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メタル・ジャスティス



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1988
Reviews: 90%
Genre: Thrash Metal


メタリカの1988年発表の4th。


メタリカは自身のスラッシュメタルを初期の三枚の作品の中で進化させ続けてきたが、辿りつくべき耽美の終着点はあった。それが紛れもなく本作『...And Justice For All』であり、我々はここに表現された至高のヘヴィメタル的芸術を絶賛してやまない。メタリカの攻撃的な作品の中で最も複雑に絡み合う本作の楽曲群は、大成功を収めた前作『Master Of Puppets』(1986)のサウンドを更に凌駕するプログレッシブさで聴者の知覚を刺激する。針に糸を通すような緻密な構成はどれも驚嘆に値する精度だが、メロディに関しては更に芸術的である。英国を彷彿とさせる高潔な旋律は、"...And Justice For All"、"One"、"To Live Is To Die"で極められ、それは同時にメタリカの追求し続けてきた世界観が完結したことを物語っている。本作はメタリカの至高の芸術を表現した大作であり、知的な世界と相俟って、我々にヘヴィメタルの深遠さを告げている。
メタリカにとって大きな変化もあった。ベーシスト、クリフ・バートンの死である。彼は1986年にスウェーデンをツアー中のバスが起こした交通事故に巻き込まれ、不運にも生涯を終えた。残されたメタリカのメンバーは悲観に暮れたが、生前のクリフの意思を思い出し、活動は継続された。しかし如何に強靭な精神を持ち合わせているメタリカでさえ、理不尽な現実を前にして動揺しないわけではなかった。クリフの後にバンドに迎えられたジェイソン・ニューステッド(b)加入後の本作では、気持ちの整理がつかないメタリカのメンバーとの間に確執が生じ、ベースパートが殆ど聞こえない状態で発売された。それが本作の唯一の欠点として後に浮き彫りとなったが、当時のバンド内の葛藤、そして不満を生々しく表現した真実の記録として、ここに『...And Justice For All』は残されている。現実には理不尽な出来事があまりにも多過ぎるのだ。



1. Blackened
スラッシュメタルの歌詞の題材として頻繁に用いられる、核戦争──正確には、核戦争によって廃墟と化した世界の惨状──について歌った楽曲。メロディアスなオープニングを配し、シリアスかつドラマティックに聴かせる。
2. ...And Justice For All
本作のハイライトであり、メタリカの芸術点をすべて凝縮したような名曲。映画『...And Justice For All(邦題:ジャスティス)』(1979)に触発された楽曲であり、権力の横暴や金によって人々が如何に堕落していくかを歌う。メタリカの知性が前面に押し出されたかのような、複雑かつ劇的な展開を有する。中間部の重厚なメロディへの展開は、ドラマティシズムを極めている。
3. Eye Of The Beholder
選択の自由を訴えた楽曲。ザクザクしたリフが歯切れよく突き進む。
4. One
ダルトン・トランボーの小説『ジョニーは戦場へ行った』を題材とした名作。メタリカ初のビデオ・クリップが制作された楽曲であり、ビデオには原作の映画の映像が用いられた。内容はまさに真実を明かした戦場の惨劇に相応しく、信じられないような美しい前半パートから、怒号のリフを伴う後半パートへの流れは凄まじい。本曲は、1990年のグラミー賞のベスト・メタル・パフォーマンス部門を受賞した。
5. The Shortest Straw
6. Harvester Of Sorrow
7. The Frayed Ends Of Sanity
8. To Live Is To Die
クリフ・バートンの書きためていた詩をモチーフにしたメタリカ最大のインストゥルメンタル。気品をも感じさせる魅惑的なアコースティック・パートから始まり、徐々に壮絶なギターパートへと展開していく。思うに、メタリカが生み出した究極のインストゥルメンタル楽曲であろう。
9. Dyers Eve
10. The Prince


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メタル・マスター



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1986
Reviews: 93%
Genre: Thrash Metal


メタリカの1986年発表の3rd。


メタリカは社会的に孤独であった。過激な音楽性故にラジオ、テレビでのプレイはほぼ皆無であり、常にアンダーグラウンド(地下)でのライブが主な宣伝活動に値した(腐敗した社会では、真実は真っ先に排除された)。メタリカは『Kill 'Em All』(1983)、『Ride the Lightning』(1984)という傑作でヘヴィメタル・シーンに殴り込み、スラッシュメタルという新しいジャンルを開拓して覇権を手にするも、王者が直面したのはそれらのメディアからの一方的な拒絶という現状であった。当然の如く、新作にもビデオクリップは制作されなかった。
賢明なメタリカは最初からメディアの反応など全く気にしてはいなかった。社会的にヘヴィメタルが蔑まれようとも、メタリカにとって唯一信じられたものは、既に過去の名曲が語っているように、自らの信念と忠実なファンのみであったのだ。1986年、メタリカは満を持して第3作『Master Of Puppets』を発表する。まず我々が度肝を抜かれたのは、本作がビルボートの29位にランクインし、ゴールド・ディスクを獲得したことであった。メタリカはメディアの露出という唾棄すべき行為に甘んじることはなく、バンドの実力のみでこの成功を獲得したことは、讃えられるべき功績であることは間違いない。メディアの助力なしに成功を手にするバンドが極めて少ないことは、我々が一番良く知っていることである。更に本作に収録された楽曲に関して、我々は更に度肝を抜かれることとなった。すべてが前作を上回る圧倒的な構築感と展開力を有し、スラッシュメタルを超越した美学を内包していたのだ。8曲というシンプルな構成であるにも関わらず、収録曲は何れも細部まで練られており、無駄な時間をファンに与えないというメタリカの信条が伝わってくる作風であった。当時のメディアが本作を無視したことは恥ずべき行為だが、これほどまでに緻密で複雑で耽美的な作品を一般音楽を耳にしているような聴衆が理解できたとは到底考えようもない。真実とは、常に人目の付かないところで隠されているものだ。そう、このヘヴィメタル史上に残る偉大な傑作『Master Of Puppets』のように……



1. Battery
不穏なアコースティック・ギターによる冒頭部分は前作と同様。しかし、衝撃という意味合いではこちらの方が上。怒涛のスピードを誇り、メタリカ史上でも最高の位置に属する名曲である。歌詞では、バンドとファンの結束について歌われている。
2. Master Of Puppets
人間を束縛する薬物の恐怖を描くタイトル・トラック。複雑な構成を持ち、中間部からは劇的なリードギターの旋律が堪能できる。明白なのは、メタリカは物語を描くような表現力をも身につけているということである。
3. The Thing That Should Not Be
H・P・ラブクラフトの怪奇小説『インスマスの影』にインスパイアされた楽曲。代表的なヘヴィメタルバンドであるメタリカが、過去の幻想作家から作詞に影響を受けていることは、興味深い概要に値する。暗澹たる物語の世界観に合わせて、ヘヴィかつダークな曲調を使い分けている。
4. Welcome Home (Sanitarium)
シリアスな雰囲気からも分かる通り、メタリカの楽曲は急速に知的になったことが伺える。メロディアスな歌から重厚な展開へと流れていく。ギターのメロディは非常にシビアである。
5. Disposable Heroes
戦場で使い捨てにされる兵士の悲劇を描く、鋼鉄のリフを用いた破壊的なスピード・ナンバー。圧倒的な存在感を誇り、兵士が戦場を逃げ回るように、高速のギターが荒れ狂う。その暴虐的な光景は、まるで軍事社会に対して怒りが叩きつけられているかのようである。
6. Leper Messiah
ミドルテンポで重厚なスラッシュ・リフが行進する。
7. Orion
星座をモチーフにした劇的極まりないインストゥルメンタル。まるでギターのメロディが夜空に輝く星々のように優雅に煌く。芸術と表記しても可笑しくはない奇跡的な名曲。
8. Damage, Inc.
ギターを用いてオーケストレーションのような音を奏でるイントロ部分が印象的だが、本曲の正体は#1"Battery"に匹敵する凄まじいまでのスラッシュ・メタルである。最後まで過激な楽曲を提供するメタリカのスタイルからは、清々しさすら感じる。


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Ride The Lightning



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1984
Reviews: 89%
Genre: Thrash Metal


メタリカの1984年発表の2nd。


「メタリカはただのスラッシュメタルバンドではない」我々はその言葉を直に実感させられることになった。第一作『Kill 'Em All』(1983)で圧倒的な攻撃性を披露したメタリカは、矢継ぎ早に発表した本作『Ride the Lightning』で劇的ともいえる進化を見せた。本作に表現された方向性は、メタリカの特異性を決定付けると同時に、メタリカの将来が有望である事実をも物語っていた。商業音楽では絶対に不可能な「死」というシリアスなテーマを題材とし、重厚感を増したヘヴィネスと速射砲のようなリフの高速連射を多用し、本作は圧倒的な完成度を合わせ持つことに成功した。またスラッシュメタルという分野からは想像もつかないほどメロディアスな旋律を導入した楽曲群は、何れも英国(ブリティッシュ)に匹敵するプログレッシブな叙情性を宿している。当時これほどまでに劇的で攻撃的なスラッシュメタルを受け入れないファンなどいなかったであろうことは、現代の作品を差し置いても全く想像に難くない。



1. Fight Fire With Fire
アコースティック・ギターで幕開ける衝撃的な展開。その後、過激極まる怒涛のリフが繰り出される。後に数えきれないほどのバンドがこの手法を真似たというのは、殆ど事実であろう。
2. Ride The Lightning
劇的なメロディと凄まじい攻撃力を持つ名曲。中間部の圧倒的な展開の様には思わず息をのむ。
3. For Whom The Bell Tolls
ドラマティックなリフが頭を振らせる。鐘の音が用いられている。
4. Fade To Black
バラード調の展開を持ち、徐々に盛り上がる。叙情的なメロディは美しさすら感じさせる。メタリカの音楽は過激である一方、実に耽美的な魅力をも有しているのである。
5. Trapped Under Ice
硬派な金属音に荒れ狂うギターリフが印象的。
6. Escape
メロディアスな部分を強調した楽曲。サビの叙情的なフレーズからは、メタリカが決して歌を捨てていないことが分かる。
7. Creeping Death
重厚感を伴うスピーディな名曲。メタリカの楽曲の構成力が如何に優れているか分かる。中東風の雰囲気を持っているのも興味深い。
8. The Call Of Ktulu
H・P・ラヴクラフトのファンであるというカーク・ハメット(g)が持ち込んだイメージをそのままに、名作『クトゥルフの呼び声』をインストゥルメンタルで表現した大作。重厚なリフが禍々しくも連なる様は圧倒的である。間違いなく大傑作に値する。


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Kill 'em All



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1983
Reviews: 85%
Genre: Thrash Metal


メタリカの1983年発表の1st。


我々はよくヘヴィメタルの比較としてアイアン・メイデンの名を用いるが、1981年にアメリカのロサンゼルスで結成されたメタリカの第一作『Kill 'Em All』の衝撃は『Iron Maiden』(1980)に匹敵するものであった。アグレッシブなサウンドで名を馳せたモーターヘッドの攻撃性を更に鋭角に研ぎ澄ませたような本作の暴虐性は、当時のヘヴィメタル・シーンの形成において、極めて重要な役割を担っていた。
ジェイムズ・ヘットフィールド (vo、g) とラーズ・ウルリッヒ (d)という怒れる若者を中心に結成されたメタリカは、社会への矛盾という標的に対し、スラッシュメタルという強烈な武器を用い、爆撃機並のスピードで攻撃を開始したのである。理不尽な社会に対し葛藤していた若者が、何れメタリカのような音楽性に辿りつくのは時間の問題であった。最初『Kill 'Em All』は売れなかったが、翌年に本国での国内盤が発売されたように、本作の知名度は瞬く間にアメリカ、イギリスを駆け巡った。しかし、その異例の成功は、ヘヴィメタルで最も偉大なバンドとなるメタリカの伝説の序章に過ぎなかった。



1. Hit The Lights
本作の先陣を切るアグレッシブなナンバー。メタリックなリフの破壊力が凄まじい。
2. The Four Horsemen
初期の傑作であり、メロディアスな旋律に加え劇的な展開力を有する。後に芸術的とまで形容されるメタリカのヘヴィメタルだが、既にこの頃から才能は開花していた。
3. Motorbreath
一方的な攻撃性の中に、僅かな転調やドラマ性を宿らせる部分は、メタリカがただのスラッシュメタルバンドではないことを物語っている。
4. Jump In The Fire
ノリのいいメタリックなリフが光る佳曲。
5. (Anesthesia) - Pulling Teeth
今や伝説のベーシストと謳われるクリフ・バートン(b)のインスト。ベースとは思えないほどにメロディアスなフレーズは、衝撃以外の何物でもない。
6. Whiplash
7. Phantom Lord
8. No Remorse
9. Seek And Destroy
10. Metal Militia
メタリカの荒々しさを詰め込んだ楽曲。大仰なまでに突進する潔さが素晴らしい。


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