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Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


◆新着情報 News Topics
[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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偉大なるエディー~グレイテスト・ヒッツ



Country: United Kingdom
Type: Compilation
Release: 2002
Reviews: 80%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの2002年発表のベスト。


アイアンメイデンは数々の名曲を世に送り出してきた極めて偉大なバンドだが、その歴史を振り返ることが必要であった。若い世代に「アイアンメイデンを聴いてみろ」と一方的にいっても、膨大な作品数から頭を悩ませることは否めない。そこでポール・ディアノ時代を都合よく切り取った本作『Edward the Great』が発表されたということだ(ポール・ディアノ時代の作品が気になった向きは、迷わず初期のクレジットを漁っておくことをお勧めする)。
本作は完成されたアイアンメイデンのメロディック・ヘヴィメタルの名曲群を一度に聴くことが出来る優れた作品であり、初心者には最高品質の教科書的な一枚となっている。無論、リマスターされている音質は最高だ。ヘヴィかつメタリック、ドラマティックかつメロディアスな彼らの魅力は冒頭一発で直に分かる。そして中盤にかけて徐々にドラマ性を増して行き、最後にはすっかりとアイアンメイデンの虜になっているはずだ。例え本作が気に入らないとしても、収録された楽曲は名曲ばかりなので、いつか歳月を重ねた際に引き出しの中を探ることになる。「何故この曲が収録されていない」と怒り出すファンは、お手持ちのアイアンメイデンの作品群からお好きな楽曲を引っ張り出してくるか、自分のコンピュータ上で編集すればよかろう。収録されている楽曲は第3作『The Number Of The Beast』から第12作『Brave New World』までの全16曲。



1. Run To The Hills
第3作『The Number Of The Beast』からの名曲。インディアンの悲劇を扱ったこの代表曲を冒頭に収録するあたりは本作に好感が持てる。
2. The Number Of The Beast
同上のタイトル・トラック。強力なドラマ性と攻撃性は相変わらず。
3. Flight Of Icarus
第4作『Piece Of Mind』から収録。キャッチーなサビの出来は秀逸。
4. The Trooper
同上。奇妙なリフが聴き手のテンションを上げる名曲の定番。
5. 2 Minutes To Midnight
第5作『Powerslave』から収録。メタリックなリフがテンポ良く刻まれる。また、同じく名曲の"Aces High"が収録されていないことはファンの物議を醸した。
6. Wasted Years
第6作『Somewhere In Time』から収録。SF的な雰囲気が印象に残る。『Somewhere In Time』からは何故"Caught Somewhere In Time"は収録されていないのか。
7. Can I Play With Madness
名作『Seventh Son of a Seventh Son』からは4曲が収録。シングルが売れたこの楽曲を収録することに異論はないが、やや緊張感に欠ける。
8. The Evil That Men Do
アイアンメイデンの最高傑作。ブリッジの放つ驚異的なドラマ性は全ヘヴィメタルファン必聴。
9. The Clairvoyant
哀愁を誘うメロディが印象的。シリアスなヴァース・パートも秀逸。
10. Infinite Dreams
劇的な展開を持つメロディアスな名曲。これが『Seventh Son of a Seventh Son』では2曲目だから凄い。
11. Holy Smoke
第8作『No Prayer For The Dying』から収録。この作品は影が薄いが、楽曲は悪くないことが分かる。リフは"The Trooper"に類似。
12. Bring Your Daughter...To The Slaughter
同上。歌のメロディを聴いたのみではハードロックのような軽い印象を受ける。別の楽曲を収録した方が良かったであろう。
13. Man On The Edge
第10作『The X Factor』から収録。シリアスでダークな作風に回帰した事が分かる一曲である。アイアンメイデンにはこちらの方が断然合っている。
14. Futureal
第11作『VURTUAL XI』から収録。爆発的なパワーを放つリフは強烈。攻撃的に絡み合うブレイズ・ベイリーの歌唱も良い。
15. The Wicker Man
第12作『Brave New World』から収録。デビューからおよそ20年経過しているにも関わらず、本曲のような勢いに満ちた楽曲を作り上げる点には感動すら覚える。
16. Fear Of The Dark (Live)
第9作『Fear Of The Dark』のタイトル・トラック。2001年1月に行われたライヴ『ROCK IN RIO』からのテイクを使用している。ファンとの掛け合いが凄まじいエネルギーを生み、会場を埋め尽くす様は圧巻。それもこの楽曲があまりにも素晴らしいからであろう。


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ブレイヴ・ニュー・ワールド



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 2000
Reviews: 90%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの2000年発表の12th。


現実的にブレイズ・ベイリーの加入によってアイアンメイデンが商業面での降下を辿ったことはマネジメント等に影響を与え、早急にブレイズの解雇、ブルース・ディッキンソンの復帰が要求された。アイアンメイデン=スティーブ・ハリスはこの現状に葛藤した末に要求を承諾。マネジメント、そしてブルースとスティーブの間には秘密の交渉が交わされた。ブレイズ・ベイリーはアイアンメイデンのファンに徹底的に非難された挙句、結果的に用済みとして破棄された。アイアンメイデンは『The X Factor』の時点で選択を誤っていたのであろうし、ブレイズ・ベイリーは悲劇的な男であった。しかしこれが真っ当な現実であった。この頃のアイアンメイデンはヘヴィメタルバンドとして巨大になりすぎていたため、既に失敗は許される状況ではなかった。アイアンメイデンが更なる飛躍を遂げるためには、ブレイズ・ベイリーを犠牲にしなくてはならなかったのである。そして多くのファンが沈黙に耐え待ち望んでいたように、この『Brave New World』という偉大な傑作が生み出されることとなった。

アイアンメイデンの第12作目にあたる本作『Brave New World』では、ヴォーカルにブルース・ディッキンソン、またギターにはエイドリアン・スミスが復帰。メンバーはSteve Harris(b)、Bruce Dickinson(vo)、Dave Murray(g)、Janick gers(g)、Adrian Smith(g)、Nicko McBrain(d)の6人編成、トリプル・ギターとなった。そして我々がアイアンメイデンの復活を待ち望んでいたように、彼らも最高の作品をぶつけてきた。音楽性は以前からの踏襲であるが、アイアンメイデンの魅力的な部分はこの作品で極限まで高められている。
本作はドラマ性、重厚感、メロディ、世界観のすべてが完全といえるまで進化した文字通り最高傑作であり、これがアイアンメイデンが到達できる最高の領域と考えられる。本作に表現された驚くべきドラマティシズムはまさに究極と呼ぶに相応しく、我々は正統派メタルでこれほどまでに劇的な展開を多用する作品を他に聴いたことがない。仮に聴いていたとしても、その印象が薄れるほどのドラマ性を本作は有している。最高のドラマ性の外壁を固めるのが重厚なトリプル・ギターであり、初期を彷彿とさせる鋭利なギターのリードメロディは劇的で緊張感に満ち溢れている。勇ましさを増すブルース・ディッキンソンの歌声は既に文句のつけようがなく、全編に渡り完璧な歌唱を聴かせている。
今作でも詞の内容は歴史などの叙事詩的な分野から引用され、また過去に用いたSFの世界観を再び復活させたことで、本作のストーリー性は大幅に向上することとなった。映画からインスパイアされた"Wicker Man"や"Out of the Silent Planet"も素晴らしいし、東洋の古代史を題材とした"The Nomad"の表現力には驚くべきものがある。サウンド面での完成がエピックメタル的な視点にも影響を与えたことは否定できず、この究極のドラマティシズムを持ってこそ、本作での生々しい幻想の物語群が生み出されていったのだと考えられる。元来ヘヴィメタルはより相応しいテーマを与えられることで何倍もの説得力を得るので、アイアンメイデンの選択は正しい方向性である。芸術的にまで磨き上げられたエピックメタルが次々と繰り出される『Brave New World』は、彼らのキャリアにおける最高の作品であり、アイアンメイデンの最後の傑作であるかも知れない。まさにアイアンメイデンに相応しいすべてのものが揃った時期に本作『Brave New World』は発表された。



1. The Wicker Man
クリストファー・リー出演の映画『The Wicker Man』(1973)からインスパイアされた楽曲。完成度は極めて高く、アイアンメイデンのポテンシャルの高さを認識することが出来る。スケール感に満ちたサビは必聴。
2. Ghost of the Navigator
船乗りの航海を描いたエピック。劇的な緩急を使い分け、ドラマ性と緊張感を共存させる。物語の如く、非常に深みのある楽曲である。
3. Brave New World
かつて第6作『Somewhere in Time』で示した近未来の方向性を最新のテクノロジーで完成させたタイトル曲。楽曲に漂う荒廃した機械的な存在感、異様なまでの重厚感が聴き手の興奮を煽る。中間部のソロパートのドラマティシズムは最高のもの。この名曲を持って、アイアンメイデンの近未来的、SF系ヘヴィメタルは完成された。
4. Blood Brothers
芸術性を高めた大作。スティーブの父親の死、戦争等に影響され、いくつものアイデアが融合した楽曲である。交響曲的なキーボードが見事に活躍している名曲であり、サビの放つスケール感は驚異的。ヘヴィメタルとストリングスが芸術的に融合した傑作であろう。
5. Mercenary
ブルースの強力な歌声が炸裂する一曲。大仰な歌唱がサビを最大限に盛り上げる。ギターメロディも素晴らしい。
6. Dream of Mirrors
緊張感に満ちた静寂パートの雰囲気は異様。アルペジオの放つ哀愁、メロディの扇情力は凄まじい。後半のスピーディなパートへの展開には度肝を抜かれる。
7. Fallen Angel
複雑さを排除し、シンプルにまとめ挙げられたメロディック・メタル。勇壮なメロディは印象的。
8. The Nomad
驚異的な完成度を誇る一大叙事詩。独創的であり、東洋を彷彿とさせる旋律の異国臭は生々しい臨場感で溢れ返っている。中間部から始まるメロディアスなパートはエピカル極まりない。その雰囲気はまるで古代東洋の広大な平原を一人で眺めているかのよう。
9. Out of the Silent Planet
SF映画『Forbidden Planet』(1956)を題材にした楽曲。題材の世界観を忠実に再現したとでも表現すべき楽曲であり、終始完璧なSFの世界観を構築。SFタッチのギターメロディは絶品。
10. Thin Line Between Love and Hate
冗長な部分があるのが残念だが、メロディは本作を締め括るに相応しい哀愁に満ちたもの。


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バーチャル・イレブン



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1998
Reviews: 92%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1998年発表の11th。


「一度聴いて好きなったからといって、何十年先も好きでいるかどうかは分からない」
 ──スティーヴ・ハリス


何世紀もの時代を経て始めて評価された芸術家や作家は多い。ピカソは生前に一枚しか絵が売れなかった。この法則は真に価値あるものにのみ適用されるが、アイアンメイデンの第11作目『Virtual XI』に関しても例外ではない、と我々は考える。問題はヘヴィメタルに芸術的要素があるかということになるが、本作はその問題に至っても答えを出している。過去にヘヴィメタルという分野は社会的に不利な立場にあり、音楽評論家たちにも見下されてきた。しかし着実に進歩していることは事実であったが、遠い昔に我々はその進歩の経過を見ることをやめてしまった。ただ僅かに残された忠実なヘヴィメタルのファンのみが今もヘヴィメタルの進歩を見届け、今なお新しい発見をしている。

長い間我々は盲目の立場にあった。かつてブルース・ディッキンソンのいないアイアンメイデンを否定的に受け止めてきた我々は、肝心なことに傑作として成立するはずの『Virtual XI』を見過ごしてしまっていた。固定観念、先入観、これらは長い間、人間を真実から遠ざけてきた。『Virtual XI』は再評価される必然性が大いにある作品であった。アイアンメイデンはこれまでに叙事詩的な長編作品を多く発表してきたが、本作のようにここまで繊細な表現力を持ち合わせてはいなかった。豊かな創造性と繊細な描写力が生々しい芸術作品の傑作を生み出す条件として、本作の"The Clansman"ほど適切な楽曲は存在していない。またドラマティック・ヘヴィメタルの究極体として"Don't Look to the Eyes of a Stranger"も同じである。

真の芸術が理解されるのは難しい。なぜなら世俗では社会性や時代性の適合が追求され、芸術性は後回しにされるからである。我々はいつの世も生きるのに必死であった。芸術などの人間らしい──生き残ろうとする本能も、人間らしいとはいえなくもないが──才能はあまり必要とされてはいない。我々は音楽などは気軽に楽しめればいいものであると、図らずも心の内で感じている。故にアイアンメイデンの『Virtual XI』は難解過ぎ、芸術的にまで高められた内容の理解を得られなかった。現在は本作がどのような評価を受けるかは分からないが、我々の知性が『Virtual XI』の内容に達していれば、正当な評価が下されることになる。



1. Futureal
アイアンメイデンらしい劇的なリフと重厚な疾走感に満ち溢れた名曲。強力なリフのインパクトはアイアンメイデンの名曲の中でも抜きん出ている。速いヘヴィメタルを作るバンドは山ほどいるが、アイアンメイデンのように印象的なメロディを乗せることは容易ではないことを思い知らされる。
2. The Angel and the Gambler
70年代を彷彿とさせるハードロック調の楽曲だが、シリアスな作風の本作には間違いなく不釣り合いであり、本作の評価を大幅に下げることに貢献している。#1が最高の幕開けであるだけに、本曲の収録の必要性は感じない。ハードロックとヘヴィメタルを"別物"といわせるまで極めた彼らだが、このような凡曲を収録した事は最大の過ちであろう。
3. Lightning Strikes Twice
アイアンメイデンにしては斬新な雰囲気も醸すが、サビの盛り上げ方に関しては秀逸。
4. The Clansman
叙事詩的な楽曲を芸術の域まで高めた至高の名曲。映画『Braveheart(邦題:ブレイブハート)』(1995)及び『Rob Roy(邦題:ロブ・ロイ/ロマンに生きた男)』(1995)に影響を受けた大作である。古代エジプトを題材とした"Powerslave"と似たような作風であるが、過去のアイアンメイデンからは冒頭の繊細な描写などは絶対に出てこない。スコットランドを想起させる旋律の美しさはヘヴィメタルを超えている。これはブレイズ・ベイリー加入後の些細な変化が齎した成功例であろう。
5. When Two Worlds Collide
他人を寄せ付けないようなシリアスな雰囲気がアイアンメイデンの魅力の一つである。本作はその深遠な方向性を極め過ぎたために、一般人には理解を要する内容となってしまった。当然の如く、本曲も劇的な構成と脈動的なツインリードで溢れ返った名曲である。
6. The Educated Fool
冒頭からドラマティックな雰囲気が漂う。既に使い古された静から動への展開だが、この楽曲は盛り上げ方が異常に上手い。ブレイズの歌唱と見事にマッチしたブリッジパートなどは、まさに新たな境地といえよう。更に中間部には劇的な転調も控える。
7. Don't Look to the Eyes of a Stranger
究極のドラマティシズムを体現した驚異的な名曲。目まぐるしいまでの静と動の入り混じる凄絶な展開、異様極まる雰囲気、神秘的な旋律が洪水の如く聴者を襲う。自身の作り上げたメロディック・メタルを追求し続ければ、このような化物の如き楽曲を生むことになる。恐らく、これ以上ドラマティックなヘヴィメタルは今後、容易には誕生しないものと思われる。
8. Como Estais Amigos
ブレイズ・ベイリーがフォークランド戦争で戦死した兵士たちに捧げた名バラード。これまでいくつかバラードを作ってきたアイアンメイデンの内、この楽曲は最高の出来であろう。雄大なサビのメロディは感動に値する。ただ本作以降、ブレイズのバラードを聴くことはなくなった。


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Xファクター



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1995
Reviews: 84%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1995年発表の10th。


ブルース・ディッキンソンの脱退後、元ウルフズベインのブレイズ・ベイリー(vo)が加入して製作された第一作。このブレイズ・ベイリーのヴォーカルが大きな問題となり、ファンの間で物議を醸したことは有名。当時のファンたちは、ブレイズ・ベイリーのヴォーカル・スタイルをブルース・ディッキンソンと比較し、その結果として作品が過小評価されることとなった。一部からは、この『The X Factor』がアイアン・メイデン本来の作品ではないという声も挙がった。明らかにファンの過剰反応だった。
本作はこれまでよりも遥かに緻密に構築された楽曲が特徴的。大作"Sign of the Cross"、シンプルな"Man on the Edge"など代表曲は多い。過去の作品の中でも顕著だった、70年代のプログレッシブ・ロックからの影響が前面に押し出されている。楽曲は大幅にスケールアップし、複雑で知的な展開を多用するようになった。既にアイアン・メイデンは単なるロック・バンドではなく、芸術性を意識した深遠な音楽集団となった。



1. Sign of the Cross
2. Lord of the Flies
3. Man on the Edge
4. Fortunes of War
5. Look for the Truth
6. Aftermath
7. Judgement of Heaven
8. Blood on the World's Hands
9. Edge of Darkness
10. 2 A.M.
11. Unbeliever


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Black Sabbath

BLACK SABBATH the 1st album in 1970 Release
★★★★★★★★☆☆...(不朽の名作)

ブラックサバスの1970年発表の1st。

1970年2月13日の金曜日に発表されたこのブラックサバスの第一作『Black Sabbath』は、すべてのヘヴィメタルの元祖ともとれる偉大な傑作である。トニー・アイオミ(g)が本作に音楽界では禁じられてきたコードを使用したことで、後のヘヴィメタル形成における道が大きく開かれた。それは、キリスト教世界から見れば邪悪とされてきた悪魔的なものであり、主にサタン(ルシファー)を想起させる重低音や歌詞に表現されていた。またそれらの禍々しい世界を描くために、攻撃的なパートやグルーブ感のあるメタリックなリフを用いたことも決定的に機能した。無論、本作が生み出され世界に発表されることがなければ、現在のヘヴィメタルは全く違ったジャンルになっていたことも想像できる。重厚であり、普遍的な人間が決して耳にしないような神秘的なヘヴィメタル、シリアスで緊張感に包まれたヘヴィメタルを、我々は末永く愛聴してきた。それもすべて、ブラックサバスという偉大なバンドの功績によるものだ。
本作『Black Sabbath』はイギリスのチャートで8位という成功を収めたが、有名音楽誌からは酷い評価を受けた。"邪悪、攻撃的、不道徳"などといった世間の評価とブラックサバスは戦うこととなった。ヴィレッジ・ボイス誌では「CD史上最悪の作品」と評価された。音楽性以外の要素でヘヴィメタルが攻撃されることはよくあることだが、これらの当時のブラックサバスに対する酷評は、現在まで続く社会とヘヴィメタルとの長い戦いの幕開けであったことは、何とも皮肉な事実に値する。幸い、現在では本作は正当な評価を受け、最も影響を与えたヘヴィメタル作品としても必ず名が挙げられる。『Black Sabbath』の発表からおよそ30年以上、我々はようやく本作を理解するだけの知識を学んだようだ。




1. Black Sabbath
邪悪な雰囲気を結集させたブラックサバスの代表的名曲。今でこそ中世や18~19世紀のゴシック・ホラーを意識したブラックメタルが横行しているが、これが元祖であろう。世界観、サウンド、歌のすべてがヘドロのように重く粘着する。
2. The Wizard
『指輪物語』のガンダルフをモチーフにした楽曲。オジー・オズボーン(vo)のハーモニカが印象的だ。後半にかけてのヘヴィなリフは間違いなくヘヴィメタルバンドに多大な影響を与えている。サビは意外にも馴染みやすい。
3. Wasp / Behind The Wall Of Sleep / Bassically / N.I.B.
数曲が1つの曲としてまとめ上げられた楽曲。そのため途中から雰囲気が大きく変わる。"Wasp"から"Behind The Wall Of Sleep"へのヘヴィな流れは良く出来ている。"Behind The Wall Of Sleep"がH・P・ラヴクラフトの短編小説の名を拝借していることは非常に興味深い。"The Wizard"でもそうだが、既にブラックサバスからヘヴィメタルの歩む方向性は定まっていたのであろう。
4. Wicked World
ギターの攻撃性、ヘヴィなドラムスが意表を突く楽曲。中間部は驚くほどにメロディアスだ。
5. A Bit Of Finger / Sleeping Village / Warning
不穏な雰囲気が延々と続く。多少緊張感に欠けることは否めない。



Review by Cosman Bradley

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フィア・オブ・ザ・ダーク



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1992
Reviews: 86%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1992年発表の9th。


アイアンメイデンのような偉大なバンドには何か転機が必要だったのかも知れない。最初、リスナーの度肝を抜くような疾走するリフで登場し、メロディアスなベースラインに彩られたアイアンメイデンの楽曲たちは光り輝いていた。それは今でも同じことだが、平和を継続させるのが難しいように、次々と発表していく作品の品質を保つのは容易なことではなかった。その上、内に秘めたる衝動を開放する場を求める若者たちは、作品に対する目が肥えていた。ファンたちは"アイアンメイデン"というヘヴィメタル界でも一流のブランドに対し、標準以上の作品を常に期待している。ヘヴィメタルバンドはよくファンを大切にすると言われるが、作品の内容に至っては才能でしかない。いくら望まれようと出ない時は出ないのだ。最もアイアンメイデンは、何十年以上も才能ある作品を生み出し続けているわけだが……

アイアンメイデンの第9作『Fear Of The Dark』は、これまでの伝統的なメロディック・ヘヴィメタルのスタイルを受け継いだ作品だ。元々アイアンメイデンによって確立されたジャンルではあるが、今回彼らは新しい試みも導入している。#6"Wasting Love"などがまさにそうだが、過去のシンセサイズド・ギターの導入時のように技術による進歩ではなく、まだ未開拓のジャンルに手を出したことは非常に残念と言わざるを得ない。詰まるところ、アイアンメイデンにはメロディックかつドラマティックな楽曲さえあればいいのだ。その方向性でいけば、これまで以上に劇的なメロディを導入した#3"Afraid to Shoot Strangers"などはまさに成功例に値し、これはアイアンメイデン特有のミステリアスで独創的な世界観が貫かれている。しかし、私たちが読者に対して予め注意しておかなくてならないのは、この深遠な世界観が一貫性を持って本作では機能していない、ということである。猛烈なアグレッションと共に開始される#1"Be Quick or Be Dead"から本作への期待感は大いに高まるが、後半に至っては緊張感が薄れていることが明白な展開となる。そういった点においても最後の大作#12"Fear of the Dark"は救世主のような役割を果たしてくれる。もはやアイアンメイデンほど傑作を世に送り出しているヘヴィメタルバンドなら、基本的には何をしても許される。彼らの過去の名盤がそうであるように、聴者が完璧主義者である場合を除いて、『Fear Of The Dark』は実に充実した内容だ。



1. Be Quick or Be Dead
初期を彷彿とさせるスピード感に重厚感が加わった攻撃的なナンバー。
2. From Here to Eternity
3. Afraid to Shoot Strangers
アイアンメイデンの最大の特徴である、劇的なツインリードが堪能できる名曲。ここまでドラマティシズムに満ち溢れた構成は稀だ。本作はメロディアスな楽曲が突出している。このテンションが後半まで続かなかったことが惜しい。
4. Fear Is the Key
5. Childhood's End
アイアンメイデンの様式美に当てはまる楽曲。即ち、劇的なイントロダクション、ドラマティックなメロディ、重厚な展開、高揚感を伴うスピード感を持ち合わせているということである。
6. Wasting Love
7. Fugitive
8. Chains of Misery
9. Apparition
10. Judas Be My Guide
11. Weekend Warrior
12. Fear of the Dark
最後を締めくくる大作。ドラマティックな展開と不気味な緊張感、印象的なメロディ、そして闇を這うような脈動感に溢れたこの名曲は、アイアンメイデンの歴史の中にまた一つ花を添えることに成功している。


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ノー・プレイヤー・フォー・ザ・ダイング



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1990
Reviews: 80%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1990年発表の8th。


エイドリアン・スミスの脱退によりヤニック・ガーズ(g)が加入。テクニカルなサウンドよりもシンプルさで勝負した内容で、どの楽曲も聴きやすく収まっている。過去の作品よりも単純明快なイメージが強いが、それでもアイアン・メイデンらしさは失われていない。覚えやすいギター・リフや印象的なメロディを作るメンバーの才能に至っては、この『No Prayer For The Dying』でも顕著。じっくり聴き込む作品というよりは、ライブで使用できる現実的な楽曲を多く収めている。より複雑で難解なヘヴィメタルを聴きたいなら、バンドの他の作品を探れば良い。



1. Tailgunner
2. Holy Smoke
3. No Prayer for the Dying
4. Public Enema Number One
5. Fates Warning
6. Assassin
7. Run Silent Run Deep
8. Hooks in You
9. Bring Your Daughter...To the Slaughter
10. Mother Russia


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第七の予言



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1988
Reviews: 93%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1988年発表の7th。


シンセサイズド・ギターの導入は前作『Somewhere in Time』(1986)と同様。それに代表される"Moonchild"はシンセサイズド・ギターの良さが顕著に表れている。楽曲の重厚感を追求し、世界観をより深遠なものにするためには、技術面での補助が必要だった。バンドは完全に未来を意識して楽曲を制作していた。本作は当時の最高技術とアイアンメイデンの才能が混ざり合った絶妙な作品である。
アイアンメイデンはこれまでにも幻想文学や有史以前の歴史などを楽曲の題材としてきたが、本作では"七"という数字についての神秘主義的かつ謎めいたコンセプトが組まれている。このコンセプトはアイアンメイデンの7枚目の作品ということと共通している。バンド特有のミスティックな世界観が高い構成力で完成に近付いた『Seventh Son of a Seventh Son』は、キャリアの集大成という印象が強い。アイアンメイデンの黄金期を締めくくるに相応しい傑作である。"Evil That Men Do"はヘヴィメタル史に残る名曲となった。



1. Moonchild
不気味なイントロダクションに導かれるオープニング・トラック。サビを含め不穏な旋律が聴者の緊張感を高める。
2. Infinite Dreams
劇的なツインリード・パートと緩急に富んだ名曲。中間部以降の展開はあまりにも素晴らしい。
3. Can I Play with Madness
一見キャッチーなこの楽曲はシングルカットされ全英3位を記録した。本作からのシングルでは最高の順位を記録したが、緊張感を損なう雰囲気を持つ本曲が売れたことはアイアンメイデンにとって皮肉な事実である。最もアイアンメイデンにとっては朗報であったろうが。
4. Evil That Men Do
アイアンメイデンは数えきれないほどのヘヴィメタル史に残る名曲を生み出した。そして数ある名曲の内、史上最高の名曲がこの曲であろう。冒頭の極限にまで研ぎ澄まされた神秘性と抒情性を有するフレーズにまず鳥肌が立ち、ブリッジでそのメロディが速度を増してツインハーモニーで紡ぎだされた時は眩暈すら覚えることを禁じ得ない。またメロディが聴いた後もずっと消えずに頭に残る。当然これは何度も聴いたために脳の神経から呼び出しやすくなっている状態とは違う。少なくとも私は一度聞いただけで覚えることが容易であった。古い言葉であるが、真の名曲とは記録よりも記憶に残るものであろう。本曲はシングルとして全英5位を記録。
5. Seventh Son of a Seventh Son
究極なまでにミステリアスかつ幻想怪奇の世界を描く大作。神秘的な雰囲気に満ち、後半のギターメロディパートでは圧巻としかいいようのない。
6. Prophecy
哀愁を漂わせるイントロダクションを持つ。楽曲が開始される冒頭のドラマ性の高さも、アイアンメイデンを語る上では欠かせない要素だ。ギターソロパートの流れも鮮やかにきまる。
7. Clairvoyant
飛翔感を漂わせる楽曲。しかしシリアスさは全く失われていない。
8. Only the Good Die Young
本作を締めくくるメロディアスな名曲。最後には#1のテーマメロディが静かに奏でられる。


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サムホエア・イン・タイム



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1986
Reviews: 90%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1986年発表の6th。


アイアンメイデンの第6作目となる本作『Somewhere in Time』は、シンセサイズド・ギター導入により楽曲の幅を広げている。流石に黄金期の2枚目を飾る作品だけあり、アイアンメイデン特有の緊張感、大作志向、メロディックさが滲み出ている。アイアンメイデンの特徴的ともいえる近未来をベースにしたジャケット、楽曲は非常にリアリティのあるものである。これらに至ってはシンセサイズド・ギターの機械的なサウンドが早速効果を発揮したといえるであろう。特に某メタル雑誌で"驚異的なまでにドラマティック"と形容された#1は、完成された荒廃的な世界、ジャケットを忠実になぞった近未来的雰囲気を持った名曲である。
これら一連の近未来的、SF的な世界観はヘヴィメタルにおける新しい表現の可能性を生みだしたといえるのかも知れない。独特の世界観である。現実から離れた未知なるこれらの世界は奇怪な魅力を持っているもので、その魅力は大きい。先ほど指摘したアルバム・ジャケットは、前作と同じディレク・レックスによるものであり、SF映画『BLADE RUNNER(邦題:ブレードランナー)』(1982)からインスパイアを受けている。
特に本作は、プログレッシブな面が前面に出ているという点も注目に値するであろう。それと同じく大仰なまでに導入される大量のメロディも特筆すべきであり、本作が"アイアンメイデン至上最高のメロディアス盤"と呼ばれるのも十分に頷ける名作である。



1. Caught Somewhere in Time
確かに冒頭のイントロは驚異的にドラマティックだ。SF的メロディの勇壮なる疾走、近未来の機械的な雰囲気が完全に醸し出された名曲である。神秘性すら感じる世界観といえよう。
2. Wasted Years
ドラマ性を有する曲調とメロディを併せ持つ楽曲。#1の近未来的な世界観を引き継ぎ、サビではキャッチーな面も見せる。
3. Sea of Madness
少々ハードロックよりのリフが目立つが、後半からのメロウな展開はアイアンメイデンそのものである。
4. Heaven Can Wait
怪しげな冒頭のアルペジオから期待感を煽られる名曲。疾走するリフと妙に明るいサビのコントラストが絶妙だ。後半のシンガロングパートもドラマティシズムを顕著なものとしている。
5. Loneliness of the Long Distance Runner
このアルバムを主張するかのようなドラマ性とメロディの両方を高次元で融合させた楽曲である。サビでのブルースの歌うメロディに追従するドラマティックなリフ、流麗に紡がれるツインメロディが素晴らしい。またそういったパートが続出するのも満足である。最上のドラマティック・メタルといえよう。
6. Stranger in a Strange Land
ダークでヘビィなリフが刻まれる曲。やや助長である。
7. Deja-Vu
メロディック極まりないツインリードが炸裂する渾身の一曲。スピーディーな曲調にドラマティックなツインハーモニーを導入する箇所はもはやお約束。あまりにもメロディアスで大仰な楽曲であることは否めない。サビでの抒情性も最高に冴える。
8. Alexander the Great (356-323 B.C.)
有史以前に巨大な帝国を築き上げた大王アレキサンダー(アレクサンドロス)を題材にした孤高のエピックメタル。まるで史劇映画を見てるような大作である。行進曲調で勇壮に突き進み、サビで大仰に歌い上げる各パートの放つスケール感は途方もない。 劇的なメロディを宿したエピック・リフも興奮を最高潮に押し上げ、雰囲気を盛り上げる。感動を呼ぶ壮大な歴史ロマンス的ヘヴィメタルである。


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パワースレイヴ



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1984
Reviews: 91%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1984年発表の5th。


アイアンメイデンの黄金期の始まりを告げる一大傑作。アイアンメイデンのファンの間では5thから7thまでを一般的に"黄金期"と総称している。確かにその時期の作品を最高傑作に挙げるファンは非常に多い。
本作は冒頭の2曲、"Aces High"と"2 Minutes to Midnight"に尽きるという声がよく聞かれる。ヘヴィメタル界屈指のこの名曲は、本作を最高傑作に押し上げるには十分な完成度を誇っている。正に絶大なインパクトだ。当然の如く、それ以降の楽曲もやはり素晴らしいのだが、多くのファンは冒頭の良さに惹かれている。しかし、作品トータルでの完成度も高いのが、この『Powerslave』を聴く上で見逃しやすい盲点である。
本作ではアートワークをディレク・レックスが手掛け、バンドのマスコットであるエディがエジプトのスフィンクスに化けている。このアートワークも本作の内容と比例して素晴らしい。アートワークにも表れているように、本作はコンセプチュアルな作品である。歴史好きとしても有名なスティーブ・ハリス(b)の知的な部分が、ソングライティングの面で開花した。古代エジプト神話を題材としたタイトルトラック"Powerslave"、恰も小説のような奇怪な物語を作詞した"Rime of the Ancient Mariner"は圧倒的な存在感を所有している。ファンはアイアンメイデンの"Phantom of the Opera"を聴いた時から、このような大作が発表されるのを待ち望んでいた。
以前からもそうであったが、今作はエピック・メタルと捉えても何ら不思議ではない内容を含んでいる。作品全体をシリアスな雰囲気で覆うことは、統一感を持たせる上で重要な要素である。本作はダークな雰囲気が地に足を付け、作品の最後まで継続される。これらの生み出す陶酔感こそが芸術への第一歩であり、また末永く愛されるヘヴィメタル作品の条件であるのだ。楽曲全体にエジプシャンの神秘的なエッセンスを加え、叙事詩的なドラマ性をより高度な次元で実現した本作こそ、紛れもない真の傑作である。



1. Aces High
ヘヴィメタルの良さをすべて結集した名曲中の名曲。オープニングのドラマティックかつメロディックなイントロ部分から絶大なインパクトで聴かせる。正統派メタルの興奮がすべて詰め込まれている、といってもよかろう。
2. 2 Minutes to Midnight
本曲のオーソドックスでキャッチーなメロディが多くのファンの心をとらえたのであろう。印象的なラインを含め、やはりアイアンメイデン屈指の名曲。
3. Losfer Words (Big 'Orra)
ドラマティックなインストゥルメンタル。一部ではゲーム音楽とまで形容されているが、整合性を持った内容からは一種のストーリーさえ連想させる。
4. Flash of the Blade
ダークな雰囲気に導かれる楽曲だが、サビでのブルースのハイトーンは最高に勇ましい。頭に焼き付く。中間部のツインリードパートはミステリアスながらも構築感及び知性をのぞかせる。
5. Duellists
極めてメロディアスかつエピカルなメロディラインを持つ佳曲。ブルースの歌うドラマティックなメロディもさることながら、後半から開始されるツインリードパートは整合性を持ち余りにもドラマティックである。この大仰な展開と古代を思わせるメロディはエピックと形容するには十分。
6. Back in the Village
正統派ブリティッシュらしい曲。特筆すべき点はない。
7. Powerslave
エジプトの古代神話からインスパイアされた、神秘的な楽曲である。アンビエントな旋律をリフに組み込み、中間部のエジプシャンなパートの放つ異国臭は異常ともいえる。
8. Rime of the Ancient Mariner
イギリスの詩人Samuel Taylor Coleridgeの叙事詩をもとにスティーブ・ハリスが作り上げた、アイアンメイデン中最長の長さを誇る一大叙事詩。約14分もある。内容は幻想怪奇の長編小説を思わせる、古代の不気味な航海の物語である。この楽曲の表現力、そして臨場感には絶句を禁じ得ない。ミドルテンポでありながら、物語を奇怪な旋律と共にゆっくりと描いていく箇所には脱帽である。まるで聴いていると映画を見ているような感覚に陥る。この楽曲の後半におけるツインメロディの旋律は、古代の海洋の遥か深淵から紡ぎ出された、とでもいうような神秘と脅威に満ちている。まるで人間の世界ではないような気さえする。これほど叙事詩的で神秘的な大曲を作り上げたスティーブは天才以外の何物でもない。


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頭脳改革



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1983
Reviews: 80%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1983年発表の4th。


ドラマーがクライヴ・バーに変わりニコ・マクブレイン(d)が加入。アイアンメイデンは本作で全米初のプラチナディスクを獲得。前作でのクライヴ・バーのドラミングが素晴らしかっただけに、彼の脱退は非常に残念に思われる。
今作は前作『The Number Of The Beast』(1982)のスタイルを継承しつつ安定した完成度を誇っているが、初期アイアンメイデンに匹敵する攻撃性はない。しかしメロディの質、ドラマ性に満ちた展開、小説を題材にした歌詞のレベルは非常に高く、また独特のミステリアスな雰囲気も見事に醸し出されており、それは#5、#7、#9等に顕著にみられる。今作でもキラーチューンはいくつか揃えており、アイアンメイデンらしい勇壮なメロディと奇妙なメロディを持った#3、#5は名曲といってもいい出来であろう。しかし、ファンが間違えてはならないのは、それ以外の楽曲が優れていない、ということだ。
本作は緩急が少なく一本調子のためか、ファンの間ではどうやら影が薄いようだ。恐らく名盤である前作の影響や、後の作品の圧倒的な完成度がこの作品を曇らせているのであろう。確かに本作の"To Tame a Land"は素晴らしい名曲だが、それ以前の楽曲の平凡さには退屈を感じる。また『The Number Of The Beast』で完成させたヘヴィメタルらしいサウンドを退化させ、重厚感を損なったハード・ロック的な音作りになっている点も、本作の評価を大幅に下げる原因となっている。アイアンメイデンの作品に失敗作などないが、本作を繰り返し聴くことは少ない。



1. Where Eagles Dare
激しいドラムスとリフがアグレッションを撒き散らすオープニングナンバー。後半のコード進行もいい具合にまとまっている。
2. Revelations
スロウなミドルテンポ。途中導入されるメロディアスなパートには抒情性を感じる。急にスピードアップするドラマティックな展開も秀逸。
3. Flight of Icarus
アイアンメイデンらしい怪しげなメロディと勇ましいメロディが光る名曲。サビのコーラスは共に歌いたくなるほどヘヴィメタルらしいメロディ。
4. Die With Your Boots On
メロディックなリフとベースがヘヴィにギャロップする曲。
5. Trooper
奇妙なメロディが背筋をゾクゾクとさせる名曲。良い意味でアイアンメイデンらしい気持ち悪さを持っている。ブルースの歌うメロディの扇情力、ヘヴィメタリックなリフ、いうことはなかろう。
6. Still Life
特にブリティッシュらしい哀愁を持つ楽曲。静かなメロディから一気にバンド演奏が入る展開はもはやお決まりともいえる。
7. Quest for Fire
ヘヴィメタリックなリフが勇壮に行進する曲。曲の放つミスティックな雰囲気、SF的な世界観は非常にシリアスで素晴らしい。ドラマ性も高い。
8. Sun and Steel
キャッチーなメロディを持っている。しかし退屈さは否めない。
9. To Tame a Land
作品の最後を締めるに相応しい、壮大で叙事詩的な名曲である。ミステリアスかつ謎めくようなツインメロディ、アルペジオを多用し、その雰囲気は不気味なまでの完成度を誇る。驚くことにスティーヴのベースは時折歌うようなメロディを繰り出している。クライマックスのツインメロディの進行はもはや劇的としか形容できない。なおこの楽曲はフランク・ハーバートの『惑星デューン(砂の惑星)』が題材となっている。


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魔力の刻印



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1982
Reviews: 95%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1982年発表の3rd。


本作はシンガーをポール・ディアノからブルース・ディッキンソン(vo)へ交代して発表された第一作目である。前作『Killers』(1981)はヘヴィメタル史に悠然と輝く大傑作であったが、この『The Number Of The Beast』は究極に限りなく近い、純然たるヘヴィメタル・サウンドの作品であるため、一概に比較することは難しくなっている。強いて言うなら、本作からアイアンメイデンの物語における本編が幕を開けた、とまで大仰に語ることが可能(当然、前2作品を傑作とした上でである)。本作がヘヴィメタルの歴史に与えた影響力は巨大過ぎて図ることが出来ない。一部では全ヘヴィメタル作品中で5本の指に入る歴史的名作とまで言われているが、それは粗方間違いではない。当時、ここまでドラマティックな正統派メタルを完成させたバンドは他にはなく、この作品が世に出された時は衝撃的であった。

『The Number Of The Beast』は信じ難い内容であり、楽曲の充実感と徹底した完成度を所有している。本作のドラマティシズム、メロディの質は劇的メタルが横行する現代でも容易に通用する。また、メロディック・ヘヴィメタルの原型とも形容できるサウンドが特徴的である。今作から加入したブルース・ディッキンソンのドラマティックな歌唱は見事なもので、アイアンメイデンのサウンドを更に飛躍させている。一曲一曲がストーリーだ。クライブ・バー(b)のドラムも非常にアグレッシブであり、ヘヴィメタルらしさを際立たせている。スティーブのギャロップするベースも独特のものだ。

どの楽曲も名曲揃いであり、実に聴き応えがある。世界観に至っては、もはやエピックと呼べる程の緊張感を有している。ある種の神秘世界を思わせる邪悪なメロディ・ラインの数々は、アイアンメイデンの絶対的な個性として見事に成り立ち、楽曲の説得力を大幅に高めている。各曲のリード・ギター・パートに見え隠れするブリティッシュ特有の哀愁をも加味したその奇妙なメロディは、劇的極まりない。ヘヴィメタル・ファンでまだ本作を聴いたことがないなら、一刻も早く聴くことをお勧めしたい。



1. Invaders
ノリのいいリフにブルースの勇ましい声が響く楽曲。スピード感は抜群だ。パワフルなドラムもヘヴィメタルらしさを生んでいる。
2. Children of the Damned
アコースティカルに幕を開け、哀愁のメロディが流れ出す、いかにもブリティッシュ的な楽曲である。後半のテンポチェンジから絡み合うツインリードパートは絶品としか言いようがない。この緻密さが凡百のバンドとは違う部分である。
3. Prisoner
スピーディにギャロップするリフが良い。スティーブのベースラインは既に独創的でメロディアスなものを奏でている。しかし、やはり中間部以降の展開がドラマティックにまとめ上げられている。
4. 22 Acacia Avenue
ブルースの大仰な歌唱と共に疾走するリフが非常に勇壮。ブルースはメイデンに相応しい歌唱をする。クライブ・バーの激しいドラミングも光る。
5. Number of the Beast
劇的に幕開け、アイアンメイデンらしい独特の奇怪な雰囲気とスピードに満ち溢れた名曲である。サビのメロディは頭を左右に振らす。
6. Run to the Hills
邦題「誇り高き戦い」の如く、とてつもない勇壮さをまき散らす名曲中の名曲。サビの高潔なメロディは究極ともいえる高揚感を齎す。しかしそのヒロイズムの背景には、自由を求めるが故に死を選択したインディアンたちの誇り高き戦いがあったということを忘れてはならない。これはエピックである。アイアンメイデンはヘヴィメタルを通して、大昔の歴史の悲劇を我々に語って聞かせる手法を用いている。そしてそれは今日まで、ヘヴィメタルの伝統となり続いているのである。
7. Gangland
変則的な疾走とリズムが心地よい。メロディアスなツインリードも秀逸。
8. Total Eclipse
ダークなミドルテンポ。後半にはテンポチェンジもある。
9. Hallowed Be Thy Name
壮大で叙事詩的な一大傑作。後に開花させる神秘主義的なメロディ、それに伴う不気味な世界観を余すことなく表現したアイアンメイデンの代表的名曲である。ヘヴィメタルの表現力を極限まで追求し、完成したのがこの楽曲であろう。ヘヴィメタルという音楽性でなければ決してこのような名曲は出来上がらない。驚異的ともいえるツインリードの神秘的なメロディの応酬には息をつく暇さえ与えられない。これはまるで人間が足を踏み入れてはならない神秘的な世界である。描かれた絞首刑となる囚人の恐怖は、恐らく人智を超越したものだったのであろう。蛇足だがこの名曲によって、人生の軌道をヘヴィメタルへと傾けた者たちの数は計り知れない。


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キラーズ



Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1981
Reviews: 89%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1981年発表の2nd。


アイアンメイデンの栄光に彩られた作品の中で、獰猛な攻撃性と圧倒的な存在感を放つ第2作目の『Killers』は、いくかの驚くべき事実を含んでいる。まず本作がアイアンメイデンのアルバム・クレジット中最速の作品であることは疑いようがない。全編に渡り金網の如く張り巡らされた全く隙のないアグレッションは、アイアンメイデンがこの業界でも特異なジャンル──即ちヘヴィメタル──の中でも極めてオリジネイターとしての実力を示すものに他ならない。本作は傑作である第1作目『Iron Maiden』(1980)の翌年に発表された。1981年には本作品を誰もが自宅で聞くことが出来た。
ヘヴィメタルの進歩は著しい。アイアンメイデンのような飛び抜けた才能を持つバンドは、恰も疾走するリフの如く飛躍し続ける。その様を我々は度々目にしてきた。アイアンメイデンを超える存在はアイアンメイデンに他ならない。本作の素晴らしい内容──ヘヴィなサウンド、メロディアスなギター、攻撃的な楽曲、滲み出る説得力──がそのことを雄弁に物語っている。我々は本作を聴いてメロディック・メタルがどんなものか知るであろうし、それらの先にある世界が冗談めいたものでないことも、同じように知るであろう。ヘヴィメタルは如何なる音楽とも違って聞こえる。『Killers』がパンクやハードロックの要素をいくつか合わせ持っていることは否定できない事実だが、アイアンメイデンこそが純然たるヘヴィメタルに辿り着く近道であることを、我々は知っている。単純に意見すれば、オリジナルこそが最も優れているという結論に達する。この研ぎ澄まされた殺人鬼の手斧の刃を思わせる『Killers』の楽曲のように。



1. The Ides of March
3月15日を意味するイントロダクション。メロディアスなギターが唸る劇的な序章は、ドラマティック・メタルの基礎を築き上げたといってもいいであろう。ジューダス・プリーストよりもこちらの方が遥かにドラマティックに聞こえる。
2. Wrathchild
重厚なサウンドとメロディを合わせ持つ名曲。重くシリアスな雰囲気に包まれたこの行進曲は、鋭利な攻撃性を巧妙に隠し持っている。
3. Murders in the Rue Morgue
エドガー・アラン・ポーの小説『モルグ街の殺人』をモチーフにした楽曲。原作の不気味な要素を上手く表現した名曲であり、またアイアンメイデンの目の付けどころも興味深い。総じて攻撃性は高い名曲だ。
4. Another Life
ハードロックを彷彿とさせる軽快なメロディが気になる──ポール・ディアノの歌唱もそれに近い──が、完成度は決して低くはない。中間部からの疾走等の展開はよくできている。
5. Genghis Khan
"Genghis Khan"とはモンゴル帝国初代皇帝を意味しているのか。ヘヴィメタル作品には必要不可欠な、決して繋ぎに留まることがない完成度の高いインストゥルメンタル曲である。クライヴ・バーのドラムも強烈。
6. Innocent Exile
雰囲気としては#4と類似か。しかしヘヴィなドラムには緩急がある。
7. Killers
ディレク・リッグスによるカヴァー・アートワークに表現された殺人鬼について扱った内容を持つタイトル・トラック。最初インストゥルメンタルとして考案されていた楽曲のであるように、脈動感に溢れた各リフパートは傑作に値する。
8. Prodigal Son
哀愁を感じるバラード。本作の強烈な勢いを弱めるようなこの楽曲は本来必要なかったかも知れない。
9. Purgatory
恐らくアイアンメイデンで最速に位置する偉大なる名曲。重厚かつスピーディなリズムにドラマティックなメロディを乗せることがこれほどまでの高揚感を生むとは、一体誰が考えついたことであろう。ポール・ディアノの伸びる歌声も素晴らしい。興奮に満ちた大傑作である。
10. Twilight Zone
歯切れのいいリフが印象的。ツインリードも盛り上げる。
11. Drifter
重厚なスピード感と質の高いメロディを持つ。展開に関しては静と動を使い分けている。


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鋼鉄の処女


Country: United Kingdom
Type: Full-length
Release: 1980
Reviews: 90%
Genre: Heavy Metal


アイアン・メイデンの1980年発表の1st。


『METAL EPIC』誌から抜粋:

逸話では「ブラックサバスがヘヴィメタルの全てのリフを書いた」といわれているが、同じHR/HMの創始者としてイギリスのアイアンメイデンはヘヴィメタルにおけるすべてのメロディを生み出したといっても過言ではない。1975年にイギリスのロンドンでスティーブ・ハリス(b)を中心で結成されたアイアンメイデン──なんでもアイアンメイデンとは中世の拷問器具の名らしい──は、1980年に第一作となる本作『Iron Maiden』を発表。衝撃的な内容で瞬く間にヘヴィメタル・シーンのトップバンドとなった。クレジット・メンバーはスティーヴ・ハリス(Steve Harris:b)、デイヴ・マーレイ(Dave Murray:g)、ポール・ディアノ(Paul Di'Anno:vo)、クライヴ・バー(Clive Burr:d)、デニス・ストラットン(Dennis Stratton:g)の5人。ここまでは我々がよく知る物語だ。
真に名作と呼ばれるものは、歳月の蚕食による腐敗が遅いように感じる。当時を経験した老兵といわれる者たちとは違って、新しくアイアンメイデンに出会った若者たちは本作をどのように感じ取るであろうか。不朽の名作は、作品の素晴らしさにおいても時代性を超越するとはよく言われてきた。本作『Iron Maiden』はまさにその範疇である。"ヘヴィメタル"という言語すら殆ど無名であった時代に──本作が1980年に発表された作品だとは到底思えない。鋭角なツインリードの劇的なメロディ、突き抜けるような疾走感、緊張感のあるシリアスなサウンド、重厚な世界観、これらすべてをアイアンメイデンは第一作目で作り上げていた。ハードロックやパンクで培われてきた軽薄な音像を、ヘヴィメタルは微塵も必要とはしなかった(*)。まさに"ヘヴィメタル"という新しいジャンルの誕生の瞬間である。
驚くべきことに、我々が知る何十年以上も前に、彼らは伝統的なヘヴィメタルの基礎を築きあげていた。メロディック・メタルの誕生の瞬間がこの偉大なる傑作『Iron Maiden』には記録されおり、我々──生涯を通してヘヴィメタルの世界に関わっていく者たち──は必ずこの土俵の上を通らなければならない。即ち、ヘヴィメタルファンであるすべての者がこの作品を聴かなくてはならない。

追記:なお本作はオリジナル盤が全8曲であったのに対し、リマスター再発盤にはシングル曲"Sanctuary"が追加収録された全9曲構成となっている。

*ポール・ディアノの歌唱法がパンクからの影響を思わせることや、本作の攻撃性がパンクの延長線上にあることは否定できず、またアイアンメイデンがそういった方向性を完成させるのは後の作品であり、この指摘は正しいとは言えない。



1. Prowler
劇的な衝撃と共に駆け廻るメロディック・メタルの大傑作。当時、これほどまでに鋭利でドラマティックなツインリードを導入するバンドは他になかったであろう。アイアンメイデンは実力を作品中で惜しみなく披露している点が良い。
2. Sanctuary
緊張感を殺ぐパトカーのサイレン音などは邪魔でしかないが、ストレートにまとめられた内容は勢いに満ちていたポール・ディアノ時代を象徴している。
3. Remember Tomorrow
静かなメロディから徐々に盛り上がる。この重厚なサウンドが第一作目だというから驚きである。
4. Running Free
小刻みな疾走でノリが良い楽曲。
5. Phantom of the Opera
ガストン・ルルーの名作『オペラ座の怪人』を題材にした本曲については、"エピックメタル名曲選:「オペラ座の怪人」(1980)"で触れているので、そちらを参照にしていただきたい。
6. Transylvania
極めてスリリングなインストゥルメンタル。完成された劇的な展開には度肝を抜かれる。作品にインストゥルメンタル曲を収録するところはヘヴィメタルバンドらしい。
7. Strange World
アルペジオがドラマ性を際立たせる。この頃のアイアンメイデンはバラードも普通に作っていた。作品の一体感を損なうバラードの挿入はヘヴィメタル作品にはよくあるところだが、逆に傑作は上手く馴染む。
8. Charlotte the Harlot
アルバム・ジャケットにも登場している娼婦シャーロットについて歌った楽曲。鋭いメロディとスピード感が絶妙のバランスで配合されている。
9. Iron Maiden
アイアンメイデンのテーマ曲。ライブでは頻繁に演奏される。


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