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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


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[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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Excalibur

Grave Digger the 9th album in 1999 Release
★★★★★★★★★★...(傑作)



1999年発表の墓掘り人、グレイブ・ディガーの9th。

まず始めにメンバーの紹介をしよう(笑)。
"パージヴァル卿"クリス・ボルテンダール(vo)"ランスロット卿"ウヴェ・ルリス(g)"ガウェイン卿"スティーヴン・アーノルド(ds)"トリスタン卿"ヤンス・ベッカー(b)"イレック卿"ハンス・ピーター・キャトセンバーグ(key)。更にバッキングコーラスでアイアン・セイヴィアーのピート・シールクとブラインド・ガーディアンのハンズィ・キアシュが参加。


これまで7th、8thと続いてきた「中世三部作」に終止符を打つ本作は、伝説的な「アーサー王物語」を舞台に展開。この伝説は中世騎士道物語を主張する壮大な物語であり、サー・トマス・マロリーの書いた集大成『アーサー王の死』が15世紀になって始めて印刷・出版されたために広く認知された。よくいわれているが、実際には5、6世紀の物語だという。これが中世の時代と騎士の文化の始まりだったのかもしれない。

マロリーの『アーサー王の死』が伝説の集大成だとするのなら、本作は「中世三部作」の集大成といえるだろう。これまでに花開いたドラマティックな要素を更に煮詰め、グレイブ・ディガー独自のエピックパワーメタル・サウンドが遂に完成したのが本作である。三部作中最もメロディアスな内容を持つこのアルバムは、中世騎士道物語を想起させる高貴な雰囲気、民族的なフレーズをも導入し、一方でウヴェ・ルリス(g)の生み出すメタルリフも重厚さを極めている。名作「Reaper」のイメージで本作を視聴しようものなら、その余りの変貌ぶりに驚くことは必至である。アコースティック楽器やバグパイプの使用も、ストーリーの場面を見極めたドラマティックな使い方をしており度肝を抜く。そして最大のインパクトを放つ大仰なクワイアは、過去最もヒロイックな要素を宿している。全編に渡って歌い継がれるクワイアは急激に騎士的なものとなり、爆走するツーバスのリズムと共にリスナーの魂を激しく高揚させていく。これは彼らの最高傑作かもしれない。

再び過去を遡るが、これまでの彼らの中世史パワーメタルではストレートな曲が多かった。繋ぎも殆どなく、次々と繰り出されるパワーメタルに酔いしれたものだ。しかし本作はどうだろうか。アコースティカルなパートで静かに幕開け、激しいリフへと展開する……というパターンが多く見受けられる。つまりは非常にストーリテリングな楽曲が大半を占めているといえよう。これは著しい進歩だ。

アルバム全体としてのバランス、完成度は間違いなく最高の出来である。個々の楽曲の完成度の高さも半端ではない。よりエピカルになったのも良い。全くもって「中世三部作」の最終作に相応しいアルバムだ。さらに聴きごたえがあるので何度でもリピートできる。


1. The Secrets Of Merlin
民族的で魔力に満ちたメロディでの物語の幕開け。魔法使いマーリンをイメージしている。過去最もドラマティックなオープニングだろう。
2. Pendragon
パワフルなメタルサウンドに大仰なクワイアが加わる彼らお得意のナンバー。アーサーの父、ウーサー・ペンドラゴンの物語を描く。サビの勇壮なフレーズは、中間部での民謡調パート同様に、中世の雰囲気を演出する。ソロからの盛り上げも最高である。今まで以上にドラマティックに感じる曲だ。
3. Excalibur
名曲。伝説の剣として最も有名なエクスカリバーについての曲。アーサーはこの剣を15歳の時、岩から引き抜いた。勇壮かつ鋭角的な名リフが乱舞し、大仰なクワイアで一気に爆発するというグレイブディガー節が強烈に炸裂している。中間部でのパートはメロディックパワーメタルに通じる煌びやかさで驚く。
4.The Round Table(Forever)
円卓。ミドルテンポ主体で、サビのコーラスパートはケースの裏側に書いてあるフレーズがリフレインされる。
5. Morgana Le Fay
魔女モルガンの曲。かつての名曲「William Wallace (Braveheart)」に連なるナンバーで、本編で最もドラマティックな楽曲となっている。転調、静と動のパートを使いこなした上、複雑ですらあるこの曲はエピックの傑作であろう。バラード調のヴァースも素晴らしい。クリスはほぼクリーンヴォイスで歌い上げているのも大きなポイントだ。モルガンの魔術に相応しく怪しげな雰囲気に満ち、コーラス部分のリフレインの中毒性は極めて高い。
6. The Spell
本作のサウンドスタイルを主張するようなメロディアスなナンバー。中世暗黒時代の憂いに満ちたメロディと重厚なリフとのコントラストは絶妙で、大仰なクワイアが楽曲を最大限に盛り上げていく。
7. Tristan's Fate
トリスタンとイゾルデの物語。結末が悲しい悲恋である。有名なのは、トリスタンは恋人の父王であるマーク王に背後から槍で貫かれ重傷を負ったということだ。勇敢なクワイアをバックに、メタリックなリフが刻まれる。剛直なヒロイズムが満ち溢れる重厚なサビパートは秀逸だし、後半のスピーディなパートは非常にスリリングで聴きごたえがある。ストレートな楽曲ながら楽しませてくれる。クワイアからの急な疾走は私に若干フリーダムコールを思い出させた。彼らもここまで来たということか。
8. Lancelot
アーサーに次ぐ勇猛な騎士ランスロット。彼とアーサーとグウィネヴィアとの三角関係で、脆くも円卓は崩壊した。外部には一騎当千の騎士らでも、内からの崩壊には手も足も出なかったのだ。これは国家の辿る末路と似ている。悲劇的な運命は曲にも滲んでいるが、やや他の曲に比べると平凡な印象を受ける。
9. Mordred's Song
悲劇的な騎士であり、アーサー王の息子モードレッドの曲。またPVが制作された曲でもある。ストレートな疾走ナンバーであり、勇壮な雰囲気にも満ち溢れた名曲だ。特に、サビのスピーディなクワイアは出色の出来で高揚感を得るには最適だろう。
10. The Final War
勇壮きわまる疾走曲。アーサー王と息子のモードレッドとの間で行われた最後の戦いを描く。
11. Emerald Eyes
ランスロットとグウィネヴィアの愛を物語るエピック・バラード。しかしよくここまでエピカルで壮麗な騎士的道雰囲気が出せるようになったものだと感心する。バグパイプ導入部はこれ以上ないほどヒロイックなムードが漂う。タイトルの如く、宝石のように輝かしい曲である。しかし、グウィネヴィアへの愛が偉大なる騎士ランスロットを駄目にしたのだ。
12. Avalon
モードレットとの戦いで傷を負ったアーサー王は、傷を癒すために3人の貴婦人(湖の乙女)の乗る舟でアヴァロンへと旅立った。アーサー王の剣エクスカリバーは、彼自信の頼みで側近の*ペディヴァー卿が湖へと投げ返した。ペディヴァー卿が戻ってきたときには、アーサー王は既に舟に乗っていたということだ。その後アーサー王がアヴァロンでいかに過ごしたかは知られていないが、ブリテンでは"アーサー王がアヴァロンより戻り、再びブリテンの国を治める"という言い伝えが残っている。
静と動とのパートを使い分け、ドラマティックに、英雄叙事詩の最終章を中世騎士道物語の雰囲気たっぷりに描く本編ラストナンバー。サビではクリスの妖艶なクリーンヴォイスも聴くことが出来、幻想的にすら感じる。また後半には民謡パートも導入され、重厚なリフとのコントラストが見事な折り合いを見せる。中世の伝説とヘヴィメタルの融合。それは今まで多くのエピック・メタルバンドが試みてきては成功と挫折を繰り返しいてきた。ここに、グレイブディガーはその伝統を独自の方法論で完成させたのだ。その答えはこの曲の完成度が物語っていよう。

*アーサーに最後まで付き添い生き残ったのはペディヴァー卿であると伝えられているが、グレイブ・ディガーのブックレットには、パーシヴァル卿が剣を湖に返したと記してある。これは1982年のジョン・アブマン監督の映画『エクスカリバー』での結末からインスパイアされたのかもしれない。この映画では、パーシヴァル卿が最後までアーサー王に付き従っている。剣を湖に返したのも彼だった。


Review by Cosman Bradley
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Knights of the Cross

Grave Digger the 8th album in 1998 Release
★★★★★★★★☆☆...(名盤)



墓掘り人、グレイブディガーの1998年発表の8th。
日本盤は半年遅れて翌年の1999年のリリースとなった。リリースされただけでも奇跡というべきだろうか(といっても何故か彼らのアルバムは2010年現在も国内盤がリリースされている。これは全くもって凄いことだ)。ちなみに画像は2006年のリマスター再販盤。

前作で本格的に中世時代のコンセプト・アルバムを完成させた彼らは、今作も新たなコンセプトを携え降臨。今回は、欧州中世時代に絶大な権力を持ち各地で猛威を振るった十字軍(十字軍の歴史は11世紀~13世紀)の激動の遠征の歴史を背景に、彼らの悲劇と伝説を物語る。グレイブ・ディガーは彼らの歴史的な叙述よりも、十字軍の背景にあった権力者たちの横暴に重点を置いているところがポイントである。フランス王フィリップ4世の陰謀により、異教徒の疑いをかけられ捕らえられた騎士らはその典型であろう。
前作でも目を見張ったドラマティックな味付けは、前作と同じくH・P・カッシェンバーグによるシンフォニックな味付けで更に一段と増す結果となった。どの楽曲の大仰さも凄まじく、エピックメタルの伝統的なサウンドと分別付かないものとなっている。最も彼らは伝統的なヘヴィメタルの体現者であり、その根底には硬派なドラマ性やヒロイズムが存在していることを忘れてはならない。最大の特徴であるサビパート他のクワイアに至っては、聖歌隊を想起させる程に大量増加が成されている。本作のクワイアの勇ましさにおいては同郷のブラインド・ガーディアンに匹敵するだろう。十字軍という神聖な騎士をモチーフにしているというだけあり、楽曲に漂うヒロイックなムードも見逃すことはできない。他にも十字軍の宗教的世界を表現するために幾つか新境地を開いており(前作はスコティッシュ・パグパイプを導入。今作でも#13に登場する)、スパニッシュ系のアコースティックパート、パイプオルガン等の音色も導入し雰囲気を高めている。

本作は、豪傑なパワーメタルと伝統的なエピックメタルが融合した特異なサウンドが、スコットランドの戦いの原野から中世十字軍の宗教的世界に舞台を移したのである。これは一種の歴史絵巻である。次々とコンパクトにまとめ挙げられた十字軍のドラマが、クリスの決死の覚悟で熱唱する歌唱を通して聴き手に迫ってくる。明確に表現された本作の充実した内容に打ちのめされることは必至である。

というわけで、「中世3部作」の中間に位置する「Knights Of The Cross」、彼らの描く十字軍の物語と共に遠征へ旅立とうではないか!最も、私は既に旅立っているのだが(笑)。


1.Deus Lo Vult
アルバムの始まり、そして十字軍の始まりを告げる宗教的な語りからパイプオルガンの厳粛な音色へと展開するイントロダクション。伝説では"Deus Lo Vult"、すなわち"神の御心のままに"という言葉から人々が剣を取り団結し、十字軍の召集が達成されたということだ。
2.Knights Of The Cross
タイトルトラック。《十字軍》、神聖なるエルサレムを異教徒から奪還するために組織された彼らは、聖戦と題し殺しまくった。そして気がついたときには、踝まで血に使っていたのだという。何故私がこのようなことを描いたのか、それはこの曲の歌詞にそう書いてあるからだ。悲劇的な内容にも関わらず、重厚なパワーメタルナンバーであり完成度は非常に高い。十字軍の宗教的雰囲気と、騎士としての高潔さを持ち合わせるドラマ性に満ちた名曲であり、伝統的なエピック・メタルの良点をほとんど網羅している。特に、行進曲調コードで突進するサビのクアイアは圧巻。十字軍の悲しみが迫真性を持って伝わってくるパートである。
3.Monks Of War
「Monks Of War」=傭兵。十字軍を境に騎士たちは落ちぶれ、やがて傭兵達が戦争を左右した。ゴリ押しのスピードメタルで、彼らの十八番ともいえる曲。ヘヴィなツーバスの疾走とウヴェ(g)の名リフが冴える。パワーメタルの真髄が垣間見れる名曲だ。
4.Heroes Of This Time
効果的なキーボードをバックに、ダークな雰囲気を伴い行進。静寂が逆に不気味に感じる。
5.Fanatic Assassins
東洋的なメロディが印象的。
6.Lionheart
今なお讃えられるイングランドの伝説的な王、リチャード一世の武勇を讃えるエピックパワーメタル。かれはその豪傑な戦いぶりから獅子心王と呼ばれた。そんな彼を表すように力強いリフが高速で駆ける。ブリッジでの寛大な盛り上がりから、緩急を持ったサビのクワイアへのリフレインは流れは最上にドラマティックである。スケール感に満ち、コンセプトを十分に活かし切った末に誕生した名曲であるといえるだろう。
7.The Keeper Of The Holy Grail
中世のスパニッシュギターのようなアコースティックパートから幕開ける。イントロ部分では、グル―ヴィーなリフをメインにバックで鐘が鳴り響きいいアクセントを演出。またダイナミックなコーラスの練り方は聖歌隊を思わせる。ダークに中世の雰囲気を醸してくるところが、墓掘り人たる由縁である。中間部でのオーケストレーションパートもドラマティックで良い。歌詞はオカルト界等で有名な十字軍の聖杯隠蔽について。
8.Inquisition
これぞグレイブディガーというヘヴィメタリックなリフから始まるナンバー。サビでの大仰なクワイアにバッキングのコーラス、そしてギターのフレーズは完璧な構築感を見せつける。ソロパートといい、漢らしさも漂っている。
9.Baphomet
バフォメットとは中世の魔道書等で知られる悪魔。十字軍の崇める神でもあった。ミドルテンポの曲調で、宗教観も醸し出す。
10.Over The Sea
クリス決死の歌唱が十字軍の魂と呼応し聴き手に迫る。悲劇的な雰囲気が支配する曲で、ラストのアコースティックパートがよりいっそうそれを際立たせる。しかし、フィリップ4世の魔の手から逃れた十字軍の騎士らは、海を越えて、ハイランドで平和を見出したと伝えられる(ほとんどの騎士は焼き殺された)。なぜなら寛大なるスコットランドの王、ロバート・ザ・ブルースが彼らを受け入れたからだ。
11.The Curse Of Jacques
中世のエピカルな雰囲気とシリアスなリフが徐々に盛り上げる本作のハイライト。十字軍最後の団長、ジャック・ド・モレーの火あぶりの場面を再現した壮絶なエピックである。サビまで流れついた時、我々は彼のの悲劇に思いを馳せることだろう。サビのエピッククワイアの抒情性とメロディの質は傑出しているのだから。ちなみに十字軍の終焉は1312年。
12.The Battle Of Bannockburn
バグパイプの音色が前作との共通点を物語る。ハイランダー達の歴史的な勝利を、シリアスにドラマティックに見事描ききっている。長年イングランドの圧政に苦しんだスコットランドの民も、遂に1314年のバノックバーンの戦いでイングランドに勝利を収めたのだった。スコットランドの勇敢なる戦士達はロバート・ザ・ブルースの指揮の下、自軍の三倍もの数のイングランドの大軍を打ち破ったのだ。そしてそれは同時に、スコットランドが自由を得た瞬間でもあった。これはフィクションではない。
13.Kill The King
日本盤ボーナス。レインボウのカヴァー。
14.Children Of The Grave
こちらも日本盤のみのボーナス。ブラック・サバスのカヴァー曲。


Review by Cosman Bradley
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Tunes of War

Grave Digger the 7th album in 1996 Release
★★★★★★★★★★...(神盤)



ジャーマン・パワーメタル界の重鎮、グレイブ・ディガーの放つ1996年発表の7th。


まず始めに彼らの歴史を手短に…
グレイブ・ディガーは墓掘人クリス・ボルテンダール(vo)率いる、ドイツのパワーメタルバンド。1980年クリスその人によりドイツで結成され、84年に1st「HEAVY METAL BREAKDOWN」にてデビュー。ストレートなヘヴィメタルサウンドでランニングワイルド等と共に人気を博す。その後も85年に2nd「WITCH HUNTER」、86年に3rd「WAR GAMES」とコンスタンツなリリースで確実にファンを獲得していったが、87年にDIGGERと改名しポップな音楽性へ変更。ファンから物議を醸しだす。更に、バンドは解散してしまう。しかし90年代に入り再結成し、93年に発表した5thアルバム「THE REAPER」で強力なパワーメタルサウンドを提示、見事にメタルシーンに帰還を果たす。続く95年リリースの6th「HEART OF DARKNESS」を経て、今作への発表へと至る。


よく同国で崇められるもう一つの重鎮ランニング・ワイルドとの比較に出される彼らだが、サウンドもといメタルに懸ける精神性は非常に類似している。要はどこまでも熱く漢らしいピュア・メタルだということだ。グレイブ・ディガーの主なサウンドは、パワフルかつヘヴィな正統派のパワーメタルである。例外に洩れず、熱心なメタルファンが非常に好むサウンドであるのだ。

7枚目のアルバムである本作は、彼らのキャリアの中でも重要な位置を担う、歴史的なアルバムである。なぜなら、以降の彼らのアルバム・スタイルを決定的にする手法が用いられているからだ。従来のスラッシーで剛直なメタルサウンドは魅力的であった。そして今回、そこに中世のコンセプトを加えることにより、よりダイナミックでドラマティックなエピック・メタルアルバムへと進化したのである。

彼らがこのアルバムで題材としたのは「スコットランド戦史」であり、これまでの作品との決定的な差別化を図ることに成功した。スコットランドの歴史はまさに"戦いの連鎖"であり、イングランド王の圧政、団結しない貴族間の争いによる戦争が常に絶えなかった。しかしそんなスコットランドの民は高地民族(通称ハイランダー。彼らを題材にした映画『Highlander(邦題:ハイランダー、悪魔の騎士)』も公開されている)に代表される勇猛果敢な戦士の一族であり、戦闘では大いに称賛されていった。彼らはそんな壮絶きわまる時代をテーマにしたのだ。それらの戦いの歴史から生じる悲劇や栄光。グレイブ・ディガーはシリアスに訴えかける迫真のエピック・アルバムを完成させたのである。正直、彼らの真性なパワーメタルがバックグラウンドにあるからこそ、スコットランド特有の野蛮な雰囲気や強靭な精神性が表現できたのではないかと思えてならない。それほど独自性に富んだエピック・アルバムである。
アルバムにはスコティッシュ・バグパイプが導入され、独特の民族的雰囲気を醸し出している。またメロディにもケルティックな音階を盛り込み、よりドラマティックな楽曲を完成させている。そして今回、最も功を奏したのが大仰なクワイアの導入であろう。クリスのダミ声に続く壮大なクワイアは間違いなく新たな境地を開拓した。更にそのクワイアの練り方も尋常ではない熱の入れ方で、ブラインドガーディアンにも匹敵するほどである。クワイアが最大限に生かされた#3、#4、#11等は間違いなく名曲に値し、グレイブディガーの可能性の門口を大きく押し広げたのである。中でも、映画「ブレイブハート」で取り上げられたスコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスをタイトルに冠した#4は、歴史的な名曲である。

本来の剛直なパワーメタルサウンドにこれらのエピカルな要素が加わったことにより、グレイブ・ディガーの魅力はとてつもなく向上した。大仰なドラマ性、楽曲の漢らしさ、それは従来のエピックメタルバンド(マノウォーマニラ・ロード)にも通じる要素を持っている。ましてや彼らの場合、長年それを続けてきたのだから、本作の充実で一気にシーンのダークホース的な位置に伸し上がったと判断するのも容易なことだろう。本作には貫禄すら漂う。だが彼らの歴史の深さを考えれば当然のことかもしれない。

というわけで私自身も絶賛する本作だが、欧州では後にリリースする2枚のアルバムと合わせて「中世三部作」と題され、熱烈に歓迎されたようだ。そんな「中世三部作」の記念碑的な第一作目「TUNES OF WAR」、聴いておいて損はない!


1. The Brave
スコティッシュ・パグパイプが導入されたイントロダクション。原曲はスコットランドの準国歌「Scotland The Brave」。この勇敢なメロディに導かれ、戦いの歴史が蘇っていく。
2. Scotland United
クリスのシャウトと共にヘヴィに幕開けるパワーメタルナンバー。サビでの起立の付け方や、間奏での勇壮きわまる疾走等、以前のグレイブディガーにはなかった要素が強烈に耳を引く。漢臭い中世の世界観を剛直なパワーメタルで表現し、ヒロイズムを大仰なクアイアで奏でる。グレイブディガー特有の独特のパワーメタルがエピックメタルと融合した瞬間といえよう。
3. The Dark Of The Sun
典型的なグレイブ・ディガーのパワーメタルであり、重厚なパワーで徹底的にゴリ押しする。歯切れのいいリフに頭が揺れる。サビでは大仰さが一気に爆発し、本作の真骨頂が伺える。しかし、ここでもスコットランド風の華麗かつ高潔なクアイアと豪傑なパワーメタルの融合は以外なまでに合うということが分かる。ファンタジー系のエピッククワイアとは違い、歴史という現実のリアリティが感じ取れるからだろうか。一般的に、ヘヴィメタルには酷く現実的で社会的な内容のものと、一方は幻想的でファンタジー的な内容を含む二種類が存在しているといわれている。
4. William Wallace (Braveheart)
歴史的名曲。先述したように、スコットランド独立のために人生を懸け戦った英雄、そして最大の愛国者ウィリアム・ウォレスを歌った壮絶なエピックナンバー。メロウな冒頭のアルペジオからスコットランドの民族的な精神性が溢れてくる。非常にシリアスかつドラマティックで中世的な雰囲気が支配しており、スピーディなリフにクリスの男気が滲み出るダミ声、そして徐々に高潔なるクワイアへと流れていく。その展開は感動的ですらあり、特にクアイアの美しい練り方は聖歌のように響く。まるで古くからスコットランドで歌い継がれていたかのように、歴史の深みを感じる旋律である。ウォレスは確かに死んだが、その愛国の精神は今なお生きているのだ。
5. The Bruce
ミドルテンポで勇敢に進む曲。暗雲立ちこめるダークな雰囲気が充満しており、彼ららしいといえる。が、やはりサビでの盛り上がり方は異常といえる。7分に及ぶ大作だが、ドラマティックに聴かせるので飽きることはない。
6. The Battle of Flodden
重厚なリフがツーバスのドコドコいう疾走と共に刻まれる。 コーラスパートでは、ヒロイズムを鼓舞する勇壮なクワイアが聴ける。またリフに込められた切迫感が楽曲のシリアスさ押し上げている。くだらない部分など一切ない。これぞトゥルー・メタルだ。
7. The Ballad of Mary (Queen of Scots)
クリスがクリーンヴォイスで歌う衝撃的なバラード。普段のダミ声と墓掘り人の漢らしさからは想像もできない、繊細な歌声に感銘を受ける。サビのクワイアには中世の雰囲気が漂い、聴き手を誘ってくれる。とても綺麗なバラードである。
8. The Truth
ブリッジの民族的なリフ使いが印象的な一曲。曲調はミドルテンポ。
9. Cry for Freedom (James the VI)
ゴリ押しナンバー。サビでの吐き捨てるようなクリスの歌い方が悲劇を物語る。
10. Killing Time
約3分と短い曲。他の曲に比べるとヘヴィさはやや薄い。しかしお決まりのサビパートには、メロディアスなクワイアが導入されている。
11. Rebellion (The Clans Are Marching)
歴史上で認知されている、ハイランダー最後の戦いを歌った決死のエピック・メタル。とてつもなく雄大なクアイアが冒頭から歌い継がれる。その一大クワイアは、このアルバムのテーマを物語っているかのように深淵に響く。1746年、スコットランド・ジャコバイト軍の大半は高地戦士(ハイランダー)で、カロドン、ミュアの戦いで勇敢に戦った。しかし近代的な武器を携えたイングランド軍に彼らの長剣が通用するはずはなかったのである。この戦いの敗北によってハイランダー達はほぼ全滅し、代償として彼らの誇りであったキルトとタータンの着用も禁止された。これはスコットランドの民にとって歴史上最大の屈辱であった。なんという悲劇であろうか。この曲には、最後の戦いに行進する彼らの勇猛果敢な姿が勇ましい曲調で表現されている。「戦いの連鎖、死か栄光か」という壮絶なるスコットランドの中世戦史を浮き彫りにし、大仰なメロディの中に尊い彼らのメッセージ性を宿した、叙事詩的よりも真に訴えかける楽曲である。後は我々が彼らのエピック・メタルに耳を傾けて、何を感じるか、そこが重要である。後半にはパグパイプの音色も登場する。
12. Culloden Muir
豪傑スピードナンバー。ヘヴィなリフで押すところには疲労感すら覚える。彼らの一途さには感服である。
13. The Fall of the Brave
アルバム・イントロダクション#1と対になるエピローグ・トラック。幾多の戦い、そのあとに残るのは何であろうか。その答えは、本作を聴いた者それぞれの解釈になる。


Review by Cosman Bradley
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ハート・オブ・ダークネス

Grave Digger the 6th album in 1995 Release
未聴



グレイブディガー1995年発表の6th。


1.Tears Of Madness
2.Shadowmaker
3.The Grave Dancer
4.Demon's Day
5.Warchild
6.Heart Of Darkness
7.Hate
8.Circle Of Witches
9.Black Death
10.Dolphin's Cry
11.Don't Bring Me Down


Review by Cosman Bradley
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Symphony of Death

Grave Digger the mini album in 1993 Release
★★★★★★★★☆☆...(隠れた名盤)



ジャーマン・パワーメタルの雄グレイブ・ディガーの1993年発表のミニ・アルバム。

前作にあたる傑作『Reaper』で復活した墓掘り人はブランクを全く空けず同年にこのミニ・アルバムをリリース。楽曲と共に勢いに満ちた彼らの行動力が功を奏したのか、ミニ・アルバムながらも本作は相当の名盤となっている。ハイペースなリリース加え収録された楽曲の即効性……恐らくは彼らのメタルに対する情熱が爆発したのだろうと思われる。曲単体としても、前作よりも整合感が増し聴き易くなっているし、漢らしいコーラスも大胆に導入され、本当にこれは相当の傑作ではないだろうか。

そしてまたローブを纏った骸骨がバイオリンを奏でている風景を描いたジャケットも素晴らしい。この骸骨はそれ以降彼らのアルバムジャケットの全てに登場し、ある種メガデスラトルヘッドアイアンメイデンエディのようなマスコットになっている(認知度は驚くほど低いが…)。
何故このようなことを描いたかというと、私が"墓掘り人"と聞いてまず始めにイメージするのがこのキャラクターだからだ。中世のペスト絵画に描かれている死神からインスパイアでもされたのだろうか(笑)。


1.Intro
2.Symphony Of Death
リフがメタリックすぎて音像が凄いことになっている。ストレートなスピードナンバーといえるだろう。しかし、後半からの厳かなシンガロングパート等の導入など、確実に進化していることをも伺わせる。
3.Back To The Roots
ヘヴィかつ歯切れのいいなリフにクワイアが絡む佳曲。中間部からのテンポチェンジ、ソロへの展開ではドラマ性も披露する。相変わらず熱い曲だ。
4.House Of Horror
超絶にメタリックなスピードナンバー。リフの切れ味は最高だし、なによりヘヴィメタルというジャンルに一直線という彼らの意思が伝わってくる。何気に重ねられたコーラスもよく曲に馴染んでいる。
5.Shout It Out
6.World Of Fools
重厚でメロディアスなリフに導かれるイントロも印象的だが、サビでの大仰な爆発感のインパクトも秀逸。
7.Wild And Dangerous
8.Sin City
ボーナストラック。


Review by Cosman Bradley
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The Reaper

Grave Digger the 5th album in 1993 Release
★★★★★★★★☆☆...(名盤)



再結成し発表されたグレイブ・ディガーの復活作。正式には1993年発表の5thアルバムに当たる。

ポップな音楽性で物議を醸すことになった前作「STRONGER THAN EVER」より月日は流れ、ようやくクリス・ボルテンダール(vo)ウヴェ・ルリス(g)はこのアルバムの発表に漕ぎつけた。
それには紆余曲折あったが、まさに彼らがメタルの信念を貫き通した結果が、このアルバムの内容そして音楽性に凝縮されているといっていいだろう。このアルバムには"メタルとは何か?"という諸問題に明確な答えを出す楽曲が山盛りにされている。全編を貫く圧倒的なスピード感、ダークでグルーヴィーなリフ・ワーク、コンパクトにまとめられた楽曲群、そして何よりグレイブ・ディガーがメタルに懸ける愚直な情熱がメタルファンならずともひしひしと伝わってくるはずである。

スラッシュの攻撃性からメタルに入った者は数多いと思うが(そういう私もそのうちの一人である)、彼らのこのアルバムからメタルに入るのも十分悪くはない。それほど本作は、ヘヴィメタルの教科書的な一枚なのだ。


1. Tribute To Death
不気味で邪悪なイントロ。
2. The Reaper
鋭く剛直なスピードメタルの傑作で、本作を代表するナンバー。一気に駆け抜けていく圧倒的な流れは見事というほかない。凄まじい疾走とリフの波状攻撃だ。
3. Shadows Of A Moonless Night
4. Play Your Game (And Kill)
5. Wedding Day
暑苦しい「オーオーオー」いうコーラスが印象的な楽曲。ミドルテンポで歯切れのいいリフが続く。
6. Spy Of Mas'on
7. Under My Frag
8. Fight The Fight
9. Legion Of The Lost (Part2)
約6分に及び、ダークでドラマティックな世界観を構築するカルト的楽曲。クリスの声質が最大限に生かされているといっていい。
10. And The Devil Plays Piano
11. Ruler Mr.H
冒頭のダークで禍々しいメロディからのヘヴィな疾走は堪える。
12. The Madness Continues


Review by Cosman Bradley
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