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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


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[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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バトル・メタル

TURISAS the 1st album in 2004 Release
★★★★★★★★☆☆...(佳作)

チュリサスの2004年発表の1st。


ムーンソロウやエンシフェルム等の高品質なヴァイキングメタルで知られるフィンランドから、大仰なホーンセクションと共にデビューを飾ったチュリサスは、その第一作目『Battle Metal』で強烈な印象を残すことに成功した。1997年の結成以来、密かにヴァイキングメタルの"戦闘"に特化した作品を作り上げることに尽力してきたウォーロード・ナイガルド(vo)がようやく世に送り出したこの泥臭くも戦士らしい哀愁に満ち溢れた作品は、これらのヒロイックなヘヴィメタルのファンの目に留まらぬはずもなく、瞬く間にチュリサスの名は名声を欲しいままにした。強力な印象を持つチュリサスの楽曲群にはまだ成熟していない部分が見受けられたものの、それを補うほどの、恰も青光りする鋼の剣のような鋭さを持っていたのだ。


『METAL EPIC』誌より抜粋:

本作の方向性について、我々はある程度エピカルな側面を指摘しなければならないであろう。元来ヴァイキングメタルというマニア向けに過ぎないサブジャンルは、大衆から忘れ去られた叙事詩の断片と民族的な思想を内包するものであった。大仰にも『Battle Metal』と題されたチュリサスの本作は、極めてヴァイキングらしい方向性に特化した作品であることを、我々はここに認めなければならない。チュリサスの北欧の民族らしいペイガニズムに満ちた楽曲群や、古い時代の叙事詩を題材にする部分は、ヴァイキングメタル特有の血生臭さで満ち溢れている。
チュリサスのほぼすべての楽曲を手掛けるウォーロード・ナイガルドが「これは戦いのサウンドトラックだ」と語るように、本作収録の#10~#11はフィンランドの作家サカリアス・ペトリウスにインスパイアされた楽曲であり、17世紀頃の欧州の30年戦争をモチーフとした大作である。ウォーロードがこの叙事詩的な物語のアイデアをチュリサスでエピック・メタルとして消化することを特に重要視したように、我々もまたこの楽曲の重要性について考察しなければならない。
大仰な音楽性や自身のスタイルに適した題材を選出することこそが、エピカルなヘヴィメタルとして更なる高みに上り詰める必須条件であることを、上記の"Rex Regi Rebellis"は雄弁に物語っている。我々は興味深い例を知っている。執筆に入る前に物語の全容(イメージ)を掴んでおくことは、小説においても大切な過程である。後からつけ足したような貧弱な内容では、物語を完結させることは出来ない。小説家は余程の想像力がない限り、思いつきで物語を書くことは難しい。これらと同じように、叙事詩的なヘヴィメタルを完成させるためには、メロディよりも先に題材を選出しておき、後はイメージに沿った楽曲に肉付けしていかなければならないのである。エピックメタルとは、ポピュラーな音楽とは大きく異なった分野に属している。
また崇高な叙事詩を再現するためには、様々な楽器を用いた豪華なサウンドを作り上げることも重要である。本作に収められた雄々しいホーンセクションや郷愁の念を誘うヴァイオリンやアコーディオンの音色は、それらの戦闘的な世界観を表現する際に、ヘヴィメタルの枠を飛び越えて聴者の視覚を刺激する。難解な叙事詩や英雄譚を題材に楽曲を作ることは簡単だが、その世界観を忠実に表現できなければ意味がない。チュリサスは自分たちにとって馴染み深いであろう神話や伝承を扱う術を、非常によく熟知しているバンドなのだ。


1. Victoriae & Triumphi Dominus
華々しく幕開けるイントロダクション。戦場に向かう戦士を鼓舞するための音楽にも聞こえる。
2. As Torches Rise
アルバムの序盤に相応しい勇壮な楽曲。勇敢な雰囲気が支配する反面、戦場の哀愁も漂う。途中の語りの導入によって、より生々しい臨場感を高めることに成功している。
3. Battle Metal
元々は"The Heart of Turisas"という、1stデモに収録された楽曲であった。ここに新たにリメイクされたチュリサスの代表曲は、勇ましさに満ち溢れた名曲として生まれ変わった。なおチュリサスというバンド名は、古代フィンランドの戦神の名に由来する。
4. The Land Of Hope And Glory
帰郷の念について歌った楽曲。エピカルな雰囲気を宿す楽曲であり、荘厳なコーラス部分がヴァイキングらしさを強調する。ヘヴィなリフに乗るヴァイオリンも効果的である。
5. The Messenger
勇壮に駆け抜ける、壮大な戦士たちの戦歌である。
6. One More
冒頭のヴァイオリンパートが秀逸。戦友の無念を感慨深く惜しむ内容を含み、物語のような複雑な展開を持った楽曲である。後半では漢臭いヴァイキング特有の合唱も披露する。
7. Midnight Sunrise
8. Among Ancestors
9. Sahti-Waari
10. Prologue For R.R.R
その名の通り、"Rex Regi Rebellis"への序章。
11. Rex Regi Rebellis
通称「R.R.R.」。曲名は「王は王に対して反逆を行う」というものであり、先述したペトリウスの小説の題材ともなっている。大仰なホーン、中世時代を彷彿とさせる壮麗なストリングスが印象的であり、後半の劇的な展開も相俟って歴史映画の如き興奮を齎す。
12. Katuman Kaiku
「後悔」の名を刻むハーメンリーナの湖から命名されたエピローグ。リコーダーの音色が哀愁を誘う。
13. Till The Last Man Falls
以下の三曲は日本盤のみのボーナス・トラックである。
14. Terra Tavestorum
15. Midnight Sunrise(Liver Version)



Review by Cosman Bradley
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チャプターズ・フロム・ア・ヴェイル・フォーローン

FALCONER the 2nd album in 2002 Release
★★★★★★★★☆☆...(名盤)

スウェーデンのドラッドメタル、ファルコナーの2002年発表の2nd。


前作『Falconer』(2001)が好評を博し、全く新しいファン層を獲得するに至ったファルコナーであったが、一部の評価の声に"メロディック・パワーメタル"という単語が紛れていたことに対しては、疑問を抱かずにはいられなかった。ミソティンの時代から活動を続けるステファン・ヴァイナーホール(g、b)は別に意識したわけでもなく、トラディショナルなヘヴィメタルバンドであるファルコナーが、このような想定外の評価を受けたことは意外であった。最もそのせいでファルコナーの認知度が格段に向上したのは言うまでもない事実であった。元々ブラックメタルやデスメタル等の暴虐的なサウンドから離れて伝統的なヘヴィメタルを作ることが目的であったファルコナーは、マティアス・ブラッド(vo、Key)の持つ独特な美声に後押しされ、何なくその目的を果たした。しかし欧州各地で隆盛の真っ只中にあったパワーメタル的なスタイルが、意図も簡単にファルコナーの民族的なヘヴィメタルに混入することはまさに予想外の事態であったといえよう。絶賛を得る一方で、従来のファンから非難を受けた背景には、このような事態があったのである。
前作での好評を補っていた疾走感は抑え、より重厚感のあるヘヴィメタルに回帰した本作『Chapters From A Vale Forlorn』は、ようやくファルコナーの表現するべきサウンドが完成した作品である。魅力的なヘヴィメタル作品である場合、円熟した雰囲気と濃厚な内容が存在すれば良いだけで、若さに任せた疾走は作品の質を落としかねない。本作は大人が楽しむべきヘヴィメタルであり、聴き手は完成されたドラッドメタルの世界に身を委ねればいいだけなのである。また本作の歌詞にも注目すべき箇所があり、あえて従来の北欧神話やファンタジーから脱却した詞は、ファルコナーの新たな方向性を匂わせる。何も剣と魔法やドラゴンを用いた大仰なヘヴィメタル作品でなくとも、聴き手を興奮させることが出来る作品があるという事実を、ファルコナーは本作『Chapters From A Vale Forlorn』で再確認させたに他ならない。


1. Decadence Of Dignity
勇壮な雰囲気と重厚な雰囲気の両方を宿す魅力的な楽曲。マティアス・ブラッドの滑らかな歌声が炸裂した名曲である。民族的フレーズを宿したギターも素晴らしい。
2. Enter The Glade
ゆったりとした勇ましさを醸し出す名曲。雰囲気はミソティンに非常に近い。サビの三連のリズムはドラマ性を高めており、漢らしい高揚感を生み出すことに貢献している。
3. Lament Of A Minstrel
フルートの音色を用いた民族的楽曲。決してヴァイキングではないトラッドメタルの真骨頂がここに表れている。「歌詞は現実的だ」というステファンもやはり北欧伝統の幻想的な作風を完全には捨てられないようだ。
4. For Life And Liberty
本作中最もメロディアスな楽曲。漢らしい疾走感に満ちており、後半の静寂パートも駆使するなど芸が細かい。全編、特徴的なリードギターは恰も歌のように奏でられる。
5. We Sold Our Homesteads
6. The Clarion Call
7. Portals Of Light
8. Stand In Veneration
9. Busted To The Floor
10. En Kungens Man
母国語で歌われる日本盤のボーナス・トラック。ファルコナーの民族的ルーツを感じさせる出来である。



Review by Cosman Bradley
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Falconer

FALCONER the 1st album in 2001 Release
★★★★★★★★☆☆...(良作)

スウェーデンのヴァイキングメタル、ファルコナーの2001年発表の1st。


"ヴァイキングメタルの王"として我々が知るミソティンは解散し、その偉業は影に隠れてより崇高なものとなった。ベースであったステファン・ヴァイナーホールはデス声ではないヘヴィメタルバンドをやることを思いつき、偶然にもマティアス・ブラッド(vo)と出会ったのは幸運なことであった。既にミソティンのような野蛮で本質的なヴァイキングメタルがファルコナーから生み出されることはないが、マティアス・ブラッドの素晴らしい歌声によって本作『Falconer』は漢らしくもマイルドな世界観を有することとなった。北欧から授かった哀愁の念や民族的な勇ましさは、このように形を変えて受け継がれてくものである。


『METAL EPIC』誌より抜粋:

確かにファルコナーは元ミソティンのメンバーによって結成されたヴァイキングメタルバンドだが、サウンドが洗練されたことでメロディック・パワーメタルの分野に接近してしまったことは惜しむべき事実である。我々はミソティンという偉大なヴァイキングメタルバンドの影響を忘却することができず、その子孫にもあたるファルコナーに対しても先人の枠組に収めようとしてしまった。これは恥ずべき行為であり、我々はファルコナーがミソティンとは全く別のバンドであるということを知らなくてはならなかった。サウンドが洗練されることはバンドにとっては良い出来事であり、チープなサウンドをファンに提供し続けることは良くない行為に該当する。いわばこれはキリスト教の洗礼のようなもので、必ずしも向上心があるバンドならば通る道なのだ。しかし我々が最初に指摘したように、洗練されたサウンドがヴァイキングメタルの土着的な民族性を改宗させるようなことがあるとすれば、それは非常に残念な結末に他ならない。


1. Upon The Grave Of Guilt
2. Heresy In Disguise
3. Wings Of Serenity
4. A Quest For The Crown
5. Mindtraveller
ドラマティックな展開を持つ名曲。後半にかけての展開は絶品の一言である。
6. Entering Eternity
7. Royal Galley
勇壮な世界観を極めた初期ファルコナーの傑作。サビの雄々しいコーラスの持つ高揚感は並大抵のものではない。
8. Substitutional World
9. Lord Of The Blacksmiths
10. The Past Still Lives On



Review by Cosman Bradley
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神々の紋章

Equilibrium the 1st album in 2005 Release
★★★★★★★★☆☆...(好盤)

ドイツのヴァイキングメタル、エクリブリウムの2005年発表の1st。


メロディック・スピードメタルとシンフォニックメタル、ヴァイキングメタル等の様々な分野を取り入れたエクリブリウムの第一作『Turis Fratyr』は、各分野の魅力的な部分のみを抽出したかのような実に美味しい作品である。全編に渡りキーボードを配した劇的な音作りはフィンランドのムーンソロウにも通じ、ヒロイズムを強調した疾走感は同国のエンシフェルムにも通じるものがある。北欧神話の勇壮な世界観を舞台にした楽曲群は、このドラマティックなサウンドに良く合っている。恰も映画のサウンドトラックのような小曲を含む作風だが、これらは意図してやったものであろう。トータルでの起承転結が上手く描かれているというのも、本作の評価を一層押し上げる結果となっている。
スピードメタルのファンは本作を手にして十分な高揚感を得ることができるであろう。またヴァイキングメタルのファンも本作の完成度の高さには溜飲が下がるはずである。全編疾走感に満ちたヒロイックな作品をお求めならば、エクリブリウムの『Turis Fratyr』は押さえておくべきだ。


1. Turis Fratyr
次曲へと続くイントロダクション。
2. Wingthors Hammer
期待感を最高潮まで高めた後の疾走曲は、まさに興奮の極地であろう。
3. Unter der Eiche
疾走に絡むキーボードが強烈なインパクトを放つ名曲。
4. Der Sturm
5. Widars Hallen
8分に及ぶ大作。笛の音色を用いた疾走曲であり、大仰な曲調が聴き手の高揚感を高める。
6. Met
7. Heimdalls Ruf
8. Die Prophezeiung
9. Nordheim
10. Im Fackelschein
11. Tote Heldensagen
9分に及ぶ大作。劇的な疾走が濁流の如く押し寄せる。
12. Wald der Freiheit
13. Japanischer Rampfwkinger
ヨーロッパ盤デジパックのボーナス・トラック。
14. Nach Dem Winter
日本盤のボーナス・トラック。



Review by Cosman Bradley

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High Fantasy


 現代において、人類の文明圏は大きく二つに分断される。即ちそれぞれ異なる方法で発展を遂げてきたアメリカとヨーロッパの大陸である。これらは類似点を所有しながらも独自の文化を生み出した。今ではファンタジーの正確な根源はもはや分からなくなってしまったが、その物語が生み出された土地がアメリカとヨーロッパであったことは間違いない。
 過去にアメリカの偉大な作家らがヒロイック・ファンタジー(Heroic fantasy)を生み出したように、ヨーロッパの作家らが生み出したものはハイ・ファンタジー(High Fantasy)と命名された。最も今ではこの言葉が持つ意味とは、異なる二つの世界を隔てる外壁が映り込む鏡面でしかない。そう、それは確かにハードSFと似通った概念を有しているもののようだが……歳月が過ぎ去れば、古い時代の言葉は意味を持たなくなる。しかし私たちは、まだこの言葉の意味を理解できる時代に生きているようだ。


ハイ・ファンタジーについて;主に異世界を舞台とするファンタジー作品がハイ・ファンタジーと呼ばれているが、アメリカのファンタジーと区別するために、この言葉が用いられているようにも解釈することは可能である。ハイ・ファンタジーをトールキンの『指輪物語』に代表する傾向もあるが、その意見は間違いではない。中世風の煌びやかな世界を物語の舞台とし、崇高な騎士道精神が力を握る世界。美しい種族や、想像上の生物が登場する世界。エルフや妖精、ドワーフなどの種族はハイ・ファンタジーを象徴するシンボルのような存在だ。それらの世界では明確な善と悪の対立が存在し、英雄的な騎士は敬虔な精神で悪を打ち滅ぼさなくてはならない。ヒロイック・ファンタジー同様その起源は古いが、より現代的な解釈によって発展を遂げたファンタジーをハイ・ファンタジーと呼ぶことが出来よう。


 近年では子供たちの愛用するコンピューター・ゲームにもハイ・ファンタジーの世界が利用され、形を変えてハイ・ファンタジーは身近に浸透していった。純粋無垢な子供たちは、夢に満ちた世界を体験するために、こぞってファンタジーのゲームソフトを手に取るであろう。ソフトの出荷本数は好調なようだ。私たちの新しい娯楽のために、数えきれない世界が生み出されていった。私たちは無差別に選択権を与えられた立場に立たされている。この先、作品の肥大が物語る質の劣化の如く、真なるヒロイック・ファンタジーを子供たちが知ることはなく、横行する商業的な世界に没頭し、薄れゆく本質に気付くこともないままに生涯を無駄に過ごすであろう……あらゆる源流は、薄れゆくものなのだから……


訳者のコメント:『エピックメタル・ヒストリー:三つの勢力図』というコスマン・ブラッドリー博士の原稿は、重要な箇所が抜け落ちている未完成の資料に過ぎず、この企画自体が何らかの原因で打ち切りになった可能性を含んでいる。ここに公表された文章は、企画で完成する予定であった貴重な原文の参考資料である。なお現在コスマン・ブラッドリー博士との連絡が途絶えている状況のため、これ以上内容を詳細に追求することはできない。



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Heroic fantasy


 エピックメタル作品に題材を提供するファンタジーの歴史の中で最も古い分野に属するのがヒロイック・ファンタジーである。これまでの過程において、人類の歴史の空白部分を過去の英雄たちが輝かしい功績で埋めてきたことが判明している。古来より神などの偶像を崇拝してきた人類は、私たちが想像もしなかったような太古の時代から、それらと同じように英雄たちを崇拝する信仰を築いたのだ。
 英雄の誕生には様々な経緯がある。偉大なる英雄たちの生涯を遡ると、必ずしも彼らが神などではなく、生身の人間が神格化され、歳月の蚕食により伝説となった経緯が浮かび上がる。英雄たちは私たちがそうであるように、最初は人間であった。多くの人々が崇めるうちに時代は変わり、それらの太古の伝承は朧気になり、いつしか人間の英雄たちは神々と肩を並べるまでに崇高な存在となった。しかし、神の存在自体が曖昧である今日では、神または女神そのものが人類の創造物であることに対して、素朴な疑問を投げかけるということは少なくなった。


悠久の太古の叙事詩について;神の存在性に疑問を抱いた者たちは、いつの時代にもいたようだ。私はそのような者たちが描いてきた叙事詩的な絵巻を、再び眼前に陳列する必要があった。時代は神と人とがまだ対等に争っていた頃に遡る──神による人類創造後の世界において、神は生命及び惑星の創造主であり、超自然を掌っていると古代人は考えていた。やがて人類の子孫は神々の忘れ形見である武器を発見し、それを鍛え直し、強大な国家を築き上げていく。力を得た人類は生みの親でもある神々に対して反乱を起こし、創造主からの自由を勝ち取ろうとする……神の存在に疑問を抱いた者たちは、このような物語を残して人類に警告を発しているようにも思える。太古の反逆者が生み出したこれらの物語は、神々と人間との対立を描き、これが後のヒロイック・ファンタジーの原型になったという記録が何処かに残されているようだ。太古の世界を舞台とし、支配者でもある神々に反旗を翻す人類の光景は、神の眼を持ってしても斬新であったろう。反骨的ヒロイズム(*)の概念の誕生である。人類の偶像崇拝を英雄主義に変容させ、ヒロイック・ファンタジーの礎を築いたのがこのヒロイズムであると、長い間私は考えている。エピックメタルがそうであるように、反骨精神と英雄主義の思想を共にする叙事詩こそが、ヒロイック・ファンタジーという名称を与えられるに相応しい。


 遥か有史以前の時代から人類によって語り継がれてきたヒロイック・ファンタジーの勢力は、現在速やかに後退しつつある。いかなる場合でも事実は変えようがない。新たなファンタジーの分野であり、より華々しいハイ・ファンタジーの分野が飛躍する一方で、この古い勢力は徐々に忘れ去られていく傾向にある。現代的な解釈のファンタジーが求められる今日では、遥か大昔の荘厳な時代を描いたヒロイック・ファンタジーの隆盛は難しい。時代性から隔離されたヒロイック・ファンタジーは、やがては地下納骨所の木乃伊のように埃をかぶり、幻想という名のカタコンベで静かに眠りにつく運命にある。しかし、その厳粛な雰囲気の支配するピラミッドの最後の墓守は、あらゆる時代の変化が訪れようとも薄暗い地下の深淵にて永劫の秘密を守り続け、時が来たらそのパンドラの箱を開くかも知れない。幸運なことに、彼らのおかげで、未来永劫この分野が失われることはない。

>>To be continued in:High Fantasy:Next...



*ヒロイズム(heroism)……英雄的行為を賛美する精神。英雄主義。
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