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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


◆新着情報 News Topics
[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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House of Atreus Act II



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2000
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal



エピックメタル・シーンの頂点に君臨する帝王、ヴァージン・スティールの2000年発表の10th。

古代ギリシャの劇作家アイスキュロスのオレステイア(The Oresteia)の3部作のうち、『供養する女たち』 、『慈みの女神たち』を題材とした作品。ストーリー・アルバムとしてリリースされた前作「The House of Atreus, Act I」の内容を受け継ぎ、オペラとして制作された「アトレウス2部作」の完結編が本編である。メンバーは前作と同じくデイヴィッド・ディファイ(David "DIONYSUS" Defeis:vo、key)、エドワード・パッシーノ(Edward "VAN DORIAN" Pursino:g、b)、フランク・ギルクリースト(Frank(The Kraman)Gilchriest:d)による3人。本作はヴァージンスティールのオリジナル・アルバム初となる2枚組の作品であり、全アルバム収録時間は約90分にも及ぶという、エピックメタル史上類を見ない一大大作である。
内容もそれに相応しい、徹底した味付けが成された「Barbaric and Romantic」なメタルオペラ作品となっている。前作は10人になる登場人物をディファイが一人で演じきるという凄技を見せたが、本作では7人の登場人物をディファイに加え2編からなる聖歌隊が歌い紡ぐ。まさに本作は"歌劇"である。ディファイの表現力の向上は記すべくもなく、サビでの盛り上げ方が更に劇的に変容している。まさにエピック・クアイアの効果的な導入の勝利だろう。
アルバムはギリシア神話の神々しさを伴えた名曲#1で神妙に幕を開ける。冒頭から、先述したコーラスの扇情力が光っている。それは繋ぎながら印象的な#2にも代表され、まるで神話の世界の官能的な美声が現代に蘇ったかのようだ。ここに、ヴァージンスティールのトロイアンメタル(古代ギリシアに回帰したエピックメタル)の意味がある。中世ルネッサンスは文芸復興として参考とする時代を模索する中で、最期に古代ギリシアの時代に辿り着いている。西洋人が戻りたいと終ぞ願ったのは古代ギリシアの世界だったということだ。奇妙なことに、アメリカのバンドである彼らはギリシア神話を取り上げている。芸術文化の回帰に、人種は関係ないということではないだろうか。彼らは、中世の人々と同じ思想でこのテーマを選択したのだ。そしてその壮麗な古代ギリシアの世界で、ディファイはオレステスの悲劇を描き切った。#22「Fantasy and Fugue in D Minor (The Death of Orestes) 」に表されているように、オレステスは自殺により死を迎える。威厳を誇ったトロイの街は叙事詩的な戦争により崩壊する。美しい世界が滅び去った時、私達が抱くのは真の絶望である。そして古代ギリシアの世界は、中世の人々が最も美しいと称えたものだった。これは古典に現代精神の悲劇を代弁させるディファイの皮肉のうち、最高のものである。最後#23「Resurrection Day (The Finale) 」に登場するマリッジのメロディが輪廻転生、つまりは悲劇を繰り返す人類を示唆しているのだ。しかし幸い、その曲は明るい。



Disk:1
1. Wings of Vengeance
物語に沿ったエピカルな展開と、憂いを帯びた儚い旋律が交錯する疾走曲。サビのコーラスと裏声は素晴らしい。興味深いのは、オレステスへ復讐を命じたのは新しき神々オリンポスに属するアポロだということだ。
2. Hymn to the Gods of Night
3. Fire of Ecstasy
ディファイのプロジェクトEXORCISTの曲、"Call for the Exorcist"のリメイクバージョンだが、アルバムの雰囲気に馴染んでいるから不思議だ。
4. Oracle of Apollo
5. Voice as Weapon
6. Moira
7. Nemiesis [Instrumental]
8. Wine of Violence
9. Token of My Hatred
本作で最大の名曲ともいうべき傑出した楽曲。悲劇の中にも彼ら独特の力強さが表現されており、特にサビのフランクのスピーディなツーバスを伴って歌い上げる「Hear me cry, the King of Eternity to the End~」のフレーズには痺れる。唯一無二のヒロイズムといってもいい。終盤には前作の名曲「Kingdom of the Fearless [The Destruction of Troy] 」の野蛮なリフも再登場し、大仰なドラマ性を極める。
10. Summoning the Powers
ギリシア調のホーンセクションが印象的な大作。ダークな雰囲気で重厚なリフを織り交ぜながら、時折アンビエントな歌声も入る。

Disk:2
11. Flamies of Thy Power (From Blood They Rise)
冒頭を飾るに相応しい強力なエピックメタル。バーバリックな疾走感とエピカルなリフが印象的だが、やはり高潔な哀愁を漂わせる全体のメロディが引き締まる。
12. Arms of Mercury
13. By the Gods
14. Areopagos [Instrumental]
15. Judgement of the Son
16. Hammer the Winds
17. Guilt or Innocence [Instrumental]
18. Fields of Aphodel
19. When the Legends Die
20. Anesmone (Withered Hopes... Forsaken)
21. Waters of Acheron [Instrumental]
22. Fantasy and Fugue in D Minor (The Death of Orestes) [Instrumental]
23. Resurrection Day (The Finale)
これまでの重く悲劇的なムードを払拭し、黒雲に覆われた天上の隙間から神の微光が差し込むような、「アトレウス二部作」に終止符を打つ楽曲。物語では、古き神々と新しき神々が和解をする。しかし私の個人的な意見としては、果たしてそんなことがあり得るのだろうか。


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Megadeth 

コメント:このメガデスの有名な2ndアルバム「PEACE SELLS... BUT WHO'S BUYING?」(1986)を捩った絵は、私が確か16歳の時に書いたものだ。ラトルヘッド──アイアンメイデンのエディに相応するメガデスのマスコットキャラである──の看板には「NOT ENTER(入るな)」と書かれており、部屋への無断侵入を警告する良い壁紙となっている。しかし私はこの絵を自室に入る際毎日見るのだが、エド・レプカのラトルヘッドのデザインはつくづく素晴らしい!


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─EPIC METAL─





The_Virgin_Steele


「エピックメタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である──」


Synopsis:



Cirith Ungol_1st EPIC(エピック)という単語を邦訳すると"叙事詩"という言葉になり、これはいわゆる「歴史や伝説・神話の物事を記述する」といった意味を持つことになる(また他に、「勇壮」、「英雄的」といった意味も持つ)。要約すると、古来から民族間に伝わってきた物語のことなどを漠然と指し示している。大昔から語り継がれてきた物語の多くは、現在も叙事詩としていくつかの古典文学に残されている。我々はより馴染み深い小説としてそれらの伝記に触れることもあろう。
 叙事詩の起源は、紀元前にまで遡ることができる。世界最古の叙事詩は、『ギルガメシュ叙事詩』(紀元前約2600年前)であると現在は伝えられている。一般に有名な叙事詩的文学作品は、中世英雄時代(8世紀~13世紀頃)に形成されたものが多く、『ベオウルフ』、『ニーベルンゲンの歌』、『ローランの歌』、『アーサー王物語』、『ディートリヒ・フォン・ベルン』、『ヒルデブラントの歌』等があり、これらは主に「英雄叙事詩」という名称で呼ばれる。この他にも、北欧の詩人らによってまとめられたサガ(Saga)やエッダ(Edda)等の作品も存在し、主に上記の分野に所属する。また近年では、17世紀の詩人ジョン・ミルトンの『失楽園』や、13世紀から14世紀にかけての詩人ダンテの『神曲』等の古典文学を取り上げて、叙事詩的作品として扱うことも多い。これらの作品に触発されたヘヴィメタルが、主にエピック・メタルと呼ばれ、叙事詩な文学作品は、その基礎となっている世界観や時代性を形作っている。なおバンドによっては、過去の叙事詩的作品を意図的に扱わず、想像の範囲内で叙事詩を創作し、その世界を舞台とする場合もある。
 エピック・メタル・バンドは上記の世界観──主に古代、中世の時代──に傾向し、作品中に取り上げることが多い。主にコンセプチュアルなアルバムやストーリーを組み立て、いかに叙事詩的なヘビィメタルを作り上げるかの模索を重ねるのが、エピック・メタル・バンドの特色である。時にバンドによっては、何枚ものアルバムに渡りストーリーを展開する試みも行われ、大作映画にも通じる重厚な世界観が展開される。楽曲の題材となるのは、先述した古代や中世を舞台とした実在の史実や架空のファンタジー等であるが、ヒロイック・ファンタジーの分野においてはロバート・E・ハワードの創造した『コナン(CONAN)』、ハイ・ファンタジーの分野においては、J・R・R・トールキンの想像した『指輪物語(The Lord of the Rings)』からの影響が根強く残る。現在は一般的に、欧州出身のエピック・メタル・バンドが傾倒するのが『指輪物語』であり、米国出身のエピック・メタル・バンドの傾倒するのが『コナン』という図式が出来上がっている。
 サウンドは非常に特徴的であり、叙事詩的な世界観を表現すべく、あらゆる挑戦がこれまでに試されてきた。その主なものとしては、キーボードによる交響曲調の旋律や台詞・SE等の導入、オペラ(演劇)に相当する劇的な曲展開、史劇を彷彿とさせる重厚なサウンドの構築、およそ10分を超える大作曲の制作などが挙げられる。エピック・メタルの楽曲は、古典的な手法と様式美的な構成を取り入れ、正統派メタルにも通じる部分が見受けられる。またエピック・メタルの間でも、正統派メタルを基軸にするバンドとメロディック・パワーメタルを基軸にするバンドとでは、サウンドや表現手法が大きく異なるのである。
 他と一線を画すエピック・メタルのサウンド面における最大の特徴は、聴き手の高揚感を誘発するヒロイズムである。ここでは、主に英雄的な叙事詩の世界に忠実であるヒロイックなサウンドを表現することにより、エピック・メタルはより強烈な個性を主張する。エピック・メタルを簡潔に示すとなれば、"大仰かつ劇的でヒロイックなヘビィメタル"ということになろう。

History:



Crystal Logic エピック・メタルの本格的な歴史は恐らく、マニラ・ロード(MANILLA ROAD)のマーク・シェルトンが第一作『Invasion』(1980)のインタビューの際に、「発表したアルバムのスタイルをどう形容するか」という質問に対し「EPIC METAL」と答えた時から始まったとされるが、諸説は様々ある。エピック・メタルの誕生をキリス・ウンゴル(CIRITH UNGOL)の第一作『Frost & Fire』(1981)を起源とする説や、マノウォー(MANOWAR)の『Battle Hymns』(1982)を最初とする説などが他に存在するが、先述したマニラ・ロード説が最も有力であると現在は考えられている。
 しかし、エピック・メタル誕生以前にもイギリスのホークウィンド(HAWKWIND)がマイケル・ムアコックの世界観に影響を受けた『Warrior On The Edge Of Time』(1975)を発表していたし、突然この分野が誕生していったわけではない。80年代初期に発表されたマノウォーの『Battle Hymns』の表題曲"Battle Hymns"が極めて現在のエピック・メタルのスタイルに近いため、この楽曲がエピック・メタルの原型となった可能性は非常に高いとされている。他にもこの時期イギリスのアイアン・メイデン(IRON MAIDEN)など、極めてエピカルな方向性のヘヴィメタルを作るバンドは多かった。しかし80年代初期の決定打は、マニラ・ロードの発表した第3作『Crystal Logic』(1983)であった。これまでのヘヴィメタルの常識を覆すストーリーテリングな内容を描き、ヒロイックな概念のリフを始めて持ち込んだとされる本作は、後のエピック・メタルの確立に多大な貢献を果たした。
 80年代後半に入ると、本格的にJ・R・R・トールキンの『指輪物語』などのファンタジー作品に傾倒したブラインド・ガーディアン(BLIND GUARDIAN)が登場し、その大仰でドラマティックなサウンドから、一部ではブラインド・ガーディアンのサウンドをエピック・メタルと形容した。『指輪物語』からの影響はヘヴィメタル・シーンでも初期ブラック・サバス(BLACK SABBATH)の作品に見られるほど欧州ではポピュラーな題材であったが、ハロウィン(HELLOWEEN)影響下のメロディック・パワー・メタルから派生したブラインド・ガーディアンの登場は、後の欧州におけるエピック・メタルのスタイルを決定付けるものとなった。しかし何れも明確なエピック・メタルの確立と認知には至らなく、エピック・メタル・シーンは長らくアンダーグラウンドを主戦場とし、一部でカルト的な人気を博していった。地下アメリカで活躍したブローカス・ヘルム(BROCAS HELM)やオーメン(OMEN)を筆頭に、イタリア最古のエピック・メタルとして知られたアドラメレク(ADRAMELCH)やダーク・クォーテラー(DARK QUARTERER)など、世に出てない名前は驚くほど多かった。
 このような曖昧な時代に遂に終止符を打ったのがアメリカのヴァージン・スティールの第6作『The Marriage of Heaven & Hell』(1994)であった。本作がその続編『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』と共に1995年のヨーロッパ圏で決定的な成功を収めると、世界的にエピック・メタルの名は認知された。現在、この成功はエピック・メタルの歴史の中で極めて重要な事項として挙げられている。これによってヴァージンス・ティールはエピック・メタルの帝王に相応しい名声を手にした。エピック・メタルのファンたちは敬意を込め、偉大なアメリカのエピック・メタル・バンド、マノウォーとヴァージンス・ティールを指して"エピックメタル界の双璧"と呼んでいる。またこの時期、壮大な詞世界で独自のエピック・メタルを極めていくイギリスのバルサゴス(BAL-SAGOTH)も『A Black Moon Broods Over Lemuria』(1995)で密かにデビューを飾った。
 90年代後半になると、エピック・メタルの風向きは更に変わる。イタリアのラプソディー(RHAPSODY)が発表した『Legendary Tales』(1997)の成功によって、エピック・メタル・バンドは大幅に増加する。同国ではドミネ(DOMINE)やドゥームソード(DOOMSWORD)、マーティリア(MARTIRIA)、ロジー・クルーシズ(ROSAE CRUCIS)などのバンドが世界に進出し、この事実が物語るように、後にイタリアはエピック・メタル大国となった。他、スペインからはダークムーア(DARK MOOR)やサウロム(SAUROM)など、エピック・メタルの新時代を担うバンドが登場していった。ラプソディーは自ら作り上げたサーガ四部作を2002年に完成。ドミネにおいては、名作『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』(2001)に代表されるヒロイックかつ幻想的な一連のエピック・メタル作品を立て続けに発表し、かつてキリス・ウンゴルが提示したマイケル・ムアコックの『永遠のチャンピオン』シリーズを描いたエピック・メタル群──即ちソード・アンド・ソーサリー(Sword and Sorcery)の世界を描いてきたエピック・メタルの分野に一旦の終止符を打った。しかし、現在も未だに表舞台に登場していないエピック・メタル・バンドの数は計りしれず、これらの数は正確に計測されていない。
 21世紀、エピック・メタルは進歩の一途を辿り、日々飛躍を重ねている。80年代に比べエピック・メタルの規模は大幅に膨れ上がり、未だ認知に乏しい地域はあるものの、エピック・メタル作品が年内に発表される数は飛躍的に上昇した。その作品も様々な内容である。シンフォニックな手法でエピック・メタルを追求するパスファインダー(PATHFINDER)のようなバンド、正統派でエピック・メタルを追求するドゥームソードのようなバンド、劇的な手法でエピック・メタルを追求するサウロムのようなバンド、映画のような手法でエピック・メタルを追求するラプソディー・オブ・ファイアのようなバンド、果てはバルサゴスのように、我々の想像もつかないような手法でエピック・メタルを極めようとするバンドが登場する。この先、一体如何なるエピック・メタル・バンドが登場してくるかは分からないが、我々はその後を追い続けるのみである。

──編集:『METAL EPIC』誌


代表的なバンド:The List...


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 やはりレザージャケットにはブーツが似合う。中古で購入したブーツにスタッズを埋め、ヘヴィメタル仕様にカスタムした。更にコンチョなどを付ければもっと"それ"らしくなるだろう。HR/HMファンならば、よくリッチー・ブラックモア(*)が中世のコスプレでロングブーツを履いている写真を見たことがあるだろう。実は、ブーツにも様々な背景があるのだ……
 ブーツにも様々な種類があるが、中でもウエスタンブーツなどは本国でも需要の高い部類に入る。フリンジがついていたり、装飾文様が刻まれていたりと、街で見かけるのは多くなった。しかし実際には、リアルなカウボーイはフリンジなどは付けず、シンプルな傾向であると伝えられている。これはシャツにも言えることだ。過剰な装飾は避け、機能性を重視している。そのような背景から見ると、ヘヴィメタルファッションはなんと過剰装飾なんだろうか!もちろん、そこが素晴らしいと思うのだが。
 ブーツは中世時代の服装にも頻繁に愛用されている。中世では乗馬が日常の一部にまで浸透していたため、ブーツは生活における必需品だったようだ。乗馬用のブーツは長く、足を守るようになっている。実際に馬に乗る騎士たちがブーツを着用していたのは想像が容易である。中世系の映画ではリアリティを重視するために服装にも気を配っているので、歴史スペクタクル映画を見る機会があれば注意して見るといい。
 起源を辿ると、服装とは古来から生活に見合った進歩を遂げてきたことが分かる。日常を便利にするための知恵だ。現代では好きなファッションが自由に出来る時代になったが、このような歴史的な背景を忘れてはならないのである。


* 参照「Wikipedia:ブラックモアズ・ナイト
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Column the Column

volume 4. 23 October: 2010


2010年10月第4号、前号の続き...


Act Ⅱ:


クリス・マスティメノン:《善》と《悪》、二元論、グノーシス思想、対極……確かにこれらはヘヴィメタルの、最も奥深くの潜在的な領域に及ぶためには重要な概念だ。ここでいうヘヴィメタルの潜在的な領域とは、決して具体的なものではなく、何故私達がヘヴィメタルの分野に辿りついたのか、何がヘヴィメタルに対し人類を結び付けていったのか、という抽象的なものに過ぎない。しかし一方で、不鮮明なこの領域は、私達にとっての超越的な探究の最終的な終着点とも成り得るだろう。私達は無意識のうちに多くの物事を決定するに及んでいるが、その根底に隠されているヘヴィメタルの原始的な起源をもう一度探らねばならんようだ。そうすることで、私達の探究は首尾よく遂行される。
コスマン・ブラッドリー:そうだ。第一にヘヴィメタルの世界はとてつもなく巨大なものだ。無論これは、市場的な意味ではなく、思想、想像の領域においてのことだ。いい例がある。アイルランドの幻想作家ロード・ダンセイニはかつてこういった「人間の世界で最も巨大なもの、それは人間の夢である」その言葉が正しいのであれば、ヘヴィメタルの内包する巨大なスケールは、人間の夢想的な部分から生じているのではないか。思い出して頂きたい、ヘヴィメタルに描かれてきた様々な世界のことを。ブラック・サバスの悪魔崇拝に始まり、ディオの中世の幻想世界、アイアンメイデンの神秘主義的な世界、果てはバルサゴスの異世界にまでその範囲は及んでいるという事実を。現実の常識を逸した要素や禁じられた世界を描くこと、その行為には諮らずも夢想的な願望が込められている。私は、人間の夢そのものがヘヴィメタルという地下の音楽をここまで巨大化させてきたのではないか、と思っている。単にその夢とは、金や女、社会的な地位や権力を得るという物理的に偏った概念ではなく、アストラル界の如く地球全体を包み込む膨大で不鮮明なものだ。彼らの見る夢は、クラーク・アシュトン・スミスが「謳う焔の都」で訪れた異次元の理想郷イドモスや、マイケル・ムアコックの「永遠の戦士」に登場する平安の都タネローンを形成した、漠然とした概念に近いと私は睨んでいる。これについては是非あなたの意見を伺いたいところだが……。
クリス・マスティメノン:人間の夢がヘヴィメタルを想像したという仮説については、大胆な発想と言わざるを得んな。信憑性を欠いておる。しかし現実では禁じられている要素──最もそれは一般論的に禁じられているにすぎないのだが──をメタルの世界が積極的に取り入れているという意見に対しては、大いに納得できる部分があるが。例えば博士も例を挙げたブラック・サバスの悪魔崇拝だ。これはキリスト教世界では絶え間なき冒涜行為として映る。しかし、その行為を分別のある大人がやったのだとすれば、何かしらの意図が隠されていると推測することは容易だ。もちろん、ヘヴィメタルの世界の人間が狂信者というわけではないぞ。彼らは自由な意志で、自らの信仰を選択したのであって、単にそれが社会的に邪悪と決めつけられているものだった、ということに過ぎん。要は、悪魔崇拝者が悪魔崇拝者として行った正統な行為──教会の放火、生贄、黒魔術──を、一般人が上辺のみをなぞってやみくもに避難しておるだけなのだ。ただそれを夢と関連付けるのは、突拍子もないと私は思うがね。それらは夢想的な要素ではなく、現実に起こっている事実だ。また、ヘヴィメタルが創造された経緯についてだが、実際の歴史はきちんと年代記に収められてはいるが、精神的な起源に関しては個々のバンドに頼ることが大きい。精神面は後になって形成されていったものなのだよ。まずヘヴィメタルというサウンドが確立され、その後で、博士のいうような独自の世界観が発達していったのだ。今は個性的なヘヴィメタルも、創造初期には"金とドラック"、"セックスと女"のロックンロールと似通っておった。
コスマン・ブラッドリー:しかしどうだろうか。例えサウンド面が最初に形成されたとしても、ヘヴィメタルの内面的な部分は音楽性をも上回るはずだ。それに創造初期のメタルを一概に普遍的なロックンロールと関連付けるのにも、私は疑問だ。確かにあらゆるメタルバンドにはロックの典型的な要素──反骨精神や攻撃的なサウンド──が垣間見れるが、それは宿命として、純粋にメタルとして精神的な分野及び音楽的な分野を捉えた場合はどうだろうか。ヘヴィメタルが産声を上げた時"金とドラック"、"セックスと女"の無知な時代は終わったのだと、私は考えている。80年代初期にはエピックメタルの始祖となるバンド──マノウォー、ヴァージンスティール、キリス・ウンゴル、マニラロード等の極めて叙事詩的なメタルバンド──も登場しているうえ、既にその頃から、ヘヴィメタルの世界が独自の創造性と知的なインスピレーションを持って独立し始めていたと考えることが正しい。その後ヘヴィメタルが個々の存在へと発展していったのは事実明らかであり、ロックンロールは、ヘヴィメタルが構成されるための基盤でしかなかった。どのような音楽にも、構築基盤とは必要不可欠だからだ。それにヘヴィメタルの背景にあるのは、クトゥルー神話にも匹敵する巨大な体系だということを念頭に置いて頂きたい。先程述べた《善》と《悪》の二つの概念にしても途方もなく壮大なものだが、これら対極にある力の集約点を、ヘヴィメタルに置き換えることが可能なのだ。それこそが、エピックメタルとブラックメタルだ。ブラックメタルは極限の《混沌》を追求し、一方で、エピックメタルは整然と構築された《秩序》を追求している。ヘヴィメタルの極端な追求性は驚くほど二元論に類似しているということに、多くの者達は気付いていないのだ。微小な懐疑の感情が混入してしまったために、あなたはヘヴィメタルに隠されている広大な領域から、真相の目を逸らしてしまっていたのだ。
クリス・マスティメノン:《混沌》と《秩序》、宇宙が誕生した時に誕生したと仄めかされる究極的な二つの力か。かつて私も聞き及んだことがある。途方もない勢力であるこれらが、ヘヴィメタルの根底にあるとはなんとも信じがたい仮説ではあるが、実に興味をそそる話ではあるな。私が僅かな間でも非難すべき懐疑主義に捉われていたことは認めよう。そもそもヘヴィメタルとは、あらゆる音楽のジャンルを差し置いて神秘的であり、カルト的だった。人々を所属させる魔力があり、宗教の如く熱狂的な信者を生む力がある。とにかくヘヴィメタルにアウトサイダーが引きつけれらるのは確かであるな。私達がそうであったように。
コスマン・ブラッドリー:そう、その人智を超越したともいえる宇宙の誘引力が私達探索者をヘヴィメタルに引き付け、幾多もの発展をさせ、それを伝えることを神によしとされたのだ。私の最終的な見解はこうだ──宇宙の深淵の知性が人類の原始的な衝動と奇妙な方法で結びつき、久遠の歳月と進化の過程を経て、それを表現する方法の一つの分野を発見するに至った。それがヘヴィメタルだ。
クリス・マスティメノン:つまりは、ヘヴィメタルこそが人類の最も幼い衝動を開放することが出来るというわけであるな。私達がヘヴィメタルに辿りついたのは必然的だったと。人間の理解できない不思議な力が、私達のような探索者の中に眠っていた潜在的な本能と結び継いだのだと。その本能とは、怒りという人類にしか感じることのできなかった天武の感情であり……。
コスマン・ブラッドリー:そして、人類の普遍的な感情と知性を受け継いだ私達は、僅かながら天に至る道を見出した者として、新たに生み出されたメタルという意思表現に追従し、これからも讃美し遺産を残していくことだろう。詰まる所、ヘヴィメタルとは、原始的な私達の先祖が壁に文字を刻みこんだ時と同じ感情を、今も持っているのだ。生存という、ただ一つの本能に従いながら。


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 バルサゴス検定を制作した。さて、あなたのハイパーボリア度はいかに!?


Into the fray we ride!











* ▶「yahoo版」 ▶「バルサゴス検定(一般向け)
  上記リンクは、ヤフー画面での検定と、一般向けのバルサゴス検定。当然一般向けの方が優しくなっている。いずれも、制作者には感謝したい。
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MetallicA


MegadetH


IRON MAIDEN


Iced Earth


MANOWAR



 ヘヴィメタルバンドの代名詞ともいえるのが、迫力のあるバンドロゴだ。個性があり、非常に様々なものがあるが、実は有名メタルバンドのロゴをフォントとしてダウンロードすることが出来るのだ(*)。これでメタルの記事を書くのも面白いだろう。ダウンロードすれば、上記の文字もパソコンで表示されるようになる。しかしワールドワイドなメタルバンドに混じって、案外マニアックなバンドのフォントがあるのが面白い。ちなみに、マノウォーフォントとしてダウンロードできるのは、フォント名がヴァイキング(Viking)、ヴァルハラ(Valhalla Normal)となっているもので、ヴァイキングメタルのライナーノーツに良く用いられたりする文字である。残念なのは、フォントがないパソコンではメタルフォントが見れないということだ。またこの他にも映画のフォントがダウンロードでき、「ハイランダー」や「ロード・オブ・ザ・リング」のファンは興奮必至だろう。私もその一人である。


* ▶「Metal Band Font」 ▶「Metal Band Font 2
  ダウンロードはこのリンクから可能。クリックでファイルを保存し、展開してインストールすれば完了だ。
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Ancestral Romance...


dark_moor_8th


 2010年はメロディックメタル界にとって非常に好ましい年となったようだ(最も私にとっての最大のニュースは、ヴァージンスティールの新作が発表されたことだったが)。ブラインドガーディアンやアングラの新作発表に続き、スペインからも重鎮ダークムーアの8th「Ancestral Romance」が12月に届けられた。ダークムーアといえば、あの民族メタル大国スペイン出身ということもあり、音楽性も実にエピカルな傾向だ。そんな彼らは近年更に高品質なシンフォニックサウンドを極め、恰も中世のロマンスのような優美な作品を提供してくれている。中世的音楽への徹底的な取り組みは、メタルサウンドにもエピカルさを加え、よりヘヴィメタルのヨーロピアンな方向性を伺わせる。一曲目の「Gadir」はまさにそうした中世ロマン主義志向の名曲であり、ダークムーアがいかに芸術的で叙事詩的なメタルバンドへ進化したかを物語っている。エピックメタルの素晴らしさ、大人が味わうべき音楽の奥深さを再確認させられることとなった。






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The Lexicon

from 2012.4.21...

──以下に公表する資料は、コスマン・ブラッドリー博士と敬虔なる諸氏たちの間で過去交わされてきた、貴重な対話を保管したものである。




No. 1 from 2010.4.11 「VIRGIN STEELE "LIFE AMONG THE RUINS"
No. 2 from 2010.6.24 「Rhapsody Of Fire "Triumph Or Agony"
No. 3 from 2010.9.05 「BAL-SAGOTH "Battle Magic"
No. 4 from 2010.9.08 「2010年9月8日
No. 5 from 2010.9.09 「Thy Majestie "Hastings 1066"
No. 6 from 2010.9.12 「エピックメタル特集1 "歴史的名曲"
No. 7 from 2010.9.16 「エピックメタルアルバム "ベスト10"
No. 8 from 2010.9.18 「バイロン卿;鉛筆画
No. 9 from 2010.10.13 「2010年10月4日
No. 10 from 2010.10.23 「第三回 「対話──クリス・マスティメノン教授編」1/2
No. 11 from 2010.10.28 「メタル・メモリーズ:SLAYER "War at the Warfield"
No. 12 from 2010.11.04 「ヘヴィメタル経済学:購入と目利き
No. 13 from 2010.11.16 「メタルファッション:メタルファンとレザーについての概論
No. 14 from 2010.11.23 「文章の考察
No. 15 from 2010.11.27 「現代社会及び音質の実態に関する警告
No. 16 from 2010.12.06 「2010年12月5日
No. 17 from 2011.01.06 「VIRGIN STEELE "Hymns to Victory"
No. 18 from 2011.01.07 「メタルファンのOneDay
No. 19 from 2011.01.18 「エピックメタル・ヒストリー:源流たるヒロイック・ファンタジー
No. 20 from 2011.01.26 「動画紹介:カレオン
No. 21 from 2011.03.15 「動画紹介:テュール
No. 22 from 2011.07.03 「コラム・ザ・コラム:第8号"破滅へ向かうもの、生き永らえるもの"
No. 23 from 2012.02.27 「コラム・ザ・コラム:第12号"HR/HMレビューの方向性に関する議論"
No. 24 from 2012.03.23 「Cirith Ungol "Paradise Lost"
No. 25 from 2012.04.11 「IRON MAIDEN "The X Factor"


思うに、ここで交わされてきた対話は、決して馴れ合いなどではなく、純粋に知識の探求から生じたものとして、互いの知恵を高め、またそれを見る者に価値ある対話の意図を学ばせたのである。

──コスマン・ブラッドリー



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The Works

from 20XX.XX.XX...


■仕事に関して■

当サイト『METAL EPIC』は執筆・評論(レビュー)関係の仕事を募集しております。
分野は主に幻想文学、HR/HM全般となります。



仕事の依頼はメールにてお受けいたしております。

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どうぞ、よろしくお願いいたします。



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 私のブログでは購入したCDがトップで分かるようになっている。そこで私の趣味も大方判別できてしまうが、既にご存じの通り、昔のようにCDをまとめ買いしなくなって久しい。一ヶ月に一枚程度しか購入しなくなった事実には、私も気がついてみて驚いた。その理由には、大きく2つある。
 1つ目は、既に私が生活に必要なエピックメタルCDを大部分持っているためだ。最近、私はヴァージンスティールとアイアンメイデンとノックスアルカナ──ジョセフ・ヴァーゴ率いるアメリカのゴシック・アーティスト──しか聴いていない。今まで集めたCDは大量にあるが、本当に何度も聴くアルバムとは意外に少ないものだ。
 2つ目は、メタルグッズ──ワッペンやバッチ、Tシャツ等である──収集のために、資金を殆ど使ってしまってるからだ。昔から収集癖がある私は、徹底的に物を集めるという性質の持ち主で、今までも西洋武具や幻想小説を集めていた。それらは今でも集めているが、一通り集め終わったので、メタルグッズに移行したというわけだ。物理的なものに執着しているのかもしれないが、出来るだけ長く持つものに魅力を感じている。故に食べ物などに金銭を払うのはあまり好きではない。それらはいかに高価なものでも一瞬でなくなるので……

以下は私の愛聴盤CDである:

▶「Seventh Son of a Seventh Son」(1988) Iron Maiden
Seventh Son of a Seventh Son


▶「Visions of Eden」(2006) Virgin Steele
Visions of Eden: The Lilith Project


▶「Blood of the Dragon」(2006) Nox Arcana
Blood of the Dragon


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 『ベオウルフ』でも有名なデンマーク出身の通称"バトル・エピック・メタル"Iron Fire(アイアンファイア)。

 その名高い1stアルバム「Thunderstorm」(2000)からタイトル曲をピックアップ。ヒロイズムに溢れ、勇壮極まりない名曲である。私のお気に入りのバトルソングだ。




◆参考作品◆
Thunderstorm
彼らの2000年に発表された1st。本作はヒロイックなサウンドでその手のファンを魅了した、知る人ぞ知る名盤である。また、彼らは近年、国内盤も配給されているようだ。


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