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Introduction

Robert_E_Howard

「エピック・メタルとは、叙事詩的なヘヴィメタルの総称であり、主に大仰かつ劇的でヒロイックな音楽性を示す言葉である」 [More stats] 

 ──Cosman Bradley


◆新着情報 News Topics
[Reviews]
VALKYRIE 「Deeds of Prowess」
WRATHBLADE 「Into the Netherworld's Realm」
VIRGIN STEELE 「Nocturnes of Hellfire & Damnation」
[Release]
Jack Starr’s Burning Starr 「Stand Your Ground」
Cirith Ungol 「King Of The Dead」
Manilla Road 「To Kill a King」

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Kings of Metal Mmxiv (Silver Edition)



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2014
Reviews: 82%
Genre: Epic Metal


アメリカのエピック・メタルの始祖、マノウォーの2014年発表の企画盤。

2012年の第11作『The Lord of Steel』からライブ盤『Lord of Steel-Live』(2013)を経て発表されたのが本作『Kings of Metal MMXIV』(2014)である。「Magic Circle Music」からリリースされた本作は、『Battle Hymns MMXI』(2010)と同じコンセプトの下で制作された。バンドは過去の名作を現代の録音技術で録り直すことで、新しいヘヴィメタル・アンセムを作り上げようとした。オリジナルの『Kings of Metal』(1988)は、ヘヴィメタル史に残る傑作であり、そのアルバム・タイトルはマノウォーというバンドを象徴する言葉となった。その再録盤でもある『Kings of Metal MMXIV』は、オリジナルの曲順を入れ替え、屈強で重厚なサウンドを強調している。どうやら"オリジナルの曲順を入れ替える"という選択肢が失敗だったようで、80年代作品の熱狂的なマノウォーのファンたちから怒りを買い、散々に酷評される結果となった。また、海外のレビューサイトでも本作が異常な低評価を記録するなど、バンドの歴史の中でも異例の事態が続いている。本作は2枚組であり、Disc 2には本編のインストゥルメンタル・ヴァージョンを収録。過去作品の再録は同ジャンルでもヴァージン・スティールがしていることだが、かつて「サウンドが似ている」と評価されたこのバンドとの間に、今では大きな差が生まれている。ヴァージン・スティールの『Age of Consent』(1988)は、オリジナルの曲順を入れ替えてファンの評価を高めたが、『Kings of Metal MMXIV』に同じ手法は通用しなかったのである。



Disc 1:
1. Hail and Kill MMXIV
2. Kings of Metal MMXIV
3. The Heart of Steel MMXIV (acoustic intro version)
4. A Warrior's Prayer MMXIV
5. The Blood of the Kings MMXIV
6. Thy Kingdom Come MMXIV
7. The Sting of the Bumblebee MMXIV
8. Thy Crown and Thy Ring MMXIV (orchestral version)
9. On Wheels of Fire MMXIV
10. Thy Crown and Thy Ring MMXIV (metal version)
11. The Heart of Steel MMXIV (guitar instrumental)

Disc 2:
1. Hail and Kill MMXIV
2. Kings of Metal MMXIV
3. The Heart of Steel MMXIV (orchestral intro version)
4. The Blood of the Kings MMXIV
5. Thy Kingdom Come MMXIV
6. Thy Crown and Thy Ring MMXIV (orchestral version)
7. On Wheels of Fire MMXIV


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Lord Of Steel



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2012
Reviews: 75%
Genre: Epic Metal


アメリカのエピック・メタルの始祖、マノウォーの2012年発表の11th。

マノウォーは日本では人気がないが、欧州やアメリカでは非常に認知度が高いバンドだ。それは各国の歴史や文化に深く関係している。マノウォーの人気が高いドイツやギリシャという国は、何世紀も前に有名な叙事詩的作品を残しており、ニーベルンゲン伝説やギリシア神話が一般市民に広く知られている。こういった国々では、日常的に叙事詩の世界に触れる機会がある。芸術的な街の風景や抒情的な音楽、歴史的価値のある神殿や城が、日常生活の中に溶け込んでいるのだ。だからこそ、叙事詩的な音楽に何かの共通点を見出し、それが現実的な支持や評価へと繋がっているのである。マノウォーやヴァージンス・ティール等のエピック・メタル・バンドが欧州で人気が高いのは、そこに必然的な理由と背景があるからだ。
マノウォーが欧州で人気を得てきた経緯を考えると、当然のように、サウンドもそれに相応しいものが求められる。近年のバンドは、EP『Thunder In The Sky』(2009)でエピックな世界観と正統派ヘヴィメタルを融合させた強烈な音楽性を強調していた。しかし、その後、2012年に自身のレーベル「Magic Circle Music」から発表された第11作『The Lord of Steel』の内容は、ファンが期待するそれとは大いに異なるものだった。現代のインターネット上では、ファンたちが議論し、ミックスの問題やサウンド面での変化に言及されることが多かった。エピック・メタルのファンは『Gods Of War』(2007)や『Thunder In The Sky』のようなサウンドを期待していたが、オーソドックスでシンプルな作風の『The Lord of Steel』にその言葉は不要だった。『The Lord of Steel』はマノウォーの2010年代の最初の作品として、ファンの間で『The Triumph of Steel』(1992)以上の賛否を呼ぶこととなった。それは時代と共にファン層が変化し、ピュアなヘヴィメタルを期待する向きと、エピックな音楽のスタイルを求めるリスナーに別れたことを、顕著に物語っていた。



1. The Lord of Steel
2. Manowarriors
3. Born in a Grave
4. Righteous Glory
5. Touch the Sky
6. Black List
7. Expendable
8. El Gringo
9. Annihilation
10. Hail, Kill and Die
11. The Kingdom of Steel


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Battle Hymns 2011



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2010
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal


マノウォーの2010年発表の1stの再録盤。


エピックメタルの始祖として長年活躍を続けてきたアメリカのマノウォーだが、過去に発表してきた名作の影に埋もれて、第一作『Battle Hymns』(1982)のみが完全な形で制作されていなかった。リーダーであり、ピュア・メタル界の王者に相応しい風格を合わせ持つジョーイ・ディマイオ(b)は「録音技術がようやく我々に追いついた」と語る。正しくマノウォーの記念すべき第一作『Battle Hymns』を現在の技術で再録したのが本作『Battle Hymns MMXI』であり、タイトルの"MMXI"は2011年という意味を持っている。なお本作が発表されたのは2010年である。
脱退したスコット・コロンバスに変わりド二ー・ヘムズィク(d)が加入した本作は、ロス・ザ・ボスの意志を受け継ぐカール・ローガン(g)、第一作目からは想像もつかないほど成長したエリック・アダムス(vo)が強力なバックアップでジョーイ・ディマイオを支える。今作の発表でド二ー・ヘムズィクは過去の汚点を見事に消し去ったが、それはマノウォーに関しても同じであった。
長年ファンの間でも『Battle Hymns』の評価は分かれ易く、偉大な名曲"Battle Hymns"を収録してはいるものの、前半に配置された軽快なロックンロール調の楽曲群が不評の大きな要因となっていた。「何故今更第一作を再録するのか」という疑問に対して、我々はそこに必然性があることを告げる。現在のマノウォーは初期とは比べ物にならないほど強靭なヘヴィメタル・サウンドを有したバンドであり、今回のジョーイの発案によって『Battle Hymns』が完全な形で生まれ変わったことも既に明白な事実である。そして、実際に我々の元に届けられた『Battle Hymns MMXI』は、ファンの不安を払拭する素晴らしい内容を持つ正統派ヘヴィメタルの名盤であった。
時代の変化によって元曲のキーは下げられてはいるものの、そこにロックンロールを演奏する軽率なマノウォーの姿はない。『Battle Hymns MMXI』に存在しているのは完全なヘヴィメタルであり、ヘヴィメタルが本来持つべき重厚な世界観とヒロイックなドラマ性が見事に一体となって、緊張感に満ちた圧倒的なサウンドを作り出している。これぞ我々の知るマノウォーである。
初期のマノウォーに良い録音環境と金がなかったのは非常に残念なことであったが、やがてマノウォーは認められ、エピックメタル・シーンに確固たる地位を築いた。そして、現在も飛躍的に活動を続け、熱狂的なファンたちを第一に考えている。エピックメタルを制作するうえで大事なのは、徹底した傾向と追求であると頻繁に言われるが、マノウォーは過去の遺産に対してもその頑なな姿勢を貫き通した。かくして、名作『Battle Hymns』は再度誕生した──



1. Death Tone
重厚かつ圧倒的なヘヴィメタル・サウンドが展開されるオープニング・ナンバー。そこにかつてのロックンロール的な雰囲気は残るものの、今作でマノウォーが演奏しているのは完全なピュア・メタルだ。
2. Metal Daze
強烈なギターサウンドとシャウトは、過去のように決してタイトル負けしてはいない。むしろヘヴィメタルを謳歌するに相応しい楽曲だ。マノウォーはこれがやりたかったのであろう。
3. Fast Taker
オリジナルとは比べ物にならないほどアグレッシブに展開する。これがギター1本のサウンドだとは誰も思わない。
4. Shell Shock
心地よく刻まれるヘヴィなリフが頭を振らせる。これまでにマノウォーの汚点とされてきた軽快なロックンロール調の楽曲が今作で正統派ヘヴィメタルに生まれ変わっただけでも、本作の持つ意味は非常に大きい。
5. Manowar
バンド名を冠した名曲。マノウォーは本曲をライブでは必ず演奏してきたため、初期の頃とは大きく印象が異なっている。ヘヴィかつメタリック、そしてアグレッシブになった。
6. Dark Avenger
オリジナルのダークな雰囲気は薄れてはいるものの、強靭なエピックメタルによって生まれ変わった名曲。後半からの劇的な展開は更にヒロイックに進化。ナレーションはオーソン・ウェルズからクリストファー・リーに変更している。
7. William's Tale
ジョーイ・ディマイオによるベース・ソロ。メロディアスなプレイは初期と変わらない。ヘヴィな雰囲気は増してる。
8. Battle Hymn
迫力が増した迫真のイントロダクションから大いに期待感を煽られる。歴史に名を残したヒロイックなサビのメロディはもう高音ではないが、完成したマノウォーのエピックメタル・サウンドがそのかつての伝説を蘇らせる。
9. Fast Taker
ボーナス・トラック。1982年のライブ・トラックである。マノウォーはライブではオリジナルよりも早く演奏するバンドだ。
10. Death Tone
ボーナス・トラック。詳細は上に同じ。


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THUNDER IN THE SKY



Country: United States
Type: EP
Release: 2009
Reviews: 88%
Genre: Epic Metal


マノウォーの2009年発表のEP。


シンフォニックな音楽性を提示したことで賛否両論──しかしエピックメタルのファンには高評価──を得た『Gods of War』(2007)に続き、新作に先行する形で発表されたのが本作『Thunder in the Sky』である。本作は二枚組のEPであり、本編収録の"Father"を日本語も含めた全15ヵ国語で歌うという豪華なファン・サービスも行われている。また、現在でも伝説の名盤として語り継がれている『Kings Of Metal』 (1988)収録の名曲"The Crown And The Ring"のヘヴィメタル・ヴァージョンが収録されているという点でも、本作はファンの注目を大きく集めることとなった。

本編に収録された楽曲のサウンドは純粋なエピック・ヘヴィメタル以外の何物でもなく、前作で不満を覚えたファンも納得できる内容である。コンセプトは過去一連の北欧神話に基づいており、マノウォーが初期から追求してきた不変のテーマ──主に英雄の讃辞や勇気ある戦いなど──が叙事詩的に描かれている。円熟したマノウォーの強力なエピックメタルが見事に炸裂した楽曲群では、冒頭の"Thunder In The Sky"を筆頭に劇的なヒロイズムが展開されている。収録曲の完成度の高さは群を抜く勢いを放ち、マノウォーがエピックメタルの唯一無二の始祖であるということを我々に再確認させている。

現在『Hammer Of The Gods』と題されていた第11作目の最新作の発表は一旦白紙に戻ったが、ジョーイ・ディマイオ(b)は2012年の夏にマノウォーの新譜が発売されることを明かしている。近年は名ドラマー、スコット・コロンバスの脱退が2年後に発表されるなどの不祥事や、息子の病気は実は嘘であったという衝撃の事実が明らかになった。また彼の突然の訃報など、長年のファンはマノウォーの未来に対して疑問を抱く時期であった。しかしそれらを乗り越えてこそ、真のエピックメタルの王者として再び王座に返り咲くことができる。少なくとも『Thunder in the Sky』に収録された楽曲は次回作への期待を大いに抱かせるものだ。本作はマノウォーの信念が完全には死んでいないことを証明している。我々は不滅の戦士、マノウォーの帰還を心から望んでいる──



Disk:Ⅰ
1. Thunder In The Sky
強力なリフとシャウトが連携するエピックメタル。他の追随を一切許さない北欧神話の世界観が展開される。劇的なヒロイズムはやはりマノウォーの音楽性の象徴といってよいであろう。
2. Let The Gods Decide
エピカル・リフを用いた力強い一撃。勇壮なドラマ性を有し、聴き手の高揚感の爆発を誘発する。シンプルな構成ながらも重厚な雰囲気を持ち、実にマノウォーらしい楽曲である。
3. Father
温かみに満ちた感動のバラード。アコースティック楽器の繊細な美旋律を用い、エリック・アタムスの力強く包容力に満ちた歌声が胸を打つ。父とはこのようなものであろうか。
4. Die With Honor
重厚なミドル・テンポ。シリアスな雰囲気が漂う内容からは、終始異様なヒロイズムが溢れ出している。エピック・クワイアを用いた後半の盛り上がり方も劇的。近年のマノウォーはコンセプトに徹底し過ぎていることが明白だ。
5. The Crown And The Ring [Metal Version]
『Kings Of Metal』 (1988)収録の"The Crown And The Ring"の再録。元々は100人のクワイアを起用して制作された壮大な戦士の讃美歌であったが、時代の進歩によって強靭に生まれ変わり、スペクタクル巨編の如きスケール感を演出する。
6. God Or Man
攻撃的なリフで疾走する楽曲。静と動を駆使し、戦士的なドラマティシズムを雄々しく歌い上げる。本作の怒涛のテンションが継続されるのであれば、次作も間違いなく傑作となる。

Disk:Ⅱ
1. Tatko [Bulgarian Version]
2. Otac [Croatian Version]
3. Isa" [Finnish Version]
4. Mon Pe`re [French Version]
5. Vater [German Version]
6. Patera [Greek Version]
7. Apa [Hungarian Version]
8. Padre [Italian Version]
9. Oto san [Japanese Version]
10. Far [Norwegian Version]
11. Ojciec [Polish Version]
12. Pai [Portuguese Version]
13. Tata [Romanian Version]
14. Padre [Spanish Version]
15. Baba [Turkish Version]


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Gods of War



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2007
Reviews: 90%
Genre: Symphonic/Epic Metal


アメリカのエピックメタル、マノウォーの2007年発表の10th。


「風に向かって剣で戦いを始めよ」
 "The Sons Of Odin"より


北欧神話エピックメタルの比類なきマスターピース

北欧神話の主神オーディンを主人公とする一大コンセプトアルバムの制作は、長きに渡る沈黙を破り、エピックメタルの始祖マノウォーが遂に本格的に英雄伝説を完成させることに乗り出した証明であった。エピックメタルの創造と共に始まった彼らの長い歴史において、この偉大なる神である英雄は何度も歌われながらも、終ぞ一つの作品として完成に至ることはなかった。
古くから語られ、バラバラに分散した北欧の叙事詩を繋ぎ合せる作業は難航を極めた。フィヨルドを凍りつかせる雪が降り、暗く朧気な太陽が幾日も天上を遮った。既に我々は、マノウォーの過去の断片的な物語の一部から、偉大なる神々の名を知って久しかった。槌を振う英雄の祖トール。そして父なるオーディンの名を我々は知った。オーディンはアース神族の最初にして最強の神、戦いの神、詩の神、また片目を失うことで手にした究極の知恵の神、魔法の文字ルーンの創造者であった。ここから我々がよく知るように、ファンタジー・エピックが生まれたのである。故にオーディンは始祖であった(思い出さなくてならないのは、マノウォーもエピックメタルの始祖である、ということである)。
そして、唯一の創造者によって成し遂げられるべき偉業は、ここに驚異的な作品を誕生させた。大神に相応しい究極のエピックメタル作品が、処女の如く無防備な姿で、我々の眼前に曝け出されているのだ。我々はそれをたったの20ドルという現金で購入することが出来るが、神への冒涜という言葉がまだ死語でないのなら、まさに今我々が行おうとしていることこそは冒涜の極みに値する。
本作品は異常ともとれるオーケストレーション、ナレーション、エピック・クワイアによって、壮大極まる英雄世界を実に生々しく描くことに成功した数少ない作品である。マノウォーが得意とする劇的な曲展開並びに大仰の頂点に位置する曲調は大胆な仕事をこなし、視覚や聴覚をも超越した刺激を聴き手に齎す。明らかに本作はリヒャルト・ワーグナーの作品を越えたかも知れない──しかし、我々が真に議論すべき対象は、両者のどちらが如何に優れているかということでは永久にないのだ。この感動的な叙事詩的作品を前にして、そのような議論が行われること自体おこがましいことである。常にワーグナーは"ヘヴィメタルの父"であり、尊敬すべき対象であることに変わりはない。
かつてワーグナーが完成させた『ニーベルングの指輪』四部作を我々は思い出すかもしれないが、『Gods of War』にインスピレーションを与えたのもまたワーグナーの作品に他ならないのである。マノウォーは本作品でワーグナーの功績に敬意を表している。それはマノウォーがエピックメタルの始祖としての英雄的な使命を果たすことであり、『Gods of War』という偉大な作品の完成によって完結され、新たに始まる時代の幕開けとなる警笛を告げるべく風に向かって剣を掲げたということである。そう、エピックメタルは死なないのだ。Glory Majesty Unity!



1. Overture To The Hymn Of The Immortal Warriors
壮大なオーケストレーションによる6分に及ぶ序曲。その焦らしは尋常ではない。
2. The Ascension
神そして英雄、王の誕生を歌う小曲。
3. King Of Kings
尋常ならざる緊張感が支配し、鉄槌の如く振り下ろされる鋼鉄の嘶きが神の力を物語る。
4. Army Of The Dead, Part I
戦って死んだ戦士をヴァルハラに迎える役目を担うワルキューレ。そしてこれは不滅の戦士の聖歌である。
5. Sleipnir
オーディンの愛馬スレイプニル。8本足のこの馬は如何なる次元へも行くことが出来る。ヒロイックなコーラスが戦意を高揚させる。
6. Loki God Of Fire
オーディンの兄弟である邪神ロキは、やがて神々を破滅へと導くことになる。スピーディなリフが刻まれる佳曲。
7. Blood Brothers
血で結ばれた兄弟の絆は永遠である。名バラードに値するこの楽曲は、勇ましさに満ちたサビが印象的である。
8. Overture To Odin
大仰極まりないインストゥルメンタル。後半にかけての盛り上がりが驚異的。
9. The Blood Of Odin
ナレーションがオーディンの伝説を語る。
10. The Sons Of Odin
オーディンの4人の息子が対面した凄まじき戦場の様を迫真の表現力で描く傑作。軍隊の行進の如きベースのメロディは信じられないほど生々しい。そしてサビの壮大なクワイアは、天地を揺るがす戦士らの轟きを彷彿とさせる。
11. Glory Majesty Unity
オーディンに授けられた力によって4人の息子らは戦いに勝利を収め、戦士の祈りが述べられる。やがてこれらの厳かな言葉は、マノウォーの語り草となるであろう。
12. Gods Of War
ラグナロクへと向かう神々の軍勢の最後の行進を描く。途轍もない足音が響き渡り、天空を貫くかのようなクワイアが朗々と歌いあげられる。
13. Army Of The Dead, Part II
ここで再び偉大なる聖歌が歌われる。
14. Odin
オーディンの偉業を物語る。後半には、オーディンを永久に讃えるかの如く"Army Of The Dead"のクワイアが三度登場する。
15. Hymn Of The Immortal Warriors
アルバム冒頭の旋律が再び繰り返された時、我々は現実を超越した感動に包み込まれるであろう。この聖歌はオーディンへの究極の賛美である。オーディンの生み出した精神はヘヴィメタルに似ている。崇高な伝説は永久に不滅であると歌い、こうして今まで受け継がれてきた。叙事詩とは不思議なものである。
16. Die For Metal
ボーナストラックである。


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Dawn of Battle



Country: United States
Type: EP
Release: 2002
Reviews: 85%
Genre: Epic Metal


マノウォーの2002年発表のEP。


ケン・ケリーが描いた強烈なアルバム・カヴァーが印象に残る本作『The Dawn Of Battle』は、マノウォーの第9作『Warriors of the World』(2002)未収録の楽曲を含むシングルである。本作の内容は普段のマノウォーであり、強靭なエピックメタルによって支配された全三曲が堂々とした風格で収録されている。多くのヘヴィメタル・ファンの場合、シングルに対する興味は薄いものだが、マノウォーの『The Dawn Of Battle』は見逃すには惜しい要素を含んでいる。特に『Warriors of the World』未収録の"The Dawn Of Battle"、"I Believe"の完成度は素晴らしいものであり、アルバムに収録されなかったことが悔やまれる。伝統的な音楽性が揺らぐ中、これらの徹底してヒロイックなエピックメタルは更に世に広まるべきだ。



1. The Dawn Of Battle
激烈な疾走感と極限のヒロイズムを有する名曲。スケール感のあるコーラスや中間部からの劇的な展開を伴い聴き手の高揚感を爆発させる。"血拭き肉躍る"とはまさに本曲のことを指した言葉である。
2. I Believe
壮絶な緊張感と大仰なヒロイズムに満ち溢れた名曲。聖歌的コーラスのスケール感が特に際立っている。マノウォーは疾走感がなくともエピックメタルの真の傑作を生み出すことが出来る。
3. Call To Arms
『Warriors of the World』の冒頭に収録された名曲。強烈なパワーを誇るエピック・ヘヴィメタルの定番曲であり、高潔なヒロイズムが発散される。


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Warriors of the World



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2002
Reviews: 87%
Genre: Epic Metal


アメリカのエピックメタル、マノウォーの2002年発表の9th。

前作『Louder Than Hell』(1996)からおよそ6年振りという長い期間を経て発表に至った今作『Warriors of the World』は、マノウォーに忠実なファンを満足させるに十分な素晴らしい作品である。名シンガー、エリック・アダムス(vo)のアルバムであり、マノウォーの多様性をも網羅した傑作だ。
冒頭の荘厳な#1"Call To Arms"で幕を開ける本作は、以降の#2~#7がほぼバラード調という驚嘆すべき展開を有している。インストの#4"Valhalla"、#7"The March"はそれぞれスペクタクル映画のサウンドトラックに入っていてもおかしくはない傑作だし、#3"Nessun Dorma"は世界的なオペラ楽曲のカヴァー、#6"An American Trilogy"はエルヴィス・プレスリーのカヴァーである。これらの楽曲はマノウォーのアメリカ的なルーツを物語っているのであろう(当然、ヒロイック・ファンタジーを除いたうえで...)。
人間の二面性の如く、静と動を描いている本作において、後半は野蛮人さながらにこれまでの静寂を打ち破る荒々しさである。アルバム・タイトルの#8"Warriors Of The World United"は偉大なヘヴィメタルの聖歌であるし、最後の#9~#11の激しさは特筆に値する。ジョーイ曰く「この最後の3曲は戦士のトリロジー(三部作)」を描いているそうだ。彼らは常に、戦士の物語や勇気を口にしてきた。それは長いキャリアが導いた実力の賜物でもあり、この分野の始祖としての宿命でもあろう。総じて、エピックメタルにおいて、マノウォーほど安心して聴けるバンドはいないものである。



1. Call To Arms
戦闘的なエピックメタル。力強い演奏に加え、エリックの強烈なシャウトがヒロイックな高揚感を誘発する。
2. The Fight For freedom
晴れやかな楽曲。勇気が滲みだすような曲調である。
3. Nessun Dorma
世界的なオペラの名曲も、エリックにかかれば大仰な軍歌に為り変る。
4. Valhalla
次曲への荘厳な布石である。
5. Swords In The Wind
北欧神話を歌ったマノウォーのもう一つのルーツ。戦士の如き雄々しさと哀愁が交錯する名曲である。タイトルの「風に向かった剣」という言葉は、マノウォーの物語で頻繁に耳にする。きっと深い意味があるのであろう。
6. An American Trilogy
南北戦争時代のアメリカにおいて聖歌的な意味を持った叙事詩的な楽曲であり、現代ではエルヴィス・プレスリーが歌ったことで知られる。国境を越えて人々の団結の意思を歌ったこの楽曲をマノウォーがカヴァーするのは必然的であるし、それはヘヴィメタルで一つとなることを歌った"Warriors Of The World United"にも繋がるのではないか。アメリカの歴史に馴染みのある者ならば涙なくしては聴けない。
7. The March
勇壮な行進曲である。この壮大で大仰な曲調が次作へと繋がる。
8. Warriors Of The World United
アルバムのカヴァーにも描かれている、マノウォーの伝統的なメタルアンセムである。我々はヘヴィメタルを聴く際、国旗の色などは意識しない。
9. Hand Of Doom
マノウォーによる強烈な一撃。
10. House Of Death
楽曲に漂う厳かな緊張感と禍々しいほどの威圧感は、古来のヒロイック・ファンタジーの世界に由来しているのであろう。
11. Fight Until We Die
アルバムの最後を締めくくるに相応しい攻撃的な楽曲である。


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Anthology



Country: United States
Type: Compilation
Release: 1997
Reviews: 70%
Genre: Epic Metal


マノウォーの1997年発表のベスト。


本作は"ヘヴィメタル史上最悪のアルバム・カヴァー"と称された経歴を持つマノウォーの伝説のベスト・アルバムである。アルバム・ジャケットに披露されている強烈にハワードの『コナン』を意識した各メンバーの強靭な裸体は、それらのファン以外からは痛烈な批判を受けることとなった。マノウォーの熱狂的な信者以外には、これらがゲイの取る行動に思えたようである。無論、強烈なインパクトを視覚的に与えるアルバム・ジャケットと内容の差異は殆どない。これらの肉体的な主張が外見のみのイメージであるならば一般大衆から嘲笑されるのも無理はないが、我々はマノウォーの剛直な楽曲を聴いた後、果たして同じ意見を述べることが出来るであろうか。

本作に収録されている楽曲は主に第一作『Battle Hymns』(1982)、第4作『Sign Of The Hammer』(1984)、第5作『Fighting The World』(1987)、第6作『Kings Of Metal』(1988)、第7作『Triumph Of Steel』(1992)から選曲されており、レーベル側の問題が生じたために第2作『Into Glory Ride』(1983)、第3作『Hail To England』(1984)からの選曲はない。本作の選曲は必ずしもマノウォーのベスト盤と大仰に形容することはできず、要所で重要な名曲が抜け落ちている。マノウォーの初心者には良い内容かも知れないが、長年慣れ親しんでいるファンにとっては不満が残る内容であろう。我々の想像するマノウォーは更に劇的でヒロイックであるし、作品の構成にも非常に気を使うバンドだ。本作を契機にマノウォーの勇壮な世界観を理解できれば良いが、これが単にレコード会社の金儲けのために取られた措置であるならば、それは極めて悪質な行為だ。悲しいかな、これまでにヘヴィメタル界では似たようなベスト盤が山ほど発表されているのが現状である。



1. Manowar
第一作『Battle Hymns』(1982)から収録。ファンにはお馴染みの名曲である。
2. Metal Daze
第一作『Battle Hymns』(1982)から収録。
3. Fast Taker
第一作『Battle Hymns』(1982)から収録。
4. Battle Hymns
第一作『Battle Hymns』(1982)から収録。マノウォーの劇的かつヒロイックな音楽性を主張する名曲中の名曲である。
5. All Men Play On 10
第4作『Sign Of The Hammer』(1984)から収録。
6. Sign Of The Hammer
第4作『Sign Of The Hammer』(1984)から収録。ドラマティックなサビが印象的な勇壮なエピック・ナンバー。楽曲がリマスターされているのは嬉しいが、名作『Sign Of The Hammer』 からの選曲が二曲のみというのは痛い。
7. Fighting The World
第5作『Fighting The World』(1987)から収録。アメリカン・ロックンロール的な作風に回帰した本作では一部のファンから批判を受けた。タイトル・トラックである"Fighting The World"は悪い楽曲ではない。
8. Blow Your Speakers
第5作『Fighting The World』(1987)から収録。
9. Heart Of Steel
第6作『Kings Of Metal』(1988)から収録。マノウォーのもう一つの名作である『Kings Of Metal』からこの名バラードが選曲されるのは当然のことであろう。
10. Blood Of The Kings
第6作『Kings Of Metal』(1988)から収録。本作の最後に収録されたワイルドなエピックメタルの傑作であり、要所に過去の歌詞が再登場する。雄々しいエピローグも健在だ。
11. Violence And Bloodshed
第5作『Fighting The World』(1987)から収録。
12. Wheels Of Fire
第6作『Kings Of Metal』(1988)から収録。スラッシュメタルを意識したスピーディなナンバーである。
13. Metal Warriors
第7作『Triumph Of Steel』(1992)から収録。シングル・カットもされたヘヴィかつメタリックなメタル・アンセム。
14. The Demon's Whip
第7作『Triumph Of Steel』(1992)から収録。第7作から何故この楽曲が『Anthology』 の最後に選曲されているのかは未だに謎だ。マノウォーなら絶対にこのような中途半端な構成にはしないと考えられる。


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Louder Than Hell



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1996
Reviews: 86%
Genre: Epic Metal


マノウォーの1996年発表の8th。

ジョーイ・ディマイオ(b)、エリック・アダムス(vo)、スコット・コロンバス(d)、カール・ローガン(g)によって制作。カール・ローガンは新メンバー。このカール・ローガンは年齢が若く、高度な技術を持ったギタリストであり、愛車は当然の如くハーレー。要はマノウォーのメンバーに相応しい戦士ということだった。元々カールには、マノウォーの創始者であり、エピックメタル界の首領のジョーイのバイク乗り仲間だったという経歴がある。
有名な「地獄よりひどいぜ」とのタイトルが冠された本作の内容は、普段通り、大仰な正統派メタルの音楽のスタイルである。今作で他のアルバムと異なるのは、北欧神話や英雄叙事詩を歌う楽曲──例に挙げるなら北欧神話を讃えた「Thor (The Powerhead)」や「Blood Of My Enemies」等の名曲だろう──が少なくなったということ。冒頭を飾る#1はマノウォーのライフスタイル──バイクに乗り酒を飲みヘヴィにプレイすること──を歌っている。#2は最高のメタルアンセムであり、#3はヘヴィメタルの神に捧げられている。名バラードに値する#4、荘厳さを醸す#6、ヒロイックな#7も含め、質の高いピュアなエピック・メタルが収録される。また9分に及ぶインスト#8はクラシックからの影響を感じさせる。ここでは前作のオーケストレーション導入の成果が効果的に生かされている。#9はカールのギターソロ曲であり、超絶なプレイが披露される。ラストを飾る#10はマノウォーの代名詞的な大傑作。
全く持って素晴らしい作品である。バンドが如何にファンを大切にしているか、それは本作を視聴すれば明白になる。エピックな視点から考察すればシンプルになり過ぎているが、逆にそれは正統派らしい"分かりやすさ"として十分な良点だ。マノウォーの世界に本作から入るのも悪くはない。



1. Return Of The Warlord
名作2nd「Into Glory Ride」の#1"Warlord"の続編。
2. Brothers Of Metal Part 1
3. The Gods Made Heavy Metal
ヘヴィメタルの誕生を必然的に捉えたメタルアンセム。ヘヴィなサウンドがヒロイックさを誇示する。
4. Courage
勇ましく大仰な名バラード。短い中にヒロイックなドラマを網羅し、聖歌隊を彷彿とさせるコーラスが劇的なスケール感を演出。
5. Number 1
6. Outlaw
7. King
タイトル通りの勇ましさを備えた曲であり、冒頭と中間部のメロディは戦士のロマンティシズムを感じさせる。
8. Today Is A Good Day To Die
9. My Spirit Lives On
10. The Power
圧倒的な戦意で全てを破壊せんとするような、疾走感と重厚感に満ち溢れた名曲。イントロ部分のベース音が強烈。戦士の雄叫びともとれるサビは高揚感を爆発させる。この曲の意味はいたってシンプル。鋼鉄の力、剣と魔法の力である。


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Triumph of Steel



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1992
Reviews: 84%
Genre: Epic Metal


"Kings of Metal"ことマノウォーの1992年発表の7th。

エピック・メタルの大傑作となった前作を最後に脱退したロスの後任にデイヴィッド・シャンケル(g)、息子の重病を理由に脱退したスコットの代わりにライノ(d)が加入し制作された本作。この『The Triumph of Steel』はマノウォーの歴代の中でも長大な楽曲を有している。凡そ30分にも及ぶ超大作#1は、ギリシアの英雄叙事詩『イリアス』を題材にしている。日本のファンの間では「アキレス組曲」と邦訳される。合計8パートに及び、各メンバーの長大なソロを網羅したマノウォーらしい楽曲だ。バンドの大仰さを完全に表現したこの楽曲は、最大級の傑作であり、問題作でもある。大きな疲労感をもらたすこの楽曲を聴き終えることができるか、それはエピック・メタル・ファンとしての資質が問われるだろう。その後の楽曲はいつものマノウォーらしく、ドラマティックなエピック・メタルが展開される。決して大作だけに力を注ぐわけではなく、前編を通して完成度が高いのは普段通り。ラストの神秘的なバラード#8は突出した傑作。#1や#6、#8でも顕著だが、前作で導入されたシンフォニックな味付けが本作で更に本格的になっており、映画音楽を思わせるスケール感が強調される。大仰なスケールを感じさせる作風はマノウォーの一つの個性である。しかし、マノウォーの場合、シンフォニックと形容されても煌びやかなものを指すわけではない。マノウォーに導入されてる交響曲的要素は実際に古典的なものだ。それこそ昔から培われてきたような深みを宿している。そのため、ピュアなメタルファンでもその音色に率直に酔うことができるようになっている。より壮大なエピック・メタルに必要な要素を、マノウォーは他のバンドよりも早く発見した。本作は決して軽い気持ちで聴いてはならない作品である。マノウォーのエピック・メタルとは神聖なものだ。このアルバムからはヘヴィメタルの世界観の重さ、大仰さの爆発ぶりを遺憾なく感じることができる。また本作は、アルバムのボリュームがあるため、マノウォーの世界観に浸りたい方にお勧めできる。



1. Achilles, Agony, and Ecstasy
前述したようにIliasを題材にした一大エピックメタル。メタリックなリフによる激烈な幕開け、圧巻のソロパート、大仰なヒロイックメロディ、映画音楽のような荘厳なクラシック要素を網羅しており、とんでもない大作に仕上がっている。途中導入されるクラシック調のメロディにおいては、古代ギリシャの神殿、宮殿を思わせるほどに壮大。各パートごとに展開していく様はドラマ性に満ちており、やや冗長とファンの間で囁かれるも、魅力的なフレーズが大量に存在している。この神話的な組曲は、古代ギリシャの英雄伝説を見事にエピックメタルを駆使して完成させた紛れもない衝撃作だ。
2. Metal Warriors
重く、重厚だがノリのいい典型的なメタルアンセム。前作の「Kings of Metal」系統の曲、と言えば分かりやすいだろう。
3. Ride the Dragon
荘厳かつ野太い疾走曲。漂う雰囲気は剣と魔法を感じさせるものだ。
4. Spirit Horse of the Cherokee
野獣の如きエリックのシャウトが栄える曲である。雄々しいリズムが漢らしさを叩き出す。
5. Burning
スロウでダークな曲である。
6. Power of Thy Sword
純粋にヒロイックかつ高潔なエピックメタルの傑作。中間部の静かなパートは映画のような厳かさを感じさせる。剣の響きも導入されており、それだけで血拭き肉躍る。このアルバムのハイライトの一つである。
7. Demon's Whip
厳かな雰囲気があるがやや助長に感じる。しかし後半の激烈な疾走パートは強力。
8. Master of the Wind
崇高で神聖なるバラードだ。厳かで、それこそ映画のような奥行きを感じさせる。特にサビの持つスケール感は圧巻である。


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Kings of Metal



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1988
Reviews: 92%
Genre: Epic Metal


1988年発表のマノウォーの6th。

本作はヘヴィメタルのファンたちに"メタルの王達"とは誰なのかを認知させた、マノウォーの大傑作である。一般的には、初期マノウォーの集大成がこの『Kings of Metal』だと言われている。外部からの失笑を禁じ得ないような、大仰なドラマ性は、多くのエピック・メタルのファンたちにとって、まさに理想的な作風だった。中でも#9のオーソン・ウェルズの語り、過去の歌詞を網羅した名曲#10への流れは、80年代のエピック・メタルの音楽のスタイルを象徴するような、カルト的な興奮に包まれている。また、この作品からマノウォーのサウンドは、途方もなく壮大なものになっていった。大勢のオーケストラに加え、100人ものクアイア隊を迎えて本作の楽曲は制作された。それはマノウォーというバンドがようやく、理想とするエピック・メタルのサウンドを創造するだけの環境を得たという現実だった。『Kings of Metal』はバンドの創始者の一人、ロス・ザ・ボス(g)在籍最後の作品だが、それに相応しい、ヘヴィメタル史に残る不朽の名作である。



1. Wheels of Fire
多少当時ブームであったスラッシュの影響を受けたと思われるスピーディなオープニングナンバー。
2. Kings of Metal
ノリの良い彼らの典型的なメタルアンセムだ。
3. Heart of Steel
聴くだけで勇気が満ち溢れてくる、スケール感と力強さを併せ持つバラードの名曲。エリックの熱唱は余りにも熱く情熱的だ。クアイアも劇的に盛り上げる。
4. Sting of the Bumblebee
クラシック曲にインスパイアされたジョーイのソロ曲。
5. Crown and the Ring (Lament of the Kings)
100人の戦士が合唱するヒロイックファンタジーメタル究極の聖歌。
6. Kingdom Come
ヒロイックな雰囲気が漂う王国調の曲である。壮大なクアイアも加味されているが、エリックの超絶なシャウトも素晴らしい。
7. Pleasure Slave
歌詞の内容が女性差別として問題になった曲で、女のあえぎ声まで入っている(笑)。
8. Hail and Kill
もはや彼らのファンでこの曲を知らぬ者はいないだろう名曲。勇ましいにもほどがあるというものだ。
9. Warrior Prayer
ヒロイックファンダジー物語冒頭で語られそうな荘厳かつ大仰極まりない語り。年老いた老人が娘に"メタルの王達"の伝説を語る。演出も剣の音、爆音、群衆の喝さいと凄まじい。
10. Blood of the Kings
過去のアルバムの名曲の歌詞の断片を余すところなく詰め込んだ集大成的曲。荘厳で大仰極まりない上、高潔さも漂わせる名曲である。彼らにとっては定番である雄々しいエピローグが余韻を残す。


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Fighting the World



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1987
Reviews: 75%
Genre: Epic Metal


アメリカのエピック・メタル、マノウォーの1987年発表の5th。

本作より「Sword and Sorcery(剣と魔法)」アートの巨匠Ken Kelly(ケン・ケリー)がアートワークを手掛ける。ケン・ケリーは世界でも最高のファンタジー・アーティストであり、ロバート・E・ハワードの「コナン」シリーズの絵画は原作に忠実。マノウォーとの見事なコンビネーションは、後のアルバムでも続いていくこととなる。ケン・ケリーのカヴァー・アートワークは、マノウォーのヒロイックな世界観を視覚的に再現するために大きな貢献を果たしている。

今作は歴代のマノウォーのアルバムの中でも異色の内容である。前作で極めたエピック・メタルのスタイルを控え目にした冒頭4曲は、これまでの楽曲とは異なった雰囲気を持っている。それらの楽曲は、マノウォーのルーツにあるロックンロールの要素が強く出ており、好き嫌いに分かれる。エピックで荘厳な楽曲をマノウォーに求める向きなら、ノリが良くアメリカン的な冒頭4曲はお勧めできない。熱烈なエピック・メタル・ファンからしてみれば、この楽曲群は80年代を代表するエピックなバンド、マノウォーらしくない。しかし、これはファンたちの個人的な趣味の問題である。当然のように、マノウォーが楽曲を中途半端に作るわけがなく、この4曲の完成度は高い。#1は明白でキャッチーな曲だし、#3もLAメタルのファンに十分にアピールする要素を持っている。前半に変わり、後半は普段のマノウォー特有の荘厳でヒロイックな楽曲が並ぶ。特にオーソン・ウェルズの語りと共に行進する#5、勇壮なベース・メロディが疾走する激烈な名曲#9は出色の出来。今作は以前のアルバムにあった近寄り難さを粉飾した、幅の広い音楽性である。少なくともカルト的なエピック臭はあまり感じない。真性のエピック・メタル・ファンには、マノウォーの他のアルバムをお勧めする。 写真は再販盤だろうが、音質がすこぶる悪いのが残念である。



1. Fighting the World
キャッチーながらも勇ましいサビをもつ曲。サビは非常に分かりやすいだろう。
2. Blow Your Speakers
アメリカンで私の肌には合わない曲だ。
3. Carry On
こちらもアメリカンな曲である。もちろん出来はいい。
4. Violence and Bloodshed
短く展開も薄い。正直捨て曲かもしれない。
5. Defender
オーソン・ウェルズの語りを導入した荘厳な雰囲気を持つ曲。オーソン・ウェルズの語りはまるで威厳のある老人とでもいうようで、その迫力には舌を巻く。彼の語りと共にエリックが歌うサビのパートは静かな興奮を覚える。
6. Drums of Doom
#7の序曲であるインストゥルメンタル。
7. Holy War
厳かでヒロイックな彼ららしい三連の曲である。やはりこういった曲の完成度、世界観の表現力は恐ろしい。
8. Master of Revenge
野蛮で荘厳な#9の序曲ともいうべきインスト。ドラマ性に満ちた楽曲の繋ぎ方はエピックメタルの基本ともいえるスタイルだ。
9. Black Wind, Fire and Steel
激烈なベースピッキング、エリックの壮絶なシャウトと勇壮なメロディが疾走する名曲である。大仰かつドラマティックなヒロイックメタルの傑作ともとれるだろう。


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Sign of the Hammer



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1984
Reviews: 96%
Genre: Epic Metal


アメリカのエピックメタルの始祖、マノウォーの1984年発表の4th。


本作『Sign of the Hammer』はマノウォーの名を全ヘヴィメタル・ファンに認知させ、エピック・メタル界の王座に君臨するきっかけを作った、伝説的な名盤である。本作を聴いて何も感じないのであれば、エピック・メタルはあなたの肌に合わないことになる。また、『Sign of the Hammer』はカルト的なエピック・メタルを代表する最も基本的な一枚でもある。全編を貫く異様な雰囲気は、まさに"カルト的な音楽アルバム"の本質を強調している。

Sign of the Hammer』を貫く荘厳さや、ヒロイック・ファンタジー風の世界観を彷彿とさせる勇壮な内容は、全く持って筆舌に尽くし難い。恰も中世の騎士や古代の戦士を想像させるような、古典的なロマン主義や英雄主義は、本作の大きな特徴である。そして、それらが見事なピュアメタルと融合して、高度な次元に到達しているのが『Sign of the Hammer』全体の内容である。単純に楽曲が素晴らしいだけではなく、メンバーの演奏力も一流。特にヘビィかつメタリックなベース・プレイをするジョーイ・ディマイオ(b)は、バンドの中心人物であり、メインソングライターである。また、エリック・アダムス(vo)の壮絶なシャウトや、勇ましい歌唱のスタイルにも注目が集まる。本作は終始徹底してマノウォー特有の大仰さや劇的さも表現されているが、他の作品に比べてシンプルに収まっているので、一切無駄な時間がない。

ヘヴィメタルの音楽的特徴によって古代や中世、神話上の英雄たちを讃えるなら、この作品はまさにバイブルとなる。しかし、それだけにヘヴィメタル界屈指の演奏力を誇るメンバーたちの演奏の録音がチープなのは、時代の悲劇でしかない。最も、そのチープさがカルト的なエピック・メタルが放つアンダーグラウンド臭を倍増させている点は奇跡である。



1. All Men Play on 10
ややロックンロール調のノリのいいヘヴィメタル・アンセム。ブリッジの勇壮さには目を見張るものがある。
2. Animals
こちらもノリのいい疾走曲。ワイルドな疾走とシャウトが堪能できる。ここまではお遊戯に過ぎない。
3. Thor (The Powerhead)
前半の二曲がまるで序章のように思える荘厳かつ勇壮極まりない名曲。北欧神話における雷神トールの名を冠した楽曲であり、イントロ部分はまさにトールがその鉄槌を叩き付けるかのような衝撃を放つ。そして聖歌隊のような歌声からコーラス、ギターソロへという劇的な展開は呼吸困難に陥るほどのヒロイックさだ。
4. Mountains
「剣と魔法の世界」とも形容できる静寂さと激烈な勇ましさが展開する壮絶な名曲。山のように偉大な男らから我々へ、勇気の尊さと力の強靭さを教えられる楽曲である。クライマックスの戦士の哀愁を漂わせるギターソロから、軍隊のようなサビへと至る決死の展開には感動を覚える。マノウォーにしか生み出せないであろう、途轍もないロマンティシズムとヒロイズムが同居する壮大な一大叙事詩。
5. Sign of the Hammer
超高速ベースから疾走するタイトル曲。荒々しい疾走から一変、サビでの勇者のようなエリックの歌いあげとクワイアは壮大さを極める。これはマノウォーで最もヒロイックなコーラス・パートであるかも知れない。途轍もない高揚感が渦巻く。エピックメタルとは何か、戦士とは何かの答えを我々この楽曲で見出すであろう。問答無用の名曲。
6. Oath
戦士の殺戮の誓いを歌う。エピックメタル、ピュアメタルを体現した激烈な疾走曲。激しいリフとドラムが叩き出す勇壮さは壮絶。荘厳なコーラスも見事に楽曲をドラマティックにしている。
7. Thunderpick
伝説のベーシスト、ジョーイ・ディマイオ(b)による驚愕のソロ・インストゥルメンタル。これが本当にベースのメロディなのかと耳を疑う神秘的な旋律を有する。高貴で美しく、ヒロイックなメロディは感動的。そして"Guyana (Cult of the Damned)"へと劇的に流れるのだ。
8. Guyana (Cult of the Damned)
劇的なイントロダクション#7"Thunderpick"に流れるように続くという、まるで戦士の物語を思わせるようなバラード。ガイアナ(地獄に落ちたカルト)と題されたこの楽曲は、中米ガイアナでのPeoples Templeのカルト集団自殺を通して、我々に信仰の悲劇を物語っている。当時はカルト的なエピック・メタル・バンドだったマノウォーが、こういった題材を選択した理由は他にもあろう。楽曲や詞、あまりにも衝撃の内容だ。冒頭の流れるようなメロディに続く、オープニングのベースソロは感動を誘う。そして、マーチ調のリズム、カルト的な雰囲気、サビでのエリックによる渾身の歌唱からはヒロイックな印象を受ける。本作のエンディングに相応しい、エピック・メタル史に残る記念碑的名曲。


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Hail to England



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1984
Reviews: 87%
Genre: Epic Metal


エピック・メタルの始祖、マノウォーの1984年発表の3rd。


この頃から戦士としての屈強なイメージが定着し始めた。重厚かつ荘厳な「剣と魔法の世界」を描いたエピックメタルの名盤『Into Glory Ride』(1983)の雰囲気を継承し、発展させて完成したのが本作『Hail to England』である。
思い出してみるが、前作は5分~7分台の大作が全編に渡って配置されていた。そのために、熱烈でかつ叙事詩的なヘヴィメタルのファン以外には正しい理解を得られなかった。多くのヘヴィメタル・ファンは分かり易くシンプルなものを好む傾向にあるためである。この傾向はヘヴィメタル以外にも該当することであろう。これらのことをマノウォー自身が踏まえたかどうかは明白ではないが、今作は殆どの楽曲がシンプルにアレンジされ、マノウォーの持つ野蛮な攻撃性と高度なドラマ性が一つの箱に濃縮されている。それが顕著に表れた#1"Blood Of My Enemies"はヒロイック・ファンタジーメタルの大傑作に値する。また恐ろしいタイトルを持つ#3"Kill With Power"もシンプルかつ攻撃性に溢れた本作を代表する名曲である。当然の如く、明確でシンプルな楽曲を網羅した今作は大成功を収めることとなり、現在でも『Hail to England』を最高傑作に挙げるファンは多い。

先ほどから我々は"シンプル"という言葉を頻繁に用いたが、長大な大作やプログレッシブで複雑な楽曲を好むエピックメタル・ファンから見れば今作はあまり練られていない、と解釈する向きもいるであろう。つまりはマノウォーにとってのシンプルとは何であるのか。答えは簡単である。"無駄が一切ない"とういうことである。本作には無駄がない。故に全7曲で約35分しかないのだ。しかし聴けばあまりにも濃い内容だと気付くはずである。あなた方はシンプルな楽曲の中に濃縮された孤高の戦士のドラマティシズムを是非とも感じるべきである。それが我々が言うことができる精一杯の言葉だ。
我々は本作を散々シンプルで短いと言ってきたが、ラストの大作"Bridge Of Death"はなんと約9分もある。この楽曲こそが本作のハイライトといっても過言ではなく、コンパクトにまとめられた楽曲とは一線を画す内容を持っている。最後に徹底的に表現された、捲るめく厳かな戦士の世界──このドラマ性がマノウォーの創造するエピックメタルである。本作にはシンプルな楽曲、大作とあるが、特に本作が素晴らしい点ではそのどちらもクオリティが尋常ではなく高いということだ。

少し本作の世界観について考えてみよう。北欧神話における「剣と魔法の世界」を描いた#1"Blood Of My Enemies"は典型的なマノウォーのエピックメタルである。前作にも"Gates Of Valhalla"という楽曲が収録されているが、北欧神話の英雄世界を舞台にした楽曲の完成度には舌を巻くべきものがある。マノウォーが戦士的な讃辞で常に崇拝しているのはオーディンやトールであり、今後もその世界観は続いていくばかりか、もはやマノウォーの描く定番ともいえる世界観と化している。
マノウォーが自らのエピックメタルをよりヒロイックかつ荘厳にするために選択したのが北欧神話の世界であった。そこでは絶え間ない鋼の剣による戦い、魔法の猛威、死、勇気に満ちた行為があり、我々の根底的な本能を揺さぶり感情を高揚させる要素が存在している。マノウォーのヘヴィメタルは高揚感で満ち溢れている。
我々は常にヘヴィメタルとは何を表現するための音楽か、と自問自答する。その時に浮かぶのがマノウォーに代表される「剣と魔法の世界」を描いたエピックメタルであり、それらの叙事詩的なヘヴィメタルにこそが、ヘヴィメタルの持つ根本的な要素や本来あるべき姿を表現しているのではないか、という結論に達する。ポピュラー音楽に「剣と魔法の世界を音楽で表現しろ」といってもそれは不可能なことだ。

なお#4"Hail To England"に表れているように、マノウォーはヨーロッパ圏内での人気が非常に高い。本国のアメリカよりもである。特に本作が制作された当時はそうであった。始めて世界でマノウォーを認めた国がEngland(要するにイギリス)なのである。本作は欧州(と全てのファンに)に向けて制作されたものだ。

追記:本作『Hail to England』と前作『Into Glory Ride』は2005年に特殊パッケージで再発された。



1. Blood Of My Enemies
北欧神話の神々の世界を綴った厳かなる楽曲。多くのヘヴィメタル・ウォリアーに歌い継がれる名曲中の名曲である。神々しく神聖なメロディをもつサビは震えあがるほど勇ましい。三連の行進調リズムは屈強な戦士の軍隊を思わせる。
2. Each Dawn I Die
不気味でダークな雰囲気に満ちた楽曲。
3. Kill With Power
野蛮な攻撃性に満ちた名曲。怒号のスピード感とスコット・コロンバスのドラミングは驚異的。しかし「力で殺す」とは凄まじくインパクトのあるタイトルだ。
4. Hail To England
スロウで勇ましいメロディを持つ曲。イングランドに対する敬意や感謝が伝わってくる。
5. Army Of The Immortals
恐れを知らない勇猛果敢な戦士たちとして知られるマノウォーのファンに捧げられた名曲。ギターリフのメロディは電撃のような勇ましさを持つ。
6. Black Arrows
ジョーイによるアグレッシブなベースソロ。ナレーションど導入するなどのドラマ性も披露。
7. Bridge Of Death
壮大なスケール感で溢れる神聖なエピックメタル大作。エリック・アダムスの神聖かつ賛美するかのような大仰な歌唱に導かれて展開するヒロイックなベースメロディ、雄々しく行進するドラムス、ラストの聖歌コーラス的なエピローグなど、傑作たる要素を凝縮。厳かな雰囲気は圧巻である。歌詞のベースは聖書のルシファー、サタンに基づく。


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Into Glory Ride



Country: United States
Type: Full-length
Release: 1983
Reviews: 88%
Genre: Epic Metal


エピック・メタルの始祖、マノウォーの1983年発表の2nd。

今なおエピック・メタル界の王座に君臨する偉大なるバンド、それがマノウォーである。メンバー全員が死をも恐れぬ屈強な体躯のヘヴィメタル・ファンを自覚しており、常に音楽に対して全身全霊を捧げるその姿勢は、世界中に多くのファンを生み出した。エピック・メタルの歴史において、双璧のヴァージン・スティールに加え、キリス・ウンゴルやマニラ・ロードと共に多大な貢献を果たしたバンドでもある。リーダーのジョーイ・ディマイオ(b)を筆頭に、歴代メンバーの過激な言動や行動はもはや伝説的。マノウォーの鍛え上げられた肉体は、ファンタジィ・ヒーローの『コナン』に通じる(ジョーイは過去、インタビューでロバート・E・ハワードの生み出したキング・カルやコナン等の英雄達のファンだ、とも語っている)。

この『Into Glory Ride』と題されたマノウォーの第2作目は1983年に発表された。本作から軍隊のようなドラムを叩き出す名ドラマー、スコット・コロンバス(ds)が加入。スコット・コロンバスのドラムによって、アルバム全体にヘビィな重厚感が増しており、より重厚なサウンドが構築されるようになった。アルバム・ジャケットを見ても既に明らかなように、本作はダークで重苦しくも荘厳な雰囲気が全編を覆い尽くしている。それらはデス・メタルやブラック・メタルのような邪悪さではなく、厳かな戦士の世界の熱気に近い。冒頭にもジョーイは『コナン』のファンであると書いたが、鍛え上げられた見事な肉体、戦士の恰好を醸したジャケット、北欧神話や《剣と魔法の物語》を題材にした詞世界を見る限りでは、その傾向は極めて徹底している。"ヒロイック・ファンタジー"といわれる伝説の世界、それをヘヴィメタルで表現したマノウォーの試みは、実に興味深いものだ。本作を聴くと恰も神話上の妖魔や英雄達が蘇り、勇敢にも剣や戦槌を振り翳して戦っているような光景が一瞬でも垣間見れる。『Into Glory Ride』でバンドは、ヘヴィメタルの本質や戦士のアイデンティティをリスナーに問い質している。

大昔に忘れられた《剣と魔法の物語》を再現したマノウォーの『Into Glory Ride』は、すべてのヒロイック・ファンタジーを愛するもの、探求するもの、エピック・メタルの忠実なファンにとって、非常に理想的な作品だった。一般の音楽ファンから見れば、この作品は重くスロウな内容だ。しかし、エピック・メタルを求める向きからすれば、これほど荘厳かつ野蛮でヒロイックな作品は存在しないのである。大仰かつドラマティックなサウンドは、エピック・メタルの方向性を明確に示し、エリック・アダムス(vo)の雄々しく高貴な歌唱スタイルは、表現したい世界観に大きな説得力を与えている。ヒロイック・ファンタジーを体現し、唯一無二の完成度を誇る本作は、間違いなくエピック・メタル史に残る名盤だろう。しかし本作は、音楽ファンから楽曲が助長だという指摘を受け、今でも多くのリスナーを遠ざけている。 一度、そういった先入観を捨て去って、カルト的なエピック・メタルの世界を体験するなら、『Into Glory Ride』は入門書のような役割を果たすだろう。



1. Warlord
女のあえぎ声で幕を開けるアルバムの序曲とでもいうような悪漢なロックンロール。エピックメタル・ファンにとっては蛇足。
2. Secret Of Steel
太古の剣と魔法が支配する時代では、戦士の死後、天の神の御前に立たされ"鋼の秘密(Secret Of Steel)見出せり?"と問われるという。それが『コナン』の世界である。タイトルの如く荘厳な楽曲であり、重厚なエピックメタルの代名詞ともいえるような名曲である。エリックの雄々しい歌声と共に、スコットの軍隊のようなドラム、古代を思わせる聖歌が突き抜けるサビは壮絶を極める。
3. Gloves Of Metal
熱きヘビィメタルの凱歌である。ヒロイックかつヘヴィなリフが刻まれる際の心地よさは相当なものがある。重厚なヘヴィネスが継承されるコーラスは共に合唱するためにあるようなもの。メロディも抜きん出ている。
4. Gates Of Valhalla
北欧神話に登場する神の居城ヴァルハラを題材としたエピックメタルであり、死にゆく戦士の讃美歌を神秘的に歌い上げる。あまりにも荘厳で死地のような暗い雰囲気が充満しているため、一般のリスナーが聴いたら拒絶反応を示すことは必至。ラストのエリックのシャウトは人間離れしている。
5. Hatred
非常に重くスロウなヘヴィメタル。中間部のベースの美しいメロディは戦士のロマンティシズムを表現しているかのようだ。
6. Revelation (Death’s Angel)
地を駆ける馬の如き疾走、野蛮な歌声が魂まで震わせる大仰でヒロイックな大名曲。サビの漢のロマンティシズムを表現したかのような哀愁に満ちたメロディ、クライマックスに至るまでの興奮に滾ったゾクゾクする展開は剣と魔法の世界を感じるのに十分すぎるものだ。聴き終えた後に残るのはヒロイック・ファンタジー映画のエンディングのような高揚感のみである。
7. March For Revenge (By The Soldiers Of Death)
ヒロイックなエピックメタルの本作を代表する名曲。剣によって死した兄弟の戦士の復讐を、剣を持って成し遂げるという壮絶な叙事詩。冒険譚を思わせる勇敢なメロディの行進、サビでの雄々しい歌声は、一種の高揚感の限界を感じさせ、エピックメタルの真骨頂を発揮。中間部での荘厳かつ神聖なパートは、まるで死んだ仲間を抱き、復讐を誓う戦士の姿を想像させる。「For when we march, your sword rides with me(我らが行進せし時、汝の剣も共に行進せり)」とレクイエムのように歌うパートは感動的。エピローグでもあるラストの《剣と魔法の物語》を連想させる厳かなコーラスは、本作のエンドロールに相応しい。


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