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Alexandros



Country: Greece
Type: Full-length
Release: 2012
Reviews: 83%
Genre: Epic Power Metal


ギリシャ発祥、新世代エピック・メタルの歩兵、セイクリッド・ブラッドの2012年発表の2nd。


「それは大いなる情熱と叙事詩的な感性で満ち溢れている…」
 ──デイヴィッド・ディファイ



『METAL EPIC』誌より抜粋:



過去、圧倒的な戦力差によってイタリアに大敗を喫していたギリシャの地域は、2008年、アテネのバトルロアに次ぐ強力な戦力、セイクリッド・ブラッドを次世代エピック・メタル・シーンに向けて送り込んだ。今やエピック・メタルのシーンは欧州全域へと拡大したが、"エピックメタル大国"イタリアは他のすべての国家を圧倒していた。しかし、戦いの原野に突如として英雄が出現したのだ。フォークアースでも活躍したポーリーデイキス(Polydeykis:g、key)率いるセイクリッド・ブラッドは、第一作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』(2008)で瞬時に頭角を現すと、これまでのギリシャの窮地を救った。古代ギリシャの普遍的な英雄のテーマである"テルモピュライの戦い(Battle of Thermopylae)"を題材とした第一作は、地元ギリシャでの大絶賛の後、世界各地のエピック・ヘヴィメタルのファンを瞬く間に取り込んだ。



エピック・メタルが誕生してから既に30年以上が経過したが、我々は重要な部分を見落としていたに違いない。『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』で表現された正統派かつ劇的でヒロイックなサウンドが、このように多くのファンを魅了したように、気が付けばエピック・メタルですら本物が求められる時代となっていた。ヘヴィメタルはオリジナルの登場の後、様々な形へと姿を変えて我々の耳を楽しませてきた。しかし、時が経つにつれ、細分化したジャンルからオリジナルへの回帰が始まったのである。正統派メタル、ピュアメタルといった音楽性の追求は、その流れの一つに過ぎなかった。それほどヘヴィメタルの歴史が続いた証拠でもある。そして同じように、一周してエピック・メタルの分野でも原点回帰が始まった。敵国イタリアのマーティリアのサウンドなどがまさにそうだが、一般に"マニア"と呼ばれるエピック・メタルのコアなファン層はそういったサウンドを求めていた。この分野の始祖であるマニラ・ロード、キリス・ウンゴル、ヴァージン・スティールなどのサウンドに如何にして接近するか。近年ではエピック・シンフォニックなサウンドよりも正統派なサウンドが特に重要視されていた。エピック・メタルの追求の末に起こったのが原点回帰とは何とも興味深い結末だが、ファンがそれを求めていたのだから、そうなる結末が正しかったのであろう。なお上記で語られているファンとは、エピック・メタル・バンド自身も含んでいる。多くのエピック・メタル・バンドが公言しているが、彼らはマニラ・ロードやキリス・ウンゴル、ヴァージン・スティールなどの始祖たちに影響を受けてこの業界に入ってきた。始祖たちに認められれば、バンドとしても本望だ。



話は戻り、セイクリッド・ブラッドの第2作『Alexandros』は、そのアルバム・タイトルが語る如く、古代マケドニア──有史以前のギリシャ──の王、アレクサンドロス3世の生涯をコンセプトにした一大叙事詩である。アレクサンドロス大王はこのような生涯を送ったと歴史にある──強大な軍隊でマケドニアを統一した片目の王、ピリッポス2世の息子として生まれたアレクサンドロスは、幼少期にアリストテレスを師とし、知性と武術の両方を学んだ。ピリッポスが暗殺された後、王位を継承したアレクサンドロスは、小アジア、エジプトへと軍を行進させる。アレクサンドロスに率いられたマケドニア軍は神の行軍の如く、破竹の勢いでこれを征服した。紀元前331年、4万のマケドニア兵はガウガメラ(Battle of Gaugamela)でダレイオス3世率いる25万のペルシア軍と対峙し、激闘の末にこれを打ち破る。戦利品としてアレクサンドロスはバビロンを略奪し、若くして全世界の王の地位に君臨した。その後は絢爛なバビロンに留まらず、壮大な東方遠征及びインド遠征へと旅立ち、世界各地に強大な都市アレクサンドリアを建設した。東方遠征の謎、32歳での若すぎる死などが今なお伝説として語られ、神秘的な人物像、及び達成した偉業のあまりの多さから、現在では実在した最大の英雄であると考えられている──この偉大なる英雄を題材とした本作は、エピック・メタルとしての失敗が許されていない。崇高なテーマであり、シリアスな音楽性で描かれなくてはならない題材だ。セイクリッド・ブラッドはこれに迫真のエピック・メタルで挑んだ結果、大きな成功を収めている。前作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』以上のスケール感を放ち、完成度の高い楽曲で締められた本作は、これまで以上にセイクリッド・ブラッドの評価を高めることに繋がるであろう。頻繁に小曲を挿みながら、時にシネマスティックな手法でストーリーテリングな内容を描き、決定打としてダイナミックな音で聴き手に迫る会心のエピック・メタルが、『Alexandros』の全容である。エピック・メタルの帝王、ヴァージン・スティールのデイヴィッド・ディファイが酷く絶賛したという本作のサウンドは、虚言など語らない。勇敢なる古代マケドニアの軍隊の如く行進し、軍人の鉄の信念の如く他国を武力で圧倒し、今ここに新たなエピック・メタルの歴史が綴られたのだ。



1. The Warrior's Scion
オリエンタルな旋律と共に有史以前の伝説が幕開けるイントロダクション。
2. The Bold Prince of Macedonia
アレクサンドロスの誕生を描く叙事詩。重厚かつダイナミックなリフで大仰な表現をする。恰も史劇の幕開けの壮大さであるように、厳かな有史以前の世界観を描いている。後半の盛り上がりは映画の終盤さながら。
3. The Battle of the Granicus (Persian in Throes)
紀元前334年の"グラニコスの戦い(Battle of the Granicus)"を描写。この日、マケドニア軍は始めてペルシア軍に勝利した。勇猛果敢な古代ギリシャの英雄主義が炸裂する傑作である。 ヒロイック極まるメロディをギターで紡ぎ出し、地を穿つ軍隊の如く雄大なコーラス・パートへと導く。セイクリッド・ブラッドのサウンドが古典劇を脱し、シネマスティックな段階に踏み込んだことを告げる名曲である。
4. Phalanx Invicta
英雄的なムードが滲み出るインストゥルメンタル。
5. Marching to War
ヒロイズムを伴ったギターメロディを奏でる。シリアスに進行する楽曲は、独特の緊張感を高める。後半にはテンポ・チェンジを配置。
6. Golden Shields in the Sky
ナレーションによる短いイントロダクション。映画スコアの雰囲気もある。
7. Death Behind the Walls
勇壮なリフよりエピカルに展開。シンフォニックなコーラスが圧巻。
8. New God Rising (At the Oracle of Siwa)
弦楽器によるインストゥルメンタル。妖艶にエキゾティックな描写をする。 後半では笛とギターの音色を加える。
9. Before the Gates of Ishtar
10. Battlefield Aenaon
アコースティック・パートから巧みにエピック・メタルへと誘導。 オリヴァー・ストーンの映画『Alexander(邦題:アレキサンダー)』(2004)のサウンドトラックを彷彿させる遠大なムードが興奮を呼び覚ます。故にリフのメロディは本作屈指。
11. The Apotheosis of Alexander
スペクタクル映画を彷彿とさせる壮大なイントロダクション。
12. Ride Through the Achaemenid Empire
アレクサンドロスの遠征によって滅亡したアケメネス朝ペルシア帝国。かつては強大な権力を誇ったこの大帝国も、英雄アレクサンドロスに率いられた神の如きマケドニア軍を超えることはできなかった。雄大なメロディと壮大なコーラスを持つエピック・メタルであり、圧倒的なスケール感を放つコーラス・パートは特筆に値する。大仰だが器用さも合わせ持ち、後半ではシンフォニックなパートも導入してより一層ドラマ性を高める。
13. Heart of the Ocean (Nearchus Advancing)
古代風バラッドのような楽曲。女性ヴォーカルの声が雰囲気を盛り上げる。
14. Macedonian Force
伝統的なエピカル・リフを刻み、そこにシネマスティックなオーケストレーションを加えた楽曲。雄大で大仰。中間部のリード・ギターはあまりにも勇猛果敢。楽曲の印象的な締め方も余韻を残す。
15. Legends Never Die
アレクサンドロスは若き死と引き換えにして不滅の栄誉を手にした。


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The Battle of Thermopylae: The Chronicle



Country: Greece
Type: Full-length
Release: 2008
Reviews: 83%
Genre: Epic Power Metal


ギリシャ発祥、有史以前の英雄叙事詩を本格的エピック・パワー・メタルで再現するセイクリッド・ブラッドの2008年発表の1st。


現在のエピック・メタル・シーンについて...
アメリカのヴァージン・スティールなどを始祖とする古代ギリシャ/ローマ世界を舞台としたエピック・メタルの一派が、時代の流れと共に活躍の場を移したようだ。過去の統計が物語っているように、80年代初期~中期に興った地下エピック・メタルのシーンがアメリカを離れ、徐々に外国へと移っていった。エピック・メタルの地下水脈は欧州各地に辿り着き、やがては大国イタリアとギリシャに合流した。アドラメレク(ADRAMELCH)を始祖とするイタリアのエピック・メタル・シーンは80年代において全く巨大ではなかったが、90年代以降、その流れはラプソディーやドミネ、ドゥームソードなどの登場によって断ち切られる。一夜にして文明が築き上げられる歴史小説であるように、それらのシーンもまた、一瞬にして興ったのである。隠された事実では、エピック・ヘヴィメタルのファンは長らくその場所に住んでいた、ともいわれている。即ちそれは、イタリアとギリシャがエピック・メタルにとって新しい主戦場であることを意味していた。爾来、数々の優れたバンドがこれらの国より登場し、地下のエピック・メタル・シーンを拡大させた。イタリアのマーティリアやロジー・クルーシズは、将来を有望視された新世代のエピック・メタル・バンドの一例である。しかし、問題は、多くの叙事詩的音楽ファンを抱えているギリシャの地域から、決定的なエピック・メタル・バンドが登場してこないことにあった。2003年、アテネからバトルロア(BATTLEROAR)の登場。そして、2008年、芳しくない現状は更に覆される。古代神話と英雄叙事詩の本場、ギリシャから遂に決定的なエピック・メタル・バンド、セイクリッド・ブラッドが姿を現したのである。

セイクリッド・ブラッドというバンド...
セイクリッド・ブラッドは、ポーリーデイキス(Polydeykis:g、key)によって2003年の12月にギリシャで結成された。当時のバンド名はセイクリッド(SACRED)であり、デモ『Clash of the Titans』(2003)を制作した。デモの時点で、セイクリッド・ブラッドの音楽性は、長年アンダーグラウンドの隅で培われてきた伝統的なエピック・メタルを目指していた。その後いくつかのメンバー・チェンジが起こり、バンドはギリシャの首都アテネへと活動拠点を移した。新しいサウンドを模索する中で、従来のエピック・メタルが持っていた重厚かつヒロイックなサウンドに加え、ケルト音楽に該当するフォーキッシュな要素を見出した。これが第一作『The Battle of Thermopylae: The Chronicle』の中核を成すサウンドとして、セイクリッド・ブラッドのエピック・メタル・サウンドに馴染んだのである。古くはギリシャの歴史家ヘロドトスの『historiai(邦題:歴史)』の第7巻「ポリュヒュムニア」に描かれ、ザック・スナイダーの映画『300(邦題:スリーハンドレッド)』(2007)やマニラ・ロードの『Gates of Fire』(2005)でも題材となっている古代ギリシャの叙事詩、"テルモピュライの戦い(Battle of Thermopylae)"をテーマとした本作は、同国のレーベル「Eat Metal Records」より発表され、その豪傑な音楽性と、圧倒的なヒロイズムとによって、瞬く間に世界各地のエピック・メタル・ファンを魅了した。一部のマニアからは、セイクリッド・ブラッドの将来が明るいものであるとの惜しみない称賛が送られている。本作の危機迫るサウンドは間違いなく他を圧倒する力を秘めており、各国のファンの反応と同様、将来を大きく期待させる要素があることは真実である。セイクリッド・ブラッドがアンダーグラウンドで地位を獲得するのは、もはや時間の問題である。なお本作には、過去ポーリーデイキスが参加していたフォークアース(FOLKEARTH)からの豪華なゲスト・メンバーが多数迎えられている。



1. The Defenders of Thermopylae
ここから劇的な戦いが開始されるとは想像もつかない美しいインスト。
2. Land of the Braves
古典的なファンファーレから開始されるエピック・メタル。徐々に攻撃性を増すサウンドとバイオレンスなイアソン(Iason:vo)のヴォーカルが戦意を鼓舞する。
3. Hordes of Evil
4. Oracle
シンフォニックなイントロダクション。女性コーラスを導入し、古典劇風のドラマ性を生み出す。流石はギリシャといった本格的なサウンド。
5. Spartan Warlord
強烈なメロディとヘヴィなリフで行進する楽曲。ヒロイックかつスリリングに展開するそのエピック・メタルには興奮必至。突然の疾走パートなどを配し、ファンのツボを押さえた作り。
6. Sacred Blood
バンド名を冠したエピック・メタル。渾身のエピカル・リフが放つ破壊力は凄絶。勇猛果敢な疾走感に満ち溢れ、そこにヒロイックなリードギターが饗宴を果たす。圧倒的なヒロイズムを自ら体現し、エピック・メタルの新時代の曙を告げる名曲である。
7. Heroic Spirit
シンフォニックなアレンジを加えたアコースティック楽曲。古代ギリシャの雰囲気を散々に発散し、雄大な哀愁に包み込まれる。
8. Blades in the Night
攻撃性を持つ叙事詩的疾走曲。雄大なギターメロディとコーラスを配し、徹底した英雄主義を貫く。勇敢な旋律に特に光るものがある。エピック・メタルの新たなアンセムともなる傑作。
9. Warrior's Song
パワー、スピード、メロディが混然一体となったエピック・メタル。シリアスなムードに満ち、戦士たちの生死を懸けた凄絶な戦いの様が蘇る。眩暈のするほどに勇敢な内容。
10. Gates of Fire
およそ11分に及ぶ一大叙事詩。雄大な語りから強烈なリフへと展開。前半に難解な変化球は含まれないものの、中間部からエピカルなメロディが爆発する。エピローグは英雄的な余韻で包まれる。


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