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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


◆新着情報 News Topics
[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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Mysterium



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2013
Reviews: 83%
Genre: Epic Metal



アメリカのカンザス州ウィチタ出身のアンダーグラウンド・エピック・メタル、マニラ・ロードの2013年発表の15th。

過去の作品が「Shadow Kingdom Records」からリマスター再発されたように、第15作目となる『Mysterium』もこのレーベルから配給された。マニラ・ロードは本作で新しくベースにジョシュ・カスティージョ(Josh Castillo:b)、ドラムにアンドレアス・ニューダース(Andreas Neuderth:d)を迎えた。しかし、サウンドの基盤をマーク・シェルトン(Mark "The Shark" Shelton:g、vo)が担っている部分は変わらず、そこに右腕ブライアン・パトリック(Bryan "Hellroadie" Patrick:vo)が続く。
Mysterium』はマニラ・ロードの典型的なエピック・メタル作品であり、80年代を意識したギター・サウンドが骨格になっている。マニラ・ロードは過去の作品群で類似したサウンドを提示し続け、一部でカルト的な人気を誇るバンドだが、新作においても同様のスタイルが保持されている。ここでは過去の暗いテーマ──史実や幻想文学など──が再構築され、叙事詩的なサウンドがリスナーの知的好奇心を刺激する。楽曲の背景には、マーク・シェルトンが敬愛する作家H・P・ラヴクラフトやロバート・アーヴィン・ハワードなどの影響が残されており、独特のアンダーグラウンド臭と絶妙に絡み合っている。また、本作にはおよそ10分を超える大作"Mysterium"を収録し、エピック・メタルが得意とする様式美を強調している。既にマニラ・ロードの『Mysterium』は世界各地のエピック・メタルのファンからインターネット上で評価を受け、日本ではこれが最初の正式なレビューとなった(2014年7月現在)。



1. The Grey God Passes
2. Stand Your Ground
3. The Battle of Bonchester Bridge
4. Hermitage
5. Do What Thou Will
6. Only the Brave
7. Hallowed Be Thy Grave
8. The Fountain
9. The Calling
10. Mysterium


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Playground of the Damned



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2011
Reviews: 80%
Genre: Epic Metal



アメリカのアンダーグラウンド・エピックメタルの重鎮、マニラ・ロードの2011年発表の14th。


近年、一連のコンセプト・アルバムの発表によってその健在ぶりをアピールしたエピックメタル・シーンの重鎮マニラ・ロードは、第14作目にあたる本作『Playground of the Damned』にて再びシンプルな方向性を目指している。それは『Gates of Fire』(2005)で表現された複雑な大作志向を排除するものであり、より個々の楽曲が際立つ要素を意図的に設けている。既に完成されたマニラ・ロードのアンダーグラウンド・エピックメタルが放つ古典的な魅力は、円熟したバンドの演奏と見事に重なり、今作でも真価を十分に発揮している。なお本作では楽曲が独立している分、我々はよりスムーズにマニラ・ロードの楽曲を聴くことが可能だ。
コンセプチュアルな手法が結集された前作『Voyager』(2008)では、中世時代のヴァイキングの航海の様を叙事詩的に描き切り、ドラマティックなエピックメタルの金字塔を打ち立てたことが記憶に新しい。今作でマニラ・ロードはやり尽くされたコンセプト・アルバムの手法を一旦手放し、各楽曲にそれぞれ異なるストーリーを持たせている。例えば映画『キル・ビル(Kill Bill)』(2003)などで有名なクエンティン・タランティーノ監督の『グラインドハウス(Grindhouse)』(2007)をモチーフとした"Grindhouse"などは、比較的新しい試みの一つとして数えられる。また従来のテーマに沿った"Abattoir de la Mort"やロバート・E・ハワードの小説『アシュールバニパル王の火の石(The Fire of Asshurbanipal)』(1936)を題材とした"Fire of Ashurbanipal"などの楽曲は、古いファンを喜ばせる内容を持っている。『Playground of the Damned』では全体を構築する一つのテーマが排除されているため、個々の楽曲も実にバラエティに富んだ内容を収録することができたのだ。
Playground of the Damned』のサウンドは前作の延長線上にあるといえよう。ブラックやデスから影響を受けたダークなエピックメタルが展開される本作では、若干スピードも抑えられている分、より安定したマニラ・ロードの重厚なサウンドを聴くことができるのだ。楽曲はシンプルなリフを基盤に構築され、ここでもマーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)とブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)の独特の歌声が素晴らしい仕事をこなしている。なお本作では、以前よりもブライアン・パトリックのヴォーカルがマーク・シェルトンの歌唱法に接近している点にも注目が集まる。なぜなら、今では判別が難しいほど二人のヴォーカルは類似しているためだ。これもブライアン・パトリックがマニラ・ロードというバンドのために努力した結果であろう。



1. Jackhammer
本作を冒頭を飾るに相応しい名曲。エピカルなギターメロディとヘヴィなリフが交互に狂乱を果たす。マーク・シェルトンの不気味なヴォーカルも異様に光る。
2. Into the Maelstrom
暗く重い内容。緩急に富んだ場面も披露し、要所で聴き手を驚かせる。この果てしない暗さがマニラ・ロードがアンダーグラウンドから脱出できない理由だが、これらの音楽性を他で聴くことはできない。
3. Playground of the Damned
タイトル・トラック。地を這うような重苦しいメロディがアンダーグラウンド特有のカルト的な空間を構築する楽曲。展開は至ってシンプルである。
4. Grindhouse
およそ8分に及ぶ楽曲。クエンティン・タランティーノ監督の『グラインドハウス(Grindhouse)』(2007)をモチーフとした内容である。冒頭の不穏な展開やグルーヴ感のあるリフの使用に加え、全体がオカルティックな雰囲気に彩られている。やはりそれらは題材のテーマに忠実に沿ったものであろう。なお「グラインドハウス」とは、アメリカのB級映画を数本立てで上映する映画館のことを指している。
5. Abattoir de la Mort
およそ7分に及ぶ、ヒロイック・ファンタジーに影響を受けた楽曲。本作のハイライトであり、エピカルな雰囲気と劇的な展開が聴き手を襲う。後半の盛り上がりにかけては従来のファンをも唸らせるものがある。
6. Fire of Ashurbanipal
ロバート・E・ハワードの小説『アシュールバニパル王の火の石(The Fire of Asshurbanipal)』(1936)を題材とした楽曲。この作品はハワードがクトゥルー神話に影響を受けて執筆した怪奇幻想小説である。本曲は妖艶なアコースティック・ギターの音色に彩られる叙情的な内容を持つ。
7. Brethren of the Hammer
勇壮な雰囲気に満ちた楽曲。ダークなリフとアグレッシブな内容を有し、従来のヒロイックなコーラスとエピカルなメロディを収録する。
8. Art of War
鍛えられたオーディンの戦士たちの戦争術(Art of War)について歌う。名曲"Epitaph Of The King"に連なるヒロイックなバラードの傑作であり、本作を締め括るに相応しい孤高のドラマ性を有している。後半にかけての叙事詩的なギターソロ・パートはあまりにも強烈。


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Voyager



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2008
Reviews: 97%
Genre: Epic Metal



アメリカ発祥、世界各地に熱狂的信者を有するカルト・エピックメタルの始祖、マニラ・ロードの2008年発表の13th。


「オーディンのために。アスガルドのために。ホルガーは宣言する。彼の審判を──」

 "Blood Eagle"より


『METAL EPIC』誌より抜粋:



我々エピック・ヘヴィメタルの探求者にとって、2000年に再結成を果たしたエピックメタルの始祖、マニラ・ロードの近年の功績を振り返る際、明確には「3つの傑作が驚くべき短期間のうちに発表された」、という現実に直面する。この5年間の間に、マニラ・ロードは破竹の勢いで才能を爆発させ続け、エピック・ヘヴィメタル史に悠然と輝く一連の名作を誕生させた──2001年にはアトランティス大陸をテーマとした壮絶な『Atlantis Rising』、2002年にはこれまでのエピックメタルの常識を悉く覆す一大傑作『Spiral Castle』、2005年にはマニラ・ロードの歴史の中で最も叙事詩的な前代未聞の超大作『Gates of Fire』(2005)が発表された。我々はこのあまりにも迅速かつ目覚ましい大躍進に対し、ただマニラ・ロードというバンドの持つ驚異的なポテンシャルを素で受け止めることしかできなかった。短期間で叙事詩的なマニラ・ロードの作品をすべて理解することは難しいが、矢継ぎ早にエピックメタルの名作を発表し続けることは更に難しい。しかし結局のところ、マニラ・ロードはその偉業をいとも簡単に成し遂げてしまったのだ。そしてこのように、エピックメタルの歴史に新しい3つの叙事詩が加えられたので、多くのファンは現実を大いに喜んだ。



ブライアン・パトリック(Bryan Patrick)の加入によって攻撃性を増したマニラ・ロードは、賛否両論を実力で撥ね退け、彼がマニラ・ロードにとって必要な存在であることを証明した。元来ブライアン・パトリックはデスメタルやブラックメタルのために上手く歌うことができるヴォーカリストであったが、アンダーグラウンド寄りの湿った歌唱を披露するマーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo、key)とは上手くいかないと信じ込まれていた。その逆境を見事に克服したのが前作『Gates of Fire』であり、ブライアン・パトリックの凶暴な唸り声は重厚なエピックメタルのサウンドに特筆すべきアグレッションを加え、前述の通りエピックメタルの優れた傑作を誕生させることができた。この時点で、ブライアン・パトリックのヴォーカルに難癖を付ける者は消えた。
2008年に発表されたマニラ・ロードの第13作『Voyager』でブライアン・パトリックは一時的な休養のためにバンドを離れているが、代わりに兄弟のハーヴィ・パトリック(Harvey Patrick:b、vo)が素晴らしい仕事をこなしている。彼らの持ち込んだ強烈なインスピレーションを抜きにして、本作は完成しなかったであろう。既にブライアン・パトリックの兄弟は、マニラ・ロードの新しい"顔"として見事に定着している。



本作『Voyager』は、マーク・シェルトン、ハーヴィ・パトリック、コリー・クリストナー(Cory Christner:d)によって制作された雄大なコンセプト・アルバムである。既にエピック・ヘヴィメタル界の教祖マーク・シェルトンの持つ壮大な構想によって生み出された新時代の3つの作品において、過去にマニラ・ロードがテーマとして選択してきた題材は殆ど消化された。ロバート・E・ハワード、H・P・ラヴクラフト、エドガー・アラン・ポー、クライブ・バーカーといった過去の作家たちが残した作品は、古くマニラ・ロードの叙事詩的な音楽性に影響を与え続けてきた。マーク・シェルトンはこれらの幻想的な題材を巧みに扱い、純粋かつ大仰なエピックメタルを完成させることに成功した。そして今回、新しくマニラ・ロードは12世紀の時代へと旅立ち、中世のヴァイキングの一団が体験した壮絶な航海と叙事詩的な戦争を壮大なスケールで描いている。マニラ・ロードが奏でる古代の悠久の調に乗せて、我々はその劇的な物語の行末を見届けることになるのだ。



……如何なる時代においても古代の信仰が生き長らえているように、本作の雄大な"Voyager"で描かれている航海者たちは、必然的な理由から新天地を目指す航海へと旅立っている。古代の信仰を崇拝している北欧人にとって、キリスト教への改宗は耐え難い屈辱であったので、彼らはヴァイキングとなって戦争や略奪を行ったり、自分たちにとってより良い環境である(と信じられていた)アメリカへと旅立っていった。今作の物語の主人公であるホルガー(Holgar)とそのヴァイキングたちも、同じようにキリスト教への改宗から逃れるために、遠い異国の地へと出航する。彼らは冒険の途中で様々な困難と出会ってこれを乗り越え、最終的には古代アステカの国に到達する。そこでヴァイキングたちは「ククルカンのピラミッド」、即ちチチェン・イッツァ(カスティーヨ)を発見するというのだ。この伝説的な中世時代の冒険譚が本作の主なストーリーとなっており、マニラ・ロードは従来の古典的なエピックメタルでこれらを鮮明に描ききっている。



マニラ・ロードが生み出したコンセプト・アルバムの頂点に位置する本作は、これまでの作品以上に強いデスメタルの影響を残し、暗く重い叙事詩的な雰囲気によって支配されている。"Conquest"に表現されているハードコアなスタイルは、マニラ・ロードにとっては古くも新しい要素だ。ファンならばこれをスラッシュメタルを導入していた時期と重ねることができるかも知れない。80年代の伝統的なエピックメタルを踏襲しながらもよりソリッドに進化しているリフは、楽曲の重厚なサウンドと相俟って何れも唯一無二の"マニラ・ロードのエピックメタル"を形成している。今回、中世をテーマにしたことで使用が増加した高潔なアコースティック・ギターは、全体により深遠な叙事詩的な雰囲気を与え、"Tree of Life"のような素晴らしい名曲を生んでいる。
過小評価されているが、マニラ・ロードの表現力には驚くべきリアリティが存在している。既に過去の名作が物語っているが、マニラ・ロードは作品のテーマに沿った雰囲気を自在に作り出すことができる。我々は『Atlantis Rising』での異国風な雰囲気や、『Gates of Fire』での古代ギリシア・ローマ時代に対する忠実な表現力を高く評価している。また本作『Voyager』でも極めて時代背景に沿った迫真の世界が構築されており、今作における時代考証の正確さは明らかに突出している。『Voyager』の再現する叙事詩的な中世ヴァイキングの世界観が、我々にとっての新しい視野の獲得と久しく忘れ去っていた過去の興奮を呼び覚ましてくれる。マニラ・ロードは再び歴史的なエピックメタルの傑作を生み出したのだ。



1. Tomb of the Serpent King / Butchers of the Sea
キリスト教の布教から逃れるために、勇士ホルガーに率いられたヴァイキングの一団は遥かなる土地を目指して船出する。語りを導入した不穏なイントロダクションから始まり、重厚かつヘヴィなエピックメタルへと展開する典型的なマニラ・ロードの名曲である。
2. Frost and Fire
ヴァイキングの一団がアイスランドに辿り着く。かつて北欧の王はキリスト教への改宗を宣言し、異教徒との間に血が流された。荒涼としたアイスランドにも多くの異教徒が住まったが、現在この土地での戦いは終結している。ダークな雰囲気に包み込まれたエピックメタルであり、ペイガニズムを表現する暗いメロディが本作のデス/ブラックメタルとの共通点を物語っている。
3. Tree of Life
およそ8分に及ぶ大作。世界樹(ユグドラシル)──すべての生命の源である生命の木は、9つの神秘的な世界へと繋がっているとして、北欧の民は今もこの伝説を信じている。美しいアコースティック・ギターが奏でる高潔な音色が印象的なこの素晴らしい名曲は、本作の一つのハイライトとして記録される。叙事詩的な真のバラードである。
4. Blood Eagle
アイスランドを出港し、グリーンランドを経由してヴィンランドへと辿り着いたホルガーとヴァイキングの一団。ホルガーは古代の信仰と神々の土地を汚したとして、かの地で出会った司教を殺害する。パイプオルガン風の中世を彷彿とさせる旋律で幕開ける本曲は、雄大なコーラスを有するコンセプチュアルなエピックメタルである。
5. Voyager
およそ9分に及ぶ本作のメイン・テーマ。新天地を目指して凄絶な嵐の中を突き進むヴァイキングたちの生き様を描いている。まさにエピックメタルに相応しい壮大な内容を有し、孤高のドラマ性を表現した劇的な緩急を用いた名曲である。雄大なコーラスを配した数々の場面がヴァイキングの勇士たちの泥臭い熱気を呼び起こす。マニラ・ロードここにあり。
6. Eye of the Storm
中世時代の雰囲気を宿すドラッド。戦士的なロマンティシズムを表現したアコースティック・ギターの音色が遥かなる記憶を呼び覚ます。
7. Return of the Serpent King
およそ8分に及ぶ大作。ホルガーとその仲間たちは、アステカの支配者であるトルテック族との戦争に加わる。ドラマティックなエピックメタルであり、後半に大仰なギターソロ・パートを配す。なお"蛇の王(Serpent King)"とはマヤ神話の至高神ククルカン(Kukulcan)を指している。
8. Conquest
刃を交える長剣のような鋭利な戦いの歌。征服が始まり、ヴァイキングはヴァルハラのために戦う。そしてアステカの古代文明は犠牲となり、勝利はヴァイキングのものとなる。本作中で最速である本曲は、暴虐的なまでに圧倒的なスピードで疾走し、怒涛のアグレッションを叩きつける。
9. Totentanz (The Dance of Death)
最後の楽曲。戦争で死んだ偉大なる王のために、残された人々は死の舞踏を繰り広げ、ヴァイキングの勇敢なる航海者たちは讃えられる。スパニッシュな雰囲気を宿す繊細なパートと、圧巻のリフが刻まれるパートとに分かれる名曲である。本作を締め括るに相応しいドラマ性を有している。


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Gates of Fire



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2005
Reviews: 95%
Genre: Epic Metal



アメリカのアンダーグラウンド・シーンに君臨するエピックメタルの重鎮、マニラ・ロードの2005年発表の12th。


プロローグ...
マニラ・ロードの再結成は運命であった。ここに来て怒涛の快進撃を続けるアメリカのマニラ・ロードは、エピックメタルの名作を矢継ぎ早に発表し、問答無用でファンを納得させた。既に新生マニラ・ロードによって『Atlantis Rising』(2001)、『Spiral Castle』(2002)という途轍もないエピック・ヘヴィメタルの傑作が生み出されており、我々はマニラ・ロードの絶対的なポテンシャルを改めて確認させられることとなった。この仕事は決して金のためではない──純粋なエピックメタルへの探求心が生み出した奇跡を、事実我々は目撃したのである。
そして再び、マニラ・ロードのエピックメタルの崇拝者である我々は、信じられないような奇跡を目の当たりにすることとなる。1981年にレコーディングした音源を再発した企画盤『Mark of the Beast』(2002)に次ぐマニラ・ロードの行動は、これまでで最も叙事詩的な作品の制作に着手することであった。そしてそのために、エピックメタルの始祖マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)は、驚くべき手法で壮大な叙事詩の構想を練り始めていた。
バンドにも変化があった。過去にランディ・フォックスとの間に生じた確執のために脱退したハーヴィ・パトリック(Harvey Patrick:b)が再びバンドに加入したのだ。第2のヴォーカリスト、ブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)の兄弟でもあるハーヴィ・パトリックは、マニラ・ロードが必要な仕事をやり遂げるために必要なメンバーであった。
歳月は流れた。新作を制作する過程において、西洋におけるキリスト教以前の時代に遡り、マーク・シェルトンは特筆すべき三つの叙事詩を発見した。この歳月の蚕食に耐えた素晴らしい叙事詩は、やがて長大なトリロジー(三部作)として、マニラ・ロードの第12作目の作品『Gates of Fire』の礎を築くこととなった。新曲の録音を終えると、そこに誕生したのはマニラ・ロードの歴史の中で最も叙事詩的な超大作であった。多くの人間が気付くことはなかったが、マーク・シェルトンはまた一つエピックメタル界に奇跡を起こしたのである...


『METAL EPIC』誌より抜粋:



我々が知る以上に、キリスト教以前の時代には驚嘆すべき物語が数多く存在している。古代ギリシアの神話や伝承、古い「剣と魔法の物語」の原型はその時代の歪から生じ、何時の時代も我々の精神を興奮と歓喜で満たしてきた。アメリカのエピックメタルの始祖、マニラ・ロードはそれらの忘れ去られた時代の叙事詩に光をあて、本作『Gates of Fire』を通じ、伝統的なエピックメタルとして現代に蘇らせている。これまでに発表してきた古典的なエピックメタル作品の中でも数々の神話や伝承、幻想的な文学の類を扱ってきたマニラ・ロードだが、今作でもその真価が遺憾なく発揮されている。



キリスト教以前の世界からインスパイアされ、後の時代に誕生していった叙事詩の中に、本作『Gates of Fire』を紐解く鍵が隠されている。神話とは創作であり、決して事実を物語っているわけではない。それは古代の時代に生きていた人間が現在では誰も生存していないために、神話と史実の境界線が曖昧になっているためだ。ハインリッヒ・シュリーマン(Johann Ludwig Heinrich Julius Schliemann, 1822 - 1890)による発掘作業の結果、神話上の都市トロイアは実在したことが判明している。現在のギリシアのテルモピュレの道にレオニダス王のブロンズ像が堂々と立っていることは、紀元前のペルシア戦争における300人のスパルタ兵の戦いが史実であったことを立証している。神々と英雄の時代の叙事詩的な神話は、そのすべてが空想上の出来事ではないのだ。マニラ・ロードはトリロジーの第二部と第三部で、この遥か太古の壮大な叙事詩を取り上げている。



アメリカのテキサス出身の小説家、ロバート・E・ハワード(Robert Ervin Howard, 1906 - 1936)は、幼い頃から歴史を学び、その深遠な世界に魅了されている。幼少期のハワードが特に好んだのが北欧神話に代表される英雄譚であり、大人になって成功を収めた『コナン(Conan)』シリーズにも北欧神話の神々や地名などが登場する。「氷神の娘(The Frost Giant's Daughter)」は北欧神話に強く影響を受けた作品であり、物語の荒涼とした雪の世界の雰囲気や終盤に霜と氷の巨人イミルが登場するなど、幼少期のハワードの趣味が良く活かされている。マニラ・ロードのトリロジーの第一部で取り上げられているのは、この奇怪ながらも幻想的な英雄譚であるのだ。



本作『Gates of Fire』では、それぞれ異なる三つの時代の三つの叙事詩から構成された長大なトリロジーが描かれている。全三章に分けられた叙事詩的な物語は、全9曲のエピックメタルから構成され、大作至高の各楽曲の内容には古代の時代の出来事が濃厚に描写されている。事実マニラ・ロード最大の超大作でもある本作は、第一部にロバート・E・ハワードの小説『コナン(Conan)』より「氷神の娘」、第二部に古代ローマの詩人、プブリウス・ウェルギリウス・マロ(Publius Vergilius Maro, 70 - 19 B.C.)の残した最後の叙事詩『アエネーイス(Aeneis)』、第三部に紀元前のペルシア戦争における"テルモピュライの戦い(Battle of Thermopylae)"を題材として選択している。これらの時代を超越した血拭き肉躍る伝説が純粋なエピックメタルのサウンドと劇的に融合し、本作『Gates of Fire』の唯一無二の迫真の叙事詩的世界は形成されているのだ。本作が完成したその日に、マニラ・ロードが歩んできた足跡は遂に歴史となった。そして信者たちは、半永久的にエピックメタルの偉大な始祖の名を決して忘れ得ぬことであろう──



Trilogy 1: The Frost Giant's Daughter

1. Riddle Of Steel
北の雪原で戦う男たち。戦士が戦場で斃れる時、"鋼の謎(Riddle Of Steel)"の真実は明かされる。この物語は、古くハイボリアに伝わる伝説である。エピカルなサウンドが若干籠っているのが残念だが、本作の冒頭を飾るに相応しいヒロイックな内容を有している。
2. Behind The Veil
荒涼とした雰囲気が漂うアコースティック・ギターによる小曲。ここでは氷神の娘が斃れた英雄を人間ならざる美で妖艶に誘う場面が描かれる。
3. When Giants Fall
欲望に負け、本能のみで氷神の娘を追うコナンの前に、二人の氷の巨人が立ちはだかる。コナンはいとも簡単に巨人たちを打ち倒すと、念願の娘のもとに殺到する。しかし氷神の娘が父親イミルの名を叫ぶと辺りに青白い光が放たれ、娘は何処かへと消え去ってしまう。本曲はソード・アンド・ソーサリー・サウンドを表現したエピックメタルの傑作であり、過去のマニラ・ロードの利点が殆ど結集されている。コンセプトに忠実である野蛮なサウンドに加え、幻想的なコーラス・パートは信者を熱狂させるに十分な魅力を持っている。

Trilogy 2: Out Of The Ashes

4. The Fall Of Iliam
およそ14分に及ぶ超大作。本作最大のハイライトである。英雄アイネイアス(Aenēās)が炎に包まれるトロイアを逃れ、新天地イタリアを目指す物語が描かれている。アイネアスは嵐に合ってカルタゴへと流れ着き、美しい娘ディド(Dido)と出会い恋仲になるが、運命によってローマを建国するよう定められていたため、娘とカルタゴを後にしローマへと旅立つ。その他、劇的な緩急を用いたコーラス・パートでは、トロイア戦争での悲劇的な場面を叙事詩的に描写する。『Gates of Fire』という、マニラ・ロードの歴史の中で最も叙事詩的な作品である本作を象徴する名曲であり、静と動の応用、壮大なスケール感に満ちた最長のギターソロ、英雄叙事詩を意識した雄大なコーラスは圧巻。またそれらの要素が渾然一体となって生み出される迫真の世界観はまさに壮絶である。本曲はマニラ・ロード最大の大作であろう。なおタイトルに用いられているイリアム(Iliam)とはラテン語でトロイを意味する。
5. Imperious Rise
人々の記憶の中に生き続けるローマ建国の英雄ロームルス (Romulus) とレムス (Remus)。彼らは古謡の中で語られるトロイの民の意志を受け継ぎ、偉大なるローマの民を育てた。薄暗いエピカルなリフが古代の臭気を醸し出し、それは最後のヒロイックなコーラス・パートで爆発する。
6. Rome
およそ11分に及ぶ大作。強大な帝国へと発展したローマ。その真の創始者は英雄アイネイアスである。神話の中で彼の物語は叙事詩として永久に語り継がれる。重厚な内容を有するエピックメタルであり、物語のクライマックスに"The Fall Of Iliam"の叙事詩的なギターソロ・パート、 "Imperious Rise"のヒロイックなコーラス・パートを導入する。ヴァージンスティールにも通じるこの手法は、マニラ・ロードのエピックメタルのために今回大きな貢献を果たしている。

Trilogy 3: Gates Of Fire

7. Stand Of The Spartans
スパルタ王レオニダスに率いられ、勇猛な軍隊はテルモピュライで圧倒的なペルシア軍を待つ。開戦前の緊張感の如く、重苦しい雰囲気が本曲を支配している。なお「テルモピュライ」という名前は"灼熱の門(Gates Of Fire、Gates Of Marriage)"を意味する。
8. Betrayal
およそ8分に及ぶ大作。裏切りによって、300人から成る鉄壁のスパルタ兵の陣形は崩れ去る。異様なまでにヒロイックなムードと死地の雰囲気に満ちた楽曲であり、コーラスでは雄大ながらも悲壮感を感じさせる旋律を用いている。後半の長尺なギターソロは一心にヒロイズムを追求。
9. Epitaph Of The King
およそ10分に及ぶ『Gates of Fire』最後の叙事詩。究極の英雄主義を表現した叙事詩的バラードの最高傑作である。勇猛果敢に死んだレオニダス王とその兵を讃え、高潔なアコースティック・ギターの旋律と興奮を呼び覚ます哀愁のリードギターが途方もない空間を作り上げる。感動は必至。マニラ・ロードの作品でこれ以上のエピローグは存在していない。なお最後のエピローグで登場するメロディは第4作『Open the Gates』(1985)収録の名曲"The Ninth Wave"からの引用である。


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Mark of the Beast



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2002
Reviews: 71%
Genre: Epic Metal



アメリカ発、カルト・エピックメタルの重鎮、マニラ・ロードの2002年発表の企画盤。

「Monster Records」より発表。本作は第一作『Metal』と第2作『Invasion』の間、1981年に既にレコーディングされていた音源を2002年に再発した内容。オリジナルのタイトルは『Dreams Of Eschaton』である。



1. Mark of the Beast
2. Court of Avalon
3. Avatar
4. Dream Sequence
5. Time Trap
6. Black Lotus
7. Teacher
8. Aftershock
9. Venusian Sea
10. Triumvirate


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Spiral Castle



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2002
Reviews: 89%
Genre: Epic Metal



アメリカが誇る真性アンダーグラウンド・エピックメタル、マニラ・ロードの2002年発表の11th。


「『Crystal Logic』以来の傑作」

 ──『METAL EPIC』誌


『METAL EPIC』誌より抜粋:

名作『Crystal Logic』(1983)に次ぐ偉大な傑作が誕生した──2000年に衝撃の再結成を果たし、長きに渡る沈黙を打ち破ったエピックメタル・シーンの重鎮マニラ・ロードは、強烈無比な新作『Atlantis Rising』(2001)と共に熱烈な信者たちのもとへと帰還すると、すぐさま次の攻勢に転じた。エピックメタルの創始者であるマーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)が沈黙のおよそ9年間のうちに溜め込んだ比類なき才能は、一旦作品を通じて外の世界に放出されると、噴き上げる原始の間欠泉の如くその後も巨大な爆発を続けた。既に再出発したマニラ・ロードの快進撃を妨げる外壁はなく、またこれを止めることすら不可能な事態であった。マニラ・ロードの第2章は栄光のうちに幕を開けた。
マニラ・ロードにとって第10作目となる『Atlantis Rising』は、読んで文字の如くバンドの"復活"を告げるために最良の作品であった。『Atlantis Rising』では過去の作品を遥かに上回る圧倒的なサウンド・プロダクションと新ヴォーカリスト、ブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)が持ち込んだ強烈なアグレッションによって、マニラ・ロードのエピックメタルは更なる高みへと上り詰めることに成功した。楽曲の充実は熱狂的なファンをも唸らせ、エピックメタルの始祖がマニラ・ロード以外には存在していない事実を証明した。コンセプトの面でも大きな進歩を遂げ、マーク・シェルトンはアトランティス大陸に関連する古代神話とクトゥルー神話を織り交ぜて壮大なストーリーを作り、更にそこに北欧神話の世界観を加えるという前代未聞の手法で革命的な一大叙事詩を描き出した。他の追従を許さないばかりか、マニラ・ロードは独自の世界観を徹底的に追求し、ただひたすらに己の道を突き進んだ。然り、それこそがマニラ・ロードのやるべき仕事であったのだ。
マニラ・ロードの躍進を止める者は誰もいない。マーク・シェルトンの強靭な意志によって決起し、マニラ・ロードはただ一つの道を極めんと行軍を続ける。過度な評価や商業的な成功とは無縁の世界がマーク・シェルトンの眼前には広がっており、その先に待ち構えているものは己の飽くなき探求欲を満たす知識の泉のみである。恰もミーミルの泉の究極の知識を求めたオーディンの如く、何れはマーク・シェルトンもその泉の水を飲み干すことになろう。しかし究極の知識を手にするためには、それに最も相応しい代償を支払わなければならないのだ。
エピックメタル──マニラ・ロード自身が『Crystal Logic』で生み出したその特異な分野の歴史は、今再びマニラ・ロードによって塗り替えられようとしている。マニラ・ロードが生み出した真の傑作『Spiral Castle』がその重要な役割を担うことになろう。古典的なエピックメタルの基礎を捉えた80年代へと原点回帰するヘヴィかつメタリックなサウンドを有し、過去のチープさを払拭した現代技術で録音された『Spiral Castle』は、何人にも有無を言わせず、問答無用の真性エピックメタル作品として誕生した。
本作では、これまでにマニラ・ロードが一貫して追求してきたH・P・ラヴクラフトの暗澹たる怪奇幻想の世界と北欧神話に連なる勇猛果敢な英雄譚が各楽曲に脈動感を与え、唯一無二の叙事詩的世界を作り出すために大いなる貢献を果たしている。耳を劈くような重厚かつ鋭利なサウンドによって構築され、尚且つ劇的かつヒロイックな旋律を多用した理由の一つには、これらの雄大な世界観を徹底的に表現するという明確な目的がある。『Crystal Logic』に無駄な音など収録されていない。我々が思うに、マニラ・ロードというバンドは生涯に渡り叙事詩的音楽を追求することをやめないであろう。
マニラ・ロードが到達した一種の頂点である『Spiral Castle』は、凄絶な緊張感によって支配され、一切の妥協と迷いがない。当然の如く、孤高を極めた深遠な世界観は人を選ぶ。今回マニラ・ロードが上り詰めた山の頂きに挑戦する者は恐らく誰もいないであろう。この偉大な傑作はマニラ・ロードの真の信奉者によってのみ正当な評価を受け、アンダーグラウンド・シーンの頂点に君臨する定めにあるのだ。音楽業界は完全にマニラ・ロードの存在を歴史から抹消したが、今この瞬間にも地下で巨大な妖蛆が蠢いており、密かに力を蓄えていることを彼らは知りもしない。我々は愚直にもその強大な存在に気付かないだけであるのだ。最も、この妖蛆に出来ることは僅かな信奉者を増やすことくらいで、穢れた地上の微光を敢えて浴びることなどはしないのだが。



1. Gateway to the Sphere
鋭利なリードギターの奏でるヒロイックな旋律を基盤とした劇的なイントロダクション。圧倒的なサウンドが放つ怒涛の高揚感によって、これまでのマニラ・ロードの作品を超越した壮絶なプロローグを飾る。既に孤高なるエピックメタルの世界は開始された。
2. Spiral Castle
8分に及ぶタイトル・トラック。すべてのマニラ・ロード信者待望の名曲である。H・P・ラヴクラフトからの暗い影響と、北欧神話の雄大な世界観を合わせ持つ内容。劇的かつヒロイックなサウンドという形容はこの楽曲のためにあるようなもの。マーク・シェルトンのクリーン・ヴォイスとブライアン・パトリックの唸り声を合わせた展開も秀逸。
3. Shadow
80年代の伝統的なエピックメタルのサウンドを重厚かつ破壊的なまでに鋭利にした楽曲。情け容赦のない鋼鉄のリフと激しいリズムで徹底的に高揚感を煽る。
4. Seven Trumpets
悪魔ベリアルをモチーフとした楽曲。アンダーグラウンド特有の薄暗い雰囲気と劇的な緩急が融合したエピックメタルである。後半ではエピカルなギターソロも導入する。
5. Merchants of Death
十字軍の悲痛な宿命が叙述されている。テンプル騎士団は信仰の対象として、悪魔バフォメットを崇拝していた歴史がある。およそ10分に及ぶ大作であり、古典的なエピックメタルのサウンドに独特のムードが重なる。マニア以外には全く受け入れられない暗澹たる音楽性を有し、その手のファンには確実にアピールする。カルト的な空間を即時に作り出すマーク・シェルトンのエピカルなギターソロも健在。
6. Born upon the Soul
ソード・アンド・ソーサリー・サウンドを有するマニラ・ロードが帰還した。幻想的な古代の雰囲気を漂わせ、漢臭いメロディを周囲に蔓延させる大仰なそのスタイルは、もはや不動のものである。本曲は終盤まで途轍もないヒロイズムを披露する傑作。中東風の雰囲気があるのも特徴的だ。なお本曲は魔術の起源を求めるある男の探索行が題材となっている。
7. Sands of Time
ストリングスを用いた本編のエピローグ。およそ7分に及ぶ。"Born Upon the Soul"の怪しげな雰囲気を引き継ぎ、ストリングスを用いた妖艶極まるフレーズが全編を彩る。これは完全に『コナン』の世界だが、あまりにも徹底しているため、万人の評価は得られそうにない。


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Atlantis Rising



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal



アメリカの地下より衝撃の帰還を果たした真性アンダーグラウンド・エピックメタル、マニラ・ロードの2001年発表の10th。


1 歴史;解散

1977年のアメリカのカンザス州・ウィチタでの結成以来、少数ながらも熱狂的な信者たちによって支えられ、これまでにエピックメタル(Epic Metal)と称される独自の分野をヘヴィメタル・シーンの中で開拓・発展させてきたマニラ・ロードは、唯一無二の教祖マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)の発散する強烈なカリスマ性に加え、執拗なまでに徹底した鋼鉄の信念のもと、長きに渡り活動を続けてきた。"Epic Adventure"と称された不朽の名作『Crystal Logic』(1983)を生み出た後、マニアに最高傑作と謳われる『Open the Gates』(1985)を発表すると、アンダーグランドのエピックメタル・シーンにおいて、マニラ・ロードの名は墓地に出没する亡霊の怪異譚のように囁かれる暗い伝説と化した。
陰鬱な雰囲気に満ちたマニラ・ロードは、自室に篭り奇怪な作品集を生み出す幻想作家の如く、自らの作品において独自の世界観を追求した。主に題材として選択された分野は、アメリカの怪奇小説家H・P・ラヴクラフトの小説、文豪エドガー・アラン・ポオの詩、ロバート・E・ハワードに触発されたソード・アンド・ソーサリー(Sword and Sorcery)の世界であった。これらは現在ではエピックメタルの礎を築いている基本的な要素だが、当時は明確な定義など存在していなかった。
エピックメタルの創始者であるマーク・シェルトンのみは、自分たちがバンドでやっていることを完全に理解していた。世俗的な世界が本質を欠いてヘヴィメタル・ミュージックを常に見下しているように、世間の目は冷たかった。それらは時にマニラ・ロードの音楽性を大仰だと卑下したり、子供じみているとして嘲笑するといった形で表面化していった。当然の如く、マニラ・ロードが多くを犠牲にして──例えば金や家族との時間などを失って──やっていることはシリアスであったし、意味のあることであった。しかし結局のところ、その正確な事実を熱狂的な信者たち以外が認める機会は遂に訪れなかった。
やがてマーク・シェルトン、スコット・パーク(Scott Park)、ランディ・フォックス(Randy Foxe)という伝説の──或いはヘヴィメタル界で最も過小評価されている──3人のメンバーによって制作された最後の傑作『The Courts of Chaos』(1990)が発表されると、熱狂的な信者たちはこれをソード・アンド・ソーサリー音楽の聖典とした。マーク・シェルトンはこの偉大な作品を指して「マニラ・ロードの最初の真の傑作」と称している。ここに来てマニラ・ロードは一応の目標を達成した事になるが、しかし、これまでと同じようにエピックメタル・シーンの外では本作の内容に対して一切の沈黙が貫き通された。「ヘヴィメタル界でマニラ・ロードほど才能に恵まれながらも歴史の影に埋もれ、軽視されてきたバンドは存在しない」皮肉にもこれは真実である。マーク・シェルトンという謙虚な人間は恐らく知り及んでいた──自身がマニラ・ロードで活動を続ける限り、未来永劫に渡り商業的な成功は掴めない。しかし、それで良いのだ。マーク・シェルトンが一貫した姿勢を崩すことはない。我々がマニラ・ロードの存在に気が付くずっと前から、マーク・シェルトンは"純粋なエピックメタルを創造する"という使命を背負っていた。
バンドに転機が訪れた。スコット・パークとランディ・フォックスの確執によってマニラ・ロードは『The Courts of Chaos』の発表後に解散。心機一転を図るべくマーク・シェルトンがソロ・プロジェクトの活動を進めた矢先に最悪の事態が起こる。マーク・シェルトンと契約していた「Black Dragon Records」はソロ・アルバムのタイトルを『The Circus Maximus』(1992)に変更後、当人の意図に逆らってマニラ・ロード名義で本作を発表する。マニラ・ロードとは掛け離れた音楽性を有した『The Circus Maximus』はレーベル側が見込んだ売り上げも大幅に下回り、熱狂的な信者たちを大いに憤慨させ、読んで文字の如く大失敗した。この事件以降、マーク・シェルトンは「Black Dragon Records」に対して強い反発を覚え、以後およそ9年に渡り音楽活動を休止した。誰もが望んでいない最悪の物語の結末であった。

2 歴史;再結成

マーク・シェルトンがマニラ・ロードを解散させてから長い歳月が流れたある日のこと、マーク・シェルトンはランディ・フォックスと再び連絡を取った。マーク・シェルトンはマニラ・ロードの歴史を振り返り、ランディ・フォックスとの長い議論の末、物事は良い方向へと進む兆しを見せた。当時ロードマネージャーの仕事をしていたブライアン・パトリック(Bryan Patrick:vo)の兄弟は、マニラ・ロードのために協力を惜しまなかった。
再び明るい兆しが見え始めたマーク・シェルトンは、マニラ・ロード再結成のためのメンバーを集め始めた。いくつかの短いショウの後、バンドはランディ・フォックスの助言に従い、新作のための新しい録音機材を購入した。これらの行動は、マニラ・ロードの最終目標が単なるライブのためのバンドの再結成ではなく、今一度エピックメタル・シーンに帰還することを目的とした事実を証明しているものであった。
マーク・シェルトンとブライアン・パトリックがマーク・アンダーソン(Mark Anderson:b)と共に新作の録音に努めている間、マニラ・ロードにとって好意的な話が舞い込んできた。2000年、マニラ・ロードがようやく再結成したその年にドイツのフェスティバルでの演奏が決定したのである。当然の如く、バンドはこれを完全復活の場として捉えていた。しかし、マーク・シェルトンはライブのためにランディ・フォックスをドラム奏者として再びマニラ・ロードに呼び戻さなければならなかった。
連絡を受けたランディ・フォックスはフェスティバルへの出演を承諾した。次いでマーク・シェルトンはフェスティバルの開催者にバンドの出演が可能であることを告げた。しかしその3日後、ランディ・フォックスが突如として出演をキャンセルしたため、マニラ・ロードは予約していたショウをすべてキャンセルするという事態に陥った。マーク・シェルトンはマニラ・ロードのキャリアのために極めて重要であるこのフェスティバルに参加するため、ランディ・フォックスにショウへの出演を認めなければ、早急にドラム奏者を変更することを冷酷に告げた──かくして、盟友ランディ・フォックスはマニラ・ロードを去った。これはマニラ・ロードの未来のためには必要な犠牲であった。
ドイツでのフェスティバルは異例の大反響のうちに幕を閉じた。マニラ・ロードは長い間、全くヘヴィメタル・シーンに顔を見せていなかったが、これほどまでにマニラ・ロードの再結成を強く待ち望んでいる欧州の熱烈なファンの凄絶な光景を始めて目にすることとなった。熱狂的な信者たちがいてこそ、マニラ・ロードは始めて己の存在意義を認めることができた。決起したマーク・シェルトンが9年来の舞台に立つと、瞬く間にコロッセオの如き大歓声が周囲に巻き起こり、恰も偉大なる教祖を崇めるような異様な熱気が会場を埋め尽くした。母国アメリカでは過小評価されているが、今や欧州では、マニラ・ロードの名はマノウォーやヴァージンスティールと同じくらい有名になっていた。
バンドはフェスティバルの後、復活作となる最初の新作のための録音を続けた。この期間にいくつかの短いショウも重ねた。既にマーク・アンダーソンの友人であったスコット・ピータース(Scott Peters:d)をバンドに迎え入れていたマニラ・ロードは、遂に念願のバンドとしての体制が完成した状態にあり、長年エピック・ヘヴィメタルのファンたちが待ち続けてきた新作を発表する機会が訪れた。そして、マニラ・ロードはその渾身の作品を『Atlantis Rising』と名付けていた...

3 『Atlantis Rising』について...

本作『Atlantis Rising』はマニラ・ロードの第10作目の作品に当たる。本作がこれまでのマニラ・ロードの作品と最も異なっている点は、第2のヴォーカリストとしてブライアン・パトリックがバンドに迎えられていることである。アンダーグラウンドの音楽性に相応しい歌唱を続けてきたマーク・シェルトンに対し、ブライアン・パトリックの歌唱はブラックやデスを彷彿とさせる獰猛なスタイルに接近する。マニラ・ロードは強烈なアグレッションによって、本作に全く新しい要素を加えたことになる。
多くの面において、『Atlantis Rising』は傑作『The Courts of Chaos』の次に発表されるべき内容を有している。レーベル側の思惑によってマニラ・ロード名義で発表された作品『The Circus Maximus』を除いては、正しく本作こそがマニラ・ロードの第9作目の作品として相応しい。本作において、エピックメタルと形容される大仰なサウンドはより一層強靭に生まれ変わり、神話やソード・アンド・ソーサリーに影響を受けた孤高の世界観は不変の状態のまま受け継がれている。
マーク・シェルトンは本作のコンセプトに対し、第5作『The Deluge』(1986)で選択したアトランティス大陸の伝説を再び題材としている。当然の如く、これらのコンセプトは単純に過去の焼き直しではなく、マニラ・ロードの追求してきた世界観の集大成的意味合いを含んで構成されている。これまでにマニラ・ロードはH・P・ラヴクラフトやノルウェー神話などを好んで作品のモチーフとしてきたが、今作ではそれらの要素が先述したアトランティス大陸の伝説に組み込まれる形式を取っている。重厚かつ鋭利なエピックメタル・サウンドによって表現される古代の深遠なテーマ──これこそがマニラ・ロードの目標とした音楽性だ。
要するに本作のコンセプトでは、アトランティスの失われた大陸の上昇によって勃発する旧支配者(Great Old Ones)とエーシル神族(Æsir)の叙事詩的な戦争について描かれている。選択された題材の起源は様々な分野に渡る。アトランティス大陸の伝説は主に古代ギリシアの神話より組み込まれ、旧支配者はH・P・ラヴクラフトによって原型が築かれ、後にオーガスト・ダーレスによって完成させられた一連のクトゥルー神話から拝借されている。旧支配者との間で戦争を行うエーシル神族とは、即ちアイスランド語の言葉であり、その正体は一般的に我々のよく知る北欧神話のアース神族のことを指している。興味深いことは、マニラロードは古い文献に忠実であり、アトランティス大陸のスウェーデン説を発表したオラウス・ルドベック(Olaus Rudbeck)の著作『Atland eller Manheim』(1679~1702)からアトランド(*Atland)の名を物語に用いているということだ。これらの要素が複雑に絡み合い、『Atlantis Rising』の壮大な物語は構築されている。
Atlantis Rising』はマニラロードの傑作に相応しい。エピックメタルに必要な要素が結集され、一切の妥協のない緊張感に満ちた迫真のサウンドを全体で構築している。神秘世界への徹底した傾向は言わばマニラ・ロードの特権だが、今回は大胆な発想の勝利である。ブライアン・パトリックの持ち込んだ新しい要素は、一部のエピック・ヘヴィメタルのファンによって正当に評価されることになる。また一部では、ブライアン・パトリックの攻撃的な歌唱について物議も醸されることになろう。しかし、このようにマニラ・ロードはエピックメタル・シーンに堂々の帰還を果たし、新しい金字塔『Atlantis Rising』を地下に配給させることに成功した。マーク・シェルトンさえいればマニラ・ロードは健在である。『Atlantis Rising』を皮切りとして、過去の失った時間を埋めるように、ここからマニラ・ロードの快進撃が始まる。我々はやがて、その凄絶な光景を目にすることになろう。

*スウェーデン語。オラウス・ルドベックによるアトランティスの言語。19世紀に「アトランティス」に変更される。



1. Megalodon
マニラ・ロードの完全復活を遂げる強靭な楽曲。絶滅した太古の生物(サメ)メガロドンについて扱い、およそ8分を超える濃密な内容を有する。鋼鉄のリフによって構築され、激しく脈動するダイナミックなサウンドが周囲のものすべてを圧倒する。

Book I. The Rise (of Atland):
2. Lemuria
神話上の大陸の名を冠した小曲。不穏なSEと幻想的なメロディに彩られながら、壮大な物語が幕を開ける。
3. Atlantis Rising
大洪水の後に再び上昇するアトランティス大陸を描いたタイトル・トラック。新生マニラ・ロードのすべてを結集した強烈無比な名曲である。古代文明を彷彿とさせる異国風の旋律を交えながら、波打つ海洋のような曲調を基盤にして壮絶な展開が待ち構える。なおゲスト・ヴォーカルにダービィ・ペンタコースト(Darby Pentecost)が参加。

Book II. The Fall (of Atland):
4. Sea Witch
ここではアトランティス大陸が上昇する時、海底に封じ込められた邪神クトゥルーも甦るとされている。バラード調の楽曲であり、そのメロディックな内容は本作でも抜きん出ている。マーク・シェルトンによるメロディアスなヴォーカル・ラインが聴き手の興奮を誘い、後半の劇的なリードギターによってカタルシスは爆発する。なおブライアン・パトリックは本曲でドラムをプレイ。
5. Resurrection
クトゥルーとミッドガルドの神々との間に不穏な緊張が流れている。大仰さを爆発させるエピックメタルの金字塔である。重厚かつ劇的なリフがヘヴィかつメタリックに展開される。ミドル・テンポからの猛烈な疾走、エピカルなギターソロの導入に加え、エキゾティックなサビのコーラスでは哀愁のメロディを振り撒く。
6. Decimation
解放された旧支配者の黒い軍隊が人類を襲う。ダークな雰囲気を醸し出す重厚な楽曲。

Book III. Bifrost (the Rainbow Bridge):
7. Flight of the Ravens
オーディンの従えるワタリガラスが荒廃した地上の惨状を目にする。アコースティック・ギターを用いた小曲であり、前半では特に印象的であった異国風の旋律が荒涼としたものに変わっている。構成は"Lemuria"に類似。
8. March of the Gods
神々の行軍の様を描いた楽曲。ビフレストを渡りヴァルハラの英雄たちが地上に降り立つ。なおマニラ・ロードの物語では、北欧神話の記述に従い人間の住まう国をミッドガルド(Midgard)としている。

Book IV. The Battle (of Midgard):
9. Siege of Atland
アトランティスで勃発する旧支配者とアース神族の軍勢による叙事詩的な戦いを描く。この凄まじい戦場を徹底的に描写するために、暴虐的なまでにアグレッシブなサウンドが本曲には表現されている。マニラ・ロードのポテンシャルの高さを証明するような、一切の妥協のない徹底した内容は秀逸であり、まさに本編の極めて攻撃的な特色を存分に発揮しているといえよう。
10. War of the Gods
海の神ポセイドンがアトランティスに帰還することによって、遂に戦争は終結する。およそ8分に及ぶ内容であり、本作の最後を飾るに相応しい大作に仕上がっている。独特の重苦しい雰囲気に包まれ、マーク・シェルトンがコンセプトの最終章を朗々と歌い上げる様は印象に残る。


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MANILLA_ROAD_The_Circus_Maximus

Country: United States
Type: Full-length
Release: 1992
Reviews: 63%
Genre: Epic Metal



マニラ・ロードの1992年発表の9th。


本来はマーク・シェルトンのソロ・プロジェクト作品としての発表を企画されていたが、レーベル側の意向により"The Circus Maximus"というタイトルに変更の後、マニラロードの第9作目のアルバムとして発表されることとなった作品。発売を行った「Black Dragon Records」は本作が更なるマニラ・ロードの商業的成功へと繋がるものと考えていたようだが、アンダーグラウンドのカルト・エピックメタルが売れるはずもなく、加えて従来のヒロイック・ファンタジー的な音楽性を期待していたマニアから総攻撃の対象となった曰くつきの一品である。
本作の非難の主な原因はメロディアス・ハード的な雰囲気が充満している点と、カルト的なエピックメタルが本来持つ薄暗いサウンドが全編に渡り展開されていない点にある。声はマーク・シェルトンのものだが、サウンドは一部別のものが混入している。キーボードの大々的な導入も批判の対象となり、エピックメタルファンには疑問を抱かせる要因となった。エピックメタルに限らずハードロックやロックンロールへの接近は古くからヘヴィメタルファンには嫌悪されている要素であり、これまでに成功例はほとんどない。本作『The Circus Maximus』も例外ではなかろう。
マニラ・ロードの熱狂的なファンならばまず本作を聴かないであろうし、迂闊に手を出すこともしないであろう。楽曲に緊張感が抜けている点も更なる酷評の原因となり、『The Circus Maximus』はマニラ・ロードの歴史に泥を塗った。この時期マニラ・ロードは実質分裂して解散した状態にあり、『The Circus Maximus』がマニラ・ロードの最終作となることも危ぶまれていた。今ではそのようなことは全く冗談じみて聞こえるが、本作『The Circus Maximus』がマニラ・ロードの最終作となろうものなら、信者たちは本作を敢えて発売したレコード会社に痛烈な怒りを覚えていたに違いない。我々はマニラ・ロードが復活して本当に良かったと感じている。



1. Throne of Blood
2. Lux Aeterna
メロディアス・ハード的な雰囲気も漂うが、後半のソロはマニラ・ロードのサウンドに忠実。
3. Spider
4. Murder by Degrees
5. No Sign from Above
6. In Gein We Trust
7. Flesh and Fury
8. No Touch
9. Hack It Off
10. Forbidden Zone
11. She’s Fading


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Courts of Chaos



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1990
Reviews: 93%
Genre: Epic Metal



マニラ・ロードの1990年発表の8th。


「マニラ・ロードはこの『The Courts of Chaos』でソード・アンド・ソーサリー・サウンドを極めた」

 ──『METAL EPIC』誌


『The Courts of Chaos』の総評、一部修正・削除しての掲載:

1 序章

カルト・エピックメタルの偉大なる教祖として崇められ続けるアメリカのマニラ・ロードは、1983年に『Crystal Logic』で突如ヘヴィメタル・シーンに頭角を現し、以来破竹の勢いで信奉者を増加させてきた。その勢力はアンダーグランドでは異様ともとれる急激な成長ぶりを見せ、信者の世界各地への拡散はやがて避けられない事態となった。それは同時にエピックメタルの世界的な流布でもあり、マニラ・ロードを通してこのヘヴィメタルの特異な進化を目の当たりにする者も出現した。最もこれらは一般大衆の社会からは遠く隔てられて勃発した出来事であり、その他大勢の人間は何の変哲もなく普段の生活を送っていたのであった。

2 黄金期

やがてマーク・シェルトン(Mark Shelton:g,vo)、スコット・パーク(Scott Park:b)、ランディー・フォックス(Randy Foxe:g、key)という三人の黄金期のラインナップが完成すると、マニラ・ロードは怒涛の勢いでエピックメタルの傑作を完成させた。恰もその勢いは『The Deluge』(1986)で叙事詩的に描かれている古代アトランティス大陸を襲う巨大な大洪水の如く猛烈なものであり、休息をほとんど取らずして『Mystification』(1987)、『Out of the Abyss』(1988)という強力極まりない作品が成功に続いた。
この時期のマニラ・ロードはまさに無敵の軍隊であった。唯一絶対のエピックメタルの覇者──信者たちは"エピックメタルの神"と称していた──として、孤高とも表現できる存在感でシーンに君臨した。意欲的に発表される作品群は一歩ずつ着実に邁進を続け、遂にその築き上げてきた実力が一度に頂点に到達する時期が訪れた。

3 傑作の誕生

そして、マニラ・ロードが1990年に発表した第8作『The Courts of Chaos』こそが、マーク・シェルトンを教祖とする熱狂的な信者たちによって、すべてのカルト的なエピックメタルの総本山であると見なされている。我々は何度も耳を疑ったが、『The Courts of Chaos』から聞こえて来る音源は事実、カルト・エピックメタルの本質を物語っているものであった。
不朽の名作『Open the Gates』(1985)とは別の手法──明確には多少は似通っている──で、マニラ・ロードは究極のヒロイック・ファンタジーメタルを作り上げることに成功した。これはマニラ・ロードがエピックメタルの歴史において貢献した極めて偉大な功績の一つに数えられ、多くの信者たちは讃辞の意志を抱くべき行為に値する。我々はここで悟った。マニラ・ロードを除いては他に尊敬すべき対象など存在してはいないということを──

4 サウンド

マニラ・ロードの『The Courts of Chaos』は人間の信仰心を強烈に刺激する作品であり、奇跡的な作品であり、ある意味では最も攻撃的なエピックメタル作品である。スラッシュメタルを完全にエピックメタルが呑み込み尽くした驚異的なサウンドを有し、終始異様極まる緊張感と破綻したドラマティシズムが我々の陳腐な脳髄を襲う。カルト・エピックメタルが本来持つべき意味がここにはある。本作に表現されたのは崇拝者を生み崇められる幻想怪奇の魔力を持ったサウンドであり、恰も映画『Conan the Barbarian(邦題:コナン・ザ・グレート)』(1982)に登場するセト教の大魔道師タルサ・ドゥームの住まう"力の山"を連想させる意味深なカヴァー・アートワークがその思想を後押しする。

5 神話の再興

伝説的なソード・アンド・ソーサリーの世界──それらは一度は滅んだが、飽くなき探索者たちの尽力によって再生されるべき定めにあった。長い時間をかけて、ソード・アンド・ソーサリーのもう一つの信者たちはこの世界を追い求めていたが、その世界が限りなく現実とは遠い位置に所属していると悟った時、誰もが思い付かないような行動へと移った。マニラ・ロードがそうであったように、彼らは音楽によるソード・アンド・ソーサリーの再興を望んだのである。当然の如く、飽くまで空想の世界に過ぎない幻想怪奇の光景を現実に表現する作業は難航を極めた。資金面、技術面での絶望的な問題はソード・アンド・ソーサリーの再興という夢を散々に打ち破った。しかし遂に、剣と魔法の世界の信者たちの探求欲がそれらの問題を上回ると、徐々に伝説上の世界は驚きと興奮に満ち溢れた理想郷の幻影を見せ始めた。キリス・ウンゴル、マノウォーの作品がまずこの分野の土台を築き、マニラ・ロードが後に続いた。言うまでもなく"この分野"とは後のエピックメタルのことである。

6 エピックメタルの曙

目的は果たされた!ソード・アンド・ソーサリーとヘヴィメタルの融合という挑戦的な試みは成功し、その最高傑作『The Courts of Chaos』が不気味に門口を開けている。我々は信者たちと共に長い山道を登った果てに教祖の鎮座する神殿に赴くか、彼らの背中を哀れみの目で見詰めるか、その何れかである。然り、神秘なる邪教の血脈は再びこの地上に姿を現したのだ。

追記:本作は2002年に「Iron Glory Records」より再発。"Far Side of the Sun (Live)"がボーナスとして収録された。




1. Road To Chaos
不穏なシンセサイザーの音色が感情を揺さぶるイントロダクション。後半にかけてギター・パートへと展開し、大仰なヒロイズムを発揮。期待感を大いに刺激されるが、その感覚は間違いではない。
2. Dig Me No Grave
印象的なメロディを持つエピカル・リフが次第に頭から離れなくなる楽曲。楽曲の展開は至ってシンプルだが、怪しく光るリズミカルなギターメロディが突出し過ぎている。マニラ・ロードの典型的なエピックメタルの名曲であろう。
3. D.O.A.
テキサスのハード・ロックバンド、ブラッドロック(Bloodrock)のカヴァー。元曲は1971年に発表されたシングルであり、オリジナルに忠実な不気味な旋律が耳に強烈にこびり付く。長尺の楽曲であり、途中には荘厳なコーラスも配置されている。
4. Into The Courts Of Chaos
前半最大のハイライト。マニラ・ロードの生み出した至高の名曲に入る。人々はマニラ・ロードのサウンドを指して「ソード・アンド・ソーサリーの再来だ」と言うが、本曲を聴けばその言葉が決してまやかしはでないことが発覚する。神秘的なメロディから大仰なリフ・パートへと流れ、中間部と最後のパートでは驚異的なギターソロ・パートを披露する。本曲のソロはエピックメタル史上最もソード・アンド・ソーサリーの世界を現実に近づけた。ここにマニラ・ロードのカルト・エピックメタルは極まる。
5. From Beyond
決して一貫性を失わない楽曲群。それがマニラ・ロードの崇拝者を続出させる要素であろう。本曲は静から動へと展開するエピックメタルの佳曲である。濃密なソード・アンド・ソーサリーの雰囲気も醸し、その世界観に忠実なギターソロを披露する。
6. A Touch Of Madness
ミドル・テンポの大作。一部に攻撃的なパートも配す。後半からの陰鬱ながらもヒロイックに盛り上げていくパートは秀逸。マニラ・ロードらしい古く幻想的なムードはここでも存分に漂っている。
7. (Vlad) The Impaler
スピーディな楽曲。スラッシーなリフも持つが、エピックメタルがスラッシュメタルの要素を完全に呑み込んでいる点に注目したい。メロディは完全にアンダーグラウンドのもの。
8. The Prophecy
本作の最後に収録された"The Books Of Skelos"と並び、カルト・エピックメタルの真価を告げる壮絶な名曲。本曲を聴いて我々はカルト的なエピックメタルの持つ意味を思い知らされる。エピックメタル界では「エピックメタル史上最も危険な楽曲」と謳われ、一般人は絶対に聴いてはならない。後半における大仰極まる展開を耳にしようものなら、直ちにマニラ・ロードに対し頭を垂れたくなるであろう。更にギターの発するメロディが常識を逸した異常な雰囲気を宿している。即ち幻想的なアルバム・ジャケットに描かれている光景とは、偉大な教祖の元へと礼拝に参る我々の姿の成れの果てなのである。
9. The Books Of Skelos (I. The Book of the Ancients - II. The Book of Shadows - III. The Book of Skulls)
太古の魔術書"スケロスの書"をベースに剣と魔法の世界を再現した驚異的なエピックメタル大作。なおこの魔術書はロバート・E・ハワードの小説にも登場する品である。全三章から構成され、第一章では妖艶な怪奇幻想の世界をメロディアスに描き、続く第二章で一気に攻勢的なエピック・スピードメタルへと転じる。楽曲に漂う緊張感は壮絶なものであり、特にスピーディな後半においては聴き手の呼吸する暇さえも妨げる。前述の"The Prophecy"と並び、エピックメタルに金字塔を打ち立てた名曲と言っても過言ではない。この劇的な展開にはヒロイック・ファンタジーの愛好家たちが眩暈を起こしそうである。


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Out of the Abyss/Roadkill



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1988
Reviews: 80%
Genre: Epic/Thrash Metal



マニラ・ロードの1988年発表の7th。

クライブ・バーカー(Clive Barker)、H・P・ラヴクラフト等の小説を題材に取り、スラッシュ・メタルを全面的に押し出した作品。エピック・メタルとスラッシュ・メタルの融合としては完成の域に到達。



1. Whitechapel
2. Rites of Blood
3. Out of the Abyss
4. Return of the Old Ones
5. Black Cauldron
6. Midnight Meat Train
7. War in Heaven
8. Slaughterhouse
9. Helicon


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Mystification



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1987
Reviews: 87%
Genre: Epic/Thrash Metal



1977年結成、アメリカのエピックメタルの重鎮、マニラ・ロードの1987年発表の6th。


ここに来てマニラ・ロードの黄金期は既に幕開けており、マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)、スコット・パーク(Scott Park:b)、ランディー・フォックス(Randy Foxe:g、key)という伝説的な三人組はまたしてもエピックメタル・シーンに先制攻撃を仕掛けた。1986年に発表された『The Deluge』に続く紛れもないエピック・ヘヴィメタルの傑作がこの『Mystification』であり、今回も一切の妥協を許さない鉄壁のエピックメタルが生み出されることとなった。
本作はアメリカ最大の文豪エドガー・アラン・ポーの詩にインスパイアされたコンセプチュアルな作品であり、その陰鬱な詩の内容に忠実に沿ったダークかつメロディアスなエピックメタルが展開される。アルバム・タイトルにはポーの名作『煙に巻く(Mystification)』(1837)の題名がそのまま用いられている。更に前作でも顕著であったスラッシュメタルの要素を大幅に導入した本作は、エピックメタル作品の中でも凶悪なスピードを誇る内容となった。
しかし圧倒的なスピードのみが本作の良点ばかりではない。マーク・シェルトンによる歌が積極的に取りれられた各楽曲群は、これまでにマニラ・ロードのエピックメタルの絶対的な個性として働いてきたこの要素を強烈に再アピールすることに繋がっている。またマーク・シェルトンの歌声以上に独自のエピックメタルを形作ってきた大仰なギターメロディも大量に増加されたのが『Mystification』という作品であり、マニラ・ロードはこれまでに最もメロディアスな内容を完成させた。
スラッシュメタルをベースとした強烈なスピード、エピカルかつダークなメロディの多用、ドラマ性を煽る歌パートの充実──これらがマニラ・ロードのエピックメタルを更なる高次元へと導いたのである。無論、如何に進歩しようともマニラ・ロードがアンダーグランドの領域を脱することはないので、以前のカルト的なエピックメタル・サウンドが急速に洗練される心配はない。マニラ・ロードとは暗い墓地で永久に進歩しているようなバンドなのだ。

追記:本作は2000年に「Sentinel Steel Records」から再発。その際アルバム・ジャケットの変更と新たに#10"The Asylum"がボーナス・トラックとして収録された。上記の画像は再販盤のものである。



1. Haunted Palace
ポーの詩『幽霊宮殿(The Haunted Palace)』がモチーフ。強力なギター・サウンドが叩きつけられる。異臭とエピカルな世界観を伴いながら猛烈に周囲を駆け廻る壮絶な内容を誇る。
2. Spirits of the Dead
ポーの詩『世にも怪奇な物語(Spirits of the Dead)』がモチーフ。陰鬱なアンダーグラウンド・サウンドが炸裂する楽曲。不気味なほどにメロディアスなその内容は、エピックメタルのファンを狂気させる。歌の旋律も異様なまでのドラマ性を宿している。
3. Valley of Unrest
ポーの詩『憩いなき谷(Valley of Unrest)』がモチーフ。歯切れのよいエピカル・リフにマーク・シェルトンの伸びのある歌声が絶妙に絡まる。印象的なリードギターのメロディはコンセプチュアルかつダークである。
4. Mystification
本作のハイライト。マーク・シェルトンが特に好んで読んでいたというポーの『煙に巻く(Mystification)』をモチーフとする。エピカルな世界観とグルーヴ感のあるリフが渾然一体となって繰り出される名曲である。中間部からはドラマティックに疾走を開始する。既にマニラ・ロードのエピックメタルは完成されてると言って良いであろう。
5. Masque of the Red Death
ポーの短編小説『赤死病の仮面(The Masque of the Red Death)』(1842)がモチーフ。不気味な鐘の音色から開始される。従来のダークな雰囲気に満ちており、マニラ・ロード以外の何物でもない世界観が展開。しかし今やそれらの伝統的なサウンドは、過去よりも遥かに強力に進化している。
6. Up from the Crypt
ホラー風のSEからスラッシーに展開。非常に攻撃的な内容だが、歌のメロディがはっきりと聞き取れるところが一般的なスラッシュメタルバンドとの明確な違いであろう。
7. Children of the Night
勇壮な疾走感に満ち溢れたマニラ・ロードの真髄。重厚かつダークな世界観とヒロイックな音楽性の融合が至高の楽曲を生み出している。劇的な展開を持ち、疾走とメロディアスなパートを駆使する。まるで本作の作風を代表するかのような優れた楽曲である。
8. Dragon Star
バラード調のエピックメタル。後半のハイライトであろう。徐々に静から動へと展開していく。普段は煮え切らないマニラ・ロードの楽曲だが、今回は大いに盛り上がる。中間部では得意の大仰なギターソロも炸裂。
9. Death by the Hammer
メロディアスなエピック・スピードメタル。スリリングな演奏と扇情的なメロディが劇的な世界観を構築する。


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Deluge



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1986
Reviews: 78%
Genre: Epic Metal



マニラ・ロードの1986年発表の5th。


前作『Open the Gates』(1985)でエピックメタルの歴史的名作を誕生させた始祖マニラ・ロードが次に行った行動は、大作志向の楽曲群をシンプルにまとめることであった。マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)、 スコット・パーク(Scott Park:b)、ランディ・フォックス(Randy Foxe:d)の3人によって制作された本作『The Deluge』は、全体の収録時間がおよそ40分に満たず、要所で第3作『Crystal Logic』(1983)を彷彿とさせる内容を持ち、これまでと同様に一貫した暗い世界観が展開される。
我々は先に『Crystal Logic』との類似性を指摘したが、『The Deluge』は初期マニラ・ロードのサウンドとは異なる要素を持っている。前作『Open the Gates』の一部で披露したスラッシュメタルの要素を大幅に導入した意欲的な本作は、極めて攻撃性に特化した斬新なエピックメタルとして、マニラ・ロードの新しい可能性を切り開くとともに、過去に追求してきたヒロイックな世界観に激烈な野蛮性を加味させることに成功した。長尺の楽曲は全3章から構成される叙事詩"The Deluge"とダークかつ異質な"Shadow in Black"のみであり、 その他の楽曲は非常に短くまとめられている。
叙事詩的な世界観も忘れられてはいない。"The Deluge"にてマニラ・ロードは歌詞の題材を太古の世界へと求め、伝説上のアトランティス大陸を滅亡させた大洪水について言及する。興味深いことに、我々はここにイギリスのバルサゴスがテーマとしている神秘的な題材との共通点を見出すことが出来る。なおアルバム・ジャケットに描かれているのは海の神──古くは大地の神であり、地震を引き起こすとされた──ポセイドンであり、マニラ・ロードはこの偉大なる神の怒りによって巨大な大洪水が引き起こされ、悠久の太古の高度な文明が滅ぼされたのだと仮定している。

本作の問題点は、マニラ・ロードの静から動へと展開する大仰な作風が息を潜めていることであり、攻撃的なギターを用いた単調なパートが頻出する箇所である。本来エピックメタルとは静寂からの劇的な転調や長尺なドラマ性によってカタルシスを与えるものだが、本作に収められたシンプルな楽曲群は大半が中途半端な場面で終了している。これは歴史ある名店で煮え切らないスープを出された時の感覚に似通っており、大抵の場合客は不満を露にする。素材の味は良いのに、手が込んでいない。もしくは、何かの手筈の狂いで、本当は温めて出すべきものを冷まして出してしまった、というミスであるかも知れない。何れにせよ、マニラ・ロードは『The Deluge』という惜しい作品を客に出してしまったことになる。



1. Dementia
高速で叩きつけられるリズムとリフがアグレッシブさを放つ楽曲。途中ヴォーカルが奇怪な叫び声を上げたりと破天荒で良い。ギターソロではマニラ・ロードらしいエピカルなメロディが奏でられる。
2. Shadow in Black
ダークな雰囲気の中で奇怪な旋律を奏でる。およそ2分に及ぶ静のパートから突如劇的に展開する冒頭は、正統派エピックメタルの醍醐味であろう。
3. Divine Victim
鉛のようなリフとスピードでヒロイズムを鼓舞する。後半では緊張感を伴ってスリリングなギターソロが披露される。
4. Hammer of Witches
本作収録の楽曲は大作志向ではないが、短い中にもマニラ・ロードのエピカルな面と攻撃的な面を共有させている。本曲はスピーディかつ大仰なドラマ性を持っておよそ3分の間を駆け抜ける。
5. Morbid Tabernacle
ファンタジックな旋律とSEを用いたインストゥルメンタル。仄かにゴシック・ホラー的な雰囲気がある。
6. Isle of the Dead
およそ3分の楽曲。不穏なイントロから大仰に展開。特徴的なヴォーカルに荒々しいリフが絡む。
7. Taken by Storm
他の楽曲と同様にシリアスなエピックメタルではあるが、完成度はさほど高くない。
8. The Deluge (I. Eye Of The Sea - II. The Drowned Lands - III. Engulfed Cathedral)
8分に及ぶタイトル・トラック。上記の全3章から構成され、大洪水によってアトランティス大陸が滅亡する悲劇を壮大に描く。静から動のメロディへと大仰に展開し、非常に混沌とした内容を有し、要所では荒々しくヒロイズムを鼓舞する。緊張感と切迫感に満ちたリフは凄絶を極め、恰も大洪水の如き圧倒的な力で聴き手に襲いかかる。
9. Friction in Mass
マニラ・ロードの大仰さが爆発したエピックメタル。ドラマティックな疾走に加え、後半からはメロディアスに展開する。
10. Rest in Pieces
ヒロイックなメロディが高速で繰り出される短いエピローグ。マニラ・ロードの一貫した大仰さは、最後まで継続されているのが高評価の対象になる。


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Open the Gates



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1985
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal



マニラ・ロードの1985年発表の4th。


プロローグ...
残念なことに、カルト・エピックメタルの不動の王者、マニラ・ロードの物語を知る者は極めて少ない。皮肉にも、未だにアンダーグラウンドの領域から脱していないマニラ・ロードの暗澹たる音楽性をファンは称賛し続けているが、そのためにエピックメタルの大衆化は妨げられている。
長い間、エピックメタルは地下で密かに脈動を続け、人知れず芸術作品を生み出してきた。エピックメタルの熱狂的なマニアたちは、これらの作品を鉱山に眠る金塊の如く掘り当て、孤独な個室で楽しむことを覚えていた。誰も知ることがない余暇は、知的好奇心を刺激し、次第に麻薬のような中毒性を発していった。マニアたちはそれに満足し、エピックメタルの暗い知識が外部に洩れることを酷く恐れた。故にエピックメタルの大衆化を求めるファンは少なかった。
頑なに信念を貫く男、マーク・シェルトンによって築き上げられたマニラ・ロードの一大叙事詩は、過去の名作の一つ一つが陰鬱な散文となり、現在まで一貫して継続されてきた。マニラ・ロードの歴史とは、ヴァージン・スティールやマノウォー、キリス・ウンゴルらと同様にエピックメタルの開拓史に該当し、この分野の発展を物語る貴重な断片であった。エピックメタルの真の起源を探索するために、我々はより古い時代へと興味を傾ける必要があり、そこでマニラ・ロードに出会ったのだ。
エピックメタルの古参であり、この分野に多大な貢献を果たしてきたマニラ・ロードは、1977年のアメリカのカンザス(正確にはカンザス州のウィチタ)での結成後、地下で活動を開始し、一部の熱狂的なファンによって支えられてきた。マニラ・ロードの創造する幻想的で薄暗いヘヴィメタルは、後に確立されるエピックメタルの基礎を有していた。アメリカのバンドであるマニラ・ロードの音楽性は異質であり、劇的なドラマ性とヒロイックな要素を持っていた。1983年に発表された第3作『Crystal Logic』では、ファンタジックな世界観と古臭い雰囲気を身に纏い、一つの完成形とも呼べる傑作を作り上げるに至った。『Crystal Logic』のスピーディな楽曲に勇壮なメロディが乗るという手法は、他のヘヴィメタル・バンドを大いに刺激した。また、作品のプロローグとエピローグを配したドラマティックな作風は、ヘヴィメタルを通じて物語を演じるという、エピックメタルの最も重要な構成を貫くものでもあった。
マニラ・ロードの素晴らしい箇所は、自らの方向性を決して転換しないという信条であり、名作『Crystal Logic』の約2年後に発表された第4作『Open the Gates』においても、それは適用された。一つの長所を伸ばし続けることで最も効率的な結果が生み出されるように、『Open the Gates』はエピックメタルの利点がすべて凝縮された奇跡的な一作となった...


『METAL EPIC』誌より抜粋:

機械的な産物には真逆の意味を適用することになるが、人間の知的な作品において、新しいものの方が古いものより優れているということはまずない。これまでに、我々は贅沢な暮らしと引き換えに、歌や詩、文学や絵画などの豊かな芸術をかなぐり捨ててきた。我々は金があって各地の肥え太った極上の珍味を胃に納め、水と電気が無制限に使えれば他に何も言うことはないが、古くから人間が親しんできた音楽において、その絶対的な法則が適用されるとは限らなかった。ポップでノリの良いヒット曲で我々が満足できるのであれば、ヘヴィメタルなどという異質な分野は誕生していないことになり、根本的なロックですら生まれていない。即ち、満足のいく生活基準の最中にあってもなお、我々の中には満たされない別の欲求があるということである。
ヘヴィメタルの根本的なテーマである反骨の精神と比べ、全く別の領域で発展を遂げていったエピックメタルも、こうした物理的ではい欲求を満たすために生み出されていった、数少ない分野の一つである。幻想文学や歴史、有史以前の神話等に対し飽くなき探求を続けるエピックメタルは、既に独立した分野として久しい。しかし、現在のようにエピックメタルが確立されるまでには、数々の困難を乗り越えなければならず、先人たちの味わった苦悩は計り知れない。若い世代にある我々は、「古典」と呼ばれる作品を拝聴し、これらの伝記を遡る必要があるのである。
マノウォーの第4作『Sign of the Hammer』(1984)がまさにそうであるように、マニラ・ロードの第4作『Open the Gates』はエピックメタルの最も古く偉大な傑作の一つに数えられる。カルト的なヘヴィメタルの熱狂的なマニアが聖書の如く崇める『Sign of the Hammer』が、読んで文字の如く、完璧なエピックメタルの礎を形作っているのに対し、マニラ・ロードの『Open the Gates』はそれに加え、徹底的なまでの幻想世界への追求が為された作品である。
過去ロバート・E・ハワードやH・P・ラヴクラフト等に源流を輩出する幻想文学への傾向が顕著であったマニラ・ロード──これらの極めて知的な趣味は中心人物マーク・シェルトンのものである──は、前作『Crystal Logic』(1983)で飛躍的な進歩を遂げ、更なる探求と絶対的な理想主義のもとに本作を完成へと導いた。『アーサー王伝説』──古く中世を起源とするこれらの叙事詩が本作のコンセプトの一部となり、古典的なエピックメタルの偉大な傑作の誕生を後押しした。
妥協することを知らないマニラ・ロードは、全編に渡り暗く重苦しいムードを地下納骨所の如く漂わせることにより、外部からの雑多な影響力を排除した。一般的にヘヴィメタルを世界的な成功へと導いたとされるNWOBHM(New Wave Of British Heavy Metal)の残り香が初期のマニラ・ロードには漂っていたが、『Open the Gates』では辺獄のような混沌とした領域に踏み込み、唯一無二のエピックメタルを追求している。結果完成したのはカルト的なエピックメタルの究極に純粋な傑作であり、これらはマニラ・ロードの音楽性が独立した"エピック・メタル"としての新しい分野を確立した証明となった。
一貫性を持った幻想文学、古代神話にインスパイアされた『Open the Gates』の個々の名曲群は、大衆がかつて聞いたこともないような異様な旋律を奏でるものであった。ある者はマニラ・ロードの異様な音楽性に吐き気を催し、一目散にその場を立ち去ったが、ある者にとってはここはアヴァロンのような楽園に近かった。
──マニラ・ロードが1985年に生み出した『Open the Gates』はエピックメタルの歴史に名を刻み、一部で痛烈に非難され、地下で大いに絶賛され、長い歳月に渡り愛聴されてきた。しかし、本作のような歴史の影に埋もれた作品が世に出ることは少なく、我々が発見した時は酷い埃に覆い尽くされていた。その古臭い外見と同じく、中身も数世紀昔の音のような感じであったことを記憶している。あまりにも現代には釣り合わない、時代性を逸脱した音楽性だと誰もが感じた。しかし、我々はこうも感じた──「素晴らしい宝物を発掘した気分だ」と。



1. Metalstorm
ファンタジックなナレーションから入り、重厚感を増した独創的なエピックメタルを披露する。NWOBHM的な容赦のないスピード感にも満ち溢れている。マーク・シェルトンの大仰な歌唱はヒロイズムを鼓舞する。
2. Open the Gates
タイトル・トラック。2分の小曲。
3. Astronomica
"アストロノミカ"とは紀元1世紀頃の占星術書を指す。歌詞ではコンセプトである「アーサー王伝説」にも関連している。メロディアスなパートと攻撃的なパートが入り混じった楽曲であり、終わり方までもが大仰である。
4. Weavers of the Web
重厚なリフが繰り出される。整合性がなく混沌としている内容はキリス・ウンゴルに通じる。要所でリードギターは漢らしい野蛮性を披露。アルバム・ジャケットのイメージはこの楽曲のもの。
5. The Ninth Wave
不穏なイントロに続く大作。「アーサー王伝説」に関連した楽曲であり、アーサー王を最後に船でアヴァロンへ導く「三人の女王」について言及する。アーサーは本当にアヴァロンの門を開いたのであろうか?およそ9分に及び、古強者の如きヒロイズムを泥臭く紡ぎ出していく名曲である。凄絶な雰囲気に満ち、恐らくマニラ・ロードが世に生み出した至高の名曲の一つに数えられる。恰もヒロイック・ファンタジーの古典であるかのような内容は、聴き手を常識を逸した雄々しさで襲い、古代の幻想と驚異の世界に引きずり込む。
6. Heavy Metal to the World
前作に通じるスピーディな楽曲。スリリングなギタープレイを見せる。ヘヴィメタルそのものを題材にしたトゥルー・メタルは、かつてマニラ・ロードやマノウォーなどの初期エピックメタルバンドが流布したものである。
7. The Fires of Mars
重厚かつダークなエピックメタル。決してファンタジーの明るい部分を描かないマニラ・ロードの姿勢には感服する。暗く重い方が楽曲はシリアスである。本曲もこれまでのマニラ・ロードのエピックメタルと同様、複雑かつ劇的に展開し、終始ヒロイックな内容を披露する。
8. Road of Kings
古代の王の陰鬱な道程を叙述する。ヘヴィなエピカル・リフで攻撃的に攻め立てる名曲であり、朗々としたヴォーカルとアグレッシブなリフの混合が古臭い異様な雰囲気を生む。後半からは劇的に展開。
9. Hour of the Dragon
竜との戦いを描いた楽曲。中世への傾向を泥臭い漢の鋼鉄で表現する。収録されたすべてのパートから徹底した異臭が垂れ流される。
10. Witches Brew
北欧神話の魔女の醸造酒について扱い、幻想的な世界観を極めたエピックメタル。静から動への流れによって生み出されるカタルシスは既に計算し尽くされている。ここまで徹底した追求されたエピックメタルを全編に渡り収録した本作について、我々が語ることは陳腐な雑談に過ぎない。


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Crystal Logic



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1983
Reviews: 90%
Genre: Epic Metal




「『Crystal Logic』なくして、エピック・メタルの確立は有り得なかった」

 ──『METAL EPIC』誌

マニラ・ロードの『Crystal Logic』が再発された。1983年に発表されたこの素晴らしい名盤は、今日のエピック・メタルの基礎を築き上げた極めて重要な作品である。勇ましく疾走する名曲"Necropolis"、すべてのエピック・メタル・バンドに影響を与えたヒロイックなギター・ソロを奏でるタイトル・トラック"Crystal Logic"は、今後も末永くマニアたちに愛聴されていくことであろう。我々は改めてこの作品を拝聴し、劇的でヒロイックなエピック・メタルというジャンルが生まれていった経緯を耳にすることができる。『Crystal Logic』は偉大なるエピック・メタル・バンドの、偉大なる遺産だ。

 ──Cosman Bradley



本作はアメリカのカンザス州ウィチタ出身のエピック・メタル・バンド、マニラ・ロードが1983年に発表した第3作である。中心人物マーク・シェルトン(Mark Shelton:g、vo)、 スコット・パーク(Scott Park:b)、リック・フィッシャー(Rick Fisher:d)から構成される3人のメンバーによって制作され、プロデュースはマーク・マズール(Mark Mazur)が担当。太古のネクロポリスを描いたというカヴァー・アートワークはジョン・ジンクス(Jon Jinks)が手掛けた。なお本作は2000年に「Iron Glory Records」から再発、その際マニラ・ロードが1983年に『U.S. Metal Vol.Ⅲ』に提供した"Flaming Metal Systems"をボーナス・トラックとして追加収録。その後、2012年に「Shadow Kingdom Records」より再発された。




マニラ・ロードが現在のエピック・メタル・シーンで孤高の地位を獲得できたのは、間違いなく本作『Crystal Logic』の成功があったからだ。1977年にマニラ・ロードを結成したマーク・シェルトンが思い描いていた幻想文学に通じる世界観や、独創的な音楽性は80年代初期のヘヴィメタルの分野には大きな影響を与える必然性があった。バンドの結成時からマーク・シェルトンが追求していた世界観は神秘主義的なものであり、その特異な要素が本格的なヘヴィメタルのサウンドと出会ったのが、他ならぬ『Crystal Logic』であった。



本作から漂うヒロイックなムードの根源は、マーク・シェルトン自身の趣味に基づくものであり、それはアルバム・ジャケットの表紙、及び掲載されているメンバーの写真に至るまで影響を与えている。これは後にマーク・シェルトン自身が認めたことだが、ロバート・E・ハワードの『コナン(Conan)』はマニラ・ロードの世界観に多大な影響を及ぼしていた。また古代・中世に属する古典文学も同様であり、『Crystal Logic』制作時の一つのインスピレーションとして機能していた。これらの勇壮なイメージがインテリジェントな音楽として始めて成立したのが、本作『Crystal Logic』という作品であった。これまでのロック史を覆すヒロイックなサウンドの登場に、地下のファンは大きくどよめいた、という。



劇的、大仰、勇壮、そして、緻密な小説の如く結末を迎えるストーリーテリングな『Crystal Logic』の内容は、マニラ・ロードという陰鬱なバンドの存在を一気に世に照らし出した。"Necropolis"の放つ幻想的な爽快感、"Crystal Logic"の雄大なギター・ソロ、"Riddle Master"におけるヒロイックなリフの使用、長大な"Dreams of Eschaton"の途方もない憂鬱さ。スラッシュ・メタル、ブラック・メタル、NWOBHM……形容する言葉が見当たらなかった。しかし、歴史には常に見落としがあるように、かつてマーク・シェルトンが自身のサウンドを命名した際の一つの言葉が残されていた。それは同郷のキリス・ウンゴルやマノウォーのサウンドを辛うじて形容していた"EPIC METAL(叙事詩的なヘヴィメタル)"という言葉であった。



1983年、マニラ・ロードの第3作『Crystal Logic』はエピック・メタルのスタイルを確立するに至る。以前までのハードロックの呪縛から脱却した、クラシックな叙事詩的音楽の原形が『Crystal Logic』には生々と描かれている。ここにヘヴィメタルと「剣と魔法(Sword and Sorcery)」の世界観が前衛的な手法で融合を果たし、エピック・メタルが完成したのである。言うまでもなく、マニラ・ロードはその第一人者であり、先駆者であった。当時、ここまで"ヘヴィメタル的"なサウンドを提示したエピック・メタル作品は他に有り得なかった。本作の発表後、現在に至るまで、世界各地のマニラ・ロードのファンは『Crystal Logic』を初期の傑作として称賛し続けている──以上が、我々が知り及ぶ本作の物語であった。



1. Prologue
暗く不穏な本作のオープニングトラック。ネクロポリスの謎を語りかける。
2. Necropolis
オープニングに続く勇壮な疾走曲。古代神話にインスパイアされ、ステュクス河のネクロポリス、王の墓に関して言及する。ヒロイックなメロディがドラマティックかつアグレッシブに展開される本曲は、マニラ・ロードの代表的な名曲となった。また、エピック・メタルというジャンルの良点を顕著に示した楽曲でもある。
3. Crystal Logic
タイトル・トラックにしてエピック・メタル屈指の名曲。大仰なマーク・シェルトンのヴォーカルと無骨なギター・サウンドがエピカルに絡み合った見事な構成を有する。およそ6分の中に戦士的なドラマ性を凝縮しており、中間部のソロでは最高にヒロイックなフレーズを奏でる。このギター・ソロが後続に影響を与えた事実は、既に語り尽くされている。
4. Feeling Free Again
短くも、勇壮な荒々しさが表現された楽曲。バーバリックな勢いだけは素晴らしい。
5. Riddle Master
伸びやかな歌声が炸裂する明白かつドラマティックな内容。ヘヴィメタル史において、始めてヒロイックと思しき印象を与えるギター・リフを使用したことでも知られる名曲。本作のエピカルな作風を代表する楽曲でもあり、サビの強烈なメロディが強く印象に残る。また後半にはテンポ・チェンジがあり、完成度は非常に高い。
6. Ram
鋭くメタリックなリフが変則的なリズムで刻まれる佳曲。ほのかに滲むマイルドな漢らしさが非常に良い。ギター・ソロは破天荒な内容。
7. Veils of Negative Existance
上手くエピカルにまとまった内容。楽曲の展開も期待感を煽るもの。大仰さが爆発しており、ラストのコーラスも勇壮な世界観を良く描いているといえよう。
8. Dreams of Eschaton/Epilogue
およそ10分に及ぶエピック・メタル大作。様々な神話・伝承に触発される。バラード調から始まり、大仰な唸り声を上げ、リフ・パートに移行する箇所はなんともエピック・メタルらしい。歌メロの漢の色気を感じるメロディには高揚感を覚えるものの、後半の永遠と続くソロ・パートが、ストレートな曲調故に冗長に感じる部分が非常に残念。エピローグでは、整合性のない大仰なメロディが時に哀愁を秘めて、余韻を残すべくエンドロール・メロディが奏でられる。
9. Flaming Metal System
ボーナストラック。当時のマニラ・ロードがコンピレーション・アルバム『U.S. Metal Vol.Ⅲ』(1983)に提供した楽曲。完成度は高く、ヒロイズム、伸びやかな歌声、ドラマ性などが十分に発揮された佳曲である。


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