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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


◆新着情報 News Topics
[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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Night of the Stormrider

ICED EARTH the 2nd album in 1991 Release
★★★★★★★★☆☆...(好盤)



アメリカ、フロリダ出身のパワーメタル、アイスドアースの2nd。1991年に発表され、日本デビューも果たしたアルバムである。

硬派なギタリスト、ジョン・シェイファー(G)が率いることで有名なドラマティックバンドだが、この2ndアルバムもまた然り。
サウンドは非常に先述したドラマ性を有するスラッシュ・メタルよりの鋭角的なものであり、ギターの抒情的なフレーズが冴えわたる、高品質のB級メタルである。

彼らの素晴らしいところは、ジョン・シェイファーの趣味によるエピカルな傾向と荘厳なる闇属性の雰囲気にあるといっていい。"闇属性"などと大袈裟なことを記したが、本当は彼らのダークさを例えるなら"アメリカンコミックのダークヒーロー"というフレーズがしっくりくるだろう。孤高の雰囲気(同時に勇ましさも漂う)なのだ。

本作はクラシカルの名曲である「Carmina Burana(カルミラ・ブラーラ)」をオープニング・アクトに配した#1で劇的に幕をあける。これを聴いただけでも劇的メタルファンは悶絶である。なによりここまで劇的で大仰なスラッシュは無いのだから……。続く#2も本作のダークでドメスティックな雰囲気を盛り込んだ名曲。執拗なまでに「ストームライダー」のフレーズが連呼される。もちろんこのクオリティ(粗削りだが…)と雰囲気は終始一貫されている。

ここまでドラマティックでコンセプチュアルだと大方気がつくだろうが、本作はストーリーアルバムである。アメコミ好きのジョン・シェイファーが作り上げたというダークファンタジーが意気揚々と展開されていく。タイトルとアートワークに登場する「ストームライダー」が地獄からやってきて世界を破滅に導くという、息を飲むストーリーである。早くも2ndにしてコンセプトを楽曲で十分に表現することが出来る彼らの技術は高評価していい。
ある種、このスタイルはエピックメタルバンド群に接近したスタイルだ。重厚なコンセプトに沿って、楽曲を練り上げていく。彼らはアメリカのバンドだが、非常にヨーロピアンテイストということで、マノウォーらに共通しているとも言えなくない。パワフルで漢らしさも漂っている。

またこの作品はファンから「ドラマティック・スラッシュ・メタル」と形容されている。その背景にはエピカルな要素が大きく貢献している。こういうエピカルな方法論もあるのだ。後、エッジーでドラマティックなリフの応酬パートが基盤である本作は、頭を上下に振るのにも最適だ。
クラシカルな導入部とスラッシュ然としたメタル・パワーが劇的な融合を果たした好盤である。

最後に加筆するが、これはリマスター再販盤のジャケで、オリジナルはもっと渋い。


1. Angels Holocaust
カルミラ・ブラーラの劇的なメロディを伴って展開する名曲中の名曲。
2. Stormrider
後半のリフのドラマティックな畳み掛けが非常にリズミカルで魅力的だ。既に展開力には目覚ましいものが見受けられる。
3. Path I Choose
4. Before the Vision
5. Mystical End
6. Desert Rain
7. Pure Evil
8. Reaching the End
9. Travel in Stygian


Review by Cosman Bradley
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ユニフィケイション



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 1999
Reviews: 88%
Genre: Power Metal


ピート・シールク(g,vo)とカイ・ハンセン(g,vo)によるジャーマン・パワー・メタル、アイアン・セイヴィアーの2nd。1999年に発表。


前作「Iron Savior」では、コンセプトの完成度に楽曲のトータルバランスが追いついていないため物足りない作品だったが、2作目となる本作においての完成度と総合性は目を見張るほど向上している。結果的に、壮大なSFストーリーとドラマティックメタルの融合がここに成されたわけである。このアルバムは私の愛聴盤として、実は昔から聴いている。一番初めに入手したアイアン・セイヴァーのアルバムがこのアルバムで良かったと今でも思っている。

今作は、従来のガンマ・レイ等のメロディックなツインリードをメインに、ピートの男らしいヴォーカルが愚直に響く正統派パワーメタルを踏襲。
また楽曲であるが、ピートの制作したナンバーの他にカイ・ハンセンが提供した楽曲が2曲収録されており、#3、#11(歴史的名曲)ではカイ自らリードヴォーカルをとっている。これもアルバムの大きな変化の付け方で、アルバムの中で只ならぬ雰囲気を放っている。その完成度が高すぎるためか他の楽曲を食っている(笑)感もしないでもないが、ピートの楽曲も名曲#1、#2を筆頭に熱いパワーメタルを叩きつける。

タイトルの「Unification」とは、人類の統一を表している。このアルバムは、機械的な未来を通して、またヘヴィメタルを通して、人類がどうあるべきか提示した壮大なSFメタル大作である。



1. Coming Home
ドラマティックなパワーメタの名曲として光を放つ名曲。本作からのシングルにもなっている。
2. Starborn
アルバムで最速のナンバー。ドラマティックかつスペースティックなソロバトルは最高だ。
3. Deadly Sleep
カイ・ハンセンの作った曲。イントロのリードから大いなる期待感を漂わせ、見事に期待を裏切らない秀逸の一曲である。SFの世界観とメロディックパワーメタルが見事にマッチした、名曲といえるだろう。
4. Forces of Rage
5. Captain's Log
6. Brothers (Of the Past)
7. Eye to Eye
8. Mind over Matter
9. Prisoner of the Void
10. Battle
重厚なクワイアにギターの雄大な重奏を加えた逸品。
11. Unchained
12. Forevermore
ヘヴィメタル史に残る歴史的バラード。間違いなくカイが作ったバラードの最高傑作であり、地球規模のスケールで綴られる宇宙的旋律が感動を与える。
13. Gorgar [Version '98]
14. Neon Knights
15. Dragon Slayer


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アイアン・セイヴィアー



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 1997
Reviews: 70%
Genre: Power Metal


HELLOWEEN等の活躍で知られるカイ・ハンセン(Vo, G)とIRON FIST、SECOND HELL期の盟友ピート・シールク(Vo, G, B, Key)を中心に結成されたドイツのパワー・メタル・バンド、アイアン・セイヴィアーの1st。1997年発表。


バンド名の「アイアン・セイヴィアー」とは、カイとピートによって制作された本作のコンセプトに登場する宇宙船の名称である。"宇宙船"というフレーズでピンと来たかもしれないが、そうこれはSFストーリーなのだ。古代史や宇宙への関心が顕著に表れたアルバムを発表したカイ・ハンセンのバンド、ガンマ・レイだが、同時期発表の今作品にもそれは影響を残している。

そんな素晴らしいSFストーリーを軸にしてこのアルバムは展開するが、まどろっこしいところはなく、非常に正統派よりのヘヴィメタルサウンドで落ち着いている。随所にSF的な宇宙的なイメージを伴うメロディは登場するのだが、大仰ということはない。ピートがヴォーカルをとっているが、男らしい熱い歌声でこういうヘヴィメタルにはマッチしているだろう。
しかし、冒頭の未来的で雄大なメロディに期待感を増大させることは確実であるが、続く#2、#3、#4と楽曲のテンションは急速に落ちる。冒頭が素晴らしいだけに、全体としてのまとまりの無さが浮き彫りになったアルバムだ。

メンバーがジャーマン界の重鎮ということもあり、完成度は保証できるが、魂の高揚感はそれほど望めないアルバムである。バンドのスタイルは正統派ファンとして高評できるのでお勧めしたいが、本作を入門編に選出するのは不適切である。



1. Arrival
雄大なギターワークが徐々に盛り上げていく、ドラマティックなイントロダクションの傑作だ。
2. Atlantis Falling
ヘヴィメタリックなリフが炸裂する、アイアン・セイヴィアーのスタイルを披露するにふさわしい曲。
3. Brave New World
4. Iron Savior
5. Riding on Fire
6. Break It Up
7. Assailant
8. Children of the Wasteland
9. Protect the Law
10. Watcher in the Sky
11. For the World
12. This Flight Tonight


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Hastings 1066
本日の教科書:THY MAJESTIE 「Hastings 1066」(2002) All Concept
学ぶ歴史:「ヘイスティングスの戦い」

イタリアのザイ・マジェスティの2ndアルバム、「Hastings 1066」はエピックメタルの歴史的名盤だろう。
この奇跡的な完成度を持つアルバムは、中世イングランドで実際に起こった歴史における伝説「ヘイスティングスの戦い」を描いた一大叙事詩である。このアルバムに習い、「ヘイスティングスの戦い」を紐解いてみよう。


これは中世の剣と楯の時代の物語である:


説的な「ヘイスティングスの戦い」は、中英雄時代の本格的な幕開けであった。1066年イングランドのヘイスティングスのバトルの丘での戦いは叙事詩的に残されている。デンマークの強大なる大王クヌートの死後、イングランドでは強力な諸侯らが群雄割拠し混沌としていた。そんな中、ゴッドウィンの息子ハロルドが諸侯らに擁立されて王位に就きハロルド2世となった。かくして、物語は幕開ける。フランス北部のノルマンディーでは、より古い暗黒の時代に北欧からやってきたヴァイキングの末裔らが強大な国家を打ち立てて久しかった。この地でヴァイキングの末裔らは勇猛果敢な武勇譚と鋭い鋼鉄の刃を未だ有していた。これら北欧の先祖より受け継いだ国家を一層強大とした者がいた。かの者は勇士ギヨームといった。ギヨームは豪胆なるヴァイキングの王ロロの末裔であった。エドワードからイギリス王位の継承を約束された、とギヨームは言い放った。戦いの信託が訪れ、ギヨームは兵を集い始めた。やがてギヨームのもとには、勇猛果敢なノルマン騎士らおよそ6000人が集まった。皆、英国の歴史に新たな風を吹き込むという偉業に賛同し、北欧の戦士特有の気高い勇気を奮い立たせていたのであった。来るべき1066年、ギヨームの率いる大軍はイングランド南部のヘイスティングスに上陸した。かつてヴァイキングの勇士らが諸王国をロングシップで襲撃したように、軍隊の戦船はバルト海の荒波の如く湾に押し寄せた。重厚な甲冑とカイトの盾で武装した荘厳な軍隊の闊歩する喧騒が、戦いの原野を突き抜けバトルの丘にまで轟いた。対立するイングランド王ハロルド2世は、およそ7000人もの強力な勇士らを率いてギヨームとその軍勢を迎え撃つこととなった。ハロルドは既に直前の戦いで、イングランドに侵攻したノルウェー王ハーラル3世をスタンフォード・ブリッジの戦いで破っていた。かの王は自らの即位に反旗を翻し、ハーラルに味方した弟トスティ・ゴドウィンソン諸共惨殺したのであった。かくも勝利を収めたハロルドの軍勢はバトルの丘に続き、これを察し同じくバトルの丘に集結したギヨームの軍勢と遂に直面した。かくして中世史に残る、伝説的ともいえる戦いが起こることとなったのである...

高いバイユーのタペストリーには、この伝説の結末が描かれた。絵には、目を矢で貫かれるハロルド2世が描かれた。この戦いでハロルド2世は死に、ギヨームの軍勢は勝利を収めた。そして、新しいイングランドの王が誕生した。歴史的に初めて、ノルマン人がイングランド王に即位した。これはあまりにも偉大なことであった。北の凍てつくフィヨルドの中で生まれ育ち、戦いに明け暮れたヴァイキングの末裔が、終ぞ一国の王となった伝説──これらは事実として記される。以後、ギヨームは新たにウィリアム一世と名乗り、正式に王冠を授かった。ここに、ノルマン人の時代、ノルマン朝が始まったのである。それは遂に、300年に渡り続いてきたヴァイキングの時代が終わりを告げ、中世の勇士らが活躍し、幾多の叙事詩を残すこととなる、中世英雄時代の真の始まりでもあった。最後に、この英雄伝説はノルマン人による征服「ノルマンコンクエスト」として、永遠に中世の史実の中で語り継がれることとなったのである。


*  *  *


この戦いを実際に見た者はもはやいないが、あまりにもすさまじい剣と楯の戦いだったのだろう。アルバムからもその激しさ、荘厳さ、勇ましさがまじまじと伝わってくる(そして実際に中世の戦場に入るような錯覚さえ覚える)。
私はメタルを通して、偉大な物語や歴史、または神話の世界を垣間見るというのは、実に意味のあることだと思える。伝説や神話を今に伝えるエピックメタル作品はこれだけではない。次回の授業も、恐らく私の好きな中世の歴史になるだろう。それまでしっかりと予習してくるように(笑)。


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ERB

Edgar Rice Burroughs 1875-1950

エドガー・ライス・バローズ

"異世界、異次元の創造者"


「バロウズの生み出した奇想天外な冒険小説の数々は、己が子供の頃に戻ったように楽しめる。彼の最大の功績は、我々の現実とは異なる世界、"異世界"を描き提示してくれたことである」


主な経歴:
1875年にアメリカ合衆国イリノイ州シカゴで誕生する。父は南軍の少佐であり、これは後の作品にも影響を与える。25歳でエマ・ハルバートと結婚し、3児をもうけるが、その後貧困に悩まされる。貧困から脱却するために、36歳にして始めて作家活動を開始。この時の作品が『火星の月の下で(Under The Moons of Mars) 』である。大衆読物雑誌〈オール・ストーリィ〉誌の編集長トマス・ニーウェル・メトカフに認められた本編は、1912年から本誌で連載される。この作品は『火星のプリンス(Princess of Mars)』と題される。しかし最も有名なのが、第三作として発表された『類猿人ターザン(Tarzan of the Apes)』である。〈オール・ストーリィ〉に1912年に刑されるや否や好評を得た本編は、彼の生涯の代表作となる。1914年には、初の単行本としてこの『類猿人ターザン』が刊行された。彼の最大の真価は、1922年発表の〈地底世界シリーズ〉 、 〈金星シリーズ〉等の異世界の創造にあったといえる。SFやファンタジー、その原点を創ったのがこれらの作品である。つまり、スペース・オペラ、ヒロイックファンタジーの原点である(ハワードの<コナン〉、リン・カーターの〈ゾンガー〉に影響した)作品を生み出したのだ。その後は数々の離婚、結婚を繰り返し、第2次世界大戦にも参戦した。しかしそのため心臓病を悪化させ、1950年3月19日、南カリフォルニアにて生涯を終える。74歳という、作家としては長生きな人生を送った。

代表的な作品:
地球外の世界を主に描いた作品と、先史時代的な野性的な冒険小説が特徴的なバロウズ。前者は、『火星(Barsoom)シリーズ』、『ペルシダー(Pellucidar)シリーズ』、『金星(Venus)シリーズ』、『月(Moon)シリーズ』等に代表され、後者はやはり『ターザン(Tarzan)シリーズ』が挙げられよう。彼には小説に対してポリシーがあり、"読者に喜ばれる物を書く"、"金にならない物は書かない"というスタンスを貫いた。また、小説は独学・自己流で書きげている。彼の生み出した数々の英雄や美女は、古典的で伝統的な人物達であり、今でも古き良き世界を味あわせてくれる。バロウズの生み出した異世界小説が、SFのサブジャンルである"スペース・オペラ"へと発展していった点においては、偉大な功績といえるだろう。

下記には、バロウズ・シリーズの代表的作品を年代と共に選出した。

『火星(Barsoom)シリーズ』
・「火星のプリンセス」 A Princess of Mars(1917)
・「火星の女神イサス」 The Gods of Mars(1918)
・「火星の大元帥カーター」The Warlord of Mars(1919)
・「火星の古代帝国」Llana of Gathol(1948) *4篇の連作中編集
『ペルシダー(Pellucidar)シリーズ』
・「地底世界ペルシダー」At the Earth's Core(1922)
・「翼竜の世界ペルシダー」Pellucidar(1923)
・「戦乱のペルシダー」Tanar of Pellucidar(1929)
・「栄光のペルシダー」Back to the Stone Age(1937)
『金星(Venus)シリーズ』
・「金星の海賊」Pirates of Venus(1934)
・「金星の死者の国」Lost on Venus(1935)
・「金星の独裁者」Carson of Venus(1939)
『月(Moon)シリーズ』
・「月の地底王国」The Moon Maid(1926)
・「.月人の地球征服」The Moon Men
『ターザン(Tarzan)シリーズ』
・「類猿人ターザン」Tarzan of the Apes(1914)
・「ターザンの復讐」The Return of Tarzan(1915)
・「ターザンとアトランティスの秘宝」Tarzan and the Jewels of Opar(1918)
・「ターザンと失われた帝国」Tarzan and the Lost Empire(1929)
・「地底世界のターザン」Tarzan at the Earth's Core(1930) *ペルシダー・シリーズ第4巻と共通
・「無敵王ターザン」Tarzan the Invincible(1931)
・「ターザンと狂人」Tarzan and the Madman(1964)

邦訳作品:
ターザン (創元SF文庫)ターザン (創元SF文庫)
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火星のプリンセス―合本版・火星シリーズ〈第1集〉 (創元SF文庫)火星のプリンセス―合本版・火星シリーズ〈第1集〉 (創元SF文庫)
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火星の幻兵団―合本版・火星シリーズ〈第2集〉 (創元SF文庫)火星の幻兵団―合本版・火星シリーズ〈第2集〉 (創元SF文庫)
(1999/10)
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火星の秘密兵器―合本版・火星シリーズ〈第3集〉 (創元SF文庫)火星の秘密兵器―合本版・火星シリーズ〈第3集〉 (創元SF文庫)
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火星の古代帝国―合本版・火星シリーズ〈第4集〉 (創元SF文庫)火星の古代帝国―合本版・火星シリーズ〈第4集〉 (創元SF文庫)
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時間に忘れられた国 (創元SF文庫)時間に忘れられた国 (創元SF文庫)
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エピックメタルに与えた影響
バロウズはあくまでスペース・オペラ、ヒロイックファンタジーの前身を描いたので、直接的な影響力は少ない。雰囲気を指せば、エピックメタルの宇宙的な楽曲や秘境冒険譚的な楽曲には彼の影響力が多少なりとも伺える。しかし、異次元、別世界を描くというバロウズの試みは、現実と異なる世界を描かんとするエピックメタルの作品群に、幾分か共通点が見いだせよう。

影響を受けた主なメタル作品:
Bal-Sagoth *All Concept

*バルサゴスは、バロウズから全アルバムに渡り影響を受けている。

The Power Cosmic
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H/P

Howard Phillips Lovecraft 1890-1937

ハワード・フィリップス・ラヴクラフト

"20世紀最高の怪奇小説家"


「ラヴクラフトは極めて知的な人間である。私が彼の作品に徐々に没頭していく度、その膨大な知識量に圧倒され、叩きのめされたのを鮮烈に覚えている。彼は希少な人間であった。殆どの人間が達しえない未知なる境地に達し、それを我々に残したのだから」


主な経歴:
1890年に、ロードアイランド州プロビデンス市、エインジェル・ストリートに生まれる。幼少に祖父のフィップル・V・フィリップスの影響を受け、彼の所有していた2000冊に上る物語や古い書物等を屋根裏で読むのが日課であった。6歳(5歳)頃から自分で物語を書くようになり、この幼少の時期に、「アラビアン・ナイト」に感銘を受け、アラブ人の詩人"アブドゥル・アルハザード"の名を思いついた。8歳になると科学に関心を持ち始め、徐々に地理学、天文学へと移行する。13歳では天文学の同人誌を発行。1904年頃からは天文学への関心を特に極め、非常に博学だった彼は、16歳の時、地元の新聞に天文学のコラムを書くようになっていた。しかし病弱のため、ブラウン大学への進学を断念し、18歳の時には小説の執筆をやめてしまった。当時の彼の生活は、隠者のようであったという。30歳、1914年4月にアマチュア文芸家の交流組織に参加。これが後の作品を創るきっかけとなる。この時であった作家達は彼にも大いに影響を及ぼしていく。また1915年には添削の作業をしている。彼は文通を好み、、ロバート・ブロック、クラーク・アシュトン・スミス、ロバート・E・ハワードら後に歴史を動かす作家達と幾度となく文章を交換した。1923年には幻想怪奇パルプ雑誌<ウィアード・テイルズ>に『ダゴン(Dagon)』が初掲載され、以後は<ウィアード・テイルズ>誌の常連となっていった。その後も自らの見た夢を題材にした『夢の国(Dreamland)』等作品を書き上げたが、これらが公に受け入れられることはなかった。1924年にはソーニャ・H・グリーンと結婚し、ニューヨークへ引っ越す。しかし1926年には離婚を経験し、故郷のプロビデンスへと戻る。彼は終始、この故郷プロビデンスを愛し続けた。1937年3月15日、*腸癌により病死。46歳にてその生涯を終えた。後に彼の友人、作家オーガスト・ダーレスはラヴクラフトの小説を系列化し"クトゥルー神話"と命名して発表し、ラヴクラフトの存在を明るみに知らしめた。そしてダーレスが1939年に創立した出版社「アーカム・ハウス」より出版されたラヴクラフトの小説群は、大いに絶賛されたのである。彼が公平な評価を受けたのは皮肉にも、死後のことであったのだ。(生前の単行本は『インスマウスの影(The Shadow Over Innsmouth)』の一作のみが発表された)墓碑が作られなかった彼の墓所は、1977年、多くのファンが集めあった資金で墓石が購入され、彼の故郷プロビデンスに「われはプロビデンスなり」という言葉が刻まれ、共に埋められた。これが本当の意味での、H・P・ラヴクラフトの永眠だったのかもしれない。最も、彼の残した宇宙的な恐怖は、今なお惑星的規模で拡大し、我々を戦慄と迫真の奈落に日々招き続けているのである。

*彼の病気には謎が多く、何故か体温が異様に低かったという。もちろんこれは、彼の物語によく登場する人物の最期に頻繁に起こる"邪神の知識を公にさらしたため死を迎えた"、"人間が知ってはならない知識を得てしまったために死を迎えた"結末とは無縁であることを祈りたい。しかし詳細は未だ謎である。

代表的な作品:
彼の作品は大きく2つにわかれている。ダンセイニ卿やエドガー・アラン・ポーに影響を受けた作品を残す初期、宇宙的恐怖や彼自身が見た「夢の国」を舞台とする後期に主に分けられる。作品の特徴は、潜在意識にある恐怖を描き出すという、一種の怪奇小説に近く、それを最大の魅力としている。代表的な作品としては、後にクトゥルー神話の基となった『クトゥルフの呼び声(The Call of Cthulhu )』、『インスマウスの影(The Shadow Over Innsmouth)』、彼の宇宙観を究極の域にまで高めた傑作『時間からの影(The Shadow Out of Time)』、謎の都市を驚異的な迫真性で描く『無名都市(The Nameless City)』、人間が夢の中で訪れる未知の世界「夢の国(Dreamland)」を舞台とした一連の作品群『セレファイス(Celephais)』、『未知なるカダスを夢に求めて(The Dream-Quest of Unknown Kadath)』、『銀の鍵の門を越えて(Through the Gates of the Silver Key)』等がある。まさにおびただしい数の名作が、生前残されていたといっていいだろう。それが再評価されたのは、然るべき処遇である。

下記には、ラブクラフトの代表的作品を年代と共に選出しておいた。

『代表的作品』
・「インスマウスの影」The Shadow Over Innsmouth(1936)
・「クトゥルフの呼び声」 The Call of Cthulhu(1928)
・「ダゴン」 Dagon The Vagrant (1919) *(1923)
・「無名都市」 The Nameless City (1921) *(1938)
・「アウトサイダー」 The Outsider (1926)
・「時間からの影」 The Shadow Out of Time (1936)
・「狂気の山脈にて」 At the Mountains of Madness (1936)
・「ダニッチの怪」 The Dunwich Horror (1929)
『夢の国(Dreamland)作品群』
・「ウルタールの猫」 The Cats of Ulthar (1920)
・「蕃神」 The Other Gods 1933 (1938)
・「セレファイス」 Celephais 1922 (1939)
・「銀の鍵の門を越えて」 Through the Gates of the Silver Key (1934)
・「未知なるカダスを夢に求めて」 The Dream-Quest of Unknown Kadath (1948)
・「イラノンの探求」 The Quest of Iranon (1935)

*は『Weird Tales』誌での掲載年。

邦訳作品:
ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))ラヴクラフト全集 (1) (創元推理文庫 (523‐1))
(1974/12)
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ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2))ラヴクラフト全集 (2) (創元推理文庫 (523‐2))
(1976/08/20)
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ラヴクラフト全集 (3) (創元推理文庫 (523‐3))ラヴクラフト全集 (3) (創元推理文庫 (523‐3))
(1984/01)
H・P・ラヴクラフト
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ラヴクラフト全集 (4) (創元推理文庫 (523‐4))ラヴクラフト全集 (4) (創元推理文庫 (523‐4))
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新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈1〉新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈1〉
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新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈2〉新編 真ク・リトル・リトル神話大系〈2〉
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クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)クトゥルー〈1〉 (暗黒神話大系シリーズ)
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H.P. ラヴクラフト

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エピックメタルに与えた影響:
エピックメタルよりは、暗黒界のヘヴィメタルに与えた影響の方が図られるが、それでもラヴクラフトの宇宙観、知的探求性はエピックメタルに多大な影響を与えたかと思われる。現に、怪奇的なコンセプトを根差すエピック系アルバムの根底には彼の存在がある。より壮大でオカルティックな世界観を求める際、ラヴクラフトの幻想怪奇小説を題材に取るケースは多い(あのメタリカでさえ、ラヴクラフトから影響を受けた楽曲を残している)。または、神秘性への探求を表現する際、といってもよいだろう。ヘヴィメタル全般におけるSF、ホラー、ファンタジィとの関連性は昔から指摘され続けている。そのジャンルの創造者の一人でもあるラヴクラフトが、エピックメタル世界への貢献に果たしているのは想像に難くない。

影響を受けた主なメタル作品:
Metallica 「RIDE THE LIGHTNING」(1984) "THE CALL OF KTULU"、「MASTER OF PUPPETS」(1986) "THE THING THAT SHOULD NOT BE"、Dark Moor 「Beyond The Sea」(2005) "Through the gates of the silver key" "The silver key"、Nile 「ANNIHILATION OF THE WICKED」(2005) "VON UNAUSSPRECHLICHEN KULTEN"、 「Black Seeds Of Vengeance」(2000) "The Nameless City Of The Accursed"、Rage 「TRAPPED! 」(1992) "Beyond the Wall of Sleep"、「THE MISSING LINK」 (1993) "Lost In The Ice" "The Missing Link" "Wake Me When I'm Dead"、「BLACK IN MIND」(1995) "The Crawling Chaos" "Shadow Out Of Time" "In A Nameless Time"、「SOUNDCHASER」(2003) *All Concept、Mercyful Fate 「Time」(1994) "THE MAD ARAB"、「Into The Unknown」(1996) "KUTULU [THE MAD ARAB PART TWO]"、Vader 「THE ULTIMATE INCANTATION」(1993) "DARK AGE" "TESTIMONY" "BREATH OF CENTURIES"、「DE PROFUNDIS」(1995) "An Act Of Darkness" "Blood Of Kingu" "Of Moon, Blood, Dream And Me"、Bal-Sagoth All Concept、メタル他 Nox Arcana 「NECRONOMICON」 All Concept

*「All Concept」と書かれたアルバムは、全ての楽曲がラヴクラフトから影響を受けた、コンセプトアルバムにあたる。バルサゴスの場合、全アルバムに影響がある。

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Robert Ervin Howard 1906-1936

ロバート・アーヴェン・ハワード

"ヒロイック・ファンタジーの生みの親"


「ハワードは、私が最も尊敬する作家である。人間の潜在意識に宿る野生を終始描き続け(これには語弊があるかもしれない)、私達が忘れていた雄大な「剣と魔法の世界」を思い出させてくれたのも、彼の作り出した物語であった。ハワードの幻想小説は、我々を常に未知なる秘境へ、剣を振るう英雄達の血生臭い世界に呼び戻してくれるのだ。それは私が最も追い求めた世界であり…やはり彼は天才だ」


主な経歴:
1906年にアメリカ、テキサス州ピースターに生まれる。幼いころから読書家であり、9歳(10歳)の時、北欧の英雄叙事詩ベオウルフを題材とした小説を始めて書いた。既にこの頃から北欧の神話・英雄譚に興味を持っていた。15歳の時、地元で出会った冒険小説総合パルプ誌<アドヴェンチャー>に魅了され、本誌に投稿する意味も兼ねて、本格的に創作を始める。1923年、17歳の時には、ひ弱な体を変えるためにボクシング、乗馬、ボディビルに打ち込み、その結果強靭な肉体を得たといわれている。しかし、実際ハワードは鍛える以前も大柄で決してひ弱ではなかった。当時の彼のあだ名は"二丁拳銃のボブ"である。またこの年、幻想怪奇パルプ雑誌<ウィアード・テイルズ>が創刊された。1925年、ハワードが19歳の時は、<ウィアード・テイルズ>に『Spear and Fang』が始めて採用される。その後は、徐々に同誌の代名詞的な作家として才能を開花させ、1928年には<ソロモン・ケイン>第一作となる『赤き影(Red Shadows)』を発表。これを皮切りに、〈キング・カル〉、〈ブラン・マク・モーン〉とハワードは次々に英雄を生み出していった。そして、1932年に第一作『不死鳥の剣(The Phoenix on the Sword)』が発表された<コナン>は、彼の英雄像の集大成であり、またたく間に人気を得ることとなる。このキンメリア出身の野蛮人の織りなす英雄譚は、ヒロイックファンタジーというジャンルを決定的なものとした。後に「剣と魔法(Sword and Sorcery)」と呼ばれるサブジャンルの原型である。コナンは、完結編全21篇が<ウィアード・テイルズ>に発表された。彼は1936年に30歳でピストル自殺し生涯に幕を閉じる寸前まで、この執筆活動を続けた。発表した作品は数知れず、主に幻想怪奇小説・秘境冒険譚(これらは剣と魔法の融合と呼ばれる)、後年はウェスタンやSF、ミステリー小説まで執筆した。ハワードは歴史や考古学に対する知識が深く、有史以前の古代や秘境を舞台にしたり、時には自ら架空史を生みだした。最後は、母親の病死する姿に苦しみ、*タイプライターにアーネスト・ダウソンの詞を打ちこみ、自宅の車の中で死を迎えたのである。ハワードの生前の生きざまは、2年間彼と恋人だったノーヴェリン・プライス・エリスとの恋愛ドラマを描く1996年に発表された映画「草の上の月(the whole wide world)」に見ることができる。

*これには、彼自ら打ち込んだのではなく、持ち歩いていたヴィオラ・ガーヴィンの"house of caesar"からの引用句が「財布の中に発見された」という事実が残っている。よって、「タイプライターにアーネスト・ダウソンの詞を打ち込んだ」という定説は間違いであることが発覚している。

代表的な作品:
ハワードの代表的な作品はもちろん、彼が生み出したともいえるヒロイックファンタジー小説に見られる。彼の小説に登場する、華々しくも野蛮な英雄達の活躍する冒険譚が、ハワード作品の主な世界観である。また、他にも歴史小説、SF、ハードボイルド、ウェスタン等にも才能を発揮しているが、やはりヒロイックファンタジーが最もお勧めできる。彼が生前に残した400編の内、傑作と呼べるものは幾つあるだろう。悲しいことに、その殆どが我々の知ることなく、パルプ誌の使い捨てによって失われてしまっている。しかしそれでも、ハワードの残した作品は素晴らしいし、価値ある知識と感動を与えてくれる。彼が生涯作品のテーマとしたのは、「文明の勃興と滅亡」であった。いくら時代が変化しようとも、素晴らしいものは何れ滅び、また新しいものが始まっていく。このテーマには永遠性がある。人類の普遍的なパターンである。そして、エピックメタルを追い詰めた窮極的な背景にも、このテーマは潜んでいる。ハワードは幼少期を過ごしたクロス・プレインズでの経験から、この概念を賢く学びとったのだ。そんな彼の代表的な作品は、ヒロイックファンタジー史上で最大の英雄譚『コナン(Conan)シリーズ』、〈コナン〉の前哨にあたるアトランティス人カルの戦いを描く『キング・カル(King Kull)』、16世紀のイギリス人清教徒の冒険を描く『ソロモン・ケイン(Solomon Kane)』、ピクト人の王を主人公とした『ブラン・マク・モーン(Bran Mak Morn)』、コナンと同時代の女戦士を描く『レッド・ソニア(Red Sonja)』等のヒロイックファンタジー作品、更にはバロウズからの影響を受けるSF大作『魔境惑星アルムリック(ALMURIC)』、クトゥルー神話作品である傑作『黒の碑(The Black Stone)』等凄まじい数に上る。これらのハワードの作品には共通点がある。それは血湧き肉踊り、興奮するということだ。自然体で本能自体の興奮の世界、またはそうさせるヒーローがハワードの物語におり、そこには理屈などいらなぬ明快な人間本来の脅威が待っている。本当に、彼の作品は現代の有機的な世界を嘲笑っているかのように、堂々と威厳を放っているのである。

下記には、ハワード・シリーズの代表的作品を年代と共に選出した。

『コナン(Conan)』
・「不死鳥の剣」 The Phoenix on the Sword(1932)
・「巨象の塔」 The Tower of the Elephant(1933)
・「黒海湾の女王」 Queen of the Black Coast(1934)
・「魔女誕生」 A Witch Shall Be Born(1934)
・「黒い予言者」 The People of the Black Circle(1934)
・「黒河を越えて」 Beyond the Black River(1935)
・「トムバルクの太鼓」 Drums of Tombalku(1966) *ハワードの見完成品にディ・キャンプが補完し完結させた。
『キング・カル(King Kull)』
・「影の王国」 The Shadow Kingdom(1929)
・「ツザン・トゥーンの鏡」 The Mirrors of Tuzun Thune(1929)
『ソロモン・ケイン(Solomon Kane)』
・「赤き影」 Red Shadows(1928)
・「死霊の丘」 Hills of the Dead(1930)
『ブラン・マク・モーン(Bran Mak Morn)』
・「大地の妖蛆」 Worms of the Earth(1930) *クトゥルー神話作品群とのリンク作品
・「闇の帝王」 Kings of the Night(1932) *キング・カルとの共演作
『クトゥルー(Cthulhu)神話作品群』
・「黒の碑」 The Black Stone(1931)
・「アシュールバニパル王の火石」 The Fire of Asshurbanipal(1936)
・「妖蛆の谷」 The Valley of the Worm(19??)
・「闇の種族」 People of the Dark(1932)

邦訳作品:
黒い海岸の女王<新訂版コナン全集1> (創元推理文庫)黒い海岸の女王<新訂版コナン全集1> (創元推理文庫)
(2006/10/24)
ロバート・E・ハワード
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魔女誕生 新訂版コナン全集2 (創元推理文庫)魔女誕生 新訂版コナン全集2 (創元推理文庫)
(2006/12/09)
ロバート・E・ハワード
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黒い予言者―新訂版コナン全集〈3〉 (創元推理文庫)黒い予言者―新訂版コナン全集〈3〉 (創元推理文庫)
(2007/03)
ロバート・E. ハワード
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黒河を越えて―新訂版コナン全集〈4〉 (創元推理文庫)黒河を越えて―新訂版コナン全集〈4〉 (創元推理文庫)
(2007/07)
ロバート・E. ハワード
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真紅の城砦―新訂版コナン全集〈5〉 (創元推理文庫)真紅の城砦―新訂版コナン全集〈5〉 (創元推理文庫)
(2009/03/31)
ロバート・E. ハワード
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黒の碑(いしぶみ)―クトゥルー神話譚 (創元推理文庫)黒の碑(いしぶみ)―クトゥルー神話譚 (創元推理文庫)
(1991/12)
ロバート・E. ハワード

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エピックメタルに与えた影響:
〈コナン〉等に表現された、古代の幻想的で剛直な世界観は、エピックメタルの音楽性に多大な影響を与えたとされる。メタルの圧倒的なパワー、高潔なヒロイズム、大仰さ、戦士の如きドラマ性、ロマンティシズム、そしてこれらを秘めた雄大なメロディ。これらはハワードの描いた古代の世界観に瓜二つであり、これこそがエピックメタルの基礎を構築しているものである。要は、マノウォーやドミネ、バルサゴス等に代表される、ヒロイックでファンタジックなサウンドのことである。また、バルサゴスのバイロン・ロバーツは、ハワードを最も影響を受けた作家として公言している。最もこれは、音楽性や精神性の根底にあるものであり、ハワードに間接的に影響を受けたといったほうが適切である。ハワードから派生した作品群が、エピックメタル世界に多大な影響を与えたのは確かで、彼の存在なくしてはエピックメタルは存在し得なかったといえよう。つまり、ハワードが幻想怪奇と英雄冒険譚を合わせ誕生した、"ヒロイックファンタジー"の世界観そのものが、先述したエピックメタルの基盤なのである。"ヒロイック・ファンタジー"、またの名を「剣と魔法(Sword and Sorcery)」というこれらの物語には、何れ詳しく触れることとする。また、ソングライティングの面でも、ハワードの用いた極めて天才的な中世の戦いの再現描写等に、影響を受けたと思われる歌詞の内容を持つエピックメタル作品は多い。

影響を受けた主なメタル作品:
Bal-Sagoth *All Concept、DOMINE 「Emperor of the Black Runes」(2004) "The Aquilonia Suite - part I"、manowar 「Into Glory Ride」(1983) "Secret Of Steel"、Einherjer 「Far Far North」(1997) "Naar Hammeren Heves"、Majesty 「Sword and Sorcery」(2002) " Sword and Sorcery"

*バルサゴスの場合、全アルバムに影響がある。最も顕著なのは、1st「A Black Moon Broods Over Lemuria」に収録の"Into The Silent Chambers Of The Sapphirean Throne"。本曲には<キング・カル>「影の王国」に登場する"Ka nama kaa lajerama(カ ナマ カァ ラジェラマ) "、<コナン>「月下の影」に登場する"Yagkoolan yok tha xuthalla(ヤグコーラン・ヨク・ター・フタルラ) "の呪文がそのまま用いられている。

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ここでは、コスマン・ブラッドリー博士の貴重な資料を公開すると共に、エピックメタルの様々な専門用語を解説していく。

主に作家など、エピックメタルにおいて重要な要素を不定期で更新していく。最終的な目標は、エピックメタルならず、全てのジャンルの難解な用語を分かりやすく解説することである。私たちは普段、音楽を私達は聴くのみに留まり、気分転換の域に押しとどめている。例えどんなアルバムでさえ制作の苦労、生涯を経て世に送り出されている。ヘヴィメタルの場合は、極めて苦労等の障害が多い。もちろん気分転換に聴くのは基本中の基本だが、少しでもそうした作品達への理解を深めて見てほしい。そのきかっけとなるのが、専門用語である。一部でしか用いられない、多くの人たちが知らない単語を知っているだけで、メタルへの洞察力は深まる。メタルへの興味を知識に変えられるきっかけを作る、それが用語解説欄を設けた理由である。資料や紹介を通して、その知識を深めてもらえれば、私としては十分である。>>用語集へ...
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Column the Column

volume 2. 27 March: 2010


 ヘヴィメタルという特異なジャンルの中には、専門的な用語が溢れている。音楽的な用語から、バンド名、更にはコンセプトの題材までと、それらを完全に理解するのは難しい。通りでメタルファンにはマニアが多いわけだ。
 エピックメタルに限ってみれば、一体どれほど専門的になってくるのだろう。考えるだけでも頭が痛くなってくる。そんな疑問を解決し、明日に備えるために、私はコスマン博士の元へ救援を依頼した。やはり氏は、興味深いことを数多く語ってくれた。


──ヘヴィメタル界には、専門的な用語が溢れていますよね。
コスマン:最もな意見だ。
──何故そのような用語が溢れているのでしょうか?
コスマン:他の音楽ジャンルとの差別化を図るため、と思えなくもないが、実際にはメタルの溝が深いためだろう。様々な音楽と比較してみても、特にヘヴィメタルのジャンルの細分化は凄まじい。スラッシュメタルにデスメタル、メロディックパワーメタル、シンフォニックメタル、更にはニューメタルにドゥームメタル、今挙げても非常に多い。そのジャンルごとに専門的な要素が入ってくるのだから、それを説明するため用語が膨大するのは必然的だ。
──また分からない用語が出てきましたね(笑)。ニューメタルとはなんですか?
コスマン:ニューメタル(NU METAL)とは、オルタナティブ・ロックにピップホップ等の要素を盛り込んだメタルのことだ。グルーヴィなサウンドを主な特徴としている。要はより明白なヘヴィメタルのスタイル、商業的にも成功しやすい点において、まさに新しいメタルといえるジャンルである。アメリカで一部盛り上がりを見せているが、それはメタルコアの影響もあろう。スリップノット、といえば分かりやすいだろう。
──そうですか、ありがとうございます。博士はエピック以外にも通じているとか。
コスマン:私が最も追求しているのはもちろんエピックメタルだが、それ以前にもメタルはたくさん聴いているし、なによりメタルのファンだ。好きなものなら自ずと知識は見につく。しかし、詳しい部分まで理解し、話せるものは限られている、とだけ言っておこう。
──分かりました。では本題です。エピックメタルについて、まず重要な用語はなんでしょう?
コスマン:エピックメタルへと足を踏み入れる場合、最低限でも"エピック"の意味を知っておかなければならない。これは依然何処かの紹介レビューで書いたのだが、エピックとは"叙事詩"という意味だ。物語、歴史、伝承、神話そのものが叙事詩といえよう。また叙事詩には"記述する"という意味もあるため、エピックメタルとは"物語を描くヘヴィメタル"という解釈をしてもいいだろう。
──"物語を描くヘヴィメタル"とすると、エピックメタルらしいイメージが湧きますね。よく使用される"エピカル"という言葉も同じなんでしょうか?
コスマン:意味の根底は似通っている。しかし"エピカル"だと"叙事詩的"ということになるので、完全な叙事詩ではない。これは表現としての比喩のようなものだ。
──エピックメタルには他にも様々な用語が溢れていますよね。例えば、"大仰"や"ヒロイック"、"コンセプチュアル"だとか。
コスマン:確かにレビューの際、私もこれらの単語を多用している。"大仰"という言葉は、例を挙げるならばマノウォーが適切だろう。彼らのサウンドは非常に大仰である。そのサウンドから感じ取るのが早いと思うが、言い方を変えれば大げさ、格調高く言えば誇大となろう。エピックメタルには必要不可欠な要素だ。そして次の"ヒロイック"という言葉も、エピックメタルには欠かすことはできない用語である。本来、英雄的、勇ましいさまと訳されるこの言葉は、エピックメタルを最も適切に表現しうるものとなっている。この"ヒロイック"と"ファンタジー"を掛け合わせたのが、エピック界でも重要な「ヒロイックファンタジー」である。言いかえれば"ヒロイック"は"剣"、"ファンタジー"は"魔法"ともなる。だからフリッツ・ライバーは、「ヒロイックファンタジー(Heroic fantasy)」を「剣と魔法(Sword and Sorcery)」と命名したのだ。
──このように繋がっているんですね。残りの"コンセプチュアル"も解説お願いします。
コスマン:"コンセプチュアル"の基は、"コンセプト"であることは君も分かるだろう。コンセプトはよく、「コンセプトアルバム」等で用いられる。"コンセプト"は、ものの概念のことであるから、、「コンセプトアルバム」は概念を持ったアルバムとなる。あるいは、"作品のテーマ"とでもいったほうが分かりやすいのかもしれない。美術でよくいう「コンセプチュアル・アート」のことだ。だから"コンセプチュアル"という言葉が用いられた時、テーマのある作品と思っておけばよい。
──どの用語にも深い意味がありますね。日常で用いられ難いものが、エピックメタル界ではよく用いられる傾向にあるように思います。その辺はどうでしょう?
コスマン:私もそのように思う。例えば我々の世界に溢れている、"セックス"や"金"、ポピュラリティとは無縁の、意味深なイメージを抱かせる言葉が多い。剣、戦士、国家、文明、地球、宇宙、古代、中世、未来。実に神秘的だ。しかしそのような言葉が用いられるのは、当然のことである。なぜなら描く世界が違うからだ。
──確かにこれまでの話を思い出してみると、エピックメタルでは、極めて現実とは離れた世界を描いているものが多いです。それが直接影響を与えている、ということなのでしょうか?
コスマン:いうまでもない。
──分かりました。先ほど博士は、フリッツ・ライバーという作家の名前を挙げましたが、エピックメタルではよく作家の名前が用いられますよね?何故なんでしょう?
コスマン:これは先ほどいったコンセプトの概念に通じている。SFやファンタジィ、ホラーに影響を受けているエピック作品の場合、その基となった物語が必ず存在している。そして、それらを創ったのは過去の偉大な作家達、SF、ファンタジィの巨匠達である。作品を説明する際、作家を知っていると知らないでは大きく内容が変わるだろう。作家の名前は、自らのエピックメタルアルバムの方向性を決定づける、重要な要素なのだ。もちろん過去の作家達の名前を挙げるエピックメタルバンドのメンバー達は、その作家のファンであることが多い。それが前提であろう。エピックメタルで良く名前の挙がる作家達は、主にヒロイックファンタジー系、幻想怪奇小説系に最もな傾向を示している。ちょうどバルサゴスのバイロン・ロバーツが尊敬する作家達を見てみよう。ロバート・E・ハワード、エドガー・ライス・バローズ、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト、何れもこのジャンルには欠かせない大御所ばかりである。これらの作家達から得た貴重で神秘的な知識を基にして、エピックメタル世界は支えられているのである。
──その他にも、沢山の作家たちがエピックメタル、強いて言えばヘヴィメタル全般に影響を与えているのは確かなようです。これは、音楽界でも稀な傾向ではないでしょうか?
コスマン:その通りといえよう。知的でシリアスな世界観が、ヘヴィメタル全体の総じて魅力なのだ。その傾向を更に深めたのがエピックメタルに他ならないが、例えば世界的なヘヴィメタルバンドであるメタリカ、アイアン・メイデン、ガンマレイですら作家達には影響されている。これは興味深い事実といえよう。ここで影響を与えた作家達を全て紹介するには尺が足りないが、その背景だけでも知っていれば十分なメタル理解へと繋がるだろう。
──ありがとうございます。本日は貴重な意見を聞かせてもらいました。
コスマン:いやとんでもない。私としても興味深いインタビューだったよ。後、先ほどの作家についての件だが、詳細に調べ上げた資料があるので、提出しておこう。
──はい。受け取っておきます。この資料説明は別枠で設けておきますね。何なら何までお世話になります。
コスマン:私はエピックメタルの世界を皆に理解していることを願っている。今回語ったのはごく一部にすぎない。是非また私の意見が求められる時を待とう。それまでには、私も更なるエピック作品を見出していることを祈りながら。では本日は失礼する。


*  *  *


 コスマン博士が、最後に紳士的にしてくれた礼が強く印象に残った。しかし博士の語った内容の方が、もっと強く印象に残る結果となってしまった。
 私は、貴重な経験をさせてもらっていると最近になって感じる。以前までは深く知ることもなかったエピックメタルだが、徐々にその魅力にとりつかれている。こんなことを書いている自分が不思議である。
 そして私の元には、博士から手渡された作家達の資料がある。一通り見渡すだけでも、非常に興味深いことが書いてあることが分かる。問題は、この貴重な資料を私がうまくまとめられるか、ということである。ここからが、ライターしての私の腕の見せ所だ。>>Next...


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Somewhere Far Beyond



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 1992
Reviews: 92%
Genre: Epic Power Metal


ドイツのエピック/メロディックパワーメタルの筆頭、ブラインド・ガーディアンの1992年発表の4th。

本作『Somewhere Far Beyond』はブラインド・ガーディアンらしいドラマティックかつファンタジックな世界観を確立させた名作である。前作『Tales From The Twilight World』(1990)を軽く凌駕する内容を持ち、楽曲は更なる進化を遂げている。日本盤の帯に書かれた「前作を見事に踏襲」という言葉は実に適切な表現であろう。
新しい要素として、冒頭から美しく響くスパニッシュギターに代表されるように、本作では中世音楽を取り入れている。いよいよブラインド・ガーディアンの幻想物語を描く手法が本格化してきた。ヘヴィメタル・パートの破壊的なリフとケルトメロディの美旋律が入り乱れる手法は、従来よりも遥かに説得力を増している。特に今回はアンドレ・オルブッチ(g)のギターソロが作曲されたパートが多く、各楽曲でのソロは非常に洗練されたものとなっている。また楽曲の展開力においても圧倒的であり、劇的なテンポ・チェンジを要所で多用している。これらの要素は、まさにブラインド・ガーディアンのファンタジーメタルが完成したことを強烈に物語っている。総じて本作は非常に高度なエピックメタル作品である。

また本作は、物語的なコンセプト・アルバムであるという。本作では様々な吟遊詩人──本作で彼らは「Bard(バード)」という呼び名で呼ばれる。バードとは、ケルト人達が呼んだ吟遊詩人の名を指す──が幾多の次元より集まり、その世界での出来事を歌にして語る。アンドレアス・マーシャルの幻想的なアルバムジャケットは、まさにその吟遊詩人たちによる集会の様を描いたものである。これはまるで不思議な話で、紡がれる物語は至高の絵画となって劇的なヘヴィメタルとして具現化している。故に本作に徹底的に表現されたブラインド・ガーディアンの幻想世界が、聴き手に様々な光景を見せることは必至である。エピカルでストーリーテリングな傑作が『Somewhere Far Beyond』なのである。なお本作は、初期の頃からブラインド・ガーディアンの音楽性と世界観に影響を与えているJ・R・R・トールキンの『指輪物語』やマイケル・ムアコックの『永遠の戦士』等のファンタジー小説の愛好家たちにも訴える要素を持っている。

追記:本作は過去何度も再販され、リマスター再販盤が2002年と2007年に発売されている。なおそれぞれ収録のボーナス・トラックは異なっており、2007年のリマスター再販盤には#14"Ashes to Ashes (Demo Version)"、#15"Time What is Time (Demo Version)"が新たに収録された。



1. Time What Is Time
静寂の中に聞こえる美しいスパニッシュギターの音色。そこからの大仰な展開は劇的極まりない。オープニングを飾るに相応しい名曲だ。物語は映画『BLADE RUNNER』の世界観に基づいた未来を舞台としている。
2. Journey Through the Dark
時空を超えて旅するバードについての楽曲。このバードは人に乗り移ることが出来る力を持っている。非常にスピーディでスリリングな名曲である。本作の楽曲を聴けば"シリアスなファンタジー・メタル"が決してくだらないものばかりではないことが分かる。
3. Black Chamber
怪物に取りつかれ死を迎える男の物語に、クラシカルなピアノが悲壮感を添える短い楽曲。
4. Theatre of Pain
ケルティックなメロディが幻想的なミドルチューン。未来から来た吟遊詩人が環境問題の恐ろしさについて語り、荒廃した未来世界の現状を嘆く。
5. Quest for Tanelorn
カイ・ハンセンの協力のもと制作され、マイケル・ムアコック『永遠の戦士』に登場する永遠の都《タネローン》 を舞台にした強力な楽曲である。歌っている詩人は、チャンピオンの相棒であるという。恐らく、英雄の介添人(共に戦う宿命を持つ戦士)を意識して書かれた楽曲の可能性もある。劇的なハーモニーを持つソロパートを披露する楽曲であり、また聖歌隊のような壮大なコーラスも素晴らしい。
6. Ashes to Ashes
中世を想起させるメロディを持つ楽曲。サビのメロディは特にそうであろう。
7. Bard's SongⅠ- In the Forest Ⅱ- The Hobbit
二曲からなる組曲。前半「In the Forest」は年老いたバードの物語る話であり、後半「The Hobbit」は『ホビットの冒険』を題材とした物語である。「In the Forest」は中世ドラッドの影響を顕著に受けた、ブラインド・ガーディアン史屈指の名曲である。「The Hobbit」はドラマティックなメロディックチューンだ。
8. Piper's Calling
スコティッシュ・バグパイプによるインストゥルメンタル。
9. Somewhere Far Beyond
スティーヴン・キングの小説『ダークタワー』にインスパイアを受けた長尺の楽曲。主人公のローランドが、《暗黒の塔》の謎を握る《黒衣の男》を捕らえようと旅をする場面が描かれる。タイトルの「何処か遥か彼方」という意味深なフレーズは、アルバムの鍵を握っている。内容は本作でも最高にドラマティックなもの。
10. Spread Your Wings
ボーナス・トラック。クイーンのカヴァーである。クイーンの素晴らしさ、またはブラインドガーディアンというバンドのルーツが再確認できる。
11. Trial by Fire
ボーナス・トラック。イギリスのヘヴィメタル、サタンのカヴァー。
12. Theatre of Pain [Classic Version]
ボーナス・トラック。#4のクラシック・インストゥルメンタル・ヴァージョン。生のオーケストラではなくキーボードを用いている。そのためかファンタジック・ゲームの音楽のように聞こえる。


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 まずはこの曲を視聴してほしい。



 この「Before the Duel」はダークムーアの5th『Beyond the Sea』の1曲目に収録されている。
素晴らしい名曲だ。先日、この曲を彼らのマイスペースで視聴した時から、サビのフレーズが頭から離れなくなってしまった。こういう楽曲は、誰にでもあるかと思う。酷く印象に残る曲、である。

 しかしサビの飛翔するようなメロディ、展開のドラマ性は病みつきになる。ダークムーアというバンドは、以前から好んでいたが、5thは完全にスル―していた。実に惜しいことをしたものだと思う。巷では、微妙作といわれている5thであるが、もう一度再評価されてしかるべきである。

◆関連作品◆
ビヨンド・ザ・シー
『Beyond the Sea』(2005)は、最高品質のメロディックメタルを提供してくれる貴重な作品である。ジャケットも美しく幻想的で非常にいい。ただ最近、ダークムーアの物価が上がってきている(笑)。


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The MySpace

from 2010.9.23...

世界的なコミュニティ・サイトMySpace(マイスペース)。
現代の便利性と様々な多様性のニーズにも応えた、非常に頼もしいサイトである。

ここでは、当ブログで紹介した主なエピックメタルバンド(その他メタルバンドも)のサイトをまとめておこう。
無料で視聴可能なので、大いに利用してもらいたいところだ。


◆エピック・メタル系◆

BAL-SAGOTH
もはやお馴染みイギリスのエピック/シンフォニックブラックメタルの大家。
ミュージック・プレイヤーは、全てのアルバムから選曲されているのが嬉しい限り。
また、様々な動画がアップされており、充実度は最高といえる。

BLIND GUARDIAN
ドイツのファンタジーメタルのマスター。
大仰なエピック・パワーメタルサウンド、クワイアで現在も根強いファンを持つ。
名曲「ミラーミラー」は必聴。

CIRITH UNGOL
アメリカのカルト・エピックメタルの大御所。
既に解散しているが、大仰かつドラマティックなケイオス・メタルで一部のマニアに熱狂的に支持される。
主に1stからの選曲が多いのが残念だ。余談だが、バンドによっては数カ月ごとにプレイヤーの楽曲を変える場合もある。

DOMINE
イタリアの古豪。
ヒロイックファンタジー・メタルを標榜しており、私も絶賛している。
しかし、視聴できる楽曲のみでは、彼らの魅力は伝わりきらないだろう。

LOST HORIZON
スウェーデンのメタル・メサイア。
現在は解散。しかし彼らの残したエピックメタルは、今なおファンに称賛され続けている。

MANILLA ROAD
アメリカ出身のエピックメタルの重鎮。
今なお活動を続けるところは本当に敬意を表する。
この暗く重い世界観を受け入れられない向きは、全く受け入れられないので注意が必要だ(笑)。

MANOWAR
アメリカのエピックメタルバンド。
決して揺るぎないエピックメタルの王者だ。
そのサウンドは大仰かつヒロイック、そしてドラマティックなメタルを展開。
マイスペースの更新も定期的に行っているようで、意欲的で非常に魅力的なページになっている。

MAJESTY
ドイツのトゥルー・エピックメタル。
マノウォーを標榜する、熱く漢らしいヘヴィメタルである。
このようにマニアックなメタルバンドの大半が揃っているところも、マイスペースの魅力である。

THY MAJESTIE
イタリアのシンフォニック・エピックメタル。
歴史等を題材にした独自のエピックメタル世界は壮大。
ファンならマストだ。

SALAMANDRA
チェコのエピック・パワーメタル。
余りにも大仰な世界観は一聴の価値あり。
初期は辺境らしい田舎臭さを発散、その後は洗礼の一図を辿る。

SAUROM
スペインのフォーク・エピックメタル。
個人的に絶賛するファンタジックかつ中世的なメタルサウンドは絶品である。
近年ではブラインドガーディアン並の重厚なパワーメタルサウンドにシフトしている。
視聴できる楽曲の質は、無料にしては出来すぎている。サイトの質も同じく非常に高い。

VIRGIN STEELE
アメリカのエピックメタルの帝王。
エピックメタルと聞いて、私はまずこのバンドを挙げるだろう。

WARLORD
アメリカのカルト・エピックメタル。
もはや伝説的なエピックメタルバンドである彼らの楽曲は、非常に貴重といえるだろう。
今聴いてもクール極まりない。

WIZARD
ドイツのエピックパワーメタル。
こちらもマノウォー系のサウンドを有する熱きメタラーである。


◆メロディック・パワー・メタル系◆

GAMMA RAY
ドイツのメロディックパワーメタルの金字塔。
元ハロウィンのカイ・ハンセン(g,vo)率いるバンドであり、完成度は確か。
いうまでもなくサイトは充実。

HAMMER FALL
スゥエーデンのメロディックパワーメタル。北欧の鋼鉄神との異名を取る。
キャッチーでピュアなメタルを聴きたいときはこのバンドをお勧めしたい。
曲の再生数は、メタル界では驚異的だ。

HELLOWEEN
ドイツのメロディックパワーメタルの始祖。
メロディックでパワフルなサウンドは現在も健在。
視聴できる楽曲数は最高か。


◆パワー・メタル系◆

ICED EARTH
アメリカのパワーメタル。
ドラマティックでヨーロピアンなパワーメタルを有する彼らは、コンセプチュアルな作品も数々残す。
ここで視聴できる「1776」はメタル史上に残る名インストである。

IRON SAVIOR
ドイツのパワーメタル。
カイ・ハンセンの盟友ピート・シールク(g,vo)の作り上げた最高に漢らしいメタルサウンドが売り。

STORMWARRIOR
ドイツの爆走パワーメタル。
ヴァイキングの神話を題材にした詞世界に加え、激烈なピュア・パワーメタルを展開。
メロイック・クロス。

RUNNING WILD
ドイツのジャーマン・メタル・ゴッド。
2009年に解散したが、ロックン・ロルフ(g,vo)の作り上げた勇壮なパワーメタルは、現在も様々なバンドに受け継がれている。当サイトでは、彼らの歴代の名曲が聴ける。


◆シンフォニック・メタル系◆

DARK MOOR
スペイン、マドリード出身のシンフォニックメタル。
非常にクサいメロディと壮大なシンフォニックサウンドが特徴的で、この手のファンには通じる。
また、彼らは決してマニア向けではなく、世界的なレベルのメタルバンドでもある。

FAIRYLAND
フランスのシンフォニック・エピックメタル。
ラプソディーに匹敵するかどうかは定かではないが、非常に壮大でスペクタクルエピックなサウンドを奏でる。

RHAPSODY
イタリアのシンフォニック・エピックメタル。
イタリアの至宝である。
中世ファンタジー系スペクタクルの映画音楽のような重厚なエピック・サウンドを誇る。


◆ヴァイキング・メタル系◆

ENSIFERUM
フィンランドのヒロイックヴァイキングメタル。
勇猛果敢なそのサウンドで幾多の国家を侵略。
一撃必殺のヴァイキングチューン満載である。

EINHERJER
スウェーデンのヴァイキングメタルの古参。
現在は解散。正統派、真性サウンドが魅力。

FALKENBACH
アイスランド、ドイツの混合シンフォニック・ヴァイキングメタル。
まさに異国、ペイガンなエピックサウンドを有しており、響く者にはこの上なく響く。
国内での入手は非常に困難なので、ここで聴くのが有効であろう。

FINNTROLL
フィンランドのポルカ・ヴァイキングメタル。
民族舞踊のポルカを取り入れたサウンドは超個性的でありながら、ヴァイキングらしい勇ましさも持ち合わせる。
キーボーディストのトロールホーンは、ムーンソロウでも活動している。

MANEGARM
ヴァイキングメタルの雄。
勇壮なツインリードはミソティンに連なる。

MITHOTYN
スゥエーデン出身のヴァイキングメタルの王。
貴重な音源だけに、マニアは是非とも聴いておきたい。

MOONSORROW
フィンランド最高のシンフォニック/エピックヴァイキング。
中世時代の民謡に彩られた、壮大かつ勇ましいヴァイキングメタルサウンドは素晴らしい。
曲が長いので、コンパクトにまとめられたヴァージョンが視聴できる。それがオリジナルよりいいのだ。

TYR
フェロー諸島出身の正統派ヴァイキングメタル。
勇壮なクリーンヴォイスと重厚なクワイアが高揚感を高める、真性ヴァイキングサウンドを有する。
サイトの気合は凄まじい(笑)。
PVは傑作。

XIV DARK CENTURIES
ドイツのヒロイック・ヴァイキングメタル。
エンシフェルムに通じる勇敢なサウンドはつとに光る。


◆正統派メタル系◆

IRON MAIDEN
云わずと知れた、イギリスの世界的なメロディックメタルバンド。
メタル界で彼らを知らぬ者はいないだろう。ここに挙げるのすら蛇足に思える。


◆ブラック・メタル系◆

CRADLE OF FILTH
イギリスのシンフォニック・ブラックの重鎮。
極限までに研ぎ澄まされた芸術的ブラックは圧巻。
過去にはよくバルサゴスと比較されていたそうだ。

ENSLAVED
ノルヴェジアン・ブラックの偉大なる大家。
歴史によれば、彼らが始めてヴァイキング・メタルという言葉を用いたと伝えられている。
サウンドは真性ブラックに戦意を鼓舞する突進性が加わったもの。



Review by Cosman Bradley
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Marriage of Heaven & Hell Pt. 2



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1995
Reviews: 95%
Genre: Epic Metal



本作は、"エピックメタルの帝王"と称されるヴァージン・スティールの7thアルバムである。特筆すべきは、このジャンルの作品としては異例の国内盤が発売された経歴を持つということである。日本での発売は1996年であるが、世界的なリリースは1995年であり、よく誤解されやすい。本作が国内発売された理由は、これより語る本作の功績に秘められているといっても過言ではない。この作品は、エピックメタルの歴史書の中の最も輝かしい一ページを雄弁に物語っている。

多くのヴァージンスティールのファンは、彼らの長大な歴史の中から、本作を最高傑作に選出してきた。無論、その意見は、私にも共通している。この作品がいかにエピックメタルという分野に貢献したか、その影響力は計り知れないものである。少し昔の話をしよう。彼らは、エピックメタル史上に残る歴史的な前作『The Marriage of Heaven & Hell』の発表によって、エピックメタルという特異なジャンルを欧州全土(特にドイツの反響は異例だった)に認知させた。その光景は、恰も消失した太古の地下納骨所に、何世紀も経て人間の光が再び差し込んだかのようであった。偉業が功を奏し、ヴァージンスティールはこの分野の第一人者、即ち"エピックメタルの帝王"と徐々に畏敬の念を込めて囁かれるようになっていったのである。

しかし、彼らの才能はそれだけには留まらなかった。多くの成功者は栄光の後に歩みを止めてしまうのであるが、このディフェイという芸術家は違ったようだ。より完全なエピックメタル作品である今作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』を完成させ、彼のバンド──ヴァージンスティール──は、より堅実な欧州での絶対的な地位と人望を獲得するに至った。前作すらも軽く凌駕する内容を古代ギリシア様式の建造物の如く優雅に宿し、本作は叙事詩的な「Marriage Trilogy」の第二幕を描いていたのである。

彼らが欧州のファンの支持を獲得し実力を世界に示したことで、ここにようやくヴァージンスティールは、エピックメタル・シーンのもう一つの柱である、絶対的な王者マノウォーと双璧を成した訳である。かつて、強大な勢力を誇り、大手レコード会社ですら敬遠したマノウォーを最初に受け入れたのも、また欧州の熱烈なファンに他ならなかった。ヨーロッパのファンは、ピュアでエピカルなヘヴィメタルを熱烈に歓迎するのである。今やエピックメタル・シーンに欠かせない存在となったマノウォーやヴァージンスティールも、彼らを始めに見出したのは欧州の熱狂的なファンであり、その物差しは実に確かなものだったといえるであろう。私達も、物事の一歩先を見る視野を彼らに学ばねばならない。

以下は、本作の内容について詳しく触れていく。制作は、前作の3人のメンバーDavid Defeis(vo、key)、Edward Pursino(g、b)、Joey Ayvazian(ds)に加え、Frank Gilchriestなる人物を数曲パーカッションとしてゲストで迎えている(後に彼はヴァージンスティールの正式なメンバーに迎えられる)。このアルバムは先述したように、ヴァージンスティール史でも類を見ない一大傑作として受け取れる。本作を契機に、フロントマンであるデイビィッド・ディフェイは自らのメタルを「Barbaric and Romantic(野蛮でロマンティック)」と形容していくこととなる。ちなみに余談ではあるが、ヴァージンスティールというバンドは、ジャック・スター(g)が脱退してからはほぼディフェイのソロ・プロジェクトと化している。まさに、デイビィッド・ディフェイという天武の芸術家の才能によってこそ、バンドは起動してるといえよう。「野蛮でロマンディック」という言葉の命名は、彼らの芸術的なエピックメタルを表現するに最も適している表現といわざるを得ない。事実、本作もその雰囲気を余すことなく詰め込んでいるのだから。

前作では、サウンド面で多少音が軽い部分が見受けられたが、今作においては完全にヘヴィメタリックな正統派メタルのサウンドを披露している。ある意味、ここにヴァージンスティールの理想としたエピックメタルが完成した、といっても過言ではない。本作の充実した完成度を聴けば万人がそう感じ取るはずである。なにより、彼らの最大の魅力であり、絶対的な個性がここに発揮されたといえる一つの要素がある。それは「Barbaric and Romantic」の「Barbaric」を担う部分である。以前から彼らのヒロイックな音楽性には特筆すべき魅力があったことは疑いようがなく、かつての名曲にもそのスパイスが効いていた。これまで"The Burning Of Rome"(4th『Age of Consent』収録)、"Blood & Gasoline"(6th『The Marriage of Heaven & Hell』収録)等に連なる名曲群は、聴く者の高揚感を強烈に誘発してきた。その突出したヒロイックなムードがアルバム全編に配置されたのが、本作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. Ⅱ』に他ならないのである。私は長年ヒロイックなエピックメタルを求め続けてきたのであるが、この作品は、ヒロイック/エピック・ヘヴィメタル一つの終着点としても受け取ることができる。ヒロイックの単語の語源は、英雄崇拝を基礎としているのであるが、言葉としての意味は"英雄的"という意味であるという。つまり、ヒロイックなサウンドというのは、勇ましく崇高なサウンドを指している。ヴァージンスティールは常にそういった勇壮で力強いサウンドを誇示してきた。その根底に何があるのが、考えてみる価値は十分にあるであろう。

ディフェイ本人によるコンセプトアルバムの第二部作となる本作には、とてつもなく深いテーマが込められている。前作より更に壮大なスケールを含む詞世界(それがサウンドにも顕著に表れている)は、シリアスであると同時に我々に物語を見せているようにも受け取れる。この第二部では"精神と肉体、天国と地獄の和解"を主に歌っているらしく、その世界観は人間の脳に胎児がへその緒で繋がるという衝撃的なアルバム・アートワークに表現されている。この畏怖すら感じることになりかねないアートワークに対し、私は極めて知的なものを感じる。なぜなら、本当に神秘的な物事を表現しようとしたとき、それは狂気紛いのものになるからである。私の指摘においては、過去の偉大なる西洋芸術家達の功績が真実を語ってくれることであろう。

本作のテーマは、前作の内容よりも、物語の核心に迫っているといえよう。特に、今作から随所に導入され繰り返される重要なフレーズは、我々に何かのキーワードを訴えているように思える。前作の冒頭とラストでお披露目した神々しいマリッジのメインテーマ・メロディに加え、"A Symphony Of Steele"、"Crown Of Glory (Unscarred)"、"Prometheus The Fallen One"、"Emalaith"という究極のエピックメタル楽曲に配される意味深なフレーズ群。このアルバムは、私が思っている以上に奥が深いようだ。中でも"A Symphony Of Steele"に登場する「エンディアモン」、"Emalaith"に登場する「エマレイス」は、次のマリッジ最終作『Invictus』に登場する戦士の名である。マリッジの一連の作品は、大河のように繋がりを持っているのである。そしてその全て理解するのには大変な苦労を有する。

しかし、こういった壮大な歌詞を背景にして、シリアスなエピックメタルが展開されているという点のみ分かってさえいれば、本作はより魅力的な作品となる。別段難しく考得る必要はなく、彼らの想像するヘヴィメタルは音像のみで十分物語感じ取れる力を持っている。それがエピックメタルというものである。最も、ヴァージンティールの楽曲における表現力が著しく突出している部分が大きいことには変わりない。とりあえず「ヴァージンスティールはこれから」という向きは、まずこの作品を押さえておけば、彼らの魅力は十分すぎるほど伝わるはずである。私が言うのであれば、本作をなくしてエピックメタルを語ることはできない。是非この芸術的作品から、エピックメタルの本質を理解してもらえれば幸いである。なお本作は2008年にリマスター再販され、新たに2曲のボーナストラックが追加された。#14"Life Among The Ruins"、#15"I Wake Up Screaming"がそれに値し、どちらも貴重なライブトラックとなっている。



1. A Symphony Of Steele
神に敗北し戦死したエンディアモンの魂を戦場に再び呼び戻す、冒頭の鋼鉄のシンフォニーの再現。勇壮なる警笛を伴った劇的なイントロダクションがあまりにも魅惑的である。あらゆる展開が素晴らしく、バーバリック極まりない疾走に加味されるヒロイズムが聴き手の魂を強烈に高揚させていく。中間部でのロマンティック感溢れるパートから、空間を巡るヒロイック極まりないギターソロが奏でられた時、我々は息のできないほどの興奮に襲われることであろう。
2. Crown Of Glory (Unscarred)
アルバムの開始2曲は、まるで神のごときである。アルバムのつかみに強力な楽曲を配すバンドは数あれど、これほどまでに傑出した楽曲を持ってくるのは史上類を見ない。冒頭での究極的なまでに神秘的なピアノと歌の旋律は、永久に私の中に残るであろう。私にはかけがえのない、重大なメロディである。またサビも強烈であり、ヴァージンスティールが生み出した中で最もヒロイックなサビパートであるといえよう。更に、後半からの展開は驚異的にロマンティックである。ピアノの神秘的な絡みに始まり、そこから妖艶なるギターソロパートのハーモニーへと流れ、神々しいまでの盛り上がりを見せるクライマックスパート、及びそこへ交響曲調のキーボードが加わったサビへの展開に関しては、形容できる言葉すら見当たらない。一体どうしてここまで劇的であり、大仰であり、ヒロイックであり、ロマンティックなのであろうか。この曲を聴いていると、その答えすらどうでもよくなる。
3. From Chaos To Creation
#2に流れるように続く、荘厳な緊張感が漂うインストゥルメンタル。バーバリックでヘヴィメタリックな雰囲気が絶品である。
4. Twilight Of The Gods
リヒャルト・ワグナーも用いた『神々の黄昏』という意味深なタイトル。バーバリックなリフがエピカルにギャロップするヒロイックなエピックメタルである。疾走感の勢いはそのままに、ロマンティシズムとヒロイズムが同居するサビへの流れは完璧とすら思わせる。彼らはバーバリックでナチュラルなヘヴィメタルに、ロマンティックなメロディを加味させることに関しては天才的である。またエドワードのギターソロも大仰なまでにヒロイックなメロディを奏でており、楽曲を盛り上げる。
5. Rising Unchained
#4の荘厳な雰囲気を受け継ぐように続く有り様は至高の物語性を表現しているといえよう。重厚なリフが野蛮に刻まれる各パートは、興奮以外の何物でもない。ディフェイの歌声も、高潔さを醸し出しており、崇高な楽曲に十分マッチしている。クライマックでの盛り上げはやはり大仰で、ナレーションパートから高潔なメロディの導入に至るまで、素晴らしくエピカルである。バーバリズム、ロマンティシズムが紙一重に表現された楽曲である。エピローグにはスパニッシュ的なアコースティカルパートを設け、徹底したドラマを演じる。
6. Transfiguration
ロマンティックなミドルテンポ。ディフェイの歌声に絡むピアノが絶妙である。込み上げてくるようなサビのメロディも印象に残る。
7. Prometheus The Fallen One
オリエンタルかつアンビエントな雰囲気が全編を覆う、次曲"Emalaith"と同じく本作の中核をなす長大なエピックである。 ディフェイのエピカルヴォイス並びに、誘惑的な美旋律が神秘性を極限まで高めた名曲である。拝借的なメロディが登場する中間部の展開に至っては、この曲の重要性、他曲との関連例を雄弁に物語る。静寂する神聖なパートから、#8のサビのメロディを奏でるギターパートへと展開し、その後は#2のクライマックスにおける劇的なメロディのホーン編曲が繰り出される。なお歌詞は、古代ギリシアの劇作家アイスキュロスの『縛られたプロメテウス』がモチーフ。
8. Emalaith
ヴァージンスティール史上最高の傑作にして、エピックメタル史に残る名曲。人類が生み出した最高の名曲の可能性も持つ。壮大なサーガにおけるヒロイン「エマレイス」の名を冠した楽曲であり、約10分の間、リスナーは物語の主人公のような途方もない戦い、幻想的な愛・勇気を通して高揚感の極致、及び興奮を味わうこととなる。「エマレイスは死んだ。もう平和が約束されることは二度とない」という言葉の如く、楽曲の内容は壮絶を極める。大河のような壮大な展開を見せ、ヒロイズムを放つサビのメロディは激しく胸を打つ。まるで物語のヒーローやヒロインを主張するかのような、情熱的なメロディが印象的。またその後の展開では、マリッジのメインテーマ・メロディが幻想絵巻の如く繰り出され、ギター、オーケストレーションとアレンジを変えて導入される様はもはや神々しく、人智を超越した世界観の情景すら聴き手に抱かせる。その中間部は、ディファイの神聖なキーボードとエドワードのロマンティックなギターが妖艶なまでに幾多の転調を経て絡み合う、珠玉の名演。まるで天上の領域を再現したかのような神秘的な楽曲。
9. Strawgirl
神聖なメロディが流れるように、温かみを感じることが出来るバラード。大作曲の後にこういったバラードを持ってくる辺り、実に器用である。しかし、本当にこのアルバムの神秘的な世界観は筆舌に尽くしがたい魅力を持っている。余談ではあるが、正直ここで作品に幕を下ろした方が、後味が良かったように思える。ここまでの一体感が心底素晴らしい故になおさらである。
10. Devil / Angel
荒々しくスピーディな曲。他の曲に比べると単調であるが、この部位ではこのくらいの曲が良いのかもしれない。
11. Unholy Water
聖歌調的コーラスに導かれる神秘的な楽曲である。 歌の神聖なメロディや、バックを担当するキーボードのメロディが幻想的で非常にエピカル。この曲のように、しっとりとロマンティックに聴かせるところもまた、ドラマティックである。
12. Victory Is Mine
サビでの「Victory Is Mine」フレーズが印象的。飛翔する高潔な旋律が心地よく響く。
13. The Marriage Of Heaven And Hell Revisited
アルバムの至る個所に導入されたマリッジ・メインテーマの全編インストゥルメンタル。前作のラストとはアレンジが多少変わっている。壮大な本作に終止符を打つに相応しい、余韻の残るシンフォニーであることに関しては、前作同様である。
14. Life Among The Ruins (Live Version)
ライブバージョン。些かオリジナルより早いように感じる。
15. I Wake Up Screaming (Live Version)
ボーナスのライブ曲。ファンがヴァージンスティールを鼓舞しているのが伺える。


Review by Cosman Bradley
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The Marriage of Heaven & Hell



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1994
Reviews: 91%
Genre: Epic Metal



1994年に発表されたヴァージン・スティールの6th。前作からかなりのハイペースでのリリースとなる。本作は彼らの歴史、そしてエピックメタルの歴史を語る上で欠かすことはできない名盤である。制作メンバーはエピックメタル界の帝王David Defeis(vo、key)、右腕Edward Pursino(g、b)、Joey Ayvazian(ds)の3人から成る。まず初めに記すべきことは、少数のメンバーでも、才能に富むバンドであるならばクリエイティブで芸術的な作品を完成させることが可能であるということである。本作はその事実を雄弁に物語っていといえよう。既にコラム『エピックメタル・ヒストリー:「エピックメタルの帝王」virgin steele』で触れたように、この6枚目のアルバムから、フロントマンであるディビッド・ディフェイの才能は爆発的に発揮されていく。この『The Marriage of Heaven & Hell』、即ち通称「マリッジ作品」には、かつてディビッド・ディフェイが夢見たエピックメタルの理想像が描かれているといっても過言ではない。本作の大仰なロマンティシズムはそれらを如実に物語っているのである。

この作品は、ヴァージンスティールの復活作のみならず、新たなエピックメタルの時代の記念碑的作品となったことは既に疑いようがない。ヨーロッパ全土での絶賛がそうである。それはかつて、地下の人々が望んだ一つの夢に等しい。しかし、この作品が欧州全土に認められることによって、理想郷は現実となったのである。一体誰が予想したことであろう?アメリカの地下世界で産声を上げ、カルト的とまで形容されたエピックメタルが、その世界に認められる日がこようなどとは。これは決して偶然の出来事ではない。彼らの度重なる努力の結果の末に、必然的に起こったことだ。そして本作に秘められた確かな価値を見いだした聴衆も、優れているといわざるを得ないのである。結果的に、世界に認められた形となった彼らとエピックメタルであるが、その後もディフェイの才能は留まることはなく、数多の傑作を世に送り出していったことを、あえて付け加えておくとしよう──

では、本作に表現されたサウンドとは、具体的にいかなるものなのであろうか。間違いなく、これこそがエピックメタルと形容して万人が頷くと断言できるサウンドである。次作以降、バーバリックな作風を完成させる彼らではあるが、本作は、ロマンティックな部分を極めた傑作といえるであろう。本作の楽曲に見られるシリアスさや、大仰なドラマティシズムやロマンティシズムは、エピックメタルの最も基本的なスタイルを如実に物語っている。エピックメタルは常に表現力を惜しむことがないのである。同時に、既存的な概念から離れた、神秘的な内容をも所有している作品であるともいえよう。本作のコンセプトは"人種問題、宗教問題、戦争"。この他に、ディフェイの個人的な葛藤も含まれている。

より現実的なテーマを扱っている──しかし本作を評価する際に、叙事詩的や神話的といった言語は欠かすことが出来ないのも、また事実である──のに対し、この壮大なスケールは驚異的なものである。このマリッジ作品は、元々サーガ的手法で構想されていた大作である。全三部作で完結する予定であり、実は本作と次作はセットとして発表されるはずであった。当然、アルバムの中核を成すコンセプトやテーマメロディ等は同質のものである。ディフェイは作品中の重要なメロディを、楽曲中のキーポイントに配置するという構成を、映画音楽またはオペラで頻繁に用いられている要素からヒントを見出した。故に、アルバムのテーマメロディであり、コンセプトの根底にある輪廻転生を訴えかける旋律が、作品の中核を成しているという訳である。

考えてみてほしい。かのような人類の潜在意識に対してメッセージを送るメロディには、極めて壮大なものが多い。然り、感覚がそう感じてしまっているのかもしれないのであるが、例えば、雄大なメロディとして、北欧のケルト音階を挙げてみるとしよう。ケルト音階は、日本民謡に見られる和音にも共通する部分がある。その結果、日本人には特に魅力的なメロディの一つとして認識されるのである。馴染み深いものは時として魅力的なものとなる。マリッジの壮大な旋律にも同じことがいえよう。なぜならば、マリッジのテーマである輪廻転生は、人類の半永久的なテーマでもあるからである。しかし結局、いくら理論武装したところで、本作を視聴した時の感動的なリアリティに勝るものはないといえる。

この作品には壮大な意志が込められている。それだけは間違いようがない。本作を聴いて我々がどういう類いの刺激を受けるか、それこそが彼らに対する私達の最大の返答なのである。その答えは、私達一人一人の中にあるといえよう。追記ではあるが、本作は2008年にリマスターされ、ボーナストラック入りで再版された。ボーナストラックには至高の名曲"Blood & Gasoline(New Duet Version with Crystal Viper)"を収録。なにより音質が向上したのが嬉しい。



1. I Will Come for You
エピック・ヘヴィメタルの本格的な時代の幕開けを意味するロマンティックな名曲。ディフェイの情熱的なエピカルウェスパーの炸裂、中間部分における神々しいマリッジ・メインテーマへの劇的な流れ、クライマックスでの大仰な盛り上がりを含め、感動必死の叙事詩である。賽は投げられた。
2. Weeping of the Spirits
彼ららしいシリアスでドラマティックなエピカルナンバー。静かなパートから荒々しいメタルパートへの展開を見せる。スピーディなリフの格好よさは特筆すべきだが、妖艶なコーラスの力強さも最高だ。また若干荒廃しきった古典的ロックの雰囲気があるのも見逃してはならない。そこにはアメリカ生まれのエピックメタルのルーツがあるのである。
3. Blood & Gasoline
本作に収録された楽曲中、最もヒロイックな最高峰の名曲。大仰なギターメロディが期待感を漂わせるヴァース、更には艶やかなブリッジ(最高のパートだ!)へと導く。バーバリックなヒロイズムとロマンティックなムードが劇的にかみ合ったあまりにも熱いエピックメタルである。身が震えるとは、この曲を聴いているときに用いるのが最も適切な言葉だと思える。
4. Self Crucifixion
これまたロマンティックな楽曲である。ダイナミックなサビが非常に雄々しい。また積極的なピアノの導入が、曲の持つ神秘性とロマンティシズムを十分に生かしている。このような繊細な部分も魅力的である。ディフェイは、キーボーディスト(彼はヴォーカルとキーボードを両立するという、ヘヴィメタル界でも珍しいスタイルを有している)としても天才的である。
5. Last Supper
個人的に私は、本作の#5~#7を最大のハイライトとして認知している。これからもそれは変わらないであろう。ドゥーミィーに刻まれる怪しげなリフのメロディが印象的な曲であるが、後半の凄まじいまでの盛り上がりには息を呑まざるを得ない。高潔なヒロイズムを滲みだす箇所は、後に十分通じている
6. Warrior's Lament
この世のものとは思えないような、ロマンティックなインスト。繋ぎのインストゥルメンタルとしては最高の部類に入ろう。まるで歌劇(オペラ)を見ているようである。
7. Trail of Tears
ミドルテンポで進むエピックメタルであるが、この曲の真価は中間部からの劇的極まりない大仰な展開にあるといえよう。本曲のソロパートは優雅にロマンティックであり、これは本作を代表するサウンド・スタイルであるといっていい。ディフェイの美しい裏声をバックに、ロマンティシズム溢れるギターメロディを奏でる至高のパートこそは至高といえよう。また。エピローグに設けられたアコースティックパートを経て、一つの物語を終えた達成感を味わうことが出来るのは、エピックメタルの醍醐味であろう。彼らの楽曲の練り方はつくづく素晴らしいと感じさせる。
8. Raven Song
アメリカ最大の文豪エドガー・アラン・ポオの傑作『大鴉』との関連性を指摘される楽曲。その影響は、楽曲のタイトルにも表れている。軽快なリフに華やかに導かれるエピックナンバーであることには変わりない。ここまで聴けばおのずと分かることであるが、彼らの楽曲に単調な曲などは存在しはおらず、この曲とて例外ではない。
9. Forever I Will Roam
古典的で美しいバラード。ヴァージンスティールのムーディな部分を余すことなく詰め込んでいる。バラードですら大仰なメロディ、盛大な盛り上がりを見せるところが彼ららしい。
10. I Wake Up Screaming
情熱的なエピックメタル。軽やかにドライヴするリフにエピカルなシャウトが発散される見事な佳曲。ストレートなエピックパワーメタルとしての完成度は非常に高く、最高の高揚感を味わうことが出来よう。キーボードの荘厳なバッキングも秀逸。
11. House of Dust
魅惑的で美しいバラード調の楽曲。大仰さがとてつもなく魅力的に栄える。神秘的な雰囲気も見事である。
12. Blood of the Saints
大仰な曲調と神秘性を併せ持つ、典型的で力強い正統派エピックパワーメタル曲。盛り上げ方の技量については見事というほかない。勇ましくあり、ドラマティックなヘヴィメタルの魅力が凝縮されている。
13. Life Among the Ruins
前作のタイトルを冠した楽曲。本作の本編ラストを占めるエピックナンバーである。サビでの一心不乱の飛翔感は、まるで高揚する意識が天に昇るかのようである。驚異的なのは中間部での叙事詩的なドラマ性を秘めたギターリフ。この劇的な展開には楽曲が移り変わったのかとさえ思える(この手法は『Invictus』収録の"Mind, Body, Spirit"にも通じる)。ここにヴァージンスティールのドラマティシズムは極まったといえよう。
14. Marriage of Heaven and Hell
天国と地獄の和解を啓示する終曲。幾多ものメインテーマ・シンフォニーが次々と繰り広げられる壮絶な感動短編とでも形容すべきか。この神々しいテーマメロディを作曲したディフェイは天才としか言いようがない。人間の永遠のテーマ、人間の潜在的な意識まで訴えてくる途方もない美旋律とはこのことをいうのであろう。
15. Blood & Gasoline(New Duet Version with Crystal Viper)
名曲#3の完全版とも言うべき内容。ポーランドの正統派ヘヴィメタルバンド、クリスタル・ヴァイパーによる正式なカヴァー曲である(カヴァーにディフェイ本人が参加している)。驚異的な歌声を持つ女性シンガー、マルタ・ガブリエルが神秘的なブリッジ、サビを熱唱する様は圧巻。一言で表現すると、全編通してロマンティック極まりない。まさに生まれ変わったいうべき名曲中の名曲であり、改めてこの曲の素晴らしさを感じさせられる。このボーナストラックのためにリマスター再販盤を買う価値は十分にあるといえよう。


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Crystal Logic



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1983
Reviews: 90%
Genre: Epic Metal




「『Crystal Logic』なくして、エピック・メタルの確立は有り得なかった」

 ──『METAL EPIC』誌

マニラ・ロードの『Crystal Logic』が再発された。1983年に発表されたこの素晴らしい名盤は、今日のエピック・メタルの基礎を築き上げた極めて重要な作品である。勇ましく疾走する名曲"Necropolis"、すべてのエピック・メタル・バンドに影響を与えたヒロイックなギター・ソロを奏でるタイトル・トラック"Crystal Logic"は、今後も末永くマニアたちに愛聴されていくことであろう。我々は改めてこの作品を拝聴し、劇的でヒロイックなエピック・メタルというジャンルが生まれていった経緯を耳にすることができる。『Crystal Logic』は偉大なるエピック・メタル・バンドの、偉大なる遺産だ。

 ──Cosman Bradley



本作はアメリカのカンザス州ウィチタ出身のエピック・メタル・バンド、マニラ・ロードが1983年に発表した第3作である。中心人物マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)、 スコット・パーク(Scott Park:b)、リック・フィッシャー(Rick Fisher:d)から構成される3人のメンバーによって制作され、プロデュースはマーク・マズール(Mark Mazur)が担当。太古のネクロポリスを描いたというカヴァー・アートワークはジョン・ジンクス(Jon Jinks)が手掛けた。なお本作は2000年に「Iron Glory Records」から再発、その際マニラ・ロードが1983年に『U.S. Metal Vol.Ⅲ』に提供した"Flaming Metal Systems"をボーナス・トラックとして追加収録。その後、2012年に「Shadow Kingdom Records」より再発された。




マニラ・ロードが現在のエピック・メタル・シーンで孤高の地位を獲得できたのは、間違いなく本作『Crystal Logic』の成功があったからだ。1977年にマニラ・ロードを結成したマーク・シェルトンが思い描いていた幻想文学に通じる世界観や、独創的な音楽性は80年代初期のヘヴィメタルの分野には大きな影響を与える必然性があった。バンドの結成時からマーク・シェルトンが追求していた世界観は神秘主義的なものであり、その特異な要素が本格的なヘヴィメタルのサウンドと出会ったのが、他ならぬ『Crystal Logic』であった。



本作から漂うヒロイックなムードの根源は、マーク・シェルトン自身の趣味に基づくものであり、それはアルバム・ジャケットの表紙、及び掲載されているメンバーの写真に至るまで影響を与えている。これは後にマーク・シェルトン自身が認めたことだが、ロバート・E・ハワードの『コナン(Conan)』はマニラ・ロードの世界観に多大な影響を及ぼしていた。また古代・中世に属する古典文学も同様であり、『Crystal Logic』制作時の一つのインスピレーションとして機能していた。これらの勇壮なイメージがインテリジェントな音楽として始めて成立したのが、本作『Crystal Logic』という作品であった。これまでのロック史を覆すヒロイックなサウンドの登場に、地下のファンは大きくどよめいた、という。



劇的、大仰、勇壮、そして、緻密な小説の如く結末を迎えるストーリーテリングな『Crystal Logic』の内容は、マニラ・ロードという陰鬱なバンドの存在を一気に世に照らし出した。"Necropolis"の放つ幻想的な爽快感、"Crystal Logic"の雄大なギター・ソロ、"Riddle Master"におけるヒロイックなリフの使用、長大な"Dreams of Eschaton"の途方もない憂鬱さ。スラッシュ・メタル、ブラック・メタル、NWOBHM……形容する言葉が見当たらなかった。しかし、歴史には常に見落としがあるように、かつてマーク・シェルトンが自身のサウンドを命名した際の一つの言葉が残されていた。それは同郷のキリス・ウンゴルやマノウォーのサウンドを辛うじて形容していた"EPIC METAL(叙事詩的なヘヴィメタル)"という言葉であった。



1983年、マニラ・ロードの第3作『Crystal Logic』はエピック・メタルのスタイルを確立するに至る。以前までのハードロックの呪縛から脱却した、クラシックな叙事詩的音楽の原形が『Crystal Logic』には生々と描かれている。ここにヘヴィメタルと「剣と魔法(Sword and Sorcery)」の世界観が前衛的な手法で融合を果たし、エピック・メタルが完成したのである。言うまでもなく、マニラ・ロードはその第一人者であり、先駆者であった。当時、ここまで"ヘヴィメタル的"なサウンドを提示したエピック・メタル作品は他に有り得なかった。本作の発表後、現在に至るまで、世界各地のマニラ・ロードのファンは『Crystal Logic』を初期の傑作として称賛し続けている──以上が、我々が知り及ぶ本作の物語であった。



1. Prologue
暗く不穏な本作のオープニングトラック。ネクロポリスの謎を語りかける。
2. Necropolis
オープニングに続く勇壮な疾走曲。古代神話にインスパイアされ、ステュクス河のネクロポリス、王の墓に関して言及する。ヒロイックなメロディがドラマティックかつアグレッシブに展開される本曲は、マニラ・ロードの代表的な名曲となった。また、エピック・メタルというジャンルの良点を顕著に示した楽曲でもある。
3. Crystal Logic
タイトル・トラックにしてエピック・メタル屈指の名曲。大仰なマーク・シェルトンのヴォーカルと無骨なギター・サウンドがエピカルに絡み合った見事な構成を有する。およそ6分の中に戦士的なドラマ性を凝縮しており、中間部のソロでは最高にヒロイックなフレーズを奏でる。このギター・ソロが後続に影響を与えた事実は、既に語り尽くされている。
4. Feeling Free Again
短くも、勇壮な荒々しさが表現された楽曲。バーバリックな勢いだけは素晴らしい。
5. Riddle Master
伸びやかな歌声が炸裂する明白かつドラマティックな内容。ヘヴィメタル史において、始めてヒロイックと思しき印象を与えるギター・リフを使用したことでも知られる名曲。本作のエピカルな作風を代表する楽曲でもあり、サビの強烈なメロディが強く印象に残る。また後半にはテンポ・チェンジがあり、完成度は非常に高い。
6. Ram
鋭くメタリックなリフが変則的なリズムで刻まれる佳曲。ほのかに滲むマイルドな漢らしさが非常に良い。ギター・ソロは破天荒な内容。
7. Veils of Negative Existance
上手くエピカルにまとまった内容。楽曲の展開も期待感を煽るもの。大仰さが爆発しており、ラストのコーラスも勇壮な世界観を良く描いているといえよう。
8. Dreams of Eschaton/Epilogue
およそ10分に及ぶエピック・メタル大作。様々な神話・伝承に触発される。バラード調から始まり、大仰な唸り声を上げ、リフ・パートに移行する箇所はなんともエピック・メタルらしい。歌メロの漢の色気を感じるメロディには高揚感を覚えるものの、後半の永遠と続くソロ・パートが、ストレートな曲調故に冗長に感じる部分が非常に残念。エピローグでは、整合性のない大仰なメロディが時に哀愁を秘めて、余韻を残すべくエンドロール・メロディが奏でられる。
9. Flaming Metal System
ボーナストラック。当時のマニラ・ロードがコンピレーション・アルバム『U.S. Metal Vol.Ⅲ』(1983)に提供した楽曲。完成度は高く、ヒロイズム、伸びやかな歌声、ドラマ性などが十分に発揮された佳曲である。


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