews: 72%
Genre: Epic Metal


マーティリアの2004年発表の1st。


元ウォーロード(WARLORD)のヴォーカリスト、リック・アンダーソン(Rick Anderson:vo)とダンウィッチ(DUNWICH)のアンディ・メナリオ(Andy"Menario"Menariri:g、key)を中心としたイタリアのローマ出身のエピック・メタル・バンド。アコーディオンやピアノを用いたケルティックな旋律が彩るエピック・パワー・メタル的なサウンドを有する。一方、ここでキリスト教的な世界観を強調しているバンドは、カルト的なエピック・メタルを創造することに対して、既に高い才能を発揮。前途有望なエピック・メタル・バンドであることは間違いない。



1. Memories
2. The Ancient Lord
3. The Most Part of the Men
4. Arthur
5. Celtic Lands
6. Babylon Fire
7. The Gray Outside
8. Romans And Celts
9. The Soldier And the Sky
10. Fairies
11. Winter


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Battle Hymns 2011



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2010
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal


マノウォーの2010年発表の1stの再録盤。


エピックメタルの始祖として長年活躍を続けてきたアメリカのマノウォーだが、過去に発表してきた名作の影に埋もれて、第一作『Battle Hymns』(1982)のみが完全な形で制作されていなかった。リーダーであり、ピュア・メタル界の王者に相応しい風格を合わせ持つジョーイ・ディマイオ(b)は「録音技術がようやく我々に追いついた」と語る。正しくマノウォーの記念すべき第一作『Battle Hymns』を現在の技術で再録したのが本作『Battle Hymns MMXI』であり、タイトルの"MMXI"は2011年という意味を持っている。なお本作が発表されたのは2010年である。
脱退したスコット・コロンバスに変わりド二ー・ヘムズィク(d)が加入した本作は、ロス・ザ・ボスの意志を受け継ぐカール・ローガン(g)、第一作目からは想像もつかないほど成長したエリック・アダムス(vo)が強力なバックアップでジョーイ・ディマイオを支える。今作の発表でド二ー・ヘムズィクは過去の汚点を見事に消し去ったが、それはマノウォーに関しても同じであった。
長年ファンの間でも『Battle Hymns』の評価は分かれ易く、偉大な名曲"Battle Hymns"を収録してはいるものの、前半に配置された軽快なロックンロール調の楽曲群が不評の大きな要因となっていた。「何故今更第一作を再録するのか」という疑問に対して、我々はそこに必然性があることを告げる。現在のマノウォーは初期とは比べ物にならないほど強靭なヘヴィメタル・サウンドを有したバンドであり、今回のジョーイの発案によって『Battle Hymns』が完全な形で生まれ変わったことも既に明白な事実である。そして、実際に我々の元に届けられた『Battle Hymns MMXI』は、ファンの不安を払拭する素晴らしい内容を持つ正統派ヘヴィメタルの名盤であった。
時代の変化によって元曲のキーは下げられてはいるものの、そこにロックンロールを演奏する軽率なマノウォーの姿はない。『Battle Hymns MMXI』に存在しているのは完全なヘヴィメタルであり、ヘヴィメタルが本来持つべき重厚な世界観とヒロイックなドラマ性が見事に一体となって、緊張感に満ちた圧倒的なサウンドを作り出している。これぞ我々の知るマノウォーである。
初期のマノウォーに良い録音環境と金がなかったのは非常に残念なことであったが、やがてマノウォーは認められ、エピックメタル・シーンに確固たる地位を築いた。そして、現在も飛躍的に活動を続け、熱狂的なファンたちを第一に考えている。エピックメタルを制作するうえで大事なのは、徹底した傾向と追求であると頻繁に言われるが、マノウォーは過去の遺産に対してもその頑なな姿勢を貫き通した。かくして、名作『Battle Hymns』は再度誕生した──



1. Death Tone
重厚かつ圧倒的なヘヴィメタル・サウンドが展開されるオープニング・ナンバー。そこにかつてのロックンロール的な雰囲気は残るものの、今作でマノウォーが演奏しているのは完全なピュア・メタルだ。
2. Metal Daze
強烈なギターサウンドとシャウトは、過去のように決してタイトル負けしてはいない。むしろヘヴィメタルを謳歌するに相応しい楽曲だ。マノウォーはこれがやりたかったのであろう。
3. Fast Taker
オリジナルとは比べ物にならないほどアグレッシブに展開する。これがギター1本のサウンドだとは誰も思わない。
4. Shell Shock
心地よく刻まれるヘヴィなリフが頭を振らせる。これまでにマノウォーの汚点とされてきた軽快なロックンロール調の楽曲が今作で正統派ヘヴィメタルに生まれ変わっただけでも、本作の持つ意味は非常に大きい。
5. Manowar
バンド名を冠した名曲。マノウォーは本曲をライブでは必ず演奏してきたため、初期の頃とは大きく印象が異なっている。ヘヴィかつメタリック、そしてアグレッシブになった。
6. Dark Avenger
オリジナルのダークな雰囲気は薄れてはいるものの、強靭なエピックメタルによって生まれ変わった名曲。後半からの劇的な展開は更にヒロイックに進化。ナレーションはオーソン・ウェルズからクリストファー・リーに変更している。
7. William's Tale
ジョーイ・ディマイオによるベース・ソロ。メロディアスなプレイは初期と変わらない。ヘヴィな雰囲気は増してる。
8. Battle Hymn
迫力が増した迫真のイントロダクションから大いに期待感を煽られる。歴史に名を残したヒロイックなサビのメロディはもう高音ではないが、完成したマノウォーのエピックメタル・サウンドがそのかつての伝説を蘇らせる。
9. Fast Taker
ボーナス・トラック。1982年のライブ・トラックである。マノウォーはライブではオリジナルよりも早く演奏するバンドだ。
10. Death Tone
ボーナス・トラック。詳細は上に同じ。


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 4月21日、本日付けでリンクを更新。閲覧は上のメニューバー、または下記の直接リンクを参照にして頂きたい。

・『The Links


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 4月21日、本日付けで対話目録を更新。閲覧は左のメニュー、または下記の直接リンクを参照にして頂きたい。

・『The Lexicon



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THUNDER IN THE SKY



Country: United States
Type: EP
Release: 2009
Reviews: 88%
Genre: Epic Metal


マノウォーの2009年発表のEP。


シンフォニックな音楽性を提示したことで賛否両論──しかしエピックメタルのファンには高評価──を得た『Gods of War』(2007)に続き、新作に先行する形で発表されたのが本作『Thunder in the Sky』である。本作は二枚組のEPであり、本編収録の"Father"を日本語も含めた全15ヵ国語で歌うという豪華なファン・サービスも行われている。また、現在でも伝説の名盤として語り継がれている『Kings Of Metal』 (1988)収録の名曲"The Crown And The Ring"のヘヴィメタル・ヴァージョンが収録されているという点でも、本作はファンの注目を大きく集めることとなった。

本編に収録された楽曲のサウンドは純粋なエピック・ヘヴィメタル以外の何物でもなく、前作で不満を覚えたファンも納得できる内容である。コンセプトは過去一連の北欧神話に基づいており、マノウォーが初期から追求してきた不変のテーマ──主に英雄の讃辞や勇気ある戦いなど──が叙事詩的に描かれている。円熟したマノウォーの強力なエピックメタルが見事に炸裂した楽曲群では、冒頭の"Thunder In The Sky"を筆頭に劇的なヒロイズムが展開されている。収録曲の完成度の高さは群を抜く勢いを放ち、マノウォーがエピックメタルの唯一無二の始祖であるということを我々に再確認させている。

現在『Hammer Of The Gods』と題されていた第11作目の最新作の発表は一旦白紙に戻ったが、ジョーイ・ディマイオ(b)は2012年の夏にマノウォーの新譜が発売されることを明かしている。近年は名ドラマー、スコット・コロンバスの脱退が2年後に発表されるなどの不祥事や、息子の病気は実は嘘であったという衝撃の事実が明らかになった。また彼の突然の訃報など、長年のファンはマノウォーの未来に対して疑問を抱く時期であった。しかしそれらを乗り越えてこそ、真のエピックメタルの王者として再び王座に返り咲くことができる。少なくとも『Thunder in the Sky』に収録された楽曲は次回作への期待を大いに抱かせるものだ。本作はマノウォーの信念が完全には死んでいないことを証明している。我々は不滅の戦士、マノウォーの帰還を心から望んでいる──



Disk:Ⅰ
1. Thunder In The Sky
強力なリフとシャウトが連携するエピックメタル。他の追随を一切許さない北欧神話の世界観が展開される。劇的なヒロイズムはやはりマノウォーの音楽性の象徴といってよいであろう。
2. Let The Gods Decide
エピカル・リフを用いた力強い一撃。勇壮なドラマ性を有し、聴き手の高揚感の爆発を誘発する。シンプルな構成ながらも重厚な雰囲気を持ち、実にマノウォーらしい楽曲である。
3. Father
温かみに満ちた感動のバラード。アコースティック楽器の繊細な美旋律を用い、エリック・アタムスの力強く包容力に満ちた歌声が胸を打つ。父とはこのようなものであろうか。
4. Die With Honor
重厚なミドル・テンポ。シリアスな雰囲気が漂う内容からは、終始異様なヒロイズムが溢れ出している。エピック・クワイアを用いた後半の盛り上がり方も劇的。近年のマノウォーはコンセプトに徹底し過ぎていることが明白だ。
5. The Crown And The Ring [Metal Version]
『Kings Of Metal』 (1988)収録の"The Crown And The Ring"の再録。元々は100人のクワイアを起用して制作された壮大な戦士の讃美歌であったが、時代の進歩によって強靭に生まれ変わり、スペクタクル巨編の如きスケール感を演出する。
6. God Or Man
攻撃的なリフで疾走する楽曲。静と動を駆使し、戦士的なドラマティシズムを雄々しく歌い上げる。本作の怒涛のテンションが継続されるのであれば、次作も間違いなく傑作となる。

Disk:Ⅱ
1. Tatko [Bulgarian Version]
2. Otac [Croatian Version]
3. Isa" [Finnish Version]
4. Mon Pe`re [French Version]
5. Vater [German Version]
6. Patera [Greek Version]
7. Apa [Hungarian Version]
8. Padre [Italian Version]
9. Oto san [Japanese Version]
10. Far [Norwegian Version]
11. Ojciec [Polish Version]
12. Pai [Portuguese Version]
13. Tata [Romanian Version]
14. Padre [Spanish Version]
15. Baba [Turkish Version]


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 『METAL EPIC』のレビューの中からマノウォーの1st~4thまでを加筆。詳細は以下の通り。

▶『Battle Hymns』(1982)
▶『Into Glory Ride』(1983)
▶『Hail To England』(1984)
▶『Sign Of The Hammer』(1984)



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MANILLA_ROAD_The_Circus_Maximus

Country: United States
Type: Full-length
Release: 1992
Reviews: 63%
Genre: Epic Metal



マニラ・ロードの1992年発表の9th。


本来はマーク・シェルトンのソロ・プロジェクト作品としての発表を企画されていたが、レーベル側の意向により"The Circus Maximus"というタイトルに変更の後、マニラロードの第9作目のアルバムとして発表されることとなった作品。発売を行った「Black Dragon Records」は本作が更なるマニラ・ロードの商業的成功へと繋がるものと考えていたようだが、アンダーグラウンドのカルト・エピックメタルが売れるはずもなく、加えて従来のヒロイック・ファンタジー的な音楽性を期待していたマニアから総攻撃の対象となった曰くつきの一品である。
本作の非難の主な原因はメロディアス・ハード的な雰囲気が充満している点と、カルト的なエピックメタルが本来持つ薄暗いサウンドが全編に渡り展開されていない点にある。声はマーク・シェルトンのものだが、サウンドは一部別のものが混入している。キーボードの大々的な導入も批判の対象となり、エピックメタルファンには疑問を抱かせる要因となった。エピックメタルに限らずハードロックやロックンロールへの接近は古くからヘヴィメタルファンには嫌悪されている要素であり、これまでに成功例はほとんどない。本作『The Circus Maximus』も例外ではなかろう。
マニラ・ロードの熱狂的なファンならばまず本作を聴かないであろうし、迂闊に手を出すこともしないであろう。楽曲に緊張感が抜けている点も更なる酷評の原因となり、『The Circus Maximus』はマニラ・ロードの歴史に泥を塗った。この時期マニラ・ロードは実質分裂して解散した状態にあり、『The Circus Maximus』がマニラ・ロードの最終作となることも危ぶまれていた。今ではそのようなことは全く冗談じみて聞こえるが、本作『The Circus Maximus』がマニラ・ロードの最終作となろうものなら、信者たちは本作を敢えて発売したレコード会社に痛烈な怒りを覚えていたに違いない。我々はマニラ・ロードが復活して本当に良かったと感じている。



1. Throne of Blood
2. Lux Aeterna
メロディアス・ハード的な雰囲気も漂うが、後半のソロはマニラ・ロードのサウンドに忠実。
3. Spider
4. Murder by Degrees
5. No Sign from Above
6. In Gein We Trust
7. Flesh and Fury
8. No Touch
9. Hack It Off
10. Forbidden Zone
11. She’s Fading


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Courts of Chaos



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1990
Reviews: 93%
Genre: Epic Metal



マニラ・ロードの1990年発表の8th。


「マニラ・ロードはこの『The Courts of Chaos』でソード・アンド・ソーサリー・サウンドを極めた」

 ──『METAL EPIC』誌


『The Courts of Chaos』の総評、一部修正・削除しての掲載:

1 序章

カルト・エピックメタルの偉大なる教祖として崇められ続けるアメリカのマニラ・ロードは、1983年に『Crystal Logic』で突如ヘヴィメタル・シーンに頭角を現し、以来破竹の勢いで信奉者を増加させてきた。その勢力はアンダーグランドでは異様ともとれる急激な成長ぶりを見せ、信者の世界各地への拡散はやがて避けられない事態となった。それは同時にエピックメタルの世界的な流布でもあり、マニラ・ロードを通してこのヘヴィメタルの特異な進化を目の当たりにする者も出現した。最もこれらは一般大衆の社会からは遠く隔てられて勃発した出来事であり、その他大勢の人間は何の変哲もなく普段の生活を送っていたのであった。

2 黄金期

やがてマーク・シェルトン(Mark Shelton:g,vo)、スコット・パーク(Scott Park:b)、ランディー・フォックス(Randy Foxe:g、key)という三人の黄金期のラインナップが完成すると、マニラ・ロードは怒涛の勢いでエピックメタルの傑作を完成させた。恰もその勢いは『The Deluge』(1986)で叙事詩的に描かれている古代アトランティス大陸を襲う巨大な大洪水の如く猛烈なものであり、休息をほとんど取らずして『Mystification』(1987)、『Out of the Abyss』(1988)という強力極まりない作品が成功に続いた。
この時期のマニラ・ロードはまさに無敵の軍隊であった。唯一絶対のエピックメタルの覇者──信者たちは"エピックメタルの神"と称していた──として、孤高とも表現できる存在感でシーンに君臨した。意欲的に発表される作品群は一歩ずつ着実に邁進を続け、遂にその築き上げてきた実力が一度に頂点に到達する時期が訪れた。

3 傑作の誕生

そして、マニラ・ロードが1990年に発表した第8作『The Courts of Chaos』こそが、マーク・シェルトンを教祖とする熱狂的な信者たちによって、すべてのカルト的なエピックメタルの総本山であると見なされている。我々は何度も耳を疑ったが、『The Courts of Chaos』から聞こえて来る音源は事実、カルト・エピックメタルの本質を物語っているものであった。
不朽の名作『Open the Gates』(1985)とは別の手法──明確には多少は似通っている──で、マニラ・ロードは究極のヒロイック・ファンタジーメタルを作り上げることに成功した。これはマニラ・ロードがエピックメタルの歴史において貢献した極めて偉大な功績の一つに数えられ、多くの信者たちは讃辞の意志を抱くべき行為に値する。我々はここで悟った。マニラ・ロードを除いては他に尊敬すべき対象など存在してはいないということを──

4 サウンド

マニラ・ロードの『The Courts of Chaos』は人間の信仰心を強烈に刺激する作品であり、奇跡的な作品であり、ある意味では最も攻撃的なエピックメタル作品である。スラッシュメタルを完全にエピックメタルが呑み込み尽くした驚異的なサウンドを有し、終始異様極まる緊張感と破綻したドラマティシズムが我々の陳腐な脳髄を襲う。カルト・エピックメタルが本来持つべき意味がここにはある。本作に表現されたのは崇拝者を生み崇められる幻想怪奇の魔力を持ったサウンドであり、恰も映画『Conan the Barbarian(邦題:コナン・ザ・グレート)』(1982)に登場するセト教の大魔道師タルサ・ドゥームの住まう"力の山"を連想させる意味深なカヴァー・アートワークがその思想を後押しする。

5 神話の再興

伝説的なソード・アンド・ソーサリーの世界──それらは一度は滅んだが、飽くなき探索者たちの尽力によって再生されるべき定めにあった。長い時間をかけて、ソード・アンド・ソーサリーのもう一つの信者たちはこの世界を追い求めていたが、その世界が限りなく現実とは遠い位置に所属していると悟った時、誰もが思い付かないような行動へと移った。マニラ・ロードがそうであったように、彼らは音楽によるソード・アンド・ソーサリーの再興を望んだのである。当然の如く、飽くまで空想の世界に過ぎない幻想怪奇の光景を現実に表現する作業は難航を極めた。資金面、技術面での絶望的な問題はソード・アンド・ソーサリーの再興という夢を散々に打ち破った。しかし遂に、剣と魔法の世界の信者たちの探求欲がそれらの問題を上回ると、徐々に伝説上の世界は驚きと興奮に満ち溢れた理想郷の幻影を見せ始めた。キリス・ウンゴル、マノウォーの作品がまずこの分野の土台を築き、マニラ・ロードが後に続いた。言うまでもなく"この分野"とは後のエピックメタルのことである。

6 エピックメタルの曙

目的は果たされた!ソード・アンド・ソーサリーとヘヴィメタルの融合という挑戦的な試みは成功し、その最高傑作『The Courts of Chaos』が不気味に門口を開けている。我々は信者たちと共に長い山道を登った果てに教祖の鎮座する神殿に赴くか、彼らの背中を哀れみの目で見詰めるか、その何れかである。然り、神秘なる邪教の血脈は再びこの地上に姿を現したのだ。

追記:本作は2002年に「Iron Glory Records」より再発。"Far Side of the Sun (Live)"がボーナスとして収録された。




1. Road To Chaos
不穏なシンセサイザーの音色が感情を揺さぶるイントロダクション。後半にかけてギター・パートへと展開し、大仰なヒロイズムを発揮。期待感を大いに刺激されるが、その感覚は間違いではない。
2. Dig Me No Grave
印象的なメロディを持つエピカル・リフが次第に頭から離れなくなる楽曲。楽曲の展開は至ってシンプルだが、怪しく光るリズミカルなギターメロディが突出し過ぎている。マニラ・ロードの典型的なエピックメタルの名曲であろう。
3. D.O.A.
テキサスのハード・ロックバンド、ブラッドロック(Bloodrock)のカヴァー。元曲は1971年に発表されたシングルであり、オリジナルに忠実な不気味な旋律が耳に強烈にこびり付く。長尺の楽曲であり、途中には荘厳なコーラスも配置されている。
4. Into The Courts Of Chaos
前半最大のハイライト。マニラ・ロードの生み出した至高の名曲に入る。人々はマニラ・ロードのサウンドを指して「ソード・アンド・ソーサリーの再来だ」と言うが、本曲を聴けばその言葉が決してまやかしはでないことが発覚する。神秘的なメロディから大仰なリフ・パートへと流れ、中間部と最後のパートでは驚異的なギターソロ・パートを披露する。本曲のソロはエピックメタル史上最もソード・アンド・ソーサリーの世界を現実に近づけた。ここにマニラ・ロードのカルト・エピックメタルは極まる。
5. From Beyond
決して一貫性を失わない楽曲群。それがマニラ・ロードの崇拝者を続出させる要素であろう。本曲は静から動へと展開するエピックメタルの佳曲である。濃密なソード・アンド・ソーサリーの雰囲気も醸し、その世界観に忠実なギターソロを披露する。
6. A Touch Of Madness
ミドル・テンポの大作。一部に攻撃的なパートも配す。後半からの陰鬱ながらもヒロイックに盛り上げていくパートは秀逸。マニラ・ロードらしい古く幻想的なムードはここでも存分に漂っている。
7. (Vlad) The Impaler
スピーディな楽曲。スラッシーなリフも持つが、エピックメタルがスラッシュメタルの要素を完全に呑み込んでいる点に注目したい。メロディは完全にアンダーグラウンドのもの。
8. The Prophecy
本作の最後に収録された"The Books Of Skelos"と並び、カルト・エピックメタルの真価を告げる壮絶な名曲。本曲を聴いて我々はカルト的なエピックメタルの持つ意味を思い知らされる。エピックメタル界では「エピックメタル史上最も危険な楽曲」と謳われ、一般人は絶対に聴いてはならない。後半における大仰極まる展開を耳にしようものなら、直ちにマニラ・ロードに対し頭を垂れたくなるであろう。更にギターの発するメロディが常識を逸した異常な雰囲気を宿している。即ち幻想的なアルバム・ジャケットに描かれている光景とは、偉大な教祖の元へと礼拝に参る我々の姿の成れの果てなのである。
9. The Books Of Skelos (I. The Book of the Ancients - II. The Book of Shadows - III. The Book of Skulls)
太古の魔術書"スケロスの書"をベースに剣と魔法の世界を再現した驚異的なエピックメタル大作。なおこの魔術書はロバート・E・ハワードの小説にも登場する品である。全三章から構成され、第一章では妖艶な怪奇幻想の世界をメロディアスに描き、続く第二章で一気に攻勢的なエピック・スピードメタルへと転じる。楽曲に漂う緊張感は壮絶なものであり、特にスピーディな後半においては聴き手の呼吸する暇さえも妨げる。前述の"The Prophecy"と並び、エピックメタルに金字塔を打ち立てた名曲と言っても過言ではない。この劇的な展開にはヒロイック・ファンタジーの愛好家たちが眩暈を起こしそうである。


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Out of the Abyss/Roadkill



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1988
Reviews: 80%
Genre: Epic/Thrash Metal



マニラ・ロードの1988年発表の7th。

クライブ・バーカー(Clive Barker)、H・P・ラヴクラフト等の小説を題材に取り、スラッシュ・メタルを全面的に押し出した作品。エピック・メタルとスラッシュ・メタルの融合としては完成の域に到達。



1. Whitechapel
2. Rites of Blood
3. Out of the Abyss
4. Return of the Old Ones
5. Black Cauldron
6. Midnight Meat Train
7. War in Heaven
8. Slaughterhouse
9. Helicon


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Mystification



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1987
Reviews: 87%
Genre: Epic/Thrash Metal



1977年結成、アメリカのエピックメタルの重鎮、マニラ・ロードの1987年発表の6th。


ここに来てマニラ・ロードの黄金期は既に幕開けており、マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)、スコット・パーク(Scott Park:b)、ランディー・フォックス(Randy Foxe:g、key)という伝説的な三人組はまたしてもエピックメタル・シーンに先制攻撃を仕掛けた。1986年に発表された『The Deluge』に続く紛れもないエピック・ヘヴィメタルの傑作がこの『Mystification』であり、今回も一切の妥協を許さない鉄壁のエピックメタルが生み出されることとなった。
本作はアメリカ最大の文豪エドガー・アラン・ポーの詩にインスパイアされたコンセプチュアルな作品であり、その陰鬱な詩の内容に忠実に沿ったダークかつメロディアスなエピックメタルが展開される。アルバム・タイトルにはポーの名作『煙に巻く(Mystification)』(1837)の題名がそのまま用いられている。更に前作でも顕著であったスラッシュメタルの要素を大幅に導入した本作は、エピックメタル作品の中でも凶悪なスピードを誇る内容となった。
しかし圧倒的なスピードのみが本作の良点ばかりではない。マーク・シェルトンによる歌が積極的に取りれられた各楽曲群は、これまでにマニラ・ロードのエピックメタルの絶対的な個性として働いてきたこの要素を強烈に再アピールすることに繋がっている。またマーク・シェルトンの歌声以上に独自のエピックメタルを形作ってきた大仰なギターメロディも大量に増加されたのが『Mystification』という作品であり、マニラ・ロードはこれまでに最もメロディアスな内容を完成させた。
スラッシュメタルをベースとした強烈なスピード、エピカルかつダークなメロディの多用、ドラマ性を煽る歌パートの充実──これらがマニラ・ロードのエピックメタルを更なる高次元へと導いたのである。無論、如何に進歩しようともマニラ・ロードがアンダーグランドの領域を脱することはないので、以前のカルト的なエピックメタル・サウンドが急速に洗練される心配はない。マニラ・ロードとは暗い墓地で永久に進歩しているようなバンドなのだ。

追記:本作は2000年に「Sentinel Steel Records」から再発。その際アルバム・ジャケットの変更と新たに#10"The Asylum"がボーナス・トラックとして収録された。上記の画像は再販盤のものである。



1. Haunted Palace
ポーの詩『幽霊宮殿(The Haunted Palace)』がモチーフ。強力なギター・サウンドが叩きつけられる。異臭とエピカルな世界観を伴いながら猛烈に周囲を駆け廻る壮絶な内容を誇る。
2. Spirits of the Dead
ポーの詩『世にも怪奇な物語(Spirits of the Dead)』がモチーフ。陰鬱なアンダーグラウンド・サウンドが炸裂する楽曲。不気味なほどにメロディアスなその内容は、エピックメタルのファンを狂気させる。歌の旋律も異様なまでのドラマ性を宿している。
3. Valley of Unrest
ポーの詩『憩いなき谷(Valley of Unrest)』がモチーフ。歯切れのよいエピカル・リフにマーク・シェルトンの伸びのある歌声が絶妙に絡まる。印象的なリードギターのメロディはコンセプチュアルかつダークである。
4. Mystification
本作のハイライト。マーク・シェルトンが特に好んで読んでいたというポーの『煙に巻く(Mystification)』をモチーフとする。エピカルな世界観とグルーヴ感のあるリフが渾然一体となって繰り出される名曲である。中間部からはドラマティックに疾走を開始する。既にマニラ・ロードのエピックメタルは完成されてると言って良いであろう。
5. Masque of the Red Death
ポーの短編小説『赤死病の仮面(The Masque of the Red Death)』(1842)がモチーフ。不気味な鐘の音色から開始される。従来のダークな雰囲気に満ちており、マニラ・ロード以外の何物でもない世界観が展開。しかし今やそれらの伝統的なサウンドは、過去よりも遥かに強力に進化している。
6. Up from the Crypt
ホラー風のSEからスラッシーに展開。非常に攻撃的な内容だが、歌のメロディがはっきりと聞き取れるところが一般的なスラッシュメタルバンドとの明確な違いであろう。
7. Children of the Night
勇壮な疾走感に満ち溢れたマニラ・ロードの真髄。重厚かつダークな世界観とヒロイックな音楽性の融合が至高の楽曲を生み出している。劇的な展開を持ち、疾走とメロディアスなパートを駆使する。まるで本作の作風を代表するかのような優れた楽曲である。
8. Dragon Star
バラード調のエピックメタル。後半のハイライトであろう。徐々に静から動へと展開していく。普段は煮え切らないマニラ・ロードの楽曲だが、今回は大いに盛り上がる。中間部では得意の大仰なギターソロも炸裂。
9. Death by the Hammer
メロディアスなエピック・スピードメタル。スリリングな演奏と扇情的なメロディが劇的な世界観を構築する。


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Epic Adventure.


Crystal Logic

 マニラ・ロードの『Crystal Logic』が再発された。1983年に発表されたこの素晴らしい名盤は、今日のエピックメタルの基礎を築き上げた極めて重要な作品である。勇ましく疾走する名曲"Necropolis"、すべてのエピックメタルバンドに影響を与えたヒロイックなギターソロを奏でるタイトル・トラック"Crystal Logic"は、今後も末永くマニアたちに愛聴されていくことであろう。我々は改めてこの作品を拝聴し、劇的でヒロイックなエピックメタルというジャンルが生まれていった経緯を耳にすることが出来る。『Crystal Logic』は偉大なるエピックメタルバンドの偉大なる遺産だ。収録曲は下記の通り。

1. Prologue
2. Necropolis
3. Crystal Logic
4. Feeling Free Again
5. The Riddle Master
6. The Ram
7. The Veils of Negative Existence
8. Dreams of Eschaton / Epilogue
9. Flaming Metal System


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The Deluge Reissue!


Deluge

 アメリカのカルト・エピックメタルの始祖マニラ・ロードの第5作『The Deluge』(1986)が「Shadow Kingdom Records」より再発。本作はこれまでに入手困難であった作品だけに、エピックメタルのマニアたちには朗報であろう。「Shadow Kingdom Records」は非常に今回良い仕事をしており、この攻撃的な名作が格段に向上した音質で楽しめる。ここからマニラ・ロードの信者になるのも良い。収録曲は下記の通り。

1. Dementia
2. Shadow in Black
3. Divine Victim
4. Hammer of Witches
5. Morbid Tabernacle
6. Isle of the Dead
7. Taken by Storm
8. The Deluge
9. Friction in Mass
10. Rest in Pieces


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