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正統派メタル(Classic metal) 

伝統的なヘビィメタルの総称。 

全てのヘヴィメタルの源流。そう正統派メタルは呼ばれている。
ヘビィメタルの創成期たる80年代初期の時代に生まれ、多くのファンに受け継がれながら今まで続いてきた。
またメタルの時代の架け橋ともなったNWOBHMにも深くかかわっている事が挙げられる。

ヘビィメタルには様々な型(ジャンル)があるが、全てを辿るとこの正統派メタルに行き着く。それほどこの正統派メタルは重要な位置を担っており、正統派メタルが消滅することはメタルそのものが消滅することに他ならない。


正統派メタルはメタルの重要な要素全てを含んでいる。掻い摘んで説明しよう。

まず第一に正統派メタルバンドのほぼすべてが用いるメタリックなリフは極めて重要である。金属的で歪みきったギターサウンドが、ヘビィメタルには不可欠なのである。ヘヴィにギャロップするリフが多くのファンに「これぞヘヴィメタルだ」と唸らせるのだ。メタルといわれる由縁がここにはある。金属的、つまりはメタルという語源が出来たのもサウンドからだという説がある。

次に重要なのはポップなところが一切なく、常にシリアスだということである。サウンドは重苦しく硬派であり、信念を持ち何物にも流されない精神面も持ち合わせる。一般の商業的音楽とは大違いである。よくメタルファンはポップスを嫌うが、流行り廃りに流され、臨機応変にサウンドを変え商業的成功を熱望するポップスを気にいることができないのには私も十分うなづける。もちろんポップスファンも同じようにメタルを嫌悪するのはいうまでもない。完璧な音楽などは限りなくないのである。

そして以外にも重要であるのが、ロックンロールからの影響を受けていないということである。この部分は非常に難しい境界線である。例をあげよう。かつてマノウォーのジョーイ・ディマイオはインタビューでこう言っている。「俺たちはメタルファンである以前にロックファンなんだ」と。マノウォーのジョーイといえば漢の中の漢、徹頭徹尾メタルを追求してきた者である。彼がこのような発言をしたのは興味深い。彼はメタルの根底にはロックがあり、それを軽んじる事はできないということをいっているのだろう。もちろんその通りである。ロックが生まれなければメタルは生まれなかった。これは万人が認める事実である。しかしロックンロールとヘヴィメタルを明確に一緒にすることはできるのだろうか。ヘヴィメタルの持つ強いグルーヴ感はロックンロールの型にあてはまるものではないのである。確かに初期の頃はメタルのサウンドの根本的な部分が出来上がってなく、ロックンロールからの影響の強いハードロックと区別することができなかった。しかし徐々に正統派メタルの始祖たるアイアンメイデン、ジューダス・プリーストがロックンロールの影響を消していったことは確かである。特にアイアンメイデンの3rd以降に顕著に表れている。一方先ほど挙げたマノウォーであるが、彼らのアルバムにはロックンロール調の曲が入っている。彼らのアルバムを聴くと、完全にロックンロールの曲とヘヴィメタルの曲とが二極化されているのが分かる。このようにヘヴィメタルとは独自のアティテュード、アイデンティティを持ち合わせた音楽であり、ロックンロールを超えて、一つのジャンルを確立したのである。現に、ロックンロール調の軽快な曲がメタルと形容されることはないのである。また、その世界観も一般の音楽とは大きく異なっており、独自性を強めている。主に詩世界に表現される要素であるが、一般のロックが「愛やセックス、ドラッグや女」を歌うのに対し伝統的なメタルは「歴史や伝承、戦いや戦士」を歌うのである。これが顕著に表れ、正統派メタルより更に大仰かつドラマティックに成り得たものがエピック・メタルであり、メタル独自の世界観を惜しみなく表現しているのは事実である。

以上を踏まえ、結果的に正統派メタルを簡潔に示すとなると"重厚かつメタリックなサウンドを有したヘヴィメタル"ということになる。
 


正統派メタルの歴史はジューダス・プリーストから始まったといってもいい。彼らの行ったレザー、スタッドの着用は今なおヘヴィメタルの伝統服装である。1980年に発表されたアルバム「BRITISH STEEL」はメタリックなリフを軸とした最初のメタルアルバムとして歴史に決定的な打撃を与えた。同じく重要なのがイギリスのアイアン・メイデンである。当時としては恐ろしく凶暴でスピーディな音楽性はメタル以外の何物でもなかった。彼らの初期の傑作3作がのちの正統派メタルに与えた影響は計り知れない。というよりも、前述した二つのバントのもつサウンドそのものが正統派メタルと呼べるのである。すべての正統派メタルバンドが彼らの影響を受けているのは絶対的であり、彼らのサウンドを踏襲していることが正統派メタルでは重要となってくる。その後の80年代以降長らく正統派メタルはメタルの歴史から過去の存在となっていった。しかし90年代後半になると再び伝統的なヘヴィメタルを重んじるという傾向が出始め、徐々に復興を遂げていった。これによってアイアン・メイデンやジューダス・プリーストが復活したというのは大きい。彼らは今なお現役であり、若い世代のメタルバンドから大きな目標として、自らを向上させる糧になっているのである。


しかしよく考えてみれば正統派メタルがなくなることは決してないのである。なぜなら、この文章の冒頭に書いたように、幾多に細分化したメタルの全ての始まりがこの正統派メタルなのだから。ヘヴィメタルの記念すべき出発点を否定するファンはいなかろう。そして、これからも世界中にメタルを信じる根強いファンがいる限り、メタルの精神がなくなることはないのである。
 


主なバンド
JUDAS PRIESTIRON MAIDENSAXONU.D.ORUNNING WILDGRAVE DIGGERMANOWAR
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Dragons of the North

Dragons of the North
(2008/04/22)
Einherjer

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★★★★★★★★★★...(名盤)
伝説的なノルウェーのヴァイキング・メタルバンド。1996年に発表の1st。名前は「エインヘリャル」と読む。エインヘリャルとは北欧神話において、戦いの中で勇敢に死に絶えヴァリキリーにオーディンの居城ヴァルハラへと招かれた戦士の魂の事である。この名前からも分かるように、彼らは正真正銘、真性ヴァイキングメタルバンドである。ヴァイキングメタルの源流の一つであるブラックメタルとは一線を画す作風で、重厚な音づくり、勇壮なミドルテンポ、野太いコーラスなどの要素が顕著に見られる。どの曲も非常に練られており、実にドラマ性を感じさせる。北欧トラッドメロディを基盤としたリフ、ソロが聴きどころといっても過言ではなく、一部においてはギターが歌っているのかと思われる。全編に漂う漢らしさ、北欧独特の古めかしい世界観の表現力は異常であり、浮世離れしている。そうした要素すべてを含め、ヴァイキングメタルファンならば、一度は聴いておくべきだろう。 


1. Dragons of the North 
朗々と刻まれるリフが漢らしさを醸し出す。後半の戦士を想起させる掛け声はいかにもヴァイキングらしい。
2. Dreamstorm 
冒頭のもの悲しいアコースティカルなメロディから野太いトラッドメロディへの展開は絶品であり、歴史的な名曲である。 重厚であり、正統派らしいギターリフと幻想的なキーボードが合わさり、とても古い、キリスト教が広まる以前の神秘的な世界を思い出させてくれる。こういった素朴で、民族的な音楽はいつの世も人の心を打つものだ。叙事詩的な展開も秀逸である。
3. Forever Empire 
スカンディナビアの海を想起させるかのような荒々しい曲である。特にサビでの勇壮な戦士らしいコーラスは素晴らしい。また、後半の歌い継がれるソロは極めて劇的である。
4. Conquerer 
船の甲板を打ち鳴らすかのようなドラム、北欧の船乗りのような歌声、三連に刻まれるリフが民族色を醸し出す曲である。非常に哀愁のあるメロディが胸を打つ。特に、曲最後の部分でのギターメロディは突出している。
5. Fimbul Winter 
この曲も朗々とした中に荒々しさの宿る正統派ヴァイキングメタルである。
6. Storms of the Elder 
ヴァイキングメタル史に今なお残る歴史的な名曲。タイトルの如く嵐を呼ぶかのようなサビのパートは壮絶であり、真性のヴァイキングメタルがいかなるものかこの曲を聴けば明白である。ヴァイキングが大海に出、荒れ狂う海を船で突き進む様が浮かび上がる、一つの叙事詩ともいえる大作である。後半では中世を思わせるアコースティックパートに入り、前半の荒々しさとの完全に二極化されている。
7. Slaget Ved Harfsfjord 
中世北欧の港町を思い浮かばせるような陽気な曲。フォーキーな中にも民族的な勇ましさが垣間見れる曲である。
8. Ballad of the Swords
恐らくだがバラードかと思われる。ヴァイキングらしく雄々しく歌う様がとても良い。

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エンペラー・オヴ・ザ・ブラック・ルーンズ



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2004
Reviews: 94%
Genre: Epic Power Metal


イタリアの古豪、ドミネの2004年発表の4th。


「そしてキンメリア人の誇りによって、いつの日かアキロニアの王冠は我がものとなろう」
 "The Aquilonia Suite - part I"より




長年エピック・メタルという地下の分野を探求してきた我々にとって、ドミネ(DOMINE)という強烈な名は忘れ得ぬものである。第2作『DRAGONLORD(Tales from the noble steel)』(1999)から劇的なまでにヒロイックなエピック・メタルの世界観を絶え間なく追求してきたドミネの才能は、一大傑作『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』(2001)で宇宙規模の大爆発を引き起こした。過去のホークウィンド、そしてキリス・ウンゴルの時代から続く古典的なヒロイック・ファンタジーの世界をヘヴィメタルで表現するという、全く不可能と思われた斬新な試みは、まさにドミネの登場によって覆されたのである。
我々はドミネの齎した功績について考える際、必ずイギリスの作家マイケル・ムアコック(Michael John Moorcock)の功績も同時に思い出すことになる。マイケル・ムアコックの創造した途方もない世界観──『永遠のチャンピオン』シリーズで描かれた多元宇宙という果てしない構造──に対する飽くなき探求が、結果としてドミネに素晴らしい恩恵を授けたのである。この古典的なヒロイック・ファンタジーは、ハワードの名作『コナン』のように、エピック・メタルという分野で何れ再現されるべき題材であったが、現代におけるヘヴィメタルの著しい低迷、更には挑戦的なバンドが現れないことも、この課題に時間を費やす原因となっていた。
ドミネがイタリアのフィレンツェで1983年に結成された時、可能性はまだ小さかった。歳月をかけて完成させた4本のデモ・テープは、カルト・エピック・メタルのマニアですら見出すのに長い時間がかかった。ドミネの第一作『Champion Eternal』が発表されたのは1997年であり、エンリコ・パオリ(Enrico Paoli:g)とリッカルド・パオリ(Riccardo Paoli:b)の兄弟の夢は、忍耐という壁に押し潰されかけていた。それでもなお、ドミネがバンドを続けられてきた背景には、ヒロイック・ファンタジーへの飽くなき情熱があったからこそである。掲げられる気高い理想が平然とあるように、理想とは叶えられるべきものであった。
ドミネには才能がある。だからこそエピック・メタルのファンは未熟な『Champion Eternal』を絶賛したのだし、ドミネの肩を持ち続けたのであろう。彼らの選択は正しかった。今や苦渋の過去は去り、ドミネはエピック・メタル・シーンにおける王者のような風格を宿した最重要バンドとなって、この分野で偉業を成し遂げた数少ない英雄(ヒーロー)として、支持を受けている。我々は叙事詩の中の英雄がかつてそうであったように、古強者であるドミネを讃え、その偉業を振り返る。恰もタルサ・ドゥームの軍隊の如く、大地を轟かす凄絶なドミネの行軍は、鈍い音を立てて砂丘を踏み荒らす軍馬の蹄のように、いつまでも我々の脳髄の中で木霊するのだ。



傑作である前作『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』(2001)での成功、加えてヒロイックかつファンタジックなエピック・メタルを極限まで砥いで完成させたドミネは、一部のエピック・メタル・ファンより絶大な支持を獲得するに至った。ファンが支持し、ドミネが完成させた唯一無二のエピック・メタルこそ、古典的なヒロイック・ファンタジーの正式な再現であった。
前作の利点をすべて踏襲し、更なる芸術性を極めたのが本作『Emperor of the Black Runes』である。作品のタイトルには、当然の如く、前作でもコンセプトとした"メルニボネのエルリック(Elric Of Melnibone)"の要素が用いられている(マイケル・ムアコックの原作『永遠のチャンピオン』において、「黒きルーンの皇帝」とはエルリックを指しており、エルリックは一万年の歴史を持つメルニボネ帝国の最後の皇帝として君臨し、エルリックの持つ黒き剣(Stormblinger)には無数のルーン文字が彫られている)。
勇壮な世界観をヒロイック・ファンタジーの古典から受け継ぎ、本作も詞世界には殆どヒロイック・ファンタジーが用いられている。"The Aquilonia Suite - part I"で題材としているのはジョン・ミリアスの映画『Conan the Barbarian(邦題:コナン・ザ・グレート)』(1982)であり、また"Icarus Ascending"では有史以前のギリシア叙事詩を題材とし、正統派エピック・メタルの伝統に忠実に沿っている。『エルリック・サーガ』を題材とした"The Song of the Swords"では、魔剣を操る二人の英雄に焦点を当て、戦いに特化した空想的な世界観を再現し、エピック・メタルにおけるヒロイズムの重要性を説いている。我々はそれらを真摯に受け止め、尚且つエピック・メタルの持つ至高の陶酔感に浸らなければならない。
サウンド面は大化けしている。ギターソロの充実、圧倒的な疾走感、楽曲を構築する重厚感が著しく向上していることは既に明らかであり、ドミネ特有の悲壮感を感じさせるメロディや、劇的な緩急を用いたプログレッシブなドラマ性も見事なまでに表現されている。これらは傑作であった前作を大きく凌駕する内容である。作品全体としての一体感、統一感までも尋常ではないほどに高度なものとなり、各楽曲に描かれた幻想が視覚を刺激するレベルにまで到達している。ここまで剣と魔法の世界を表現したエピック・メタルは他にはなく、 本作を持って、まさにドミネは神格化したといえるであろう。"And justice is done(そして正義は果たされた)"



1. オーヴァーチュア・モーテイル
Overture Mortale
クラシカルかつ荘厳なオープニング。前作同様、脅威と興奮の世界への幕開けといったところであろう。ちなみにモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」をアレンジするという高度な技を用いている。

2. バトル・ゴッズ
Battle Gods (of the universe)
ドミネの定番である激烈な疾走曲。勇壮なメロディ(極めて英雄的な)を伴い、騎士のように疾走する様はもはや筆舌に尽くしがたい。さらに今回は重厚なバッキングが加わり、よりリアリティを持った伝説の世界を表現することに成功している。題材は中国のヒロイック・ファンタジー映画『The Legend of ZU』であるという。

3. アリオッチ、ザ・ケイオス・スター
Arioch, the Chaos Star
聴き手が打ちのめされるに相応しい強烈な一撃。多元宇宙における混沌の王アリオッチ(Arioch)を歌った、幻想と怪奇の渦巻くおぞましい楽曲である。"Battle Gods (of the universe)"と同等か、それ以上の激烈な疾走感を誇っており、サビの猛烈な勇ましさと驚異的な荘厳さには絶えず圧倒される。途方もなく壮大な世界である。

4. アキロニア組曲 パートⅠ
The Aquilonia Suite - part I
ヒロイック・ファンタジー史にその名を残す映画『Conan the Barbarian(邦題:コナン・ザ・グレート)』(1982)のサウンドトラックからの引用を含む、およそ14分にも及ぶ超大作である。栄光に満ちた古代世界を思わせるような荘厳な曲調、大仰極まりない曲展開により、聴き終えた後には英雄の如き興奮と高揚感を味わうことが可能となる。この展開はまるで映画のようだ。メロディはヒロイックの一言に尽きる。特にクライマックスでの感動的なギターソロ・パートが興奮を最高潮にまで押し上げる(このソロは、映画でコナンとヒロインのヴァレリアとの愛を歌った、感動的なテーマ・メロディのものである)。

5. 紅衣の公子
The Prince in the Scarlet Robe (the three who are one - part I)
「一五次元界」の英雄、紅衣の公子コルムを歌う英雄的なコーラスが感動を誘う壮大なバラード。中世を思わせる、モービィの勇ましい熱唱がこれでもかというほど胸を打つ。攻撃的な"The Aquilonia Suite - part I"の後に静かな曲を持ってくる繊細さも素晴らしい。彼らのバラードでは最高の完成度であろう。

6. イカルスの飛翔
Icarus Ascending
前半の哀愁漂う雰囲気とは一線を画す陽気な楽曲。古代ギリシアのイカロスの自由への探求を叙事詩的に描いている。決して平凡なわけもなく、勇ましくかつエピカルに仕上がっている。このアルバムには捨て曲はない。

7. ザ・ソング・オブ・ザ・ソード
The Song of the Swords
勇壮な疾走曲。ストームブリンガーとモーンブレイドという二振りの剣につて歌っている。独特の雰囲気を放ち、幻想の中へと聴き手を誘う。剣と魔法の世界を忠実に再現したエピック・メタルである。後半のケルティックなギターソロは古代の勇者を思わせる勇ましさ。

8. ザ・サン・オブ・ザ・ニュー・シーズン
The Sun of the New Season (an homecoming song)
"The Aquilonia Suite - part I"には及ばないが、幻想的な大作。冒険物語のような、徐々に盛り上がっていく展開はドラマティックだ。勇壮かつ重厚な鋼鉄の響きによって、異世界に入るような感覚さえ覚える。女性ゲスト・ヴォーカル、リーナン・シドハとモービィのハーモニーも繊細。

9. トゥルー・ビリヴァー
True Believer
名曲として名高い熱き疾走曲。大仰極まりない疾走とシャウトの連打により、凄まじい勇ましさを感じることができる。楽曲の衰えなさは、正直疲労に値する。

10. ザ・フォレスト・オブ・ライト
The Forest of Light
ラストの静かなバラード。アルバム全体を通して、これらの物語を思わせる全体の構成が、やはり最後に胸を打たれるのであろう。この楽曲には、永遠の戦士が戦いを終え、永遠の都──ムアコックの世界ではタネローンと呼ばれている──で静かな平安を得る姿が想像できる。


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Stormbringer Ruler



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 93%
Genre: Epic Power Metal


イタリアン・エピック・メタルの雄、ドミネの2001年発表の3rd。


「母よ、私の時代が来た。父よ、私の日々は過ぎ去る」
 "Dawn of a New Day - A Celtic Requiem (The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part IV)"より


1 ドミネの登場

歴史的に極めて珍しい事態だが、ラプソディーなどのエピック・メタル・バンドを産んだイタリアでは、叙事詩的なヘヴィメタルに対する注目が一度に集まっていた。その状況下にあるイタリアで傑出して頭角を現したのが、現地で名立たる古豪のDOMINE(ドミネ)だった。 ドミネは激烈にヒロイックな正統派メタルを軸にして、荘厳なシンフォニーやコーラスの多様といった、まさに典型的なエピック・メタルの音楽のスタイルを貫くバンドだった。
ドミネに関して特筆すべき点は幾つもあり、要所はヘヴィメタルに対する情熱、《剣と魔法の物語(ヒロイック・ファンタジー)》の世界観に対する憧憬を滲ませんばかりの疾走曲は、真に熱いの一言に尽きる。それは正式名『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』と題されたドミネの第3作目の楽曲群にも顕著に表れているが、詞世界は主にヒロイック・ファンタジーであり、中でもイギリスの小説家マイケル・ムアコック(*注釈)の『Champion Eternal(邦題:永遠のチャンピオン)』には相当の思い入れがあるようだ。この物語は現在でも世界中にファンを持つ、ヒロイック・ファンタジーの歴史の中でも類を見ない大傑作である。本作のアルバム・ジャケットに大仰なまでに描かれているのは、その英雄エルリック以外の何物でもない。このアルバム・ジャケットには、エルリックの活躍する世界「新王国」が《混沌》に支配され、空は地獄のような紅に染まり、《運命の角笛》を握りしめたエルリックが、まさに一つの時代の終わり(The End Of An Era)に立ち会うという、壮絶な場面が描かれている。
少し昔の話をするが、かつてエピック・メタル界にもマイケル・ムアコックの世界観に傾倒し、エルリックを題材としたカヴァー・アートワークを作品に頻繁に用いていた、CIRITH UNGOL(キリス・ウンゴル)というバンドがいた。キリス・ウンゴルは正統派メタルをベースに大仰かつドラマティックなエピック・メタルを作り上げた、このジャンルの第一人者だった。そして、ドミネのコンセプト、及びサウンドを見る限りでは、一致する部分が多くあり、まさに正統継承者と言って良いだろう。

2 世界観の追及

当然の如く、このアルバムはあまりにも素晴らしいアルバムだ。エンリコ・パオリ(Enrico Paoli:g)本人のプロデュースによる本作は、壮大かつ勇壮で、聴いていて熱いものが込み上げてくる。本当に男らしく、真にヒロイックなエピック・メタルが好きな者ならば、このアルバムは嫌いにはなれないはずである。ファンはドミネの熱い鋼鉄の信念に対し、敬意を表するべきなのである。
ドミネの気高い信念は、本作のコンセプトに表れている。アルバム・コンセプトは前述したように、ドミネが愛してやまない"永遠のチャンピオン"であり、"Horn of Fate"、"The Bearer of the Black Sword"、"For Evermore"、"Dawn of a New Day"は、「Elric Of Melnibone」という伝説の最終章からインスパイアされたものだ。ドミネは大胆にもエルリック・サーガの伝説的な最終章を、伝統的なエピック・メタルで再現しようとしたのだ。
そして、勇壮に疾走するヘヴィ・メタリックなリフと、荘厳なシンフォニーによって、見事にこの物語は大々的に表現され、本作の目的は達成されたのである。何よりも、エルリックが合わせ持つ独特の悲壮感が完全に表現されている様には、ファンも本当に驚くばかりだった。収められた楽曲はどれもヒロイックかつ重厚なものばかり。そこに大仰なドラマ性も加わり、まさに、ドミネ独自のエピック・メタルが展開されている。 ケルティックなギター・ソロも魅力的であり、神話的なヒロイズムを表現することに大きく貢献している。また、ヴォーカリストのモービィ(Morby:vo)の歌い上げるハイトーン・シャウトも圧倒的な実力で聴き手に迫ってくる。本作のゲストであるBEHOLDERのリーナン・シドハとのヴォーカ・ルハーモニーも非常に良い演出であり、エピック・メタルに優雅さを加える要因となっている。もう1つ、この作品の素晴らしい語り(ナレーション)は、POWER COURTのヴォーカル、ダニー・パワーズが担当している。よくここまで徹底できるものだ。

3 作品の完成

──忘れ去られた《剣と魔法の物語》を描くエピック・メタルの一派が、未だに死に絶えていないことを、新しいヘヴィメタルの時代に体現したドミネの行為は、間違いなく偉業ととれるものだ。この壮絶なコンセプトの一部に記された"The End Of An Era(一つの時代の終わり)"という言葉は、ドミネがヒロイック・ファンタジーを起源とするエピック・メタルの歴史に終止符を打ったことを物語っている。随分と長い時間をかけて、ようやくエピック・メタルという特異な分野は、納まるべき最上の鞘を見出した。しかし、その完成形が現れようとも、神話の中の魔術師のように、エピック・メタルという分野に魅せられた探求者たちの冒険は、果てしなく続いていくこととなる。

*注釈:Michael John Moorcock(1939~)。イギリスのSF、ファンタジィ作家。彼の作り上げた一連の個性的なヒロイックファンタジー作品は、「アンチ・ヒロイック・ファンタジー」として新たなジャンルを切り開いた。代表作は『グローリアーナ』、『永遠のチャンピオン』シリーズ。また音楽活動も行っている。



1. ザ・レジェンド・オブ・ザ・パワー・スプリーム
The Legend of the Power Supreme
怪しげなナレーションから始まるプロローグ。剣と魔法の世界に誘われるかのような雰囲気が何とも言えない。また、後半には、本作の物語の鍵となるメロディが登場する。

2. ザ・ハリケーン・マスター
The Hurricane Master
ハリケーン・マスター("嵐の支配者"という意味。始めは楽曲の解釈に迷ったが、ストーム・ブリンガーで"嵐を呼ぶ者の支配者"となるため、ここでの意味は前者)、エルリックを歌った名曲。かつて彼は、魔術で嵐を呼び、宿敵であるパン・タンの大魔術師、セレブ・カーナを打ち破った。その壮絶な世界観は楽曲にも顕著に表現されており、大仰極まりないヒロイックなメロディが激烈に疾走する。全てを叩き潰さんとする勇壮さはあまりにも熱い。まさにエルリックが剣を握りしめ、混沌の軍団に一人で立ち向かうかのような、決死のヒロイズムを表現している。

3. ホーン・オブ・フェイト
Horn of Fate (The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part II)
オープニングの勇壮なケルト系のメロディから、壮大な剣と魔法の世界が描かれる重厚な楽曲。《運命の角笛》を吹き鳴らさんとするエルリックの勇士が描かれた楽曲でもあり、彼は世界を終結させるために、その角笛を三度鳴らさねばならない。それこそが彼にのみできる使命であり、運命なのである(エルリックが角笛を手にする前、それは異次元の勇者ローランが持っており、エルリックは戦いの末に角笛を奪い去った)。悲壮感に満ち、どこか勇ましい後半の劇的な展開には度肝を抜かれる。まさに"永遠の戦士"、エピック・メタルという言葉が相応しい楽曲である。そして、とにかくメロディがいちいち勇ましい。

4. ザ・ライド・オブ・ザ・ヴァルキリーズ
The Ride of the Valkyries
"ヘヴィメタルの父"リヒャルト・ワーグナーの有名なオペラ「ワルキューレ」をモチーフにした楽曲、らしいのだが、ギター・ソロの部分以外はほとんどが自作だと思われる。ワーグナーには失礼だが、ドミネの本曲の方がワルキューレらしい。ドミネが作曲した部分が際立っている。本曲の勇壮さは素晴らしい。

5. トゥルー・リーダー・オブ・メン
True Leader of Men
"The Hurricane Master"を彷彿とさせる、ヒロイック極まりない疾走曲。フランク・ハーバートの小説『惑星デューン(Dune)』を題材とし、その物語の中の戦いについて記された楽曲である。とにかくドミネの楽曲は、大仰なまでにヒロイックなメロディを叩きつけるものが多く、ヒロイック・ファンタジー小説が体の芯まで沁み込んでいるファンには、耐えられないほどの高揚感が襲ってくる。本曲のコーラスの展開がまさにそうで、もはや、やり過ぎとまで思える。

6. ザ・ベアラー・オブ・ザ・ブラック・ソード
The Bearer of the Black Sword(The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part I)
アルバム中間部に配置された、今作のコンセプトの第一章目の楽曲。物語を掻い摘むと、人類の誕生以前に鍛造された魔剣、ストーム・ブリンガーと、それを担う者エルリックについて描かれている。彼は数多の名で呼ばれ、旅を続けてきた。今や彼に真実と謎が明かされ、彼は《法》と《混沌》の間で最後の戦いを行わなければならない。楽曲としては、ギター・メロディに重点を置いたミドル・テンポだが、といっても勇壮かつもの悲しいメロディのせいで、他の楽曲と大差のないほどヒロイックに仕上がっている。本曲はドミネ本来の劇的さがよく表現されており、息を飲むかのような緊張感の漂う展開を有している。

7. ザ・フォール・オブ・ザ・スパイラル・タワー
The Fall of the Spiral Tower
他の曲に比べるとやや平凡な楽曲かも知れないが、後半のケルティックなギター・ソロは絶品。曲調も勇壮で非常に好感が持てる。メロディに関しては、ケルティックな雰囲気が存分に漂っている。

8. フォー・エヴァーモア
For Evermore(The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part III)
バラード。これまでの楽曲で息をつく暇が全くなかったので、そのためかと思われる。出来が特別良いわけでもなく、他の楽曲に隠れて印象も薄い。

9. ドーン・オブ・ア・ニュー・デイ
Dawn of a New Day - A Celtic Requiem (The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part IV)
この伝説の最後を締め括る、およそ10分にも及ぶ凄絶な大作。本作の重要な場面を繋いできたエルリックの一大叙事詩は、悲劇的でありながらも感動的な結末を迎える。遂にエルリックは、運命によって定められた行為を成し遂げ、宇宙のサイクルが完了する。彼は新たな世界が始まるのを見る。そして、全てが失われ、新たな一日の夜明けが訪れる(Dawn of a New Day)。それは彼自身の死に他ならず、彼もまた古い世界と共に滅びゆく運命だった。結局のところ、この壮大な叙事詩が物語っているものは、全宇宙の構造(パターン)であり、人類の全ての世界もまた、構造(パターン)ということなのである。ドミネの挑戦は偉大だった。世間では長過ぎるなどと欠点ばかり言われているが、ドラマティックな構成面は抜きん出ている。オープニングでの壮大な勇士のメロディが、メインで繰り返されるパートを聴いたときの感動は、計り知れない。ラストのコーラスを繰り返すパートでは、エルリックが混沌との巨大な戦いを終え、自らもまたその命が尽き、荒野に横たわる姿が目に浮かぶ。一つの伝説が終わった瞬間を感じる、尊い時間だ。この歴史的な達成感を解き放つ長大なエピック・メタル大作は、『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』以外にはない。


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Glory to the Brave

Glory to the Brave
(1997/08/05)
Hammerfall

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★★★★★★★★☆☆...(傑作)

1997年、メロディックメタル界に衝撃を与えたハンマーフォールの1stアルバム。メタルのすべてが混沌としていた時代、伝統的かつピュアなメタルの登場は非常に新鮮だったようである。多くの者がピュアなメタルなメタルを忘れかけたが、彼らのようなメタルを愛してやまない戦士たちがいつの時代も、思い出させてくれるのだろう。このアルバムはOscar Dronjak (G)とイン・フレイムスのJesper Strömblad(Ds)を中心に結成された。そこにJoacim Cans (Vo)が加わり、バンドの核が出来上がった。そして完成した本作であるが、まさにヘビィメタルの新時代を思わせるピュアで勢いのある、若々しい正統派メタルアルバムである。このあまりにもベタで伝統的なピュアメタルが当時のシーンに衝撃を与えても何ら不思議ではない。典型的なヘビィメタルであり、伝統的な要素が惜しみなく詰め込まれている。疾走感、ヒロイズム、メロディ、コーラス、ドラマ性、様式美のすべてを感じることができる。果たしてここまで純粋なヘビィメタルを嫌いなメタルファンがいるのだろうか。聴くことによってメタルの輝かしい、新しい時代の到来を感じさせる内容であり、本当に勢いに満ちている。ドラマティックな展開もメタルファンの心をつかんで離さないだろう。以上を踏まえて、ピュアなメタルを求める多くのメタルファンにお勧めできる作品である。 


1. Dragon Lies Bleeding 
アルバム一曲目にふさわしい、疾走感とピュアなヒロイズムに満ち溢れた名曲である。この曲でアルバムのつかみは完璧といえる。
2. Metal Age 
典型的なパワーメタル曲である。
3. Hammerfall 
まさにヘビィメタルの新時代到来を告げる、究極のピュアメタル。メタリックかつドラマに満ちた曲展開、サビでの漢らしいコーラス、中間部での劇的なメロディ、エピローグの合唱、素晴らしいの一言に尽きる。数あるハンマーフォールの曲の中でも最高峰の完成度を誇るといっていいだろう。歴史的名曲である。
4. I Believe 
北欧のバンドらしい哀愁に満ちたバラード。
5. Child of the Damned
アメリカのカルトメタルWarlordのカヴァー曲。なんともマニアックな選曲であるが、彼ら自身とてつもないメタルファンなのだろう。曲もパワフルで見事にはまっているし、色んな意味で微笑ましい。

6. Steel Meets Steel
ヘビィかつメタリックなリフがハンド名のハンマーの如く打ちおろされる熱い曲である。「Steel Meets Steel 」の掛け声は特に熱く、思わず叫んでしまう。ツインハーモニーも高揚感を高めるものとなっている。実に練られた曲だ。
7. Stone Cold

リズムよく突き進んでいくミドルテンポ。ここでもメタリックなリフは健在である。またメタルらしい掛け声も良い。
8. Unchained

スピーディなパワーメタルであり、フックもあり良くできている。
9. Glory to the Brave 

アルバムのラストを飾るに相応しい、ある種のエンディング的な雄大なバラード。サビの勇ましいメロディに、後半戦士のような合唱が入るところは感動的ですらある。曲自体に漢のロマンのようなものを感じる。
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パワー・メタル (Power Metal) 

正統派メタルをよりアグレッシブにしたメタルの総称。

正統派メタルのもつ伝統性を踏襲しつつ、よりパワフルにしたスタイルのことを我々はパワーメタルと呼んだ。このスタイルには多くのメタルバンドが当てはまるだろう。スラッシュほど過激ではなく、メロディもしっかりしていることから、メタルファンとしては非常にとっつきやすい型である。重厚かつメタリックなリフの壁にスピーディなツーバスの疾走が加わることが多い。しかし最も特徴的なのは詩世界である。ブラックメタル/デスメタルが悪魔や死などの暗黒世界を題材にしているのに対し、パワーメタルは剣と魔法、ドラゴンと英雄などの幻想世界を題材にしている。この傾向が顕著に表れているメタルもあり、極端なものとなるとエピック・パワー・メタルと形容されることもある。簡潔にするとパワーメタルとは"伝統的なメタルをよりパワフルにしたヘヴィメタル"ということになる。 

歴史としては80年代後半に始まったとされ、ドイツのアクセプト、ランニングワイルド、初期ハロウィン等がなどが原型といわれる。またアメリカのパンテラは「パワーメタル」というアルバムをリリースした。このジャンルは類似ジャンルのメロディック・パワー・メタルの歴史と共通する要素が多いため、そちらを参照にされたし。


代表的なバンド
METAL CHURCHRunning WildIRON SAVIORACCEPTICED EARTH
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Ensiferum

Ensiferum
(2001/06/10)
Ensiferum

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★★★★★★★★★☆...(定盤)

フィンランドの勇者エンシフェルム。この名はラテン語で「剣を持つ者」との意味である。
その名からも想像できるように、勇猛果敢にして劇的なまでにヒロイック極まりないサウンドを有している。北欧民謡、ケルト音階を思わせるトラッド・フォークの要素の導入は、果てしない哀愁と中世のロマンを思わせる。さらには北欧の戦士(ヴァイキング)の戦いの武勇や伝説・神話をモチーフにした叙事詩的な歌詞、映画のような手法も取り入れ、一部ではそのメタルを「ロード・オブ・ザ・リング」とすら形容する者もいる。
 
かつて伝説とさえ言われたヴァイキングメタルバンド、ミソチィン亡き今彼らはその正統な後継者と言えるだろう。ヒロイック/エピック系メタルファンなら必聴である。 

このアルバムは2001年に発表された彼らのデビューアルバムである。しかし…まず聴いてみてその圧倒的ともいえるヒロイズムに悶絶の応酬であった。あまりにもヒロイックかつドラマティックな楽曲の数々、中世的な世界観といったこの手の音楽に必要な要素がやりすぎなまでに詰まっている。また楽曲のすべてが、名曲に値するであろう曲の完成度であり、絶大なるインパクトを持ち合わせている。戦士のドラマを思わせる楽曲の展開や、荒々しい中にもアコースティカルな静寂さが盛り込まれており、非常に奥深さを感じさせる。
まさに戦い、戦士のヘヴィメタルと呼べるだろう。


1.Intro 
アルバムのオープニングであり、静かに中世の民族音楽を奏でる。チェンバロとスパニッシュギターのような音色が幻想的だ。
2.Hero in a Dream 
イントロからまさに期待を裏切らない曲である。勇猛果敢なメロディと劇的な展開にはただ脱帽といえる。ヒロイックなケルトメロディが印象に焼き付く名曲。
3.Token of Time 
まるで騎士のRPGとでもいうような冒険の如き興奮を覚える、民族的なメロディが劇的に展開される名曲。途中の民謡パートも素晴らしい。
4.Guardians of Fate 
ヴァイキングメタル史に残らざるを得ない歴史的名曲。とにかくこの馬のような疾走とヒロイックメロディの融合には悶絶必至である。全編を貫く戦士が歌っているかと思わせるヒロイックなクワイアはあまりにも漢らしい。特にサビのコーラスではアドレナリンが異常放出してしまうほどである。そして、クライマックスの「ヘイヘイヘイ」のかけ声は一生記憶に焼き付くことだろう。
5.Old Man 
ミドルテンポで勇壮な哀愁を奏でる曲。疾走曲もさながらミドルにも力が入っておりこのバンドは安心して聴ける。しかし後半の疾走パートはやはり秀逸。劇的。

6.Little Dreamer
ミドルで始まるも一変、中世の民族騎士を思わせるメロディで爆走する名曲。サビでの勇ましいコーラスと荒々しい疾走の連打には震える。ここにに来てもヒロイックなフレーズが連発され笑うしかない。中間部のドラマティックな歌声から疾走の流れには驚愕。さらにはエピローグもあり余韻を残す。つまりは完璧ということである。

7. Abandoned 
ヤリ・マエンパ(Vo、g)が戦士のようなクリーンヴォイスで歌い上げ、そこにヒロイックなギターメロディが絡む様は圧巻。まさに北欧の戦士の哀愁を思わせる。
8.Windrider 
個人的にはランニングワイルド系のヴァイキングメロディで疾走する曲。そこも魅力的なのだが、中間部の劇的なまでに美しく幻想的なロマンスパートが凄まじく、聴く価値は十分すぎるほどある。もはや英雄ファンタジーであろう。
9.Treacherous Gods
勇壮極まりないクワイアが魂を高揚させる曲である。そしてまたもや後半から激烈にヒロイックなパートが開始。馬を駆る勇者か。とにかく戦士の民謡とともに疾走する様は悶絶に値する。
10.Eternal Wait 
聖歌隊のような重厚なクワイアが胸を打つ。こういった映画的な手法も見事にはまり、彼らの音楽性の高さと可能性を感じさせる。

11.Battle Song
タイトルからしても分かるように北欧戦士の戦いの歌である。激烈な疾走からサビのとてつもなくヒロイックなコーラスへの流れは言葉にならぬほどの高揚感を得ること必死。そして、最後ここまで来て全曲捨て曲なしとは驚異的である。
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Dragonlord (Tales of Noble Steel)



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 1999
Reviews: 84%
Genre: Epic Power Metal


イタリアのエピック・メタル、ドミネの1999年発表の2nd。


イタリアのフィレンツェ出身のドミネは、唯一のオリジナルメンバーであるエンリコ・パオリ(Enrico Paoli:g)とリッカルド・パオリ(Riccardo Paoli:b)の兄弟に率いられたバンドであり、一貫性のあるサウンドをファンに提示し続け、伝統的なエピック・メタルをドラマティックに創造してきた。一部のカルト的なエピック・メタルのマニアたちから多大な支持を受けたバンドは、1983年の結成後、一時は活動休止に追い込まれたが、不屈の闘志で幾度となく再起した。ドミネのサウンドは、サボタージュ(SABOTAGE)のシンガーだったモービィ(Morby:vo)の加入によって大幅に変化し、伸びのあるハイトーンを武器にして、イタリアン・メタル・バンドが頻繁に陥る、ヴォーカルの難点から脱出することに成功した。オペラティックなコーラスやヒロイックなギター・ソロを多用する箇所も、バンドの大きな特徴だった。

ドミネの第2作『DragonLord(Tales from the noble steel)』は、長々と題された正式名のタイトルからも分かるように、コンセプト・アルバムの手法を採用していた。一般的に《剣と魔法の物語》と呼ばれる、古代の魔法が支配し、剣が猛威を振るう様々な時代を主な舞台として、本編の楽曲は成立した。幻想的なアルバム・タイトルが物語っているように、"メルニボネのエルリック"(*注釈)が作品のメイン・コンセプトだった。ドラゴン王(DragonLord)とは『永遠の戦士』である主人公、エルリックのことに他ならない。ドミネの《剣と魔法の物語》に対する思い入れは相当なものであり、この後のアルバムにもその傾向は顕著だった。

本作は雄大なヒロイック・ファンタジーのコンセプトに忠実であり、シリアスな作風を貫き、徹底して作られている。この手の音楽に必要な語り(ナレーション)、SEの導入など、エピック・メタルの愛好者には御馴染みの内容が登場する。また、今回はキーボード奏者として新たにリッカルド・イーアコーノ(Riccardo Iacono:key)が迎えられており、バッキングでも重厚感が増している。ケルト音楽に通じる幻想的な音色も使いこなし、まさにそれらしい世界観を描いている。ギター・サウンドは伝統的な正統派メタルの流派を踏襲しており、ヘヴィメタリックなリフや情熱的なギター・ソロが高揚感を高めていく。これらの要素は非常に荒々しく、またヒロイックであり、典型的なエピック・メタルを名乗るに相応しい出来だった。楽曲の完成度の高さから、地元イタリアでこの『DragonLord(Tales from the noble steel)』が"ALBUM OF THE MONTH"に選出されたのは必然的な結果だった。

本作にてドミネは、既に絶対的な個性というものを開花させている。過去のバンドたちを調べても、ここまで剣と魔法の世界を忠実に再現したエピック・メタルはあまりなかった。なぜなら、その大半は気高い理想に反して、チープなサウンドに収まっているからだ。しかし、ドミネは驚くべき内容を『DragonLord(Tales from the noble steel)』の中で披露し、かつての常識を覆した。ある種、本作はヒロイック・ファンタジー系のエピック・メタルの一つの到達点ともいえる内容だった。 エピカルで劇的にヒロイックなヘヴィメタルを探していて、妖艶な幻想世界に浸りたいのなら、このアルバムは迷わず買うべきリストに含まれるだろう。

*注釈:原題「Elric of Melniboné」。 エルリックとは、イギリスの小説家マイケル・ムアコックの創造したヒロイックファンタジー巨編『永遠のチャンピオン』シリーズの中の《エルリック・サーガ》における主人公の名。またメルニボネというのは、物語の舞台である新王国が勃興する以前に、一万年に渡り世界を支配した世界の中心に位置する竜の島のことである。エルリックはメルニボネに生息する人類とは異なる人種《メルニボネ人》であるため、このような命名をとる。



1. 宣戦布告
Anthem (A Decloration of War)
先述したように、《剣と魔法の物語》の世界を描く幻想的なイントロダクションである。戦いが始まる様の緊迫した雰囲気を漂わせる。

2. サンダーストーム
Thunderstorm
モービィの超絶なハイトーンが炸裂する名曲。タイトルでもある歌詞「Thunderstorm」を連発するパートのインパクトは絶大。その部分が「チャンダァァァァストォォォォム」と聴こえるのも凄まじい。この時点で既にシリアスな緊張感が絶えない。爆発力に満ちており、素晴らしいカタルシスを感じさせる。また、高速のドラムと共に刻まれるリフも漢らしさを感じさせる。

3. ラスト・オブ・ザ・ドラゴンロード
Last of the Dragonlords (Lord Elric's Imperial)
メルニボネのドラゴン王の最後を歌う叙事詩である。最強のドラゴンたちが高く飛ぶ時、彼は最期を遂げるであろう。邦題は「エルリック軍の進撃」。実に大胆な訳をしたものだ。ミドル・テンポながら非常にヒロイックな雰囲気が漂う楽曲であり、エピック・メタルらしい緊張感に満ちている。サビでのエルリック軍の進撃を思わせるコーラスは実に秀逸。何度でも聴きたいメロディーである。また、中間部のギター・ソロも素晴らしく、英雄の長い道程を想像させられる。

4. ブラッド・ブラザーズ・ファイト
Blood Brothers' Fight
メタリックなギター・リフがザクザクと幻想的なキーボードの中で刻まれる佳曲。ヴァースへの流れは、ヒロイックなヘヴィメタルらしい。途中でのテンポ・チェンジ、及びケルティックなギター・メロディの導入などドラマ性も高い。

5. ディフェンダー
Defenders
古代世界の威厳を伴って疾走を繰り返す名曲。高速のメタリックなリフに、ドラマティックな歌パートが繋がる部分は胸を打つ。キーボードも幻想的に絡み、唯一無二の世界を描く。後半の劇的なテンポ・チェンジから雄々しい掛け声への流れには、戦士の闘争本能が呼び起こされる。サビでの荘厳なコーラスは素晴らしく勇ましい。ラストの超絶なハイトーンの咆哮も身を震わせる。

6. 軍神マーズ
Mars, the Bringer of War
不気味な語りが始まるインストゥルメンタル。これは調べた結果、エルリックが地獄の公爵アリオッチに助力を求める場面であるらしい。

7. ドラゴンロード
Dragonlord (The General Master of the Mightest Breasts)
新王国にて行われる数々の戦争、千もの戦場を駆けるエルリックの波乱の戦いを物語る。彼は黒き剣の使い手であり、光の帝国メルニボネの王子、そして、ドラゴンの王として運命(フェイト)によって定められている。この楽曲は、その悲壮なる英雄エルリックのメイン・テーマ。壮絶な大作である。まさにエルリックの世界観を限りなく表現した、雄大な名曲。オープニングとラストに配置されたシンガロング・コーラスの勇ましさは天にも昇る。女性コーラスが入る箇所は絶品。メロディと行進曲調が一体となり、ヴァースからコーラスへの雄大な流れは、恰もチャンピオンたちの剣と魔法の戦いを傍観しているかのような錯覚に陥る。劇的な展開は終盤にも配置されており、圧倒的なヒロイズムを放つ壮大なギター・ソロから、王国調のリズムへの展開を聴いた時、あなたは架空のチャンピオンになっている。

8. 神々の炎
Uriel, the Flame of God
勇壮なギターが絡み合う佳曲。ダークな雰囲気は果てしなく妖艶に響く。

9. シップ・オブ・ザ・ロスト・ソウルズ
Ship of the Lost Souls
重く暗い雰囲気が支配したエピック・ナンバー。

10. ザ・バトル・フォー・ザ・グレート・シルヴァー・ソード
The Battle for the Great Silver Sword(A Suite in VII parts Opera III)
全7章から構成される巨大なオペラ。およそ10分以上にも及ぶ雄大な大作である。かの有名な『アーサー王伝説』にインスパイアされた内容。この物語は15世紀になってまとめられたが、実際にはその1千年も前に存在していたという。これは中世時代が本格的に幕を開ける前時代のことであろう。本曲では、暗黒時代の陰鬱なる世界観を、古代と中世を掛け合わせたような絶妙なムードを表現しており、バンドの叙事詩的な描写センスを見せる。特に、混沌の神に対し騎士が聖剣を懇願するパートでもある、サビ前の高潔かつ大仰なモービィの熱唱が、途轍もない勇ましさである。目まぐるしく紡がれるギター・ソロもそうだが、実に英雄的なメロディを惜しみなく導入している。しかし、本曲が冗長であるという批判を受けることも多い。


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megadetah2

  
メタルを語る上で欠かせないバンドはいくつもある。
 
今日ここに紹介する「スラッシュメタル四天王」はその中でも、特に重要なバンドたちだろう。その名の通り四天王は4バンドあり、メガデスもその1つに数えられている。 

今日語っていくのは他でもない、バンドの創始者デイヴ・ムステインと共に歩んできたスラッシュメタルバンド・メガデスの苦難の道のりである……。


1982年、メガデスのリーダーとなるデイヴ・ムステインはメタリカにギタリストとして在籍していた。しかし、メタリカのメンバーとの諸問題により、バンドをクビになってしまう。(その頃のデイブはかなりの不良だった)当時のデイブの心の傷は相当なもので本人いわく「親の死より辛かった」そうだ。もしかしたらここからデイブの苦難の道のりは始まったのかもしれない。
その後、メタリカへの復讐心とメタルへの思いを捨てきれなかったデイヴは、たまたま自分のアパートの近くに住んでいたベーシストのデイヴィッド・エレフソンと出会う。夜な夜なベースを爆音で弾くエレフソンにデイブは怒り苦情を言いにいって喧嘩になった。これがメガデスの始まりであった。
そして85年、新たにギタリストとドラマーを加え、念願の1stアルバム「Killing Is My Business... And Business Is Good!」を発表した。(他の四天王に比べ、彼らの1stのリリースは遅かった)この頃から複雑でテクニカルなメタルの要素は含まれていたが、メンバー全員の麻薬中毒のせいで資金が底をつき、劣悪なプロダクションに陥ってしまったという。今でもその音質の悪さは、レコードで聴くことができる。(しかし2002年には念願のリマスターがされた)デイヴの精神状態に伴いメガデス内部での麻薬中毒などの事件は、今後さらに頻繁に起こることとなる。
続く86年には、初期の名盤「PEACE SELLS... BUT WHO'S BUYING?」を発表。タイトルの「平和を売る……しかし誰が買うんだ?」という衝撃的な歌詞等で社会・政治への皮肉を過激なまでに表現した本作は、メガデスの歴史において最高傑作と称するファンも多い。無論私も大好きな作品だ。サウンドはさらに知的になり、彼ら独自のスタイルを完成させた。デイヴはこのメタルを"インテレクチュアルスラッシュメタル"と呼んだ。また、アルバムのジャケットに登場しているヴィック・ラトルヘッドも彼らならではのコミカルな演出としてファンに好まれた。
88年には3rd「SO FAR SO GOOD...SO WHAT!」を発表。このアルバムには、メタリカ時代の親友クリフ・バートンの死に触発されて書いたという名曲を収録。(これについてはリマスター版のブックレットに入っているデイヴの解説に興味深いことが書かれている)なんとこのアルベムはメタルとしては異例のプラチナムアルバムを獲得した。
1990年には歴史的名盤として名高い4thアルバム「RUST IN PEACE」が発表された。もはや伝説的なギタリストのマーティ・フリードマンとドラマーのニック・メンザを迎え、メガデスは黄金時代を迎えるこことなる。マーティのメロディックなプレイにより洗礼された知的なメタルは、最高の域に達していた。
1992年、5thアルバム「COUNTDOWN TO EXTINCTION」発表。以前より若干抑えめなサウンドはよりシンプルとなり、結果として全米チャート初登場2位という驚異的な数値を記録。しかしその後、治まったかと思われていたデイヴの麻薬問題が再浮上し、メガデスはまたもや危険な状態に陥っていくこととなる。
しかし定期的にアルバム製作は続き1994年、6thアルバム「YOUTHANASIA」を発表する。メロディアスなサウンドで全米チャート初登場4位を記録した。
1997年には7thアルバム「CRYPTIC WRITINGS」を発表。黄金時代の集大成的なアルバムだが、メンバーの間に生じた不具合はぬぐい切れなかった。アルバムのポップな内容は、当然ながらファンの間に物議を醸し出した。
さらに1999年の8thアルバム「RISK」ではポップな内容になり、一部ではメガデスは終わったとまで囁かれた。メンバーとの関係もさらに悪化し、2000年には最高のギタリスト、マーティ・フリードマンまでが脱退してしまう。
しかし2001年、起死回生を込め「THE WORLD NEEDS A HERO」を発表。だが現実は甘くなく、中途半端な内容はファンには受け入れられなかった。
そして2002年、衝撃的な事件が勃発。バンドのリーダーであり創始者でもあったデイヴ・ムステインが突如脱退。結果的にバンドは解散してしまう。さらに悲しいことに、デイブは自分のギターをオークションで売り払ってしまったのだ。誰もがメガデスの歴史は終わったのだと、そう思った。
……それから約2年間、デイヴは自分の人生を振り返った。そして彼は……やはり自分はメタルをやり続け、メタルに一生を捧げるために戻ってきたのだった。再びアルバム制作の意思を固めたデイブは着々と準備を続けた。そして2004年にメガデス名義で発売されたアルバム「THE SYSTEM HAS FAILED」は過去のファンの度肝を抜くテクニカルでメタリックな独特の内容で、完全にメガデス再生を世界に知らしめることとなった。私も今でも普通に聴いている傑作アルバムである。その後の彼の話では、メガデスとして再びツアーに出た際のあまりのファンの熱狂ぶりに、メガデスを再び続けていくことを決心したのだそうだ。
それが通じたのか2007年にはアルバム「UNITED ABOMINATIONS」を発表。全米チャート8位を記録するに至った。このアルバムも初期を思わせる攻撃的でテクニカルで邪悪な要素満載で、素晴らしいアルバムとなった。
続く2009年には12thアルバム「ENDGAME」を早くもリリース。黄金期を思わせるエクストリームな作風はメガデス順風満帆を思わせ、また熱心なファンをも熱狂させた。良く言われることだが、もはや彼らの"キリング・ビジネス"はメタル界になくてはならないものとなった。
そして2010年、メガデス復活を再現させるほどの衝撃をファンに与えたのが"ジュニア"として知られるオリジナル・ベーシスト、デイヴィッド・エレフソンの復帰である。メガデスにとってなくてはならないとファンの誰もが思ったデヴィッド・ジュニアが戻ってきたのである。彼はデイブとこれまでのこと(彼らの間には様々な問題があったのだ)を話し合い、遂には和解することができたのである。偶然が呼んだ軌跡かも知れないが、メガデスは再び再生したといっても過言ではないだろう。2010年もメガデスから目が離せない。
今後もメガデスの歴史は、メタルの世界と共に歩み続けるだろう。



……このように苦難の道のりを歩んできたデイヴ・ムステインことメガデスは、メタルファンにメタルとは何なのかを教え、私たちにすべてを捧げる価値のあるヘビィメタルを与えてくれた。 
私はデイブに教えられたことがある。それは、"メタルは何度でも再生することができる"ということである。デイヴはメタルを信じていたからこそ、幾多もの苦労を越えてこられたのだと思う。時には生死に関わることさえも。
メタルは本当に人生を賭けてもいい音楽だと、私はメガデスを通して思うきっかけとなったのだ。彼には感謝しきれない。
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メロディック・パワー・メタル(melodic power metal)


メロディックで正統派より攻撃性のあるヘヴィメタルの総称。

このジャンルはスラッシュメタルと並び日本人にはなじみ深いジャンルである。キャッチーな旋律を大胆に対し、そこにメタルのパワフルなアグレッションが加味されるというスタイルは、多くのファンが好む要素である。メロディックパワーメタルは主に欧州ドイツより発祥しており、ヨーロッパ全域に広がっている。欧州にはアメリカに比べ、圧倒的にメロディックパワーメタルバンドが多いのもその表れである。
基本的なサウンドとしては、先述したように明確ではっきりと聞き取れるメロディを導入していることが挙げられる。その大仰とも取れるメロディは一般的に"クサメロ"と形容され、このメロディの質によってバンドの評価が判断されることも多い。
メロディックパワーメタルを簡潔に表現するとなると"メロディアスで勇壮なパワーメタル"となる。また、メロディックメタルとパワーメタルの融合などと形容するとより理解しやすい。


歴史:
gammaray2メロディックパワーメタルの歴史は、ドイツのハロウィンから始まったというのが一般的な定説である。ハロウィンの1987年から始まったコンセプト・アルバム「KEEPER OF THE SEVEN KEYS」シリーズが成功を収めると、ファン達は新たなジャンル、メロディックパワーメタルの幕開けを感じ取った。彼らに影響を受け、80年代後期から90年代初期にかけては様々なバンドが登場した。中でもハロウィンを脱退したカイ・ハンセンが結成したガンマ・レイ、ハロウィンのスタイルに加えファンタジックな方向性を打ち出したブラインド・ガーディアン、独特のスタイルで他の追随を許さないレイジは、現在も第一線で活躍している。興味深いのは、彼らはいずれもドイツ出身だということだ。


hammerfall1しかし90年代の中期ごろになると、このジャンルは全く注目を受けなくなり、リリース等も極端に減り、シーンは低迷してしまう。そんな中でシーンに躍り出たのが、スウェーデン出身のハンマーフォールだった。彼らは1997年発表の1stでメロディックシーンに衝撃を与え、アルバムは欧州で異例のヒットとなった。このアルバムに網羅されたピュアなサウンドが、方向性を見失っていたシーンに新世代の風を吹き込み、メタルファンの心を掴んだという結果だった。
彼らのデビューに続き世界的にメロディックパワーメタルに注目が集まり始めると、まず大国ドイツのEDGUY(エドガイ)が3rd「VAIN GLORY OPERA」(1998)で成功を手にし、ハロウィンの再来といわれる。また元ムーンドックのクリス・ベイ率いるFREEDOM CALLも1st「STAIRWAY TO FAIRYLAND」(1999)でエピカルなメロディックパワーメタルを網羅しデビューを飾った。一方メロディック・メタルの偉大なるマスター、ストラトヴァリアスを生んだフィンランドからはソナタ・アークティカが美旋律を纏った1st「Ecliptica」(1999)でデビューした。彼らは新世代に必要不可欠な若々しい才能と力で、成功を手にしていったのである。
21世紀世紀に入ると、幾つもの優れたメロディックパワーメタルバンドが次々とデビューを飾るようになる。スペインからは今やシーン欠かせないメロディック・モンスターへと変貌したダークムーアが2nd「THE HALL OF THE OLDEN DREAMS」(2001)でシーンに異臭を放つ。またスウェーデンからはDRAGONLANDが超絶なメロディックスピードメタルアルバム「THE BATTLE OF THE IVORY PLAINS」(2001)で鮮烈なデビューを果たす。これらの新世代のバンド達は、メタル新時代の象徴である。そして、現在も新たなメロディックパワーメタルバンドは生まれ続けている。

このように見ていくと、まさにメロディックメタルシーンは、メタル界の一角を担う強大なマーケットへと変貌を遂げたことが分かる。同時に、初心者にも馴染み易いこのジャンルの開拓は、新たなヘヴィメタルのファン層の獲得にも繋がっており、現在も更に拡大中という事実がある。これも背景に、優れたポテンシャルを持つメタルバンドの存在あってこそだということを、常に忘れてはならないのである。

注)今回、類似ジャンルとして主に本国で発達したメロディック・スピード・メタルについては、メロディック・パワー・メタルの枠の中で扱うのでご了承願いたい。なぜかというと、全てのメロディックなメタルは世界的な視点でメロディックパワーメタルの一括りになるからだ。


代表的なバンド
BLIND GUARDIAN、DARK MOOR 、DRAGONLAND 、EDGUY、FREEDOM CALL 、GAMMA RAY 、HELLOWEEN、HEAVENLY、HAMMERFALL 、LABYRINTH、MASTERPLAN、NOCTURNAL RITES、SONATA ARCTICA
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The Chthonic Chronicles



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 2006
Reviews: 100%
Genre: Symphonic/Epic Black Metal




ロバート・E・ハワード、H・P・ラヴクラフト等の流れを組む天才的な詩人バイロン・ロバーツ(vo)率いる、エピック/バーバリック/シンフォニック/ヒロイック/ウォー系ヘビィメタルの頂点を極めたバルサゴスの6枚目となる現在での最終リリースアルバム。2006年発表作である。前作『Atlantis Ascendant』(2001)の発表から約5年ぶりとなる6枚目のアルバム発表にあたり、これまでドラムを務めていたデイヴ・マッキントッシュ(ds)がドラゴンフォースに加入するために脱退。後任に新しくダン・マリンズ(ds)を迎え発表に漕ぎつけた。強烈な存在感を示すアートワークは、前作と同じくマーティン・ハンフォードが担当。前作まで国内盤が発売されていたにも関わらず、今回国内発売が見送られたのは、セールスによる不振か、歌詞が長すぎるために翻訳家が拒否したためかと思われる(笑)。冗談はここまでにしよう。

本作を私は、バルサゴスのアルバム中の最高傑作、いや全エピックメタル・アルバムの最高地点に位置付ける(もちろん私の独断と偏見で、ある)。エピック・メタルがヘヴィメタルのシーンに生まれてこの方、まさかこのような、超越的な畏怖すべき作品が生まれることは、全く持って驚異的としか表現のしようのない。私は鳥肌が立つ思いだ。事実、これはもはやエピックメタルというジャンルを超越した芸術作品なのではなかろうか。まず、アルバムの概要に入る前に、これまでの彼らの旅を振り返っておいたほうがいいだろう。そうでなければ、我々は全く持って無知のままに、彼らの世界観を理解できないまま終わってしまう(しかし、世界観を全く知らないにしても、音像のみで十分楽しめてしまうのが彼らの凄いところである)。それは残念なことだが、彼らの肥大しすぎた世界観を完全に理解することはほぼ不可能に近い。よって要点だけを抽出しておこう。

バルサゴスの物語...
最初に、バルサゴスの歴史が幕開けた第一作目『A Black Moon Broods Over Lemuria』(1995)から、彼らは太古の時代の地球に目を向けていた。この時代は、人類が始めて生命の息吹を上げた時代であり、バルサゴスの壮絶な叙事詩の物語のすべてが始まった時代であった。創始者のバイロン・ロバーツが夢見たように、太古の物語は、6thに当たるすべての世界に共通することとなった。次に、第二作目『Starfire Burning Upon The Ice-Veiled Throne Of Ultima Thule』(1996)における古代の世界が舞台となった。古代は、野蛮から未だ醒めぬ人類の先人達が作り上げた偉大な文明と戦いが支配する時代であり、バルサゴスの物語の重厚な基盤を固めた。太古から続くハイパーボリア、アトランティス、レムリア、ムー等の煌く文明国家を舞台にした物語であった。これらの太古の失われた諸大陸がバルサゴスに与えた影響は計り知れないであろう。そして、やがて、物語は第三作目『Battle Magic』(1998)にて中世世界に移る。幻想と秩序が支配する輝かしい魔法のような時代であり、バルサゴスの物語ならずサウンドにも多大な影響を及ぼした。それは、大仰かつファンタジックな交響曲の要素であった。続いて彼らは、第四作目『The Power Cosmic』(1999)で未来──またの名を宇宙──へと舞台を移した。技術の驚異的な革新により宇宙へと進出した人類が未知の生命体と出会い共存、戦争を繰り返す最終的な時代であり、バルサゴスの物語に途方もないスケールを齎した時代であった。これによって彼らの世界観には限りがないことを我々は知ったのだ。彼らが最後に描くことになったのは、第五作目『Atlantis Ascendant』(2001)に描かれた現代の時代であった。与えられた多くの時間を探索に費やす最も変哲もない時代であり、バルサゴスの物語にすべてを見通す余裕を与えた時代であった。かくして、彼らの長き探索は続いてきたのであった。そして、*Hatheg-Kla(ハテグ=クラ)として知られる神秘的な山脈から始まって、物語られた──解き放たれた──六つの鍵が、この第六作目『The Chthonic Chronicles』(2006)によってHatheg-Klaに帰還する時が遂に訪れたのである...

*H・P・ラヴクラフトの『蕃神』に記される禁断の霊峰。太古の時代には、大地の神々が住処としていたという。また、古代ハイパーボリアの魔術師による『エイボンの書』には、《スランを東に望むハテグ=クラ》と表される等、バルサゴスの叙事詩にとって極めて重要な位置を担う山脈である。

冒頭から長々となってしまったが、アルバム本編の内容について語ろう。この6枚目のアルバムは、これまで発表されてきた5枚のアルバムの中でエピック・メタルを独自に進化・発展させてきた、強いてはバルサゴスという天武のヘヴィメタルバンドの集大成的作品である。読んで字の如く、他の一切の追従を許さない窮極的に完全な形態に達したエピックメタルアルバムである。進化した面は様々である。これまでアルバムの要となっていたシンフォニック面では、キーボードを多用していたのであるが、今作では、生の交響楽団を起用することに成功。「ハイパーボリア交響楽団」と題された壮大な交響楽団の素晴らしい仕事によって、バルサゴス・サウンドはこれまでとは比べ物にならないほど本格的な重厚感を共有することとなった。よって傑作とされた過去の5枚のアルバムの中で唯一欠点とされた音質のチープさはもはや完全に消え去っており、臨場感、雰囲気、重厚感は限りなく完璧の部類にまで到達した。それを体現するかの如く、異才を放ってきたバイロン卿のナレーションにも空間的な処理が施され、まるで音の中からズルズルと這い出るような不気味さと生々しさを聴衆に感じさせることが可能となったのである。

完璧である本作を語る上で重要なキーワードとなってくるのが、タイトルの「The Chthonic Chronicles(冥界歴程)」である。恐るべき魔道書として幾多の時代に影響を及ぼすこの品は、ある種の神秘世界で有名な『ネクロノミコン』や『ナコト写本』、はたまた『エイボンの書』を想起させる。この書が壮絶な基盤となり、本作各曲のところどころに登場していくのである。いわゆるアルバムのコンセプトは、本格的な神秘世界であり、突き詰めるならばコズミック・ホラーの世界だといえる。アルバムを聴いてみても実にオカルティックで背筋がゾクゾクするような緊張感のあるものである。かつてバイロン卿は、大学でH・P・ラブクラフトについての論文を書き上げた(これについては1stのレビューで触れる)ほどの、熱烈なラブクラフティアン──ラヴクラフトに心酔している者達を時にこう呼ぶのである──だった。これまでの作品にも見られた、クトゥルー神話に通じる秘境的な宇宙的恐怖がこのアルバムには充満している。

完全無比なプロダクション・音質と相俟って、遂にバイロン卿や片腕ジョニー・モードリング(key)が思い描いた世界を表現することが可能となったのである。その結果として誕生したのがまぎれもない本作であり、非常にカルト的な、世にも恐ろしいエピックメタル作品が産み落とされたのだ。同時に、これまでの彼らの栄光の旅を網羅する、集大成的な作品ともなっていった訳である。物語には、彼らが最も追求したといえる太古の世界が主に描かれているのであるが、驚くべきは4thの内容でも触れられていた宇宙の真理のように、まさに地球の起源についての真実、人類学の本質、この惑星の未来についての極めて真理に近い部分まで網羅しているということだ。特に、すべての始まりと終わりを仄めかす#12の歌詞の内容については不気味なものさえ感じる。アルバムの締めくくりも不穏なものだ。しかし、その謎や神秘性がバルサゴスたる由縁のように感じてしまうのも、また事実である。

どちらにしろ本作品がバルサゴス以外の何物でもないことは扱く明白であり、バルサゴスは単にメタルを超越した、一つのジャンルを作り上げたに他ならない。本作の唯一の問題点を挙げるとすれば、あまりにも完璧な窮極のエピックメタルアルバムであるために、聴くのが勿体ないと感じてしまうことだ。よって私などは、このアルバムを封印することとなり、結果的に何か欠点のある別のメタルアルバムの視聴に走ってしまうのである。人間は完璧なものを遠ざけて、欠陥品の中にも魅力のある作品を求めてしまうというのも、悲しい性である。。最もそれを体現しているのが私なのだが。このようなことにならないように、是非バルサゴスファンは、本作を過剰摂取してもらいたいものだ(笑)。

バイロン卿は、インタビューで今後のアルバムについては未定であると語っている。最後の曲でHatheg-Klaに帰還してしまったため、多くのファンは彼らがメタル界から去るのかといぶかしんだ。バイロン卿はこのように語った「我らバルサゴスの物語の宝物庫には資料が十分にある。我らはそれらをレコーディングするかもしれない、しかし、以前のバルサゴスの栄光たる伝説が酷く汚されるか、もしくはそうなるのであれば、その前に我らは自らの仕事をこれまでに切り上げるかもしれないだろう」最近では、頻繁にライブ活動をしているようで、是非このまま新しいアルバムにこぎつけてもらえればと思っている。2009年のインタビューでは、2012年のマヤの歴史的な日付に対する7枚目のアルバムを考慮しているとも明かしている。バイロン卿の話によると、その時、星辰は揃うというが…。



1. 冥皇陛下に捧ぐ第六の賛辞
The Sixth Adulation Of His Chthonic Majesty
太古の魔道書を解読したという男が宇宙の邪悪な存在について仄めかすという、不気味なイントロダクション。聴くことによって目の前に太古の世界が広がり、脅威を感じることができる。進化したバイロン卿のナレーションの迫力が早くも炸裂している曲である。

2. 外界の夜を超えた召喚
Invocations Beyond The Outer-World Night
5thの"In Search Of The Lost Cities Of Antarctica"の完結編。古代地図を手に入れた探検家が竜巻丸(探検家の乗船する船の名である。バイロン卿は、以前にもヨアヒム・ブロックの刀にマサユキ銘を与えるなど、好んで日本名を用いている)で北極に行き地底への入り口を発見する。そしてそこには、数万年の昔に滅んだはずの暗黒世界と《初源の者達》の遺産が眠っていたのである。ここでも雪崩れるようなリフとドラムの猛攻撃は健在。一度の視聴のみで、バルサゴスのサウンドが驚異的な進化を遂げていることを判断するのは容易なことだろう。中間部分には、バイロン卿が生み出した、外界の神性の名を不気味に朗読するパートも登場する。要訳すると、ズルテーフ、ズクゥル、カ=ク=ラ、ゾータン=クゥ、クルオック、グゥル=コオル、アゾール・ヴォル=トースという名状しがたき神性の名が浮かび上がる。

3. 魔神の化身へ捧ぐ百三十の奉納
Six Score And Ten Oblations To A Malefic Avatar
この曲では、前作に登場したカレブ・ブラックスローン三世教授の友人、イグナティウス・ストーン博士の終極的な物語が語られる。彼は偶然にも、1666年のロンドンの大火によって失われたはずの《冥界歴程》を発見する。しかし、その後、彼は謎の秘密結社《ヒルデブランド》につけ狙われる。そして鍵を隠そうそするのだが。物語は非常に緊迫したものであるが、曲はそれを遥かに凌駕するおぞましいものとなっているということを、我々は確認した方がいい。秘教に対する、究極の探索行である。冒頭の謎めく語り、攻撃的で鋭角的なギターリフ、幽玄なオーケストレーションが神秘性を徐々に醸し出していく。中間部では、まるで世界が変わったかの様な驚異的な展開を見せ、過去最も神秘的ともいえるギターメロディが流れる。このパートは、宇宙的な真理を醸し出しているか、または異次元ともとれる超越的な部分であり、舌筆に尽くしがたい興奮を齎す。聴者は、早3曲目にしてサーガの終着点を目撃することになろう。

4. 解き放たれる黒曜石冠
The Obsidian Crown Unbound (Episode: IX)
《黒曜石王冠》サガの続編にあたる。《帝国》は、《黒曜石王冠》の絶大な魔力でヴィルゴシア難攻不落の城塞都市グル=コトースを遂に突破する。そして皇帝クールドは、《黒き湖》のオーガ魔術師と剣聖キアマンクに古代の伝説的な《影の王》を蘇らせる解放の言葉を唱えるよう命じる。非常に荘厳な曲であり、中間部のいきなり鎮まりかえるパートのナレーションはおぞましいことこの上ない。重厚なリフが行進曲調に刻まれる序盤のパートは非常に厳かだ。

5. 滅亡した深海平原の諸王国
The Fallen Kingdoms Of The Abyssal Plain
地球最初の生命を創ったとされる《メラ》。その落とし子は《初源のもの》と呼ばれ、大いに繁栄する。その《メラ》と《初源のもの》に関した神話を元に、忠実に作られたインストゥルメンタルである。人類学的、神秘学的なエフェクトがこの世界の想像もしない太古の時代の光景を我々に見詰め直させる。。潜在的な感覚を呼び覚ます神秘的なシンフォニーである。しかし悲しいかな、《初源のもの》が設計した最後の海底都市は、地上の天変地異によって徹底的に破滅したのである。いかな偉大な文明といえども、最期には滅ばなくてはならない。バルサゴスは、その瞬間を我々に伝えてくれたのだ。

6. クトゥルーの塔に囚われて
Shackled To The Trilithon Of Kutulu
やがて大いなるクトゥルーは、地上にルルイエの館より再び蘇り、地上人らを支配するだろう、というラヴクラフトより発展した「クトゥルー神話」にインスパイアされた曲。迫りくる脅威を見事エピック・リフで表現している。中でもラスト付近の怒涛の展開力は、人間の聴覚では捉えきれない。というのは嘘だが、それほど切迫しているということを分かってほしい。

7. 皇帝の鉄槌
The Hammer Of The Emperor
太古の世界を忠実に再現した楽曲。私にとっては、歴史的名曲といえる曲である。冒頭の歴史を想起させる重厚なリフ、あまりにも器用なオーケストレーションは凡百のバンドが醸し出せるものではなく、最後の古めかしく、古代世界の栄光を綴ったかのようなギターメロディの流れには胸を打つものがある。

8. 解き放たれるカルナックの旧き監視者
Unfettering The Hoary Sentinels Of Karnak
5thの"The Dreamer in the Catacombs of Ur"の前編。ウルの地下墓地に眠る《夢見るもの》にイグナティウス・ストーン博士が遭遇するという物語である。これも背筋がゾクゾクするような、典型的なバルサゴスの曲である。

9. ビザンティウムのキュクロープス式の門を襲撃せし事
To Storm The Cyclopean Gates Of Byzantium
神曲である。バルサゴスが生み出した曲の中で、究極ともいえる超越的な次元に達し得た曲だといえる。私は全ての曲の中でこの曲に対して最も好意的である。歌詞──正確には、ブックレットに記述されているもの──では、皇帝セプティミウス・セウェルスを操りビザンティウムを壊滅させた魔道師アングサール──彼は、ハイパーボリアで登場した「混沌の闇の君主アングサール卿」と同一人物である──について語られているが、楽曲全体の概要は違っているように感じられる。全ての集大成的なインストゥルメンタル曲なのである。これまで、バルサゴスが旅してきた過去・未来・現代すべての世界の光景が鮮烈に蘇り、それは人間の壮大なものに対する根本的な感動を揺さぶり涙腺を刺激する。もしバルサゴス・サーガを締めくくるとしたら、この曲が最も相応しいだろう。

10. 太古の神秘
Arcana Antediluvia
《怪奇なる海》を旅する謎の「黒き船乗り」についての物語。彼の存在は謎に包まれている。勇壮なリフに絡むピアノが非常に神秘的だ。

11. シドニアの真紅の円蓋の下で
Beneath The Crimson Vaults Of Cydonia
火星シドニアにある人面岩についての曲。宗教観も含まれる。火星の人面岩の下には"暗黒銀河の妖蛆"が眠っており、かのものが目覚め地球に到来すれば、三大宗教──キリスト、ユダヤ、イスラム教──は終焉を迎えると記されている。クライマックスあたりでのリフの劇的な加速と雪崩れ込みはあまりにも過激かつスリリング。最後にこれほどの雪崩込みをお見舞いされると、こちらもだんだんと感覚がマヒしてくる。もちろん良い意味でだ。

12. ハテグ‐クラへの帰還
Return To Hatheg-Kla
《大いなる宇宙の眼》を見、真実を悟った者が、この世界の始まりと終わりを知るという、バルサゴス・サーガを締めくくるかのような歌詞である一方、不穏な終わり方を見せる不気味なエピローグである。宇宙的な電子音、神秘的な女性の裏声が虚空に鳴り響く。もしかしたら本当に神秘的なものとは、人間の既存概念では捉えられないのかもしれない。思い返せばバイロン卿の物語は、殆どが断片的で、知識欲の探求に満ちていた。私は、バイロンの"断片的"という形式に関しては、物語が計り知れないほど遥か太古か未来に渡っている故に詳細に記述することができないため、という自論を出すことが出来る。しかし、もう一方の"知識の探求"においては、もう人間の永久的なテーマとして捉える事が最もな解決策であると思っている。この人類の根本的ともいえる深いテーマがあるからこそ、バルサゴスの物語やサウンドは、常に神秘的で、知的好奇心を刺激してくれるのだ。それは決して薄っぺらいことではないし、難しいことでもない。まずは何かを探求する、ということが人間には重要なのだろう。では最後に、死語となっているあの言葉で、バルサゴスの全レビューを締めくくるとしよう。私の駄文をここまで読んでくれた方々には、誠に感謝の意を表したい所存である。


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Atlantis Ascendant



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 89%
Genre: Symphonic/Epic Black Metal



本作は、"Kings Of Barbarian Metal"ことバルサゴスの2001年発表の5thアルバムである。相変わらずコンセプトに合った、SF・ファンタジィを想起させる素晴らしいジャケットが購入意欲を駆り立てる 。このアルバムのアートワークを描いているのは、イギリスのヘレフォード州に拠点を置く幻想作家Martin Hanford(マーティン・ハンフォード)である。ダイナミックな画風がバルサゴスにはマッチしているのだろう…。アルバム本編の制作メンバーは、前作と同じ5人による。最も、バイロン卿とジョニー兄弟さえいれば、特異なそのバルサゴス・サウンドが揺らぐことはないのであるが。

今作は、バルサゴスにとって初めての国内盤がサウンドホリックからリリースされた、日本人にとって記念すべき一作となった。長らく謎に包まれていた彼らの壮大な詩世界も、誠にありがたいことに、全訳されている(もちろんこの5thのみであるが)。私は、これを機にその他の素晴らしいアルバム群も国内発売されることを望んでいたのであるが、その希望はあっけなく崩れ去ったようだ。残念ながら2011年現在、バルサゴスの国内盤は『Atlantis Ascendant』のみとなっている。しかし、この国内盤には、初期1993年のデモ・ボーナストラックが2曲追加され、はたまた歌詞も訳されているのだから、絶対に日本人にはお勧めできる。

まず、今回も徹底された"バルサゴスのアルバム"だといえるだろう。独創的であり、決して他の追随を許さぬ大仰な作品となっている。そして、私たちのような熱心なファンを決して裏切ることなく、また、同時に傑出したエピック・ヘヴィメタルの名盤であるといえる。彼らの場合、すべてのアルバムがかのマノウォーと同じく名盤・傑作に値するが、今作も実に満足いく仕上がりとなった。雪崩込むようなドラムス、エピカルなメロディ、荘厳なナレーション、度肝を抜くシンフォニー、劇的極まりない展開が惜しみなくバルサゴスという神秘の神殿に奉納されているのである。特に、#1~#4までのドラマティックかつダイナミックな展開には、バルサゴスの今挙げた長所が存分に発揮されているといえよう。#3などは、私の大変お気に入りである。一方アルバムの後半は、これまで以上にヘヴィなギターを前面に押し出し、古代遺跡──今作の舞台となっている地上の秘境──を彷彿とされる重厚なサウンドを構築するという試みもみられる。その効果が最大限に引き出されたのが#7~#8であり、聴者は想像を絶する太古の秘境へと旅をすることになる。つまりは、バルサゴスはキーボードを多用しなくても、視覚を刺激する強烈な音楽を創造できるということだ。

広大な宇宙を叙事詩的に描いた前作『The Power Cosmic』(1999)より、今作は物語の舞台を現代──主に19世紀の地球である──に移し、今回も壮大なコンセプト軸は継続された。バルサゴスが平坦な物語を描く必要性などは永久にないのだ。しかし、物語の舞台が正確に現代とはいいづらい。なぜなら、彼らの物語は、過去の偉大な作家であるH・P・ラブクラフト、ロバート・E・ハワード、C・A・スミス──ここに挙げた三人の作家は、伝説的なアメリカの怪奇幻想パルプ雑誌『ウィアード・テイルズ(1923~1954)』に幾多の名作を発表したことから"ウィアード・テイルズの三大作家"と呼ばれる──等の生み出した、一連の謎めく作品群に見られる"太古の脅威を現代の人間が発見する"という形式をとっているからだ。または、冒険家グラハム・ハンコックとでも言えば分かりやすいだろうか。今作では、主にカレブ・ブラックスローン三世教授という19世紀イギリス人の冒険と功績が語られている。この人物は、3rd『Battle Magic』(1998)の#7「When Rides The Scion Of The Storms」にも登場しており、恐らくは生まれ変わりか何かだろう。彼の残した日記の内容が本作の歌詞で触れられているのである。その日誌には、古代神話、考古学、人類学を含む、カレブ・ブラックスローン三世教授の生涯を懸けた探求が綴られており、こういった分野に好奇心を抱く向きならば、非常に魅力的な価値を見い出せる物語である。



1. イプシロン序文
The Epsilon Exordium
カレブ・ブラックスローン三世教授は、人類の起源の本質と失われた太古の文明の伝承、そして、その証拠を探し出すことに人生を奉げた。本編の楽曲の物語の殆どは、彼が危険の中書き続けた日誌の記録によるものである。本曲は、何かが始まるとでもいうような行進曲調のインストゥルメンタルであり、古代の原始的なメロディが胸を打つ、視覚を刺激する曲である。

2. アトランティスの勃興
Atlantis Ascendant
カレブ・ブラックスローン三世教授が発見した碑文(粘土板)より、太古のアトランティス大陸の起源を紐解くという、このアルバムを代表すべき名曲。碑文によれば、遥か大昔に、第三の巨大な地殻の激変が大陸の表面を新たに作り出す以前、太古の世界において、一つの国家が他のすべての国家を圧倒したと刻まれている...それこそがアトランティスであったのだ!楽曲は、勇壮な原始の警笛が至る所で鳴り響き、まさに栄光のアトランティスが蘇ったかのよう。また、ブラックスローン教授の失われた文明に対する探索のロマンを、後半の秘境探索の如き壮絶な展開に垣間見ることができる。

3. ドラコニスの大地
Draconis Albionensis
時代とは変化するもの。故に神秘の時代も終わりを告げようとしていた。伝説的な時代の終わりごろ、偉大なるアルビオンのドラゴン卿らの最後の戦いが記されている。彼らは、畏怖すべき異教徒らからアルビオンの全王国を守ったのだ。ウィルルド・シニンガ!曲としても、このアルバム中で出色の出来である。宇宙と太古の幻想的な世界が見事に混ざり合い、非常に独創的かつヒロイックな雰囲気を持つ。ギターメロディに関しては、宇宙的であり、実にロマンティックだ。なによりキーボードの重厚なメロディからギターソロへの展開が劇的。後半のいきなり鎮まるパートは必聴。私は、ここまで"圧倒的"という表現が相応しいと感じた曲にこれまで出会ったことはなかった。

4. 古代宇宙形状論学者の星の製図
Star-Maps Of The Ancient Cosmographers
タイトル「古代宇宙の星図」──正確には、宇宙形状論学者の地図のことを指している──だけあり、オペラティックな音楽性がある。カレブ・ブラックスローン教授は、夢を見、遥か太古に全宇宙の惑星の位置を示した星図を発見した魔術師のことを知る。ここでのギターメロディも素晴らしく、はっきりいってクサいのだが、大仰極まりなくて良い。神秘的な時代(世界)の光景と、永久に失われた儚いロマンを感じる。

5. アンコールワットの亡霊
The Ghosts Of Angkor Wat
怪しげなイントロ。

6. 極北の帝国の紋章の下に煌く千本の剣の輝き(エピソード:Ⅲ)
The Splendour Of A Thousand Swords Gleaming Beneath The Blazon Of The Hyperborean Empire (Part: III)
伝説的な《極北の帝国の紋章の下に煌く千本の剣の輝き》に幕を下ろす、壮絶な最終章であり、バルサゴスファンの間での聖典となっている楽曲。少々物語をまとめて拝借しよう。 "壮麗なるハイパーボリアを見よ。北の煌く宝石。我らがハイパーボリアの王は完全復活した混沌の闇の君主を前にして絶体絶命の危機に陥りながらも、その勇敢な力を失うことはなかった。全宇宙の秩序を守り、究極の混沌を打ち破るため、彼は最後の希望である《影の剣》に封じ込められていた不死身の神の不滅のエキスとひとつになることを選んだ。偉大なる王よ!それは人間としての死を犠牲とし、永久に人間の世界を後にすることに他ならない。そして王は、勇敢に戦ったハイパーボリアの戦士たちに最後の戦いに挑むべく、最後の命令を下すのだった……ハイパーボリアの王と戦士たちに、永遠の栄光あれ!" 残念ながら、王とアングサールの戦いの結末は語られずに物語は幕を閉じる。主人公は、結果的にアングサールを打ち破ったのだろうか。本曲はあまりにも攻撃的であり、正直何が起こっているのか分からなくなる。とんでもない情報量が脳内に送り込まれるのだ。しかし、本当にこの楽曲は大傑作に値する。いつか小説や映画化することを熱望したいが、問題は予算である。作品が未完のまま終了するというところも、人間の心理に最も印象に残る手法であり、見事という他ない。バイロン卿は、これらをすべて計算していたのだろうか。

7. ウルの地下墓地に眠る《夢見るもの》
The Dreamer In The Catacombs Of Ur
考古学者イグナティウス・ストーン博士がウルの地下で見出した《夢見るもの》について語られている。ギターが前面に押し出された過激なウォーメタルであり、古代都市のような重厚な雰囲気も漂う。神秘的で謎めく曲だ。ちなみに尺八を取り入れた、歴史的な曲。もちろん見事にはまっている。

8. 南極大陸の失われた都市を求めて
In Search Of The Lost Cities Of Antarctica
南極大陸の失われた都市を求める一人の勇気ある探検家の物語。彼の探し求めた南極大陸の都市──かつてそこには、天に向かってその輝きを誇った、人類誕生以前の原初の大都市が存在していたのである。メタリックなギターの作り上げるリフの分厚い壁が、ヒロイックな高揚感とともに襲いかかる、激烈な曲。特に、クライマックスであるリフの雪崩れ込みは壮絶ともいえる。

9. 影の年代記
The Chronicle Of Shadows
3rdを想起させる勇壮なエピックスピードメタル。物語の各所に登場する《影の年代記》の断片を語る楽曲である。非常に歯切れの良い勇壮なメロディが耳に残ってやまない。ファンファーレの効果も絶大だ。

10. 漆黒のピラミッドへ渡る六つの鍵
Six Keys To The Onyx Pyramid
幻想的にアルバムに幕を下ろすエピローグ。ここでカレブ・ブラックスローン教授の日記は途切れている…。不穏な終わり方が謎めいていていかにも彼ららしい。

11. アトランティスの尖塔の夢
Dreaming Of The Atlantean Spires:Alpha
ボーナストラック。1stの#2と同名の曲。これは初期のころのブラック色が強かった彼らが認められる、貴重な曲だろう。曲としてはまさに邪悪で、それらしいといえる。

12. 輝ける火宝石
By The Blaze Of The Fire Jewels:Zero
上と同じくボーナストラック。特に突出したものはない。


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The Power Cosmic



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1999
Reviews: 95%
Genre: Symphonic/Epic Black Metal



本作は、"KINGS OF BARBARIAN METAL"ことイギリスのバルサゴスの4thアルバムにあたる。正式な発表は1999年。前作、前々作をバイロン・ロバーツ(vo)、 ジョニー・モードリング(key)、クリス・モードリング(g)のたった3人で制作してきた彼らであるが、今作よりベースにマーク・グリーンウェル(b)を、ドラムにデイヴ・マッキントッシュ(ds)を加入させた。そのことにより以前にも増してバンドらしくなり、サウンドにも切れが出てきた。メンバー増加は、バルサゴスにとって、大いに正解だったようだ。

90年代後半は、バルサゴスの黄金時代といえよう。驚異のエピカル・シンフォニックブラックを提示した傑作2nd『Starfire Burning Upon The Ice-Veiled Throne Of Ultima Thule』(1996)、爆発的なまでに大仰なシンフォニーでファンの度肝を抜いた名作3rd『Battle Magic』(1998)、そして、本作にあたる4th『The Power Cosmic』に至るまで、アルバム内容の完成度を劇的なまでに向上させてきた。バルサゴスが他のあらゆるバンドと完全に差別化される要素には、主に捨て曲がないことがよく挙げられる(他にも大仰さ、テクニック、スケール感とキリがない)。本作も全編に渡り楽曲のクオリティが極めて高いのは、あえて記すまでもないことだ。

いうまでもないが3rdアルバムに当たる前作『Battle Magic』は、シンフォニック・エピックまたは、ヒロイック・ファンタジー系ヘビィメタルの確固たる名盤だった。サウンドを大胆にも中世系の煌びやかなスタイルに変化させ、大仰なシンフォニーの中にも自らが確立した「BARBARIAN METAL」に恥じぬ攻撃性と過激性を加味させることに成功した。サウンドと同様、詞世界的にも発展しており、膨大な物語の中には、中世を舞台にした叙事詩すらあった。 実に、バルサゴスの無限の可能性を顕著に示したアルバムだったといえるだろう。

そして、今回、コンセプトの自転軸は宇宙に移り、まさに広大なアルバム内容となった。今まで古代から中世へと物語を進化させてきた彼らであるが、ここにきて宇宙を舞台に選択し、その可能性を更に押し広げた。印象的なアルバム・ジャケットの写真には、ライトセーバー(なんと両刃である!)を持ったバイロン卿が載っており、まずファンはにやりとさせられるだろう。そんなユニークなジャケットであるが、メインのアートワークは意味深なものであり、インタビューでバイロン卿は、中心に描かれたのが"半神ズゥラ"であり、後ろにうっすらと映っているのが"プライム・ヴォイジャー"だと語っている。どうやらこのアルバムでは、未来世界で起こる出来事を描いているらしく、非常に好奇心をそそられる内容だ。テーマを宇宙にしたこともあり、ここでようやく広大なバルサゴス・サーガの全貌が見えてきたという印象も受ける。彼らの物語は、太古(Antediluvia)、古代(ancient)、中世、現代、未来、さらには異次元にまで及んでいることは有名だが、どちらにしろ途方もなく壮大な世界観だ。

ではここから音楽面について記述していこう。様々な進化を遂げてきたバルサゴス・サウンドであるが、既に円熟の域に到達している。大仰過ぎるキーボードは、やはり今作でも圧倒的なインパクトを放つ。キーボードの生むファンタジックなメロディがアルバムの要となっているのである。当然の如く、これは、1st以外のすべてのアルバムに共通していることだ。また、前作でもやり過ぎなまでにフューチャーされたギターメロディが今作でも健在であり、過剰にヒロイックなメロディを紡いでいる。今作では宇宙が舞台ということもあり、オペラティックな要素も加味され、スターウォーズのサウンドトラックのようなスペクタクルなメロディが頻出する。結果、歌詞世界を凌駕するほどスケールのあるサウンドとなったのである。そして、毎回驚くのが圧倒的な展開力であり、一大サーガと呼ぶに相応しい、劇的極まりない楽曲群で構成されている。映画のスクリーンのように展開するメロディの応酬は、筆舌に尽くしがたいほど素晴らしいものだ。これほどの興奮と驚異を音楽から感じ取ることが出来るのも、人生で希少な体験である…



1. 星々の目覚め
The Awakening Of The Stars
未来世界にて、火星で謎の二十面体が発掘され、《至天秘録》のバラバラとなった欠片のありかが明かされる、という内容を含む、あまりにも期待感を煽る劇的なシンフォニックなインストゥルメンタルである。エドガー・ライス・バロウズの「火星シリーズ」を思わせるような、勇壮かつ幻想的なメロディが、これから始まる壮大なスペース・サーガを物語っている。

2. "雨の海"に眠る旅人達
The Voyagers Beneath The Mare Imbrium
何千年もの時を経て蘇った合成魔人ズゥラと月面に封印された7体の宇宙的存在との間に勃発する新たな抗争を予感させる宇宙的な曲。物語の幕開けを思わせる劇的かつメロディックな冒頭のパートが素晴らしい。また、ギターの齎す宇宙的な哀愁が胸を打つ。後半の、宇宙へ上昇するかのようなヒロイックなパートの高揚感と盛り上がりも劇的極まりない。

3. 至天秘録
The Empyreal Lexicon
《至天秘録》を探索するズゥラ。あまりにも大仰すぎると思わざるを得ない名曲である。オープニングの宇宙のロマンを思わせる鳥肌もののギターソロから、高速のキーボードパートへの展開は、特に特筆すべきだろう。劇的なまでにヒロイックであり、ロマンティックな曲だ。メロディの展開は絶品であり、オープニング、中間、ラストと完璧な流れを構築する。中でも、中間部の重厚なギターメロディは圧巻であり、宇宙帝国さながらの荘厳さに酔いしれることができる。至高の名曲である。ちなみに、バイロン卿がズゥラに扮して唱えている(歌ってる?)言葉は、「ザァザム=ライア」、「ザザイ=トーン」と読み、《至天秘録》の究極の力を解放するキーワードとなっているのである。

4. 殺戮及び狼の会合
Of Carnage And A Gathering Of The Wolves
物語は、地上の神秘地帯である《ダーケンホールドの森》(2ndの9曲目に初出)にすら通ずる。宇宙空間を浮遊するかのような錯覚に陥ること必至の神秘的なメロディが、バルサゴスの壮大な世界に導く神がかり的な曲である。サビの部分の神秘的なギターメロディがこれも絶品で、独創性が極めて高い。また中間部以降の未知の世界へ踏み込むかのような幻想的なキーボードの展開は、感動的ですらある。一体どこからこんなにファンタジックなメロディが立て続けに出てくるのか疑問だ。

5. カリスト昇ず
Callisto Rising
《至天秘録》の欠片が隠されたという、小惑星カリストの黒き氷面化へとズゥラは旅する。4thアルバムを代表する屈指の名曲。スタメナのクラシックの名曲「モルダウ」をモチーフに、タイトルである「Callisto Rising~」を激烈なリフを伴い叫びまくるというなんとも型破りな曲。それだけでもすごいのだが、息を呑むクライマックスパートが宇宙一大決戦とでもいうべきなのだ。スペイシーなメロディに次ぐメロディの雪崩込みは、凄まじいの一言に尽きる。本当に宇宙で戦争が起こってるかのようなスペクタクルな曲である。ファンの間で人気が高いのも頷ける。

6. 第四天主の神罰
The Scourge Of The Fourth Celestial Host
個人的に、このアルバムで一番好きな曲であると共に、全アルバム中でも屈指の名曲だと思っている。#5から流れるように続くという展開も素晴らしいことさながら、次々に繰り出されるコスモなシンフォニーが全身を貫くように刺激する。バルサゴスだからこそ成し得た宇宙の大河である。流れるようなシンフォニーが渦巻くように、さも宇宙空間を漂うように、静まるように押し寄せる。この曲に銀河究極のロマンティシズムとヒロイズムが詰め込まれているといっても過言ではない。中間部の語りから銀河大河メロディへの展開こそ私が求めていた至高のドラマだ。その後のサビの激烈なヒロイズムが流れるギターソロに加えドラムの叩きつけは、至高ともいえるパートであり、彼らの齎した最高のパートに位置する。また、この曲は漫画(アメリカンコミック)になったそうである。銀河のス-パーヒーロー、シルバーサーファーも歌詞に登場しており興味深い。ノリン・ラッドとは、シルバーサーファーがかつて呼ばれていた名だ。またタイトルの「The Fourth Celestial Host」とは、地球に四番目に飛来したセレスチィアルズであるという。 セレスティアルズとは宇宙の旅人、神に等しい力をもつ存在である。

7. 見よ、咆哮を上げる戦軍は天より降臨せり!
Behold, The Armies Of War Descend Screaming From The Heavens!
これまでのイメージを損なうことのない、宇宙観の込められたバルサゴス曲。これまた宇宙的なギターメロディが高揚感を高める。歌詞には、日本の怪獣映画に登場するゴジラが登場。バイロン卿はこういうのも好きだそうだ。またこの曲の物語は《至天秘録》を巡る宇宙戦争とは別種の内容であり、銀河大蛇ザクマクラと《蛇殺し》センティネル・オメガの戦いを描いた宇宙叙事詩である。

8. ムーの謎めく十三の予言
The Thirteen Cryptical Prophecies Of Mu
「ムーの謎めく十三の予言」という意味深なタイトルを持つ。興味深いのは、破滅したズゥラの真実に続き、最後にあらゆる時間軸の歴史の監視者であるマスター・アルタルスが過去にアトランティス、ムー、レムリア、ハイパーボリアの偉大なる諸王国のすべてが最終的に大洋に沈んだことを明かすということだ。一体何故、それらの偉大なる諸王国は滅ばねばならなかったのか。これは、人類の永遠の謎でもある。曲としては、このアルバムのラストに相応しい盛大な曲である。宇宙決戦のフィナーレともとれる。どう聴いてもスターウォーズの宇宙帝国にしか思えないファンファーレとドラムが打ち鳴らされるパートのインパクトは絶大である。また、そのとき「kill!」とバイロン卿が連発しているのがさらに衝撃を強めている。全体で40分と短いアルバムだが、それ以上の充実を味わえたのは言うまでもない。


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ヴァイキングメタル(viking metal)

その名の通り北欧の戦士として有名なヴァイキングに重点を置いたヘビィメタルの総称。 

ヴァイキングとは、中世英雄時代に主に活躍したスカンディナビア戦士及びノルマン戦士のことを指すことが多い。ヴァイキングメタルはその戦士の系統を純血に受け継いでおり、詞世界やバンドの容貌に全面的に表れている。
北欧での基本的な言い伝えである北欧神話を題材にしたり、北欧の偉大な英雄を讃えたりと、極めてエピカルな要素が多いのも特徴の一つである。また、ヴァイキングメタルバンドの多くが北欧生まれのバンドである。
興味深いのは、ヴァイキングメタルをプレイする者の多くがキリスト教が入ってくる以前の北欧にあった古い考え方を受け継いでいるという事実である。ヴァイキングメタルにはペイガニズムが根底にある。彼らは自分たちの祖先のルーツであるペイガニズムを体現するために、最も適した音楽といえるヘヴィメタルを用いたのだ。
 

サウンドはヴァイキングメタルに恥じぬ民族的なものが多い。そもそもヴァイキングメタルには民族的要素が必須といえる。自分たちの民族主義を表現するためである。具体的にはケルト音階、北欧民謡などの導入が挙げられる。それらはギターのメロディに現れたり、笛やバイオリンばどの管弦楽器にみられることもある。
非常に中世的な音楽になりがちで、大きな特徴となっている。またヴァイキングメタルはデスメタル、ブラックメタルを基盤としており、高速のツーバスや歪んだギターが醸されることが多い。ヴァイキングメタルのサウンドをまとめると"民族的で勇ましく漢らしいヘヴィメタル"ということになる。
 

ヴァイキングメタルの歴史は始祖Bathoryの1990年に発表されたアルバム「Hammerheart」から始まったとされる説が一般的である。またそれ以前にヴァイキングメタルの特徴といえるケルトメロディを取り入れ、荒々しいメタルサウンドを提示したのはランニングワイルドであるともいえる。しかしヴァイキングメタルの決定的な特徴である北欧神話を取り入れデス・ブラックメタルを基盤としたBathoryがやはりヴァイキングらしいといえる。驚くことに、manowarはBathory以前に北欧神話を題材とした歌詞を書き世界観を表現していた。故にこの時期にもヴァイキングメタルの基盤はあったのかと思われる。
その後、ノルウェーのEnslavedが始めて自分たちの演奏しているメタルがヴァイキングメタルというジャンルであるのだと断言した。彼らの3rd「ELD」はヴァイキングメタル史の歴史的名盤とされている。これによりヴァイキングメタルはアンダーグラウンドでありながら徐々にメタルファンに認知されていった。
そしてヴァイキングメタル史において次に特筆すべきは90年代後半にスウェーデンから表れたMITHOTYNのことであろう。これまでのEnslavedやEINHERJEのヴァイキングメタルを純粋に継承しつつ、大仰なまでにメロディックなケルトメロディをツインリード奏でまくるという破天荒なスタイルは、多くのヴァイキングメタルファンに「これぞヴァイキングメタルの理想形だ」と讃えられた。ヴァイキングメタルの王がいるのだとしたら、それは彼らだろう。そしてMITHOTYNによって決定的な力を得たヴァイキングメタルは、北欧のみならず、あらゆる国に侵略をし始めるのである。しかし残念なことに、MITHOTYNは2000年に入ると解散する。
そんな彼らを追うように登場したensiferumは、新世代ヴァイキングメタルの雄であるといえるだろう。まんまMITHOTYNを継承したような勇猛果敢なサウンドは、すぐに熱心なファンに認められた。この頃登場したヴァイキングメタルバンドの中にはmoonsorrow、FINNTROLLなどの素晴らしいバンドが多くいる。
現在ヴァイキングメタルは多くのファンが愛するメタルジャンルとなり、ムーブメントともとれるほどの盛り上がりを見せ、世界中をもはや侵略したといっても過言ではないだろう。それは即ち、今でも信じられる古い世界の思想が現代に戻ってきたということでもある。といってもまだまだ知られてない部分は多いが……。



代表的なバンド
BathoryEnslavedMITHOTYNEINHERJEmoonsorrowFINNTROLLensiferumTýrFalkenbach
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Champion Eternal



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 1997
Reviews: 75%
Genre: Epic Power Metal


ドミネの1997年発表の1st。


ドミネはイタリアのフィレンツェで1983年に結成された。1986年からデモテープの制作を始め、1994年までに4本発表した。その後、1997年、イタリアのレーベル「Dragonheart」から、このデビューアルバム『Champion Eternal』がリリースされた。 唯一のオリジナルメンバーであるエンリコ兄弟を筆頭に、バンドは過去の"剣と魔法の世界"をエピック・メタルの音楽のスタイルで表現することに、方向性を定めていた。

その世界観の通り、本作の内容は正統的なパワー・メタルと、カルト・エピック・メタルの要素が混ざり合った複雑な作風だった。プログレッシブで冗長性が顕著な大作を多く導入する本作は、充実した完成度とは完全に語れず、何か欠け落ちた部分があった。イタリア最古のSabotageの元メンバー、モービー(vo)のヴォーカルも、この頃はまだ開花していなかった。

しかし、世界観に光るものは見えた。タイトルに現れたマイケル・ムアコックの小説『永遠の戦士』への憧憬、ロバート・E・ハワード等に基づいた伝統的なヒロイック・ファンタジーへの傾向は、エピック・メタル・バンドとして価値のあるものだった。 こういった世界観を追及したこのアルバムは、雰囲気は十分に表現されていた。後は楽曲だけだった。もう少し、明白なインパクトが必要だったのだ。中には"The Freedom Flight"のような素晴らしい楽曲もあったが、それでも無駄な部分は多かった。しかし、アンダーグラウンドのエピック・メタルのマニアたちは、本作に強烈に惹かれた。 バンドの情熱や探究心は一流だった。



1. The Mass Of Chaos
2. The Chronicles Of The Black Sword
3. The Black Sword
4. The Freedom Flight
5. Army Of The Dead
6. The Proclamation
7. Dark Emperor
8. Rising From The Flames
9. The Midnight Meat Train
10. The Eternal Champion


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