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Nocturnes of Hellfire & Damnat



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2015
Reviews: 77%
Genre: Epic Metal


アメリカのエピック・メタルの帝王、ヴァージン・スティールの2015年発表の13th。


2010年代に入り、欧州のイタリアやギリシャへと拠点を移したエピック・メタル・シーンは、それらの地域で様々な実績を残した。近年のアンダーグラウンド・シーンのエピック・メタル・バンドたちは、徐々に新しいファン層を開拓し、従来の音楽のスタイルを更に進化させていった。また、欧州のエピック・メタル・シーンが一時的に活性化したことによって、80年代から活躍していたバンドたちが、それに強い刺激を受けたというファンたちの憶測は、イタリアのアドラメレクやダーク・クォテラー、アメリカのマニラ・ロードやウォーロードなどの復活を見ても、既に明らかな現実だった。

アメリカのニューヨーク出身のヴァージン・スティールは、エピック・メタルというロック音楽のサブ・ジャンルの中では、極めて重要な存在だった。このバンドは、デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key)という特殊なバックグラウンドを持ったミュージシャンがメイン・ソングライターとなり、これまでのキャリアの中で12枚のアルバムを発表してきた。近年では、第12作『Black Light Bacchanalia』(2010)が最も新しい作品だったが、未だ積極的に創作活動を続けるバンドは、2015年に第13作『Nocturnes of Hellfire & Damnation』を完成させた。

『Nocturnes of Hellfire & Damnation』は、ドイツの「SPV GmbH」から発表され、1981年結成のヴァージン・スティールが未だ健在であることをファンたちにアピールした。本作は、従来のヴァージン・スティールの音楽のスタイルを踏襲した内容だったが、実際にはそこに様々な変化を含んでいた。バンドのファンたちが最初に注目したのは、前作『Black Light Bacchanalia』を経て更に変化したデイヴィッド・ディファイの独特なヴォーカル・スタイルだった。実際のところ、1961年生まれのデイヴィッド・ディファイは、既に全盛期を過ぎたヘヴィメタル・ヴォーカリストの一人であり、ロック音楽のファンたちの間では、様々な意見が飛び交っていた。

この『Nocturnes of Hellfire & Damnation』の楽曲の中では、デイヴィッド・ディファイが従来のシャウトを抑え、囁くようなヴォーカル・スタイルを強調している部分がはっきりと表れていた。バンドのファンたちは、この新しいヴォーカル・スタイルを受け入れることには完全に否定的であり、その現実がそのまま作品の評価に繋がった。詰まるところ、『Nocturnes of Hellfire & Damnation』の殆どの楽曲は、デイヴィッド・ディファイの変化したヴォーカル・スタイルによって、全てが台無しになるというのである。

本作のハイライトは、ギタリストのエドワード・パーシノ(Edward Pursino:g)のテクニックを前面に押し出した"Lucifer's Hammer"や"Persephone"にあるが、これらは従来のエピック・メタルの音楽のスタイルを踏襲した、完成度の高い楽曲だった。また、そういった楽曲の間に挟まれている"Queen of the Dead"と"Black Sun-Black Mass"は、ヴァージン・スティールの80年代の覆面バンド、エクソシスト(EXORCIST)のものだった。これらの楽曲は、エクソシストの唯一の作品である『Nightmare Theatre』(1986)の中からリメイクされ、結果的に『Nocturnes of Hellfire & Damnation』に収録されたのである。この過去の楽曲のリメイクという試みは、純粋な「新曲」を求めるファンたちからは、次第に疑問視されることとなった。

『Nocturnes of Hellfire & Damnation』のハイライトの一つである"Persephone"以降は、単純に楽曲の完成度が落ち、第5作『Life Among the Ruins』(1993)と第6作『The Marriage of Heaven & Hell』(1994)の中間に位置するようなサウンドが強調された。しかし、こういった作風は、特にバンドの初期作品のファンたちからは、大きく批難される結果となった。ヴァージン・スティールが本来のエピックな音楽性を取り戻すのは、後半のインストゥルメンタル"A Damned Apparition"からであり、その後の楽曲は、比較的安定した内容だった。特に"Delirium"や"Hymns to Damnation"は、『The Marriage of Heaven & Hell』にも通じるロマンチックなムードを放ち、最後の"Fallen Angels"では、作品の深い余韻に浸ることができた。

結果的に、ヴァージン・スティールの『Nocturnes of Hellfire & Damnation』は、2015年に発表されたエピック・メタルのアルバムの中では、このジャンルのファンたちから最も大きな批判を浴びた。この背景には、バンドのメンバーたちの高齢化やアルバム・コンセプトの排除に加え、かつてアメリカ東海岸で最高のドラマーと評されたフランク・ギルクリースト(Frank Gilchriest)の脱退なども関わっていた。エピック・メタルという音楽のスタイルから考察すれば、やはりヴァージン・スティールは始祖に違いないが、満を持して発表された『Nocturnes of Hellfire & Damnation』は、従来のファンたちと意見が食い違う点が極めて多かったのである。なお、本作は2枚組のデジパック盤と同時発売され、様々なバンドのカヴァー曲を収録したボーナスCDが付属した。



Disc 1:
1. Lucifer's Hammer
2. Queen of the Dead
3. To Darkness Eternal
4. Black Sun-Black Mass
5. Persephone
6. Devilhead
7. Demolition Queen
8. The Plague and the Fire
9. We Disappear
10. A Damned Apparition
11. Glamour
12. Delirium
13. Hymns to Damnation
14. Fallen Angels

Disc 2:
1. Halloween Theme
2. D.O.A.
3. The Witch In The Forest
4. Black Sabbath [Black Sabbath cover]
5. The Immigrant Song [Led Zeppelin cover]
6. Black Sabbath "Reprise"
7. Riderless Horse (Save Your Breath)
8. The Devil Drives
9. Anger Never Dies
10. Funeral Games
11. The Plot Thickens
12. Haunted Wolfshine
13. West Of Sumer
14. A Greater Burning Of Innocence
15. The Birth Of Beauty


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Black Light Bacchanalia



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2010
Reviews: 88%
Genre: Epic Metal



揺るぎなき王座に鎮座するエピックメタル・シーンの帝王、ヴァージン・スティールの2010年発表の12th。


エピックメタルの始祖の一柱であるアメリカのヴァージンスティールについて、我々はその歴史を追求し続けてきた。絶え間なき尽力と苦労によって、叙事詩的なヘヴィメタルという偏った研究分野の資料はある程度は完成したものの、老いてなお盛んなヴァージンスティールを完全に総評し尽くしたわけではなかった。我々は様々な記憶を振り返る。恰も文明の興亡の歴史を垣間見るかのように。終わりなき探求の過程において我々が下した判断は、ヴァージンスティールこそがエピックメタルの最重要バンドであるという事実であり、ヴァージンスティールを差し置いて真のエピックメタルファンが聴くに値するバンドは存在しないということであった。ヴァージンスティールは今なお、未来へと突き進む知性の進化であるように、ゆっくりとではあるが前進を続けている。
創世記の時代に神に反逆した女性リリスを扱った前作『Visions of Eden』(2006)は、その年のエピックメタル・シーンにおける最大級の成功を収めた。ファンの求める方向性に加え、既存の音楽という分野を超越した叙事詩的な大作『Visions of Eden』は、各方面から芸術の域に達したエピックメタル作品であると絶賛された。それは、バンドの結成からおよそ25年以上経過しようとしているヴァージンスティールが現在も創作意欲に満ち溢れ、確固たる実力を所持していることの証明に他ならなかった。当然の如く次回作への期待は高まったが、リリス・プロジェクトが完結していないのに加え、傑作である『Visions of Eden』の唯一の問題である音像の改善点などが徐々に浮き彫りになっていった。足早にヴァージンスティールの新作はリリスの続編であるとも吹聴されたが、結果的に発表された作品は別の内容を持っていた作品であった。
ここに発表された第12作『Black Light Bacchanalia』は、前作での失敗を考慮し、若かりし頃のアグレッションに満ちた作品となった。デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key、b)が尊敬してやまないレッド・ツェッペリンに最初に見出した音楽性をヒントに原点回帰した本作は、従来のヴァージンスティールの世界観を踏襲しながら、実に充実した攻撃性とドラマ性を宿したエピックメタルの傑作に仕上がった。前作でも密かにプレイしていたジョシュ・ブロック(Josh Block:g)を新たなメンバーに迎た新生ヴァージンスティールは、順風満帆であるばかりか、更なる進化を遂げていることは明白な事実である。
本作ではリリスの続編的な物語も各所に導入されるが、前作や伝説的な「マリッジ三部作」の根底にあったグノーシス主義的な思想に触発され、その二言論が指し示す"善"と"悪"の対極の世界観であるように、キリスト教と古代宗教の因果関係について歌われていく。我々がよく指摘するロバート・E・ハワードの<古き世界>と<新しき世界>やマイケル・ムアコックの<秩序>と<混沌>の対立のように、文明と未開の宿命的な関係性を描くことは、エピックメタルが長らく用いてきた世界観であり、ヴァージンスティールが題材にすべき意味深な内容であった。ヴァージンスティールは緩急に富む劇的でヒロイックなエピックメタルを用い、それらの世界を野蛮にして繊細な描写で描いている。
ノルウェーのハラルド美髪王がキリスト教に改宗したように、古代から続く対立は今なお各地の辺境で続いている。元来古代宗教は力を握っていたのだが、新興勢力であるキリスト教によって弾圧さた歴史を持ち、文明圏の民衆に異教と解釈されて久しい。ここに来て我々は、古代の英雄譚を思い出さなくてはならない。過去に崇拝された英雄が最初から人間であったように、古代宗教も決して最初は異教などではなかったのである。歳月の経過は様々な変化を齎す。潔白な文明人によって、次第に古代の信仰は唾棄すべきものであると考えられていったのである。人類の歴史とは過ちを繰り返した上に成り立っている。
叙事詩を描くことに長けるヴァージンスティールが新たに描き出した古典的な逸話に対し、我々は何を感じ、何を得るであろうか。理解力のある人間であるならば、我々の属する既存の世界がある一種の法則に縛られていることが分かる。饗宴にあやかる野蛮人のようなヴァージンスティールの傑作『Black Light Bacchanalia』は、その知識を押し広げるきっかけでもあるのだ。



1. By The Hammer Of Zeus (And The Wrecking Ball Of Thor)
ゼウス(ギリシア神話)とトール(北欧神話)の槌を掛けた名曲。前作の"Immortal I Stand(The Birth Of Adam)"に連なる構成を持ち、流麗なエピックメタルの美学が光る。サビの強烈なシャウトの放つ攻撃性は、ヴァージンスティールに野蛮さが戻ってきたことを雄弁に物語っている。
2. Pagan Heart
魔女裁判の業火であるように、異教徒の精神が失われていく悲劇を物語る。エピカルなリフを刻みながら、シンフォニックなフレーズが繰り返される。暗く悲壮感に満ち溢れているのは、シリアスな楽曲の題材を考えれば当然の成り行きであろう。
3. The Bread Of Wickedness
リリスに関連する楽曲。スピーディなエピックメタルでかつ印象的な旋律を含みながら、従来のヴァージンスティールよりシンプルにまとまっている。サビの哀愁を纏った飛翔感は素晴らしいし、もう少し練ることができたのならば名曲になっていたかも知れない。厳かなエピックメタルの雰囲気は相変わらず。
4. In A Dream Of Fire
アダムの最初の妻であったリリスとの再会。神秘的なピアノに絡むヴァースラインが印象を強める。速度を増すサビは高揚感に満ち溢れてはいるものの、どこか悲壮感が漂う。恰もそれが創世記の悲劇であるかのように。
5. Nepenthe (I Live Tomorrow)
最愛のものを失った深い悲しみ。最初の人間らも今の我々と同じ感情を持っていたのである。ヴァージンスティールの楽曲中、最高の位置に属するエピック・バラードの名曲であろう。静寂に満ちた雰囲気がサビで壮大なスケール感に包まれる様は一聴の価値あり。
6. The Orpheus Taboo
攻撃性に富んだ大作。前作でのギターやドラムの音が軽いといった批評は、ここで改善された感がする。伸びやかにドライヴするエピック・リフはヴァージンスティールらしい。本作は一部で冗長過ぎるとの酷評を受けているが、この楽曲に関しては後半に劇的な展開を有している。
7. To Crown Them With Halos Parts Ⅰ & Ⅱ
天使のような美旋律を持つ名曲。まるで過去の名曲"Crown Of Glory (Unscarred)"のように幕開ける。劇的なヴァース部分に他ならず、讃美歌調のサビのメロディの持つ神秘性には思わず耳を疑う。ただクワイアを重ねただけの大仰なシンフォニックメタルでは、絶対にこのような深遠極まる旋律は生まれてこない。これで後半の冗長な部分を削っていれば、間違いなく神曲になったであろう。
8. The Black Light Bacchanalia (The Age That Is To Come)
古代ローマのワインの神バックス(Bacchus)を称える酒宴の踊り、それがバッカナリアである。恐らくディファイは神聖な祭典ではなく、一種の饗宴の様を表す引用としてこの言葉を引っ張って来たのであろう。例えるなら、神妙な神々の祭壇で狂気する野蛮人のそのあり様である。黒々としたリフ、不穏な歌い出し、ロマンティックなサビへの劇的な転調といったエピックメタルの基本を押さえている。
9. The Torture's Of The Damned
従来の古代ギリシア・ローマ風の旋律を徐々に盛大に盛り上げていく楽曲のように聞こえるが、実はリリス関連の楽曲。短くも古典劇の音楽であるような、歴史感の漂う壮大な雰囲気が素晴らしく視覚を刺激する。
10. Necropolis (He Answers Them With Death)
ネクロポリスとはギリシア語で"死者の都"。一方、アクロポリス(Acropolis)とは地上の人々──実際にはパルテノン神殿のような高い場所に住む人々──のことを指す。アグレッシブな曲調のスピード・エピックの傑作であり、本作の中でも特筆して完成度が高い。サビ部分でのフランク・ギルクリーストのドラムプレイは非常に強烈。これはフランクが紛れもないドラムの名手であることを証明している。
11. Eternal Regret
神の後悔。神と最初の人間らの生み出した悪しき感情から7つの大罪が生まれたように、狂った歯車はもう戻ることはない。バラード調の神秘的な名曲であり、人間の潜在的な部分を刺激する意味深な旋律を含んでいる。本曲は特に異様な雰囲気を醸し出しており、得体の知れない感情を掻き抱かせる。この神聖な世界観を堪能するために、我々はヴァージンスティールの楽曲を拝聴し続けてきたのだ。これまでも、これからも。


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Visions of Eden: The Lilith Project



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2006
Reviews: 99%
Genre: Epic Metal



アメリカのエピックメタルの始祖、ヴァージン・スティールの2006年発表の11th。


プロローグ...
古く伝統的なヘヴィメタルから派生したエピックメタル(EPIC METAL)として知られる異端の分野の唯一無二の始祖であり、飽くなき創作活動を続ける帝王であるヴァージンスティールは、疑いようなくエピックメタルの頂点の地位に君臨して久しい。デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key)、エドワード・パーシノ(Edward Pursino:g、b)、フランク・ギルクリースト(Frank Gilchriest:d)の才能あふれる三人のマエストロらは、もはや神話的な名作『Invictus』(1998)の発表以降、不動の地位で数多の傑作を世に送り出してきた。
ヴァージンスティールが1981年のデビュー以来、密かに題材にし続けてきた古代ギリシア神話を舞台とした前作、前々作『The House of Atreus(通称:アトレウス二部作)』(1999~2000)は、以前のヴァージンスティールの追求し続けてきた世界観が一気に爆発した名盤であった。恰も古代ギリシアの古典劇をエピックメタルで表現したかのようにも解釈できる"アトレウス二部作"は、ヘヴィメタルという狭い分野を飛び越えて、真の芸術という分野への道を歩み始めていたのである。実際にこれらの作品群は、ドイツのある著名な劇団が舞台での講演を目的に、ディファイ本人に楽曲の製作を依頼したのが始まりであった。寛大なディファイはそれを承諾するばかりか、次なる作品へと至る楽曲をも提供し続けた。劇的なアトレウス作品は何度も劇場で公演され、まさにヴァージンスティールはエピックメタルバンドとして異例の成功を収めたのである。
天武の芸術家肌であるディファイがドイツの劇団に既に何十曲もの楽曲を送りつけたように、第11作目となるヴァージンスティールの新作の発表は、すべてにおいて新しい試みであった。ウィリアム・ブレイクの作品であるような天国と地獄の戦場、そしてギリシア神話世界をも完成させたヴァージンスティールが次に舞台としたのは、それらの神話以前の天地創造の世界──創世記であった。作品の題名には"Lilith" または"Lilith Work"というタイトルが選出された。しかし、才能がありながらも発表の機会に恵まれない悲運の芸術家であるように、我々は初期作品のリイシューである『The Book of Burning』(2002)を聴きながら、『The House of Atreus』から6年待たなければならなかった……


『METAL EPIC』誌より抜粋:

エピックメタルのカルト的な歴史において、バルサゴス(Bal-Sagoth:イギリスのヨークシャー出身)のバイロン・ロバーツが詩人であるのならば、ヴァージンスティール(Virgin Steel:アメリカのニューユーク出身)のデイヴィッド・ディファイは芸術家である。我々はこれまでにミュージシャンを名指しする際に"アーティスト"という言葉を無分別に用いてきたが、それは真の芸術家らに対して甚だ失礼じみた表現の誤りであったことを、ここに告白すべきであろう。流動的な音楽業界においても、天才と凡人の数が必ずしも比例しているわけではない。この事実は、実に不自然な摂理のようにも思えてしまう。
創世記を叙事詩的な作品として描く試みは過去に幾度も繰り返されてきた行為だが、ジョン・ミルトンの『失楽園』以外に偉大な傑作は生まれなかった。中世以降、ルネッサンス期には宗教的な絵画も数多く制作されたが、それらはキリスト教傘下の規律正しい法の延長線上で生み出されたものに過ぎない。キリスト教世界では野蛮な表現は慎まれていたのである。結局のところ、忠実な表現手法でその朧気な世界が現実に現れるということは、極めて少なかったのである。
第11作『Visions of Eden: The Lilith Project (A Barbaric Romantic Movie of the Mind)』を発表したヴァージンスティールが他者と全く異なっている点は、前人未到のエピックメタルを用い、朦朧とした創世記の世界を、恰も現実の如き生々しさで描くという大胆な試みに成功した箇所である。ヴァージンスティールは表現することが明白であり、オブラートに包んだ詩的な表現よりも、野蛮な剣による実力行使を好むバンドだ。これは緩急に富んだ例えに過ぎないが、実際にヴァージンスティールの生み出すエピックメタル作品は、青白く光る鋼の剣のように鋭利である。また、その中にも天使のような優美さがあり、ロマン主義者を陶酔させるような官能的な旋律を有していることは、既に多くのファンが承知の通りである。およそ80分に及ぶ長編の本作においては、壮麗な神話であるかのような、古典劇を超越した美の調べが強調されている。
創世記を題材にして抽象的な作品を描くことは簡単にできるかも知れない。しかし、それらは唾棄すべき行為であり、女性の子宮のように生々しい創世記の光景及びヴァージンスティールに対して頭を垂れるべき所業なのである。真の芸術的表現者、加えてエピックメタルの偉大なる始祖の眼下において、他の創世記を描いたすべての作品群は駄作と見なされる。
神話音楽上の軌跡。ここにヴァージンスティールは全く新しい伝説を作り上げた。原始の陽光に揺らめくような、眩暈のするような肥沃な緑滴る大地の幻影、天上の涙に濡れる頽廃的な灰色の荒野の幻影、濃緑色の密林を押し進む人類の先祖らの雄姿の幻影、そして母親でもある神への最初の反逆が眩い情景となって、本作『Visions of Eden』には描かれている。我々は欺瞞に埋もれた廃墟の中からヴァージンスティールのこの作品を手にとって、誰も知ることのない創世記の秘密を知り及ぶであろう。我々の古い潜在的な本質を駆け廻って、失われた先史のような燦然たる光景を目にするであろう。即ち、エデンの幻影(Visions of Eden)を──

歌詞について:

リリスはアダムの最初の妻であり、神の創造によって、共に地上の塵(土くれ)から誕生した女性だ。ミルトンの『失楽園』でも描かれていなかった真実では、アダムの最初の妻はリリスであった。創世記において、神は最初に男と女を創っていた("Immortal I Stand")。リリスと別れた後、必然的にアダムの後妻となるのがかの有名なイヴ(エヴァ)であり、イヴはアダムの肋骨から神の御業によって生み出された("The Ineffable Name")。『失楽園』でも描かれているように、アダムとイヴは良い夫婦となる。それを快く思わないのがリリスであり、彼女は自分を否定したアダムと神の行為に対して深く悲しみ、怒り、やがて悪魔と交わって邪悪な子孫を大量に産み落としていく("Black Light on Black")。アダムはリリスを取り戻したいと祈ると、神によってリリスの下に3人の天使が遣わされる("Bonedust")。天使は悪魔の子(リリン)を殺すと脅したが、結局リリスがアダムの元に戻ることはなかった("Angel Of Death")。天使によって辱められ、アダムが変装したサマエルによって誘惑されたリリスは("The Hidden God")、完全に堕落し、自らの子供らを殺める妖魔となる("Childslayer")。やがて、果てしない時が流れ、楽園にも夜が訪れる("When Dusk Fell")。そこで女性であるアダムとイヴは、楽園の真の犠牲者が誰なのかを歌った("Visions of Eden")。これがデイヴィッド・ディファイが本作で題材とした物語の概要だ。このリリスの伝説が誕生したのは主に中世であり、その起源は古代シュメール人の漠然とした伝承の中に表れ、或は世界最古の英雄叙事詩『ギルガメシュ叙事詩』に登場する妖魔キスキル・リラであるとも考えられている。ディファイはブックレットの中で、これらの伝承に関しても言及している。本作はショパン、ヴェルディ、ワーグナー等のロマン派の作曲家にも影響を受ける。ジャケットは東ドイツで撮られた。



1. Immortal I Stand(The Birth Of Adam) 
神がアダムを誕生させた奇跡を描く。 劇的なマテリアルを秘めた完璧なるエピックメタルであり、その隙のない構成はエピックメタル史上最も美しい展開を持つ。後のすべてのエピックメタルバンドは、これを基準とするであろう。生命の誕生の神秘であるような、流れるロマンティックな旋律がヒロイズムを鼓舞しながら芸術的な構築感を伴い、最後にサビの美しいフレーズに辿り着く様は感動的。
2. Adorned With The Rising Cobra
原初の濃緑色の、時には灰色の大地を彷徨うりリスの果てしない旅であるかのような、途方もない叙事詩。暗く重い雰囲気がグルーヴ感のあるリフと共に全体を支配する。しかしサビでは一変し、神々しいまでに神妙でオペラティックな歌唱を奏でる。中間部ではめまぐるしい展開を見せ、プログレッシブさも感じさせる。最も恐ろしいことは、オペラ劇場の如く展開する旋律がすべて劇的極まりないということである。これほど濃厚な9分間は滅多にない。
3. The Ineffable Name
リリスは夢のような楽園を去って、神への反逆の道を辿る。恰もそれが自らの意志であるかのように……。バーバリックな雰囲気が印象的である。彼らの楽曲は只聴いているだけで心地よく、言葉で表現しようという気持が失せてくるから困る。これらは耳で聴く物語に等しく、肢体で感じ取れば良い。陳腐な言葉を羅列したばかりではヴァージンスティールの崇高な世界観を表現しきれないし、また汚してしまう恐れもある。本曲もやはり複雑な展開が待ち構えている。特にクライマックスパートでの儚さは素晴らしい。
5. Bonedust
官能的な黒い天使は、災厄の象徴である。重厚なエピックメタルであり、ヘヴィかつグルーヴ感のあるリフが刻まれる。サビではヒロイックなメロディが飛翔する。中間部には語りパートを有し、荘厳な展開へと流れていく。壮大な本編の物語であるように、一つの大河のような劇的な展開には感銘を受ける。
6. Angel Of Death
殺しという行為によって、どす黒い血が楽園に流れる。神々の壮麗な宮殿を彷彿とさせる至高のシンフォニーが奏でられる神曲。最初、物語のような楽曲は静かに幕開ける。この部分のみでも、異常な雰囲気を本曲が醸し出していることは既に明白である。その雰囲気を引き継ぎ、神妙なヴァース部分をディファイが闇に消え入りそうな声で歌うことになる。周囲には何も聞こえず、完全に引き込まれる。その後徐々に盛り上がるのだが、ヴァージンスティール史上稀な緩急に富んだドラマ性とエピカルさを有していると言わざるを得ない。何が言いたいかというと、本曲のサビの劇的さには溜飲が下がるということだ。背後で聖歌隊の如き混声合唱が鳴り響いているのも恐るべきアレンジである。エピローグの盛り上がりに至っては、もはや表現する言葉すらない。
7. God Above God
リリスの悲壮がそうであるように、最初の大洋に流された血は多くの悲しみを生む。憤怒、憎悪、絶望、これらは一体何を生み出すのか。そして天変地異で大空が憤怒に割れるように、反逆者の刃は天上を鮮血で濡らす。ここまでの休息的な意味合いも兼ねて、バラードの挿入は効果的である。しかし忘れてならないのは、ヴァージンスティールはバラードにも定評があるバンドということである。神聖な雰囲気を伴い、大仰に展開する美しいバラードに仕上がっている。
8. The Hidden God
楽園に齎されたおぞましい狂気が、原初の燦然たる情景を汚らわしい色彩で覆い尽くす。神々しいシンフォニーに導かれる神聖な楽曲。そう、神々のシンフォニーという言葉を用いるにはヴァージンスティールの楽曲がこの上ない対象である。叙事詩的にロマンティシズム溢れる旋律を歌い継いでいくディファイの歌声は、非常に繊細である。後半からは疾走パートも登場し、場面展開によるドラマティックな手法の手本を示す。最後のサビパートではバッキングコーラスも加わり、壮大なスケール感を演出する。
9. Childslayer
神の怒りは子をも惨殺する。ロバート・E・ハワードによれば、文明圏の人々は、自らの子供を奴隷として蛮族に売り渡していた。果たして真の野蛮人はどちらであるのか。ファンファーレから幕開ける高潔なスピード・エピック。本編中では特筆して明白な勇壮さを誇る。暗い雰囲気を払拭し、飛翔感に満ちた賛美的な雰囲気が漂うため、これまでと印象は変わる。中間部のロマンティックなシンフォニック・パートでは、神秘的な世界の極地を描く。
10. When Dusk Fell
麗しいイヴの悲しみが、黒く荒んだ灰色の大地と黒檀色に広がる天上に響き渡るように、優美な楽園に死が訪れた。我々は原始の世界の頽廃的な光景を目にするであろう。長らく我々が唯一忘れることがなかった幻影。人間の悲しみの最も潜在的な根源であるように、それらの幻影は永遠に人類の生命の本質で揺らめいているのである。荒廃した雰囲気が漂うアダルティなバラードだが、悲しみに満ちた楽曲だ。それが否応にも深淵に響くことになる。アコースティックな旋律が神の懺悔のように思える……。
11. Visions Of Eden
生命の死、魂の死、我々すべてのものの死。エデンの幻影。本編の物語に幕を下ろす最後の叙事詩。あえて#10のような暗い雰囲気ではなく、光沢のある鮮明な雰囲気を持たせたことは、僅かな希望を表しているからなのであろうか。それとも次回作への布石か。楽曲としては非常に素晴らしく、ロマンティックなムードが存分に漂う。特に最終的なパートにおける神々しいコーラスのリフレインは感動を呼ぶ。この最期を占める旋律は、本作のある箇所にも導入されている、リリス作品のテーマともいえる旋律である。しかし、本曲で歌われている歌詞は、神妙な楽曲からは想像もできないような下卑た内容である。故に人類の皮肉は、場合によっては芸術的な表現の場を必要とすることもある。


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The Book of Burning



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2002
Reviews: 80%
Genre: Epic Metal



アメリカのエピックメタルの始祖、ヴァージン・スティールの2002年発表の企画盤。


「当時のヴァージンスティールと今のヴァージンスティールは別の生き物だ」

 ──デイヴィッド・ディファイ


1981年のアメリカのニューヨークでデイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo)とジャック・スター(Jack Starr)によって結成され、現在ではエピックメタルの第一人者としての揺るぎない地位を築いたヴァージンスティールではあるが、結成当時の活動や音楽性には不鮮明な部分が多かった。それらの暗澹たる領域に光を当てたのが2002年に発表された本作『The Book of Burning』に他ならず、この素晴らしくも意欲的な作品はヴァージンスティールの第一作『Virgin Steele』(1982)、第2作『Guardians of the Flame』(1983)の楽曲をリメイクして一枚のアルバムにまとめ上げている。収録曲は前述した他に新曲、90年代後半にディファイが初期ギタリストのジャック・スターと共作した楽曲を含んでいる。収録曲のサウンドは飽くまでオリジナルを基盤としているが、過去と現在とではヴァージンスティールの表現の手法が全く異なっているため、印象の変わる楽曲もいくつか存在する。何れにせよ、初期ヴァージンスティールの貴重な楽曲が現代の技術でリメイクされ、音質の向上と後に誕生した「Barbaric and Romantic(バーバリックかつロマンティク)」な味付けが成されたのであれば、ファンが見す見す本作を逃す手はない。

Sacred

本作『The Book of Burning』には新しく録音はしたものの、意図的に初期ヴァージンスティールの雰囲気が残されており、現在のヴァージンスティールの音楽性と詳細に比較することができる。現在のヴァージンスティールは文字通り完全なるエピックメタル・バンドだが、初期のヴァージンスティールにはアメリカのニューヨークに漂う陰鬱なロックの雰囲気や、軽快なハードロック寄りの音楽性があった。ディファイの持ち込んだエピカルな要素によってそれらは薄れはしたものの、本作『The Book of Burning』では過去の臭気が存分に生きている。今回、初期の楽曲を完全に新しいものとして生まれ変わらせることも可能であったはずのヴァージンスティールだが、敢えて元曲の雰囲気を残したことはある意味では成功であろう。およそ70分に及ぶ内容の『The Book of Burning』で聴けるヴァージンスティールのサウンドは大仰かつドラマティックではあるが、そこに存在しているのは間違いなく第一作『Virgin Steele』や第2作『Guardians of the Flame』の頃のヴァージンスティールなのだ。
本作に対し、現在のヴァージンスティールのファンは何かしらの違和感を覚えるはずである。しかし、その感覚は『The Book of Burning』の正しい解釈だ。なぜなら、過去と現在のヴァージンスティールは異なる方向性に辿り着いているからである。例えば、ディファイのヴァージンスティールとジャックのバーニング・スターのように...



1. Conjuration of the Watcher
2. Don't Say Goodbye (Tonight) (re-recorded version)
3. Rain of Fire
4. Annihilation
5. Hellfire Woman
6. Children of the Storm (re-recorded version)
7. The Chosen Ones
8. The Succubus
9. Minuet in G Minor (re-recorded version)
10. The Redeemer (re-recorded version)
11. I Am the One (re-recorded version)
12. Hot and Wild
13. Birth Through Fire (re-recorded version)
14. Guardians of the Flame (re-recorded version)
15. The Final Days
16. A Cry in the Night (re-recorded acoustic version)


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Hymns to Victory



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2002
Reviews: 92%
Genre: Epic Metal



アメリカのNY出身、エピックメタル・シーンにて不動の地位を誇るヴァージン・スティールの2002年発表のベスト。


「エピックメタル史上最高のグレイテスト・ヒッツ」

 ──『METAL EPIC』誌


長年エピックメタルを創造・発展させてきた唯一無二の始祖であるヴァージンスティールのベスト盤が発表されたことは、ファンとしても嬉しい限りであると同時に、ヴァージンスティールというバンドが如何に海外のエピックメタル・ファンの間で熱烈な支持を得ているのかが分かる(しかし残念なことに、この分野以外での正しい評価は得られていない)。本作の最良の点は、企画盤としての楽曲の寄せ集めという手法を演じてはおらず、投票で厳選してファンの声が重視され、デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key)自らが決断を下したということだ。そのため内容がずば抜けて突出したものとなり、ほぼグレイテスト・ヒッツ的な作品となっている。収録されたのは第3作『Noble Savage』(1986)以降の楽曲から第10作『The House of Atreus, Act II』(2000)までの楽曲に限られる。名盤として名高い第7作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. Ⅱ』(1995)からは3曲が収録されている。ディファイは「初期のヴァージンスティールと現在のヴァージンスティールは別物だ」という考えを示しており、そのため初期の楽曲の収録が見送られた可能性もあり得るが、真相はほぼ同じ時期に発表された『Book of Burning』(2002)にある。この企画盤では1stと2ndの楽曲がリメイクされているため、それらの楽曲を本作に収録する必要性はなかったということだ。
本作はヴァージンスティールというバンドがいかにエピカルで徹底したヒロイズムとドラマティシズムを追求したバンドであるか、という事実が痛烈に感じさせられる構成であり、#1~#9までの凄絶な展開は雪崩が起きたかのような衝撃を有する。また本作は過去の楽曲に対しリマスターあるいはリミックスが施されており、音質が格段に高上している。その点も相俟って、やはり前半の怒号の展開が眩しい。『Hymns to Victory』はヴァージンスティールの劇的極まりないエピックメタルの名曲が一冊の豪勢な写本に閉じられた、とでもいうべきかもしれない。本作の内容はすべてのエピックメタル・ファンを満足させる魅力を備えている。
#1の幕開けは高潔、#2の古代ギリシア調のシンガロングパートで高揚感は最高潮に達するが、次に待ち構えているのは名曲#3のサビの神々しいまでの讃美歌的裏声である。そして感動的な#4の劇的な展開とヒロイズムが涙を誘い、またもや蛮性極まる#5で高揚感の爆発を体感する。#6は北欧神話を歌った神秘的なバラードだ。再び魅惑的な#7のホーンが物語へと誘い、ヴァージンスティールの代表曲#8で文明の興亡を垣間見る。#9はマリッジの旋律が過去を呼び戻す。#11は言うまでもなく初期の大傑作。そしてラストである大団円#13は恰も当然のように「Emalaith」が来る。ベスト盤といえども、ここまで劇的な演出が果たしてあるだろうか。我々はこれ以上のエピックメタルのベストアルバムがあるのか疑問なほどだ。現在世に出回っているベストアルバムは大抵がうんざりする粗悪品ばかりだ。そして我々はそれを軽い気持ちで手に取っている。ヴァージンスティールの歴史で初となる記念すべきベスト盤がそのような失敗をしなかったことは、一重にディファイの努力に尽きる。
ただ本作の残念な点を挙げると、#10が初期スタイルの軽快なロックンロール調であるため、雰囲気をないがしろにしてしまうのと、正直微妙な完成度なバラ―ド#12が唐突に導入されているということだ。この二曲を「Sword of the Gods」や「Blood & Gasoline」(名曲中の名曲だが本作には未収録)等の名曲に変えれば本作は更に良くなったのではないだろうか。しかし考えて見れば、これ以上本作『Hymns to Victory』が優れたベスト盤になってしまえば誰も他のヴァージンスティールの作品を買わなくなる。



1. Flames of Thy Power (From Blood They Rise) [Remastered]
第10作『The House of Atreus Act II』(2000)から収録。憂いを帯びた高潔なメロディが冒頭に相応しい。
2. Through the Ring of Fire [Remastered]
第9作『The House of Atreus Act I』(1999)から収録。中間部からのスペクタクルな展開が余りにも劇的なドラマを演出。ある種これはオペラである。
3. Invictus [Remastered]
第8作『Invictus』(2000)から収録。彼らの不屈の精神を反映した名曲。古典的旋律に加え、ディファイの裏声が見事。
4. Crown of Glory (Unscarred) [in Fury Mix]
第7作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』(1995)から収録。冒頭の部分が少し長くなっている。サビの圧巻のヒロイズムと後半の神々しい展開は相変わらず。
5. Kingdom of the Fearless (The Destruction of Troy) [Remastered]
第9作『The House of Atreus Act I』(1999)から収録。迫真性に満ちた急展開を見せる劇的な疾走曲。後半エドワードのソロパートがあまりにも大仰である。
6. Spirit of Steele [New Acoustic Version]
第3作『Noble Savage』再発時に収録されたバラード。一説にはマノウォーの名曲「Heart of Steel」に対抗したとも囁かれるが、この曲の感動的なアプローチからすればそんなことはどうでもいい。
7. Symphony of Steele [Battle Mix]
第7作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』(1995)から収録。冒頭部分に語りが追加。爆発的な疾走感は最高。
8. Burning of Rome (Cry for Pompeii) [Remastered]
第4作『Age of Consent』(1988)から収録。ローマの悲劇を物語るヴァージンスティーの代表曲。キーボードを駆使した重厚で古典的なドラマティックなイントロ部分と、悲しみを代弁するかのようなサビのシャウトが魅力。
9. I Will Come for You [Remastered]
第6作『The Marriage of Heaven and Hell Part I』(1994)から収録。後半にマリッジのテーマメロディが導入され盛り上がる名曲。
10. Saturday Tonight
新曲。ある意味ヴァージンスティールはこういったロックンロール調の楽曲も作れるということであろう。
11. Noble Savage [Long Lost Early Mix]
第3作『Noble Savage』(1986)から収録。タイトルトラックの別バージョン。若干キーボードのエピカルな旋律が小さくなっている印象を受ける。
12. Mists of Avalon
新曲。アヴァロンとは、アーサー王伝説に登場する浄土である。楽曲はアコースティック主体。
13. Emalaith [Remastered]
第7作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』(1995)から収録。ヴァージンスティール最高の名曲にして、エピックメタル界屈指の歴史的傑作。もはや語るまでもないだろう。


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House of Atreus Act II



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2000
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal



エピックメタル・シーンの頂点に君臨する帝王、ヴァージン・スティールの2000年発表の10th。

古代ギリシャの劇作家アイスキュロスのオレステイア(The Oresteia)の3部作のうち、『供養する女たち』 、『慈みの女神たち』を題材とした作品。ストーリー・アルバムとしてリリースされた前作「The House of Atreus, Act I」の内容を受け継ぎ、オペラとして制作された「アトレウス2部作」の完結編が本編である。メンバーは前作と同じくデイヴィッド・ディファイ(David "DIONYSUS" Defeis:vo、key)、エドワード・パッシーノ(Edward "VAN DORIAN" Pursino:g、b)、フランク・ギルクリースト(Frank(The Kraman)Gilchriest:d)による3人。本作はヴァージンスティールのオリジナル・アルバム初となる2枚組の作品であり、全アルバム収録時間は約90分にも及ぶという、エピックメタル史上類を見ない一大大作である。
内容もそれに相応しい、徹底した味付けが成された「Barbaric and Romantic」なメタルオペラ作品となっている。前作は10人になる登場人物をディファイが一人で演じきるという凄技を見せたが、本作では7人の登場人物をディファイに加え2編からなる聖歌隊が歌い紡ぐ。まさに本作は"歌劇"である。ディファイの表現力の向上は記すべくもなく、サビでの盛り上げ方が更に劇的に変容している。まさにエピック・クアイアの効果的な導入の勝利だろう。
アルバムはギリシア神話の神々しさを伴えた名曲#1で神妙に幕を開ける。冒頭から、先述したコーラスの扇情力が光っている。それは繋ぎながら印象的な#2にも代表され、まるで神話の世界の官能的な美声が現代に蘇ったかのようだ。ここに、ヴァージンスティールのトロイアンメタル(古代ギリシアに回帰したエピックメタル)の意味がある。中世ルネッサンスは文芸復興として参考とする時代を模索する中で、最期に古代ギリシアの時代に辿り着いている。西洋人が戻りたいと終ぞ願ったのは古代ギリシアの世界だったということだ。奇妙なことに、アメリカのバンドである彼らはギリシア神話を取り上げている。芸術文化の回帰に、人種は関係ないということではないだろうか。彼らは、中世の人々と同じ思想でこのテーマを選択したのだ。そしてその壮麗な古代ギリシアの世界で、ディファイはオレステスの悲劇を描き切った。#22「Fantasy and Fugue in D Minor (The Death of Orestes) 」に表されているように、オレステスは自殺により死を迎える。威厳を誇ったトロイの街は叙事詩的な戦争により崩壊する。美しい世界が滅び去った時、私達が抱くのは真の絶望である。そして古代ギリシアの世界は、中世の人々が最も美しいと称えたものだった。これは古典に現代精神の悲劇を代弁させるディファイの皮肉のうち、最高のものである。最後#23「Resurrection Day (The Finale) 」に登場するマリッジのメロディが輪廻転生、つまりは悲劇を繰り返す人類を示唆しているのだ。しかし幸い、その曲は明るい。



Disk:1
1. Wings of Vengeance
物語に沿ったエピカルな展開と、憂いを帯びた儚い旋律が交錯する疾走曲。サビのコーラスと裏声は素晴らしい。興味深いのは、オレステスへ復讐を命じたのは新しき神々オリンポスに属するアポロだということだ。
2. Hymn to the Gods of Night
3. Fire of Ecstasy
ディファイのプロジェクトEXORCISTの曲、"Call for the Exorcist"のリメイクバージョンだが、アルバムの雰囲気に馴染んでいるから不思議だ。
4. Oracle of Apollo
5. Voice as Weapon
6. Moira
7. Nemiesis [Instrumental]
8. Wine of Violence
9. Token of My Hatred
本作で最大の名曲ともいうべき傑出した楽曲。悲劇の中にも彼ら独特の力強さが表現されており、特にサビのフランクのスピーディなツーバスを伴って歌い上げる「Hear me cry, the King of Eternity to the End~」のフレーズには痺れる。唯一無二のヒロイズムといってもいい。終盤には前作の名曲「Kingdom of the Fearless [The Destruction of Troy] 」の野蛮なリフも再登場し、大仰なドラマ性を極める。
10. Summoning the Powers
ギリシア調のホーンセクションが印象的な大作。ダークな雰囲気で重厚なリフを織り交ぜながら、時折アンビエントな歌声も入る。

Disk:2
11. Flamies of Thy Power (From Blood They Rise)
冒頭を飾るに相応しい強力なエピックメタル。バーバリックな疾走感とエピカルなリフが印象的だが、やはり高潔な哀愁を漂わせる全体のメロディが引き締まる。
12. Arms of Mercury
13. By the Gods
14. Areopagos [Instrumental]
15. Judgement of the Son
16. Hammer the Winds
17. Guilt or Innocence [Instrumental]
18. Fields of Aphodel
19. When the Legends Die
20. Anesmone (Withered Hopes... Forsaken)
21. Waters of Acheron [Instrumental]
22. Fantasy and Fugue in D Minor (The Death of Orestes) [Instrumental]
23. Resurrection Day (The Finale)
これまでの重く悲劇的なムードを払拭し、黒雲に覆われた天上の隙間から神の微光が差し込むような、「アトレウス二部作」に終止符を打つ楽曲。物語では、古き神々と新しき神々が和解をする。しかし私の個人的な意見としては、果たしてそんなことがあり得るのだろうか。


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The House of Atreus Act I



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1999
Reviews: 90%
Genre: Epic Metal



エピックメタルの始祖、ヴァージン・スティールの1999年発表の通算9枚目となるアルバム。

古代ギリシャの劇作家アイスキュロスのオレステイア(The Oresteia)の3部作のうち、『アガメムノーン』 を題材とした作品。ヘレニック・メタルの代表的な名作である。制作メンバーはデイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key)エドワード・パッシーノ(Edward Pursino:g、b)フランク・ギルクリースト(Frank(The Kraman)Gilchriest:d)による3人。ここにきてようやくヴァージンスティールのメンバーが固まったという感じがする。最もディファイさえいれば、ヴァージンスティールは継続していくことだろう。かつてのメガデスのデイブ・ムステインやグレイブ・ディガーのクリス・ボルテンダール、ガンマ・レイのカイ・ハンセンのようにである。ディファイは名実共に、エピックメタル界の偉大なマエストロとなって久しい。
本作は前作と同じくストーリー・アルバムである。本作のコンセプトは、神話として語り継がれるトロイア戦争とその後の世界を舞台にした、呪われたアトレウス一族の骨肉の争い、そして反逆である。アトレウスはトロイア戦争におけるギリシア連合軍の総大将アガメムノンの父で、アガメムノンはアルゴスの王である。アトレウスは、テュエステスが自分の娘との近親相姦との間にもうけた子、アイギストスに父の復讐のため惨殺される。そしてテュエステスはアルゴスの王座に就く。しかしアガメムノンはスパルタの力を得て、テュエステスを追放し、アルゴスを再び自らのものとする。そしてアイギストスは復讐を誓う。物語は続編である「The House of Atreus, Act II」へと続いていく。なお本編の物語に登場する、予言の力を持つが誰にも信じてもらえないという呪いを持つカサンドラは、輪廻転生を司るエマレイスの生まれ変わりとなっている。このことから、本作の物語が、マリッジ以降展開された輪廻転生のテーマを持っていることが分かる。つまり彼ら古代の人間の生まれ変わりかもしれぬ私達が、彼らと同じ惨劇を件台で繰り返すという示唆も含まれているということである。人間の反逆によって。ディファイは楽曲で"反逆者"を数々取り上げてきたが──皮肉にも、マリッジ三部作が実際に舞台化された時のタイトルもは「反逆者」であった──、そこには言葉以上の意味が込められていることは明白である。脆弱な人間の神への反逆、神でさえ争うという現実、我々にとって確かなものとは何か。このアルバムは悲劇的で無残な物語を叙述しているが、果たしてそれは架空の世界の出来事に過ぎないのだろうか、とディファイは私達に投げかけているのだ。
内容的にも音楽的にも、彼らがこれまでにも多くの楽曲で取り上げてきた、古代ギリシア神話の世界観が一気に爆発したという印象を受ける。メインソングライターでもあるディファイは、こうした古代の神話伝承や歴史等──中でも先述したギリシア/ローマ圏、聖書に表される創世記──から影響を受けていることは顕著だが、私のように古代の世界そのものを追求することを好む、というわけではないようだ。彼はこれらの古代叙事詩を現代的表現の代用として用いているのであり、彼らのやっていることと"ファンタジー"は無縁であるという。つまりはディファイは空想的な人間ではなく、ヒューマニズムを重視する人情深い表現者だということだ。ここに彼らの楽曲が持つ厳かさや神話的リアリティの根源があるのではないだろうか。ディファイのように確かな真実を持って、現実を強く生きる姿は余りにも眩しい。ヴァージンスティールはその証明になのだ。なぜ彼らのような洞察的で知的で芸術的な希少バンドが、本国で支持を得ないのかが疑問である。真実とは常に隠されている。私はヴァージンスティールとの出会いが人生で最高の出会いだったとすら思える。
本作では、古典音楽から影響を受けたシンフォニックな音像を多用し、伝統的なエピックリフで攻め入る作風は絶対的な存在感を放っている。アルバムの場面転換に導入された小曲も、ただの繋ぎではない魅惑的な旋律を所有している。まるで今作は歌劇のようだ。ディファイの家系が演劇一家だということも頷ける。劇的な静と動の転調を駆使し叙事詩を紡いでいくその手法は、エピックメタルの真髄であるとともに、大きな見本となるだろう。徹底した雰囲気の重視と繊細な描写──登場人物の感情の起立や古代の風景の描写である──さえも逃してはいない。恐らくこのアルバムは、ヴァージンスティールの中で最も起承転結が上手くまとまっている作品だろう。加えて、伝統的なスペクタクル映画のスケール感を持ち合わせている。#20~#23までのエンドロールを想起させる感動的な流れなどはまさにそうだ。本作での古典的な手法は、CGを駆使していない時代の歴史大作映画──「ローマ帝国の滅亡」や「スパルタカス」等の名作たち──に連なる人的な苦労と生々しさを描き出しているのだ。一貫した緊張感と迫真性がもたらす興奮は、ヴァージンスティール──またはエピックメタル──ならではである。本当にこのアルバムは、全体を通した一つの作品としての完成度が高い。お気に入りの映画のDVDのように、何度も本作をリピートしてしまうのは必然的である。私たちエピックメタルファンが求めているのは、このような雄大でシリアスで芸術的で文学的な作品なのだ。ヴァージンスティールのエピックメタル作品は、間違いということがない。



1. Kingdom of the Fearless [The Destruction of Troy]
シンフォニックなイントロから突如激烈な疾走を開始する興奮必至の一大エピックチューン。ヒロイックな疾走感に乗り繰り出される野蛮なフレーズ、そして高潔さをも湛えた鋭いサビのメロディが胸を焼く。更に中間部から始まるロマンティシズムを極めた壮絶なギターソロ、静寂パートの導入、ラストの勇敢なアウトローと、まさにヴァージンスティールの全てを結集したというべき劇的極まりない名曲だ。
2. Blaze of Victory (The Watchman's Song)
エピカルな語りを交えた小曲。徐々に盛り上がっていきバーバリック&ロマンティックな展開が堪能できる。
3. Through the Ring of Fire
ヘヴィなリフの行進を多用したエピックソング。サビの吐き捨てるようなエピカルウェスパーは見事だ。しかしこの曲の最大のハイライトは後半から開始され、流れるような転調を幾重にも交え、やがては壮大なギリシアンシンガロングパートへと移行していく。クライマックスでのそのシンガロングパートには、古代ギリシアの悲劇的で歴史的な重厚な場面が思い浮かぶ。まるで映画のようだ(これはニュー・シネマスティックな意味合いではない)。
4. Prelude in a Minor (The Voyage Home)
短い場面転換のインストゥルメンタル。
5. Death Darkly Closed Their Eyes (The Messenger's Song)
不穏な小曲。
6. In Triumph or Tragedy
このアルバムのテーマ・メロディともいえる勇壮極まりない大仰な古代的シンフォニー。この壮大な旋律は#20で再び登場することになる。
7. Return of the King
8. Flames of the Black Star [The Arrows of Herakles]
6分に及ぶミドルテンポ主体の楽曲。2分辺りから突如として始まるバーバリックなパートは秀逸。更にその後神秘的なメロディへと流れていき、傑出したエドワードのソロが絡む。エドワードのヒロイックな名プレイとディフェイのシャウトの掛け合いは最高だ。
9. Narcissus
古代ギリシア調のファンファーレが重苦しくなり響くインストゥルメンタル。短いながらも物語が確かに進んでいることを実感させる。
10. And Hecate Smiled
高潔さと野蛮さを極めたエピックナンバー。ピアノに乗るディファイの民族調の歌声があまりにも素晴らしい。劇的にメタリックなギターが絡んでくる展開などには心底度肝を抜かれる。そしてその後の厳粛なソロパートがまた素晴らしいこと……。まるでギリシアの戦いの原野が蘇ったかのようだ。
11. Song of Prophecy (Piano Solo)
神秘的なピアノによるソロ。ピアノの旋律だけでも物語を聴いているかのようだ。この表現力の繊細さには脱帽である。
12. Child of Desolations
#11の悲劇的な雰囲気を引き継ぎ始まるバラード。ディファイの歌声は地に着いたような重さを宿している。だからこそサビの高音に耳が惹きつけられるのだろう。しかしなんてエピカルな楽曲なのだろうか。最後には「Crown Of Glory (Unscarred)」冒頭の神秘的で宿命的な旋律が奏でられ、#13へと続く……
13. G Minior Invention ... [Descent into Death's Twilight Kingdom]
前曲とはがらりと雰囲気が変わる、というよりも更に物語の核心へ迫ってきたという印象を受ける。マリッジの頃の旋律を大胆にアレンジした神聖なインストゥルメンタル曲である。私には「エマレイス」の中間部に登場したメロディの再導入が感動的で仕方がない。
14. Day of Wrath
魅惑的なピアノのアンサンブルと行進曲調のシンフォニーが織りなすオペラのようなインストルメンタル曲。
15. Great Sword of Flame
重厚でシリアスなエピックソング。中間部のソロにもよく表現されているだろうが、前半のザクザクしたリフとは打って変わって重苦しい雰囲気が漂う。後半にはマリッジ・メロディも導入され、迫真性を高めている。
16. Gift of Tantalos
語りによるインスト。
17. Iphigenia in Hades
悲劇的な、しかし儚い美しさも合わせ持つ小曲。ここにきて楽曲は一気に終焉的な色合いを帯び、聴く者に途方もないクライマックスが待ち受けているであろう期待感を大いに募らせる。
18. Fire God
スピーディなリフ・ソング。
19. Garden of Lamentation
短いバラード。 壮絶な#20への見事な布石といえる。
20. Agony and Shame
#6の壮大な旋律で盛大に幕開け、本格的な楽曲としてはアルバムのラストあたる名曲。物語の大団円的な──内容は悲劇的なものであるが──雰囲気を伴い、じわじわと迫真性を持って迫ってくる様は見事としか言いようがない。特に、一度目のサビに至るまでの完璧なプロセスと、そのサビの圧倒的なスケール感にはただただ放心である。まさに本アルバム最大のハイライトといえよう。
21. Gate of Kings
全てが終焉を迎え、栄光の勝利が訪れた場面を想起してしまうが、雄々しいメロディは絶望の中で芽生える強力な希望。コーラスを上手く演出させ、これほど見事なエンドロールがあるだろうか。
22. Via Sacra
感動的であり、そして大団円を強く感じさせる感涙のエピローグ・インストゥルメンタル。#22で十分な完結を物語っているにもかかわらず、更に余韻を残す楽曲を配置してくるところには見事に打ちのめされる。全編の情景が新たに繰り返されるかのようだ。物語の主人公ともいえるエレクトラとオレステスの姉弟の復讐劇は第二部へと続く。


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Invictus



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1998
Reviews: 94%
Genre: Epic Metal



アメリカ出身、"エピックメタルの帝王"ヴァージン・スティールの1998年に発表された8th。

前作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. Ⅱ』(1995)、前々作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. I』(1994)から展開されてきた壮絶なる「Marriage Trilogy」に終止符を打つ作品が、本作『Invictus』である。"屈せざる者"との意味を持つ強靭なアルバムタイトルは、本格的なストーリー・アルバムとして発表された本作の内容に大きく関係してくることになる。制作メンバーにはディフェイ(David Defeis:vo、key)とエドワード(Edward Pursino:g)の偉大なる名コンビが連なり、ドラムには前作でも密かにプレイしていたFrank(The Kraman)Gilchriest(d)、ベースにはRob Demartino(b)を迎えている。プロデューサー、ミキシングはSteve Youngが担当する形となった。

エピック・シーンにおける数多の功績と活躍とによって、欧州での絶対的地位の獲得と、それに伴う叙事詩的音楽の表現の場を得た彼らが満を持して放った8枚目の今作は、歴史的傑作と謳われたマリッジ第一部、及び第二部に勝るとも劣らぬ驚異的な完成度を有する作品となった。全編に跨りボーナストラック無しでおよそ80分にも到達しようかとする本作は、余りにも濃密かつ芸術的な視点を交えた内容の、広大な海洋の深淵のような深みを持つ叙事詩的作品である。故に本作については語るべきことが多くある。

本作を音楽的側面から語るとなると、まず第一に注目すべきは、彼らのアルバム・クレジット中最も攻撃的なギターリフの使用である。前作辺りから顕著になり始めた野蛮──彼らの言葉でいえば「Barbaric」──なリフを全面的に押し出した作風は今作でも当然の如く踏襲され、今回更にヘヴィメタリックなフランク・ギルクリースト(ds)の強烈なツーバスが加わった。また、叙事詩的なフレーズのセンスはより一層洗礼され、凝縮された蛮性と鋭角な固さを早急に宿すようになった。本作のアグレッシブなサウンドは聴いていて心地がいい(もちろん決して"軽薄な"という意味ではない)。

次に注目すべきは、これまで導入されてきた古代ギリシャ/ローマ系のメロディがより大胆に楽曲に添えられているということである。ディファイの謳い回しも急速にエピカルなシャウトを連発するようになり、神秘的な裏声も神々しいまでに崇高な表現力を身につけ始めた。冒頭を飾る名曲#2のサビには神聖極まりない裏声がフューチャーされており、究極の高揚感を誘発する。ヒロイズムを極めた#6には大仰な古代ギリシャ/ローマ系のメロディが大胆に導入され、ラストを飾る大作#16"Veni, Vidi, Vici"はカエサルの歴史的な名言「来た、見た、勝った」がそのままタイトルに冠されている。これらの古代英雄神話世界への傾向こそは、ヴァージンスティールのヒロイズムを形成してきたものである。本作の後に発表される古代ギリシア神話を題材にとった「アトレウス二部作」は、そうした世界観の完成であり、本作での成功から形作られていったのだ。

本編のアルバム全体の長さからも分かるように、楽曲の長さも相当なものであるが、ほぼ全てが静と動の転調、展開の発展といった劇的な手法の賜物である。これらからは、ヴァージンスティールのエピカルなヘヴィメタルに対する強固な姿勢が感じ取れる。中でも信じられないような展開を見せる#3等は鳥肌ものだ。先述した静と動の内容する二面性のように、天国と地獄の対極の世界のように、楽曲はそれらの表現と共通する。

孤高の英雄主義をエピカルかつヒロイックなサウンドで唱え、不屈の精神性を持って我々に最も重要な人間的メッセージを送るヴァージンスティールこそは、真実の探求者といえよう。彼らの描く叙事詩的世界では、音楽はエンターテイメントしてのそれではなく、ここでは音楽が"精神"と"生と死"、そして人間の人生を物語っているのである。荒廃しきった音楽世界において、彼らの存在は珍妙ですらある。そして彼らは決して売れないであろうが、一部の人間に音楽以上のものを提供し続けるであろう。

ここまで展開されてきた「Marriage Trilogy」を総括する本作には、最も重要な思想が隠されている。それは、ディファイが描く生涯のテーマである。タイトルの意味する〈反逆〉とは根本的な人類の精神を象徴しており、本編の物語では、古い人類──正しくは古き神々の子孫としての人間──が新しく侵入してきた神に対しその〈反逆〉を行う様が描かれている。更に、ここで加わってくるのが〈異教徒〉という概念と、〈輪廻転生〉という思想が生み出す精神の永遠性である。ディファイは古代の人間達を異教徒とし、それらは新しく生み出されたものに対する〈反逆〉を常に行う者として描いている。

『The Marriage of Heaven & Hell』は"天国と地獄の和解"をテーマとして、様々な叙事詩を神話時代のタペストリーの如く展開してきた。しかし今作で描かれたのは、人類と神に置き換えられた〈古き世界〉と〈新しき世界〉の対立──これは、かつてハワード(*)が小説の世界で描いたものに似ている──であり、それは現代のペイガンとキリスト教の対立にも置き換えることが出来る。天国と地獄は和解することが出来るが、宗教は永遠に和解することが出来ない。楽曲中に表現された激しい静と動は、単に劇的な楽曲を構成するための手法ではなく、対極にある二つの世界の相違を描くためのものとして真実を物語っているのである。

*アメリカの作家ロバート・E・ハワードは、ヒロイック・ファンタジーの生みの親としても知られる他、生涯に渡り、文明の興亡並びに〈古き世界〉と〈新しき世界〉の対立を根本的なテーマとして小説を執筆し続けた。代表的なものには、『King Kull』シリーズに登場する蛇人間と人類の対立がある。

少々大袈裟なことを述べるが、人類のごく一部の批評家達は、問題提起するのが上手である。特に、日本人は社会問題に対しての疑問点を巧みに見いだす傾向にあった。そういった書物は数え切れない程溢れている。しかし、問題提起をしても至って改善策は提起されない。問題を探し出す部分で終わってしまっているのだ。その点でディファイが本作で提示した不滅の意志は、我々の思考の一歩先を行っている。ディファイはよくヴァージンスティールのストーリーを聞かれた際に、「我々の物語は現代のことなんだ」と発言している。本作のストーリーでは、700年に渡る神との戦いの結果、人間は自由を得る。しかし、ディファイはこう語る「自由を生かすも殺すも我々次第だ」と。



1. Blood of Vengeance
人類は太古の神々の子孫であり、血の復讐(Blood of Vengeance)を遂げるために立ち上がる。馬の嘶きから剣の斬撃、首の飛ぶ音、そして神に対する反逆の叙事詩が幕を開ける。
2. Invictus
アルバムのタイトルトラック。不屈の闘志を燃やすエンディアモンが神に対し屈せざる意志を誇示する。強烈無比なバーバリック性を発散した珠玉のエピックメタルであり、重くスピーディなベースラインはマノウォーにも通じる。サビでは恰も天使を彷彿とさせる優美な裏声が感動を誘う。ヴァース、ブリッジとサビの対比の凄まじさは、歌劇のドラマティックな場面をも彷彿とさせる。なおウィリアム・アーネスト・ヘンリー(William Ernest Henley)のヴィクトリア時代の詩『Invictus』(1875年)がモチーフであるという。
3. Mind, Body, Spirit
精神、肉体、魂。その全てはかつて人類にとって一つのものであったという。前半は勇壮なリフをメインにして進み、後半からは別の曲とも疑いたくなるバラード調に変化する。当時、エピックメタルに慣れていなかった私の耳にはあまりにも衝撃的な曲であった。後半からの劇的な展開は一体何なのだと、何度も考えた。しかしこれがエピックメタルだと認知するまで時間はかからなかった。彼らの楽曲の中で最もドラマティックな楽曲の部類に入ることは必至である。
4. In the Arms of the Death God
物語の合間に挟まれるインストゥルメンタル。ギリシア風の旋律を引用し、次曲へと流れるように繋げる。
5. Through Blood and Fire
人類はエンディアモンの意志に応じ、新しき神から自由を取り戻すために立ち上がる。恰も決起するかのような、攻撃的なリフが印象的な楽曲である。シンフォニックなサビも勇壮さを高らかに歌い上げる。中間部でのギターソロの盛り上がりは本作を主張している。シンプルにまとまったエピックメタルの傑作としてシングルカットされたことも頷けよう。
6. Sword of the Gods
神の剣を天高く掲げ、人類の血の復讐が死の鉄槌の如く振り下ろされる。全編を貫くヒロイックな英雄的メロディが高揚感を最高潮に高める本作屈指の名曲。その鳴り止まぬ勇敢な旋律は、斬られた肢体から噴き出す血潮の如くである。この曲の中間部の古代ギリシア/ローマを想起させるシンフォニーは、次作「アトレウス二部作」にも導入され、重要な役割を果たす。
7. God of Our Sorrows
これまでに、人類が地球に刻み込んできた悪しき行為を悔いる悲劇的な詩。魅惑的なピアノとディファイのつぶやくような声のみの小曲である。しかしこの約1分に凝縮された神秘的な時間はつとに印象深く、感慨深い。メロディは、名曲"Crown of Glory"冒頭の意味深な旋律を彷彿とさせる。
8. Vow of Honour
#7に次ぐ小曲。強大なる神と対峙する際、屈せざる意志と、反逆心のみが人類に残された最後の武器となろう。緊張感の迸る静寂の中、ディフェイの裏声が野蛮にも厳かに響く。本曲は、常に美しさと野蛮さは紙一重であるという事実を物語っている。
9. Defiance
人類にとって最大の遺産は、剣による戦いの記憶である。そしてそれは、これからも変わらないであろう。本曲は、古典的なヘヴィメタルのスタイルを強く感じさせる荒々しい楽曲である。ヘヴィにギャロップするリフにヒロイックなメロディが乗り、恰も戦馬を駆る戦士をかすめる風を思い起こさせる。この雄々しい興奮こそヴァージンスティールの生み出す至高のエピックメタルであろう。
10. Dust from the Burning
野蛮に疾走するエピックメタル。重厚なリフを歯切れよく刻み、その最中に高潔なヒロイズムと緊張感を同居させる。本作の楽曲は非常に完成度が高い。
11. Amaranth
短いインストゥルメンタル。タイトルは不滅の花の名である。
12. Whisper of Death
神との戦い。厳かなる死の囁きは、神とエンディアモン(人類)のどちらに訪れるのであろうか。暗澹たる雰囲気──ヴァージンスティールに絶えず付き纏う、高度な文明が荒廃したかのような雰囲気──を身に纏い、サビで勇壮な転調を演じて聴かせる。9分に及ぶ大作でありながら、時折神秘的なパートも織り交ぜる展開は、恰もこの長さが必然的あるかのような説得力を持って語りかけてくる。
13. Dominion Day
天に至るかのような神々しい旋律が、夢にまで見た人類の神からの独立宣言を宿命の警笛の如く高らかに告げ、全身の浮遊感さえ感じさせる。簡潔に述べれば、この楽曲では人類の王国の建国記念日(Dominion Day)を歌っているということである。私は、この曲に個人的に入れ込んでいる。なぜならその感覚がこの上なく心地いいからだ。クライマックスに至る扇情的な展開は絶品としかいいようがなく、何度聞いても感銘を受ける。ここまで視聴すれば、大方本作がヘヴィメタルによる古典劇──古代ギリシャ/ローマの叙事詩を題材とした演劇──の再現であることが分かる。
14. Shadow of Fear
暗く重い雰囲気が漂う。それ即ちエピックメタルであり、後半の盛り上がりも耳を惹く。
15. Theme: Marriage of Heaven and Hell
マリッジのテーマメロディを短いながらに優雅に奏でる。最後の楽曲への布石としては最高であろう。
16. Veni, Vidi, Vici
我々は来た、我々は見た、そして我々は勝った。遂に人類は神をも征服し、剣によって生き、未来を手にした。最後に、人類は王冠を自らに授け、長き物語──マリッジ三部作──は幕を閉じる。ヴァージンスティールが生み出した史上最高の大作曲である本曲は、人類の勝利における窮極の歓喜を、カエサルの歴史的な名言を用い表現した至高の一大叙事詩である。ラストパートの、感動の域を超えた壮大な展開の中に突如出現する神秘的極まりないローマ的な──栄光のローマ帝国時代を想起させるものである──ピアノの旋律は、恐らく彼らが生み出した窮極の叙事詩的旋律である。最後の大団円ともいうべきパートで、ディフェイがその叙事詩的旋律に歌詞を乗せて歌い上げる場面は、感涙に値する。これはヴァージンスティールがエピックメタルという枠組みを越え、歴史の一部となった瞬間である。エピックメタル史上に残る壮大なフィナーレを通じ、我々は一つの興亡を目にしたのである。


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Marriage of Heaven & Hell Pt. 2



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1995
Reviews: 95%
Genre: Epic Metal



本作は、"エピックメタルの帝王"と称されるヴァージン・スティールの7thアルバムである。特筆すべきは、このジャンルの作品としては異例の国内盤が発売された経歴を持つということである。日本での発売は1996年であるが、世界的なリリースは1995年であり、よく誤解されやすい。本作が国内発売された理由は、これより語る本作の功績に秘められているといっても過言ではない。この作品は、エピックメタルの歴史書の中の最も輝かしい一ページを雄弁に物語っている。

多くのヴァージンスティールのファンは、彼らの長大な歴史の中から、本作を最高傑作に選出してきた。無論、その意見は、私にも共通している。この作品がいかにエピックメタルという分野に貢献したか、その影響力は計り知れないものである。少し昔の話をしよう。彼らは、エピックメタル史上に残る歴史的な前作『The Marriage of Heaven & Hell』の発表によって、エピックメタルという特異なジャンルを欧州全土(特にドイツの反響は異例だった)に認知させた。その光景は、恰も消失した太古の地下納骨所に、何世紀も経て人間の光が再び差し込んだかのようであった。偉業が功を奏し、ヴァージンスティールはこの分野の第一人者、即ち"エピックメタルの帝王"と徐々に畏敬の念を込めて囁かれるようになっていったのである。

しかし、彼らの才能はそれだけには留まらなかった。多くの成功者は栄光の後に歩みを止めてしまうのであるが、このディフェイという芸術家は違ったようだ。より完全なエピックメタル作品である今作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. II』を完成させ、彼のバンド──ヴァージンスティール──は、より堅実な欧州での絶対的な地位と人望を獲得するに至った。前作すらも軽く凌駕する内容を古代ギリシア様式の建造物の如く優雅に宿し、本作は叙事詩的な「Marriage Trilogy」の第二幕を描いていたのである。

彼らが欧州のファンの支持を獲得し実力を世界に示したことで、ここにようやくヴァージンスティールは、エピックメタル・シーンのもう一つの柱である、絶対的な王者マノウォーと双璧を成した訳である。かつて、強大な勢力を誇り、大手レコード会社ですら敬遠したマノウォーを最初に受け入れたのも、また欧州の熱烈なファンに他ならなかった。ヨーロッパのファンは、ピュアでエピカルなヘヴィメタルを熱烈に歓迎するのである。今やエピックメタル・シーンに欠かせない存在となったマノウォーやヴァージンスティールも、彼らを始めに見出したのは欧州の熱狂的なファンであり、その物差しは実に確かなものだったといえるであろう。私達も、物事の一歩先を見る視野を彼らに学ばねばならない。

以下は、本作の内容について詳しく触れていく。制作は、前作の3人のメンバーDavid Defeis(vo、key)、Edward Pursino(g、b)、Joey Ayvazian(ds)に加え、Frank Gilchriestなる人物を数曲パーカッションとしてゲストで迎えている(後に彼はヴァージンスティールの正式なメンバーに迎えられる)。このアルバムは先述したように、ヴァージンスティール史でも類を見ない一大傑作として受け取れる。本作を契機に、フロントマンであるデイビィッド・ディフェイは自らのメタルを「Barbaric and Romantic(野蛮でロマンティック)」と形容していくこととなる。ちなみに余談ではあるが、ヴァージンスティールというバンドは、ジャック・スター(g)が脱退してからはほぼディフェイのソロ・プロジェクトと化している。まさに、デイビィッド・ディフェイという天武の芸術家の才能によってこそ、バンドは起動してるといえよう。「野蛮でロマンディック」という言葉の命名は、彼らの芸術的なエピックメタルを表現するに最も適している表現といわざるを得ない。事実、本作もその雰囲気を余すことなく詰め込んでいるのだから。

前作では、サウンド面で多少音が軽い部分が見受けられたが、今作においては完全にヘヴィメタリックな正統派メタルのサウンドを披露している。ある意味、ここにヴァージンスティールの理想としたエピックメタルが完成した、といっても過言ではない。本作の充実した完成度を聴けば万人がそう感じ取るはずである。なにより、彼らの最大の魅力であり、絶対的な個性がここに発揮されたといえる一つの要素がある。それは「Barbaric and Romantic」の「Barbaric」を担う部分である。以前から彼らのヒロイックな音楽性には特筆すべき魅力があったことは疑いようがなく、かつての名曲にもそのスパイスが効いていた。これまで"The Burning Of Rome"(4th『Age of Consent』収録)、"Blood & Gasoline"(6th『The Marriage of Heaven & Hell』収録)等に連なる名曲群は、聴く者の高揚感を強烈に誘発してきた。その突出したヒロイックなムードがアルバム全編に配置されたのが、本作『The Marriage of Heaven & Hell, Pt. Ⅱ』に他ならないのである。私は長年ヒロイックなエピックメタルを求め続けてきたのであるが、この作品は、ヒロイック/エピック・ヘヴィメタル一つの終着点としても受け取ることができる。ヒロイックの単語の語源は、英雄崇拝を基礎としているのであるが、言葉としての意味は"英雄的"という意味であるという。つまり、ヒロイックなサウンドというのは、勇ましく崇高なサウンドを指している。ヴァージンスティールは常にそういった勇壮で力強いサウンドを誇示してきた。その根底に何があるのが、考えてみる価値は十分にあるであろう。

ディフェイ本人によるコンセプトアルバムの第二部作となる本作には、とてつもなく深いテーマが込められている。前作より更に壮大なスケールを含む詞世界(それがサウンドにも顕著に表れている)は、シリアスであると同時に我々に物語を見せているようにも受け取れる。この第二部では"精神と肉体、天国と地獄の和解"を主に歌っているらしく、その世界観は人間の脳に胎児がへその緒で繋がるという衝撃的なアルバム・アートワークに表現されている。この畏怖すら感じることになりかねないアートワークに対し、私は極めて知的なものを感じる。なぜなら、本当に神秘的な物事を表現しようとしたとき、それは狂気紛いのものになるからである。私の指摘においては、過去の偉大なる西洋芸術家達の功績が真実を語ってくれることであろう。

本作のテーマは、前作の内容よりも、物語の核心に迫っているといえよう。特に、今作から随所に導入され繰り返される重要なフレーズは、我々に何かのキーワードを訴えているように思える。前作の冒頭とラストでお披露目した神々しいマリッジのメインテーマ・メロディに加え、"A Symphony Of Steele"、"Crown Of Glory (Unscarred)"、"Prometheus The Fallen One"、"Emalaith"という究極のエピックメタル楽曲に配される意味深なフレーズ群。このアルバムは、私が思っている以上に奥が深いようだ。中でも"A Symphony Of Steele"に登場する「エンディアモン」、"Emalaith"に登場する「エマレイス」は、次のマリッジ最終作『Invictus』に登場する戦士の名である。マリッジの一連の作品は、大河のように繋がりを持っているのである。そしてその全て理解するのには大変な苦労を有する。

しかし、こういった壮大な歌詞を背景にして、シリアスなエピックメタルが展開されているという点のみ分かってさえいれば、本作はより魅力的な作品となる。別段難しく考得る必要はなく、彼らの想像するヘヴィメタルは音像のみで十分物語感じ取れる力を持っている。それがエピックメタルというものである。最も、ヴァージンティールの楽曲における表現力が著しく突出している部分が大きいことには変わりない。とりあえず「ヴァージンスティールはこれから」という向きは、まずこの作品を押さえておけば、彼らの魅力は十分すぎるほど伝わるはずである。私が言うのであれば、本作をなくしてエピックメタルを語ることはできない。是非この芸術的作品から、エピックメタルの本質を理解してもらえれば幸いである。なお本作は2008年にリマスター再販され、新たに2曲のボーナストラックが追加された。#14"Life Among The Ruins"、#15"I Wake Up Screaming"がそれに値し、どちらも貴重なライブトラックとなっている。



1. A Symphony Of Steele
神に敗北し戦死したエンディアモンの魂を戦場に再び呼び戻す、冒頭の鋼鉄のシンフォニーの再現。勇壮なる警笛を伴った劇的なイントロダクションがあまりにも魅惑的である。あらゆる展開が素晴らしく、バーバリック極まりない疾走に加味されるヒロイズムが聴き手の魂を強烈に高揚させていく。中間部でのロマンティック感溢れるパートから、空間を巡るヒロイック極まりないギターソロが奏でられた時、我々は息のできないほどの興奮に襲われることであろう。
2. Crown Of Glory (Unscarred)
アルバムの開始2曲は、まるで神のごときである。アルバムのつかみに強力な楽曲を配すバンドは数あれど、これほどまでに傑出した楽曲を持ってくるのは史上類を見ない。冒頭での究極的なまでに神秘的なピアノと歌の旋律は、永久に私の中に残るであろう。私にはかけがえのない、重大なメロディである。またサビも強烈であり、ヴァージンスティールが生み出した中で最もヒロイックなサビパートであるといえよう。更に、後半からの展開は驚異的にロマンティックである。ピアノの神秘的な絡みに始まり、そこから妖艶なるギターソロパートのハーモニーへと流れ、神々しいまでの盛り上がりを見せるクライマックスパート、及びそこへ交響曲調のキーボードが加わったサビへの展開に関しては、形容できる言葉すら見当たらない。一体どうしてここまで劇的であり、大仰であり、ヒロイックであり、ロマンティックなのであろうか。この曲を聴いていると、その答えすらどうでもよくなる。
3. From Chaos To Creation
#2に流れるように続く、荘厳な緊張感が漂うインストゥルメンタル。バーバリックでヘヴィメタリックな雰囲気が絶品である。
4. Twilight Of The Gods
リヒャルト・ワグナーも用いた『神々の黄昏』という意味深なタイトル。バーバリックなリフがエピカルにギャロップするヒロイックなエピックメタルである。疾走感の勢いはそのままに、ロマンティシズムとヒロイズムが同居するサビへの流れは完璧とすら思わせる。彼らはバーバリックでナチュラルなヘヴィメタルに、ロマンティックなメロディを加味させることに関しては天才的である。またエドワードのギターソロも大仰なまでにヒロイックなメロディを奏でており、楽曲を盛り上げる。
5. Rising Unchained
#4の荘厳な雰囲気を受け継ぐように続く有り様は至高の物語性を表現しているといえよう。重厚なリフが野蛮に刻まれる各パートは、興奮以外の何物でもない。ディフェイの歌声も、高潔さを醸し出しており、崇高な楽曲に十分マッチしている。クライマックでの盛り上げはやはり大仰で、ナレーションパートから高潔なメロディの導入に至るまで、素晴らしくエピカルである。バーバリズム、ロマンティシズムが紙一重に表現された楽曲である。エピローグにはスパニッシュ的なアコースティカルパートを設け、徹底したドラマを演じる。
6. Transfiguration
ロマンティックなミドルテンポ。ディフェイの歌声に絡むピアノが絶妙である。込み上げてくるようなサビのメロディも印象に残る。
7. Prometheus The Fallen One
オリエンタルかつアンビエントな雰囲気が全編を覆う、次曲"Emalaith"と同じく本作の中核をなす長大なエピックである。 ディフェイのエピカルヴォイス並びに、誘惑的な美旋律が神秘性を極限まで高めた名曲である。拝借的なメロディが登場する中間部の展開に至っては、この曲の重要性、他曲との関連例を雄弁に物語る。静寂する神聖なパートから、#8のサビのメロディを奏でるギターパートへと展開し、その後は#2のクライマックスにおける劇的なメロディのホーン編曲が繰り出される。なお歌詞は、古代ギリシアの劇作家アイスキュロスの『縛られたプロメテウス』がモチーフ。
8. Emalaith
ヴァージンスティール史上最高の傑作にして、エピックメタル史に残る名曲。人類が生み出した最高の名曲の可能性も持つ。壮大なサーガにおけるヒロイン「エマレイス」の名を冠した楽曲であり、約10分の間、リスナーは物語の主人公のような途方もない戦い、幻想的な愛・勇気を通して高揚感の極致、及び興奮を味わうこととなる。「エマレイスは死んだ。もう平和が約束されることは二度とない」という言葉の如く、楽曲の内容は壮絶を極める。大河のような壮大な展開を見せ、ヒロイズムを放つサビのメロディは激しく胸を打つ。まるで物語のヒーローやヒロインを主張するかのような、情熱的なメロディが印象的。またその後の展開では、マリッジのメインテーマ・メロディが幻想絵巻の如く繰り出され、ギター、オーケストレーションとアレンジを変えて導入される様はもはや神々しく、人智を超越した世界観の情景すら聴き手に抱かせる。その中間部は、ディファイの神聖なキーボードとエドワードのロマンティックなギターが妖艶なまでに幾多の転調を経て絡み合う、珠玉の名演。まるで天上の領域を再現したかのような神秘的な楽曲。
9. Strawgirl
神聖なメロディが流れるように、温かみを感じることが出来るバラード。大作曲の後にこういったバラードを持ってくる辺り、実に器用である。しかし、本当にこのアルバムの神秘的な世界観は筆舌に尽くしがたい魅力を持っている。余談ではあるが、正直ここで作品に幕を下ろした方が、後味が良かったように思える。ここまでの一体感が心底素晴らしい故になおさらである。
10. Devil / Angel
荒々しくスピーディな曲。他の曲に比べると単調であるが、この部位ではこのくらいの曲が良いのかもしれない。
11. Unholy Water
聖歌調的コーラスに導かれる神秘的な楽曲である。 歌の神聖なメロディや、バックを担当するキーボードのメロディが幻想的で非常にエピカル。この曲のように、しっとりとロマンティックに聴かせるところもまた、ドラマティックである。
12. Victory Is Mine
サビでの「Victory Is Mine」フレーズが印象的。飛翔する高潔な旋律が心地よく響く。
13. The Marriage Of Heaven And Hell Revisited
アルバムの至る個所に導入されたマリッジ・メインテーマの全編インストゥルメンタル。前作のラストとはアレンジが多少変わっている。壮大な本作に終止符を打つに相応しい、余韻の残るシンフォニーであることに関しては、前作同様である。
14. Life Among The Ruins (Live Version)
ライブバージョン。些かオリジナルより早いように感じる。
15. I Wake Up Screaming (Live Version)
ボーナスのライブ曲。ファンがヴァージンスティールを鼓舞しているのが伺える。


Review by Cosman Bradley
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The Marriage of Heaven & Hell



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1994
Reviews: 91%
Genre: Epic Metal



1994年に発表されたヴァージン・スティールの6th。前作からかなりのハイペースでのリリースとなる。本作は彼らの歴史、そしてエピックメタルの歴史を語る上で欠かすことはできない名盤である。制作メンバーはエピックメタル界の帝王David Defeis(vo、key)、右腕Edward Pursino(g、b)、Joey Ayvazian(ds)の3人から成る。まず初めに記すべきことは、少数のメンバーでも、才能に富むバンドであるならばクリエイティブで芸術的な作品を完成させることが可能であるということである。本作はその事実を雄弁に物語っていといえよう。既にコラム『エピックメタル・ヒストリー:「エピックメタルの帝王」virgin steele』で触れたように、この6枚目のアルバムから、フロントマンであるディビッド・ディフェイの才能は爆発的に発揮されていく。この『The Marriage of Heaven & Hell』、即ち通称「マリッジ作品」には、かつてディビッド・ディフェイが夢見たエピックメタルの理想像が描かれているといっても過言ではない。本作の大仰なロマンティシズムはそれらを如実に物語っているのである。

この作品は、ヴァージンスティールの復活作のみならず、新たなエピックメタルの時代の記念碑的作品となったことは既に疑いようがない。ヨーロッパ全土での絶賛がそうである。それはかつて、地下の人々が望んだ一つの夢に等しい。しかし、この作品が欧州全土に認められることによって、理想郷は現実となったのである。一体誰が予想したことであろう?アメリカの地下世界で産声を上げ、カルト的とまで形容されたエピックメタルが、その世界に認められる日がこようなどとは。これは決して偶然の出来事ではない。彼らの度重なる努力の結果の末に、必然的に起こったことだ。そして本作に秘められた確かな価値を見いだした聴衆も、優れているといわざるを得ないのである。結果的に、世界に認められた形となった彼らとエピックメタルであるが、その後もディフェイの才能は留まることはなく、数多の傑作を世に送り出していったことを、あえて付け加えておくとしよう──

では、本作に表現されたサウンドとは、具体的にいかなるものなのであろうか。間違いなく、これこそがエピックメタルと形容して万人が頷くと断言できるサウンドである。次作以降、バーバリックな作風を完成させる彼らではあるが、本作は、ロマンティックな部分を極めた傑作といえるであろう。本作の楽曲に見られるシリアスさや、大仰なドラマティシズムやロマンティシズムは、エピックメタルの最も基本的なスタイルを如実に物語っている。エピックメタルは常に表現力を惜しむことがないのである。同時に、既存的な概念から離れた、神秘的な内容をも所有している作品であるともいえよう。本作のコンセプトは"人種問題、宗教問題、戦争"。この他に、ディフェイの個人的な葛藤も含まれている。

より現実的なテーマを扱っている──しかし本作を評価する際に、叙事詩的や神話的といった言語は欠かすことが出来ないのも、また事実である──のに対し、この壮大なスケールは驚異的なものである。このマリッジ作品は、元々サーガ的手法で構想されていた大作である。全三部作で完結する予定であり、実は本作と次作はセットとして発表されるはずであった。当然、アルバムの中核を成すコンセプトやテーマメロディ等は同質のものである。ディフェイは作品中の重要なメロディを、楽曲中のキーポイントに配置するという構成を、映画音楽またはオペラで頻繁に用いられている要素からヒントを見出した。故に、アルバムのテーマメロディであり、コンセプトの根底にある輪廻転生を訴えかける旋律が、作品の中核を成しているという訳である。

考えてみてほしい。かのような人類の潜在意識に対してメッセージを送るメロディには、極めて壮大なものが多い。然り、感覚がそう感じてしまっているのかもしれないのであるが、例えば、雄大なメロディとして、北欧のケルト音階を挙げてみるとしよう。ケルト音階は、日本民謡に見られる和音にも共通する部分がある。その結果、日本人には特に魅力的なメロディの一つとして認識されるのである。馴染み深いものは時として魅力的なものとなる。マリッジの壮大な旋律にも同じことがいえよう。なぜならば、マリッジのテーマである輪廻転生は、人類の半永久的なテーマでもあるからである。しかし結局、いくら理論武装したところで、本作を視聴した時の感動的なリアリティに勝るものはないといえる。

この作品には壮大な意志が込められている。それだけは間違いようがない。本作を聴いて我々がどういう類いの刺激を受けるか、それこそが彼らに対する私達の最大の返答なのである。その答えは、私達一人一人の中にあるといえよう。追記ではあるが、本作は2008年にリマスターされ、ボーナストラック入りで再版された。ボーナストラックには至高の名曲"Blood & Gasoline(New Duet Version with Crystal Viper)"を収録。なにより音質が向上したのが嬉しい。



1. I Will Come for You
エピック・ヘヴィメタルの本格的な時代の幕開けを意味するロマンティックな名曲。ディフェイの情熱的なエピカルウェスパーの炸裂、中間部分における神々しいマリッジ・メインテーマへの劇的な流れ、クライマックスでの大仰な盛り上がりを含め、感動必死の叙事詩である。賽は投げられた。
2. Weeping of the Spirits
彼ららしいシリアスでドラマティックなエピカルナンバー。静かなパートから荒々しいメタルパートへの展開を見せる。スピーディなリフの格好よさは特筆すべきだが、妖艶なコーラスの力強さも最高だ。また若干荒廃しきった古典的ロックの雰囲気があるのも見逃してはならない。そこにはアメリカ生まれのエピックメタルのルーツがあるのである。
3. Blood & Gasoline
本作に収録された楽曲中、最もヒロイックな最高峰の名曲。大仰なギターメロディが期待感を漂わせるヴァース、更には艶やかなブリッジ(最高のパートだ!)へと導く。バーバリックなヒロイズムとロマンティックなムードが劇的にかみ合ったあまりにも熱いエピックメタルである。身が震えるとは、この曲を聴いているときに用いるのが最も適切な言葉だと思える。
4. Self Crucifixion
これまたロマンティックな楽曲である。ダイナミックなサビが非常に雄々しい。また積極的なピアノの導入が、曲の持つ神秘性とロマンティシズムを十分に生かしている。このような繊細な部分も魅力的である。ディフェイは、キーボーディスト(彼はヴォーカルとキーボードを両立するという、ヘヴィメタル界でも珍しいスタイルを有している)としても天才的である。
5. Last Supper
個人的に私は、本作の#5~#7を最大のハイライトとして認知している。これからもそれは変わらないであろう。ドゥーミィーに刻まれる怪しげなリフのメロディが印象的な曲であるが、後半の凄まじいまでの盛り上がりには息を呑まざるを得ない。高潔なヒロイズムを滲みだす箇所は、後に十分通じている
6. Warrior's Lament
この世のものとは思えないような、ロマンティックなインスト。繋ぎのインストゥルメンタルとしては最高の部類に入ろう。まるで歌劇(オペラ)を見ているようである。
7. Trail of Tears
ミドルテンポで進むエピックメタルであるが、この曲の真価は中間部からの劇的極まりない大仰な展開にあるといえよう。本曲のソロパートは優雅にロマンティックであり、これは本作を代表するサウンド・スタイルであるといっていい。ディフェイの美しい裏声をバックに、ロマンティシズム溢れるギターメロディを奏でる至高のパートこそは至高といえよう。また。エピローグに設けられたアコースティックパートを経て、一つの物語を終えた達成感を味わうことが出来るのは、エピックメタルの醍醐味であろう。彼らの楽曲の練り方はつくづく素晴らしいと感じさせる。
8. Raven Song
アメリカ最大の文豪エドガー・アラン・ポオの傑作『大鴉』との関連性を指摘される楽曲。その影響は、楽曲のタイトルにも表れている。軽快なリフに華やかに導かれるエピックナンバーであることには変わりない。ここまで聴けばおのずと分かることであるが、彼らの楽曲に単調な曲などは存在しはおらず、この曲とて例外ではない。
9. Forever I Will Roam
古典的で美しいバラード。ヴァージンスティールのムーディな部分を余すことなく詰め込んでいる。バラードですら大仰なメロディ、盛大な盛り上がりを見せるところが彼ららしい。
10. I Wake Up Screaming
情熱的なエピックメタル。軽やかにドライヴするリフにエピカルなシャウトが発散される見事な佳曲。ストレートなエピックパワーメタルとしての完成度は非常に高く、最高の高揚感を味わうことが出来よう。キーボードの荘厳なバッキングも秀逸。
11. House of Dust
魅惑的で美しいバラード調の楽曲。大仰さがとてつもなく魅力的に栄える。神秘的な雰囲気も見事である。
12. Blood of the Saints
大仰な曲調と神秘性を併せ持つ、典型的で力強い正統派エピックパワーメタル曲。盛り上げ方の技量については見事というほかない。勇ましくあり、ドラマティックなヘヴィメタルの魅力が凝縮されている。
13. Life Among the Ruins
前作のタイトルを冠した楽曲。本作の本編ラストを占めるエピックナンバーである。サビでの一心不乱の飛翔感は、まるで高揚する意識が天に昇るかのようである。驚異的なのは中間部での叙事詩的なドラマ性を秘めたギターリフ。この劇的な展開には楽曲が移り変わったのかとさえ思える(この手法は『Invictus』収録の"Mind, Body, Spirit"にも通じる)。ここにヴァージンスティールのドラマティシズムは極まったといえよう。
14. Marriage of Heaven and Hell
天国と地獄の和解を啓示する終曲。幾多ものメインテーマ・シンフォニーが次々と繰り広げられる壮絶な感動短編とでも形容すべきか。この神々しいテーマメロディを作曲したディフェイは天才としか言いようがない。人間の永遠のテーマ、人間の潜在的な意識まで訴えてくる途方もない美旋律とはこのことをいうのであろう。
15. Blood & Gasoline(New Duet Version with Crystal Viper)
名曲#3の完全版とも言うべき内容。ポーランドの正統派ヘヴィメタルバンド、クリスタル・ヴァイパーによる正式なカヴァー曲である(カヴァーにディフェイ本人が参加している)。驚異的な歌声を持つ女性シンガー、マルタ・ガブリエルが神秘的なブリッジ、サビを熱唱する様は圧巻。一言で表現すると、全編通してロマンティック極まりない。まさに生まれ変わったいうべき名曲中の名曲であり、改めてこの曲の素晴らしさを感じさせられる。このボーナストラックのためにリマスター再販盤を買う価値は十分にあるといえよう。


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Life Among the Ruins (Re-Release)



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1993
Reviews: 70%
Genre: Epic Metal



1993年発表のヴァージン・スティールの5th。

残念ながら本作では完全にマネージメントに押され、エピックメタルから離れたポップな作風となっているため、お勧めはできない。どんなバンドにも間違いはあるというものである。このような不遇の時代を乗り切ったからこそ、彼らは突如として才能が溢れ出たのではないだろうか。 しかし、デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key)は本作を失敗作と認めているわけではなく、むしろその評価は肯定的。アメリカン・ハードロック的な楽曲のクオリティは高く、ヘヴィメタル以外のジャンルのファンにも訴える要素があることは確か。エピック・メタルというバンドの先入観を取り除けば十分に聴けるサウンドだ。



1. Sex Religion Machine
2. Love Is Pain
3. Jet Black
4. Invitation
5. I Dress in Black (Woman with No Shadow)
6. Crown of Thorns
7. Cage of Angels [Instrumental]
8. Never Believed in Goodbye
9. Too Hot to Handle
10. Love's Gone
11. Snakeskin Voodoo Man
12. Wild Fire Woman
13. Cry Forever
14. Haunting the Last Hours [Instrumental]
15. Last Rose of Summer
16. Snakeskin Voodoo Man [Live Acoustic Version]
17. Jet Black [Live Acoustic Version]
18. Purple Rain [Live Acoustic Version]
19. Wildfire Woman [Live Acoustic Version]


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Age of Consent



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1988
Reviews: 80%
Genre: Epic Metal



ヴァージン・スティールの1988年発表の4th。

徹底した大仰なドラマ性を宿すエピックメタルでその手のファンの不動の信頼を得るヴァージンスティールだが、1988年に発表された第4作『Age of Consent』に関しては異例の経歴を持っている。本作は発表後に幾度も再発され、その際にボーナストラック追加と曲順を大幅に入れ替えている。近年のファンの高評価にはその成果が顕著に表れているのだ。
ここで予め我々が述べておくべきなのは、本作は必ずしもすべてがシリアスなエピックメタルではない、ということである。全体を通して大きく偏りがある。ヒロイックで眩暈のするほどロマンティックなエピックメタルが展開される前半に比べ、後半にはキャッチーなアメリカン・ハードロックの楽曲が続出する。恐らくこれらを前半に配置したら流石のファンでも退屈を覚えることになる。ディファイ(David Defeis:vo、key)自身もそう感じ、今回曲順を入れ替えたのであろう。
オリジナル盤では円やかな"On the Wings of the Night"が最初に始まり、次にコマーシャルな"Seventeen"、そしてスロウ・テンポのメロウな"Tragedy"が続くが、再発盤では名曲"The Burning Of Rome"から攻撃的な"Let It Roar"、劇的な前奏と後奏を含むロマンティックな"Lion In Winter"へと鮮やかに流れる。その次は素晴らしい新曲の"Perfect Mansions"だ。やはり再発時の曲順の変更は大幅にこのアルバムの良さを引き出している。

前半の各楽曲の図太い正統派メタル路線も大変オールドファンには好ましいが、今作で特に目立ってきたディファイのキーボードにも注目したい。キーボードの魅力的なバッキングは楽曲に幅を持たせているばかりか、短いインスト・パートでは古典劇風の厳粛な旋律も使いこなしている。中でも"The Burning Of Rome"における表現力は驚異的である。
結果的にこれらの煌びやかなキーボードによってロマンティシズムも大幅に増した楽曲が誕生したことは事実であり、ヴァージンスティールは本作で徐々にエピックメタルの突破口を見出している。そういった意味でも本作『Age of Consent』には非常に興味深い作品だ。

しかし残念ながらデファイは本作をあまり気に入っていないらしい。マネジメントの圧力に押され、納得のいく曲作りが出来なかったからだ。本作の後半に配置されたコマーシャルな楽曲はその名残である。我々はヘヴィメタルの本質とは別の分野でバンドの才能が潰されていく現状に対して何かしらの疑問を覚える。商業的成功を望む者たちは才能ではなく結果を重要視する。今は才能が欠如していても、ラジオやテレビ等の宣伝で売り上げが増える時代だ。後のヴァージンスティールが発表した『Invictus("屈しない"という意味を持つ)』(1998)には、社会的圧力に抵抗する意味も含まれていたのではないだろうか?

追記:本作は再発の際にボーナストラックが多数追加収録された。1997年の再発時に新曲4曲、また2008年新たにリマスター再販された時は#17、#18が収録された。更に2011年の再発では、ダブルデジパック仕様とライナーノーツの追加に加え、2枚組という豪華仕様が施された。このボーナスCDには貴重な未発表曲が収録されている。2011年再販盤に関してはこちらが詳しい。



1. The Burning Of Rome (Cry For Pompeii)
以前本曲に対してある者が語った「ローマという帝国の滅亡を通して、どんな偉大なものでもいつか必ず失われるが、その魂は永遠に続いていく」我々は真に歴史とはそういうものだと考える。歴史を創る者もいれば伝える者がおり、どんな偉大な文明でさえ、後世の人間に伝わることがなければ薄暗い墓の中に永眠してしまうであろう。然り、ヴァージンスティールのエピックメタルの持つ意味は非常に大きいものだ。本曲が偉大なエピックメタルの名曲として残り続ける限り、歓喜の盛衰の渦中にあったローマの悲劇もまた、末長く残り続けるであろう。
2. Let It Roar
バーバリックな疾走曲。メロディよりも攻撃性を重視して駆け抜ける様が潔い。ヴァージンスティールの疾走曲は古典的なヘヴィメタルを彷彿させるものがある。楽曲より放出される野蛮な雰囲気はエピックメタルならでは。
3. Prelude To Evening
#4"Lion In Winter"への序曲。古典劇を彷彿とさせるドラマティックなピアノ・ナンバーである。
4. Lion In Winter
演劇『冬のライオン』をモチーフとしたエピックメタル。本作は『The Lion in Winter』(1968)として映画化もされている。中世を舞台としたドラマティックな作品だけに、本曲のサビは魅惑的なまでにロマンティック。後半にかけて情熱的に盛り上がり、聴き手をヴァージンスティールのエピックメタルの世界へと誘う名曲。
5. Stranger At The Gate
#4"Lion In Winter"のエピローグ。オリジナル盤ではこの前奏と後奏が表記されていなかった。楽曲の構成に関する意図にまで口を挿むマネージメントとは如何なるものか。
6. Perfect Mansions
1997年の再発の際に収録された新曲。ヴァージンスティールの黄金期に収録された新曲のうち、傑出した内容を誇る名曲である。神聖な雰囲気が漂う長尺のエピカルなバラードであり、緊張感が滲み出ている。
7. Coils Of The Serpent
次曲へと繋がる語りによるイントロダクション。
8. Serpent's Kiss
1997年の再発の際に収録された新曲。旧約聖書を題材にし、神秘的な世界観を構築する。後半における劇的な展開は秀逸。
9. On The Wings Of The Night
丸みを帯びたキーボードの音色が印象的なキャッチーなヘヴィメタル。エピックメタルの帝王の楽曲であるという先入観をなくせば、普通に良い楽曲であることに気がつく。しかしヴァージンスティールは"コマーシャルなヘヴィメタルバンド"では毛頭ない。
10. Seventeen
アメリカンな雰囲気が漂うハードロック。単調なリフに緊張感の抜けたサウンドと退屈極まりない内容を持つ。
11. Tragedy
本作に収録されたキャッチーなヘヴィメタルの一部だが、キーボードの効果的な使用や哀愁の漂うサビによって完成度は高い。
12. Stay On Top
ユーライア・ヒープのカヴァー。
13. Chains Of Fire
ノリの良いリフが印象的。陽気かつアメリカンな雰囲気を醸しつつも、ヘヴィなサウンドで攻める箇所は好感が持てる。
14. Desert Plains
1997年の再発の際に収録された楽曲の内の一つであり、ジューダス・プリーストのカヴァー。収録時間を限界まで引き延ばそうとする姿勢は素晴らしいが、結果的に本作には無駄な楽曲が多くなっている。ヴァージンスティールの熱心なファンならば、カヴァー曲よりも新曲が聴きたいはずである。
15. Cry Forever
キャッチーなバラードとして良曲。本曲を聴けばヴァージンスティールが実に臨機応変なバンドであることが分かる。最もバラードがヒットするようなヘヴィメタルバンドは余命を宣告されたものだ。
16. We Are Eternal
前半のエピカルな雰囲気が宿る良曲。しかし時は既に遅すぎた。
17. Screaming For Vengeance
2008年の再発の際に収録された楽曲。ジューダス・プリーストのカヴァーである。最新の『Age of Consent』にはジューダス・プリーストのカヴァーが二曲収録されていることになる。
18. The Curse
2008年の再発の際に収録された楽曲。スラッシュメタル、オリジナル・シン(ORIGINAL SIN)にかつてヴァージンスティールが提供した楽曲のリメイク。


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Noble Savage (Re-Release)



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1986
Reviews: 80%
Genre: Epic Metal



ヴァージン・スティールの1986年発表の3rd。


「我は野蛮人、我は王。 偽善者どもを殺し、悪を打ち滅ぼす」

 "Noble Savage"より


ノーブル・サベージについて...
デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo)がヴァージンスティールの明確な方向性を巡りジャック・スターと対峙した事は、結果的にヴァージンスティールにとっては良い方向に傾いた。前2作で披露されたジャック・スターの荒々しいリフはもうヴァージンスティールの作品に収められることはなくなったが、代わりに可能性を秘めたこの若いヘヴィメタル・バンドはエピカルな世界観を描くことを許された。
大昔の旧約聖書や古代ギリシア・ローマ時代の神話を伝統的なヘヴィメタルに昇華するアイデアは元々ディファイ自身が持っていたものであり、共にアメリカでヴァージンスティールを結成したジャックはこれを好まなかった。二人の異なる才能は大きく分かれようとしていた。結論は簡単なもので、ヴァージンスティールの未来を考えればディファイ側の意見が正しかった。なぜならヴァージンスティールは他のバンドにはない神秘的な世界観を持っていたし、将来大きく飛躍する可能性を秘めていたからだ。
かくして、ジャック・スターはヴァージンスティールを去った。後任にはエドワード・パーシノ(Edward Pursino:g)が迎えられた。エドワード・パーシノはヴァージンスティールに最も適したギタリストであり、シリアスなコンセプトに合ったロマンティックなメロディも難なく弾きこなす忠実な男であった。エピカルで緻密なリフも、エドワード・パーシノに掛かればドラマティックに表現された。
ようやく役者が揃って完成したヴァージンスティールの第3作『Noble Savage』は1986年に発表された。本作がヴァージンスティールのキャリアにおいて重要な意味を持つ作品であることは間違いなかった。なぜなら、ある一部が大きく突出していたからである。本作は全体的なコンセプト作品ではなかったが、アルバム・タイトルとなっている言葉は新しいヴァージンスティールを表現するのに相応しかった。
読んで文字の如く、"ノーブル・サベージ(高貴な野蛮人)"とはヴァージンスティールのエピックメタルのスタイルのことを指し示す重要なキーワードであった。ヴァージンスティールは人間の内面に秘められた本能的な部分をバーバリックなヘヴィメタルを駆使して解放させることで、自らの新しい分野を切り開こうとした。冷静に考えてみれば、ノーブル・サベージなどは遠い昔に既に滅んでしまった死語に等しいが、それは過去の叙事詩と私たちの血脈の中に抽象的ではあるが生きていた。ヴァージンスティールは古い物語──古代ギリシア・ローマの古典──を現代に蘇らせて、忘却に囚われている私たちの思考と対峙したのだ。故にヴァージンスティールのサウンドは本作で驚くほどヒロイックになっているし、魅惑的なまでにロマンティックな旋律で彩られている。そしてディファイは、名曲として語り継がれる運命にある"Thy Kingdom Come"や"Noble Savage"で美しい裏声を使う術を新しく学んだ。
一見エピックメタルの完成形に思える本作だが、ヴァージンスティールは詰めが甘かった。シリアスなエピックメタル作品であるならば、当然の如く"Rock Me"や"Don't Close Your Eyes"などの緊張感の抜けたアメリカン・ハードロック、またはバラードはまずやらないであろうし、統一感を作品全体に張り巡らせたはずだ。
以前までのヴァージンスティールはエピカルなヘヴィメタルとアメリカ的ハードロックが絶妙に混ざり合っていい雰囲気を醸し出していた。しかしディファイがバンドの方向性と世界観をはっきりとエピックメタルに定めてしまったため、後者は全く必要なくなってしまった。シリアスな楽曲が続いた後に突如として明るいポップ・ソングが出現したならば、エピックメタルファンは間違いなく困惑を覚えるであろう。
真に傑作と称されるエピックメタル作品を目標とするのであれば、中途半端な妥協は許されることではない。間違いなく『Noble Savage』は初期ヴァージンスティールの最高傑作だ。しかし、完璧なエピックメタルとしてはまだまだ改善すべき点を多く残していることも否めない。最も、本作なくしては現在のヴァージンスティールも存在しないことは、私たちが一番良く知っている事実である。ただ私たちは、ヴァージンスティールが生まれ変わった記念日に惜しみない喝采を送る。

追記:本編は#10までで、#11以降はボーナストラックである。1997年の再発時に#11~#16、また2008年新たにリマスター再販された時は#17、#18が収録された。更に2011年の再発では、ダブルデジパック仕様とライナーノーツの追加に加え、2枚組という豪華仕様が施された。このボーナスCDには新曲も収録されている。2011年再販盤に関してはこちらが詳しい。



1. We Rule the Night
冒頭を飾るに相応しい情熱的な名曲。クラシカルなイントロダクションにバーバリックなリフが飛び乗り、サビでの大仰なメロディが胸を熱くさせる。後半はエドワードのソロも華麗に決まる。音楽性はヴァージンスティール以外の何物でもない。
2. I'm on Fire
暗い雰囲気が漂う楽曲。シリアスさを追求するエピックメタルにおいて、キャッチーさや明確さは不用である。
3. Thy Kingdom Come
ロマンティックなムードを最大限にまで高めた名曲。ディファイの魅惑的な裏声、サビでの艶やかな旋律がヴァージンスティールの特徴を存分に引き出している。
4. Image of a Faun at Twilight
次曲へと続くイントロダクション。古典劇風な旋律が次第に雰囲気を盛り上げていく。
5. Noble Savage
エピックメタルらしい大仰な盛り上がりと、独特のロマンティックなムードに溢れる名曲。サビでのディファイの「Noble Savage!」の熱唱は最高に熱い。最後のドラマティックなエピローグも素晴らしい。本曲では既に古代ギリシャ・ローマの神聖な雰囲気が開花している。
6. Fight Tooth and Nail
剣の音を用いた攻撃的なエピックメタル。ヘヴィなリフが野蛮かつ攻撃的な雰囲気を醸し出す。この楽曲は非常にマノウォーのエピックメタルに似通っている。初期ヴァージンスティールはマノウォーと差別化を図っていなかったのかも知れない。
7. Evil in Her Eyes
スロウなテンポのエピカル・リフを駆使した楽曲。#3と同様にサビではロマンティックなメロディを聴かせる。初期からドラマティックな楽曲を作ることに関しては、明らかにヴァージンスティールは抜きん出ている。
8. Rock Me
アメリカン・ハードロック。これらの邪魔な楽曲を最小限にしていくのがエピックメタルバンドとしては重要なことである。エピックメタルファンはこのような楽曲のためにヴァージンスティールの作品をわざわざ購入しているわけではない。
9. Don't Close Your Eyes
能天気なバラード。緊張感が欠如する捨て曲を収録するのが初期ヴァージンスティールの欠点であった。我々は可能な限りヴァージンスティールのエピックメタルを聴き続けていたいが、こういった楽曲に関しては全く逆の意見を述べるであろう。
10. Angel of Light
妖艶かつ神秘的な旋律を最初に用いたエピックメタル。これらの中近東風な旋律は、後に古代ギリシア・ローマ風の旋律とともにヴァージンスティールの大きな特徴となる。本曲では魅力的なメロディや展開があるにも関わらず、中途半端なパートをいくつか導入している。
11. Obsession (It Burns for You)
以下はボーナス・トラックである。
12. Love and Death
13. Where Are You Running To
14. Come on and Love Me
15. Spirit of Steele
北欧神話を題材にしたバラード。非常に繊細で美しい。
16. Pyre of Kings
17. Fight Tooth and Nail [Roman Sword Re-Mix]
18. Noble Savage [Early Take & Mix][Alternate Take]


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