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Masters of Fate



Country: Italy
Type: Full-length
Release: 2008
Reviews: 75%
Genre: Epic Heavy Metal


イタリアのエピック・メタル、エトルスグレイヴの2008年発表の1st。


2004年、元ダーク・クォーテラー(Dark Quarterer)の初期ギタリスト、フルベルト・セレナ(Fulberto Serena)を中心として、イタリアで結成されたエトルスグレイヴは、2つのデモ『On the Verge of War』(2004)、『Behind the Door』(2007)の発表後、本格的な作品の制作に専念した。そして、2008年に完成したのが『Masters of Fate』であり、イタリアの「My Graveyard Productions」から発売された。

このエトルスグレイヴというバンドは、当然のように、ダーク・クォーテラーの世界観やサウンドと比較された。そして、アンダーグラウンド・ヘヴィメタルのファンたちが導き出した結論とは、このバンドが間違いなく、カルト的な音楽性を既に築き上げているということだった。それを証明するかのように、『Masters of Fate』のサウンドは、薄暗くドラマティックな内容であり、古代・中世の叙事詩や歴史などをテーマとした歌詞を扱っていた。

実際のところ、エトルスグレイヴは、マノウォーやヴァージン・スティールなどと類似したバンドだったが、『Masters of Fate』の段階では、その叙事詩的なサウンドは未完成だった。なぜなら、本作の楽曲の殆どは、フックに欠けるリフやヴォーカルの力量不足が目立っていたからである。更にエリック・アダムス(Eric Adams)やジャンニ・ネピ(Gianni Nepi)などと比較すると、エトルスグレイヴのハンマーヘッド(Hammerhead)のヴォーカルは、明らかに未熟だった。

なお、この『Masters of Fate』には、ダーク・クォーテラーのカヴァー"Lady Scolopendra"が収録された。




1. Deafening Pulsation
2. Dismal Gait
3. The Last Solution
4. The Only Future
5. Wax Mask
6. Lady Scolopendra
7. Masters of Fate


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Argus



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2009
Reviews: 80%
Genre: Epic Doom Metal


アメリカのエピック・ドゥーム・メタル、アーガスの2009年発表の1st。


アメリカでエピック・ドゥーム・メタルが高い支持を集めることはなく、例えばソリチュード・イターナス(Solitude Aeturnus)のように、ひっそりとしたバンド活動を続けるしか道はなかった。こういったエピック・メタル・バンドは、常にマニアたちの評価で未来のイメージが変化していった。しかし、このアメリカこそはエピック・メタルの発祥の地であり、熱狂的なアンダーグラウンド・シーンのファンたちが存在することも事実だった。

2005年のアメリカで結成されたアーガスは、エピック・メタル・バンドとしては特殊な部類に入る存在だった。なぜなら、このアーガスは、アメリカで殆ど死滅したと考えられていた、エピック・ドゥーム・メタルの後継者だったからである。当然のように、バンドの第1作『Argus』は、直にキャンドルマス(Candlemass)、ソリチュード・イターナス、ドゥームソード(DoomSword)などのサウンドと比較されることとなった。しかし、アメリカのエピック・メタル・シーンに詳しいファンたちは、まずスルー・フェグ(Slough Feg)との類似性を指摘したのである。

実際のところ、このアーガスというバンドは、スルー・フェグと従来のエピック・ドゥーム・メタルのサウンドを融合させたかのような世界観を持ち、極めてクオリティの高い楽曲群を作り上げていた。かつて、キャンドルマスやソリチュード・イターナスは、信じられないようなクオリティの作品を何度も生み出したが、その可能性はアーガスにも備わっていた。この『Argus』から感じ取れるのは、そういった未来の可能性やエピック・ドゥーム・メタル特有の安定感である。また、世界各地のエピック・メタル・ファンたちは、このバンドのサウンドや作品を徐々に評価していった。



1. Devils, Devils
2. Bending Time
3. From Darkness Light
4. Eternity (Beyond, Part I)
5. None Shall Know the Hour
6. The Damnation of John Faustus
7. The Effigy Is Real
8. The Outsider


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Deeds of Prowess



Country: Netherlands
Type: Demo
Release: 1986
Reviews: 84%
Genre: Epic Heavy Metal


オランダのエピック・メタル、ヴァルキリーの1986年発表のデモ。


かつて、巨大化したアンダーグラウンド・シーンから登場したヘヴィメタル・バンドの中には、デモ音源を残したのみで消滅するような存在が溢れ返っていた。しかし、世界各地のマニア向けのレーベルや熱狂的なファンたちは、そこから様々な音源を拾い集めることを主な仕事としていた。実際のところ、彼らの活躍によって、後の時代に発掘された優良バンドの数はあまりにも多かった。

80年代のアメリカで形成されたエピック・メタル・シーンの中にも、歴史の影に埋もれたバンドたちが数多く存在していた。しかし、カルト・ミュージック・カルチャーの本物のマニアたちが注目していたのは、欧州各地に埋もれたエピック・メタル・バンドたちの貴重な音源だった。例えば、後の時代に再発掘されたダーク・クォテラー(Dark Quarterer)やアドラメレク(Adramelch)などのバンドたちは、欧州のエピック・メタル・シーンの形成には欠かせない存在だった。

エド・ワービー(Ed Warby:d)とレムコ・ヘルバース(Remco Helbers:b)によって結成されたオランダのヴァルキリーは、1986年に5曲入りのデモ『Deeds of Prowess』を残したのみで音楽シーンから姿を消した。バンドの活動期間は、僅か1984年から1986年までだった。
しかし、そのデモ音源が残した強烈な印象は、アンダーグラウンド・シーンのエピック・メタル・ファンたちの心を掴んで離さなかった。だからこそ、このバンドの『Deeds of Prowess』は、2012年になって、突如としてマニア向けレーベル「Death Rider Records」から再発されたのだった。

デモ音源としての『Deeds of Prowess』は、80年代のアンダーグラウンド・シーンのエピック・メタル・バンドの作品らしく、極めてチープな音質だったが、新たにリマスターされた楽曲の存在感は、以前とは明らかに異なっていた。そして、現代のエピック・メタルのファンたちは、ヴァルキリーというバンドが持っていた本来のポテンシャルの高さに驚いたのである。

この『Deeds of Prowess』のサウンドは、ヒロイックかつアンダーグラウンド的な妖しさに満ち溢れたものであり、そこからはマノウォー(Manowar)、ダーク・クォテラー、スローター・エクストロイス(Slauter Xstroyes)などの音楽的要素を感じ取ることができた。また、バンドのヴォーカルであるエリック・スミッツ(Eric Smits:vo)の歌唱法は、エリック・アダムス(Eric Adams)やジャンニ・ネピ(Gianni Nepi)を彷彿とさせるものだった。

その他のエピック・メタル・バンドたちと同じく、ヴァルキリーも映画『コナン・ザ・グレート』(Conan the Barbarian, 1982)とそのサウンドトラック、リヒャルト・ワーグナー(Richard Wagner)、北欧神話などの世界観からインスピレーションを得ていた。そして、こういった勇壮な世界観は、『Deeds of Prowess』のエピックでメタリックなサウンドの中に表現されていた。詰まるところ、このオランダのカルト的なエピック・メタル・バンドを発掘したファンやレーベルは、実に誇れる仕事をしたのである。



1. The Ride of the Valkyries
2. The Master of Death
3. Ancient Steel
4. Battlefield of Pelennor
5. The Gods Are Angered


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Ironsword.jpg

Country: Portugal
Type: Full-length
Release: 2002
Reviews: 81%
Genre: Epic Heavy/Power Metal


ポルトガルのエピック・パワー・メタル、アイアンソードの2002年発表の1st。


2002年、第1作『Ironsword』をイギリスの「The Miskatonic Foundation」から発表したアイアンソードは、ムーンスペル(Moonspell)、ディケイド(Decayed)、アラストル(Alastor)などで活躍したタン(Tann:vo、g)を中心として、1995年のポルトガルで結成された。デビュー以前からバンド側が追求していたサウンドは、世界各地のアンダーグラウンド・シーンで着実に勢力を拡大させていたエピック・メタル的なものだった。

そして、エピック・メタルという暗い歴史に包み込まれたジャンルの中で、マニラ・ロード(Manilla Road)やキリス・ウンゴル(Cirith Ungol)などのバンドが王座に君臨しているように、この『Ironsword』もそういったサウンド・スタイルを継承していた。アイアンソードの骨格となったサウンドは、80年代のマニラ・ロード、キリス・ウンゴル、マノウォー(Manowar)、オーメン(Omen)、ブローカス・ヘルム(Brocas Helm)などを彷彿とさせるものであり、その根底にはアンダーグラウンド主義やヒロイズムなどがあった。

また、アイアンソードは、従来の「剣と魔法の物語」(Sword And Sorcery)から多大な影響を受けており、『Ironsword』という作品は、ロバート・アーヴィン・ハワードの創造した世界観とローマ帝国の歴史をテーマとしていた。これらの叙事詩的なテーマは、古典的なエピック・メタルのメタリックなサウンドと溶け合い、極めてヒロイックな楽曲を作り上げていた。言うまでもなく、アイアンソードが選択したテーマは、トールキンの『指輪物語』や『ダンジョンズ&ドラゴンズ』(Dungeons & Dragons)などのハイ・ファンタジーとは、"似て非なる"世界だった。

この『Ironsword』という作品は、凡そ40分間の短い内容だったが、アンダーグラウンド・シーンのエピック・メタルのファンたちを魅了するだけの力は持っていた。結果的に、アイアンソードは、伝統的な「剣と魔法の物語」の世界観を受け継ぐ真性のエピック・メタル・バンドとして、直にファンたちから認められた。



1. Intro
2. March On
3. King of All Kings
4. Legions
5. Under the Flag of Rome
6. Into the Arena
7. Ancient Sword of the Dead
8. Call of Doom
9. Guardians
10. Burning Metal
11. Outro


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Vigilance



Country: Canada
Type: EP
Release: 2015
Reviews: 82%
Genre: Epic Doom Metal


カナダ出身のエピック・ドゥーム・メタル、ゲートキーパーの2015年発表のEP。


デジタル・フォーマットで販売されたEP。この『Vigilance』に収録された楽曲は少ないが、バンドの世界観は徹底的に表現されていた。たったこれだけの楽曲で、ゲートキーパーは、アンダーグラウンド・シーンのファンたちから熱烈な支持を得ることに成功した。また、本作の楽曲は、そのままエターナル・チャンピオン(Eternal Champion)とのスプリット・アルバム『Retaliator / Vigilance』(2015)に収録された。

結果的に、このゲートキーパーは、新時代のエピック・メタル・バンドとして、エターナル・チャンピオンと並び、アメリカ圏でマニアたちから大きな注目を集めた。これらの若いエピック・メタル・バンドたちが貫いてきた信念は、徹底したアンダーグラウンド主義やマニラ・ロードとキリス・ウンゴルをリスペクトする姿勢だった。
当然のように、そこには従来のヒロイック・ファンタジーや中世ヨーロッパ的な世界観への傾倒も含まれていた。また、これまでにゲートキーパーが追求してきた世界観は、ロバート・アーヴィン・ハワードとハワード・フィリップス・ラブクラフトの小説に基づいていた。言うまでもなく、このアメリカ出身の二人の偉大な作家は、過去の叙事詩的なヘヴィメタルにも多大な影響を及ぼした存在に他ならなかった。



1. Vigilance I
2. Angelus Noctium
3. Vigilance II


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Prophecy_And_Judgement.jpg

Country: Canada
Type: EP
Release: 2013
Reviews: 82%
Genre: Epic Doom Metal


カナダ出身のエピック・ドゥーム・メタル、ゲートキーパーの2013年発表のEP。


2000年代後半、世界各地のNWOTHM(New Wave Of Traditional Heavy Metal)の動きに合わせて登場してきた若いバンドたちは、時にエピック・メタル的な音楽性を強調した作品を、現代のヘヴィメタル・シーンに送り出すことが多かった。そういった新世代のバンドたちは、クラシック・メタルとエピック・メタルの間で揺れ動いていた。
しかし、このカナダ出身のゲートキーパーに限って言えば、その楽曲の作風は、完全なるアンダーグラウンド主義のエピック・メタルだった。

デビューEP『Prophecy And Judgement』のファンタジックなアルバム・ジャケットから漂う怪しくも文学的な雰囲気は、そのままエピックかつドゥーミーなサウンドの中に表現された。言うまでもなく、これはゲートキーパーが追い求めた、現代に相応しい形のエピック・メタル・サウンドだった。
このバンドがエピック・メタルの本質を捉えた時、そこに存在していたのは、やはり19~20世紀初頭の幻想文学や中世ヨーロッパの英雄叙事詩などの世界観だった。

そして、ゲートキーパーのドラマ性の高いサウンドや幻想的な世界観の根底には、マニラ・ロード(Manilla Road)、キリス・ウンゴル(Cirith Ungol)、ブローカス・ヘルム(Brocas Helm)、ソルスティス(Solstice)、ドミネ(Domine)などのバンドたちからの影響があった。EPの段階でここまで完成された世界観を持ったバンドは極めて貴重であり、そういった事実をアンダーグラウンド・シーンのファンたちは見逃さなかった。
結果的に、このゲートキーパーというバンドは、早い段階からエピック・メタルのファンたちの注目を集めたのである。



1. Tale of Twins
2. North Wolves
3. Swan Road Saga
4. Prophecy & Judgement


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Alive Aftershock



Country: Greece
Type: Split
Release: 2013
Reviews: 80%
Genre: Epic Heavy Metal


ギリシャの古典派エピック・メタル、ラースブレイドの2013年発表のスプリット盤。


前作『Into the Netherworld's Realm』(2012)と同じく、ギリシャの「Eat Metal Records」から発売されたラースブレイドの『Alive Aftershock』は、現代のエピック・メタル・シーンでも人気の高いスプリット・アルバムという形式である。本作には、ギリシャの2つのバンド──ラースブレイドとコンヴィクシオン(Convixion)──の楽曲をそれぞれ収録している。

この『Alive Aftershock』に収録された楽曲を見ても分かるように、キリス・ウンゴルとマニラ・ロードの2つのバンドは、地中海諸国では非常に人気の高い存在となっている。そして、エピック・メタルのファンたちが驚くのは、ラースブレイドのヴォーカルであるニック・ヴァーサミス(Nick Varsamis)の歌唱法が、極めてマーク・シェルトンに接近しているということだ。これは『Into the Netherworld's Realm』を経て、バンドが更に進化したという証拠だろう。必然的に次回作への期待も高まる。



1. Convixion - The Eyes of the Beast
2. Convixion - I'm Alive (Cirith Ungol cover)
3. Wrathblade - Triton the Trumpeter
4. Wrathblade - Aftershock (Manilla Road cover)


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WRATHBLADE_1st.jpg

Country: Greece
Type: Full-length
Release: 2012
Reviews: 90%
Genre: Epic Heavy Metal


ギリシャのアテネ出身、アンダーグラウンド・エピック・メタルの最終兵器、ラースブレイドの2012年発表の1st。




2000年代以降のギリシャのアンダーグラウンド・シーンで確立された、重厚なスタイルの新時代のエピック・メタル・サウンドは、NWOMEM(New Wave Of Mediterranean Epic Metal)の拡大と共に、次第に世界各地のヘヴィメタル・ファンたちの間へと浸透していった。当然のように、その中心にいたバンドは、ギリシャを代表する存在であるバトルロア(Battleroar)であり、そこに無数のイタリア勢が続く形となった。
そして、2010年代に入ると、次第に欧州各地のアンダーグラウンドのエピック・メタル・シーンは激しさを増し、多種多様なバンドたちが群雄割拠する時代が幕明けた。
そういった過酷な環境の中で、ドイツから登場したアトランティアン・コデックス(Atlantean Kodex)は、第2作『The White Goddess』(2013)という傑作を世に送り出した。一方、イタリアでは、アドラメレク(Adramelch)やダーク・クォテラー(Dark Quarterer)などの古参バンドが復活するという動きもあった。
しかし、2010年代以降のアンダーグラウンド・シーンで本当の勢いを持っていたのは、ギリシャ圏のバンドたちだった。例えば、ギリシャでは、前述したバトルロアの他、セイクリッド・ブラッド(Sacred Blood)、ブレイヴライド(Braveride)などが活躍し、キプロスでは、アラヤン・パス(Arryan Path)やソリタリー・セイバード(Solitary Sabred)などがエピック・メタルのファンたちの心を掴んだ。



ここに紹介するラースブレイドも、サウンド的にはバトルロア直系の重厚なエピック・メタル・スタイルを体現したバンドだが、アンダーグラウンド・シーンのファンたちの期待は、周囲の想像を遥かに上回るものだった。実際のところ、ラースブレイドというバンドは、2003年にギリシャのアテネで結成され、シングル『War of the Titans』(2006)、デモ『Reins of Doom』(2011)を発表し、エピック・メタルのファンたちの心を掴んでいた。
そして、2012年、ラースブレイドは、ギリシャの「Eat Metal Records」から第一作『Into the Netherworld's Realm』を発表した。言うまでもなく、このエピック・メタル・バンドとしての圧倒的な自信や誇りに満ち溢れた重厚な作品は、全てのドラマティックな叙事詩的音楽のファンたちが、その発売を心待ちにしていたものだった。
ヒロイズムを貫くギリシャの若者たちが生み出した一大叙事詩──『Into the Netherworld's Realm』は、従来のエピック・メタルという音楽の全ての要素を詰め込んだ作風であり、このジャンルの始祖たちから受け継いだ遺産を巧みに進化させていた。
例えば、『Into the Netherworld's Realm』という作品を通じて、クラシックなヘヴィメタルのファンたちは、ドイツのランニング・ワイルド(Running Wild)の存在を思い出すことができた。また、この『Into the Netherworld's Realm』を聴いた従来のエピック・メタルのファンたちは、マニラ・ロード(Manilla Road)、キリス・ウンゴル(Cirith Ungol)、ブローカス・ヘルム(Brocas Helm)、ソルスティス(Solstice)などのバンドが残した作品に共通点を見出すことができた。
実際のところ、ラースブレイドは、自身のフェイスブック上で影響を受けたバンドとして、マニラ・ロード、キリス・ウンゴル、ブローカス・ヘルム、ソルスティス、スルー・フェグ(Slough Feg)、ランニング・ワイルド、セイクリッド・スティール(Sacred Steel)、アイアンソード(Ironsword)、ドミネ(Domine)などのバンドの名前を挙げていた。
このように、過去の様々なエピック・メタル・バンドたちの作風を取り入れたからこそ、ラースブレイドの『Into the Netherworld's Realm』は、シンプルながらも衝撃的なサウンドを確立することができたのだった。
そして、現代のエピック・メタルのファンたちは、ラースブレイドの登場から受けた凄まじいまでの衝撃を、同国のバトルロアと重ねることができた。その衝撃こそが、新時代のエピック・メタル・シーンの形成に必要なものだった。
結果的に、こういったエピック・メタル・バンドたちが生み出した純粋な刺激は、数多くのファンやフォロワーたちを世界各地に拡大させるきっかけとなった。ヒットとは無縁のアンダーグラウンド・シーンの中でも、本当に優れた作品がファンたちの間に拡大するスピードは驚くほど早かった。
詰まるところ、かつてのバトルロアの第3作『To Death and Beyond...』(2008)のように、ラースブレイドは、この『Into the Netherworld's Realm』を通じて、2010年代以降のエピック・メタルのサウンドの骨組みを完成させたのだった。これで暫くの間、欧州のエピック・メタル・シーンは安泰だろう。



1. God-Defying Typhoeus
2. Dolorous Shock
3. In Metal We Trust
4. Dream Trap (Doomopolis pt I)
5. Reins of Doom (God of War pt I)
6. Flee to Freedom
7. Signs of Wrath
8. For You


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Humans and Gods (Люди и боги)



Country: Ukraine
Type: EP
Release: 2014
Reviews: 82%
Genre: Epic Power Metal


ウクライナのエピック・パワー・メタル、エクジステンシアの2014年発表のEP。


2000年に結成されたエクジステンシアは、辺境ウクライナ出身という特徴を活かし、これまでにロシア語を使ったフォーク色の強いエピック・パワー・メタルを展開してきた。そして、第1作『The Storm Master』(2007)を経て完成したこのEPは、やはり従来のファンタジックな世界観を強調した内容だった。言うまでもなく、このバンドは、そういう世界観がマニアたちから高評価され、アンダーグラウンド・シーンの中でも強烈な印象を残すことに成功したのだった。そして、ここには、そういったマニアたちが求めている内容が全て収められており、煌びやかなファンタジー文学の世界観を充分に堪能することができる。
なお、この『Humans and Gods』は、2014年にインターネット上のみで公開されていたが、日本の「S.A.MUSIC」の要望でロシア の「Sound Age」が動き、CD化が決定した。そのため、本作は、最初のうちは「S.A.MUSIC」で独占販売されていた。



1. Wanderer
2. Mysterious Forest
3. Retribution and Remorse
4. Humans and Gods


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Anthology



Country: United States
Type: Compilation
Release: 2013
Reviews: 90%
Genre: Epic Metal


アメリカのクリスチャン・エピック・メタル、ローディアン・ガードの2013年発表の企画盤。


ローディアン・ガードの『Anthology』は、「No Remorse Records」から発表された2枚組のコンピレーション・アルバムであり、ここには、第1作『Lordian Guard』(1995)、第2作『Sinners in the Hands of an Angry God』(1997)の全ての楽曲が収録されている。つまり、ファンたちは、本作を買うだけで、ローディアン・ガードの過去の作品は全て聴くことができるのである。
ローディアン・ガードの過去の作品は、プレミア価格が付けられていた時期もあり、ファンたちは再発を熱望していた。今回、『Anthology』が発売されたことで、ファンたちはその希望を叶えることができたのである。
また、この『Anthology』には、未発表デモ『Lordian Winds』、EP『Behold a Pale Horse』(1996)の内容が加えられており、オリジナル盤とは曲順が異なる。その他、本作の全ての楽曲にはリマスター処理が施され、当時と比べ格段に良い音質となっている。
1000枚限定生産。カルト・エピック・メタルのファン必聴のマスターピース。



Disc 1:
1. Lost Archangel
2. Revelation XIX
3. My Name Is Man
4. Winds of Thor
5. War in Heaven
6. In Peace He Comes Again
7. My Name Is Man
8. Stygian Passage
9. In the Name of God
10. Dark Civilization

Disc 2:
1. Golgotha
2. Behold a Pale Horse
3. Stygian Passage
4. Father
5. Sinners in the Hands of an Angry God
6. Battle of the Living Dead
7. Children of the King
8. Behold a Pale Horse (Single version)
9. Deliver Us from Evil (Single B' side)
10. Invaders
11. Lady Vidonne (A Love Song)


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Nocturnes of Hellfire & Damnat



Country: United States
Type: Full-length
Release: 2015
Reviews: 77%
Genre: Epic Metal


アメリカのエピック・メタルの帝王、ヴァージン・スティールの2015年発表の13th。


2010年代に入り、欧州のイタリアやギリシャへと拠点を移したエピック・メタル・シーンは、それらの地域で様々な実績を残した。近年のアンダーグラウンド・シーンのエピック・メタル・バンドたちは、徐々に新しいファン層を開拓し、従来の音楽のスタイルを更に進化させていった。また、欧州のエピック・メタル・シーンが一時的に活性化したことによって、80年代から活躍していたバンドたちが、それに強い刺激を受けたというファンたちの憶測は、イタリアのアドラメレクやダーク・クォテラー、アメリカのマニラ・ロードやウォーロードなどの復活を見ても、既に明らかな現実だった。

アメリカのニューヨーク出身のヴァージン・スティールは、エピック・メタルというロック音楽のサブ・ジャンルの中では、極めて重要な存在だった。このバンドは、デイヴィッド・ディファイ(David Defeis:vo、key)という特殊なバックグラウンドを持ったミュージシャンがメイン・ソングライターとなり、これまでのキャリアの中で12枚のアルバムを発表してきた。近年では、第12作『Black Light Bacchanalia』(2010)が最も新しい作品だったが、未だ積極的に創作活動を続けるバンドは、2015年に第13作『Nocturnes of Hellfire & Damnation』を完成させた。

『Nocturnes of Hellfire & Damnation』は、ドイツの「SPV GmbH」から発表され、1981年結成のヴァージン・スティールが未だ健在であることをファンたちにアピールした。本作は、従来のヴァージン・スティールの音楽のスタイルを踏襲した内容だったが、実際にはそこに様々な変化を含んでいた。バンドのファンたちが最初に注目したのは、前作『Black Light Bacchanalia』を経て更に変化したデイヴィッド・ディファイの独特なヴォーカル・スタイルだった。実際のところ、1961年生まれのデイヴィッド・ディファイは、既に全盛期を過ぎたヘヴィメタル・ヴォーカリストの一人であり、ロック音楽のファンたちの間では、様々な意見が飛び交っていた。

この『Nocturnes of Hellfire & Damnation』の楽曲の中では、デイヴィッド・ディファイが従来のシャウトを抑え、囁くようなヴォーカル・スタイルを強調している部分がはっきりと表れていた。バンドのファンたちは、この新しいヴォーカル・スタイルを受け入れることには完全に否定的であり、その現実がそのまま作品の評価に繋がった。詰まるところ、『Nocturnes of Hellfire & Damnation』の殆どの楽曲は、デイヴィッド・ディファイの変化したヴォーカル・スタイルによって、全てが台無しになるというのである。

本作のハイライトは、ギタリストのエドワード・パーシノ(Edward Pursino:g)のテクニックを前面に押し出した"Lucifer's Hammer"や"Persephone"にあるが、これらは従来のエピック・メタルの音楽のスタイルを踏襲した、完成度の高い楽曲だった。また、そういった楽曲の間に挟まれている"Queen of the Dead"と"Black Sun-Black Mass"は、ヴァージン・スティールの80年代の覆面バンド、エクソシスト(EXORCIST)のものだった。これらの楽曲は、エクソシストの唯一の作品である『Nightmare Theatre』(1986)の中からリメイクされ、結果的に『Nocturnes of Hellfire & Damnation』に収録されたのである。この過去の楽曲のリメイクという試みは、純粋な「新曲」を求めるファンたちからは、次第に疑問視されることとなった。

『Nocturnes of Hellfire & Damnation』のハイライトの一つである"Persephone"以降は、単純に楽曲の完成度が落ち、第5作『Life Among the Ruins』(1993)と第6作『The Marriage of Heaven & Hell』(1994)の中間に位置するようなサウンドが強調された。しかし、こういった作風は、特にバンドの初期作品のファンたちからは、大きく批難される結果となった。ヴァージン・スティールが本来のエピックな音楽性を取り戻すのは、後半のインストゥルメンタル"A Damned Apparition"からであり、その後の楽曲は、比較的安定した内容だった。特に"Delirium"や"Hymns to Damnation"は、『The Marriage of Heaven & Hell』にも通じるロマンチックなムードを放ち、最後の"Fallen Angels"では、作品の深い余韻に浸ることができた。

結果的に、ヴァージン・スティールの『Nocturnes of Hellfire & Damnation』は、2015年に発表されたエピック・メタルのアルバムの中では、このジャンルのファンたちから最も大きな批判を浴びた。この背景には、バンドのメンバーたちの高齢化やアルバム・コンセプトの排除に加え、かつてアメリカ東海岸で最高のドラマーと評されたフランク・ギルクリースト(Frank Gilchriest)の脱退なども関わっていた。エピック・メタルという音楽のスタイルから考察すれば、やはりヴァージン・スティールは始祖に違いないが、満を持して発表された『Nocturnes of Hellfire & Damnation』は、従来のファンたちと意見が食い違う点が極めて多かったのである。なお、本作は2枚組のデジパック盤と同時発売され、様々なバンドのカヴァー曲を収録したボーナスCDが付属した。



Disc 1:
1. Lucifer's Hammer
2. Queen of the Dead
3. To Darkness Eternal
4. Black Sun-Black Mass
5. Persephone
6. Devilhead
7. Demolition Queen
8. The Plague and the Fire
9. We Disappear
10. A Damned Apparition
11. Glamour
12. Delirium
13. Hymns to Damnation
14. Fallen Angels

Disc 2:
1. Halloween Theme
2. D.O.A.
3. The Witch In The Forest
4. Black Sabbath [Black Sabbath cover]
5. The Immigrant Song [Led Zeppelin cover]
6. Black Sabbath "Reprise"
7. Riderless Horse (Save Your Breath)
8. The Devil Drives
9. Anger Never Dies
10. Funeral Games
11. The Plot Thickens
12. Haunted Wolfshine
13. West Of Sumer
14. A Greater Burning Of Innocence
15. The Birth Of Beauty


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Carnage Victory



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 2009
Reviews: 73%
Genre: Epic Power Metal


ドイツのエピック・パワー・メタル、セイクリッド・スティールの2009年発表の7th。


愚直な音楽性を貫き、エピック・メタル・シーンで実力を発揮し続けるセイクリッド・スティールは、ドイツの他のバンドたちと同じく、作品を発表するペースが早かった。近年のセイクリッド・スティールは、凡そ3年以内には次の作品を発表していた。この第7作『Carnage Victory』は、ドイツの「Massacre Records」から配給され、直にアンダーグラウンド・シーンのファンたちが手にすることとなった。

『Carnage Victory』の内容は、従来のセイクリッド・スティールと同じ音楽性だが、そこに以前のような切れ味を見出すことは難しかった。このバンドの追求している音楽性は、エクストリームでトラディショナルなエピック・パワー・メタルだが、やはりランニング・ワイルド症候群に陥っていた。同じ音楽性を貫いているヘヴィメタル・シーンのバンドたちにとって、以前から、マンネリを解消することは最も大きな課題だった。そして、それを解消するためには、新しい音楽のスタイルを導入するか、別のジャンルを演奏することが必要だった。しかし、このセイクリッド・スティールは、別のジャンルを演奏している姿が想像できないバンドでもあった。

なお、本作には「Queens Festival」でのライブ映像を記録したDVDが付属。



1. Charge into Overkill
2. Don't Break the Oath
3. Carnage Victory
4. Broken Rites
5. Crosses Stained with Blood
6. Ceremonial Magician of the Left Hand Path
7. The Skeleton Key
8. Shadows of Reprisal
9. Denial of Judas (Heaven Betrayed)
10. Metal Underground
11. By Vengeance and Hatred We Ride


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Hammer of Destruction



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 2006
Reviews: 76%
Genre: Epic Power Metal


ドイツのエピック・パワー・メタル、セイクリッド・スティールの2006年発表の6th。


ドイツという地域は、ロック史においても重要な役割を持っており、これまでに様々なバンドが活躍してきた。この地域では、メロディック・パワー・メタル、スラッシュ・メタル、プログレッシブ・メタルなどが発展してきたが、その中にはエピック・メタルも含まれていた。ドイツ出身のエピック・メタル・バンドの多くは、スピード感のあるサウンドを有しており、楽曲は極めてシンプルだった。そして、そういったバンドに強い影響を与えたのは、アメリカを代表するエピック・メタル、マノウォーだった。

セイクリッド・スティールもマノウォーからは強い影響を受けており、作品の中に表現されているヒロイックな世界観は、先人たちの音楽性に従った結果だった。しかし、やはりドイツ出身という部分が強く表れているこのバンドは、楽曲をよりスピード感のあるものへと進化させ、アンダーグラウンド臭のするトラディショナルなエピック・メタルを作り上げることに奔走した。そういった方向性を持ってデビューを飾ったが、セイクリッド・スティールの初期の作品は、楽曲や音質が極めてチープだった。しかし、バンドは作品を重ねる度に楽曲のクオリティを向上させ、この『Hammer of Destruction』では、既に円熟期のようなサウンドに到達した。これはセイクリッド・スティールというバンドが築いてきたキャリアに相応しいものであり、アンダーグラウンド・シーンで地道に活動を続ける意味を強調していた。



1. Hammer of Destruction
2. Where Demons Dare to Tread
3. Maniacs of Speed
4. Blood and Thunder
5. Impaled by Metal
6. Descent of a Lost Soul
7. Black Church
8. Generally Hostile (Jag Panzer cover)
9. Plague of Terror
10. Sword and Axes
11. The Torch of Sin


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Iron Blessings



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 2004
Reviews: 75%
Genre: Epic Power Metal


ドイツのエピック・パワー・メタル、セイクリッド・スティールの2004年発表の5th。


欧州各地には様々なタイプのエピック・メタル・バンドがいるが、その中でも長いキャリアを持っているバンドは少ない。セイクリッド・スティールは1997年にデビューしたが、スラッシュ・メタル風のエピック・パワー・メタルのサウンドを強調しながら、様々な作品を作り上げてきた。

この『Iron Blessings』は、バンドの第5作目であり、従来のヒロイックなサウンドやその方向性を継承している。また、楽曲はよりヘヴィに洗練されており、過去のアンダーグラウンド臭から脱しようとする意欲に満ち溢れている。しかし、こういったエピック・メタル・バンドに求められているのは、愚直な音楽のスタイルや流行に左右されない世界観である。セイクリッド・スティールの新しい試みは素晴らしいが、シンプルな楽曲たちが以前と似たような印象を持っているのは、既にお馴染みの展開である。



1. Open Wide the Gate
2. Your Darkest Saviour
3. Screams of the Tortured
4. At the Sabbat of the Possessed (The Witches Ride Again)
5. Beneath the Iron Hand
6. Anointed by Bloodshed
7. Victory of Black Steel
8. I Am the Conqueror (Come and Worship Me)
9. Crucified in Heaven
10. The Chains of the Nazarene
11. We Die Fighting


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Slaughter Prophecy



Country: Germany
Type: Full-length
Release: 2002
Reviews: 75%
Genre: Epic Power Metal


ドイツのエピック・パワー・メタル、セイクリッド・スティールの2002年発表の4th。


2002年、セイクリッド・スティールの第4作『Slaughter Prophecy』は、ドイツの「Massacre Records」から発表された。このバンドは、過去の作品の中で、ピュアなエピック・パワー・メタルの音楽性を追求し、それがアンダーグラウンド・シーンのマニアたちに注目された。セイクリッド・スティールの主なサウンドは、従来のジャーマン・メタルを基礎とした、メタリックでスピード感のあるエピック・メタルだった。これは同郷のウィザード(Wizard)やマジェスティ(Majesty)に接近した音楽性だった。

この『Slaughter Prophecy』という作品も、間違いなくセイクリッド・スティールが一部のファンたちに認められるべき内容を有していた。バンドの愚直な音楽性やヒロイックな側面は過去と殆ど同じであり、本作では高度なドラマ性も追求するなどの工夫も目立っていた。具体的には、冒頭の"The Immortal Curse"やアルバム・タイトル曲"Slaughter Prophecy"でヘヴィメタルの様式美を強調し、凡そ9分の大作"Invocation of the Nameless Ones"では、エピック・メタル的な大仰さを表現することに成功した。

こういったファンたちを決して裏切らない徹底した姿勢が、80年代から続くエピック・メタルのアンダーグラウンド・シーンで生き残る王道の手段だった。この方法論は、既にドイツのランニング・ワイルド(Running Wild)が実践し、多くのファンを獲得できる結果を導き出していた。しかし、セイクリッド・スティールの現代のロック・シーンを完全に無視した音楽的な方向性を見る限り、バンドはエピック・メタル的な信念を貫いているだけだった。



1. The Immortal Curse
2. Slaughter Prophecy
3. Sacred Bloody Steel
4. The Rites of Sacrifice
5. Raise the Metal Fist
6. Pagan Heart
7. Faces of the Antichrist
8. Lay Me to My Grave
9. Crush the Holy, Save the Damned
10. Let the Witches Burn
11. Invocation of the Nameless Ones


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