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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


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VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
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Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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ザ・ヴァランジャン・ウェイ~大海原の覇者~

TURISAS the 2nd album in 2007 Release
★★★★★★★★★☆...(傑作)

チュリサスの2007年発表の2nd。


シンプルに『Battle Metal』(2004)と題された第一作で鮮烈なデビューを飾ったフィンランドのチュリサスだが、次作で更に濃密な内容のコンセプチュアルな作品を発表することは、安易に予想できた。 前作に収められた内容から我々が感じ取ったことは、まずチュリサスがエピカルでサウンドトラックのような壮大なヘヴィメタルを目指しているということであった。それは『Battle Metal』でも大まかに表現されはしたが、チュリサスは更なる可能性を秘める要素を多く持っていた。事実、普遍的なバンドであるならば途中でやめてしまうような大仰極まりない楽曲を何のためらいもなく作り上げるウォーロード・ナイガルド(vo、key)は、確かにとんでもない才能の持ち主であった。
今回ウォーロードは自らが旅をした体験をヒントにして北欧人の旅の物語を作り上げた。中世のヴァイキングたちはかつて"ヴァランジャン(これはヴァイキングの一派の名でもある)"として知られていたルートを通り、様々な困難や冒険を潜り抜け、最終的にはコンスタンティノープルの城塞を目にすることになる。本作『The Varangian Way』に収録された楽曲群は、すべてそのストーリーに基づくものだ。我々はチュリサスの圧倒的な進化を遂げた本作を聴き、スペクタクル映画のような興奮と感動を味わい、古い時代の人々が体験したことを一瞬垣間見ることになる。広大な大洋に投げ出された一艘のヴァイキング船の如く、我々は新たな土地を、新たな出会いを享受するのである。およそ40分という短い本作を聴き終えるのが如何に早いことを惜しまずにはいられないが、素晴らしい時間とは一瞬にして消え去ってゆくものだ。そう、恰も中世のヴァイキングたちの身をなじる北風のように……


1. To Holmgard and Beyond
勇壮な漢たちによる泥臭い船出の回想を漂わせる、感動的な楽曲。本作ではウォーロードがすべてクリーンヴォイスで歌っている箇所にも注目したい。
2. A Portageto the Unknown
ロシアの地を通るヴァイキング一派の様子を描いた楽曲。方向性は#1と似通っているが、こちらの方が落ち着いた雰囲気を宿している。当然の如く、サビでは大仰なクワイアが聴ける。
3. Cursed Be Iron
デスメタル的な攻撃性を宿すパートが印象的。
4. Fields of Gold
勇猛果敢な雰囲気を纏って突進するチュリサスの真骨頂。無論唐突に勇壮なだけではなく、本作の歴史を題材にしたストーリーであるように、重厚感に伴った説得力も加わっている点は是非とも特筆しておきたい。
5. In the Court of Jarisleif
民族的であり、ダンサブルなナンバーである。
6. Five Hundred and One
本作のハイライト。一同の運命を左右する重要な局面を描く。後半のまるで映画のような展開は、聴き手に怒涛の興奮を引き起こす。
7. The Dneiper Rapids
ギリシアの文化が息づく地域では、その土地にあった音楽性を取り入れる。例えばこの楽曲のように、幽玄なクワイアが追加されるのだ。
8. Miklagard Overture
一行は遂に目的地であるコンスタンティノープルに到達する。まさに栄光を勝ち取ったかのような燦然たる内容は、壮絶な余韻を残し、本作が紛れもない傑作であることを再確認させられることになる。
9. To Holmgard And Beyond
#1の別ヴァージョン。
10. Rex Regi Rebellis 
前作収録の名曲のフィンランド語ヴァージョン。重厚感を増した本作のサウンドによって生まれ変わったこの名曲は、圧倒的な陶酔感を抱かせるまでに壮大な内容となっている。



Review by Cosman Bradley
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バトル・メタル

TURISAS the 1st album in 2004 Release
★★★★★★★★☆☆...(佳作)

チュリサスの2004年発表の1st。


ムーンソロウやエンシフェルム等の高品質なヴァイキングメタルで知られるフィンランドから、大仰なホーンセクションと共にデビューを飾ったチュリサスは、その第一作目『Battle Metal』で強烈な印象を残すことに成功した。1997年の結成以来、密かにヴァイキングメタルの"戦闘"に特化した作品を作り上げることに尽力してきたウォーロード・ナイガルド(vo)がようやく世に送り出したこの泥臭くも戦士らしい哀愁に満ち溢れた作品は、これらのヒロイックなヘヴィメタルのファンの目に留まらぬはずもなく、瞬く間にチュリサスの名は名声を欲しいままにした。強力な印象を持つチュリサスの楽曲群にはまだ成熟していない部分が見受けられたものの、それを補うほどの、恰も青光りする鋼の剣のような鋭さを持っていたのだ。


『METAL EPIC』誌より抜粋:

本作の方向性について、我々はある程度エピカルな側面を指摘しなければならないであろう。元来ヴァイキングメタルというマニア向けに過ぎないサブジャンルは、大衆から忘れ去られた叙事詩の断片と民族的な思想を内包するものであった。大仰にも『Battle Metal』と題されたチュリサスの本作は、極めてヴァイキングらしい方向性に特化した作品であることを、我々はここに認めなければならない。チュリサスの北欧の民族らしいペイガニズムに満ちた楽曲群や、古い時代の叙事詩を題材にする部分は、ヴァイキングメタル特有の血生臭さで満ち溢れている。
チュリサスのほぼすべての楽曲を手掛けるウォーロード・ナイガルドが「これは戦いのサウンドトラックだ」と語るように、本作収録の#10~#11はフィンランドの作家サカリアス・ペトリウスにインスパイアされた楽曲であり、17世紀頃の欧州の30年戦争をモチーフとした大作である。ウォーロードがこの叙事詩的な物語のアイデアをチュリサスでエピック・メタルとして消化することを特に重要視したように、我々もまたこの楽曲の重要性について考察しなければならない。
大仰な音楽性や自身のスタイルに適した題材を選出することこそが、エピカルなヘヴィメタルとして更なる高みに上り詰める必須条件であることを、上記の"Rex Regi Rebellis"は雄弁に物語っている。我々は興味深い例を知っている。執筆に入る前に物語の全容(イメージ)を掴んでおくことは、小説においても大切な過程である。後からつけ足したような貧弱な内容では、物語を完結させることは出来ない。小説家は余程の想像力がない限り、思いつきで物語を書くことは難しい。これらと同じように、叙事詩的なヘヴィメタルを完成させるためには、メロディよりも先に題材を選出しておき、後はイメージに沿った楽曲に肉付けしていかなければならないのである。エピックメタルとは、ポピュラーな音楽とは大きく異なった分野に属している。
また崇高な叙事詩を再現するためには、様々な楽器を用いた豪華なサウンドを作り上げることも重要である。本作に収められた雄々しいホーンセクションや郷愁の念を誘うヴァイオリンやアコーディオンの音色は、それらの戦闘的な世界観を表現する際に、ヘヴィメタルの枠を飛び越えて聴者の視覚を刺激する。難解な叙事詩や英雄譚を題材に楽曲を作ることは簡単だが、その世界観を忠実に表現できなければ意味がない。チュリサスは自分たちにとって馴染み深いであろう神話や伝承を扱う術を、非常によく熟知しているバンドなのだ。


1. Victoriae & Triumphi Dominus
華々しく幕開けるイントロダクション。戦場に向かう戦士を鼓舞するための音楽にも聞こえる。
2. As Torches Rise
アルバムの序盤に相応しい勇壮な楽曲。勇敢な雰囲気が支配する反面、戦場の哀愁も漂う。途中の語りの導入によって、より生々しい臨場感を高めることに成功している。
3. Battle Metal
元々は"The Heart of Turisas"という、1stデモに収録された楽曲であった。ここに新たにリメイクされたチュリサスの代表曲は、勇ましさに満ち溢れた名曲として生まれ変わった。なおチュリサスというバンド名は、古代フィンランドの戦神の名に由来する。
4. The Land Of Hope And Glory
帰郷の念について歌った楽曲。エピカルな雰囲気を宿す楽曲であり、荘厳なコーラス部分がヴァイキングらしさを強調する。ヘヴィなリフに乗るヴァイオリンも効果的である。
5. The Messenger
勇壮に駆け抜ける、壮大な戦士たちの戦歌である。
6. One More
冒頭のヴァイオリンパートが秀逸。戦友の無念を感慨深く惜しむ内容を含み、物語のような複雑な展開を持った楽曲である。後半では漢臭いヴァイキング特有の合唱も披露する。
7. Midnight Sunrise
8. Among Ancestors
9. Sahti-Waari
10. Prologue For R.R.R
その名の通り、"Rex Regi Rebellis"への序章。
11. Rex Regi Rebellis
通称「R.R.R.」。曲名は「王は王に対して反逆を行う」というものであり、先述したペトリウスの小説の題材ともなっている。大仰なホーン、中世時代を彷彿とさせる壮麗なストリングスが印象的であり、後半の劇的な展開も相俟って歴史映画の如き興奮を齎す。
12. Katuman Kaiku
「後悔」の名を刻むハーメンリーナの湖から命名されたエピローグ。リコーダーの音色が哀愁を誘う。
13. Till The Last Man Falls
以下の三曲は日本盤のみのボーナス・トラックである。
14. Terra Tavestorum
15. Midnight Sunrise(Liver Version)



Review by Cosman Bradley
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チャプターズ・フロム・ア・ヴェイル・フォーローン

FALCONER the 2nd album in 2002 Release
★★★★★★★★☆☆...(名盤)

スウェーデンのドラッドメタル、ファルコナーの2002年発表の2nd。


前作『Falconer』(2001)が好評を博し、全く新しいファン層を獲得するに至ったファルコナーであったが、一部の評価の声に"メロディック・パワーメタル"という単語が紛れていたことに対しては、疑問を抱かずにはいられなかった。ミソティンの時代から活動を続けるステファン・ヴァイナーホール(g、b)は別に意識したわけでもなく、トラディショナルなヘヴィメタルバンドであるファルコナーが、このような想定外の評価を受けたことは意外であった。最もそのせいでファルコナーの認知度が格段に向上したのは言うまでもない事実であった。元々ブラックメタルやデスメタル等の暴虐的なサウンドから離れて伝統的なヘヴィメタルを作ることが目的であったファルコナーは、マティアス・ブラッド(vo、Key)の持つ独特な美声に後押しされ、何なくその目的を果たした。しかし欧州各地で隆盛の真っ只中にあったパワーメタル的なスタイルが、意図も簡単にファルコナーの民族的なヘヴィメタルに混入することはまさに予想外の事態であったといえよう。絶賛を得る一方で、従来のファンから非難を受けた背景には、このような事態があったのである。
前作での好評を補っていた疾走感は抑え、より重厚感のあるヘヴィメタルに回帰した本作『Chapters From A Vale Forlorn』は、ようやくファルコナーの表現するべきサウンドが完成した作品である。魅力的なヘヴィメタル作品である場合、円熟した雰囲気と濃厚な内容が存在すれば良いだけで、若さに任せた疾走は作品の質を落としかねない。本作は大人が楽しむべきヘヴィメタルであり、聴き手は完成されたドラッドメタルの世界に身を委ねればいいだけなのである。また本作の歌詞にも注目すべき箇所があり、あえて従来の北欧神話やファンタジーから脱却した詞は、ファルコナーの新たな方向性を匂わせる。何も剣と魔法やドラゴンを用いた大仰なヘヴィメタル作品でなくとも、聴き手を興奮させることが出来る作品があるという事実を、ファルコナーは本作『Chapters From A Vale Forlorn』で再確認させたに他ならない。


1. Decadence Of Dignity
勇壮な雰囲気と重厚な雰囲気の両方を宿す魅力的な楽曲。マティアス・ブラッドの滑らかな歌声が炸裂した名曲である。民族的フレーズを宿したギターも素晴らしい。
2. Enter The Glade
ゆったりとした勇ましさを醸し出す名曲。雰囲気はミソティンに非常に近い。サビの三連のリズムはドラマ性を高めており、漢らしい高揚感を生み出すことに貢献している。
3. Lament Of A Minstrel
フルートの音色を用いた民族的楽曲。決してヴァイキングではないトラッドメタルの真骨頂がここに表れている。「歌詞は現実的だ」というステファンもやはり北欧伝統の幻想的な作風を完全には捨てられないようだ。
4. For Life And Liberty
本作中最もメロディアスな楽曲。漢らしい疾走感に満ちており、後半の静寂パートも駆使するなど芸が細かい。全編、特徴的なリードギターは恰も歌のように奏でられる。
5. We Sold Our Homesteads
6. The Clarion Call
7. Portals Of Light
8. Stand In Veneration
9. Busted To The Floor
10. En Kungens Man
母国語で歌われる日本盤のボーナス・トラック。ファルコナーの民族的ルーツを感じさせる出来である。



Review by Cosman Bradley
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Falconer

FALCONER the 1st album in 2001 Release
★★★★★★★★☆☆...(良作)

スウェーデンのヴァイキングメタル、ファルコナーの2001年発表の1st。


"ヴァイキングメタルの王"として我々が知るミソティンは解散し、その偉業は影に隠れてより崇高なものとなった。ベースであったステファン・ヴァイナーホールはデス声ではないヘヴィメタルバンドをやることを思いつき、偶然にもマティアス・ブラッド(vo)と出会ったのは幸運なことであった。既にミソティンのような野蛮で本質的なヴァイキングメタルがファルコナーから生み出されることはないが、マティアス・ブラッドの素晴らしい歌声によって本作『Falconer』は漢らしくもマイルドな世界観を有することとなった。北欧から授かった哀愁の念や民族的な勇ましさは、このように形を変えて受け継がれてくものである。


『METAL EPIC』誌より抜粋:

確かにファルコナーは元ミソティンのメンバーによって結成されたヴァイキングメタルバンドだが、サウンドが洗練されたことでメロディック・パワーメタルの分野に接近してしまったことは惜しむべき事実である。我々はミソティンという偉大なヴァイキングメタルバンドの影響を忘却することができず、その子孫にもあたるファルコナーに対しても先人の枠組に収めようとしてしまった。これは恥ずべき行為であり、我々はファルコナーがミソティンとは全く別のバンドであるということを知らなくてはならなかった。サウンドが洗練されることはバンドにとっては良い出来事であり、チープなサウンドをファンに提供し続けることは良くない行為に該当する。いわばこれはキリスト教の洗礼のようなもので、必ずしも向上心があるバンドならば通る道なのだ。しかし我々が最初に指摘したように、洗練されたサウンドがヴァイキングメタルの土着的な民族性を改宗させるようなことがあるとすれば、それは非常に残念な結末に他ならない。


1. Upon The Grave Of Guilt
2. Heresy In Disguise
3. Wings Of Serenity
4. A Quest For The Crown
5. Mindtraveller
ドラマティックな展開を持つ名曲。後半にかけての展開は絶品の一言である。
6. Entering Eternity
7. Royal Galley
勇壮な世界観を極めた初期ファルコナーの傑作。サビの雄々しいコーラスの持つ高揚感は並大抵のものではない。
8. Substitutional World
9. Lord Of The Blacksmiths
10. The Past Still Lives On



Review by Cosman Bradley
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神々の紋章

Equilibrium the 1st album in 2005 Release
★★★★★★★★☆☆...(好盤)

ドイツのヴァイキングメタル、エクリブリウムの2005年発表の1st。


メロディック・スピードメタルとシンフォニックメタル、ヴァイキングメタル等の様々な分野を取り入れたエクリブリウムの第一作『Turis Fratyr』は、各分野の魅力的な部分のみを抽出したかのような実に美味しい作品である。全編に渡りキーボードを配した劇的な音作りはフィンランドのムーンソロウにも通じ、ヒロイズムを強調した疾走感は同国のエンシフェルムにも通じるものがある。北欧神話の勇壮な世界観を舞台にした楽曲群は、このドラマティックなサウンドに良く合っている。恰も映画のサウンドトラックのような小曲を含む作風だが、これらは意図してやったものであろう。トータルでの起承転結が上手く描かれているというのも、本作の評価を一層押し上げる結果となっている。
スピードメタルのファンは本作を手にして十分な高揚感を得ることができるであろう。またヴァイキングメタルのファンも本作の完成度の高さには溜飲が下がるはずである。全編疾走感に満ちたヒロイックな作品をお求めならば、エクリブリウムの『Turis Fratyr』は押さえておくべきだ。


1. Turis Fratyr
次曲へと続くイントロダクション。
2. Wingthors Hammer
期待感を最高潮まで高めた後の疾走曲は、まさに興奮の極地であろう。
3. Unter der Eiche
疾走に絡むキーボードが強烈なインパクトを放つ名曲。
4. Der Sturm
5. Widars Hallen
8分に及ぶ大作。笛の音色を用いた疾走曲であり、大仰な曲調が聴き手の高揚感を高める。
6. Met
7. Heimdalls Ruf
8. Die Prophezeiung
9. Nordheim
10. Im Fackelschein
11. Tote Heldensagen
9分に及ぶ大作。劇的な疾走が濁流の如く押し寄せる。
12. Wald der Freiheit
13. Japanischer Rampfwkinger
ヨーロッパ盤デジパックのボーナス・トラック。
14. Nach Dem Winter
日本盤のボーナス・トラック。



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Ragnarok

TYR the 3rd album in 2006 Release
★★★★★★★★★☆...(力作)

フェロー諸島出身の正統派ヴァイキングメタル、テュールの2006年発表の3rd。


バルト海の荒波の如きリフ、喝采のようなクワイア、英雄的なクリーンヴォイス──神話の如き神秘的な緊張感が、我々を北欧神話の古き世界へと誘う。魅惑的なサーガ(英雄伝説)の世界がここにはある。そして、打ち寄せては返す潮のように、異教徒の楽譜は何処かから運ばれてくる。
伝統的な北欧民族の小島に住むテュールは、本作『Ragnarok』で実に魅力的な神話世界を描くことに成功した。それはユミールから巨人族が生まれたように、オーディンの死によって終わる。即ちテュールは8つの楽章から成る北欧神話の伝説を描き、神々の黄昏として知られるラグナロクによってすべてが死ぬ光景を表現している。上記のように、彼らの試みは見事傑作を生み落とし、ファニーさを粉砕するシリアスさで持って我々を押し潰す。
本作の緊張感は大人が楽しむべき極上のワインのような、濃密な時間を提供するものである。我々がワインのアルコールに酔うように、『Ragnarok』は勇士らの英雄的な行為の前に酔う。8つの楽章はドラマティックなインストゥルメンタルとエピカルなヘヴィメタルから構成されており、2曲を1セットとしている。勇壮な序章から導かれる映画のように、我々は8つの叙事詩を存分に楽しむことになる。そして最後に待ち受けているものは、映画がまさにそうであるように、圧倒的な感動である。テュールの場合、僅かばかりの哀愁が含まれていることも、考慮しておいた方が良いかも知れない。彼らは戦士であることを忘れていないのだ。


1. The Beginning
冒頭に書いた表現の根源。まるで大河のような、雄大なインストゥルメンタル曲である。
2. The Hammer of Thor
劇的な序曲に続くプログレッシブなヴァイキングメタル。複雑なリズムと透き通るヴォーカルを用い、夜空に煌く星々のような神秘的な世界を描く。これらの視覚的な情景は、天空に神々の居城があるという神話の筋道とも繋がる。
3. Envy
4. Brother's Bane
重厚なエピック・ヴァイキングメタル。クワイアの展開がヒロイズムを鼓舞する。
5. The Burning
6. The Ride to Hel
7. Torsteins Kvæði
8. Grímur á Miðalnesi
9. Wings of Time
重厚なミドルテンポ。朗々としたコーラスが長々と続く。この旋律は古い民謡であろうか。テュールの楽曲の旋律には似通っている箇所が幾つかあり、音階の起源は何れもヴァイキングの古謡であると思われる。
10. The Rage of the Skullgaffer
11. The Hunt
12. Victory
13. Lord of Lies
ペイガン的思想を感じさせる音階のメロディが印象的。他の楽曲に比べややファニーさも漂うが、これが終焉の前の饗宴ということも想像できる。サビのメロディは飛び抜けている。
14. Gjallarhornið
15. Ragnarok
神々の最終戦争が悲劇的であるように、楽曲も悲壮感を表現する。只ならぬ緊張感に包まれた楽曲であり、クワイアの壮大なスケール感はスクリーンを見ているかのよう。本作の集大成であろう。
16. The End



Review by Cosman Bradley
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Voimasta Ja Kunniasta

MOONSORROW the 2nd album in 2001 Release
★★★★★★★★★★...(神盤)

フィンランドのシンフォニック・ヴァイキング、ムーンソロウの2001年発表の2nd。

同国ヘルシンキのスパインファーム(Spinefarm Records)からリリースされた本作は、"Epic Heathen Metal"を掲げる彼らにとって記念碑的な作品になったと言わざるを得ない。前作で提示した北欧の民謡的美旋律の導入は本作でより顕著になり、時には大仰なシンセサイザーの音色が木霊する。それは北欧の土着民族に古来より伝わってきた旋律であり、叙事詩的な異郷の物語と相俟って、古き世界の情景を私達に思い出させる。本作の視覚的な効力はバルサゴスにも匹敵する箇所がある。全ての曲が物語なのである。
アルバムは強烈な郷愁を誘うインスト#1で静かに幕を開ける。北風に乗ってヴァイキングの勇士らの叙事詩が蘇ってきたとでも表現すべきだろう。余韻も覚めやらぬまま開始される名曲#2は荒涼とした雪原で繰り広げられる異教徒の戦いとでも言うべきだ。私は映画『ニーベルングスの指輪』(2004年、ドイツ)の映像を使った本曲の動画が非常に好きだ。ジークフリートは偉大な英雄であるし、ドイツのこの叙事詩は北欧神話とも密接な繋がりを持っている。#3は本作のハイライトともとれる名曲。中間部からのポルカ──フンパという説もある──調が民族的な酒宴の有様を浮かばせ、ケルト的な美旋律の導入が絶妙に決まる。#4は印象が薄い微妙な曲だ。#5は#1と同様に、郷愁を誘う笛の音色で幕を開ける魅惑的な曲であり、北欧の苛烈さや雄大な自然美をも抱かせる。本編の最後を飾る#6はエピック・ヴァイキング史に残るべき一大叙事詩であり、およそ14分の間に渡って怒涛の情景が荒波の如く押し寄せる。この曲にこそ異教叙事詩の神髄がある。これは忘れられた戦士らの叙事詩である。
劇的な進化を伴って見事に完結された本作はヴァイキング史に悠然と輝く名作であり、過ぎ去った過去からの遺産である。それはキリスト教の流布によって忘却された民族の伝承でもあり、禁じられた民謡の旋律でもある。彼らによって、私達は異教徒の文化を知る絶好の機会に恵まれたのである。


1.Ukkosenjumalan Poika
2.Sankarihauta
剣の響きが打ち鳴らされ、重厚に行進する楽曲。
3.Kylän Paassä
歓喜に満ちた雰囲気も醸す、劇的なヴァイキングトラック。
4.Hiidenpelto incl. Hapean Hiljaiset Vedet
5.Aurinko Ja Kuu
郷愁を誘う荒涼としたエピック。
6.Sankaritarina
さざ波、焚き火、泥声が織りなす異教徒の叙事詩。曲の最後に、#1の静寂を伴った麗しい旋律が風に吹かれ流れ込んでくるのが余韻を残す。


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Suden Uni

MOONSORROW the 1st album in 2001 Release
★★★★★★★★☆☆...(好盤)

フィンランドのシンフォニックヴァイキング、ムーンソロウの2001年発表の1stアルバム。

本作は、後にエピック・ヴァイキングメタルの最重要バンドとして認知されるに至るムーンソロウの記念すべきデビュー作であり、2003年にリマスター再販もされた好盤である。この再販の際に、ビデオクリップとライヴ映像を収録したDVDが付属され、アルバム・ジャケットも新たな作品となった。北欧の先住民族を想起させるカヴァー・アートワークには、彼らの音楽的起源が隠れているようにも思える。DVDに関して特筆すべきは、名曲「Jumalten Kaupunki」のビデオクリップであり、メンバーが鎖帷子を着て演奏する姿などの貴重な光景が見られる。
内容に入るが、まず本編の完成度は申し分ない。アンダークラウンドで、更にヴァイキング系の1stともなると音質や楽曲の構成力が危ぶまれることは多々あるのだが、彼らの場合は何なく基本水準──マニアの許容範囲のことである──をクリアしている。ゆったりとした、伝統的なヴァイキングリズムに民族的な美旋律が加わるという彼らの典型的なスタイルは、本作から既に楽曲の表面に表れていたようだ。バンドの中核を成すHenri Sorvali(key、g)──彼は同郷のフィントロールでもトロールホーンとして活躍している──の生み出す民謡メロディは、エピカルなファンの期待に十分答えている。楽曲の構成も、映画を意識したSE、強弱の付け方などを心得ており、幾分かB級シネマスティックな雰囲気も漂っている。証拠として、大作#6は只ならぬ臨場感を醸している。勇壮な分野での特筆点には、ヒロイックなクリーンヴォイスが挙げられ、彼らのトレードマークともいえる戦士的な高揚感を誘引していく。クワイアに関しては練り方が甘いといわざるを得ないが、やはりメロディに関しては胸を打つフォークロアなものがある。
ムーンソロウは2ndや3rdがあまりにも優れたエピック・ヴァイキング作品であるために、この1stには日のあたる部分が少ないが、何かのきっかけで本作を聴くことがあれば、きっと隠れた佳作であると思わずにはいられないはずである。コンパクトにまとまった楽曲は、大作揃いの後の作品とは一線を画しており、違ったムーンソロウの印象を受けることは必至である。また、この文章が、その発見のきっかけへの橋渡しとなれば、私としても幸いである。


1. Ukkosenjumalan Poika
2. Köyliönjärven Jäällä (Pakanavedet II)
3. Kuin Ikuinen
4. Tuulen Koti, Aaltojen Koti
5. Pakanajuhla
冒頭から浮世離れした民謡メロディが炸裂。その後ザクザクしたリフと共にメロディが転調、異郷臭さを撒き散らす。表情豊かなアコーディオンの音色に酔いしれるしか私達には出来ないほど、強烈無比なエピック・ヴァイキング曲だ。中世の泥臭さが泥声に表現されているのも良い。
6. 1065: Aika
7. Suden Uni



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Far Far North

EINHERJER the mini album in 1997 Release
★★★★★★★★★★...(神盤)

ノルウェーのヴァイキングメタル、エインヘリアの1997年に発表されたミニ・アルバム。

本作は1995年にリリースされたEP「Leve Vikinganden」に収録されていた2曲のリ・レコーディングを含めた中に、新曲の「Far Far North」を加えたものである。
本作はミニ・アルバムともいえども驚異的な完成度を誇るヴァイキングメタルの名盤である。収録された三曲のうち#1は歴史的な名曲、続く#2、#3もそれに匹敵する名曲である。ノルウェーから登場したヴァイキングメタルの中でエインヘリアの存在は伝説化している。なぜなら彼らの作り上げたヴァイキングメタルはまさに"真性"と呼べたからだ。そのサウンドは伝統的で古ぶるしさを漂わせ、ブラックの影響は薄い。重みがあり、印象的な歴史の如く記憶に残る。彼らがヴァルハラに旅立ったことを残念に思う。しかしいつかは皆そうなるのだ。

しかし、このアルバムのレア度は異常である。どこでもプレミア価格が付けられており、入手が困難を極める。メタルシーンはこういったアルバムをもっと普及させるべきなのだ。


1. Far Far North
歴史的名曲。戦士の故国スカンディナビアのヴァイキングの末裔達が紡ぐ壮絶なる叙事詩。7分の中に孤高のドラマ性、戦士のロマンティシズム、鬨の声を挙げる狂戦士さながらの勇敢さを網羅。紛いの一切排除された真性ヴァイキングメタルは、朗々としながらも戦意を極限まで鼓舞する。無論、曲本来の攻撃性は低いが、静寂の中に表現された独創性は唯一無二である。
2. Naar Hammeren Heves
ヒロイックファンタジー映画の金字塔「コナン・ザ・グレート」に起用された作曲家ベイジル・ポールデュリスによる同名サウンドトラックからの引用を含む名曲。飢えた野蛮人さながらに疾走する様は凄絶である。雄大なメロディの応酬による高揚感は興奮必至。要は剣と魔法世界がヴァイキングメタルを借りて忠実に表現されているということである。
3. Naar Aftensolen Rinner
アコースティックパートから盛り上がる。神秘的なキーボードの音色を伴う疾走パートは勇敢極まりない。更に言えば、壮大なクワイアの齎すヒロイズムは感動的ですらある。そこに絡む土着性を醸したアコースティカルな旋律、また威厳すら漂うリードのトラッドメロディも素晴らしいとしか言いようのない。上記二曲と同様、名曲に値するエピックである。



Review by Cosman Bradley
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...En Their Medh Riki Fara..

Falkenbach the 1st album in 1996 Release
★★★★★★★★☆☆...(異教徒)

ハラルド美髪王にノルゥエーを追われたヴァイキング達が住まったと伝えられる本場アイスランド出身のヴァイキングメタル、ファールケンバックの1996年に発表された1st。

ドイツとの混合バンドでもあるため、彼らはアイスランド/ドイツ出身といっておいた方が正しい。彼らの真性ヴァイキングメタルは"Blackened Folk/Viking Metal"と称され、ドイツでは相当の支持があるようである。バンドのメインコンポーザーであるVratyas Vakyas(g、vo、key)が全てを手掛け、このファールケンバックというペイガン・バンドもプロジェクトの一つとして始動した。彼は1989年以降本作を発表するまでに七つのデモを制作した。このデモの中には、彼がCrimson Gatesというバンドで制作した二つのデモも含まれている。
こうして舵を取ったペイガン・ヴァイキングメタルバンド、ファールケンバックであるが、Vratyas Vakyasの目指すサウンドにより本作は接近しようとしている。ファールケンバックのサウンドを例えるなら、バルト海の大海原、アイスランドの戦士達の雪原という表現に落ち着くだろう。はっきりしていることは、彼らのヴァイキングメタルサウンドがEINHERJERに連なる真性のものであるということである。本格的な異国の濃密な臭気、幻想的な中世時代の北欧の雰囲気でアルバムは満ちている。これが、真性ペイガンメタルである。本作では、ブラックのサウンドも伝統的で硬派な方向性を示し、ある種の安堵感を抱かせる。ブラックメタルの影響が色濃い本編の作風は、後の彼らのアルバムと対比の対象に挙げられる。これに民族的な旋律を多様なキーボードの音色やアコースティックギターで盛り込んでいくのが彼らの築きあげたサウンドであり、朗々としたクリーンヴォイスが肝となる。大人が聴くに相応しい真摯な音楽とは、まさに彼らのことなのである。

1. Galdralag
ヒロイズムを鼓舞するトレモロリフに乗って突き進む真性ヴァイキングメタル。勇壮な雰囲気の中に潜む漢の哀愁や激情は聴者の胸に訴えるものがある。彼らの掲げる"Blackened Folk/Viking Metal"に通じる見事な名曲である。
2. Heathenpride
鳥の鳴く声が静かに聞こえ、笛の音色を伴った勇壮なクリーンヴォイスがそれを引き裂く。彼らの定番ともいえるスタイルで展開されるエピック・ヴァイキングメタルである。幻想的で神秘的な雰囲気を朧に表現する様は絶妙といえる。後半からは牧歌的な民謡メロディが導入される。
3. Laeknishendr
ブラックメタルの激情とシンフォニックの優美さが上手い具合にブレンドされた名曲。突如としてアコースティックパートに移行する展開は本作でも特筆して劇的なものとして数えられる。またアコースティカルな音色が高潔さとロマン主義をなぞっており魅力を一層そそる。こういった中世音楽的なパートは、今後の彼らの作品でもトレードマークとなっていくものの原型である。
4. Ultima Thule
神話に謳われる伝説のウルティマ・テューレを題材としたエピック。朗々とした民族的要素が神秘的に響く。
5. Asum ok Alfum naer...
6. Winternight
この曲は非常にブラックメタルを意識した曲である。故に民族的な要素は薄い。
7. ...Into The Ardent Awaited Land...
8. The Heralder
イントロのメロディが異教徒極まりない。楽曲のエピカルな内容も合わさり、この曲を盛り上げる。勇壮なリズムや後半のクラシカルなパートも素晴らしい。そしてここに語りとくれば、これは立派な異教徒の叙事詩なのである。ちなみにこの曲と#3は4thアルバムでリ・レコーディングされている。原曲の方も音質を除けば名曲である。


Review by Cosman Bradley
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Gathered Around The Oaken Table

Mithotyn the 3rd album in 1999 Release
★★★★★★★★★☆...(名盤)
"ヴァイキングメタルの王"ミソティンの3rdアルバム。1999年発表。誠に残念ながら、今作を最後に彼らは解散する。

1st、2ndとヴァイキングメタルの金字塔的名盤をリリースしてきた彼らであるが、アルバムを重ねるごとにそのヴァイキングサウンドは洗礼されていった。そして3rdに当たる今作においても完成度、洗礼度は更に飛躍的に向上している。いや、過去最高に安定感のあるアルバムではないだろうか。初期の強烈なアンダーグラウンド臭などもはやほとんど皆無である。マニアでなくとも十分聞ける。それに代表されるように#1の重厚かつメタリックなサウンドからは正統派への傾向も幾分か見られるのである。なんと#11においてはデス声を使わずにクリーンヴォイスで歌い上げている。デス/ブラックから正統派スタイルへとシフトした、とも考えられようが激烈な疾走感は強烈に維持されている。もちろん彼らの代名詞であるケルト音階によるコード進行も大仰に見られる。今作は1stのようになりふり構わずメロディをまき散らすというのではなく、曲構成、ドラマ性を考慮して最も劇的な部分に配置されている、というのがポイントだろう。初期の彼らなら不可能であった洗礼度を極め中世ゲルマン騎士の如き高潔なメロディを紡ぐ#4においては歴史的名曲といっても過言ではない。楽曲全体に整合性があるといえる。また先ほど挙げた#4に代表されるように、土着的な戦士の世界観は元より中世の騎士のような気品のある雰囲気も漂うのには大きな飛躍だといえる。例えるなら、辺境ヴァイキング戦士からノルウェー貴族への成り上がりである(笑)私はヴァイキングメタルの王たるミソティンに思いを巡らす。彼らが極めたギターメロディの哀愁漂う民謡旋律に勇壮な疾走感が加わるスタイルはメロディック・ヴァイキングの基本形となった。今から約1千年も前もの昔、中世英雄時代に偉大な武勇を打ち立てたヴァイキングの英雄達のように、今度は彼らが偉業を成し遂げたのである。ミソティン亡き後も多くのヴァイキングメタルバンドがこのスタイルを継承していく。その代表的な例がエンシフェルムである。このように古い時代の伝統的な精神性、文化は受け継がれていくものだ。願わくば、この自論が私の誇大妄想でないことを祈ろう。



1. Lord of Ironhand
かつて強大な王座に座し独裁と暴政で人々を支配した残虐な王がいた。彼はIronhandと呼ばれ恐れられたという。強力かつ豪傑なリフが民族調メロディを加味され疾走する、最高のオープニング曲だといえるだろう。また、リフに絡む幻想的な笛の音色も、ヴァイキングメタルの教科書のようなものだ。
2. Watchmen of the wild
北欧の陰気な森の洞窟の森に住まうとされるトロルについての曲。
3. In the clash of arms
重量感と勇壮なメロディで魂を高揚させるヴァイキング曲。男臭いコーラスの勇ましさは最高だ。
4. Hearts of stone
後半より奏でられる高潔極まりない北欧民族騎士の旋律がとてつもないスケールと幻想的魅惑をまき散らす歴史的名曲。今勇名を馳せるエンシフェルムもこの高潔なメロディを踏襲していることは明らかだろう。
5. The well of Mimir
ユグドラシルの根元にあると伝えられる二つの泉のうちの一つ、それがミミールの泉である。神でさえ求めるその泉には究極の知恵が宿っているのだ。
6. Chariot of power
7. Nocturnal riders
8. The guardian
守護者とはビフロストを守る番人、神話に歌われるヘイムダールのことである。アコースティックギターの悲哀を帯びた美しい旋律に始まり、メタルパートへと流れてそれを受け継ぐような泣きのギターが紡がれる箇所には酔うこと必死である。重厚なハーモニーが非常にしっとりと聴かせる曲だ。
9. Imprisoned
10. Guided by history
11. The old rover
野太く勇敢な漢の歌声で歌われ、北欧の雪ではなく緑に覆われた雄大な大地を思わせるバラード調の名曲。雄大な歌のメロディラインには胸を打たれる。サビの力強く、スケール感に満ちた熱唱においては感動的ですらある。これが彼らヴァイキングが生き抜いてきた土地なのだろう。
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King of the Distant Forest

Mithotyn the 2nd album in 1998 Release
★★★★★★★★★☆...(名盤)
"ヴァイキングメタルの王"、ミソティンの1998年発表の2nd。

方向性は前作と全く変わらず。今回も勇壮なるヴァイキングの戦士達のエピックをケルトメロディで描き切る。特筆すべきは前作よりも格段に良くなったサウンドが挙げられる。(しかしメジャー級のサウンドと比べれば当然の如く劣る)音の分裂がはっきりとし、各パートが聴き易くなったのが非常にいい。サウンドが改善されたと同時に前作にあったアンダーグラウンド臭も抜けたのだが、コアなファンには少々残念だったかも知れない。私も前作の洗礼されていない不鮮明さは魅力の一部であったと思う。だが素直に音質の向上、演奏力の向上は喜ばしい。疾走感も大幅に増しており、本来のデス/ブラックに近づいている。本作のメロディックな音像からはメロディック・デスと呼ばれるものに値するだろう。しかしもちろん彼らはヴァイキングメタルであり、前作から引き継ぐケルトメロディを各所で大仰に奏でている。特に#2~#4の楽曲は程よい洗礼とケルトメロディが融合された名曲群である。または本作のハイライトといってもいいだろう。全体的に見てもクオリティの高い楽曲が並び、今回もラストにエピローグ的なインストゥルメンタルを設けたのが全体としての完成度を高め、締めくくりとして大きく出ている。その#11も雄大で北欧の大地が想像できる壮大なトラックだ。しかし彼らのアルバムの楽曲はほとんどが同じように聞こえる。まあ好き者には堪らないのだが、これほどバラエティに富まないアルバムも珍しいだろう。最も、一貫性のないアルバムは世界観が散漫という意見に辿りつくことが多いのだが。その点彼らはペイガンという信念を持っており好感が持てる。ケルティックな旋律と荒々しく勇猛果敢な世界観が現すのはヴァイキング達のそれであり、今作もヴァイキングメタル史に残る不朽の名盤である。ちなみに独断と偏見かもしれないが、この2ndアルバムがミソティンのアルバムの中で比較的入手しやすいと思う。私がミソティンのアルバムの中で一番初めに手に入れたのがこのアルバムだった。それまでは何処を探してもミソティンのアルバムが中古でもプレミア値が付いていたので困っていたものだ。(何と中古で5000円超!まあ見方によっては安い)しかしミソティンの3枚のアルバムをすべて手に入れた今となってはいい思い出だ。



1. King of the Distant Forest
強大なる森の王を物語る叙事詩である。激烈な疾走とケルトメロディが鬩ぎ合う圧巻の傑作ヴァイキングメタル。
2. Hail Me
予言によって王になることを定められた強力なる戦士の英雄譚。典型的なミソティン・ナンバーでありこのアルバムを代表する名曲である。「我を崇めよ」というタイトルからするようにサビには厳粛なコーラス、紡がれるツインケルトハーモニーなどの完成度は極めて高いと同時に、魂を高揚させることこの上ない。
3. From the Frozen Plains
4. On Misty Pathways
5. Legacy
6. Trollvisa
7. Under the Banner
8. We March
9. Venegeance
10. Masters of Winderness
11. In a Time of Tales
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In the Sign of the Ravens

Mithotyn the 1st album in 1997 Release
★★★★★★★★★★...(神盤)

伝説的なヴァイキングメタルとしてその名を馳せる戦王、ミソティンの1stアルバム。スウェーデン出身。本作は1997年世に送り出される。

3枚世に残された彼らの遺品の内、最もケルトメロディが凝縮されたのが本作である。強烈なアンダーグランド臭を放ちながらも、その民族的楽曲の勇ましさは群を抜いている。そればかりか、劇的な展開を持つ楽曲が大半を占め、恐るべき完成度を誇っているアルバムだといえる。(しかしあくまでマニア向け、というのを付け加えておこう)サウンドはブラック/デスからの影響は当然として、民族的要素が強い傾向にあるといえる。ボーカルは叫びあげるデススタイルで、全編に漢臭いコーラスを配置している。この土臭いコーラスの高揚感とリピート率は尋常ではない。またアコースティックギターやキーボードも多少使用しており世界観を表現するのにいい味を出している。ブラック/デスメタルとしての残虐性はそれほど高くなく取っつきやすいだろう。残念ながらプロダクションはすこぶる悪く、音が籠っておりB級であるのを切実に感じることになる。しかし彼らには最大の魅力がある。それこそ楽曲の大半の基盤を構成しているケルト・ツインハーモニーの応酬であり、度肝を抜かれること必死である。リードの紡ぐメロディ自体が個々の物語を持っているといっても過言ではない。彼らのツインリードにはそれほどのドラマ性と民俗伝承の力がある。流石のブラインドガーディアンでもここまでは歌って(ギターメロディが)いなかっただろう。旋律では土着性と勇敢さを見境なく醸し出し、一方世界観では中世に傾向し、伝統的な先祖であるヴァイキングの勇士達の伝承、歴史、サーガを歌う精神性がある。これがヴァイキングメタルの最高峰であろう。一般音楽界では失笑を禁じ得ないスタイルであることは確実だが、ここまでヒロイックに大仰にケルト系メロディを導入するとは大胆にも程がある。しかしそのためにこのアルバムは歴史に名を刻むことになったのかも知れない。とにかく本作はこれまで不鮮明だったヴァイキングメタルというジャンルに決定的な打撃を与えたアルバムである。


1. Upon Raging Waves
静かに打ち寄せる波の音に続いて奏でられるハープシコード、そして雄大なるヴァイキングメロディへ。富と戦いと武勇を求め海原へ繰り出す北欧の漢達の叙事詩。まさにヴァイキング叙事詩の幕開けである。歌うかのようなケルティックツインリードが朗々と奏でられる様は土着的で、勇敢な感情が湧き上がってくる。また、中間部で奏でられる劇的なケルティックリードハーモニーはヴァイキング史の集大成である。
2. In the Sign of the Ravens
とてつもない哀愁と戦士特有の哀愁をまき散らすタイトルトラック。朗々としたツインリードに加え、野太い民族調コーラスも大仰なまでに導入されている。コーラスからツインハーモニー、ツインハーモニーからコーラスという流れを幾度も駆使する展開は圧巻。凄まじい名曲である。
3. Shadows of the Past
勇猛果敢なケルティックメロディが雄大な世界を見せる疾走曲。特筆すべきは、ただ疾走するだけではなく規律を持ったツインリードへの展開、コーラスの導入、静のパートを合わせ持っているということである。聴いているとまるで、北欧にある勇士達の国カレワラを思い出す。総じて幻想的だ。
4. Lost in the Mist
中世ファンタジーの世界へとトリップさせる笛の音色が極めて幻想的な曲である。民族的悲哀を湛えたその音色は胸を打つには十分すぎよう。また途中にアコースティカルナパートを導入するなどの技量も見せる。
5. Embraced by Frost
彼らの故郷たる雪と霜に覆われた北の大地に惜しみない称賛を捧げる曲。イントロから既に歌う勇敢なケルトメロディから激烈なリズムを伴って展開していく。後半のスピーディなリフパートへの雪崩れ込みは非常にドラマ性が高い。この曲も節度を知らず、戦士の哀愁を綴った叙事詩的旋律がやむことはない。
6. In the Forest of Moonlight
月明かりの森の中に隠された北欧の勇者の記憶。彼らは剣で終わりなき戦いを繰り広げる。そしてそれは思い出の中にのみ残るのだろう。流れるヴァイキングメロディの連打から、ケルティックリードハーモニーへの展開はエピカル極まりない。ヴァイキングらしい雄大なスケールに満ちた名曲である。ここまで大仰でかつドラマティックであるとスペクタクルという言葉を用いても何ら不思議ではないようにすら思える。アルバムを購入するまでに何十回もネットで視聴した記憶がある。
7. Tills Dagen Gryr
民族的な歌声で方向の快男児が歌う曲。いきなりのクリーンヴォイスなので多少驚く。だがとても勇ましい。
8. Stories Carved in Stone
激烈な勇ましさを放つヴァイキング曲。勇猛果敢なメロディが疾走、朗朗を繰り返す壮絶な曲である。特にツインリードパートでのケルト旋律のヒロイズムと哀愁は#1の神がかり的なメロディに匹敵する。
9. Freezing Storms of Snow
凍てつく凍結の嵐は限りなく厳しい。ブラックからの影響を強く覗かせる荒々しいリズム・リフから民謡調コーラスへの展開は絶品である。
10. Where My Spirit Forever Shall Be
荘厳なパイプオルガンで始まるという衝撃的な曲だ。ヴァイキングメロディを有したリフがアグレッシブに、縦横無尽に打ち鳴らされる。このアルバムはB級だが中毒性はA級だ。
11. Let Thy Ale Swing
中世の港町を想像させる華々しいファンファーレと共に、ヴァイキング達の叙事詩は終わりを告げる。
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From Afar

From Afar
(2009/09/07)
Ensiferum

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★★★★★★★★☆☆...(安定盤) 
ヒロイックヴァイキングの雄エンシフェルムの4thアルバム。2009年発表。これまでアルバムの民謡に貢献を果たしたメイユー・ホンエ(key)が脱退し、Emmi Silvennoinenにチャンジ。また前作から加入したペトリ・リンドロス(vo、g)もNORTERを脱退しこちらに専念するようだ。個人的に最高傑作であった前作から今作もかなりの期待を抱いていた。しかし残念ながら今作は前作を上回るような作品には仕上がらかったのではないだろうか。もちろんこれには前作のインパクトが1stと同様強すぎたというのもある。無論客観的に見れば本作の充実度、完成度はヴァイキングメタル界でも最高をいくものだ。特に近年威力を増すシンフォニックパートの迫力は相当のものであり、楽曲をよりスケール感あるものとしている。さらに今回、これまでのエンシフェルムと変わり、シリアスな楽曲の中にもファニーな楽曲を多く忍ばせているという点も注目に値するだろう。いわば同郷のフィントロールに代表されるような、北欧の民族間での宴、または祭りを思わせる雰囲気の楽曲が増えたということである。もちろんこれは楽曲に幅を持たせたという大きな進歩だが、私のようなシリアスな曲を好むファンには多少聴いていてつらいものがある。私はどうもエンシフェルムにはファニーなヴァイキングメタル曲はあまり合わない気がするのである。例えるならロード・オブ・ザ・リングとカートゥーンアニメのような違いである。陽気すぎる楽曲は崇高な戦士の世界観には相応しくない、というのが私の思うところだがそもそも民謡自体が牧歌的で楽観の要素を含むため、これは当然の成り行きともいえる。もちろんこれはあくまで私の主観的な意見だ。今作はどのヴァイキングメタルファンが聴いても頷ける好盤であることには間違いないのだから。 


1. By the Dividing Stream
2. From Afar
サウンドトラックを思わせる重厚なシンフォニーを伴い勇猛果敢に爆走する必殺のヴァイキングメタル。圧巻のヘヴィネス、ヒロイックなリードギター、高揚感を演出するコーラス、ドラマ性に満ちた展開、疾走感と彼らに求めるすべての要素が詰まっているだろう。
3. Twilight Tavern
4. Heathen Throne
5. Elusive Reaches
6. Stone Cold Metal
7. Smoking Ruins
メディバルな民族楽器のアコースティカルな音色を聴いた瞬間にエンシフェルムだと分かる。重厚かつ英雄的なクアイアで謳い紡ぐのは彼らのお約束である。途中の急激な中世パートの導入など劇的な展開にも妥協はない。
8. Tumman Virran Taa
9. The Longest Journey (Heathen Throne Part II)
10. Vandraren
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ヴィクトリー・ソングス

ヴィクトリー・ソングス
(2007/05/02)
エンシフェルム

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★★★★★★★★★★...(神盤) 
2007年に発表されたフィンランド勇者エンシフェルムの3rdアルバム。今作はマーカス・トイヴォイネン(g)と同じくフロントマンであるヤリ・マエンパ(vo、g)が脱退し、NORTERのペトリ・リンドロス(vo、g)加入初のフルアルバムとなる。(前作のミニアルバムでもペトリはそのポテンシャルの高さを披露している)そして驚くべきなのはそのアルバムの充実度、完成度の高さであり、正直今作はヴァイキングメタルの史上最高傑作ではないだろうか。エピカルに、そしてフォーキーに疾走する勇猛果敢な楽曲群の齎す高揚感足るや否や到底言葉で表せるものではない。収録曲も全曲が名曲といっていいだろう。一切の妥協はない。ドラマ性に満ちた演出、曲展開もあまりに劇的なものである。かつてミソティンの後継者と謳われた彼らであったが、今作を持ってしてそれは過去のものとなり、鋼鉄の剣とメタルによってヴァイキングメタルに新たな金字塔を打ち立てたのだ。


1. Ad Victoriam 
ファンタジー映画の如きスペクタクルなアルバム・インヴィテーション。静かな民謡から戦いに赴く戦士たちの姿が見える。
2. Blood Is the Price of Glory 
#1のイントロから一変して爆発的なヒロイズムを激烈な疾走と共に叩きつける名曲。これほど衝撃的な楽曲への展開はいまだかつて経験したことがない。
3. Deathbringer from the Sky 
メタリックでありながらケルティックな戦士の旋律を鋭くブレイクさせる劇的な名曲。中間部のエピカル極まりない、、扇情力凄まじいギターメロディの重厚な旋律から幻想的な中世民謡パートへの展開は悶絶に値。
4. Ahti 
古代の海の神についての曲であり、マーカスをしてファニーと言わせるも決してシリアスさを失わない名曲。
5. One More Magic Potion 
シングルになった名曲。笛に絡む疾走パートがヴァイキング極まりない。
6. Wanderer
バラード調のゆったりとした名曲。クライマックスのギターソロは私が聴いてきた中でもベスト5に入るヒロイックさである
7. Raised by the Sword 
まるでファンタジー映画のようなオーケストレーションに導かれ疾走する名曲。曲の放つ高潔さはもはや中世ロマンスである。
8. New Dawn 
ペトリの書いた曲。しかしエンシフェルムらしさは失われていない。
9. Victory Song 
本作のラストを締める、ヒロイックヴァイキングに金字塔を打ち立てた名曲。サビでの誇り高い民族戦士たる国家の如き壮大な合唱は歴史的なものであろう。
10. Lady in Black
カヴァーソング。
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