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 私の記した珠玉の「コラム欄(The Columns)」は、私が最も力を注ぎ、時間を注ぎ、完成に至ってきたものである。ヘヴィメタル及びその細分化した分野であるエピックメタルに対する私の飽くなき探求心は、こうした文章から読み取ることが出来る。未だ未完成のコラム欄ではあるが、私は更にこの欄を充実させ、数年がかりで、より幅広い知識を揃えていく思惑がある。それには本当に、膨大な時間を有するだろう。私の好奇心が衰えなければ、この試みは続いていくはずである。
 コラム欄を閲覧するには、上記のボタンをクリックしていただくか、上記のリンクからも可能である。様々なサイトで貴重な文献等を公表している人々のように、私の駄文も無償で公表するに至っている。


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 正確には「YouTube」の欄である。今年に入り、頻繁に更新する機会があったので、紹介したエピカルなヘヴィメタルの動画を再びまとめた。失われた時代の碑文や足跡を探し求める考古学者のように、私はエピックメタルを探しているのであるが、その功績の一部が、まさにこの動画紹介の欄というわけだ。
 CDでは手に入りづらいアルバムの楽曲を聴いたりするのに、ユーチューブは非常に役立っている。こうした動画共有は、密かにヘヴィメタル・シーンの全体的な活性化にも繋がっているのではないだろうか。手短になるが、動画を視聴するには、上のボタンをクリックしていただくか、上記のリンクからでも可能である。今後も、エピカルなヘヴィメタルの動画紹介は頻繁に行っていきたい。


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Goochan



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 2007
Reviews: 85%
Genre: Epic Power Metal


強烈に漢らしくヒロイックなサウンドを追求するドイツのエピック・パワーメタル、ウィザードの7th。2007年発表。


名曲「Hammer, Bow, Axe and Sword」は衝撃的だった。血生臭い戦士達の戦場を迫真性を持って描き出し、勇猛なメロディを激烈に疾走させた。この狂戦士のような過激なサウンドスタイルは、以後のウィザードの作品を決定付けた。第5作『Odin』(2003)でそのスタイルは円熟の域に達し、ヒロイックなヘヴィメタルを追求するファンを唸らせた。それは彼らにエピックメタル界での地位を約束するものだった。そして、"ドイツのマノウォー"との異名を取る大胆不敵な彼らは、本作『Goochan』で更なる高みへと達することに成功した──

アルバム・ジャケットに描かれた一人の女。彼女は"Goochan"という魔女であり、本作での重要な鍵を握る。彼女は、別の異なる惑星を救う運命にあるのである。その勇敢で神秘的な物語こそ、本作の基礎となっているコンセプトであり、収録された楽曲はそれらを歌うものである(後にこの物語は本として出版されることが決定した)。地球とは異なる惑星で繰り広げられる壮大な戦いと讃えられる勇気。ウィザードはこれまでで一番の作品を作り上げた。
強烈な疾走感が以前までの彼らの代名詞だったことは確かである。しかし今作は、物語に沿った壮絶なドラマが待ち構えている。本格的な剣と魔法の物語を導入したことにより、以前は一本調子を痛烈に非難されていた彼らの楽曲は、叙事詩その名に相応しく、劇的な進化を遂げた。アルバムの冒頭である名曲#1"Witch Of the Enchanted Forest"から既にその進化は顕著であり、かのヴァージンスティールをも彷彿とさせる不気味なイントロダクションが、これからの期待感を強烈に煽りたてる。続く#2"Pale Rider"は、恐らくウィザードが生み出した楽曲の中で最もドラマティックなものだろう。称賛は禁じ得ない。本作こそ、エピックメタルという特異な分野で活動を続けながら、一心不乱にこの道を進んできたウィザードの可能性が遂に開花した作品なのである。



1. Witch Of the Enchanted Forest
これまで以上に練られた冒頭の展開は息を呑む。続くリフパートへの発展が劇的極まりない。リフの剛直なメロディが最大限に高揚感を高める。サビでのヒロイックなコーラスも絶賛せざるを得ない。
2. Pale Rider
本作のハイライト。大作であり、ミドルテンポで勇壮に突き進むが、サビのコーラスがすば抜けて勇ましい。中間部からの静寂パートへの移行、哀愁を帯びたコーラスの叫びは破格のスケール感を演出。
3. Call To the Dragon
スピーディーな名曲。ヒロイックなメロディを伴い疾走するという彼らの定番のスタイルを貫いてはいるが、力強い雰囲気とロマンティックなムードがこの曲を輝かせている。
4. Children Of the Night
ヒロイック極まりないミドルテンポ。ゆったりとした曲調で展開していき、サビでヒロイズムが爆発する。ギターの魅力的なメロディはヒロイック・ファンタジーの世界観に忠実である。
5. Black Worms
6. Lonely In Desert Land
7. Dragon's Death
8. Sword Of Vengeance
9. Two Faces Of Balthasar
10. Return Of the Thunder Warriors
大仰なる最終曲。この曲の大仰さには、かのキリス・ウンゴルも赤面するだろう。


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アンシェント・スピリット・ライジング



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2007
Reviews: 79%
Genre: Epic Power Metal


イタリアの古豪、エピック・メタル界をリードする"嵐を呼ぶ者の支配者"、ドミネの2007年発表の5th。


エンリコ・パオリ(g)とリッカルド・パオリ(b)の兄弟に加え、強烈な個性を放つモービィ(vo)のラインナップは前作同様。戦士のように飽くなき探求を続け、ヒロイック・ファンタジー系ヘヴィメタルを創造し続けてきた彼らは、その歴史的な前作『Emperor of the Black Runes』(2004)で過去最大の成功を手にして久しい。情熱的な意欲に濃厚極まりない楽曲の質、追求し続けてきたマイケル・ムアコックに連なる叙事詩的な世界観が見事に完結したともいうべき驚愕の内容は、あらゆるエピック・メタルのファンの魂を興奮と恍惚で満足させた。そのような傑作から3年が経過し、当然の如く新作への期待は高まった。そして、2007年、満を持して発表されたのが本作『Ancient Spirit Rising』である。

まず、本作を視聴したのならば、誰もが思うはずだろう「ドミネは変わった」。メンバー曰く、"過去の古い伝統的なロックに舞い戻った"作風は、残念ながらドミネの良さを粉砕し尽くしている。ドミネが目標としたのは80年代のハードロック/ヘヴィメタルであるが、その根底にある、陽気さや軽さまでもが楽曲に表現される形となった。ドミネの唯一無二の個性だった悲壮感や宿命感──伝説的な《エルリック・サーガ》に秘められた暗さや暗澹たる妖艶さに似ているもの──が失われ、取って代わったのは、奇妙な明るさである。これまでのドミネのエピック・メタルに表現されてきた雄大さや情熱的なヒロイズムは、太陽を遮る邪悪な黒雲のように完全に隠された。

楽曲の充実、完成度は言うまでもなく高い。安定した演奏に加え、伸びのあるハイトーンが時に心地よく響く。メロディアスな面も充実している。本作がカルト的なエピック・メタルから、メジャーな音楽性を目指した大胆な内容であることは間違いない。しかし、ドミネの熱心なファン層は、このような音楽性を求めているのではないことは確かである。前作までの混沌とした英雄世界が一部のカルト的なエピック・メタルのファンたちに受け入れられ、ドミネの新作は記念碑的な名作となった。ドミネの体現したヒロイズム、大仰さ、ドラマ、ロマンス、叙事詩的な世界こそは、ドミネがエピック・メタルの支配者たる由縁だった。疑問は残る。その最大の武器を失った今、ドミネには何が残っているのだろう。過去の名曲の雰囲気を微小に残す"Another Time, Another Place, Another Space"が意味深に響く──私たちは彼らを信じるとしよう。何れ再び、新たな幻想と怪奇の叙事詩を名剣の如く携えて、群衆の前に嵐を呼ぶ者の支配者が帰還することを。



1. The Messenger
本作の作風を主張するかのような、飛翔感を漂わせる楽曲である。
2. Tempest Calling
スピードナンバー。良質なメロディック・パワーメタルである。
3. The Lady Of Shalott
第2作『DragonLord(Tales from the noble steel)』でも題材とした『アーサー王物語』から乙女シャーロットを歌った楽曲。幻想的なアルバム・ジャケットに描かれているのは彼女である。しかし、悲劇的な物語であるのに対し、曲が明るい雰囲気を醸し出しているのは頂けない。
4. Stand Alone (After The Fall)
5. Ancent Spirit Rising
プログレッシブな大作であり、タイトルトラック。楽曲に秘められた意味は、古い時代のロックの再興だという。
6. On the Wings of the Firebird
7. Another Time, Another Place, Another Space
従来のドミネの雰囲気を宿したエピカルな楽曲。神秘的な世界観を描き、重厚なメロディを絡ませる部分は流石か。
8. Sky Rider
疾走する伸びやかな楽曲。
9. How the Mighty Have Fallen
今作の作風を上手く消化した、バラード調の佳曲である。絶妙なる、明るさと哀愁との融合は見事という他ない。出来れば全曲にこの雰囲気が欲しかった。


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saurom2 ラテン国スペイン出身のサウロム(旧名サウロム・ラムダース)は、長年『指輪物語』に通じる欧州のファンタジー・エピックメタルの新鋭として活躍し続けてきた。彼らは、その歴史の中で名前をより分かりやすいサウロムと改めた時、サウンドも改める結果となった。2006年『JuglarMetal』以降発表されたサウロムのアルバムは、エピカルなメロディック・パワーメタル作品として傑出した出来だった──特に2008年に発表された『Once romances desde al-Ándalus』は、エピックメタルの未来を予感させる歴史的な傑作だった──が、初期の頃に花開いた民謡的要素は僅かながら薄れていった。しかし、サウロムは初期に残した3枚の名作でこれらの要素を含むエピックメタルをやり尽くしてしまっていたのだ。本日は、そんな不朽の名作に舞い戻ってみるとしよう。
 エピックメタル史では、ヴァージンスティールに次ぐ2枚組の作品として発表されたサウロムの『Sombras del Este』(2003)。西洋ファンタジーに傾向したエピックメタルの名作である。ストーリーアルバムである本作は、欧州におけるファンタジーの原点である『指輪物語』の壮大な物語に沿って展開されていく。アルバムは、彼らが得意とする民族楽器が余すところなく詰め込まれ、時に荘厳なヒロイックなムードも漂う。そして、本作にはサウロムが生み出した最高の名曲"Trancos/Aragorn"が眠っているのである。『指輪物語』の英雄アラゴルンを歌ったこの幻想的な名曲は、英雄的なロマンスを牧歌的に奏でてくれる。馴染み深いファンタジーの世界が眼前にあるのだ。幼い子供の夢のように、大人がそれらの世界に触れる貴重な機会を、彼らは私達に与えてくれたのである。


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 ウクライナ出身のエピックメタルバンド、Ekzistencia(日本語名翻訳募集)。

 2008年にデビューを飾り、その民族的かつ幻想的なサウンドはスペインのサウロムにも通じる。『指輪物語』を彷彿とさせる、郷愁と勇敢さの漂う楽曲は素晴らしい。ロシア語の歌詞も独特な響きを存分に醸し出しており、ファンタジー好きには堪らないバンドであることは間違いない。このジャンルでは通説ともいえる、アルバムが入手しづらいという現状が何とも残念だ。

▶知的好奇心を刺激する壮大な民謡調のエピックナンバー。


◆参考作品◆
1st『THE STORM MASTER』(2008)は、「RockAvenueRecords」でかろうじて入手可能の他、オークションで見かける場合もある。


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 ヴァイキング時代──主に8世紀~11世紀頃──にはヴァイキングの拠点としても活躍したフェロー諸島出身のヴァイキングメタルバンド、テュール(TYR)。1998年より本格的に活動を始める彼らは、これまでにピュアなヴァイキングメタルサウンドをエピカルな世界観に乗せ、ファンを驚嘆させてきた。
 そんな彼らの第6作『The Lay of Thrym』が2011年6月に発売され、正式な国内発売が決定した。ここで注目すべきは、今年2011年はエピカルなヘヴィメタル・シーンとって記念すべき活性化の年となっており、フィンランドのムーンソロウやアイスランドのファールケンバック、スウェーデンのチュリサスの新作も発表されているということである。そして、これに近々あのラプソディーも続くようだ。
 完成度の高い楽曲でも有名な彼らテュールのアルバムが、何故今頃になって国内発売されるのかは分からない──次々と日本に侵略を開始する北欧ヴァイキングメタル勢のうち、テュールやファールケンバックが依然として取り残されていたのだ──が、ライナーノーツや歌詞の翻訳が付属する国内盤の発売は何とも嬉しい限りである。リリースは、SWITCHBLADE(スウィッチブレイド)なるレーベルが行うとのことだ。

▶「The Lay of Thrym」(2011) TYR
ザ・レイ・オブ・スリム


▶過去最高の仕上がりともいうべき壮大かつ勇壮なタイトルトラック。



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 エピックメタル界には、興味深く、好奇心に駆られる話が山のように眠っている。その殆どが地下で語り継がれている陰惨なものであるが、その一部ですら光を浴びるということもまずない。私が今回話すのは、アイアンメイデンの不朽の名作『Powerslave』(1984)と、ヴァージンスティールの歴史的な傑作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』(1995)に隠された逸話である。ヘヴィメタルとエピックメタル双方にとって重要なこの大作には、実に興味深い共通点があったのだ……




Powerslave

 イギリスを拠点に活動を続けるアイアンメイデンは、これまでに夥しいほどの名作を世に残してきた。彼らの活躍がなければ、英国チャートの上位をヘヴィメタルが占めるなどという歴史的な事件は起こりもしなかっただろう。ヨーロッパで最も成功を収めたヘヴィメタルバンド、それがアイアンメイデンである(そして、もう一方の"ヘヴィメタル大国"アメリカで最も成功を収めたヘヴィメタルバンドはメタリカだった)。
 若かりし日のアイアンメイデンが1984年に発表した第5作『Powerslave』は、現在でもヘヴィメタル史上に名を残す、名作中の名作である事実は揺るぎない。このアルバムを傑作とするファンならば皆口を揃えてこういうものだ「このアルバムは冒頭の2曲、"Aces High"と"2 Minutes to Midnight"に尽きる」
 ヘヴィメタル屈指の名曲を2曲も取り揃えたこの豪勢なアルバムには、始めてアイアンメイデンの世界に踏み込むファンも衝撃を受けた。更に、冒頭の2曲という選曲が途轍もないインパクトだったのだ。傑出した冒頭の2曲……僅かながら、熱心なヘヴィメタルのファンはあるエピックメタル作品に思い当たった。


Marriage of Heaven & Hell Part 2

 "エピックメタルの帝王"と称され、芸術的なエピックメタル作品を世に送り続けてきた唯一無二のマエストロ、デヴィッド・ディフェイ(Vo)率いるヴァージンスティールが1995年に完成させた傑作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』。本作がエピックメタル史上に残る名盤であることは疑いようがない。壮大な叙事詩的作品であるこのアルバムは、収録された楽曲から神話的な世界観に至るまで、ありとあらゆる個所が優れている。エピックメタルファンは、本作を聴くことを義務付けられている。
 このアルバムには永遠の名曲"Emalaith"──私が最も称賛するエピックメタル曲──の他に、先述したアイアンメイデンの『Powerslave』と同様、アルバムの冒頭2曲に素晴らしい名曲を配している。"A Symphony Of Steele"と"Crown Of Glory (Unscarred)"という劇的な名曲がそれであり、エピックメタルのファンはこの冒頭の2曲を指して言うのだ「"A Symphony Of Steele"と"Crown Of Glory (Unscarred)"は、エピックメタル史上最高の2曲だ」
 これで、アイアンメイデンとヴァージンスティールの奇妙な共通点がお分かりになったことだろう。この冒頭2曲の構成は、どうにも『Powerslave』に似すぎている……なんという偶然──ディフェイ本人がアイアンメイデンを意識していなければの話であるが──の産物だろうか!願わくば、ヘヴィメタルとエピックメタル、両世界屈指の名曲を是非とも聴き比べて頂きたい次第である。


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Magic Circle



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 2005
Reviews: 77%
Genre: Epic Power Metal


ドイツのエピック・パワー・メタル、ウィザードの2005年に発表された6th。


愚直なサウンドでマニアたちから高い評価を受けたウィザードは、その音楽性を曲げることなく、やはりマノウォー的な作品を作り上げた。それがこの『Magic Circle』であり、ここでは、従来のダークなエピック・メタルが描き出されている。こういったバンドは、やっていることを曲げない限り、ファンたちはそれに納得するものだ。
しかし、この『Magic Circle』は、一部のファンたちからは、「遅くなった」というレッテルを貼られた。やはり過剰に疾走するサウンド・スタイルの方が、このバンドには適しているということである。アンダーグラウンド・シーンのファンたちは、こういうマッチョなバンドに対して、"ヒロイズムの爆発"を求めているのだ。



1. Enter The Magic Circle
2. Fire And Blood
3. Call Of The Wild
4. Death Is My Life
5. On Your Knees
6. Metal
7. Uruk-Hai
8. Circle Of Steel
9. Warriors Of The Night
10. No Way Out
11. The Magic Goes On
12. Don't Say Goodbye


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 私は度々エピックメタルと幻想文学との関連性を指摘してきた。エピックメタルとは、叙事詩的な文学作品やそれらの神話・伝承を主軸としたヘヴィメタルのことであるが、肝心の文学について、私達は基本的なことをよく学ぶ必要がある。そもそも文学とは何であるのか。幻想文学を知る前に文学の意味を理解するのは、エピックメタルを知る前にヘヴィメタルを理解するのと同じくらいに重要なことである。
 文学とは、簡略化すると文字による芸術作品を指す言葉である。あらゆる芸術の発祥地である古代ギリシアの時代から文学は存在し、現在では詩や小説として親しまれている。文学の判断基準は、芸術的であるかどうかというところである。
 単純な意味を語ったところで、本題の幻想文学とは、"空想的な文学作品"という意味を持つ。一般に『聖書』やダンテなどの叙事詩的な作品をそう形容し、それらの作品の中では神性や超自然といった存在が主に取り上げられる。これらの要素は、現在のファンタジーという定義の中でも登場する要素である。上記で既に、エピックメタルとの明確な関連性が示唆できることは疑いようがない。例として、ヴァージンスティールの『Visions of Eden』(2006)などはまさにそうであるし、突き詰めればダンテの『神曲』をモチーフとしたエピックメタル作品は驚くほど多い(*)。エピックメタルと幻想文学の繋がりは否定できないどころか、密接な繋がりがある事実が浮かび上がってくる。
 文学本来の「芸術的」という個所に焦点を当ててみるとしよう。ヘヴィメタルが時として、ある種の芸術作品として認められる理由がここに隠されているのである。例としては、アングラ(ANGRA)の『Temple Of Shadows』(2004)、ドリーム・シアター(Dream Theater)の『Images & Words』(1992)などが万人に認められているヘヴィメタルの芸術作品であることは間違いない。しかしここでは、当然の如く、エピックメタルが「芸術的」である理由を突き詰めていく。
 幻想文学をモチーフとした一連のエピックメタル作品は、これまでの歴史の中でもより劇的な音楽性を追求してきた。題材にされた文学作品が崇高であればある程、エピックメタル作品もまた壮大なものへと変容していった。エピックメタルは、文学作品の中でも最も荘厳であり、空想的に優れている幻想文学をそれぞれのモチーフとしていった。主に、ロバート・E・ハワード、エドガー・アラン・ポオ、H・P・ラブクラフト、J・R・R・トールキンなど近代の幻想作家への傾向がそれである。私が今までに何度も触れているように、ハワードの創造した「ヒロイック・ファンタジー」への追求が、より一層神秘性を高め、大仰な芸術作品へとエピックメタルを発展させてきたのである。エピックメタルの創造初期に、始祖キリス・ウンゴルがマイケル・ムアコックの空想作品を題材にしていたことは見逃すことができない。それらの現実から隔離された壮大な世界を描くために、エピックメタルはそれに見合った音楽性と高い技術を必要としたのである。それは、時にオペラの要素であり、クラシックの要素であり、映画音楽の要素であり、古来から伝承されてきた世俗の民族音楽でもあった。元来芸術的とされるそれらの音楽を劇的にヘヴィメタルに消化させることにより、エピックメタルはヘヴィメタルの最もたる芸術性を獲得したのである。古典音楽を大仰に取り入れたヴァージンスティールの成功も、偶然の産物では決してない。また、このような古い時代の芸術を再建させた優れたエピックメタル作品は、芸術の意味をよく知る好古家に受け入れられた。故にエピックメタルは、僅かながらの博学な支持者と崇高な幻想文学作品に釣り合うだけの芸術的なヘヴィメタルを創造し続けてきた。まさに、ヘヴィメタルによる芸術こそがエピックメタルなのである。


*アイスド・アースの『Burnt Offerings』(1995)、セパルトゥラの『Dante XXI』(2006)が挙げられる。
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Awakening The World



Country: Sweden
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 91%
Genre: Epic Power Metal


スウェーデンのエピック・パワーメタル、ロスト・ホライズンの2001年に発表された1st。


彼らは、ヘヴィメタルの救世主──メタル・メサイア──なる壮大なモチーフを掲げ、ギタリストのヴォイティック・リシキ(g)を中心に結成された。ジャケットに描かれている各メンバーの姿は、自らが救世主となり、自由を迫害され操作されている人間を救うイメージであるという。音楽性は、マノウォーやヴァージンスティールとの関連性を国内盤のライナーノーツで指摘されている。

ヴォイティックの強靭な思想と意志によって支配されている本作は、楽曲から真実味と人間性の肯定が力強く感じられる。ストレートなパワーメタルにダニエル・ハイメン(vo)の強烈なハイトーンが乗り、楽曲はより説得力を増している。その説得力は、自然との調和や人間本来の自由な意思を歌う本作のイメージを具体的に強めることに成功している。本作に秘められた使命感は非常に大きい。ヒロイックファンタジーの主人公にも似た宿命的な雰囲気がアルバムからは感じられる。これらの壮大なテーマは、映画『ハイランダー』に共通している。戦士に課せられた永遠の戦いを描くこの歴史的な映画は、何処かロスト・ホライズンの姿勢と重なって映る。彼らは、かつてハイランダーという名で活動していた時期もあり、いかにこの映画の世界観から影響を受けているかが伺える。

本作のサウンドは、正統派メタルの伝統を踏襲したものである。楽曲にはドイツのランニング・ワイルドに似た個所──特に#9「The Kingdom Of My Will」のリフ・パートがそれに当たる──も頻出する。新時代のヘヴィメタルに相応しい強烈なスピードで展開されていく楽曲群は、彼らの標榜する戦士のイメージと相俟って、上記で触れたマノウォーにも匹敵する高揚感を誘発させる。ここで生きているのはハイメンの圧倒的な歌唱力であり、ドラマティックな楽曲と完全に溶け込んでいる。その時に発せられるエネルギーは凄まじく、ヒロイックなヘヴィメタルのファンであるならば思わず拳を握ることは必至である。ヴォイティックのギタープレイも相当な代物であり、名曲に値する#3「Sworn In The Metal Wind」でのソロ・パートは壮絶。ヴォイティックのヒロイックであり、時にロマンティックでもあるギタープレイもまた、本作の魅力だろう。シリアスで真実味を帯びたエピック・ヘヴィメタルを標榜する向きは是非本作を手に取っていただきたい。



1. The Quickening
2. Heart Of Storm
ハイメンのサビでの強烈な熱唱がインパクト大。シリアスかつ壮大なエピック・ナンバーである。
3. Sworn In The Metal Wind
本作最大のハイライト。先述した、クライマックにかけて始まるヴォイティックのギタープレイが劇的。圧倒的な勇壮さを誇る。
4. The Song Of Air
5. World Through My Fateless Eyes
6. Perfect Warrior
7. Denial Of Fate
8. Welcome Back
9. The Kingdom Of My Will
大作。本作の集大成ともいうべき内容。中間部以降の盛り上がりが素晴らしい。
10. The Redintegration


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 時を忘れ色彩豊かな異国情緒に酔うのは、古くからの知識人の嗜みである。私にとっての異国とは、スペインやメキシコなどの情熱的なラテン国が思い浮かぶ。人によってはエジプトや中東などを思い浮かべることもあるだろう。私達には、"訪れたことのない故郷"というものが存在し、時々思いを馳せる。そう強烈に思わせるのが何であれ、郷愁は心地いいものだ。
 私はヘヴィメタルを通じて様々な異国の故郷を訪れてきたのだが、荒涼とした大地に陰鬱な哀愁の漂う北欧の地を忘れたことはない。ヴァイキングメタルという素晴らしい音楽の幻想で、私はそれらの雄大な光景を目にしたのだ。荒々しい海にもやがては穏やかな季節が訪れ、雪を降らす黒雲の隙間から僅かな光が覗くことがある。その光が黒ずんだフィヨルドの肌をを撫で、異国の光景を映し出す。私が垣間見る北欧の情景は、まだ訪れたことのない故郷の影を明るく照らし出しているのである。

▶「Tiurida」(2011) Falkenbach
Tiurida


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 私の書いた記事の中で最も古い部類に入り、エピックメタルについて最初に扱った『エピックメタル・ヒストリー』のヴァージンスティールの歴史。 文章が未熟かつ、ヴァージンスティールに関する知識がまだ浅い個所は苦々しい。エピックメタルに興味を抱き始め、様々なメタルバンドを模索していた時に出会ったのがヴァージンスティールだった。彼らの音楽性と叙事詩的な世界観に魅せられ、私は直にヴァージンスティールのアルバムを聴くことに熱中した。それは今でも変わっていないのだが、彼らについて書いたこの『エピックメタル・ヒストリー』を加筆し、まとめる必要があった。
 未完成の「EPIC WAR」には、私が追求してきたことと、描いてきた分野の中でも重要なことが収めてある。強いて言えば、私が後世に残したいものが記録されているのである。ヴァージンスティールの辿ってきた波乱の歴史も、エピックメタルの歴史と同様に残しておく必要がある。決して公に知れ渡っていることではなく、人々の生活には不必要な分野ではあるが、それを追求し、歴史の真実を、または人間の思想の奥深くに宿る潜在的な精神の部分を暴くことをよしとした者たちの記録をである。例えばシスのように一子相伝の珍妙なる知識ではあるが、誰かが残していかなくてはならないことは確かである。
 残念ながら、私の努力不足と無気力のせいで作業が長らく滞っていたのだが、この日にようやく、ヴァージンスティールの歴史を保管する作業の一部を終えることが出来た。完成したのは、ヴァージンスティールの歴史をまとめた一部分であり、それぞれ『Underground(アンダーグラウンド)』、『Emperor Of The Epic Metal(エピックメタルの帝王)』と名付けた。重要なアルバムのレビューの完成した形は依然として未完成のままであるが、エピックメタル的にも重要な位置(ヴァージンスティールの「マリッジ三部作」の部分である)は埋めておきたい。閲覧は、上記リンクを直接クリックして頂くか、もしくは右上のバナーからも可能である。


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