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アンシェント・スピリット・ライジング



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2007
Reviews: 79%
Genre: Epic Power Metal


イタリアの古豪、エピック・メタル界をリードする"嵐を呼ぶ者の支配者"、ドミネの2007年発表の5th。


エンリコ・パオリ(g)とリッカルド・パオリ(b)の兄弟に加え、強烈な個性を放つモービィ(vo)のラインナップは前作同様。戦士のように飽くなき探求を続け、ヒロイック・ファンタジー系ヘヴィメタルを創造し続けてきた彼らは、その歴史的な前作『Emperor of the Black Runes』(2004)で過去最大の成功を手にして久しい。情熱的な意欲に濃厚極まりない楽曲の質、追求し続けてきたマイケル・ムアコックに連なる叙事詩的な世界観が見事に完結したともいうべき驚愕の内容は、あらゆるエピック・メタルのファンの魂を興奮と恍惚で満足させた。そのような傑作から3年が経過し、当然の如く新作への期待は高まった。そして、2007年、満を持して発表されたのが本作『Ancient Spirit Rising』である。

まず、本作を視聴したのならば、誰もが思うはずだろう「ドミネは変わった」。メンバー曰く、"過去の古い伝統的なロックに舞い戻った"作風は、残念ながらドミネの良さを粉砕し尽くしている。ドミネが目標としたのは80年代のハードロック/ヘヴィメタルであるが、その根底にある、陽気さや軽さまでもが楽曲に表現される形となった。ドミネの唯一無二の個性だった悲壮感や宿命感──伝説的な《エルリック・サーガ》に秘められた暗さや暗澹たる妖艶さに似ているもの──が失われ、取って代わったのは、奇妙な明るさである。これまでのドミネのエピック・メタルに表現されてきた雄大さや情熱的なヒロイズムは、太陽を遮る邪悪な黒雲のように完全に隠された。

楽曲の充実、完成度は言うまでもなく高い。安定した演奏に加え、伸びのあるハイトーンが時に心地よく響く。メロディアスな面も充実している。本作がカルト的なエピック・メタルから、メジャーな音楽性を目指した大胆な内容であることは間違いない。しかし、ドミネの熱心なファン層は、このような音楽性を求めているのではないことは確かである。前作までの混沌とした英雄世界が一部のカルト的なエピック・メタルのファンたちに受け入れられ、ドミネの新作は記念碑的な名作となった。ドミネの体現したヒロイズム、大仰さ、ドラマ、ロマンス、叙事詩的な世界こそは、ドミネがエピック・メタルの支配者たる由縁だった。疑問は残る。その最大の武器を失った今、ドミネには何が残っているのだろう。過去の名曲の雰囲気を微小に残す"Another Time, Another Place, Another Space"が意味深に響く──私たちは彼らを信じるとしよう。何れ再び、新たな幻想と怪奇の叙事詩を名剣の如く携えて、群衆の前に嵐を呼ぶ者の支配者が帰還することを。



1. The Messenger
本作の作風を主張するかのような、飛翔感を漂わせる楽曲である。
2. Tempest Calling
スピードナンバー。良質なメロディック・パワーメタルである。
3. The Lady Of Shalott
第2作『DragonLord(Tales from the noble steel)』でも題材とした『アーサー王物語』から乙女シャーロットを歌った楽曲。幻想的なアルバム・ジャケットに描かれているのは彼女である。しかし、悲劇的な物語であるのに対し、曲が明るい雰囲気を醸し出しているのは頂けない。
4. Stand Alone (After The Fall)
5. Ancent Spirit Rising
プログレッシブな大作であり、タイトルトラック。楽曲に秘められた意味は、古い時代のロックの再興だという。
6. On the Wings of the Firebird
7. Another Time, Another Place, Another Space
従来のドミネの雰囲気を宿したエピカルな楽曲。神秘的な世界観を描き、重厚なメロディを絡ませる部分は流石か。
8. Sky Rider
疾走する伸びやかな楽曲。
9. How the Mighty Have Fallen
今作の作風を上手く消化した、バラード調の佳曲である。絶妙なる、明るさと哀愁との融合は見事という他ない。出来れば全曲にこの雰囲気が欲しかった。


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エンペラー・オヴ・ザ・ブラック・ルーンズ



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2004
Reviews: 94%
Genre: Epic Power Metal


イタリアの古豪、ドミネの2004年発表の4th。


「そしてキンメリア人の誇りによって、いつの日かアキロニアの王冠は我がものとなろう」
 "The Aquilonia Suite - part I"より




長年エピック・メタルという地下の分野を探求してきた我々にとって、ドミネ(DOMINE)という強烈な名は忘れ得ぬものである。第2作『DRAGONLORD(Tales from the noble steel)』(1999)から劇的なまでにヒロイックなエピック・メタルの世界観を絶え間なく追求してきたドミネの才能は、一大傑作『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』(2001)で宇宙規模の大爆発を引き起こした。過去のホークウィンド、そしてキリス・ウンゴルの時代から続く古典的なヒロイック・ファンタジーの世界をヘヴィメタルで表現するという、全く不可能と思われた斬新な試みは、まさにドミネの登場によって覆されたのである。
我々はドミネの齎した功績について考える際、必ずイギリスの作家マイケル・ムアコック(Michael John Moorcock)の功績も同時に思い出すことになる。マイケル・ムアコックの創造した途方もない世界観──『永遠のチャンピオン』シリーズで描かれた多元宇宙という果てしない構造──に対する飽くなき探求が、結果としてドミネに素晴らしい恩恵を授けたのである。この古典的なヒロイック・ファンタジーは、ハワードの名作『コナン』のように、エピック・メタルという分野で何れ再現されるべき題材であったが、現代におけるヘヴィメタルの著しい低迷、更には挑戦的なバンドが現れないことも、この課題に時間を費やす原因となっていた。
ドミネがイタリアのフィレンツェで1983年に結成された時、可能性はまだ小さかった。歳月をかけて完成させた4本のデモ・テープは、カルト・エピック・メタルのマニアですら見出すのに長い時間がかかった。ドミネの第一作『Champion Eternal』が発表されたのは1997年であり、エンリコ・パオリ(Enrico Paoli:g)とリッカルド・パオリ(Riccardo Paoli:b)の兄弟の夢は、忍耐という壁に押し潰されかけていた。それでもなお、ドミネがバンドを続けられてきた背景には、ヒロイック・ファンタジーへの飽くなき情熱があったからこそである。掲げられる気高い理想が平然とあるように、理想とは叶えられるべきものであった。
ドミネには才能がある。だからこそエピック・メタルのファンは未熟な『Champion Eternal』を絶賛したのだし、ドミネの肩を持ち続けたのであろう。彼らの選択は正しかった。今や苦渋の過去は去り、ドミネはエピック・メタル・シーンにおける王者のような風格を宿した最重要バンドとなって、この分野で偉業を成し遂げた数少ない英雄(ヒーロー)として、支持を受けている。我々は叙事詩の中の英雄がかつてそうであったように、古強者であるドミネを讃え、その偉業を振り返る。恰もタルサ・ドゥームの軍隊の如く、大地を轟かす凄絶なドミネの行軍は、鈍い音を立てて砂丘を踏み荒らす軍馬の蹄のように、いつまでも我々の脳髄の中で木霊するのだ。



傑作である前作『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』(2001)での成功、加えてヒロイックかつファンタジックなエピック・メタルを極限まで砥いで完成させたドミネは、一部のエピック・メタル・ファンより絶大な支持を獲得するに至った。ファンが支持し、ドミネが完成させた唯一無二のエピック・メタルこそ、古典的なヒロイック・ファンタジーの正式な再現であった。
前作の利点をすべて踏襲し、更なる芸術性を極めたのが本作『Emperor of the Black Runes』である。作品のタイトルには、当然の如く、前作でもコンセプトとした"メルニボネのエルリック(Elric Of Melnibone)"の要素が用いられている(マイケル・ムアコックの原作『永遠のチャンピオン』において、「黒きルーンの皇帝」とはエルリックを指しており、エルリックは一万年の歴史を持つメルニボネ帝国の最後の皇帝として君臨し、エルリックの持つ黒き剣(Stormblinger)には無数のルーン文字が彫られている)。
勇壮な世界観をヒロイック・ファンタジーの古典から受け継ぎ、本作も詞世界には殆どヒロイック・ファンタジーが用いられている。"The Aquilonia Suite - part I"で題材としているのはジョン・ミリアスの映画『Conan the Barbarian(邦題:コナン・ザ・グレート)』(1982)であり、また"Icarus Ascending"では有史以前のギリシア叙事詩を題材とし、正統派エピック・メタルの伝統に忠実に沿っている。『エルリック・サーガ』を題材とした"The Song of the Swords"では、魔剣を操る二人の英雄に焦点を当て、戦いに特化した空想的な世界観を再現し、エピック・メタルにおけるヒロイズムの重要性を説いている。我々はそれらを真摯に受け止め、尚且つエピック・メタルの持つ至高の陶酔感に浸らなければならない。
サウンド面は大化けしている。ギターソロの充実、圧倒的な疾走感、楽曲を構築する重厚感が著しく向上していることは既に明らかであり、ドミネ特有の悲壮感を感じさせるメロディや、劇的な緩急を用いたプログレッシブなドラマ性も見事なまでに表現されている。これらは傑作であった前作を大きく凌駕する内容である。作品全体としての一体感、統一感までも尋常ではないほどに高度なものとなり、各楽曲に描かれた幻想が視覚を刺激するレベルにまで到達している。ここまで剣と魔法の世界を表現したエピック・メタルは他にはなく、 本作を持って、まさにドミネは神格化したといえるであろう。"And justice is done(そして正義は果たされた)"



1. オーヴァーチュア・モーテイル
Overture Mortale
クラシカルかつ荘厳なオープニング。前作同様、脅威と興奮の世界への幕開けといったところであろう。ちなみにモーツァルトのオペラ「ドン・ジョヴァンニ」をアレンジするという高度な技を用いている。

2. バトル・ゴッズ
Battle Gods (of the universe)
ドミネの定番である激烈な疾走曲。勇壮なメロディ(極めて英雄的な)を伴い、騎士のように疾走する様はもはや筆舌に尽くしがたい。さらに今回は重厚なバッキングが加わり、よりリアリティを持った伝説の世界を表現することに成功している。題材は中国のヒロイック・ファンタジー映画『The Legend of ZU』であるという。

3. アリオッチ、ザ・ケイオス・スター
Arioch, the Chaos Star
聴き手が打ちのめされるに相応しい強烈な一撃。多元宇宙における混沌の王アリオッチ(Arioch)を歌った、幻想と怪奇の渦巻くおぞましい楽曲である。"Battle Gods (of the universe)"と同等か、それ以上の激烈な疾走感を誇っており、サビの猛烈な勇ましさと驚異的な荘厳さには絶えず圧倒される。途方もなく壮大な世界である。

4. アキロニア組曲 パートⅠ
The Aquilonia Suite - part I
ヒロイック・ファンタジー史にその名を残す映画『Conan the Barbarian(邦題:コナン・ザ・グレート)』(1982)のサウンドトラックからの引用を含む、およそ14分にも及ぶ超大作である。栄光に満ちた古代世界を思わせるような荘厳な曲調、大仰極まりない曲展開により、聴き終えた後には英雄の如き興奮と高揚感を味わうことが可能となる。この展開はまるで映画のようだ。メロディはヒロイックの一言に尽きる。特にクライマックスでの感動的なギターソロ・パートが興奮を最高潮にまで押し上げる(このソロは、映画でコナンとヒロインのヴァレリアとの愛を歌った、感動的なテーマ・メロディのものである)。

5. 紅衣の公子
The Prince in the Scarlet Robe (the three who are one - part I)
「一五次元界」の英雄、紅衣の公子コルムを歌う英雄的なコーラスが感動を誘う壮大なバラード。中世を思わせる、モービィの勇ましい熱唱がこれでもかというほど胸を打つ。攻撃的な"The Aquilonia Suite - part I"の後に静かな曲を持ってくる繊細さも素晴らしい。彼らのバラードでは最高の完成度であろう。

6. イカルスの飛翔
Icarus Ascending
前半の哀愁漂う雰囲気とは一線を画す陽気な楽曲。古代ギリシアのイカロスの自由への探求を叙事詩的に描いている。決して平凡なわけもなく、勇ましくかつエピカルに仕上がっている。このアルバムには捨て曲はない。

7. ザ・ソング・オブ・ザ・ソード
The Song of the Swords
勇壮な疾走曲。ストームブリンガーとモーンブレイドという二振りの剣につて歌っている。独特の雰囲気を放ち、幻想の中へと聴き手を誘う。剣と魔法の世界を忠実に再現したエピック・メタルである。後半のケルティックなギターソロは古代の勇者を思わせる勇ましさ。

8. ザ・サン・オブ・ザ・ニュー・シーズン
The Sun of the New Season (an homecoming song)
"The Aquilonia Suite - part I"には及ばないが、幻想的な大作。冒険物語のような、徐々に盛り上がっていく展開はドラマティックだ。勇壮かつ重厚な鋼鉄の響きによって、異世界に入るような感覚さえ覚える。女性ゲスト・ヴォーカル、リーナン・シドハとモービィのハーモニーも繊細。

9. トゥルー・ビリヴァー
True Believer
名曲として名高い熱き疾走曲。大仰極まりない疾走とシャウトの連打により、凄まじい勇ましさを感じることができる。楽曲の衰えなさは、正直疲労に値する。

10. ザ・フォレスト・オブ・ライト
The Forest of Light
ラストの静かなバラード。アルバム全体を通して、これらの物語を思わせる全体の構成が、やはり最後に胸を打たれるのであろう。この楽曲には、永遠の戦士が戦いを終え、永遠の都──ムアコックの世界ではタネローンと呼ばれている──で静かな平安を得る姿が想像できる。


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Stormbringer Ruler



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2001
Reviews: 93%
Genre: Epic Power Metal


イタリアン・エピック・メタルの雄、ドミネの2001年発表の3rd。


「母よ、私の時代が来た。父よ、私の日々は過ぎ去る」
 "Dawn of a New Day - A Celtic Requiem (The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part IV)"より


1 ドミネの登場

歴史的に極めて珍しい事態だが、ラプソディーなどのエピック・メタル・バンドを産んだイタリアでは、叙事詩的なヘヴィメタルに対する注目が一度に集まっていた。その状況下にあるイタリアで傑出して頭角を現したのが、現地で名立たる古豪のDOMINE(ドミネ)だった。 ドミネは激烈にヒロイックな正統派メタルを軸にして、荘厳なシンフォニーやコーラスの多様といった、まさに典型的なエピック・メタルの音楽のスタイルを貫くバンドだった。
ドミネに関して特筆すべき点は幾つもあり、要所はヘヴィメタルに対する情熱、《剣と魔法の物語(ヒロイック・ファンタジー)》の世界観に対する憧憬を滲ませんばかりの疾走曲は、真に熱いの一言に尽きる。それは正式名『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』と題されたドミネの第3作目の楽曲群にも顕著に表れているが、詞世界は主にヒロイック・ファンタジーであり、中でもイギリスの小説家マイケル・ムアコック(*注釈)の『Champion Eternal(邦題:永遠のチャンピオン)』には相当の思い入れがあるようだ。この物語は現在でも世界中にファンを持つ、ヒロイック・ファンタジーの歴史の中でも類を見ない大傑作である。本作のアルバム・ジャケットに大仰なまでに描かれているのは、その英雄エルリック以外の何物でもない。このアルバム・ジャケットには、エルリックの活躍する世界「新王国」が《混沌》に支配され、空は地獄のような紅に染まり、《運命の角笛》を握りしめたエルリックが、まさに一つの時代の終わり(The End Of An Era)に立ち会うという、壮絶な場面が描かれている。
少し昔の話をするが、かつてエピック・メタル界にもマイケル・ムアコックの世界観に傾倒し、エルリックを題材としたカヴァー・アートワークを作品に頻繁に用いていた、CIRITH UNGOL(キリス・ウンゴル)というバンドがいた。キリス・ウンゴルは正統派メタルをベースに大仰かつドラマティックなエピック・メタルを作り上げた、このジャンルの第一人者だった。そして、ドミネのコンセプト、及びサウンドを見る限りでは、一致する部分が多くあり、まさに正統継承者と言って良いだろう。

2 世界観の追及

当然の如く、このアルバムはあまりにも素晴らしいアルバムだ。エンリコ・パオリ(Enrico Paoli:g)本人のプロデュースによる本作は、壮大かつ勇壮で、聴いていて熱いものが込み上げてくる。本当に男らしく、真にヒロイックなエピック・メタルが好きな者ならば、このアルバムは嫌いにはなれないはずである。ファンはドミネの熱い鋼鉄の信念に対し、敬意を表するべきなのである。
ドミネの気高い信念は、本作のコンセプトに表れている。アルバム・コンセプトは前述したように、ドミネが愛してやまない"永遠のチャンピオン"であり、"Horn of Fate"、"The Bearer of the Black Sword"、"For Evermore"、"Dawn of a New Day"は、「Elric Of Melnibone」という伝説の最終章からインスパイアされたものだ。ドミネは大胆にもエルリック・サーガの伝説的な最終章を、伝統的なエピック・メタルで再現しようとしたのだ。
そして、勇壮に疾走するヘヴィ・メタリックなリフと、荘厳なシンフォニーによって、見事にこの物語は大々的に表現され、本作の目的は達成されたのである。何よりも、エルリックが合わせ持つ独特の悲壮感が完全に表現されている様には、ファンも本当に驚くばかりだった。収められた楽曲はどれもヒロイックかつ重厚なものばかり。そこに大仰なドラマ性も加わり、まさに、ドミネ独自のエピック・メタルが展開されている。 ケルティックなギター・ソロも魅力的であり、神話的なヒロイズムを表現することに大きく貢献している。また、ヴォーカリストのモービィ(Morby:vo)の歌い上げるハイトーン・シャウトも圧倒的な実力で聴き手に迫ってくる。本作のゲストであるBEHOLDERのリーナン・シドハとのヴォーカ・ルハーモニーも非常に良い演出であり、エピック・メタルに優雅さを加える要因となっている。もう1つ、この作品の素晴らしい語り(ナレーション)は、POWER COURTのヴォーカル、ダニー・パワーズが担当している。よくここまで徹底できるものだ。

3 作品の完成

──忘れ去られた《剣と魔法の物語》を描くエピック・メタルの一派が、未だに死に絶えていないことを、新しいヘヴィメタルの時代に体現したドミネの行為は、間違いなく偉業ととれるものだ。この壮絶なコンセプトの一部に記された"The End Of An Era(一つの時代の終わり)"という言葉は、ドミネがヒロイック・ファンタジーを起源とするエピック・メタルの歴史に終止符を打ったことを物語っている。随分と長い時間をかけて、ようやくエピック・メタルという特異な分野は、納まるべき最上の鞘を見出した。しかし、その完成形が現れようとも、神話の中の魔術師のように、エピック・メタルという分野に魅せられた探求者たちの冒険は、果てしなく続いていくこととなる。

*注釈:Michael John Moorcock(1939~)。イギリスのSF、ファンタジィ作家。彼の作り上げた一連の個性的なヒロイックファンタジー作品は、「アンチ・ヒロイック・ファンタジー」として新たなジャンルを切り開いた。代表作は『グローリアーナ』、『永遠のチャンピオン』シリーズ。また音楽活動も行っている。



1. ザ・レジェンド・オブ・ザ・パワー・スプリーム
The Legend of the Power Supreme
怪しげなナレーションから始まるプロローグ。剣と魔法の世界に誘われるかのような雰囲気が何とも言えない。また、後半には、本作の物語の鍵となるメロディが登場する。

2. ザ・ハリケーン・マスター
The Hurricane Master
ハリケーン・マスター("嵐の支配者"という意味。始めは楽曲の解釈に迷ったが、ストーム・ブリンガーで"嵐を呼ぶ者の支配者"となるため、ここでの意味は前者)、エルリックを歌った名曲。かつて彼は、魔術で嵐を呼び、宿敵であるパン・タンの大魔術師、セレブ・カーナを打ち破った。その壮絶な世界観は楽曲にも顕著に表現されており、大仰極まりないヒロイックなメロディが激烈に疾走する。全てを叩き潰さんとする勇壮さはあまりにも熱い。まさにエルリックが剣を握りしめ、混沌の軍団に一人で立ち向かうかのような、決死のヒロイズムを表現している。

3. ホーン・オブ・フェイト
Horn of Fate (The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part II)
オープニングの勇壮なケルト系のメロディから、壮大な剣と魔法の世界が描かれる重厚な楽曲。《運命の角笛》を吹き鳴らさんとするエルリックの勇士が描かれた楽曲でもあり、彼は世界を終結させるために、その角笛を三度鳴らさねばならない。それこそが彼にのみできる使命であり、運命なのである(エルリックが角笛を手にする前、それは異次元の勇者ローランが持っており、エルリックは戦いの末に角笛を奪い去った)。悲壮感に満ち、どこか勇ましい後半の劇的な展開には度肝を抜かれる。まさに"永遠の戦士"、エピック・メタルという言葉が相応しい楽曲である。そして、とにかくメロディがいちいち勇ましい。

4. ザ・ライド・オブ・ザ・ヴァルキリーズ
The Ride of the Valkyries
"ヘヴィメタルの父"リヒャルト・ワーグナーの有名なオペラ「ワルキューレ」をモチーフにした楽曲、らしいのだが、ギター・ソロの部分以外はほとんどが自作だと思われる。ワーグナーには失礼だが、ドミネの本曲の方がワルキューレらしい。ドミネが作曲した部分が際立っている。本曲の勇壮さは素晴らしい。

5. トゥルー・リーダー・オブ・メン
True Leader of Men
"The Hurricane Master"を彷彿とさせる、ヒロイック極まりない疾走曲。フランク・ハーバートの小説『惑星デューン(Dune)』を題材とし、その物語の中の戦いについて記された楽曲である。とにかくドミネの楽曲は、大仰なまでにヒロイックなメロディを叩きつけるものが多く、ヒロイック・ファンタジー小説が体の芯まで沁み込んでいるファンには、耐えられないほどの高揚感が襲ってくる。本曲のコーラスの展開がまさにそうで、もはや、やり過ぎとまで思える。

6. ザ・ベアラー・オブ・ザ・ブラック・ソード
The Bearer of the Black Sword(The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part I)
アルバム中間部に配置された、今作のコンセプトの第一章目の楽曲。物語を掻い摘むと、人類の誕生以前に鍛造された魔剣、ストーム・ブリンガーと、それを担う者エルリックについて描かれている。彼は数多の名で呼ばれ、旅を続けてきた。今や彼に真実と謎が明かされ、彼は《法》と《混沌》の間で最後の戦いを行わなければならない。楽曲としては、ギター・メロディに重点を置いたミドル・テンポだが、といっても勇壮かつもの悲しいメロディのせいで、他の楽曲と大差のないほどヒロイックに仕上がっている。本曲はドミネ本来の劇的さがよく表現されており、息を飲むかのような緊張感の漂う展開を有している。

7. ザ・フォール・オブ・ザ・スパイラル・タワー
The Fall of the Spiral Tower
他の曲に比べるとやや平凡な楽曲かも知れないが、後半のケルティックなギター・ソロは絶品。曲調も勇壮で非常に好感が持てる。メロディに関しては、ケルティックな雰囲気が存分に漂っている。

8. フォー・エヴァーモア
For Evermore(The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part III)
バラード。これまでの楽曲で息をつく暇が全くなかったので、そのためかと思われる。出来が特別良いわけでもなく、他の楽曲に隠れて印象も薄い。

9. ドーン・オブ・ア・ニュー・デイ
Dawn of a New Day - A Celtic Requiem (The Chronicles Of The Black Sword - The End Of An Era Part IV)
この伝説の最後を締め括る、およそ10分にも及ぶ凄絶な大作。本作の重要な場面を繋いできたエルリックの一大叙事詩は、悲劇的でありながらも感動的な結末を迎える。遂にエルリックは、運命によって定められた行為を成し遂げ、宇宙のサイクルが完了する。彼は新たな世界が始まるのを見る。そして、全てが失われ、新たな一日の夜明けが訪れる(Dawn of a New Day)。それは彼自身の死に他ならず、彼もまた古い世界と共に滅びゆく運命だった。結局のところ、この壮大な叙事詩が物語っているものは、全宇宙の構造(パターン)であり、人類の全ての世界もまた、構造(パターン)ということなのである。ドミネの挑戦は偉大だった。世間では長過ぎるなどと欠点ばかり言われているが、ドラマティックな構成面は抜きん出ている。オープニングでの壮大な勇士のメロディが、メインで繰り返されるパートを聴いたときの感動は、計り知れない。ラストのコーラスを繰り返すパートでは、エルリックが混沌との巨大な戦いを終え、自らもまたその命が尽き、荒野に横たわる姿が目に浮かぶ。一つの伝説が終わった瞬間を感じる、尊い時間だ。この歴史的な達成感を解き放つ長大なエピック・メタル大作は、『STORMBRINGER RULER -The Legend of the Power Supreme-』以外にはない。


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Dragonlord (Tales of Noble Steel)



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 1999
Reviews: 84%
Genre: Epic Power Metal


イタリアのエピック・メタル、ドミネの1999年発表の2nd。


イタリアのフィレンツェ出身のドミネは、唯一のオリジナルメンバーであるエンリコ・パオリ(Enrico Paoli:g)とリッカルド・パオリ(Riccardo Paoli:b)の兄弟に率いられたバンドであり、一貫性のあるサウンドをファンに提示し続け、伝統的なエピック・メタルをドラマティックに創造してきた。一部のカルト的なエピック・メタルのマニアたちから多大な支持を受けたバンドは、1983年の結成後、一時は活動休止に追い込まれたが、不屈の闘志で幾度となく再起した。ドミネのサウンドは、サボタージュ(SABOTAGE)のシンガーだったモービィ(Morby:vo)の加入によって大幅に変化し、伸びのあるハイトーンを武器にして、イタリアン・メタル・バンドが頻繁に陥る、ヴォーカルの難点から脱出することに成功した。オペラティックなコーラスやヒロイックなギター・ソロを多用する箇所も、バンドの大きな特徴だった。

ドミネの第2作『DragonLord(Tales from the noble steel)』は、長々と題された正式名のタイトルからも分かるように、コンセプト・アルバムの手法を採用していた。一般的に《剣と魔法の物語》と呼ばれる、古代の魔法が支配し、剣が猛威を振るう様々な時代を主な舞台として、本編の楽曲は成立した。幻想的なアルバム・タイトルが物語っているように、"メルニボネのエルリック"(*注釈)が作品のメイン・コンセプトだった。ドラゴン王(DragonLord)とは『永遠の戦士』である主人公、エルリックのことに他ならない。ドミネの《剣と魔法の物語》に対する思い入れは相当なものであり、この後のアルバムにもその傾向は顕著だった。

本作は雄大なヒロイック・ファンタジーのコンセプトに忠実であり、シリアスな作風を貫き、徹底して作られている。この手の音楽に必要な語り(ナレーション)、SEの導入など、エピック・メタルの愛好者には御馴染みの内容が登場する。また、今回はキーボード奏者として新たにリッカルド・イーアコーノ(Riccardo Iacono:key)が迎えられており、バッキングでも重厚感が増している。ケルト音楽に通じる幻想的な音色も使いこなし、まさにそれらしい世界観を描いている。ギター・サウンドは伝統的な正統派メタルの流派を踏襲しており、ヘヴィメタリックなリフや情熱的なギター・ソロが高揚感を高めていく。これらの要素は非常に荒々しく、またヒロイックであり、典型的なエピック・メタルを名乗るに相応しい出来だった。楽曲の完成度の高さから、地元イタリアでこの『DragonLord(Tales from the noble steel)』が"ALBUM OF THE MONTH"に選出されたのは必然的な結果だった。

本作にてドミネは、既に絶対的な個性というものを開花させている。過去のバンドたちを調べても、ここまで剣と魔法の世界を忠実に再現したエピック・メタルはあまりなかった。なぜなら、その大半は気高い理想に反して、チープなサウンドに収まっているからだ。しかし、ドミネは驚くべき内容を『DragonLord(Tales from the noble steel)』の中で披露し、かつての常識を覆した。ある種、本作はヒロイック・ファンタジー系のエピック・メタルの一つの到達点ともいえる内容だった。 エピカルで劇的にヒロイックなヘヴィメタルを探していて、妖艶な幻想世界に浸りたいのなら、このアルバムは迷わず買うべきリストに含まれるだろう。

*注釈:原題「Elric of Melniboné」。 エルリックとは、イギリスの小説家マイケル・ムアコックの創造したヒロイックファンタジー巨編『永遠のチャンピオン』シリーズの中の《エルリック・サーガ》における主人公の名。またメルニボネというのは、物語の舞台である新王国が勃興する以前に、一万年に渡り世界を支配した世界の中心に位置する竜の島のことである。エルリックはメルニボネに生息する人類とは異なる人種《メルニボネ人》であるため、このような命名をとる。



1. 宣戦布告
Anthem (A Decloration of War)
先述したように、《剣と魔法の物語》の世界を描く幻想的なイントロダクションである。戦いが始まる様の緊迫した雰囲気を漂わせる。

2. サンダーストーム
Thunderstorm
モービィの超絶なハイトーンが炸裂する名曲。タイトルでもある歌詞「Thunderstorm」を連発するパートのインパクトは絶大。その部分が「チャンダァァァァストォォォォム」と聴こえるのも凄まじい。この時点で既にシリアスな緊張感が絶えない。爆発力に満ちており、素晴らしいカタルシスを感じさせる。また、高速のドラムと共に刻まれるリフも漢らしさを感じさせる。

3. ラスト・オブ・ザ・ドラゴンロード
Last of the Dragonlords (Lord Elric's Imperial)
メルニボネのドラゴン王の最後を歌う叙事詩である。最強のドラゴンたちが高く飛ぶ時、彼は最期を遂げるであろう。邦題は「エルリック軍の進撃」。実に大胆な訳をしたものだ。ミドル・テンポながら非常にヒロイックな雰囲気が漂う楽曲であり、エピック・メタルらしい緊張感に満ちている。サビでのエルリック軍の進撃を思わせるコーラスは実に秀逸。何度でも聴きたいメロディーである。また、中間部のギター・ソロも素晴らしく、英雄の長い道程を想像させられる。

4. ブラッド・ブラザーズ・ファイト
Blood Brothers' Fight
メタリックなギター・リフがザクザクと幻想的なキーボードの中で刻まれる佳曲。ヴァースへの流れは、ヒロイックなヘヴィメタルらしい。途中でのテンポ・チェンジ、及びケルティックなギター・メロディの導入などドラマ性も高い。

5. ディフェンダー
Defenders
古代世界の威厳を伴って疾走を繰り返す名曲。高速のメタリックなリフに、ドラマティックな歌パートが繋がる部分は胸を打つ。キーボードも幻想的に絡み、唯一無二の世界を描く。後半の劇的なテンポ・チェンジから雄々しい掛け声への流れには、戦士の闘争本能が呼び起こされる。サビでの荘厳なコーラスは素晴らしく勇ましい。ラストの超絶なハイトーンの咆哮も身を震わせる。

6. 軍神マーズ
Mars, the Bringer of War
不気味な語りが始まるインストゥルメンタル。これは調べた結果、エルリックが地獄の公爵アリオッチに助力を求める場面であるらしい。

7. ドラゴンロード
Dragonlord (The General Master of the Mightest Breasts)
新王国にて行われる数々の戦争、千もの戦場を駆けるエルリックの波乱の戦いを物語る。彼は黒き剣の使い手であり、光の帝国メルニボネの王子、そして、ドラゴンの王として運命(フェイト)によって定められている。この楽曲は、その悲壮なる英雄エルリックのメイン・テーマ。壮絶な大作である。まさにエルリックの世界観を限りなく表現した、雄大な名曲。オープニングとラストに配置されたシンガロング・コーラスの勇ましさは天にも昇る。女性コーラスが入る箇所は絶品。メロディと行進曲調が一体となり、ヴァースからコーラスへの雄大な流れは、恰もチャンピオンたちの剣と魔法の戦いを傍観しているかのような錯覚に陥る。劇的な展開は終盤にも配置されており、圧倒的なヒロイズムを放つ壮大なギター・ソロから、王国調のリズムへの展開を聴いた時、あなたは架空のチャンピオンになっている。

8. 神々の炎
Uriel, the Flame of God
勇壮なギターが絡み合う佳曲。ダークな雰囲気は果てしなく妖艶に響く。

9. シップ・オブ・ザ・ロスト・ソウルズ
Ship of the Lost Souls
重く暗い雰囲気が支配したエピック・ナンバー。

10. ザ・バトル・フォー・ザ・グレート・シルヴァー・ソード
The Battle for the Great Silver Sword(A Suite in VII parts Opera III)
全7章から構成される巨大なオペラ。およそ10分以上にも及ぶ雄大な大作である。かの有名な『アーサー王伝説』にインスパイアされた内容。この物語は15世紀になってまとめられたが、実際にはその1千年も前に存在していたという。これは中世時代が本格的に幕を開ける前時代のことであろう。本曲では、暗黒時代の陰鬱なる世界観を、古代と中世を掛け合わせたような絶妙なムードを表現しており、バンドの叙事詩的な描写センスを見せる。特に、混沌の神に対し騎士が聖剣を懇願するパートでもある、サビ前の高潔かつ大仰なモービィの熱唱が、途轍もない勇ましさである。目まぐるしく紡がれるギター・ソロもそうだが、実に英雄的なメロディを惜しみなく導入している。しかし、本曲が冗長であるという批判を受けることも多い。


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Champion Eternal



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 1997
Reviews: 75%
Genre: Epic Power Metal


ドミネの1997年発表の1st。


ドミネはイタリアのフィレンツェで1983年に結成された。1986年からデモテープの制作を始め、1994年までに4本発表した。その後、1997年、イタリアのレーベル「Dragonheart」から、このデビューアルバム『Champion Eternal』がリリースされた。 唯一のオリジナルメンバーであるエンリコ兄弟を筆頭に、バンドは過去の"剣と魔法の世界"をエピック・メタルの音楽のスタイルで表現することに、方向性を定めていた。

その世界観の通り、本作の内容は正統的なパワー・メタルと、カルト・エピック・メタルの要素が混ざり合った複雑な作風だった。プログレッシブで冗長性が顕著な大作を多く導入する本作は、充実した完成度とは完全に語れず、何か欠け落ちた部分があった。イタリア最古のSabotageの元メンバー、モービー(vo)のヴォーカルも、この頃はまだ開花していなかった。

しかし、世界観に光るものは見えた。タイトルに現れたマイケル・ムアコックの小説『永遠の戦士』への憧憬、ロバート・E・ハワード等に基づいた伝統的なヒロイック・ファンタジーへの傾向は、エピック・メタル・バンドとして価値のあるものだった。 こういった世界観を追及したこのアルバムは、雰囲気は十分に表現されていた。後は楽曲だけだった。もう少し、明白なインパクトが必要だったのだ。中には"The Freedom Flight"のような素晴らしい楽曲もあったが、それでも無駄な部分は多かった。しかし、アンダーグラウンドのエピック・メタルのマニアたちは、本作に強烈に惹かれた。 バンドの情熱や探究心は一流だった。



1. The Mass Of Chaos
2. The Chronicles Of The Black Sword
3. The Black Sword
4. The Freedom Flight
5. Army Of The Dead
6. The Proclamation
7. Dark Emperor
8. Rising From The Flames
9. The Midnight Meat Train
10. The Eternal Champion


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